(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6025970
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】2点ラムダプローブの電圧オフセットを補償する方法および制御ユニット
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20161107BHJP
G01N 27/26 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
F02D45/00 368G
G01N27/26 371A
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-510707(P2015-510707)
(86)(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公表番号】特表2015-517618(P2015-517618A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2013057954
(87)【国際公開番号】WO2013171015
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】102012208092.9
(32)【優先日】2012年5月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】フェイ,ミヒャエル
【審査官】
山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−224705(JP,A)
【文献】
特開平09−291843(JP,A)
【文献】
特開2004−183585(JP,A)
【文献】
特開昭60−036743(JP,A)
【文献】
特開平06−050934(JP,A)
【文献】
特開2008−095627(JP,A)
【文献】
特開平07−127505(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/122369(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
G01N 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2点ラムダプローブの基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2に対する前記2点ラムダプローブの電圧・ラムダ特性曲線10.1,10.3,10.4における電圧オフセット16,17を補償する方法であって、前記2点ラムダプローブは内燃機関の排ガス通路に配置されており、前記2点ラムダプローブの出力電圧について電圧・ラムダ特性曲線10.1,10.3,10.4の勾配または勾配を表す目安が判定されて、同じ出力電圧のときの基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2の勾配または勾配を表す目安と比較され、基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2の勾配または勾配を表す目安に対する電圧・ラムダ特性曲線10.1,10.3,10.4の判定された勾配または勾配を表す目安の相違から電圧オフセット16,17が判定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記2点ラムダプローブの出力電圧を前提としたうえで、定義されたラムダ変化Δλに対する反応としての前記2点ラムダプローブの電圧変化ΔUmessが、同じラムダ変化Δλのときの基準・電圧・ラムダ特性曲線の基準・電圧変化ΔURefと比較され、基準・電圧変化ΔURefに対する測定された電圧変化ΔUmessの相違から電圧オフセット16,17が判定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電圧オフセット16,17は前記2点ラムダプローブのラムダ領域全体について判定され、または、電圧オフセット16,17の値はそれぞれ異なるラムダ領域について、特にリッチおよびリーンのラムダ領域11,13について、判定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラムダ変化Δλが的確に調整され、電圧オフセット16,17の判定はシステム上の前記ラムダ変化Δλが生じたときに行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記電圧変化ΔUmessが前記2点ラムダプローブの出力電圧を前提としたうえで反復して判定され、および/または前記電圧変化ΔUmessが設定可能な正および負のラムダ変化Δλで判定され、平均化またはフィルタリングされた前記電圧変化ΔUmessから電圧オフセット16,17の判定が行われることを特徴とする、請求項2または4に記載の方法。
【請求項6】
前記ラムダ変化Δλの値および/または種類および/または時間は内燃機関の排ガス条件や動作条件に依存して選択されることを特徴とする、請求項2、4または5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
判定された電圧オフセット16,17が前記2点ラムダプローブの測定された出力電圧と基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2との補正によって内燃機関の惰行時燃料カットオフのときに妥当性検査されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
電圧・ラムダ特性曲線10.1,10.3,10.4の判定された電圧オフセット16,17は全面的または部分的に補償されるものであり、電圧・ラムダ特性曲線10.1,10.3,10.4のラムダ領域に依存して電圧オフセット16,17が補償されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
電圧オフセット16,17の推移からラムダに依存して電圧オフセット16,17の原因が判定され、電圧オフセット16,17の原因を回避または低減するための措置が講じられることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
電圧オフセット16,17を判定するために前記2点ラムダプローブの所定の出力電圧が能動的に調整され、内燃機関の希望される動作条件に基づいて所定の出力電圧が調整されたときに電圧オフセット16,17の判定が実行されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
内燃機関を制御するため、および内燃機関の排ガス通路にある2点ラムダプローブの出力電圧を判定するための制御ユニットにおいて、前記制御ユニットは排ガスの設定可能なラムダ変化Δλを調整するように設計されており、前記制御ユニットは定義されたラムダ変化Δλに対する反応としての前記2点ラムダプローブの電圧変化ΔUmessを判定するための測定手段を有しており、前記制御ユニットには前記2点ラムダプローブの基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2が保存されており、前記制御ユニットは設定可能なラムダ変化Δλの後に前記2点ラムダプローブの測定された電圧変化ΔUmessを同じラムダ変化Δλのときの基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2の基準・電圧変化ΔURefと比較するためのプログラムフローを有しており、前記制御ユニットは測定された電圧変化ΔUmessと基準・電圧変化ΔURefとの相違から基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2に対する前記2点ラムダプローブの対象となる電圧・ラムダ特性曲線10.1,10.3,10.4の電圧オフセット16,17を判定するためのプログラムフローを有していることを特徴とする制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2点ラムダプローブの基準・電圧・ラムダ特性曲線に対する電圧・ラムダ特性曲線における電圧オフセットを補償する方法に関するものであり、2点ラムダプローブは内燃機関の排ガス通路に配置されている。
【0002】
さらに本発明は、本方法を実施するための制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0003】
有害物質排出と排ガス後処理を最適化するために、現代の内燃機関では、排ガスの組成を判定するための、および内燃機関を制御するためのラムダプローブが利用される。ラムダプローブは排ガスの酸素含有率を判定するものであり、このことは、内燃機関に供給される空気・燃料混合気およびこれに伴って排ガスラムダを、触媒装置の手前でコントロールするために利用される。その際には、ラムダ制御回路を通じて内燃機関の空気供給と燃料供給がコントロールされ、それにより、内燃機関の排ガス通路に設けられた触媒装置による排ガス後処理のために、排ガスの最善の組成が実現されるようになっている。ガソリンエンジンの場合、通常は1のラムダに合わせてコントロールがなされ、すなわち、空気と燃料の化学量論上の比率がコントロールされる。そのようにして、内燃機関の有害物質エミッションを最低限に抑えることができる。
【0004】
さまざまな形式のラムダプローブが適用されている。ジャンププローブあるいはネルンストプローブとも呼ばれる2点ラムダプローブでは、電圧・ラムダ特性曲線はラムダ=1のときに飛躍的な下落を有している。したがってこの特性曲線は、過剰燃料で内燃機関が作動するときのリッチな排ガス(λ<1)と、過剰空気で作動するときのリーンな排ガス(λ>1)との間の区別を基本的に可能にするとともに、1のラムダに合わせた排ガスのコントロールを可能にする。
【0005】
連続式または直線式のラムダプローブとも呼ばれる広帯域ラムダプローブは、ラムダ=1を中心とする広い範囲内で、排ガス中のラムダ値の測定を可能にする。それにより、たとえば過剰空気でのリーン動作に合わせて内燃機関をコントロールすることもできる。
【0006】
プローブ特性曲線を線形化することで、比較的低コストな2点ラムダプローブを用いたときでも、限定されたラムダ範囲内で、触媒装置の手前での連続的なラムダコントロールが可能である。そのための前提条件は、2点ラムダプローブのプローブ電圧とラムダとの間に一義的な関連性があることである。このような関連性は、2点ラムダプローブの耐用寿命全体を通じて存在していなければならない。そうでない場合にはコントロールの精度が十分でなく、許容されない高いエミッションが発生する恐れがあるからである。2点ラムダプローブの製造公差や経年劣化現象の理由により、この前提条件は満たされない。
【0007】
2点ラムダプローブによる連続的なラムダコントロールを実行するために、ラムダ領域全体を通じて一定である、2点ラムダプローブの基準・電圧・ラムダ特性曲線に対して存在している電圧・ラムダ特性曲線の電圧オフセットを、内燃機関が燃料の供給を受けない内燃機関の惰行時燃料カットオフのときのプローブ電圧の補正によって判定し、補償することが知られている。これに基づいて特許文献1は、排ガス通路を流れる排ガスの少なくとも1つのパラメータが排ガスプローブにより検出される、内燃機関の排ガス設備を作動させる方法を記載している。その場合、燃料の噴射と燃焼が行われていない内燃機関の動作状態中に、排ガスプローブの上流側で排ガス設備に付属するフレッシュエア供給部によって排ガス通路にフレッシュエアが供給され、その間および/またはその後に、排ガスプローブが調整されることが意図される。
【0008】
しかしながら、電圧オフセットの十分に良好な補償が可能であるのは、排ガスが相応に酸素を含有する惰行時燃料カットオフのときに電圧オフセットが特徴づけられるだけでなく、ラムダ領域全体で等しい強さで特徴づけられている場合に限られる。このことが該当し得るのは、電圧オフセットがただ1つの原因で根拠づけられるときである。しかしながら、基準・電圧・ラムダ特性曲線に対する電圧・ラムダ特性曲線の誤差については、複数の重なり合う原因が存在する。これらの原因は、異なるラムダ領域でそれぞれ異なる強さで特徴づけられることがあり、そのために、電圧オフセットは排ガスラムダに依存して変化する。特にリーンのラムダ領域とリッチのラムダ領域における原因は、それぞれ異なる強さで特徴づけられる可能性がある。ラムダに依存するこのような電圧オフセットは、惰行時燃料カットオフのときの補正によっては十分に補償することができない。この方法のさらに別の欠点は、現代のエンジンコンセプトは惰行段階が減る一方であるという点にあり、このことは、このような惰行段階での補正の可能性を制約する。
【0009】
したがって、触媒装置の手前の2点ラムダプローブは多くの場合、2点コントロールによって利用される。このような2点コントロールは、たとえば触媒装置診断やコンポーネント保護のためにリーンまたはリッチな空気・燃料混合気が必要である動作モードのとき、目標ラムダがパイロット制御によって調整されるにすぎず、コントロールすることはできないという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102010027984A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、連続的なラムダコントロールを2点ラムダプローブを用いて可能にするために、2点ラムダプローブの作動時に2点ラムダプローブの電圧オフセットを補償する簡単かつ確実な方法を提供することにある。
【0012】
本発明の別の課題は、この方法を実施するための相応の制御ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の方法に関わる課題は、2点ラムダプローブの出力電圧について電圧・ラムダ特性曲線の勾配または勾配を表す目安が判定されて、同じ出力電圧のときの基準・電圧・ラムダ特性曲線の勾配または勾配を表す目安と比較され、基準・電圧・ラムダ特性曲線の勾配または勾配を表す目安に対する、電圧・ラムダ特性曲線の判定された勾配または勾配を表す目安の相違から、電圧オフセットが判定されることによって解決される。基準・電圧・ラムダ特性曲線は、経年劣化していない2点ラムダプローブの電圧・ラムダ特性曲線に相当しており、内燃機関のラムダコントロールが照準として設計されている製造公差の範囲内で、2点ラムダプローブの目標曲線を定義する。基準・電圧・ラムダ特性曲線については、2点ラムダプローブの出力電圧と、基準・電圧・ラムダ特性曲線の勾配(ΔU/Δλ)
Refとの間で一義的な関連性が成立する。使用している2点ラムダプローブにおいて、基準・電圧・ラムダ特性曲線に対する電圧・ラムダ特性曲線の電圧オフセットが存在しているとき、測定された勾配(ΔU/Δλ)
messと出力電圧との間でこのような対応関係はもはや成立しない。所定の出力電圧のときの基準・電圧・ラムダ特性曲線の勾配に対する、対象となる2点ラムダプローブの電圧・ラムダ特性曲線の勾配の相違には、電圧オフセットを一義的に割り当てることができる。
【0014】
本方法は、内燃機関の通常の動作時に主として存在する1前後のラムダ領域で、2点ラムダプローブのコントロール範囲の内部での電圧オフセットの判定を可能にする。すなわち電圧オフセットの判定は、たとえば現代のエンジンコンセプトでは稀にしか発生しない惰行段階のように特別な排ガス組成を生じさせる、内燃機関の動作パラメータに拘束されることがない。製造公差や経年劣化により引き起こされる電圧オフセットを判定して補償することで、低コストな2点ラムダプローブを連続式のラムダコントロールのために利用することができる。
【0015】
2点ラムダプローブの出力電圧を前提としたうえで2点ラムダプローブの測定された電圧変化ΔU
messが設定可能なラムダ変化Δλの後に同じラムダ変化Δλのときの基準・電圧・ラムダ特性曲線の基準・電圧変化ΔU
Refと比較され、基準・電圧変化ΔU
Refに対する測定された電圧変化ΔU
messの相違から電圧オフセットが判定されることによって、電圧・ラムダ特性曲線の勾配およびこれに伴う電圧オフセットの簡単な判定を実現することができる。ΔU
mess/Δλは電圧・ラムダ特性曲線の勾配を表しており、ΔU
Ref/Δλは基準・電圧・ラムダ特性曲線の勾配を表している。所定の同じラムダ変化Δλが生じたとき、電圧変化ΔUは勾配を表す目安となり、したがって電圧オフセットの判定のために直接利用することができる。電圧・ラムダ特性曲線の勾配が判定される2点ラムダプローブの出力電圧を選択することで、どのラムダ領域で電圧オフセットが判定されるべきかを決めることができる。ラムダ変化Δλは、内燃機関に供給される空気・燃料混合気を的確に変えることによって実現することができる。触媒装置の手前の2点ラムダプローブの出力電圧は、ラムダ変化に対して非常に迅速に反応するので、ラムダ変化はごく短時間だけ印加すればよい。したがって本方法は、電圧オフセットの非常に迅速な判定を可能にする。
【0016】
本発明の1つの好ましい実施形態によると、電圧オフセットが2点ラムダプローブのラムダ領域全体について判定され、または、電圧オフセットの値がそれぞれ異なるラムダ領域について、特にリッチおよびリーンのラムダ領域について、判定されることが意図されていてよい。電圧オフセットはその原因に応じて、異なるラムダ領域についてそれぞれ異なる大きさになっている可能性がある。異なるラムダ領域について電圧オフセットを別々に判定することが可能であることによって、電圧オフセットをラムダ領域に依存して適合化しながら補償することができる。電圧オフセットの多くの原因は、リーンおよびリッチのラムダ領域でそれぞれ別様に作用する。このことは、リーンおよびリッチの排ガス混合気での電圧オフセットの別々の測定と補償によって補正することができる。
【0017】
別の方法態様によると、設定可能なラムダ変化Δλが的確に調整され、および/または電圧オフセットの判定はシステム上のラムダ変化Δλが生じたときに行われることが意図されていてよい。的確に設定される能動的なラムダ変化Δλにより、2点ラムダプローブの所定の出力電圧で電圧変化ΔUを判定することができる。たとえば触媒装置診断、プローブダイナミック診断、あるいは2点ラムダコントロールが行われる段階などで生じるシステム上の能動的なラムダ変化を利用して、場合により追加の測定を電圧変化について得ることができ、そのためにわざわざ能動的なラムダ変更を行わなくてよい。
【0018】
測定された電圧変化ΔU
messが2点ラムダプローブの出力電圧を前提としたうえで反復して判定され、および/または測定された電圧変化ΔU
messが設定可能な正および負のラムダ変化Δλで判定され、平均化またはフィルタリングされた測定電圧変化ΔU
messから電圧オフセットの判定が行われることによって、電圧オフセットの補償を改善することができる。電圧変化ΔU
messの判定の反復は、オフセット補償の妥当性検査を可能にする。直接的に連続する複数のラムダ変化Δλにより反対方向で電圧変化ΔU
messを測定し、引き続いて測定値の平均化ないしフィルタリングをすることで、一方では電圧オフセットの認識精度を高めることができ、他方では目標ラムダが時間的な平均で維持される。
【0019】
測定される電圧変化ΔU
messが2点ラムダプローブのさまざまな出力電圧を前提としたうえで判定され、そこから判定された電圧オフセットが比較によって妥当性に関して検査されることによって、電圧オフセットの判定にあたっていっそうの改善を実現することができる。
【0020】
設定可能なラムダ変化Δλの値および/または種類および/または時間は、内燃機関の排ガス条件や動作条件に依存して選択することができる。ラムダ変化Δλは、たとえばジャンプ、ランプ、ウォッブル、正または負のラムダ変化Δλ、ないしはこれらの任意の組み合わせによって行うことができる。このとき設定可能なラムダ変化Δλの値および/または種類および/または時間は、内燃機関の排ガス条件または動作条件に依存して、判定された勾配ないし判定された電圧変化ΔU
messの一義的かつ確実な評価を実施することができるように設定されていてよい。
【0021】
惰行補正を許容するシステムでは、判定された電圧オフセットが、2点ラムダプローブの測定された出力電圧の基準・電圧・ラムダ特性曲線との補正によって、内燃機関の惰行時燃料カットオフのときに妥当性検査されることが意図されていてよい。このことは特に、能動的なラムダ変化Δλそれ自体に公差が含まれている場合に好ましい。
【0022】
2点ラムダプローブの電圧オフセットが認識されたとき、電圧・ラムダ特性曲線の判定された電圧オフセットが全面的または部分的に補償され、および/または電圧・ラムダ特性曲線のラムダ領域に依存して電圧オフセットが補償されることが意図されていてよい。電圧・ラムダ特性曲線の電圧オフセットを全面的に補償する必要はないことが多い。修正された電圧・ラムダ特性曲線が基準・電圧・ラムダ特性曲線と十分に良く一致する程度に電圧オフセットが補償されるだけで十分であり得る。そのようなケースでは、実際の特性曲線変位は複数の重なり合った現象によって引き起こされるとしても、電圧・ラムダ特性曲線のいくつか少数の点で電圧オフセットを判定するだけで十分であり得る。
【0023】
本発明の特別に好ましい実施態様によると、電圧オフセットの推移からラムダに依存して電圧オフセットの原因が判定され、および/または電圧オフセットの原因を回避または低減するための措置が講じられることが意図されていてよい。たとえば、プローブがあまりに高温で作動しているために、2点ラムダプローブの電圧・ラムダ特性曲線が一定の値周辺のリッチのラムダ領域でいっそう強く低い出力電圧に向かって変位しているという事態が起こることがある。そのようなケースでは、プローブ加熱部の加熱出力を低減させ、それによって電圧オフセットを少なくとも減少させることができる。
【0024】
電圧オフセットを判定するために2点ラムダプローブの所定の出力電圧が能動的に調整され、または、内燃機関の希望される動作条件に基づいて所定の出力電圧が調整されたときに電圧オフセットの判定が実行されることによって、所定の出力電圧での、およびこれに伴って所定のラムダ領域での、電圧オフセットの判定を実現することができる。希望される出力電圧へ能動的に近づけるのが特に有意義なのは、内燃機関の以前の動作サイクルに基づくオフセット補償がまだ行われていない場合である。それに対して、過去の動作サイクルですでに電圧オフセットの補償が実行されており、それに応じてデータが存在しているとき、内燃機関の通常動作で希望される出力電圧がちょうど存在している場合には、あらためての補正を受動的に実行することができる。
【0025】
制御ユニットに関わる本発明の課題は、排ガスの設定可能なラムダ変化Δλを調整するように制御ユニットが設計されており、制御ユニットは定義されたラムダ変化Δλに対する反応としての2点ラムダプローブの電圧変化ΔU
messを判定するための測定手段を有しており、制御ユニットには2点ラムダプローブの基準・電圧・ラムダ特性曲線が保存されており、制御ユニットは設定可能なラムダ変化Δλの後に2点ラムダプローブの測定された電圧変化ΔU
messを同じラムダ変化Δλのときの基準・電圧・ラムダ特性曲線の基準・電圧変化ΔU
Refと比較するためのプログラムフローを有しており、制御ユニットは測定された電圧変化ΔU
messと基準・電圧変化ΔU
Refとの相違から基準・電圧・ラムダ特性曲線に対する2点ラムダプローブの対象となる電圧・ラムダ特性曲線の電圧オフセットを判定するためのプログラムフローを有していることによって解決される。この制御ユニットは、対象となるラムダ領域に依存して2点ラムダプローブの電圧オフセットを判定することを可能にする。それによって電圧オフセットを補償することができ、それにより、連続式のラムダコントロールのための2点ラムダプローブの使用が可能となる。
【0026】
次に、図面に示されている実施例を参照しながら、本発明について詳しく説明する。図面は次のものを示している:
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】基準・電圧・ラムダ特性曲線に対して一定の電圧オフセットを有している2点ラムダプローブの電圧・ラムダ特性曲線である。
【
図2】基準・電圧・ラムダ特性曲線に対してラムダに依存する電圧オフセットを有している2点ラムダプローブの第3の電圧・ラムダ特性曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2に対して一定の電圧オフセット16,17を有している2点ラムダプローブの電圧・ラムダ特性曲線10.1,10.3を示している。特性曲線10.1,10.2,10.3は、プローブ電圧の軸20に対して、およびラムダの軸21に対してプロットされている。第1の電圧・ラムダ特性曲線10.1は負の電圧オフセット17の分だけ、および第2の電圧・ラムダ特性曲線10.3は正の電圧オフセット17の分だけ、それぞれ基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2に対して変位している。図示しているラムダ領域は、ラムダ=1におけるマーキング12により、ラムダ<1であるリッチのラムダ領域11と、ラムダ>1であるリーンのラムダ領域13とに区分されている。2点ラムダプローブの第1の電圧値22を前提としたうえで、リッチのラムダ領域11において第1の電圧・ラムダ特性曲線10.1では第1の勾配三角形14.1が印加され、基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2では第2の勾配三角形14.2が印加され、第2の電圧・ラムダ特性曲線10.3では第3の勾配三角形14.3が印加される。2点ラムダプローブの第2の電圧値23を前提としたうえで、リーンのラムダ領域13において第1の電圧・ラムダ特性曲線10.1では第4の勾配三角形14.4が印加され、基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2では第5の勾配三角形14.5が印加され、第2の電圧・ラムダ特性曲線10.3では第6の勾配三角形14.6が印加される。
【0029】
基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2は、内燃機関の排ガス通路で排ガス組成が変化したときの、経年劣化していない健全な2点ラムダプローブの出力信号の推移に相当しており、ラムダ=1のときに最大の勾配を有している。高い出力電圧から低い出力電圧への飛躍は、比較的狭いラムダスロットの中で行われる。たとえば2点ラムダプローブの経年劣化により、出力電圧が電圧オフセット16,17の分だけ変位することがある。本実施例では、電圧オフセット16,17はラムダ領域全体にわたって等しくなっており、すなわち、リッチのラムダ領域11でもリーンのラムダ領域13でも等しい。第1の電圧・ラムダ特性曲線10.1は負の電圧オフセット17の場合に生じるものであり、第2の電圧・ラムダ特性曲線10.3は正の電圧オフセット16の場合に生じる。
【0030】
勾配三角形14.1,14.2,14.3,14.4,14.5,14.6は、すべての勾配三角形14.1,14.2,14.3,14.4,14.5,14.6について等しい大きさの所定のラムダ変化Δλのときに、プローブ電圧のそれぞれの電圧値22,23を前提としたうえで生じる電圧変化ΔUをそれぞれ示しており、すなわち、それぞれの電圧値22,23でのそれぞれの電圧・ラムダ特性曲線10.1,10.3ないし基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2の勾配を表している。本発明による方法は、基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2の場合には2点ラムダプローブの出力電圧Uとラムダλとの間だけでなく、出力電圧Uと特性曲線ΔU/Δλの勾配との間にも、一義的な関連性があることを利用する。電圧オフセット16,17が存在していれば、出力電圧と特性曲線の勾配との間の対応関係は成立しない。
【0031】
正の電圧オフセット16の場合、所定のラムダ変化Δλとプローブ電圧の特定の電圧値22,23のとき、リーンのラムダ領域13では基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2の場合よりも小さい電圧変化ΔUが生じ、リッチのラムダ領域11ではこれよりも大きい電圧変化ΔUが生じる。
【0032】
負の電圧オフセット17の場合、所定のラムダ変化Δλとプローブ電圧の特定の電圧値22,23のとき、リーンのラムダ領域13では基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2の場合よりも大きい電圧変化ΔUが生じ、リッチのラムダ領域11ではこれよりも小さい電圧変化ΔUが生じる。
【0033】
基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2について予想される電圧変化ΔU
Refに対する、測定された電圧変化ΔU
messの相違から、電圧オフセット16,17の必要な補償を表す目安が判定され、完全に補償されたときには基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2と合同になる、修正された電圧・ラムダ特性曲線が算定される。それにより、経年劣化した2点ラムダプローブでも、プローブ電圧とラムダの間に一義的な関連性を得ることが可能である。それにより、広帯域ラムダプローブと比較して低コストな2点ラムダプローブを用いたときでも、限定されたラムダ領域で、触媒装置の手前での連続的なラムダコントロールを実行することができる。
【0034】
図2は、
図1に示す基準・電圧・ラムダ特性曲線10.3に対してラムダに依存する電圧オフセットを有する、2点ラムダプローブの第3の電圧・ラムダ特性曲線10.4を示している。図面では、
図1と同じ符号を導入して使用している。2点ラムダプローブの第3の電圧値24では、基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2に第7の勾配三角形15.1が付属しており、第3の電圧・ラムダ特性曲線10.4は第8の勾配三角形15.2が付属している。2点ラムダプローブの第4の電圧値25では、基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2に第9の勾配三角形15.3が付属しており、第3の電圧・ラムダ特性曲線10.4に第10の勾配三角形15.4が付属している。
【0035】
図1に関して説明したとおり、勾配三角形15.1,15.2,15.3,15.4は、所定のラムダ変化Δλのときの第3の電圧・ラムダ特性曲線10.4ないし基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2における電圧変化を表しており、すなわち、それぞれの特性曲線10.2,10.4の勾配を表している。
【0036】
図示した実施例では、第3の電圧・ラムダ特性曲線10.4は全ラムダ領域で、高い電圧へと向かう一定の値だけ変位している。この第1の現象は、たとえば被ポンピング酸素基準を有する2点ラムダプローブで製造公差に基づいて発生することがある。
【0037】
第3の電圧・ラムダ特性曲線10.4は、追加的にリッチのラムダ領域11で、低いほうの電圧に向かって一定の値だけ変位している。この第2の現象は、2点ラムダプローブがあまりに高温で作動しているときに発生することがある。
【0038】
リッチのラムダ領域11では、第1の現象が第2の現象よりも強く現れており、その結果、合算をすれば、第3の電圧・ラムダ特性曲線10.4はリッチのラムダ領域11でも高い電圧のほうに向かって変位しているが、これはリーンのラムダ領域13に比べると小さい。
【0039】
第1の方法ステップで、2点ラムダプローブの出力電圧が第4の電圧値25に合わせて調節される。所定のラムダ変化Δλが行われると、第10の勾配三角形15.4に準じて、基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2をベースとして予想される電圧変化ΔU
Refよりも小さい、出力電圧の電圧変化ΔU
messが判定される。この差異を基にして、ラムダ領域全体について必要な電圧オフセットの補償が行われ、第4の電圧・ラムダ特性曲線10.4が相応に修正される。
【0040】
第2の方法ステップで、2点ラムダプローブの出力電圧が第3の電圧値24に合わせて調節される。所定のラムダ変化Δλが行われると、第8の勾配三角形15.2に準じて、基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2をベースとして予想される電圧変化ΔU
Refよりも大きい、出力電圧の電圧変化ΔU
messが生じる。この差異を基にして、リッチのラムダ領域11で、リッチのラムダ領域11について必要な残りの電圧オフセットの補償が実行される。こうして得られた電圧・ラムダ特性曲線は、ラムダ領域全体で基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2に合わせて適合化されている。
【0041】
電圧オフセットの補償の別案として、ラムダに依存する電圧オフセットの推移から電圧オフセットの原因を認識し、これを終了させるか、または少なくとも低減することができる。
図2について示した実施例では、たとえば2点ラムダプローブの電気加熱部の出力を削減して、第2の現象を減らすことができる。
【0042】
そのつど設定されるべき2点ラムダプローブの出力電圧の電圧値22,23,24,25で、すなわち所定のラムダ領域で、電圧・ラムダ特性曲線10.1,10.3,10.4の勾配を基準・電圧・ラムダ特性曲線10.2の勾配と比較すれば、存在している電圧オフセットの一義的な判定を行うことができる。このとき電圧オフセットは、異なるラムダ領域について別々に判定し、それに応じて修正することができる。判定されたオフセット補償は、電圧・ラムダ特性曲線10.1,10.3,10.4の同一の点または別の点での測定を反復することで妥当性検査することができる。測定結果の平均化やフィルタリングによって、補償を改善することができる。
【0043】
惰行補正を許容するシステムでは、判定された電圧オフセットの補償を、惰行補正によって妥当性検査することもできる。
【0044】
自動車で適用する場合、先行する走行サイクルのときに判定されたオフセット補償を保存しておき、次回の走行サイクルに引き継ぐのが好ましい。それにより、次回の走行サイクルでは修正された特性曲線をただちに利用することができる。前回の走行サイクルで判定されたオフセット補償を、現在の走行サイクルでのオフセット測定の妥当性検査のために援用することができる。
【0045】
電圧値22,23,24,25は能動的に調整することができる。このことが好ましいのは、以前の走行サイクルに基づくオフセット補償がまだ存在していない場合である。すでにオフセット補償が存在しているとき、内燃機関の通常動作で必要な電圧値22,23,24,25が存在する場合には、補正を受動的に行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
10.1 電圧・ラムダ特性曲線
10.2 基準・電圧・ラムダ特性曲線
10.3 電圧・ラムダ特性曲線
10.4 電圧・ラムダ特性曲線
11 ラムダ領域
13 ラムダ領域
16 電圧オフセット
17 電圧オフセット