(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主成分としてプロピレンとエチレン及び/または他のα−オレフィンとのランダム共重合体から構成されるランダムポリプロピレン(a)、及び難燃剤を含むA層、及び主成分としてプロピレン単独重合体から構成されるホモポリプロピレン(b)、及び難燃剤を含むB層を少なくとも1層以上含み、
A層及びB層中における前記難燃剤は、NOR型ヒンダードアミン誘導体であり、
A層及びB層中における難燃剤の量がそれぞれ0.5〜3質量%の範囲にあるポリオレフィン系樹脂積層フィルムであって、引張弾性率が800MPa以上であり、かつ、UL94 HBに適合する難燃性を有する、該ポリオレフィン系樹脂積層フィルムを用いてなる太陽電池バックシート。
【背景技術】
【0002】
近年、石油、石炭など化石燃料の枯渇、高騰の問題から、非枯渇エネルギーへの要求が高まっている。また、地球環境保全の観点から、クリーンエネルギーへの関心も高まり、非枯渇でもある太陽光エネルギーの利用としての太陽電池が注目され、その普及が急速に進んでいる。
【0003】
一般に、太陽電池(太陽電池モジュ−ル)は、例えば、結晶シリコン太陽電池素子あるいはアモルファスシリコン太陽電池素子等を製造し、そのような太陽電池素子を使用し、表面保護シ−ト層、封止材層、光起電力素子としての太陽電池素子、封止材層、および、裏面保護シ−ト層(太陽電池バックシート)等の順に積層し、真空吸引して加熱圧着するラミネ−ション法等を利用して製造されている。
【0004】
太陽電池バックシートは直接屋外に暴露されるため、バックシートには耐候性(耐UV光、耐湿、耐熱、耐塩害等)、水蒸気バリヤー性、電気絶縁性、機械的特性(引張強度、伸び、引裂き強度等)、耐薬品性、封止樹脂シートとの接着一体化適合性、などが要求される。
【0005】
太陽電池バックシートとして、現在、フッ素系樹脂フィルムと金属箔との複合フィルムが最も一般的に使用されている。当該複合フィルムは、耐環境性、防湿性、加工適性、耐光性等に優れるが、複合化層及びフッ素系樹脂フィルムの耐加水分解性、可撓性、軽量性、その他等の諸特性に劣るという問題がある。
【0006】
また、太陽電池モジュールを意匠性が重視されるような建築分野に適用する場合は、既建造物とのバランスの上に立った白、黒、青色等への種々の色彩へ着色できることが太陽電池バックシートに求められる。このような意匠性を付与することができ、更に強度、耐候性、耐熱性、耐水性等の諸特性に優れる太陽電池バックシートとして、基材フィルムの少なくとも一方の面に無機酸化物の蒸着膜を設け、当該蒸着膜を設けた基材フィルムの一方の片面に、耐熱性の着色ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層した太陽電池バックシ−トが提案されている(特許文献1)。
【0007】
また、屈折率1.52未満であるポリオレフィン系樹脂と屈折率1.60以上の微粉状充填剤とを含有する樹脂組成物からなる太陽電池用バックシートが提案されている(特許文献2)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムについて詳細に説明する。
【0014】
本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に、規定しない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
【0015】
また、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0016】
本発明の実施形態に係るポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、主成分としてプロピレンとエチレン及び/または他のα−オレフィンとのランダム共重合体から構成されるランダムポリプロピレン(a)、及び難燃剤を含むA層、及び主成分としてプロピレン単独重合体から構成されるホモポリプロピレン(b)、及び難燃剤を含むB層を少なくとも1層以上含み、A層及びB層中における難燃剤の量がそれぞれ0.5〜3質量%の範囲にあるポリオレフィン系樹脂積層フィルムであって、引張弾性率が800MPa以上であり、かつ、UL94 HBに適合する難燃性を有する、該ポリオレフィン系樹脂積層フィルムである。
【0017】
A層
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムにおけるA層は、主成分としてプロピレンとエチレン及び/または他のα−オレフィンとのランダム共重合体から構成されるランダムポリプロピレン(a)、及び難燃剤を含む層である。本発明においては、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムのA層がランダムポリプロピレン(a)を主成分とするため、EVA等の封止材と密着性に優れる。
【0018】
ランダムポリプロピレン(a)
本発明におけるランダムポリプロピレン(a)は、プロピレンとエチレン及び/または他のα−オレフィンとのランダム共重合体から構成される。すなわち、プロピレンとエチレンとの2元系のランダム共重合体(コポリマー)、プロピレンと他のα−オレフィンとの2元系のランダム共重合体(コポリマー)、プロピレンとエチレン及び他のα−オレフィンとの3元系のランダム共重合体(ターポリマー)であることができる。
α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等の炭素数3〜18程度のα−オレフィンが挙げられる。
本発明におけるランダムポリプロピレン(a)は、従来公知の製造方法、例えば、溶媒重合法、バルク重合法、気相重合法により製造することができる。
また、本発明におけるランダムポリプロピレン(a)としては、密度が0.88〜0.92g/cm
3であるものを用いるのが好ましい。また、融点は、好ましくは135℃以下であり、より好ましく120〜135℃である。融点が135℃より高いと、封止材との密着性低下の問題が発生する。
ランダムポリプロピレン(a)として商業的に入手できるものは、例えば、日本ポリプロ製のWFX4、WFW4等が挙げられる。
【0019】
難燃剤
本発明において使用できる難燃剤としては、ポリオレフィン系樹脂フィルムに通常使用される難燃剤を用いることができ、例えば有機系難燃剤、無機系難燃剤、リン系難燃剤等の難燃剤を使用することができる。
【0020】
有機難燃剤としては、NOR型ヒンダードアミン誘導体、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤等が挙げられ、NOR型ヒンダードアミン誘導体としては、特に限定されず、ピペリジン環のイミノ基(>N−H)のHがアルコキシル基(−OR)に置換されたヒンダードアミン系化合物の誘導体であればいずれも用いられる。塩素系難燃剤には、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、パークロロシクロペンタデカン等が含まれる。
【0021】
臭素系難燃剤には、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルオキシド、ポリジブロモフェニレンオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、エチレン−ビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレン−ビステトラブロモフタルイミド、エチレン−ビスペンタブロモジフェニル、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルグリコール、トリブロムフェノール、トリブロモフェノールアリルエーテル、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモシクロオクタン、テトラブロモビスフェノールS、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、トリス−(2,3−ジブロモプロピル−1)−イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ペンタブロモフェノール、ペンタブロモトルエン、ペンタブロモジフェニルオキシド、ヘキサブロモシクロドデカン、ドデカクロロオクタヒドロジメタノジベンゾシクロオクテン、ドデカクロロオクタヒドロジメタノジベンゾフラン、テトラブロモエタン、テトラデカブロモ−p−フェノキシジフェニルエーテル、ヘキサブロモシクロドデカン、エチレン−ビスペンタブロモジフェニル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、オクタブロモフェノールエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルオキシド、ジブロモネオペンチルグリコールテトラカルボナート、ビス(トリブロモフェニル)フマルアミド、N−メチルヘキサブロモジフェニルアミン、ジブロモスチレン、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン等が含まれる。
【0022】
またテトラブロモビスフェノールAおよびその誘導体、無水クロレンド酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラブロモフタレートジオール、テトラブロモフタレートエステル、テトラブロモフタレートジソジウム、テトラクロロフタリックアンハイドライド、ビニルブロマイド、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)、ブロモフェノキシエタノール、臭素化フェノール、臭素化芳香族トリアジン、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、ジブロモフェノール、ジブロモクレゾール、トリブロモフェノール、ジアリル=クロレンデート等の反応性難燃剤も使用することができる。これら有機難燃剤は、三酸化アンチモン、赤燐等の難燃助剤と併用することが難燃効果を向上させるために好ましい。
【0023】
また、無機系難燃剤には、水酸化アルミニウム、合成水酸化マグネシウム、天然系マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、酸化スズ、の水和物等の金属水和化合物、ホウ酸亜鉛、ホウ酸バリウム、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム等のホウ酸塩類、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、四酸化アンチモンその他のアンチモン化合物、グアニジン化合物、ジルコニウム化合物、酸化ジルコン、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ハイドロタルサイト、ハイドロマグネサイト、無水アルミナ、二硫化モリブデン、粘土、赤燐、珪藻土、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、シリカ、ホワイトカーボン、ゼオライト、リトポン等が挙げられる。
本発明では、これら無機難燃剤を単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
【0024】
以上の難燃剤の中でも、本発明においては有機難燃剤、特にNOR型ヒンダードアミン誘導体が難燃性の効果の観点から好ましく用いることが出来る。
【0025】
本発明においては、A層中における難燃剤の量は、好ましくは0.5〜3質量%であり、より好ましくは0.5〜2質量%である。難燃剤の量が0.5質量%未満であると十分な難燃性を得ることができず、また、3質量%より大きいとポリオレフィン系樹脂積層フィルムの加工性が劣るため好ましくない。
【0026】
本発明においては、必要に応じて、A層中に、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムに配合される公知の酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、安定剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において含有させてもよく、ランダムポリプロピレン以外の他の材料、例えば、ポリエチレン系重合体などを添加することも可能である。
【0027】
B層
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムにおけるB層は、主成分としてプロピレン単独重合体から構成されるホモポリプロピレン(b)、及び難燃剤を含む層である。本発明においては、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムのB層がホモポリプロピレン(b)を主成分とすることにより、フィルムの加工性及びコシが良好となる。
【0028】
ホモポリプロピレン(b)
B層に使用されるホモポリプロピレン(b)は、プロピレン単独重合体から構成される。
プロピレン単独重合体のメルトフローレート(MFR:JISK7210、測定温度230℃、荷重21.18N)は、2〜20g/10minであることが好ましく、4〜16g/10minであることが更に好ましい。プロピレン単独重合体のメルトフローレートが小さすぎると、溶融成形時に押出温度を高くする必要がある。その結果、プロピレン単独重合体自体の酸化による黄変が発生する場合がある。一方、プロピレン単独重合体のメルトフローレートが大きすぎると、溶融成形によるシート作製が不安定になる場合がある。
【0029】
プロピレン単独重合体を得るための重合方法としては、例えば、溶媒重合法、バルク重合法、気相重合法等の公知の方法が挙げられる。また、重合触媒としては、例えば、三塩化チタン型触媒、塩化マグネシウム担持型触媒、メタロセン系触媒等の公知の触媒を挙げることができる。
【0030】
難燃剤
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムのB層に含有させる難燃剤としては、A層に含有させるものと同様の種類の難燃剤を使用することができる。
本発明においては、B層中における難燃剤の量は、好ましくは0.5〜3質量%であり、より好ましくは0.5〜2質量%である。難燃剤の量が0.5質量%未満であると十分な難燃性を得ることができず、また、3質量%より大きいとポリオレフィン系樹脂積層フィルムの加工性が劣るため好ましくない。
【0031】
本発明においては、必要に応じて、B層中に、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムに配合される公知の酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、安定剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において含有させてもよく、プロピレン単独重合体以外の他の材料、例えば、プロピレンとエチレン及び/または他のα−オレフィンとのランダム共重合体、ポリエチレン系重合体などを添加することも可能である。
【0032】
ポリオレフィン系樹脂積層フィルム
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、A層及びB層を、各々、少なくとも1層以上含むものである。本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムにおいては、EVA等の封止材と接する側の面にA層が設けられる。
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムの層構成としては、A層/B層、A層/B層/A層、A層/B層/B層、A層/B層/A層/B層などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明においては、A層とB層の厚みの比率として、ポリオレフィン系樹脂積層フィルム中のA層全体の厚みとB層全体の厚みの比が、好ましくは5:95〜40:60である。
また、本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルム全体の厚みは、好ましくは20〜300μmである。
【0034】
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、引張弾性率が好ましくは800MPa以上である。
また、本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、UL94 HBに適合する難燃性を有する。
【0035】
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、好ましくは、A層及び/またはB層に、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルクから選択される1種類以上のフィラーを含有することができる。これらフィラーを添加することにより、フィルムを不透明白色とすることができる。
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムにおいては、フィラーをB層のみに含有することがより好ましい。これにより、A層と封止材との密着を阻害することなく、不透明隠蔽化でき、または反射率を向上させることができる。
A層及び/またはB層におけるフィラーの含有量としては、好ましくは2〜30質量%である。
【0036】
本発明において、ランダムポリプロピレン(a)、難燃剤、及び任意の添加剤を配合する方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法が挙げられる。例えば、ランダムポリプロピレン(a)をペレット状態のまま、難燃剤及び任意の添加剤と共に、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどでドライブレンドし、成形機のホッパーに直接供給する方法や、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等で混合し、その混合物を、押出機で一度溶融混練する方法が挙げられる。
ホモポリプロピレン(b)、難燃剤、及び任意の添加剤を配合する方法も上記と同様である。
【0037】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂積層フィルムの加工法としては、公知の成形方法を利用できる。例えば、Tダイによる押出成形、インフレーションフィルム成形、カレンダー成形などが挙げられ、連続的にポリオレフィン層フィルムを製造する方法としては、一般的な方法として、押出成形法が挙げられるが、特に本発明においては押出成形法が適している。以下、押出成形法によるポリオレフィン系樹脂積層フィルムの製造方法に関して詳細に述べる。
【0038】
複数台の押出機に上記に記載の方法でブレンドした原料を投入し、押出機を通って溶融状態となった樹脂原料を、フィードブロック等の合流装置部分で合流させ、ダイスなどから平板状に押し出し、これを表面が平滑に回転する一対のロールで挟み込みながら連続的に冷却固化と表面への平滑性賦与を行う方法、ロールの代わりに表面が平滑なベルト(例えばスチールベルト)を1つあるいは2つ用いる方法、一旦表面の平滑性にかまわず平板状に固化させたものを再度加熱した上で表面が平滑なロールやベルトを押し当て、最終的に表面が平滑なシートを得る方法、さらに溶融状態の樹脂材料を円筒状に押し出し周囲から水流や気流によって冷却固化する方法等が挙げられる。
【0039】
また、非連続的に製造する方法としては、一旦何らかの方法で平板状にした表面が平滑でないシートを、表面が平滑な一対の板の間に置き熱を加えながら板同士を押しつけることによって表面を平滑にする方法、溶融状態の樹脂原料を表面が平滑な一対の板の間に供給し板で圧力を加えながら冷却固化させる方法等が挙げられる。
【0040】
以上に述べた製造方法のうち、品質の安定性や生産性の面からは、表面が平滑なロールやスチールベルトで連続的に成形する方法が好ましい。
【0041】
太陽電池バックシート
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、太陽電池バックシートとして好適に使用することができる。太陽電池バックシートは、太陽電池セルを透過もしくは太陽電池セルを透過しなかった太陽光を反射することにより発電効率を高めるものである。
【0042】
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、それ自体太陽電池バックシートとして用いることができる。また、本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム等と積層して太陽電池バックシートとすることもできる。
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムのみで太陽電池バックシートを構成する場合は、反射率を向上させるため、A層及び/またはB層に、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルクから選択される1種類以上のフィラーを含有するのが望ましい。
【0043】
また、ポリエチレンテレフタレートフィルム等と積層して太陽電池バックシートを構成する場合は、例えば、表面に無機薄膜層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルムや無機微粒子を練り込んだポリエチレンテレフタレートフィルムに本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムをドライラミネート等により積層して製造することができる。この場合、本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムが太陽電池バックシートの最表面となるように積層する。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリオレフィン系樹脂積層フィルムは接着剤を介して積層することができる。
【0044】
接着剤層を構成するラミネ−ト用接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマ−、あるいは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレ−ト系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマ−との共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、ポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂等からなるポリオレフィン系接着剤、セルロ−ス系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノ−ル樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコ−ン系接着剤、アルカリ金属シリケ−ト、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等の接着剤を用いることができる。また、これらの接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その形態は、フィルム・シ−ト状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態であってもよい。
【0045】
上記接着剤は、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコ−ト法、その他等のコ−ト法、あるいは、印刷法等によってガスバリア性フィルム、耐加水分解性フィルム、および、樹脂フィルム上にコーティングすることができる。コ−ティング量としては、0.1〜10g/m
2(乾燥状態)の範囲内が好ましい。
【0046】
なお、上記の接着剤中には、紫外線劣化等を防止するために、前述の紫外線吸収剤あるいは光安定化剤を添加することができる。上記紫外線吸収剤あるいは光安定化剤としては、前述の紫外線吸収剤の1種ないしそれ以上、あるいは、光安定化剤の1種ないしそれ以上を同様に使用することができる。その使用量としては、その粒子形状、密度等によって異なるが、上記接着剤中に0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0048】
[使用材料]
・ランダムポリプロピレン:WFX4(日本ポリプロ製、MFR:7.0、融点:125℃、密度:0.9g/cm
3)
・ホモポリプロピレン:FLX80E4(住友化学製、MFR:7.0、融点:164℃、密度:0.9g/cm
3)
・低密度ポリエチレン(LDPE):LC500(日本ポリエチレン製、融点:108℃、密度:0.918g/cm
3)
・難燃剤:NOR116(BASFジャパン製、NOR型ヒンダードアミン誘導体系難燃剤)
【0049】
以下の測定方法及び評価基準で、ポリオレフィン系樹脂積層フィルムの各特性を評価した。
(1)フィルム加工性
フィルム成形時の加工性、フィルム外観を確認し、良好なものは○、ひどく劣るもの、フィルム化できないものは×で示した。×は実用に供することができない。
(2)難燃性
フィルムから試験片(寸法:長さ127mm、幅12.7mm)を採取し、この試験片をUL94水平燃焼試験グレードに準じて試験を実施した。76mmスパンでの燃焼速度が76.2mm/分以下の場合を適合とした。
(3)封止材との密着性
フィルムとEVA封止材(福斯特製、商品名:FIRSTEVA F806、厚み:500ミクロン)を真空プレス機を用いて、150℃、11分の条件で積層プレスした試料を作製した。得られた試料から測定幅20mmの短冊状に切り出し、23℃、相対湿度60%の環境下、引張試験機にて引張速度50mm/分でフィルムとEVA封止材のラミネート強度(N/20mm)を測定し、10N/20mm以上を合格とした。
(4)引張弾性率
JIS K7127に準拠し、フィルムから採取した試験片(1号ダンベル)を23℃、相対湿度60%の環境下で、チャック間距離40mm、引張速度50mm/分で引張試験を実施した。その結果得られたS−S曲線の初期の立ち上がり部分に接線を引き、その接線において100%伸びに対応する引張応力を引張弾性率とした。
【0050】
[実施例1〜2、比較例1〜5]
各々表1に記載されている配合により、ペレット状態でドライブレンドし、3台の東芝機械製単軸押出機(第1層用:35φmm、L/D=25、第2層用:50φmm、L/D=32、第3層用:35φmm、L/D=25)のホッパーに、ブレンドした原料を投入し、第1層用、第2層用及び第3層用押出機温度を、夫々、C1:210℃、C2:230℃、C3:230℃、C4:230℃、C5:230℃のように設定し、セレクターを通し、フィードブロック部(温度設定230℃)にて、第1層/第2層/第3層の構成に合流させ、650mm幅Tダイ(温度設定230℃ リップ開度0.4mm)から押出した。厚み構成は、10μm/80μm/10μmになるよう各押出機回転数を設定した。押出された溶融樹脂は、冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度30℃)にて冷却固化、巻取りし、0.1mmの実施例1〜2および比較例1〜5のポリオレフィン系樹脂積層フィルムを各々得た。得られた各フィルムについて、各種性能を評価した結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から示されるように、実施例1及び2のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、フィルム加工性、難燃性、封止材との密着性及び引張弾性率(フィルムのコシ)のいずれの性能も優れている。
これに対して、比較例1は難燃剤の添加量が本発明で規定する範囲より少なく,難燃性が不十分でUL94HBの基準に不適合である。また、比較例2は、難燃剤の添加量が多く,フィルム加工性が劣っている。比較例3では、A層が主成分としてLDPEを含んでいるため、フィルムの製膜性が劣り、またデラミが発生するためフィルム加工性が劣っている。また、比較例4では、A層のランダムPPの量が十分でないため、封止材との密着性の点で劣っている。また、比較例5では、B層にホモポリプロピレンを含んでいないため、フィルムの引張弾性率が低く、フィルムのコシがない。