(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体前部で上下方向に延びるように左右一対設けられるとともに、車幅内側のフロントピラーインナと、該フロントピラーインナの車外側面に接合されるフロントピラースティフナと、を有するフロントピラーと、
前記フロントピラーの車外側面に接合されるアウタパネルと、
前記フロントピラーの間で車幅方向に延びるウインドシールドロアと、
前記フロントピラーから前方に延びて当該フロントピラーの閉断面の一部を構成するサイドメンバと、を備える車体前部構造において、
前記ウインドシールドロアは、車幅外側端部にシールドロアフランジを備え、
前記フロントピラーインナは、前端部に形成されたインナ前フランジを備え、
前記サイドメンバは、前記シールドロアフランジと前記インナ前フランジと共にスポット溶接されて第1溶接部を構成する後端部と、該後端部から前方に延びる一般部と、を備え、
前記フロントピラースティフナは、前記第1溶接部よりも前方側のスティフナ前フランジを備え、
前記アウタパネルは前記第1溶接部よりも前方側のアウタ前フランジを備え、
前記第1溶接部よりも前方の位置で前記サイドメンバの一般部と、前記スティフナ前フランジと、前記アウタ前フランジとをスポット溶接した第2溶接部を備えることを特徴とする車体前部構造。
前記フロントピラースティフナは、車幅方向に対向するスティフナ側壁と、該スティフナ側壁の前端から車幅内側に延びるスティフナ前壁と、該スティフナ前壁から前方側に延びる前記スティフナ前フランジと、を有し、
前記アウタパネルは、車幅方向に対向するアウタ側壁と、該アウタ側壁の前端から車幅内側に延びるアウタ前壁と、該アウタ前壁から前方側に延びる前記アウタ前フランジと、前記アウタ側壁及び前記アウタ前壁の一部を切り欠いて前記スティフナ側壁を露出させるアウタ切欠き部と、を有し、
前記アウタ切欠き部によって露出される前記スティフナ側壁の露出部に後端が接合されるとともに、前記サイドメンバに沿って前方に延びるアッパメンバを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車体前部構造。
車体前部で上下方向に延びるように左右一対設けられるとともに、車幅内側のフロントピラーインナと、該フロントピラーインナの車外側面に接合されるフロントピラースティ
フナと、を有するフロントピラーと、
前記フロントピラーの車外側面に接合されるアウタパネルと、
前記フロントピラーの間で車幅方向に延びるウインドシールドロアと、
前記フロントピラーから前方に延びて当該フロントピラーの閉断面の一部を構成するサイドメンバと、を備える車体前部構造において、
前記ウインドシールドロアは、車幅外側端部にシールドロアフランジを備え、
前記フロントピラーインナは、前端部に形成されたインナ前フランジを備え、
前記シールドロアフランジと、前記インナ前フランジと、前記サイドメンバの後端部とをスポット溶接して第1溶接部を構成する第1溶接工程と、
前記フロントピラースティフナは、前記第1溶接部よりも前方側のスティフナ前フランジを備え、
前記アウタパネルは前記第1溶接部よりも前方側のアウタ前フランジを備え、
前記第1溶接部よりも前方の位置で前記サイドメンバの一般部と、前記スティフナ前フランジと、前記アウタ前フランジとをスポット溶接して第2溶接部を構成する第2溶接工程と、により組み付けられることを特徴とする車体の組付け方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カウル補強部とフロントピラーインナパネルとを連結するブラケットとを備える従来の構造では、下記の課題があった。
【0005】
(1)カウルとカウルリインフォースメントの車幅外側端部が、フロントピラーの閉断面
に対して車体前方側にオフセットした位置で接合されることから、カウルとフロントピラーとの間での荷重伝達効率が悪い。
【0006】
(2)カウルとフロントピラーとの間での荷重伝達効率を向上するため、フロントピラーと車幅方向にラップするカウル補強部を設け、このカウル補強部とフロントピラーインナパネルとをブラケットで連結している。このため、部品点数が増加することにより車体重量が増加する。
【0007】
(3)また、カウル補強部及びブラケットにより他の部品のレイアウト自由度が低下する。特にカウルの後方のインストルメントパネルに内蔵される部品への影響が大きい。
【0008】
(4)さらに、ブラケットは、フロントピラーとの間の荷重伝達効率両を向上するために、フロントピラー断面内と車幅方向でラップするように端部が設けられていることから、スポット溶接することができないためボルト締結されている。このため、更なる部品点数の増加と、組付け作業の煩雑化という課題があった。
【0009】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、重量増加の抑制、レイアウト自由度の低下を抑制しつつ、車体剛性及び強度を向上させることが可能な車体前部構造及び車体の組付け方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、車体前部で上下方向に延びるように左右一対設けられるとともに、車幅内側のフロントピラーインナと、該フロントピラーインナの車外側面に接合されるフロントピラースティフナと、を有するフロントピラーと、前記フロントピラーの車外側面に接合されるアウタパネルと、前記フロントピラーの間で車幅方向に延びるウインドシールドロアと、前記フロントピラーから前方に延びて当該フロントピラーの閉断面の一部を構成するサイドメンバと、を備える車体前部構造において、前記ウインドシールドロアは、車幅外側端部にシールドロアフランジを備え、前記フロントピラーインナは、前端部に形成されたインナ前フランジを備え、前記サイドメンバは、前記シールドロアフランジと前記インナ前フランジと共にスポット溶接されて第1溶接部を構成する後端部と、該後端部から前方に延びる一般部と、を備え、前記フロントピラースティフナは、前記第1溶接部よりも前方側のスティフナ前フランジを備え、前記アウタパネルは前記第1溶接部よりも前方側のアウタ前フランジを備え、前記第1溶接部よりも前方の位置で前記サイドメンバの一般部と、前記スティフナ前フランジと、前記アウタ前フランジとをスポット溶接した第2溶接部を備えることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、フロントピラーとウインドシールドロアの取付部付近においてフロントピラーの閉断面の一部をサイドメンバで構成することで、ウインドシールドロアのシールドロアフランジが、フロントピラースティフナのスティフナ前フランジよりも後方の位置でサイドメンバの後端部とインナピラーのインナ前フランジにスポット溶接される。その結果、ウインドシールドロアのシールドロアフランジがフロントピラーの閉断面内に向けて接合されることとなる。これにより、他の補強部材等を設けなくとも、ウインドシールドロアとフロントピラーとの間の荷重伝達効率を向上することができる。よって、重量増加の抑制、レイアウト自由度の低下を抑制しつつ、車体剛性及び強度を向上させることができる。
【0012】
また、第1及び第2溶接部を共にスポット溶接しているため、ボルト締結に対して部品点数の削減と組付け工程の簡略化を図ることができる。
【0013】
さらには、フロントピラーインナのインナ前フランジが溶接される第1溶接部よりも前方の位置でサイドメンバの一般部と、スティフナ前フランジと、アウタ前フランジとをスポット溶接して、第2溶接部を形成することができる。また、インナ前フランジ、スティフナ前フランジ、アウタ前フランジ、サイドメンバの4部材が重ならないような構成とすることで、4枚スポット溶接を避け、第1及び第2溶接部共に3枚スポット溶接を可能にしている。これにより、部材の溶け込み不足による接合不良を抑制し、所望の接合強度を確保することができる。
【0014】
また、前記サイドメンバは、サイドメンバアッパとサイドメンバロアとに上下に分割され、前記シールドロアフランジは、前記サイドメンバアッパと前記サイドメンバロアとの分割部を跨いで前記サイドメンバに接合されるとともに、前記分割部上にフランジ切欠き部を有することを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、サイドメンバを上下に分割することで、サイドメンバアッパとサイドメンバロアとで板厚及び材質をそれぞれ最適化することが可能となり、軽量化と剛性及び強度の両立を図ることができる。
【0016】
さらに、シールドロアフランジに設けた切欠き部によって、シールドロアフランジと、サイドメンバアッパとサイドメンバロアと、フロントピラーインナの4枚が重なることを防止でき、4枚スポット溶接を回避して接合強度の低下を抑制することができる。
【0017】
また、前記第2溶接部よりも後方側の前記分割部に、シール部材を配置したことを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、アウタパネルの内側、すなわち室内側空間に分割部を有する場合、この分割部から水や音が侵入する可能性があるため、必要最小限の位置にシーラを塗布して防音・防水することができる。
【0019】
また、前記フロントピラースティフナは、車幅方向に対向するスティフナ側壁と、該スティフナ側壁の前端から車幅内側に延びるスティフナ前壁と、該スティフナ前壁から前方側に延びる前記スティフナ前フランジと、を有し、前記アウタパネルは、車幅方向に対向するアウタ側壁と、該アウタ側壁の前端から車幅内側に延びるアウタ前壁と、該アウタ前壁から前方側に延びる前記アウタ前フランジと、前記アウタ側壁及び前記アウタ前壁の一部を切り欠いて前記スティフナ側壁を露出させるアウタ切欠き部と、を有し、前記アウタ切欠き部によって露出される前記スティフナ側壁の露出部に後端が接合されるとともに、前記サイドメンバに沿って前方に延びるアッパメンバを備えることを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、スティフナの側壁、前壁及び前フランジに対してアウタの側壁、前壁及び前フランジの形状を合わせることで、各側壁と前壁との間の角部である稜線を合わせ、ピラーの剛性強度を向上することができる。
【0021】
また、アウタ切欠き部によって露出したスティフナ側壁の露出部にアッパメンバを接合することで、比較的剛性強度が高い材質及び板厚で形成されるフロントピラースティフナ22に対してアッパメンバを直接結合することとなり、アッパメンバからフロントピラーへの荷重伝達効率を向上することができ、車体前部の剛性及び強度を向上することができる。
【0022】
また、前記ウインドシールドロアの下方で前記フロントピラーの間で車幅方向に延びるダッシュボードパネルを備え、前記ダッシュボードパネルは、車幅外側端部にダッシュフランジを備え、前記アウタ切欠き部よりも下方側の領域において、前記スティフナ前壁と前記アウタ前壁とをスポット溶接した第3溶接部と、前記ダッシュフランジと前記インナ前フランジと前記スティフナ前フランジと、をスポット溶接した第4溶接部と、を備えることを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、第3溶接部によってスティフナ前壁とアウタ前壁とを溶接することで、アウタ前フランジをインナ前フランジ及びスティフナ前フランジに重ねて接合する必要がなくなる。ダッシュフランジ、インナ前フランジ、スティフナ前フランジ、アウタ前フランジの4部材が重ならないような構成とすることで、4枚スポット溶接を避け、第4溶接部の3枚スポット溶接を可能にしている。これにより、部材の溶け込み不足による接合不良を抑制し、所望の接合強度を確保することができる。
【0024】
また、本発明の車体の組付け方法は、車体前部で上下方向に延びるように左右一対設けられるとともに、車幅内側のフロントピラーインナと、該フロントピラーインナの車外側面に接合されるフロントピラースティフナと、を有するフロントピラーと、前記フロントピラーの車外側面に接合されるアウタパネルと、前記フロントピラーの間で車幅方向に延びるウインドシールドロアと、前記フロントピラーから前方に延びて当該フロントピラーの閉断面の一部を構成するサイドメンバと、を備える車体前部構造において、前記ウインドシールドロアは、車幅外側端部にシールドロアフランジを備え、前記フロントピラーインナは、前端部に形成されたインナ前フランジを備え、前記シールドロアフランジと、前記インナ前フランジと、前記サイドメンバの後端部とをスポット溶接して第1溶接部を構成する第1溶接工程と、前記フロントピラースティフナは、前記第1溶接部よりも前方側のスティフナ前フランジを備え、前記アウタパネルは前記第1溶接部よりも前方側のアウタ前フランジを備え、前記第1溶接部よりも前方の位置で前記サイドメンバの一般部と、前記スティフナ前フランジと、前記アウタ前フランジとをスポット溶接して第2溶接部を構成する第2溶接工程と、により組み付けられることを特徴とする。
【0025】
このような方法によれば、ウインドシールドロアの車幅外側端部をフロントピラー2の断面内に向けてスポット溶接で接合することができ、他の補強部材等を設けなくとも、ウインドシールドロアとフロントピラーとの間の荷重伝達効率を向上することができる。よって、重量増加の抑制、レイアウト自由度の低下を抑制しつつ、車体剛性及び強度を向上させることができる。
【0026】
また、第1及び第2溶接部共にスポット溶接しているため、ボルト締結に対して部品点数の削減と組付け工程の簡略化を図ることができる。
【0027】
さらには、フロントピラーインナのインナ前フランジが溶接される第1溶接部よりも前方側で、フロントピラースティフナのスティフナ前フランジ及びアウタパネルのアウタ前フランジを溶接することで、インナ前フランジ、スティフナ前フランジ、アウタ前フランジ、サイドメンバの4部材が重ならないような構成とすることで、4枚スポット溶接を避け、第1及び第2溶接部共に3枚スポット溶接を可能にしている。これにより、部材の溶け込み不足による接合不良を抑制し、所望の接合強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、重量増加の抑制、レイアウト自由度の低下を抑制しつつ、車体剛性及び強度を向上させることが可能な車体前部構造及び車体の組付け方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態)
本発明の一実施形態について、
図1乃至
図3を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。また、方向を説明する場合は、車両の運転者からみた前後左右上下に基づいて説明する。なお、車幅方向と左右方向は同義である。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る車体前部構造の左側のフロントピラー部分を左前方から見た斜視図である。
図2は、
図1の2点鎖線で囲んだフロントピラー部分の拡大斜視図である。
図3は、
図2のA−A矢視断面図である。なお、本実施形態に係る車体前部構造は、左右対称構造であるので、以下の説明では車両の一方側の構造について説明し、他方側の構造の説明を省略する。
【0032】
図1、
図2に示すように、第1実施形態に係る車体前部構造1を有する車両は、例えば、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)やFR(フロントエンジン・リヤドライブ)や四輪駆動の乗用車等である。
車体前部構造1は、車体前部で上下方向に延びるように左右一対で設けられたフロントピラー2と、フロントピラー2の車外側面に接合されるアウタパネル3(
図3参照)と、フロントピラー2の間で車幅方向に延びるウインドシールドロア4と、フロントピラー2から前方に延びるサイドメンバ5と、を主に備えている。
フロントピラー2とアウタパネル3は、車両上下方向へ延びる閉断面構造となっている。
【0033】
図3に示すように、フロントピラー2は、車幅内側のフロントピラーインナ21と、フロントピラーインナ21の車外側面に接合されるフロントピラースティフナ22と、を有している。
フロントピラーインナ21は、その前端部に形成されたインナ前フランジ21aを備える。
図2に示すように、フロントピラースティフナ22は、第1溶接部11(後記)よりも前方側でサイドメンバ5側に延びるスティフナ前フランジ22aと、スティフナ側壁部22b(露出部)と、スティフナ前壁22cと、を備える。
【0034】
アウタパネル3は、フロントピラー2、ルーフサイドレール、サイドシル等の車体の外側面を一体的に構成する板状部材である。
アウタパネル3は、
図3に示すように、第1溶接部11(後記)よりも前方側でサイドメンバ5側に延びるアウタ前フランジ3aを備える。
【0035】
図2に示すように、アウタパネル3は、前後方向に延在するアウタ側壁3bと、アウタ側壁3bの前端から車幅内側に延びるアウタ前壁3cと、アウタ側壁3b及びアウタ前壁3cの一部を切り欠いてスティフナ側壁22bを露出させるアウタ切欠き部3dと、を有する。
【0036】
ウインドシールドロア4は、フロントウィンドシールド(図示省略)の下端部を支持する部材である。ウインドシールドロア4は、左右のフロントピラー2間に架設されている。ウインドシールドロア4は、車幅外側端部4bで車両後方側に対して折れ曲がるように形成されたシールドロアフランジ4aを備える。
【0037】
サイドメンバ5は、フロントサイドフレーム(図示省略)の車外側且つ上方で前後方向に延設された左右一対の構造体である。サイドメンバ5は、シールドロアフランジ4aとインナ前フランジ21aと共にスポット溶接されて第1溶接部11(後記)を構成する後端部5aと、後端部5aから前方に延びる一般部5bと、を備える。なお、サイドメンバ5は、アッパメンバとロアメンバとに分かれた構造でもよい。この場合、ロアメンバは、アッパメンバの前後方向の中間部から前方且つ下方に延出することになる。
【0038】
図3に示すように、車体前部構造1は、フロントピラー2の閉断面の一部を構成するサイドメンバ5の後端部5aに対してウインドシールドロア4のシールドロアフランジ4aを車内側から突き当て、シールドロアフランジ4aを接合する構造となっている。ウインドシールドロア4とサイドメンバ5及びフロントピラーインナ21との接合は、ボルト締結ではなく、部品点数の削減・組付け工程の簡略化を図ることができるスポット溶接を用いる。
【0039】
また、車体前部構造1は、ウインドシールドロア4とフロントピラーインナ21とサイドメンバ5との3枚を接合する第1溶接部11と、第1溶接部11よりも前方の位置でサイドメンバ5の一般部5bとフロントピラースティフナ22とアウタパネル3との3枚をスポット溶接する第2溶接部12と、を備える。
【0040】
具体的には、第1溶接部11は、ウインドシールドロア4のシールドロアフランジ4a、サイドメンバ5の後端部5a、及びフロントピラーインナ21のインナ前フランジ21aの3枚を車内側からこの順で重ねてスポット溶接により接合される。
また、第2溶接部12は、第1接合部11よりも前方の位置(本実施形態ではウインドシールドロア4突き当て位置よりさらに前方の位置)で、サイドメンバ5の一般部5b、フロントピラースティフナ22のスティフナ前フランジ22a、及びアウタパネル3のアウタ前フランジ3aの3枚を車内側からこの順で重ねてスポット溶接により接合される。
【0041】
このように、車体前部構造1は、フロントピラー2の閉断面に対してウインドシールドロア4のシールドロアフランジ4aを突き当てるとともに、ウインドシールドロア4のシールドロアフランジ4aとフロントピラーインナ21のインナ前フランジ21a(前端部)とサイドメンバ5の後端部5aとをスポット接合する第1溶接部11と、第1溶接部11よりも前方の位置でサイドメンバ5の一般部5bとフロントピラースティフナ22のスティフナ前フランジ22aとアウタパネル3のアウタ前フランジ3aとをスポット溶接する第2溶接部12とを備える構造となっている。すなわち、車体前部構造1は、ウインドシールドロア4のシールドロアフランジ4aをフロントピラーインナ21及びサイドメンバ5に突き当てて、シールドロアフランジ4aをスポット接合する第1溶接部11と、第1溶接部11よりも前方の位置でスポット溶接する第2溶接部12との2つの接合部を有する。このため、第1溶接部11と第2溶接部12とのそれぞれにおいて、スポット溶接枚数は3以下となり、補強強度を向上させることができる。
【0042】
なお、第2溶接部12の配置は、これに限定されるものではなく、フロントピラーインナ21の延在方向に対して第1接合部11よりも前方の位置であればよい。
【0043】
以下、上述のように構成された車体前部構造1の組付け方法について説明する。
図4は、上記車体前部構造1の組付け方法を説明する図であり、
図4(a)はその第1溶接工程を、
図4(b)はその第2溶接工程をそれぞれ示す。
[準備工程]
車体前部で上下方向に延びるように左右一対設けられるフロントピラー2と、フロントピラー2の車外側面に接合されるアウタパネル3と、フロントピラー2の間で車幅方向に延びるウインドシールドロア4と、フロントピラー2から前方に延びるサイドメンバ5と、を準備する。
【0044】
[第1溶接工程]
図4(a)に示すように、第1溶接工程では、ウインドシールドロア4のシールドロアフランジ4a、サイドメンバ5の後端部5a、及びフロントピラーインナ21のインナ前フランジ21aを重ねてスポット溶接して第1溶接部11を形成する。なお、スポット溶接は、図中の×印で示されている。
【0045】
[第2溶接工程]
第1溶接工程の完了後、
図4(b)に示すように、ウインドシールドロア4とサイドメンバ5とフロントピラーインナ21との3部材を第1溶接部11でスポット溶接した後に、フロントピラースティフナ22とアウタパネル3を車幅外側方向からサイドメンバ5の一般部5bに重ね合わせる。
第2溶接工程では、第1接合部11よりも前方の位置で、サイドメンバ5の一般部5b、フロントピラースティフナ22のスティフナ前フランジ22a、及びアウタパネル3のアウタ前フランジ3aを重ねてスポット溶接して第2溶接部12を形成する。
以上により、車体前部構造1の組付けが完了する。
【0046】
車体前部構造1の組付け方法の作用効果について説明する。
車体前部構造1の組付け方法によれば、フロントピラー2とウインドシールドロア4の取付部付近においてフロントピラー2の閉断面の一部をサイドメンバ5で構成することで、ウインドシールドロア4の車幅外側端部4bをフロントピラー2の断面内に向けてスポット溶接で接合することができた。そのため、他の補強部材等を設けなくとも、ウインドシールドロア4とフロントピラー2との間の荷重伝達効率を向上することができる。よって、重量増加の抑制、レイアウト自由度の低下を抑制しつつ、車体剛性及び強度を向上することができる。
【0047】
また、第1溶接部11及び第2溶接部12は、共にスポット溶接しているので、ボルト締結に対して部品点数の削減・組付け工程の簡略化を図ることができる。同様の理由で、部材の溶け込み不足による接合不良を抑制し、所望の接合強度を確保することができる。
【0048】
(サイドメンバの構成例)
図5及び
図6は、本実施形態に係る車体前部構造の左側のフロントピラー部分を車内側から見た斜視図である。
図5は、そのウインドシールドロア4を取り付ける前の斜視図、
図6は、そのウインドシールドロア4を取り付けた後の斜視図である。
【0049】
図5及び
図6に示すように、車体前部構造1は、車体前部で上下方向に延びるように左右一対で設けられたフロントピラーインナ21と、フロントピラーインナ21の間で車幅方向に延びるウインドシールドロア4(
図6参照)と、フロントピラーインナ21から前方に延びるサイドメンバ5と、を備えている。
【0050】
図5に示すように、サイドメンバ5は、サイドメンバ5の上部を形成するサイドメンバアッパ51と、サイドメンバ5の下部を形成するサイドメンバロア52と、から構成される。サイドメンバアッパ51とサイドメンバロア52との組み合わせ部分は、分割部53を構成している。また、ウインドシールドロア4の下方で車幅方向にはダッシュボードパネル54が取り付けられる。
【0051】
図5の破線に示すように、分割部53は、サイドメンバアッパ51とサイドメンバロア52とが重なり合う2枚構造となっている。
【0052】
サイドメンバ5は、サイドメンバアッパ51とサイドメンバロア52とに上下に分割可能である。また、サイドメンバアッパ51は、サイドメンバロア52の上端部に接合する接合部(図示省略)を有し、当該接合部によりサイドメンバロア52の上端部に接合される。
図6の×印に示すように、サイドメンバアッパ51とサイドメンバロア52とは、分割部53において、例えば溶接により接合される。
【0053】
図6に示すように、ウインドシールドロア4は、シールドロアフランジ4aにフランジ切欠き部4cを有する。フランジ切欠き部4cは、サイドメンバアッパ51とサイドメンバロア52の分割部53を跨ぐように形成される。このため、シールドロアフランジ4aのフランジ切欠き部4cから分割部53が露出している。
【0054】
第1溶接工程では、シールドロアフランジ4aは、フランジ切欠き部4cに分割部53上を跨ぐようにして、サイドメンバ5A及びフロントピラーインナ21にスポット接合される。したがって、サイドメンバ5は、フランジ切欠き部4cにおいては、サイドメンバアッパ51とサイドメンバロア52とフロントピラーインナ21とが3枚接合される。
なお、
図6の×印に示すように、分割部53以外の部分において、サイドメンバ5は、シールドロアフランジ4aとスポット溶接される。
【0055】
このように、シールドロアフランジ4aは、4枚スポット溶接を回避するためのフランジ切欠き部4cを有し、サイドメンバアッパ51とサイドメンバロア52の分割部53を跨いでサイドメンバ5に接合される。フランジ切欠き部4cによって、シールドロアフランジ4aとサイドメンバアッパ51とサイドメンバロア52とフロントピラーインナ21の4枚が重なることを防止でき、4枚スポット溶接を回避して接合強度の低下を抑制することができる。
【0056】
したがって、サイドメンバアッパ51とサイドメンバロア52とで板厚差を設けて軽量化と剛性強度の両立を図る場合に、ウインドシールドロア4のシールドロアフランジ4aにフランジ切欠き部4cを設けることで、4枚スポットを防止することができ、接合強度の低下を抑制することができる。
【0057】
また、サイドメンバ5は、サイドメンバアッパ51とサイドメンバロア52との上下に分割されることで、各メンバそれぞれにおいて適切な板厚や材質を設定することが可能となる。例えば、荷重伝達効率を考慮して必要な部位だけ板厚を変えることが可能となる。その結果、軽量化と剛性及び強度の両立を図ることができる。
【0058】
(フロントピラースティフナの構成例)
図7は、本実施形態に係る車体前部構造の左側のフロントピラー部分を車幅外側方向から見た図である。
図8は、
図7の2点鎖線で囲んだフロントピラー部分の拡大図であり、
図8(a)は、そのフロントピラースティフナ22を取り付ける前の図、
図8(b)は、そのフロントピラースティフナ22を取り付けた後の図である。
【0059】
図7及び
図8(a)に示すように、サイドメンバ5は、サイドメンバアッパ51とサイドメンバロア52とに上下に分割され、サイドメンバアッパ51とサイドメンバロア52との組み合わせ部分は分割部53を構成している。
【0060】
図8(b)に示すように、車体前部構造1Bは、さらに、第2接合部12よりも後方側の分割部53上に、シール部材61を配置している。シール部材61は、例えばシーラ塗布により分割部53とフロントピラースティフナ22との間をシーリングする。
【0061】
アウタパネル3の内側、すなわち室内側空間に分割部53を有する構造の場合、この分割部53から水や音が侵入する可能性がある。本実施形態では、第2接合部12よりも後方側の分割部53上にシール部材61を設けてシーラを塗布している。第2接合部12よりも後方の分割部53上という、必要最小限の位置にシール部材61を設けてシーラを塗布することで、効率良く防音・防水を実現することができる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の車体前部構造1は、車体前部で上下方向に延びるように左右一対設けられるとともに、車幅内側のフロントピラーインナ21と、フロントピラーインナ21の車外側面に接合されるフロントピラースティフナ22と、を有するフロントピラー2と、フロントピラー2の車外側面に接合されるアウタパネル3と、フロントピラー2の間で車幅方向に延びるウインドシールドロア4と、フロントピラー2から前方に延びてフロントピラー2の閉断面の一部を構成するサイドメンバ5と、を備える。車体前部構造1は、フロントピラー2の閉断面に対してウインドシールドロア4のシールドロアフランジ4aを突き当てるとともに、シールドロアフランジ4aとインナ前フランジ21aと後端部5aとをスポット接合する第1溶接部11と、第1溶接部11よりも前方の位置でサイドメンバ5の一般部5bとスティフナ前フランジ22aとアウタ前フランジ3aとをスポット溶接する第2溶接部12とを備える。
【0063】
この構成により、ウインドシールドロア4のシールドロアフランジ4aが、フロントピラースティフナ22のスティフナ前フランジ22aよりも後方の位置でスポット溶接されることとなり、ウインドシールドロア4の車幅外側端部4bをフロントピラー2の断面内に向けて接合することとなる。これにより、他の補強部材等を設けなくとも、ウインドシールドロア4とフロントピラー2との間の荷重伝達効率を向上することができる。よって、重量増加の抑制、レイアウト自由度の低下を抑制しつつ、車体剛性及び強度を向上させることができる。
【0064】
また、第1溶接部11及び第2溶接部12は、共にスポット溶接しているため、ボルト締結に対して部品点数の削減・組付け工程の簡略化を図ることができる。
【0065】
また、フロントピラーインナ21のインナ前フランジ21aが溶接される第1溶接部11よりも前方側で、フロントピラースティフナ22のスティフナ前フランジ22a及びアウタパネル3のアウタ前フランジ3aを溶接する第2溶接部12と、を備える。これにより、インナ前フランジ21a、スティフナ前フランジ22a、アウタ前フランジ3a、及びサイドメンバ5の4部材が重ならない構成とすることができ、4枚スポット溶接を避け、第1溶接部11及び第2溶接部12共に3枚スポット溶接を可能にしている。したがって、部材の溶け込み不足による接合不良を抑制し、所望の接合強度を確保することができる。
【0066】
(アッパメンバの構成及びアッパメンバ取付構造の例)
図9及び
図10は、本実施形態に係る車体前部構造の左側のフロントピラー部分を車幅外側方向から見た図である。
図9は、そのアッパメンバを取り付ける前の図、
図10は、そのアッパメンバを取り付けた後の図である。
図11は、
図10のA−A矢視断面図である。
図12は、
図10のB−B矢視断面図である。
図1乃至
図3と同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。
車体前部構造1Aは、さらに、サイドメンバ5に沿って前方に延びるアッパメンバ71(
図10及び
図11参照)を備える。
【0067】
図10及び
図11に示すように、フロントピラースティフナ22は、前後方向に延在するスティフナ側壁22bと、スティフナ側壁22bの前端から車幅内側に延びるスティフナ前壁22cと、スティフナ前壁22cから前方側に延びるスティフナ前フランジ22aと、を有する。
【0068】
図11に示すように、アウタパネル3は、前後方向に延在するアウタ側壁3bと、アウタ側壁3bの前端から車幅内側に延びるアウタ前壁3cと、アウタ前壁3cから前方側に延びるアウタ前フランジ3aと、アウタ側壁3b及びアウタ前壁3cの一部を切り欠いてスティフナ側壁22bを露出させるアウタ切欠き部3dと、を有する。
【0069】
図11に示すように、スティフナ側壁22bとアウタ切欠き部3dがミグ溶接により接合され、スティフナ側壁22bの露出部が形成される。アッパメンバ71は、サイドメンバ5の車外において前後方向に延在する部材である。アッパメンバ71は、アウタ切欠き部3dによって露出されるスティフナ側壁22bの露出部に後端部71aがミグ溶接により接合される(
図11の×印参照)。
【0070】
図12に示すように、車体前部構造1Aは、ウインドシールドロア4(
図2参照)の下方でフロントピラー2の間で車幅方向に延びるダッシュボードパネル54を備える。ダッシュボードパネル54は、車幅外側端部にダッシュフランジ54aを有し、アウタ切欠き部3dよりも下方側の領域において、スティフナ前壁22cとアウタ前壁3cとをスポット溶接した第3溶接部13と、ダッシュフランジ54aとインナ前フランジ21aとスティフナ前フランジ22aとをスポット溶接した第4溶接部14と、を備える。
【0071】
この構成により、第3溶接部13によってスティフナ前壁22cとアウタ前壁3cとを溶接することで、アウタ前フランジ3aをインナ前フランジ21a及びスティフナ前フランジ22aに重ねて接合する必要がなくなる。ダッシュフランジ54a、インナ前フランジ21a、スティフナ前フランジ22a、アウタ前フランジ3aの4部材が重ならないような構成とすることで、4枚スポット溶接を避け、第4溶接部14の3枚スポット溶接を可能にしている。これにより、部材の溶け込み不足による接合不良を抑制し、所望の接合強度を確保することができる。
【0072】
また、フロントピラースティフナ22のスティフナ側壁22bとスティフナ前壁22cとスティフナ前フランジ22a対してそれぞれ、アウタパネル3のアウタ側壁3bとアウタ前壁3cとアウタ前フランジ3aの形状を合わせることで、各側壁と前壁との間の角部である稜線を合わせている。フロントピラースティフナ22とアウタパネル3の前記稜線を合わせているので、フロントピラーの剛性強度を向上させることができる。
【0073】
また、アウタ切欠き部3dによって露出したスティフナ側壁22bの露出部にアッパメンバ71の後端部71aを接合することで、下記の効果を得ることができる。すなわち、アウタパネル3は、外板部材で比較的大きい部材であり、軽量化のためにも極力板厚を薄くしたい要請がある。これに対しフロントピラースティフナ22は、剛性強度が高い材質及び板厚で形成されている。本実施形態では、このフロントピラースティフナ22に対してアッパメンバ71を直接結合し、アッパメンバ71からフロントピラースティフナ22に直接荷重(前突荷重)を伝達する構成としたので、アッパメンバ71からフロントピラースティフナ22への荷重伝達効率を高めることができ、車体前部の剛性及び強度を向上させることができる。
【0074】
以上、上記実施形態に係る車体前部構造について、図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。