【実施例】
【0018】
実施例に係る車両のサブフレーム15について説明する。
図1、
図2に示すように、車体前部構造体10は、車体前後方向に向けて配置された左右のサイドフレーム11,12と、左右のサイドフレーム11,12の下方に取り付けられたサブフレーム15と、サブフレーム15の左右の端部に設けられた左右のサスペンションアーム16,17と、左右のサスペンションアーム16,17に連結された左右のサスペンション21,22とを備えている。
【0019】
さらに、車体前部構造体10は、サブフレーム15の上部15aに取り付けられたステアリングギヤボックス24と、サブフレーム15およびパワープラント25を連結するトルクロッド26とを備えている。
ステアリングギヤボックス24から延出されたステアリングシャフト28にステアリングホイール29が取り付けられている。
パワープラント25は、一例として、エンジンとトランスミッションとが一体に形成され、車両の駆動源となるエンジン/トランスミッションユニットである。このパワープラント25は、左右のサイドフレーム11,12間に横向きに配置されている。
【0020】
図3、
図4に示すように、サブフレーム15は、中子92(
図9参照)を用いてアルミニウム合金により一体に高圧鋳造で肉厚寸法T1(
図5参照)に成形されている。
このサブフレーム15は、中子92で中空状に形成された本体部32と、本体部32の左端部32aに設けられた左車体取付部34および左サスペンション支持部35と、本体部32の右端部32bに設けられた右車体取付部36および右サスペンション支持部37と、本体部32の前中央部に設けられた中央連結部38とを備えている。
【0021】
左車体取付部34は、本体部32の左端部32aのうち前部32cに設けられた左前取付部34aと、本体部32の左端部32aのうち後部32dに設けられた左後取付部34bとを含む。
右車体取付部36は、左車体取付部34と同様に、本体部32の右端部32bのうち前部32eに設けられた右前取付部36aと、本体部32の右端部32bのうち後部32fに設けられた右後取付部36bとを含む。
【0022】
左前取付部34aおよび左後取付部34bが左サイドフレーム11(
図1参照)にボルトで取り付けられる。さらに、右前取付部36aおよび右後取付部36bが右サイドフレーム12(
図1参照)にボルトで取り付けられる。
これにより、サブフレーム15が左右のサイドフレーム11,12に取り付けられる。
【0023】
図1、
図2に戻って、左サスペンション支持部35は、本体部32の左端部32aのうち前部32cに設けられた左前連結部81と、本体部32の左端部32aのうち後部32dに設けられた左後連結部82とを含む。
【0024】
左前連結部81は、本体部32の前部32cで、かつ、本体部32の外周部32gから車両前方に張り出すように設けられている。この左前連結部81は、左前取付部34aより車両前方に配置されている。
左後連結部82は、本体部32の後部32dで、かつ、本体部32の外周部32gから車幅方向外方(左側方向)に張り出すように設けられている。この左後連結部82は、左後取付部34b(
図4も参照)より車幅方向内側に設けられることにより、左後取付部34bおよび後部32d間に介在されている。
【0025】
左前連結部81に左サスペンションアーム16の前取付部16aが左前支持ピン84を介して連結されている。また、左後連結部82に左サスペンションアーム16の後取付部16bが左後支持ピンを介して連結されている。
【0026】
左サスペンションアーム16に左サスペンション21の下端部21aが連結され、左ダンパハウジング13に左サスペンション21の上端部21bが連結されている。左ダンパハウジング13は左サイドフレーム11に一体に形成されている。
よって、左サスペンション21が左サスペンションアーム16に支持される。これにより、左サスペンション21が左サスペンションアーム16を介して左サスペンション支持部35に支持される。
【0027】
右サスペンション支持部37は、左サスペンション支持部35と同様に、本体部32の右端部32bのうち前部32eに設けられた右前連結部87と、本体部32の右端部32bのうち後部32fに設けられた右後連結部88とを含む。
【0028】
右前連結部87は、本体部32の前部32eで、かつ、本体部32の外周部32gから車両前方に張り出すように設けられている。この右前連結部87は、右前取付部36aより車両前方に配置されている。
右後連結部88は、本体部32の後部32fで、かつ、本体部32の外周部32gから車幅方向外方(右側方向)に張り出すように設けられている。この右後連結部88は、右後取付部36b(
図4も参照)より車幅方向内側に設けられることにより、右後取付部36bおよび後部32f間に介在されている。
右前連結部87に右サスペンションアーム17の前取付部17aが右前支持ピン91を介して連結されている。また、右後連結部88に右サスペンションアーム17の後取付部17bが右後支持ピンを介して連結されている。
【0029】
右サスペンションアーム17は左サスペンションアーム16と略左右対称の部材である。
右サスペンションアーム17に右サスペンション22の下端部22aが連結され、右ダンパハウジング14に右サスペンション22の上端部22bが連結されている。右ダンパハウジング14は右サイドフレーム12に一体に形成されている。
よって、右サスペンション22が右サスペンションアーム17に支持される。これにより、右サスペンション22が右サスペンションアーム17を介して右サスペンション支持部37に支持される。
【0030】
このように、左サスペンション支持部35に左サスペンションアーム16を介して左サスペンション21が連結され、右サスペンション支持部37に右サスペンションアーム17を介して右サスペンション22が連結される。
すなわち、左サスペンション支持部35に左サスペンションアーム16を経て比較的大きな荷重が入力し、右サスペンション支持部37に右サスペンションアーム17を経て比較的大きな荷重が入力する。
よって、左サスペンション支持部35(具体的には、左前連結部81および左後連結部82)や、右サスペンション支持部37(具体的には、右前連結部87および右後連結部88)の剛性・強度を確保することが好ましい。
【0031】
ここで、
図4に示すように、左前連結部81および右前連結部87は、本体部32の前側の外周部32gから車両前方に張り出すように設けられている。
ところで、サブフレーム15を高圧鋳造で成形する際に、サブフレーム15の後部15b側からアルミニウム合金の溶湯を注入する。よって、左前連結部81および右前連結部87は、溶湯の注入用流路から比較的離れた位置に配置されている。
そこで、サブフレーム15に左右の縦膨出部66,67および横膨出部65を形成して、左前連結部81および右前連結部87に溶湯を円滑に導くようにした。
左右の縦膨出部66,67および横膨出部65については
図4〜
図7で詳しく説明する。
【0032】
一方、左後連結部82および右後連結部88は、本体部32の後側の外周部32gの近傍に設けられている。よって、左後連結部82および右後連結部88は、溶湯の注入用流路に近い位置に配置されている。このため、左後連結部82および右後連結部88に溶湯を円滑に導くことが可能である。
【0033】
このように、左右の前連結部81,87および左右の後連結部82,88に溶湯を円滑に導くことにより、左右の前連結部81,87および左右の後連結部82,88の剛性・強度を確保することが可能になる。すなわち、左右のサスペンション支持部35,37の剛性・強度を確保することが可能になる。
【0034】
再度、
図1、
図2に戻って、本体部32の車幅方向中央部32hで、かつ、本体部32の前半部に中央連結部38が設けられている。
中央連結部38にトルクロッド26の基端部26aがボルト51、ナット52で連結されている。トルクロッド26の先端部26bがパワープラント25にボルト53で連結されている。これにより、パワープラント25がトルクロッド26で支持されている。
【0035】
図5に示すように、本体部32は、上方に臨む上部41と、下方に臨む下部42と、上部41および下部42の各前端部41a,42aを連結する前壁43と、上部41および下部42の各後端部41b,42bを連結する後壁44を有する。この本体部32は、上部41、下部42、前壁43および後壁44で中空部45が形成されている。
中空部45は、サブフレーム15を鋳造する際に中子92(
図9参照)で形成される。
さらに、上部41および下部42は、上下方向に所定間隔をおいて設けられている。
【0036】
本体部32の上部41は、左サスペンション支持部35(左前連結部81、左後連結部82(
図3参照))より車幅方向内側近傍の部位41cにおいて、上後平坦部55、上傾斜部56および上前平坦部57を含む。
【0037】
上後平坦部55は、後端部41bから車両前後方向の中央部まで車両前方に向けて略水平に張り出されている。また、上傾斜部56は、上後平坦部55の前端部55aから車両前方に向けて上り勾配に張り出されている。
さらに、上前平坦部57は、上傾斜部56の前端56aから前端部41aまで車両前方に向けて略水平に張り出されている。
【0038】
よって、上後平坦部55、上傾斜部56および上前平坦部57は、なだらかな形状、すなわち凹凸を含まない形状に形成されている。
これにより、本体部32の上部41は、車幅方向内側近傍の部位41cにおいて、後端部41bから前端部41aまでなだらかな形状に形成されている。
上部41を後端部41bから前端部41aまでなだらかな形状に形成することにより、サブフレーム15を高圧鋳造で成形する際に、後端部41bから前端部41aまでアルミニウム合金の溶湯を円滑に導くことができる。
【0039】
図5、
図6に示すように、上部41の内面41dに複数の上横リブ61および複数の上縦リブ62が中空部45に向けて突出されている。上横リブ61は車幅方向に向けて延出され、上縦リブ62は車両前後方向に向けて延出されている。
ここで、上部41は、後端部41bから前端部41aまで溶湯を円滑に導くように後端部41bから前端部41aまでなだらかな形状に形成されている。
【0040】
このため、複数の上横リブ61および複数の上縦リブ62を、溶湯の湯流れ方向に合わせなくても、上部41の後端部41bから前端部41aまで溶湯を円滑に導くことができる。
よって、上部41の剛性・強度を確保するように上横リブ61および上縦リブ62の成形方向(向き)を決めることができる。これにより、複数の上横リブ61および複数の上縦リブ62で上部41が良好に補強されている。
【0041】
図4、
図7に示すように、本体部32の下部42は、本体部32の前側の外周部32gに沿って車幅方向に延出された横膨出部65と、横膨出部65の左端部65aから本体部32の左端部32aに沿って設けられた左縦膨出部66と、横膨出部65の右端部65bから本体部32の右端部32bに沿って設けられた右縦膨出部67と、横膨出部65および左右の縦膨出部66,67で囲まれた凹部68とを含む。
左縦膨出部66および右縦膨出部67は左右対称の部位であり、以下、左右の縦膨出部66,67の各構成部に同じ符号を付して、右縦膨出部67の説明を省略する。
【0042】
横膨出部65は、本体部32の前側の外周部32gに沿って左前連結部81および右前連結部87に向けて延出されている。この横膨出部65は、本体部32の前側の外周部32gに沿って延出された横底部71と、横底部71の後端部71aに沿って形成された横壁部72とを有する。
【0043】
横底部71は、凹部68より下方に配置され、本体部32の前側の外周部32gに沿って水平に延出された帯状の平坦部である。横底部71の前端部(すなわち、下部42の前端部)42aに前壁43(
図5も参照)が一体に形成されている。
横壁部72は、横底部71の後端部71aにおいて後中央部71bから、凹部68の前端部68aまで車両後方に向けて傾斜状に立ち上げられている。後中央部71bは、横膨出部65の左右の端部65a,65b間に設けられている。
すなわち、横膨出部65は、凹部68に対して下方に膨出されている(
図5も参照)。
【0044】
前壁43の左端部(すなわち、左端部32aの前部)32cに左前連結部81が一体に設けられている(
図5も参照)。この左前連結部81は、横膨出部65の左端部65aより車両前方に配置されている。
また、前壁43の右端部(すなわち、右端部32bの前部)32eに右前連結部87が一体に設けられている。この右前連結部87は、横膨出部65の右端部65bより車両前方に配置されている。
すなわち、左前連結部81および右前連結部87が横膨出部65に前壁43を介して横膨出部65で連結されている。
【0045】
左縦膨出部66は、横膨出部65の左端部65aおよび左後連結部82間において、本体部32の左端部32aに沿って設けられている。この左縦膨出部66は、後端部66aが凹部68の左後端部(すなわち、本体部32の後部32d側)に連結され、前端部66bが横膨出部65の左端部65aに連結されている。
具体的には、左縦膨出部66は、本体部32の左端部32aに沿って延出された縦底部74と、縦底部74の内端部74aに沿って形成された縦壁部75とを有する。
【0046】
図5に示すように、縦底部74は、左縦膨出部66の後端部66aから前端部66bまで車体前方に向けて傾斜角θ1(
図7も参照)の下り勾配に傾斜されている。
さらに、縦底部74は、
図4、
図7に示すように、後端部66aから前端部66bに向けて車幅方向(本体部32の左右方向)外側および車幅方向内側にそれぞれ拡幅されている。すなわち、縦底部74は、後端部66aから前端部66bに向けて幅寸法W1が大きくなるように略扇状に形成されている。
縦底部74の外端部74bに左側壁47(
図6も参照)が一体に形成されている。
【0047】
縦壁部75は、縦底部74の内端部74aから凹部68の左端部68bまで車幅方向内側に向けて傾斜状に立ち上げられている。この縦壁部75は、前端部75aが横壁部72の左端部に連結されている。
すなわち、左縦膨出部66は、
図5に示すように、後端部66aから前端部66bに向けて、凹部68に対して徐々に下方に膨出されている。
【0048】
このように、横膨出部65の左端部65aに左縦膨出部66の前端部66bを連結することにより、本体部32の後部32d側から左前連結部81までの間を縦膨出部66および横膨出部65でなだらかに連結できる。よって、本体部32の後部32d側から左前連結部81までの間をなだらかな形状、すなわち凹凸を含まない形状に形成できるので、溶湯の流動性を高めることができる。
同様に、
図4に示すように、本体部32の後部32f側から右前連結部87までの間をなだらかな形状、すなわち凹凸を含まない形状に形成できるので、溶湯の流動性を高めることができる。
これにより、
図4、
図7に示すサブフレーム15を高圧鋳造で成形する際に、左前連結部81および右前連結部87が、溶湯の注入用流路から比較的離れていても、左前連結部81および右前連結部87に溶湯を円滑に導くことができる。
【0049】
さらに、縦底部74が左縦膨出部66の後端部66aから前端部66bに向けて車幅方向外側および車幅方向内側に拡幅されている。
よって、サブフレーム15を高圧鋳造する際に、サブフレーム15の後部15bから注入した溶湯を、車幅方向外側や車幅方向内側に円滑に導くことができる。すなわち、サブフレーム15の後部15bから注入した溶湯を、左前連結部81側に円滑に導くことができる。
同様に、サブフレーム15の後部15bから注入した溶湯を、右前連結部87側に円滑に導くことができる。
このように、左前連結部81および右前連結部87側に溶湯を円滑に導くことにより、左前連結部81および右前連結部87の剛性・強度を良好に確保でき、サブフレーム15の剛性・強度を良好に確保できる。これにより、サブフレーム15の肉厚寸法T1(
図5参照)を大きく形成する必要がなく、サブフレーム15の重量増を抑えることができる。
【0050】
ここで、
図6、
図8に示すように、下部42の内面42cに複数の下横リブ63、複数の下縦リブ64および複数の下傾斜リブ69が中空部45に向けて突出されている。下横リブ63は車幅方向に向けて延出され、下縦リブ64は車両前後方向に向けて延出されている。さらに、下傾斜リブ69は、中央連結部38から本体部32の後方で、かつ、車幅方向外側に向けて傾斜状に延出されている。
ここで、下部42は、後端部42bから前端部42aまで溶湯を円滑に導くように後端部42bから前端部42aまでなだらかな形状に形成されている。
【0051】
このため、複数の下横リブ63、複数の下縦リブ64および複数の下傾斜リブ69を、溶湯の湯流れ方向に合わせなくても、下部42の後端部42bから前端部42aまで溶湯を円滑に導くことができる。
よって、下部42の剛性・強度を確保するように、下横リブ63、下縦リブ64および下傾斜リブ69の成形方向を決め、各リブ63,64,69の向きを決めることができる。これにより、下横リブ63、下縦リブ64および下傾斜リブ69で下部42が良好に補強されている。
【0052】
このように、下横リブ63、下縦リブ64および下傾斜リブ69で下部42を補強し、かつ、複数の上横リブ61および複数の上縦リブ62で上部41を補強することにより、サブフレーム15の剛性・強度を一層良好に確保できる。
これにより、サブフレーム15の肉厚寸法T1(
図5参照)を大きく形成することを一層良好に抑えることができ、重量増をさらに好適に抑制できる。
【0053】
また、左縦膨出部66を後端部66aから前端部66bに向けて車幅方向外側に拡幅するとともに車幅方向内側に拡幅することにより、左縦膨出部66の前端部66bをある程度大きな形状に形成できる(
図7も参照)。左縦膨出部66の前端部66bを大きく形成することにより、前端部66bに左前連結部81を直接設けることができる。
これにより、左縦膨出部66の前端部66bに左前連結部81を設けるための部位を形成する必要がなく、サブフレーム15を簡素な構成とすることができる。
【0054】
図4に示すように、右縦膨出部67は、左縦膨出部66と左右対称の部材であり、横膨出部65の右端部65bおよび右後連結部88間において、本体部32の右端部32bに沿って設けられている。
このように、横膨出部65が本体部32の外周部32g前側に沿って設けられ、左縦膨出部66が本体部32の左端部32aに沿って設けられ、右縦膨出部67が本体部32の右端部32bに沿って設けられている。横膨出部65、左縦膨出部66および右縦膨出部67で底面視略コ字状に形成されている。
【0055】
横膨出部65、左縦膨出部66および右縦膨出部67で凹部68が囲まれている。
凹部68は、前端部68a、左端部68b、右端部68cおよび後端部68dで略矩形状に形成されている。
この凹部68は、横膨出部65、左縦膨出部66および右縦膨出部67に対して上方に向けて凹状に形成されている(
図5も参照)。
よって、凹部68は、横膨出部65、左縦膨出部66(
図6も参照)および右縦膨出部67に対して上方に向けて隆起されている。すなわち、凹部68は、中空部45(
図6参照)側に向けて隆起されている。
【0056】
つぎに、サブフレーム15を高圧鋳造で成形する例を
図4、
図5、
図7および
図9〜
図12に基づいて説明する。
図9に示すように、鋳造型91を型開きした状態で中子92(想像線で示す)を配置し、中子92を配置した後、鋳造型91を型締めする。鋳造型91を型締めすることにより鋳造型91および中子92でキャビティ93が形成される。
キャビティ93は、複数の流路(流路101のみを図示する)に連通されている。
【0057】
鋳造型91を型締めした状態で、アルミニウム合金の溶湯を複数の流路に導く。
以下、複数の流路のうち、キャビティ93の左側に連通する流路101について説明する。
流路101に導かれた溶湯がキャビティ93の左側に矢印Aの如く導かれる。
【0058】
図10に示すように、キャビティ93まで導かれた溶湯の一部が上キャビティ94に矢印Bの如く導かれる。
ここで、
図5に示すように、本体部32の上部41は、上後平坦部55、上傾斜部56および上前平坦部57でなだらかな形状に形成されている。よって、
図10に示すように、上キャビティ94は、後端部94aから前端部94bまでなだらかな形状、すなわち凹凸を含まない形状に形成され、溶湯の流動性を高めることができる。
【0059】
これにより、上キャビティ94に導かれた溶湯が、上キャビティ94に沿って矢印Cの如く円滑に導かれる。溶湯が上キャビティ94に沿って円滑に導かれることにより、上キャビティ94を経た溶湯を連結キャビティ95および前壁キャビティ96に矢印Dの如く良好に充填できる。
連結キャビティ95および前壁キャビティ96に溶湯を良好に充填することにより、
図4、
図5に示す左前連結部81および前壁43(特に、前壁43の左端部)の剛性・強度を確保できる。前壁43の左端部は、本体部32の左端部32aのうち前部32cで形成される。
【0060】
一方、
図10に示すように、キャビティ93まで導かれた溶湯の残りが下縦キャビティ97に矢印Eの如く導かれる。
ここで、
図5に示すように、本体部32の下部42は、後端部42bから前端部42aまでの間が左縦膨出部66および横膨出部65の左端部65a(
図7参照)でなだらかな形状に形成されている。前端部42aの車両前方側に隣接して左前連結部81が設けられている。すなわち、本体部32の下部42は、後端部42bから左前連結部81までの間がなだらかな形状に形成されている。
【0061】
よって、
図10に示すように、下縦キャビティ97は、後端部97aから前端部97bまでなだらかな形状、すなわち、凹凸を含まない形状に形成されている。これにより、下縦キャビティ97に沿って車両前方側に向かう流動性を高めることができる。
下縦キャビティ97の流動性を高めることにより、下縦キャビティ97の後端部97aに導かれた溶湯が下縦キャビティ97に沿って前端部97bまで矢印F(
図11も参照)の如く円滑に導かれる。
【0062】
図11に示すように、下縦キャビティ97の前端部97bは、横膨出部65(
図7参照)に相当する下横キャビティ98になだらかに連結されている。
よって、下縦キャビティ97の前端部97bまで導かれた溶湯が、下横キャビティ98に沿って矢印Gの如く円滑に導かれる。
【0063】
加えて、
図7に示すように、左縦膨出部66の縦底部74が後端部66aから前端部66bに向けて車幅方向外側に拡幅されている。よって、下縦キャビティ97は後端部97a(
図10参照)から前端部97bに向けて車幅方向外側に拡幅されている。
また、
図9に示すように、キャビティ93の左側に連通する流路101はキャビティ93に向けて放射状に延出されている。よって、下縦キャビティ97の外側壁97c(
図11も参照)は左側の流路101の略延長線上に沿って形成される。
これにより、左側の流路101に導かれた溶湯は、
図11に示す下縦キャビティ97を経て前端部97bまで車幅方向外側や車幅方向内側に向けて矢印F(特に、外側の矢印F)の如く一層円滑に導かれる。
【0064】
このように、
図4に示すサブフレーム15を高圧鋳造する際に、サブフレーム15の後部15bから注入した溶湯を、左前連結部81側に円滑に導くことができる。
左前連結部81側に溶湯を円滑に導くことにより、左前連結部81の剛性・強度を良好に確保できる。すなわち、サブフレーム15の剛性・強度を良好に確保できる。これにより、サブフレーム15の肉厚寸法T1(
図5参照)を大きく形成する必要がなく、サブフレーム15の重量増を抑えることができる。
【0065】
ここで、
図11に示す下縦キャビティ97の前端部97bは、サブフレーム15の左前連結部81(
図5参照)に相当する部位である。
これにより、溶湯を下縦キャビティ97の前端部97bまで円滑に導くことにより、左前連結部81の剛性・強度を確保でき、サブフレーム15の剛性・強度を確保できる。
【0066】
以上説明したように、
図5に示す下部42をなだらかな形状に形成して左前連結部81(サブフレーム15)の剛性・強度を確保することにより、サブフレーム15の肉厚寸法T1を大きくしてサブフレーム15の剛性・強度を確保する必要がない。
これにより、サブフレーム15の肉厚寸法T1を適正な寸法に抑えることが可能になり、サブフレーム15の重量増を抑えることができる。
【0067】
図4、
図12に示すように、左後連結部82に相当するキャビティ93aは、左側の流路102から比較的近い位置に配置されている。
このため、左側の流路102で溶湯をキャビティ93aに矢印Hの如く円滑に導くことが可能になり、左後連結部82の剛性・強度を確保できる。
【0068】
よって、サブフレーム15を鋳造で成形する際に、左前連結部81および左後連結部82の剛性・強度を確保できる。
これにより、
図2に示すように、左前連結部81および左後連結部82に左サスペンションアーム16から入力する比較的大きな荷重を、左前連結部81および左後連結部82で良好に支えることができ、サブフレーム15の信頼性を高めることができる。
【0069】
なお、本発明に係る車両のサブフレームは、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、アルミニウム合金製のサブフレーム15について説明したが、これに限らないで、本発明は他の金属に適用することも可能である。
【0070】
また、前記実施例では、アルミニウム合金製のサブフレーム15を高圧鋳造する例について説明したが、これに限らないで、本発明を他の鋳造に適用することも可能である。
【0071】
さらに、前記実施例では、左右の縦膨出部66,67を後端部66aから前端部66bに向けて車幅方向外側および車幅方向内側にそれぞれ拡幅させた例について説明したが、これに限定するものではない。
例えば、左右の縦膨出部66,67を後端部66aから前端部66bに向けて車幅方向外側のみに拡幅させることも可能である。左右の縦膨出部66,67を車幅方向外側のみに拡幅させることにより実施例と同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、前記実施例で示したサブフレーム、左右のサスペンションアーム、左右のサスペンション、本体部、左右のサスペンション支持部、上部、下部、横膨出部、左縦膨出部、右縦膨出部、凹部、左右の前連結部、左右の後連結部および中子などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。