(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作部に対する一定時間の無操作状態が継続したことを検出して、その時点の調整・設定値を前記記憶部に記録する無操作時保存部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の音声調整卓。
音声調整卓の手動操作を受信して、その時点の調整・設定値を前記記憶部に記録する手動保存部を備えていることを特徴とする請求項1また請求項2に記載の音声調整卓。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リハーサル中、シーン毎に出力音声の選択やレベル調整及び音質の細かな補正等が頻繁に行なわれるが、音声調整卓のオペレータはその調整が終わる度に音声調整卓の設定を保存する操作を行い、次のシーンへ向けて音声調整卓を設定する操作を行っている。また、オペレータは番組音声のディレクター的な役割を担っており、マイクセッティングや放送・録音機器への音声送出の準備など様々な業務を同時並行的に進行する必要がる。
【0005】
この様な作業環境の中、オペレータは各種シーン毎の音声調整卓設定の保存操作を忘れて次のシーンに向けたセッティングを始めてしまうことがあり、保存操作を忘れてしまったシーン設定は多大な時間を費やして作り直す必要がある。
【0006】
番組本番中はリハーサル中に保存したシーン毎の設定をシーン開始直前に呼び出しながら進行することになるが、この場合も演者の発声状態の変化など、その状況に応じて音声調整卓を調整しながら次のシーンを呼び出す操作を並行して行う必要があり、異なるシーン設定を呼び出したり、呼び出すタイミングが遅れたために音声が瞬断するなどの音声に関する事故が発生する要因となっている。
【0007】
本発明は、音声調整卓のオペレーションに関する上述の問題を解決するために提案されたものである。本発明の目的は、調整・設定状態を自動記憶・再現することのできる音声調整卓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の音声調整卓は、次のような構成を有することを特徴とする。
(1) 音声調整卓の音声処理部に対する調整・設定値を設定する操作部。
(2) 設定された調整・設定値を保存する記憶部。
(3) 予め定めた時刻ごとに、操作部によって設定された調整・設定値を前記記憶部に保存する自動保存部。
(4) 前記記憶部に保存された調整・設定値に従って、入力された音声信号に対して処理を行う音声処理部。
【0009】
音声調整卓の操作部に対する無操作状態が一定時間継続した場合に、その時点の調整・設定値を前記調整・設定値記憶部に保存することや、オペレータの手動操作により、その時点の調整・設定値を前記調整・設定値記憶部に保存することも、本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リハーサル中の保存操作は自動化され、オペレータが保存操作を行わずに次の調整操作を始めてしまった場合にも、リハーサル中の調整・設定状態は失われてしまうことが無くなる。また、本番中も適切なシーン設定が自動的に呼び出されるため、ヒューマンエラーによる事故を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.第1実施形態]
[1−1.実施形態の構成]
本発明の第1実施形態を、
図1に従って具体的に説明する。
【0013】
本実施形態の音声調整卓は、入出力する音声信号に対して、種々の処理を行うための操作部1を備えている。この操作部1は、フェーダー、ダイヤル、スイッチなどから構成されている。オペレータは、操作部1を使用して、音声調整卓に入力される複数のチャンネルの音声信号に対して、出力音声の選択やレベル調整及び音質の細かな補正等を行う。
【0014】
操作部1は、音声調整卓に入力される音声信号に対して、音量レベルの調整など各種の処理を行う音声処理部2に接続されている。音声処理部2には放送システムからの時計信号を受信する時計制御部15が接続され、音声処理部2は時計制御部15からの時刻情報を基準として、プレイリストに記録されている時刻と調整・設定値に従って番組の各シーンについての音声処理を行う。
【0015】
音声調整卓には、調整・設定値を3つの方法で保存する手段として、自動保存部3、手動保存部4、及び無操作時保存部5を有する。音声調整卓は、リハーサル用キューシートから保存リストを生成する保存リスト生成部6、保存リストと番組本番用キューシートからプレイリストを生成するプレイリスト生成部7、及び無操作時を判定するタイマー8を備える。
【0016】
音声調整卓は、メモリやハードディスクなどの記憶装置を備えており、この記憶装置には、音声調整卓の調整・設定値の記憶部9、タイマー8の設定時間の記憶部10、リハーサル用キューシートの記憶部11、番組本番用キューシートの記憶部12、調整・設定値を記録した保存リストの記憶部13、及びプレイリストの記憶部14が設けられている。
【0017】
自動保存部3は、リハーサル用キューシートに記録された自動保存の時刻ごとに、その時点で音声調整卓に設定されている調整・設定値をその記憶部9に記憶すると共に、保存リスト生成部6に対してその時刻及びシーン名を出力する。
【0018】
手動保存部4は、オペレータが音声調整卓の操作部1に設けられている手動記憶スイッチ(図示せず)を投入したことを検出して、その時点で音声調整卓に設定されている調整・設定値をその記憶部9に記憶すると共に、保存リスト生成部6に対してその時刻及びシーン名を出力する。
【0019】
無操作時保存部5は、オペレータによる操作部1の無操作状態がしばらくの間継続した場合に、調整・設定操作が完了したと判断して自動記憶するためのものである。この無操作時保存部5は、音声調整卓の操作部1及びタイマー8に接続されている。無操作時保存部5は、オペレータが音声調整卓の操作部1に対する操作動作を終了したタイミングに従って、タイマー8を作動させる。無操作時保存部5は、タイマー8が予め定めた一定時間を経過すると、その時点で音声調整卓に設定されている調整・設定値をその記憶部9に記憶すると共に、保存リスト生成部6に対してその時刻及びシーン名を出力する。
【0020】
キューシートは、一例として、
図2に示すリハーサル用と、
図3に示す番組本番用の2種類の表形式のファイルが使用される。これらのキューシートは、オペレータが音声調整卓の入力装置20から手作業で入力して記憶部11,12に保存しても良いし、外部のコンピュータなどで作成したものを音声調整卓にインポートしても良い。
【0021】
リハーサル用と番組本番用のキューシートには、番組名、年月日、番組の各シーンについて付されたシーン番号、シーンの開始時間と終了時間、コメントが記録される。リハーサル及び番組本番の各シーンは、このキューシートに記載された開始時間と終了時間に従って実行される。リハーサル用と番組本番用のキューシートの違いは、リハーサルの場合には各シーンの間に休止時間が入るのに対して、番組本番は各シーンが連続している。
【0022】
各シーンについての調整・設定値を自動保存する時刻は、オペレータが予め操作部1から指定するが、その指定したタイミングはリハーサル用のキューシートに「シーン保存」として記録される。
図2では、「シーン保存」が各シーンの終了時刻の1秒前に設定されている。自動保存する時刻は、予め入力装置20からキューシートに記録しておいても良い。
【0023】
本実施形態では、音声調整卓に対する操作が連続して一定時間行われなかった場合、その際の調整・設定値をその記憶部9に自動保存するが、無操作時の保存時間はオペレータが予め操作部1から指定することができる。その指定した無操作時の保存時間は、設定時間記憶部10に記憶されると共に、リハーサル用のキューシートに「無操作保存」として記録される。
図2では、「無操作保存」は3分に設定されている。無操作時において自動保存を行う時間は、予め入力装置20からキューシートに記録しておいても良い。
【0024】
番組本番用のキューシートには、番組本番時において各シーンに関する調整・設定値を切り替えるタイミングが記録される。このタイミングは、オペレータが操作部1から入力することで設定され、キューシートには、「シーン再現」として記録される。
図3では、「シーン再現」は各シーンの開始前1秒に設定されている。番組本番時において調整・設定値を切り換えるタイミングは、予め入力装置20からキューシートに記録しておいても良い。
【0025】
保存リストの記憶部13には、
図4に示すような保存リストが記憶される。この保存リストは自動保存部3,手動保存部4及び無操作時保存部5からのデータを受信した保存リスト生成部6によって生成される。保存リスト6には、番組名、年月日、保存順序を示す番号(No.)、保存時刻、シーン番号が記録される。保存リスト中の各シーン番号の中で最新の保存番号(最新の保存時刻)に相当するものについては着色表示がなされる。
【0026】
プレイリストの記憶部14には、
図5に示すようなプレイリストが記憶される。このプレイリストはプレイリスト生成部7によって生成されるもので、番組名、年月日、番号(No.)、シーン番号、再現時刻、保存番号(No.)が記録される。保存番号は、保存リスト中の保存番号に相当する。
【0027】
プレイリスト生成部7は、記憶部に記憶されている番組本番用のキューシートと保存リストに基づいてプレイリストを生成する。具体的には、番組本番用のキューシートの中から、シーン番号とその再現時刻(開始時刻からシーン再現値である1秒前を差し引いた時刻)を抽出し、これをプレイリストのシーン番号と再現時刻に割り当てる。また、保存リストからシーン番号中の最新の保存番号を抽出して、プレイリストの保存番号に割り当てる。
【0028】
自動記憶により必要としない設定・調整状態までを保存して保存領域を圧迫したり、保存リストが多すぎて検索が困難になることを防止するために、常時、定周期(例えば、1秒毎に)で保存せずに、リハーサル用キューシートによる保存や無操作時保存により、設定・調整値を保存する。
【0029】
[1−2.実施形態の作用]
(1)リハーサル時
リハーサル時における調整・設定値の保存について、
図6を参照して説明する。
【0030】
リハーサル用のキューシートには、各シーンの開始時刻と終了時刻が記録され、シーン保存時刻として、シーンの終了前1秒が記録されている。そのため、リハーサルが開始されると、各シーンの終了1秒前になると、自動保存部3がその時点の調整・設定値を調整・設定値記憶部9に記録する。
【0031】
同時に自動保存部3は、保存リスト生成部6に対して、保存時刻を送信する。保存リスト生成部6は、受信した保存時刻とそのシーン番号を書き込んだ保存リストを、保存リスト記憶部13に保存する。
図6の保存番号2,5,6,8が、自動保存部3によって保存された調整・設定値の保存番号を示している。
【0032】
各シーンの途中で、オペレータが操作部1による調整・設定値の変更を行わない場合、その無操作状態をタイマー8によって監視し、設定時間記憶部10に記録した設定時間(無操作保存タイムアウト時間t)に達すると、無操時作保存部5はその時点の調整・設定値を調整・設定値記憶部9に記録する。
【0033】
同時に無操時作保存部5は、保存リスト生成部6に対して、保存時刻とそのシーン番号を送信する。保存リスト生成部6は、受信した保存時刻とそのシーン番号を書き込んだ保存リストを、保存リスト記憶部13に保存する。
図6の保存番号1,3,4,7が、無操時作保存部5によって保存された調整・設定値の保存番号を示している。
【0034】
リハーサルが終了すると、プレイリスト生成部7は、保存リスト記憶部13に保存されている保存リストと、番組本番用キューシート記憶部12に記憶されている番組本番用キューシートに基づいて、プレイリストを生成する。この場合、保存リストからシーン番号中の最新の保存番号を抽出して、プレイリストの保存番号に割り当てる。
【0035】
(2)番組本番時
番組本番が開始されると、プレイリストに記憶されたシーン番号と再現時刻になると、それに対応する保存番号の調整・設定値が、調整・設定値記憶部9から読み込まれる。すなわち、
図5に示すプレイリストの一番左の欄に記載された再現番号に従って、各シーンの1秒前になると、再現番号に対応する保存番号の調整・設定値が調整・設定値記憶部9から読み込まれて、音声処理部2に送信される。音声処理部2は、受信した調整・設定値に従って、入力した音声信号に対する処理を行い、音声調整卓に外部に接続された出力装置に処理後の音声信号を出力する。
【0036】
[1−3.実施形態の効果]
本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)リハーサル用キューシートと、番組本番用キューシートを作成しておき、リハーサル用キューシートに記載されたシーン切り替えのタイミングで、調整・設定値を自動保存する。
【0037】
(2)リハーサル中は、オペレータの無操作を検出して、調整・設定値を自動保存する。
【0038】
(3)リハーサル用キューシートに記載されたシーン切り替えのタイミングで自動保存されたシーン設定(調整・設定値)を、番組本番用キューシートに記載されたシーン直前で再現するように、自動でプレイリスト化する。
【0039】
(4)プレイリストを保存時刻とシーンとを組み合わせて記録することで、各シーンの調整・設定値を番組本番時に自動再現する。
【0040】
(5)保存リストに保存時刻(タイムスタンプ)を付すことで、保存リストの検索性を高めることができる。
【0041】
(6)放送システムなどに設けた時計制御部15からの時計信号を受信し、自動保存や番組本番時の調整・設定値の読み込みを行うで、日時の正確性が向上する。
【0042】
[2.第2実施形態]
番組本番中はタイムスケジュールの遅延や演者の発声状態の変化など、その状況に応じて音声調整卓を調整する必要があることから、ミスオペレーションも発生し易く、そのことが原因で音声出力断などの放送事故に繋がることもある。事故の要因調査においてはオペレータの当時の作業を聞き取り再現することになるが、人の記憶を頼ることになり正確性に欠けている問題がある。
【0043】
第2実施形態は、自動保存部3あるいは無操作時保存部5に番組本番中における調整・設定値の自動保存機能を付与したものである。すなわち、
図8に示すように、自動保存部3において、番組本番中の所定の時刻ごとに、その時点の調整・設定値を記憶部9に記録させるか、無操作時保存部5において、予め定めた一定時間ごとに番組本番中の自動保存を定周期で行なう。
【0044】
第2実施形態によれば、本番中の各時間における音声調整卓の設定状態を本番終了後に再現可能となる。この機能により、オペレータに装置の設定状態を聞き取りすることなく、事故時刻の操作・設定状態を再現することが可能となり、事故解析が容易になる。
【0045】
[3.他の実施形態]
本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、次のような他の実施形態も包含する。
(1)手動保存部4を設けることなく自動保存部3と無操作時保存部5のみを設けたものや、手動保存部4と無操作時保存部5を設けることなく自動保存部3とのみを設けたもの。
【0046】
(2)保存リスト生成部6及び保存リスト記憶部13を設けることなく、各シーンについて最新の調整・設定値が保存される都度、最新の調整・設定値に対応する新たな保存番号を生成し、プレイリスト7生成部において、プレイリスト中の各シーン番号に対する保存番号を最新の保存番号に更新するもの。
【0047】
(3)各キューシート及び保存リスト、プレイリストは、実施形態に示した形式のものに限定されず、他の形式であっても良い。また、必ずしも、各データをリスト形式で保存する必要はなく、単なるテキストデータで保存することも可能である。
(4)保存リストからプレイリストを作成する場合、最新の調整・設定値を自動的に抽出する代わりに、保存リストを画面表示して、その中から手動操作により、適切な調整・設定値をオペレータが選択することも可能である。また、最新の調整・設定値の代わりに、複数の調整・設定値の平均値や、最大あるいは最小の調整・設定値は選択肢から排除するなどの処理を行うこともできる。