(54)【発明の名称】追加の強化材を使用した非反応性のろう付けによりSiC系材料製の部品を接合する方法、ろう付け組成物、ならびにそのような方法により得られる接合部および組付体
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非反応性のろう付けにより炭化ケイ素系材料製の少なくとも2つの部品を接合し組み付けるための方法であって、部品は、非反応性ろう付け組成物に接触させられ、部品およびろう付け組成物により形成された組付体は、ろう付け組成物を完全または少なくとも部分的に溶融するのに十分なろう付け温度に加熱され、部品およびろう付け組成物は、ろう付け組成物の固化後に耐火性の接合部が形成されるように冷却され、非反応性ろう付け組成物は、原子百分率で60%から66%のケイ素および34%から40%のニッケルからなる二元合金であり、部品をろう付け組成物に接触させる前に、強化材の追加、供給が行われ、
強化材の追加、供給が、ろう付け組成物中、および/または組み付けられ接合される部品の少なくとも1つの、接合され組み付けられる表面の少なくとも1つの上、および/または組み付けられ接合される部品の少なくとも1つの、接合され組み付けられる表面の少なくとも1つの近辺、および/または組み付けられ接合される部品の、接合され組み付けられる表面の間に行われる、方法。
強化材が粒子または繊維の形態である場合、これらの粒子またはこれらの繊維は、強化粒子または繊維の懸濁液またはペーストを得るために有機結合剤中に懸濁され、組み付けられる部品の少なくとも1つの、接合され組み付けられる少なくとも1つの表面は、強化粒子または繊維の懸濁液またはペーストでコーティングされる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
前記強化材が、ろう付け組成物中、および/または組み付けられ接合される部品の少なくとも1つの、接合され組み付けられる表面の少なくとも1つの上に追加、供給される、請求項10に記載の方法。
ろう付け組成物の粉末が形成され、前記粉末は、ろう付け組成物の懸濁液またはペーストを得るために有機結合剤中に懸濁され、得られたろう付け組成物の懸濁液またはペーストは、接合され組み付けられる部品の少なくとも1つの、少なくとも1つの表面上に堆積される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
組み付けられ接合される部品の少なくとも1つの、接合され組み付けられる少なくとも1つの表面が、ろう付け組成物の懸濁液またはペーストでコーティングされ、組み付けられ接合される部品の、接合され組み付けられる表面は、ろう付け組成物の懸濁液またはペーストがその間に挿入されるように接触させられる、請求項14に記載の方法。
組み付けられ接合される部品の接合される表面が、組み付けられ接合される部品の、接合され組み付けられる表面により形成される接合部の近辺に、ろう付け組成物の懸濁液またはペーストを受容することができる自由表面を形成するように接触させられてその間にオフセットを残し、次いで、ろう付け組成物の懸濁液またはペーストが、前記自由表面上に堆積される、請求項14に記載の方法。
組み付けられ接合される部品の、接合され組み付けられる表面により形成される接合部が、前記自由表面も被覆する強化材により占有され、その上にろう付け組成物の懸濁液またはペーストが堆積される、請求項16に記載の方法。
組み付けられ接合される部品の、接合され組み付けられる少なくとも1つの表面が、多孔質であり、ろう付けプラトーが、1分から30分の時間の1020℃から1080℃の温度で観察される、請求項19に記載の方法。
炭化ケイ素系材料が、常圧焼結炭化ケイ素(「PLS−SiC」);Si浸透炭化ケイ素(「SiSiC」または「RBSC」);多孔質再結晶炭化ケイ素(「RSiC」);SiC層でコーティングされた黒鉛で構成される黒鉛ケイ素(「C−SiC」);SiC/SiC複合材;自己回復性マトリックスを用いたSiC/SiC複合材;C/SiC複合材;SiC単結晶;別のセラミックを用いたSiC複合材、の中から選択される、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
炭化ケイ素系材料製の部品の非反応性のろう付けのための組成物であって、請求項1、3および4のいずれか一項に記載の非反応性ろう付け組成物と、追加の強化材とを含む組成物。
【背景技術】
【0011】
セラミック製の、特にSiC製の大きなサイズの部品を製造することは困難であることが知られている。大きなサイズの炭化ケイ素の主構成要素を焼結した後の許容誤差は制御しにくく、これらの構成要素の機械加工は、費用に関する理由から許容されない。
【0012】
さらに、同じ理由から、炭化ケイ素等のケイ素系化合物で複雑な形状の部品を製造することは、一般に困難である。
【0013】
したがって、多くの場合、単純な形状および/または小さなサイズのセラミックの要素から、大きなサイズおよび/または複雑な形状の部品または構造物を製造し、次いでこれらの要素を組み付けて最終構造物を形成することが好ましい。
【0014】
前記技術は、例えば900℃まで達し得る、さらには1000℃まで達し得る使用温度を有する熱交換器型の構造物および構造要素を炭化ケイ素で製造するために特に必要である。
【0015】
炭化ケイ素等のセラミックの用途において使用される、例えば900℃から1000℃に近い高温のために、有機接着剤を用いた結合によるこれらのセラミックの接合は、この種の組付体の使用温度が最高200℃を超えることができないことから、除外される。
【0016】
ステープル留めまたはネジ留め等の完全に機械的な組付では、部品間の部分的で無作為な接触しか確実とならない。このようにして得られた組付体は、不透過性となり得ない。機械的強度は、ステープルおよびネジによってのみ確実とされ、制限されている。接合部の良好な機械的強度を確実とするためには、接合される部品間の良好な接着を形成することが不可欠であり、これはネジまたはステープルでは不可能である。
【0017】
さらに、セラミックの基板または部品を溶融することは不可能であり、特に、炭化ケイ素は溶融する前に分解するため、金属充填剤(TIG、電子またはレーザ溶接)を用いた、または用いない、エネルギービームに頼った、また接合される部品の部分溶融を含む溶接による従来の接合技術は、セラミックの組付には使用することができない。
【0018】
セラミックの耐火性組付体を得るための通常の技術は、固相拡散結合、および焼結または共焼結による接合である。
【0019】
拡散接合による組付の場合、2つの基板間の原子相互拡散を可能とするために、界面間に高温で圧力が印加される。温度は、最も耐火性の低い材料の融点よりも常に低く維持されなければならず、したがって、系には液相が存在しない。この種の接合は、単一方向の加圧下、またはアイソスタシーチャンバー(isostatic chamber)内で得られる。セラミックを形成する原子は接合部でほとんど拡散しないため、拡散結合は、2つの金属合金の接合に良好に適合されるが、セラミック材料の接合にはほとんど適合されない。さらに、この方法は、炭化ケイ素複合材等の多孔質で壊れやすい基板および材料を圧縮することを必要とし、この機械的圧縮負荷下ではそれらが大きく損傷を受ける危険があるため、機械的観点からは許容されない。
【0020】
また、SiC製の部品の焼結または共焼結による接合は高圧を必要とするが、このプロセスはSiC元素間の相互拡散の原理に基づいているため、さらに高温および長い保持時間を必要とする。
【0021】
換言すれば、固相拡散結合および焼結による接合は、以下の理由により、実行の観点から限定的であるという欠点を有する。
【0022】
− 固相拡散結合では、一軸加圧が使用される場合部品の形状は単純でなければならず、さもなければ、例えばジャケットの製造、真空封止、熱間等静圧圧縮成形、HIP(熱間等静圧圧縮成形)が使用される場合にはジャケットの最終的な機械加工を伴う、複雑な工作および準備が必要となる。
【0023】
− 共焼結または焼結による接合では、問題は同じである(部品の形状、実行の複雑性)が、さらに、接合される2つの材料の間に挿入される充填剤粉末の焼結を制御する必要がある。
【0024】
− これらの2つの技術は、使用されるプロセスが固体状態拡散に頼っているため、高温での長い保持時間(1時間から数時間)の使用をさらに必要とする。
【0025】
上記を鑑みて、要約すると、特に良好な機械的強度、および任意選択で組付体の十分な封止を保証するためには、ろう付け等の液相を使用したプロセスのみが想定され得る。
【0026】
ろう付けは、低コストの技術であり、実行が容易で、最も一般的に使用されている。ろう付けを使用して、複雑な形状の部品を作製することができるが、ろう付け操作は、接合される部品間、または2つの部品間の接合部の近辺に、ろう付け合金と呼ばれる合金充填剤を設置し、この合金を溶融することに限定され、この合金は、接合される界面を濡らしてその上に広がり、部品間の接合部を充填することができる。冷却後、ろう付け合金は固化して、組付体の結束を確実とする。
【0027】
炭化ケイ素系材料の部品用のほとんどのろう付け組成物は、耐火性が不十分である。これらは、一般に、1000℃未満、さらにはそれをはるかに下回る融点を有する金属合金により形成されたろう付け組成物である。前記溶融温度は、800℃または900℃、例えば850℃から880℃の領域の温度での用途では、明らかに不十分である。
【0028】
また、これらの金属ろう付け組成物の一部を成すほとんどの化学元素は、500℃以降では炭化ケイ素と極めて反応性であり、壊れやすい化合物をもたらす。
【0029】
その結果、概して1000℃を超えるより高温でのろう付けでは、前記ろう付け組成物またはろう付け合金は、ろう付け操作中だけでなく、固体状態拡散による機能的な使用中でも、炭化ケイ素系材料を化学的に攻撃する。
【0030】
また、例えばAg−Cuマトリックスおよび活性Ti元素を低濃度で使用したAgCuTi合金等、最も反応性の低い合金はまた、最も耐火性が低いことも指摘される。したがって、概して850℃まで、さらには880℃までの使用温度を有するある程度耐火性の組付体の用途である、本発明により特別に関連する用途において、銀、または銀−銅、銅、ニッケル、鉄またはコバルト、白金、パラジウムまたは金を主に含有する全ての反応性ろう付け組成物は、それらの炭化ケイ素との強い反応性のために除外されるべきである。
【0031】
より耐火性で高いケイ素含量を有するろう付け合金、ろう付け組成物の配合物が、文献に示されている[1、2、3]。これらのろう付け組成物は、SiCとの反応挙動をほとんど有さず、さらには非反応性であり、これにより壊れやすい化合物の形成が防止される。しかしながら、この非反応性または非常に低い反応性の基準は、ろう付けされた接合部の良好な機械的強度を保証するための十分条件ではない。文献中、二元ケイ素系ろう付け合金の降伏強さの値は、ケイ素系非反応性ろう付け組成物に関与する第2の元素に関連して最も変動しやすい。
【0032】
例えば、非反応性Fe−Si系(45重量%Fe−55重量%Si)の場合、文献[4]に示されるこの組成物の非反応性にもかかわらず、文献[3]は、約2MPaという極めて低い最終引張強度に言及しており、一方、Cr−Si系(25重量%Cr−75重量%Si)の場合、同文献[3]は、約12MPaというより高い値を示している。
【0033】
非反応性Co−Si合金(90重量%Si−10重量%Co)の場合、文献[1]は、圧縮/せん断下で約100MPaという値に言及している。
【0034】
ケイ素系ろう付け組成物の特性、特に機械的特性は、完全に予測不可能であり、非常に近い種類のものであっても、既知のSi系ろう付け組成物の機械的特性から推測することは全く不可能である。
【0035】
換言すれば、特にSiCの部品をろう付けするためのケイ素系ろう付け組成物を調製することが望まれる場合、Si系ろう付け組成物のいかなる修正も、どれ程小さいものであっても、ケイ素とろう付けされる金属の種類またはその割合に関するものであろうとなかろうと、組成物の特性、特にその機械的特性において、予測不可能な、さらには大きい思わぬ変化をもたらし得るため、他の既知のSi系ろう付け組成物が示す許容され得る機械的特性を参照することは全く不可能である。
【0036】
結論として、所与の二元Si−X系(式中、Xは金属である)の力学を予測することは不可能であり、Xの割合の関数としての前記系の力学を予測するのはさらに不可能である。
【0037】
文献[1、2]および[3]におけるろう付け組成物のろう付け温度は、概して1300℃を超える。これらのろう付け温度は、例えば、Ti−Si組成物(22−78重量%)の場合1355℃、Cr−Si組成物(25−75重量%)の場合1355℃、Co−Si組成物の場合1400℃から1450℃、およびRu
2Si
3組成物の場合1750℃である。
【0038】
この接合方法の有効性には、炭化ケイ素表面上に同時に生じる不動態化酸化ケイ素層の熱力学的不安定化のために、1300℃を超えるろう付け温度を必要とするが、これは、これらの酸化ケイ素層が、真空中でろう付けが行われたとしても、ろう付け組成物による濡れに有害であるためである。
【0039】
したがって、高いケイ素含量を有し1300℃を超える温度で使用される上述のろう付け合金は、1300℃への暴露後に特性が劣化する炭化ケイ素系材料の基板のろう付けには好適ではなく、1150℃で、さらには1100℃以下で劣化するものにはなおさら好適ではない。これは特に、1300℃超で劣化する、さらには1150℃、さらには1100℃超で劣化するいくつかのSiC/SiC複合材において該当する。
【0040】
確かに、文献[3]は、実施例2において、1120℃で16時間ろう付けされ得るNi−Siろう付け組成物(65重量%Ni−35重量%Si、すなわち47原子%Ni−53原子%Si)を提案している。このろう付け温度は、本発明において使用される1100℃という好ましいろう付け温度よりも若干高いが、非常に長いろう付け保持時間を使用する。しかしながら、この組成物を用いて得られる接合部の機械的強度(最終引張強度375p.s.i.、すなわち約2.6MPa)は、文献[5]において言及されているこの組成物の非反応性にもかかわらず、非常に低い。この機械的強度は、このろう付け組成物のSiCとの低い反応性にもかかわらず、多くの用途、特に本明細書に関連する主な用途において不十分である。
【0041】
文献[5]において、この文献以前の研究では、1633Kでグラファイトと平衡状態にあるニッケル中のSiの濃度は、37±3原子%であることが示されたこと、および、結果として、この値を超えるケイ素含量のNi−Si合金は、1633KでSiCとのいかなる反応性も示さないことが推測され得ることが指摘されている。
【0042】
この文献において、40、50、67および85原子%のSi濃度を有するNi−Si合金が調製され、濡れ性試験中、40原子%を超えるケイ素含量の場合、SiC/Ni−Si界面は反応性ではないことが示されているが、これらの合金に関する機械的データは記載されていない。
【0043】
文献[5]に記載されている研究は、濡れ角および接着(固体/液体界面における熱力学的接着)仕事の調査を中心としており、この接着は、固体/液体界面の、2つの固体/気体および液体/気体表面への可逆的な分離に必要な仕事で定義される。
【0044】
この文献においては、ろう付け組成物として調製されたNi−Si合金を使用して炭化ケイ素の部品をろう付けすることにより得られる接合はなされておらず、また、これらの組付体の可能な機械的特性に関する示唆は記載されていない。
【0045】
最後に、これらのNi−Siろう付け合金において、液相線と固相線との間の範囲は非常に広く、既に上述したように、966℃以降に溶融が開始し(Ni66重量%において、および実際には少なくとも40原子%のケイ素の範囲において、文献[5]におけるNi−Si相図に基づくと、966℃に1つ、および964℃に1つ、計2つもの共晶融点が存在するため)、これにより適用温度が900℃未満に制限されることが留意される。
【0046】
例えば、30Ni−70Si(重量%)の組成物または17Ni−83Si(原子%)の組成物では、966℃で溶融が開始し、合金は1320℃で完全に液体であり、このことから約1350℃でのろう付けが必要であり、これは本明細書において目標とされる好ましい限界温度を大きく上回る。
【0047】
文献[6]は、融点が1150℃であり、1200℃のろう付け温度で使用されるろう付け合金Ni−13.4Cr−40Si(原子%)に言及している。著者らは、ろう付けされた接合部に対する機械的特性決定は行っておらず、非反応性を示す冶金学的特性のみが示されている。
【0048】
この合金に対する機械的試験結果は記載されておらず、これは、ろう付けの良好な機械的強度が全く保証され得ないことを意味している。
【0049】
文献[2]は、1200℃でろう付けされるPt−Si合金を提案している(実施例3)。このろう付け組成物のPt含量は非常に高く(77重量%Pt)、非常に費用のかかるプロセスをもたらす。この欠点は、大きなサイズのろう付け部品を得るためには許容されない。
【0050】
最後に、文献[7]は、50重量%未満、好ましくは10重量%から45重量%のSi含量を有し、Li、Be、B、Na、Mg、P、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Zn、Ga、Ge、As、Rb、Y、Sb、Te、Cs、Pr、Nd、Ta、WおよびTiの群から選択される少なくとも2種の元素が追加されたろう付け合金を提案している。この元素群において、その少なくとも1種は、好ましくは、Fe、Cr、Co、V、Zn、TiおよびYの中から選択される金属である。ニッケルは挙げられていない。
【0051】
文献[7]における例は、三元ろう付け組成物Si−Cr−Co(11:38.5:50.5重量%)、Si−Cr−Co(40:26:34重量%)、Si−Fe−Cr(17.2:17.5:65.3重量%)、およびSi−Fe−Co(20:20:60重量%)、ならびに、それぞれ1230℃、1235℃、1460℃および1500℃の温度でのそれらのろう付けを記載している。
【0052】
文献[7]におけるろう付け組成物は、ニッケル元素を含有しない。
【0053】
1300℃未満のろう付け温度を有するろう付け組成物に関して、単に「強固」な結合が得られることが言及されているだけであり、接合部の良好な機械的強度が効果的に得られることを証明する機械的試験は記載されていない。また、SiC/ろう付け充填剤の低い反応性について言及されず触れられてもいない。
【0054】
したがって、上記を踏まえ、500℃から850℃、さらには880℃、特に500℃超から850℃まで、さらには880℃までにおける組付体の十分な機械的強度、および任意選択で接合部の封止もまた確実とする、炭化ケイ素系材料の部品、より具体的には炭化ケイ素のある程度耐火性の基板のろう付けにより接合部を得ることが可能である方法が必要とされており、未だに達成されていない。
【0055】
この方法は、特に1150℃以下、好ましくは1100℃のろう付け温度の使用を可能としなければならず、この温度は、接合されるいくつかのSiC系基板、部品に対しては超過しないことが絶対に必須である。
【0056】
部品、基板がその十分な完全性およびろう付けによる接合操作後の初期性能レベルを維持することが、事実上不可欠である。
【0057】
したがって、所望の使用温度、すなわち850℃まで、さらには880℃まで達することができるとともに、炭化ケイ素系材料の部品、基板を、これらの材料を劣化させ得る温度範囲に供することを回避する、ろう付け組成物を使用したろう付け方法が必要とされている。
【0058】
換言すれば、接合されるSiC系材料に依存して、1020℃から1150℃の間で定義される限界温度、特に1100℃の限界温度を概して超過しないろう付けサイクルを使用して、ある程度耐火性のろう付けされた接合部(約850℃、さらには880℃までの使用温度を有する)を得ることができるろう付け方法が必要とされている。
【0059】
多くの炭化ケイ素系材料、特にいくつかの複合材は、1100℃を超える温度で不可逆的に劣化するが、これは、SiCマトリックスおよびSiC繊維で形成されたいくつかの複合材、例えばSNECMA Propulsion Solide社からCerasep A40C(登録商標)の商品名で入手可能な複合材において特に該当する。
【0060】
さらに、1150℃以下、例えば1100℃の温度でのろう付けプラトーの保持時間は、複合材の劣化を回避するために、好ましくは、1分または数分から最長2時間または3時間でなければならない。
【0061】
一方、純炭化ケイ素は、1450℃でのろう付けに耐える。
【0062】
換言すれば、第一に、約850℃、さらには880℃までの使用温度において、炭化ケイ素系基板の完全な耐火能力を使用することができ、第二に、1150℃以下、好ましくは1020℃から1150℃の範囲内、より好ましくは1100℃未満、さらに好ましくは1080℃から1100℃の範囲内のろう付け温度という、基板の劣化温度未満のろう付け温度でろう付けすることができる、ろう付け方法および組成物、ろう付け合金が必要とされている。
【0063】
また、その形状および/またはそのサイズにかかわらず、1150℃以下、好ましくは1020℃から1150℃の温度で、炭化ケイ素系材料製の部品のある程度耐火性の組付体(使用温度は概して850℃から880℃)のろう付けを行うことができる方法が必要とされている。
【0064】
特に、1150℃未満、好ましくは1020℃から1150℃の温度で、特にろう付けされる表面積が広い大きなサイズおよび/または複雑な構造の炭化ケイ素系部品のろう付けを行うことができる、ろう付け方法および関連したろう付け組成物が必要とされている。
【0065】
さらに、先行技術における方法および組成物のいずれも、ある程度耐火性の接合部をもたらすSiCの構造要素を作製する上で基本となる、本発明者らにより明らかとされた以下の基準を同時に満たさない。
【0066】
1)ろう付け組成物は、炭化ケイ素系材料の2つの部品間の強固な結合が得られることを可能としなければならず、これには、非反応性の、すなわち炭化ケイ素と化学的に適合性であり、炭化ケイ素と壊れやすい化合物を形成しないろう付け組成物が必要である。しかしながら、強固な結合は予測不可能であるため、非反応性は、強固な結合の形成を保証するものではない。非反応性は、強固な結合を得るための条件であるが、十分ではない。例えば、文献[3]において挙げられているFe−Si系は、非反応性であるが、その機械的強度は非常に弱い。
【0067】
2)ろう付け組成物は、炭化ケイ素の良好な濡れ、および炭化ケイ素に対する良好な接着を得なければならない。この非常に良好な濡れは、特に接合部の良好な充填品質を確実とするため、接合部の品質に不可欠であるが、機械的な挙動の特性は予測不可能であるため、保証された良好な機械的挙動を可能としない。
【0068】
3)ろう付け組成物は、全ての加熱デバイス、特に高速および/または局所的加熱デバイスと適合しなければならない。
【0069】
4)ろう付け組成物は、良好な機械的強度を有する接合部の形成を可能としなければならない。
【0070】
5)ろう付け組成物は、その調製および実装を容易化するために、限られた数の元素で形成されなけらばならない。
【0071】
6)ろう付け組成物は、貴金属等の高価な元素を含有してはならない。
【0072】
最後に、方法および関連したろう付け組成物は、任意の種類の炭化ケイ素系材料のろう付け、接合を可能としなければならず、任意の特定の炭化ケイ素系セラミックに容易に適合可能でなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0075】
したがって、本発明の目的は、とりわけ上記の必要性を満たし、とりわけ上に記載された要件および基準の全てを満たし、先行技術の方法において見られる欠点、欠陥、制限を排除し、先行技術の方法の問題を解決する、炭化ケイ素系材料製の部品または構成要素のろう付けによる接合のための方法を提供することである。
【0076】
特に、本発明の目的は、500℃を超え850℃まで、さらには880℃までの温度で、組付体の十分な機械的強度を得ることができ、1150℃以下、好ましくは1020℃から1150℃の範囲内、より好ましくは1100℃以下、例えば1080℃から1100℃のろう付け温度を使用し、任意選択で、封止性に優れた接合部を得ることができる、炭化ケイ素系材料製の部品または構成要素のろう付けによる接合のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0077】
この目的および他の目的は、本発明に従い、非反応性のろう付けにより炭化ケイ素系材料製の少なくとも2つの部品を組み付け接合するための方法であって、部品は、非反応性ろう付け組成物に接触させられ、部品およびろう付け組成物により形成された組付体は、ろう付け組成物を完全または少なくとも部分的に溶融するのに十分なろう付け温度に加熱され、部品およびろう付け組成物は、ろう付け組成物の固化後にある程度耐火性の接合部が形成されるように冷却され、非反応性ろう付け組成物は、原子百分率で60%から66%のケイ素および34%から40%のニッケルで構成される(からなる)二元合金であり、ろう付けの前に、強化材の追加、供給が行われる方法により達成される。
【0078】
ろう付け組成物の溶融は、概して、液相線以上の温度において液体状態である場合、完全で全体的であるとみなされる。ろう付け組成物の溶融は、概して、固相線と液相線との間にある温度で半固体、粘稠性、軟化状態であると判定され得る状態である場合、部分的であるとみなされる。
【0079】
概して、ろう付けは、1150℃以下のろう付け温度で行われ、好ましくは、ろう付け温度は、1020℃から1150℃、より好ましくは1080℃から1100℃である。
【0080】
ある程度耐火性の接合部とは、この接合部が、概して、850℃まで、さらには880℃までの動作、使用温度に耐えることができることを意味する。
【0081】
1150℃以下、好ましくは1020℃から1150℃、より好ましくは1080℃から1100℃の温度での、特定のろう付け組成物を使用したろう付け方法である本発明の方法は、先行技術において説明されていなかった。
【0082】
特に、驚くべきことに、1150℃以下、好ましくは1020℃から1150℃、より好ましくは1080℃から1100℃の温度での、炭化ケイ素系材料製の部品のろう付けを可能とする、本発明に従い使用される特定のろう付け組成物は、上に挙げた先行技術の文献においては全く言及されていない。
【0083】
例えば、文献[7]は、そのうち少なくとも2種がケイ素とのろう付け組成物を形成する(ケイ素は常に50重量%未満の割合まで存在する)ために選択されなければならない27元素のリスト中で、ニッケルに言及していない。このリスト中、Fe、Cr、Co、V、Zn、TiおよびYが好ましく、そのためにますますニッケルは好ましい元素の中に挙げられていない。
【0084】
ケイ素、クロムおよびコバルトの合金、ケイ素、クロムおよび鉄の合金、ケイ素、鉄およびコバルトの合金である、この文献中の特に好ましいろう付け合金のいずれも、またこの文献中に例示されているろう付け組成物のいずれも、ニッケルを含有しない。
【0085】
さらに、この文献に記載される合金は、本発明において使用される二元Si−Ni合金よりもはるかに複雑である。この文献におけるろう付け合金は、調製および特性の制御が二元合金の調製および特性の制御よりもはるかに困難である、少なくとも複数構成成分の三元合金である。
【0086】
文献[7]に記載の実施例におけるろう付け組成物は、40重量%未満のSi含量を有する三元SiFeCo、SiFeCr、SiCrCo系に限定される。これらの組成物は、ニッケルを含有せず、全体的に、27種の可能な追加元素のリストと比較してはるかに少ない数の元素を含有する。また、本発明のろう付け組成物は、45重量%を超えるケイ素濃度、すなわち文献[7]中に示されるSi濃度よりも高いSi濃度を有することを付け加えるべきである。
【0087】
文献[7]は、少なくとも3種の元素を含有する合金に関するため、二元ろう付け合金の調製につながり得るいかなる示唆も含んでいない。また、文献[7]は、ニッケルの選択につながり得るいかなる示唆も含んでおらず、またSiCに適合する二元ろう付け合金を調製するための、ならびに1020℃から1150℃、好ましくは1080℃から1100℃の温度でのSiC系部品のろう付け、およびこれらの部品の効果的な接合を確実とする、ニッケルの特定の含量につながり得る示唆はなおさら含まない。
【0088】
文献[5]において、SiCの濡れ性は、純ニッケル、純ケイ素ならびに40、50、67および85原子%のケイ素を含む合金に関して試験されている。上記で既に指摘されているように、これらの合金を用いてろう付け操作は行われておらず、この文献は、これらの合金を用いて作製され得る組付体の可能な機械的強度に関するいかなるデータも提供していない。
【0089】
40原子%を超えるSi含量を有する合金によるSiCの非反応性および良好な濡れ性に関するデータのみが開示されている。上記のように、合金の良好な濡れ特性および/または非反応性は、SiCの部品を接合するために使用される場合のこの合金の良好な機械的挙動、またはこの組付体の良好な機械的特性を保証することは全くできない。
【0090】
特定の非反応性のろう付け組成物の使用に加えて、本発明の第2の不可欠な特徴は、ろう付け前のSiCおよび/またはC製の強化材の追加、供給である。
【0091】
SiCおよび/またはC製の強化材の追加は、第一に、強化材およびSiC系ろう付け材料を含む接合組成物の係数の完全な適合を可能とし、第二に、例えばろう付けされる部品間に強化材を事前に配置することにより、例えば500μmを超える、さらには1mmから2mmの非常に厚い接合部の形成を可能とし、この強化材は、ろう付け合金の接合部への毛管浸透(毛管構成におけるろう付け)を確実とする。
【0092】
先行技術において使用されている手法とは対照的に、本発明の方法は、500μmよりはるかに大きい厚さの非常に厚い接合部の形成を可能とする。
【0093】
文献[2]は、接合部に関して達成される厚さを特定していない。
【0094】
換言すれば、本発明の方法において使用される非反応性ろう付け組成物は、SiC系材料との優れた化学的適合性を確実とし、その良好な濡れを達成してそれに対する良好な接着を得、さらに、材料とろう付け合金との間の膨張係数の差異の結果冷却時に生じる残留応力を制限するために、本発明による接合部における全体的組成は、膨張係数がSiC系材料の膨張係数に近い金属−ケイ素合金ならびにSiCおよび/またはC強化材を含む。これは、接合部の厚さが大きいほど、または機械的応力が大きいほど、なおさら該当する。本発明による方法を用いて、接合部の調製中または組付体の機能的な使用中に誘発される、部品または構成要素の寿命に極めて有害な亀裂が回避される。
【0095】
さらに、本発明において使用される、強化材と組み合わされたろう付け組成物は、強化材がこれらのろう付け組成物により湿潤され得る毛管を形成するため、例えば500μmを超える非常に厚い接合部の充填を可能とする。
【0096】
本発明の方法は、必要性を満たし、上述の全ての要件および基準を満たし、先行技術の方法の欠点を有さない。
【0097】
特に、本発明の方法は、初めて、非常に複雑となり得るその構造および/またはそのサイズとは無関係に、炭化ケイ素系材料製の部品の、ある程度耐火性の、すなわち850℃まで、さらには880℃までの使用温度を有する組付体の作製を可能とする。
【0098】
本発明の方法は、全ての場合において、特に、ろう付け組成物による接合部の良好な充填を確実とし、全く驚くべき様式で、周囲温度、および特に500℃を超え850℃〜880℃までの高温での組付体の優れた機械的強度、および任意選択で接合部の非常に良好な不透過性、耐漏洩性を確実とする。
【0099】
本発明の方法は、さらに、単純で、信頼性があり、実行が容易で、全体的に低コストである。
【0100】
換言すれば、本発明の複数の利点および驚くべき効果は、以下のように列挙することができるが、この列挙は、限定として解釈されるべきではない。
【0101】
− 選択されるろう付け合金の組成に関して、1020℃から1150℃の間でいくつかのろう付け温度が可能であり、したがって異なる仕様に適合することができる。
【0102】
− 本発明により得られる組付体は、500℃を超える、例えば850℃、さらには880℃に達し得る最高使用温度であっても、炭化ケイ素系基板間の保証された良好な機械的接着性を可能とする。「結束」様式において破裂が生じ、すなわち、炭化ケイ素基板内に亀裂が生じ、ろう付けされた接合部には生じない。
【0103】
− ろう付け温度は、1150℃以下、好ましくは1020℃から1150℃、より好ましくは1080℃および1100℃であり、したがって、本発明の方法により、複合材部品等の1150℃を超える温度に耐えられない炭化ケイ素系部品、基板を、セラミックマトリックス、例えばCerasep A40C(登録商標)に接合することが可能である。換言すれば、本発明の方法により、1150℃、さらには1100℃、さらには1040℃以降で劣化するSiC系材料のろう付けを得ることが可能である。明らかに、本発明の方法は、1300℃を超えるろう付け温度を使用することができる純粋またはほぼ純粋なSiC、例えば焼結SiCに適用されるが、より不安定な材料にも、これらの熱的により不安定な材料に適合されるろう付け組成物を使用して適用される。
【0104】
− 驚くべきことに、本発明の方法において使用される1150℃以下、好ましくは1020℃から1150℃、より好ましくは1080℃から1100℃のろう付け温度にもかかわらず、本発明のろう付け合金のろう付け組成物の、接合される炭化ケイ素基板、部品の表面に対する優れた濡れ性が確認されている。したがって、この表面の良好な濡れ性を用いて、本発明に従い、毛管ろう付け(capillary brazing)を行うことが可能であるが、これは、本発明のろう付け組成物が、数ミクロンから数十ミクロンの接合部だけでなく、厚さが500μmに達し得るより厚い接合部に対しても、ろう付け操作中に部品間の接合部を単独で充填することができるためである。
【0105】
− ろう付け合金の炭化ケイ素系基板との非反応性は、走査型電子顕微鏡のスケールで観察された。界面において、複雑で多孔質の脆弱な領域は見られない。
【0106】
− 本発明の方法により得られるろう付けは、可逆的である。したがって、例えばその修復のために、ろう付け合金の第2の溶融操作中に炉内でこのろう付け合金を溶融することにより、部品、基板を劣化させることなく、組み付けられた部品、基板を解体、分解することが可能である。部品、基板はまた、化学的な攻撃により分離することもできる。換言すれば、本発明の方法は、炭化ケイ素材料の接合された部品の修復を可能とする。これは、修復を目的として、接合部の特性を劣化させることなく、それらの部品を必要に応じて第2のろう付けサイクルに供することができることを意味する。この修復のための能力は、本発明において使用されるろう付け合金の炭化ケイ素との非反応性または難反応性により可能となる。
【0107】
− 本発明の方法により得られる別の卓越した特性は、ろう付け後に得られた接合部の均質性、および形成された接合部の非常に良好な機械的挙動である。
【0108】
− 本発明の方法において、接合部は、毛管構成であっても、本発明のろう付け組成物で良好に充填されるため、1150℃以下の温度でのろう付け操作前に、ろう付け組成物によりSiC材料の部品、基板を金属化することは必要ではない。
【0109】
− さらに、本発明の方法において、特に1150℃未満の温度でのろう付け操作前に、SiC系材料の部品、基板上に炭素を堆積させる必要はない。濡れの運動学は急速であり、良好な濡れ角が存在する。
【0110】
例えば、Cerasep A40C(登録商標)SiC/SiC複合材上では、角度は、1100℃で5分間の保持時間後に約40°、30分の保持時間後に約30°であり、焼結SiC上では、1100℃で5分間の保持時間後に約60°、30分後に40°未満である(実施例1および2を参照されたい)。接合部は、毛管構成であっても、本発明のろう付け材料で良好に充填される。
【0111】
− 本発明のろう付け組成物は、いかなる貴重な化学元素も含有せず、特に、多くの先行技術の組成物と比較してろう付け材料のコストおよびそれらが使用される方法のコストを制限する、白金またはロジウム族からの金属を含有しない。
【0112】
− 本発明の方法により得られるろう付けされた接合部は、概して不透過性である。したがって、本発明の方法は、ろう付け合金組成物に依存して850℃から880℃の最高温度に耐えなければならない封止操作に適合される。
【0113】
既に上述したように、ろう付け組成物、より具体的にはSiCをろう付けするためのろう付け組成物の挙動は、極めて予測不可能であり、いかなる状況においても、同様のろう付け組成物の挙動から推測することはできない。
【0114】
有利には、本発明のろう付け組成物は、原子百分率で63%から65%のケイ素および35%から37%のニッケルで構成される(からなる)二元合金であってもよい。
【0115】
本発明の好ましい組成物は、原子百分率で64%のケイ素および36%のNi、すなわち質量百分率で54%のNiおよび46%のSiで構成される(からなる)二元合金である。
【0116】
この好ましい組成物は、966℃の固相線温度、および1070℃の液相線温度を有する。
【0117】
上で特定された有利なパーセンテージにより定義される異なるろう付け組成物は、先行技術において説明されておらず、また示唆されてもいない。
【0118】
部品をろう付け組成物に接触させる前、ろう付け前に、強化材の追加、供給が行われる。この追加は、ろう付け組成物中、および/または接合され組み付けられる部品の少なくとも1つの、接合される表面の少なくとも1つの上、および/または組み付けられ接合される部品の少なくとも1つの、接合され組み付けられる表面の少なくとも1つの近辺、および/または組み付けられ接合される部品の、接合され組み付けられる表面の間に行われる。
【0119】
この強化材は、SiCおよびC等のセラミックの中から選択される材料で作製されてもよい。
【0120】
この強化材は、粒子、例えば粉末;繊維;不織布;織布;フェルトまたはフォームの形態であってもよい。
【0121】
強化材の追加は、ろう付け組成物の体積に対して最大50体積%、好ましくは1体積%から49体積%、より好ましくは5体積%から49体積%の量で行われてもよい。
【0122】
有利には、強化材が粒子または繊維の形態である場合、これらの粒子またはこれらの繊維は、強化粒子または繊維の懸濁液またはペーストを得るために有機結合剤中に懸濁されてもよく、組み付けられ接合される部品の少なくとも1つの、接合され組み付けられる少なくとも1つの表面は、強化粒子または繊維の懸濁液またはペーストでコーティングされてもよい。
【0123】
有利には、例えばろう付け組成物中、および/または組み付けられ接合される部品の少なくとも1つの、接合され組み付けられる表面の少なくとも1つの上への強化材の追加または供給の前に、強化材は、高真空下、1300℃から1500℃、例えば1400℃の温度で、2時間から4時間、例えば3時間の熱処理に供され、次いで、強化材は、例えば同日に使用されない場合、任意選択で、不活性雰囲気中、例えばアルゴン雰囲気中で保存される。
【0124】
SiCは酸化し、炭素は酸化しないため、この熱処理は、特に繊維または粒子形態のSiC強化材に特に適用される。
【0125】
より一般的には、この熱処理は、例えば粉末形態の使用される強化材が極めて酸化される場合に必要であることが分かり得る。
【0126】
有利には、本発明の方法において、ろう付け組成物の粉末を形成し、ろう付け組成物の懸濁液またはペーストを得るためにこの粉末を有機結合剤中に懸濁させ、得られたろう付け組成物の懸濁液またはペーストを、組み付けられ接合される部品の少なくとも1つの、少なくとも1つの表面上に堆積させることが可能である。
【0127】
例えば、組み付けられ接合される部品の少なくとも1つの、接合される1つの表面を、ろう付け組成物の懸濁液またはペーストでコーティングし、次いで、接合され組み付けられる部品の、組み付けられ接合される表面を、ろう付け組成物の懸濁液またはペーストがそれらの表面間に挿入されるように接触させることが可能である。
【0128】
あるいは、組み付けられ接合される部品の、接合され組み付けられる表面により形成される接合部の近辺に、ろう付け組成物の懸濁液またはペーストを受容することができる自由表面を形成するようにその間にオフセットを残すことにより、組み付けられ接合される部品の、接合され組み付けられる表面を接触させることが可能であり、次いで、ろう付け組成物の懸濁液またはペーストを、例えばビーズの形態でこの自由表面上に堆積させることができる。
【0129】
この後者の実施形態において、組み付けられ接合される部品の、接合される表面により形成される接合部は、有利には、好ましくは前記自由表面も被覆する強化材により占有され得、その上にろう付け組成物の懸濁液またはペーストが堆積される。
【0130】
ろう付け組成物に接触させる前に、組み付けられ接合される部品の表面の少なくとも1つに炭素を堆積させることは必要ではない。
【0131】
この炭素堆積を省略することができ、それによりろう付け方法における追加のステップが回避されることから、これはまさに本発明による方法の別の利点である。
【0132】
有利には、ろう付けは、ろう付け組成物の融点より少なくとも15℃、好ましくは少なくとも30℃高いろう付け温度で行うことができる。
【0133】
多孔質のろう付け表面のろう付けの場合、例えば、SiC表面コーティングが十分厚くない複合材料の場合、ろう付け(温度)プラトー中に半固体状態のろう付け合金を得るために、ろう付け組成物の液相線と固相線との間の温度でろう付けを行うことが有用となり得る。すると、ろう付け組成物は粘稠性となり、その細孔への浸透をより良好に制御することができる。
【0134】
有利には、1分から150分、好ましくは30分から150分、より好ましくは60分から120分、さらに好ましくは90分から120分の時間保持される、1020℃から1150℃、好ましくは1080℃から1100℃のろう付け温度でのろう付けプラトーを行うことにより、ろう付けを行うことができる。
【0135】
組み付けられ接合される部品の、接合され組み付けられる少なくとも1つの表面が多孔質である場合、1分から30分の時間保持される1040℃から1100℃でのろう付け温度プラトーを適用することができる。
【0136】
換言すれば、比較的多孔質のろう付け表面を有する材料の場合、例えば、SiCコーティングが十分厚くない複合材料の場合、接合部充填に有害となるろう付け合金の材料の細孔への過剰の浸透を回避するために、概して約30分から150分である通常のろう付け時間を、数分の時間、すなわち、例えば1分から30分の時間に短縮することが有用となり得る。この場合、浸透を制限するために、一般に、最低ろう付け温度、すなわち1000℃または1020℃から1080℃が推奨されることにも留意されたい。
【0137】
有利には、ろう付け温度プラトーの前に、概して30分から180分、好ましくは60分から180分、より好ましくは90分から180分、例えば120分の時間保持される、概して850℃から910℃、例えば900℃の温度での第1のプラトーを観察することが可能である。
【0138】
有利には、炭化ケイ素系材料は、純α炭化ケイ素(α−SiC)または純β炭化ケイ素(β−SiC)等の純炭化ケイ素、ならびに炭化ケイ素繊維および/またはマトリックスを用いた複合材等のSiC系複合材料の中から選択され得る。
【0139】
より具体的には、炭化ケイ素材料は、常圧焼結炭化ケイ素(「PLS−SiC」);Si浸透炭化ケイ素(「SiSiC」または「RBSC」);多孔質再結晶炭化ケイ素(「RSiC」);SiC層でコーティングされた黒鉛で構成される黒鉛ケイ素(「C−SiC」);例えば繊維またはウィスカーを用いたSiC/SiC複合材;自己回復性マトリックスを用いたSiC/SiC複合材;例えば炭素繊維またはウィスカーおよびSiCマトリックスを用いたC/SiC複合材;SiC単結晶;別のセラミックを用いたSiC複合材、例えばSiC/Si
3N
4およびSiC/TiN複合材の中から選択され得る。
【0140】
概して、前記炭化ケイ素系材料は、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも80質量%、より好ましくは100質量%の炭化ケイ素含量を有する。
【0141】
本発明はまた、炭化ケイ素系材料製の部品のろう付け、例えば非反応性のある程度耐火性のろう付けのための組成物であって、上で定義されるような非反応性ろう付け組成物を含み、また追加、供給される強化材も含む組成物に関連する。
【0142】
本発明は、さらに、炭化ケイ素系材料製の部品のろう付け、例えば非反応性のある程度耐火性のろう付けのための、ろう付けペースト、懸濁液であって、上で定義されるようなろう付け組成物の粉末と、追加の強化材と、有機液体セメント、結合剤または有機粘稠性ゲルとを含む、ろう付けペースト、懸濁液に関連する。
【0143】
本発明はまた、ある程度耐火性の接合部(最高使用温度は概して850℃から880℃)、および、上述の本発明の方法を使用して得られるSiC系材料製の少なくとも2つの部品を含む組付体に関する。
【0144】
非限定的な例示として示される以下の説明を読み、また添付の図面を参照すれば、本発明の他の特徴および利点がより明確となる。
【発明を実施するための形態】
【0146】
本発明による方法の第1のステップは、概して、ろう付け組成物、換言すればケイ素およびニッケルを含有するろう付け合金の調製、形成からなる。
【0147】
本発明のろう付け合金は、二元ケイ素(Si)−ニッケル(Ni)合金である。
【0148】
本発明のろう付け合金の融点は、概して966℃(固相線=共晶融点、混合物の全ての組成に共通する溶融の開始)および1125℃(ケイ素含量が最も高い組成物の液相線)であり、好ましい組成物は1070℃の液相線温度を有する。合金の主元素はケイ素である。
【0149】
二元Si−Ni合金の質量割合は、原子百分率で60%から66%のケイ素および34%から40%のニッケルである。
【0150】
有利な割合および特に有利または好ましい割合は、上述した通りである。
【0151】
ろう付け組成物は、概して、例えばまず純SiおよびNi元素からケイ素およびニッケルを含有する金属間化合物を合成することにより調製され得る、粉末組成物である。
【0152】
前記金属間化合物の合成は、例えば、ケイ素(例えば材料片の形態)、ニッケル(例えば材料片または他の形態)を、ろう付け組成物に望ましい割合で、例えばアルミナ製の耐火性るつぼに加えることにより得られる。
【0153】
るつぼ、ケイ素およびニッケルにより形成された組付体を、黒鉛炉または金属炉等の加熱装置内に設置し、好ましくはアルゴン下で、60分から120分、例えば30分の時間、概して1200℃から1300℃、例えば1250℃の温度に加熱し、ろう付け組成物の異なる構成成分を溶融すると、冷却後に、均質でインゴット形態の最終的な所望の金属間化合物が得られる。加熱温度は、本発明の好ましい組成物のためには、好ましくは1250℃である。
【0154】
インゴットの製造は、低温るつぼ内でも行うことができる。この非接触溶融技術(循環水により冷却され、誘導子内に設置せれた銅るつぼ)により、合金は、るつぼに接触することなく溶融することができ、したがって、るつぼを機械加工することなく合金を回収することができる。
【0155】
次いで、得られる金属間化合物のインゴットを、任意の好適な装置を用いて、例えば乳鉢内で粉砕すると、適切な粒径の粉末、すなわち粒子が例えば1μmから300μmの直径を有する粉末が得られ、これがろう付け組成物を構成する。
【0156】
あるいは、本発明の二元ろう付け組成物は、純ケイ素粉末ならびに金属間NiSi
2および/またはNiSi化合物の粉末を、本発明のろう付け組成物用に選択された割合で秤量し、次いでこれらの粉末を「Turbula」内で少なくとも30分間ブレンドすることにより調製され得る。
【0157】
この場合、金属間化合物およびSiの粉末の混合物で構成される粉末が、ろう付け組成物を構成する。
【0158】
前記NiSi
2またはNiSi金属間化合物は、合成することができ、または、既知の粒径および純度の金属間化合物の粉末の形態で購入することができる。
【0159】
純ケイ素粉末は、任意の好適な装置、例えば乳鉢内で粉砕された純ケイ素の材料片から調製して、好適な粒径の粉末を得ることができ、粒の直径は、例えば1μmから250μmである。
【0160】
このようにして調製される代わりに、前記純ケイ素粉末はまた、既知の粒径および純度の市販の粉末であってもよい。これらの市販の粉末のうち、例えば、99.5%または99.99%の純度および約50μmの粒径を有する、CERAC(登録商標)の商品名で販売されている純Si粉末を挙げることができる。
【0161】
さらに、本発明によれば、特に組付体の機械的強度を改善するために、ろう付けの前に強化材の追加が行われる。
【0162】
この強化材は、C強化材またはSiC等のセラミック強化材であってもよい。
【0163】
この強化材は、粒子、例えばSiC粉末等の粉末;SiCまたはセラミック繊維等の繊維;繊維が分離している不織布;繊維の織布;フェルトまたはフォームの形態であってもよい。
【0164】
強化材の種類およびその実装に関して、特に、文献[2]の記述の関連した一節を参照することができる。
【0165】
SiC粉末等の追加される強化材は、概して、ろう付け組成物の最大50体積%、好ましくは1体積%から49体積%、さらに好ましくは5体積%から49体積%に相当する。SiC粉末は、98.5%の純度および10μm未満の粒径を有する、STARCK(登録商標)の商品名で販売されている粉末、または、98.5%の純度および50μmの粒径を有する、Neyco(登録商標)の商品名で販売されている粉末等の市販の粉末であってもよい。
【0166】
任意選択で強化材が追加されるろう付け組成物の粉末(SiおよびNi)、例えばSiC粉末は、従来のように、好ましくは粘稠性かつ粘着性の結合剤、セメント、有機液体ゲルに懸濁され、ろう付けされる炭化ケイ素系材料製の部品、基板の表面上に均質に広がることを可能とする、任意選択で強化材が追加されるろう付け組成物のペースト、懸濁液が得られる。
【0167】
例えばSiC粉末等の強化材は、従来のように、好ましくは粘稠性かつ粘着性の結合剤、セメント、有機液体ゲルに懸濁され、ろう付けされる炭化ケイ素系材料製の部品、基板の表面上に均質に広がることを可能とする、強化材のペースト、懸濁液を得ることができる。
【0168】
結合剤、セメント、ゲルは、概して、100℃から300℃の間でいかなる痕跡も残さずに分解する。結合剤は、NICROBRAZ(登録商標)型のセメント、またはゲル(VITTA(登録商標)ゲル)であってもよい。
【0169】
本発明の方法の第2のステップは、概して、ろう付けによる実際の接合、組付を伴う。
【0170】
組付、接合前に、接合されるSiC材料製の部品の2つ(以上)の表面は、概して、例えばケトン、エステル、エーテル、アルコール種、またはそれらの混合物等の有機溶媒中で脱脂、洗浄される。
【0171】
1つの好ましい溶媒は、アセトン、または例えば1:3、1:3、1:3の割合のアセトン−エチルアルコール−エーテル混合物であるが、いくつかの異なる溶媒で連続的に、例えばアセトンの次にエタノールを使用して部品を洗浄することも可能である。次いで部品は乾燥される。
【0172】
組み付けられるSiC系材料製の部品の数は、概して2つであるが、恐らくは100個までのより多数の部品を同時に接合することも可能である。
【0173】
SiC系材料製の部品とは、概して、1つまたは複数の他の部品と組み付けられた後に、より大きなサイズの構造の一部となる、任意の形状およびサイズの任意の要素または実体を意味する。
【0174】
本発明によれば、毎回優秀な結果をもって、複雑な構造、形状、および/または大きなサイズの部品、例えば0.5m
2以上のろう付けされる表面積を有する部品を接合することが可能である。
【0175】
炭化ケイ素系材料とは、概して、本明細書において、少なくとも50質量%の炭化ケイ素、好ましくは少なくとも80質量%炭化ケイ素、さらに好ましくは100質量%の炭化ケイ素を含有する任意の材料を意味し、この後者の場合、材料は、炭化ケイ素のみからなる、または炭化ケイ素のみで構成される。
【0176】
炭化ケイ素系材料は、特に、焼結もしくは浸透された粉末、またはセラミックマトリックスにより結合された繊維の形態であってもよい。
【0177】
炭化ケイ素系材料は、純α炭化ケイ素(α−SiC)または純β炭化ケイ素(β−SiC)等の純炭化ケイ素、ならびに炭化ケイ素繊維および/またはマトリックスを用いた複合材等のSiC系複合材料の中から選択され得る。
【0178】
SiC系材料の例として、純高密度炭化ケイ素または常圧焼結炭化ケイ素(PLS−SiC);Si浸透炭化ケイ素(5%から20%のSiを含有するSiSiCまたはRBSC);多孔質再結晶炭化ケイ素(RSiC);例えば0.1mmから1mmの厚さまでSiCの層でコーティングされた黒鉛で形成された黒鉛ケイ素(C−SiC);および例えば繊維またはウィスカーを用いたSiC/SiC複合材;自己回復性マトリックスを用いたSiC/SiC複合材;例えば炭素繊維またはウィスカーおよびSiCマトリックスを用いたC/SiC複合材;ならびにSiC単結晶;別のセラミックを用いたSiC複合材、例えばSiC/Si
3N
4およびSiC/TiN複合材を挙げることができる。
【0179】
好ましくは、本発明による、接合される基板、部品のケイ素系材料は、例えば焼結純α(α−SiC)もしくは純β(β−SiC)炭化ケイ素の中から、または炭化ケイ素繊維および炭化ケイ素マトリックスを用いた複合材の中から選択される、100%の炭化ケイ素で構成される。
【0180】
驚くべきことに、本発明の方法により、優秀な結果をもって複合材をろう付けすることができることが確認されている。
【0181】
接合される2つ以上の部品は、1つの同じ炭化ケイ素系材料で作製されてもよく、例えば、PLS(「常温焼結」)−SiCもしくはSiC−SiC複合材で作製されてもよく、または、部品のそれぞれが、異なる炭化ケイ素系材料で作製されてもよい。
【0182】
上述のように調製されたろう付け組成物の懸濁液、ペーストは、例えば刷毛もしくはスパチュラ、または任意選択で自動化システムに固定されたシリンジを使用して、あるいは、接合され組み付けられる炭化ケイ素系材料製の部品の少なくとも1つの表面上にろう付けペーストの均一層を堆積させることができる任意の他の手段を使用して、均質、均一に、広げられ、コーティングされ、塗布される。
【0183】
強化材懸濁液、ペーストもまた、同じ原理に従い広げることができる。
【0184】
次いで、接合され組み付けられる2つの部品(1、2)の、ペーストがコーティングされた表面を接触させる。
図1に示されるこのろう付け構成は、ろう付け組成物のペースト(3)が、接合され組み付けられる部品の表面(4、5)の間に直接設置されるため、「サンドイッチ構成」と呼ばれる。
【0185】
好ましくは、この「サンドイッチ」構成において、本発明のろう付け組成物に関し、ろう付けペーストは均一に分布するべきではないが、互いに接触せずに過剰に密閉された構成を回避するろう付け合金のビーズ(ろう付けビーズ)の形態で塗布されるべきであることが推奨される。
【0186】
この構成において使用されるろう付け組成物のペースト、懸濁液の量は、概して、10mg/cm
2から60mg/cm
2、例えば20mg/cm
2である。
【0187】
「サンドイッチ」構成は、「薄い」、すなわち500マイクロメートル未満の厚さを有する接合部、および「厚い」、すなわち500マイクロメートル以上の厚さを有する接合部の両方に適用される。
【0188】
あるいは、
図2に示されるように、例えばプレート(21、22)の形態の接合される部品を、その間にろう付け組成物を堆積させず、ただし、組み付けられ接合される部品の接合される表面により形成される接合部(25)の近辺に、懸濁液またはペーストを受容することができる自由表面(24)を形成するように、部品間に概して数mm、例えば1mm、2mmから10mmまでのギャップ、オフセット(23)を残して接触させ、次いで、ろう付け組成物の懸濁液またはペーストを、例えばろう付け合金のビーズ(26)の形態で、接合部の近辺または接合部(25)の端部のこの自由表面(24)上に堆積させる。ろう付け熱サイクル中、液体のろう付け組成物が、接合部内に浸透する。
【0189】
このろう付け構成は、「毛管構成」と呼ばれる。本発明のろう付け組成物により、「サンドイッチ」構成の場合のように、組み付けられる部品の間に直接ろう付け組成物を堆積させることなく、ろう付けサイクル中の液体ろう付け合金のろう付けされる接合部への浸透によって、前記毛管ろう付けを行うことが可能である。
【0190】
この毛管構成はNi−Si系においてさらにより好ましいが、これは、この構成により、ろう付け合金での接合部のより良好な充填を得ることができ、強化材による非常に厚い接合部を得ることができるためである。
【0191】
この毛管構成において使用されるろう付け組成物のペースト、懸濁液の量は、概して、10mg/cm
2から40mg/cm
2、例えば20mg/cm
2である。この量は、強化材を含む接合部に対してはより高く、接合部の厚さに依存する。
【0192】
Ni−Si系を用いると、接合部に事前に設置された強化材なしで、500μm未満の厚さを有する「薄い」接合部の毛管ろう付けが可能である。毛管ろう付けは、Ni−Siろう付け合金による接合部の良好な充填をもたらし、接合部厚は、表面欠陥を有するSiC/SiC複合材製の部品に対して、数ミクロンからほぼ500μmまで変動し得る。
【0193】
また、毛管ろう付けは、ろう付け組成物による「湿潤強化材」(すなわち、ろう付け合金は、強化材の表面の良好な濡れを達成し、これは、例えばSiC系強化材の場合に該当する)がろう付けされる表面間に設置された接合部における、500μmをはるかに超える、例えば数ミリメートルに達し得る接合部厚に対しても可能である。
【0194】
この強化材は、例えば、SiC等のセラミック粒子、SiC等のセラミック繊維、またはC粒子、SiC繊維、SiC織布の形態であってもよい。500μmを超える厚さに対しては、接合部の品質は、接合部における亀裂を低減するSiC粒子またはSiC繊維の強化材を用いるとより良好である。
【0195】
接合部の端部に設置されたろう付け合金は、ろう付けサイクル中に液体状態に変化し、接合部に浸透して強化材を濡らし、これによりろう付け合金で良好に充填された接合部を得ることができる。
【0196】
したがって、強化材は、厚い接合部への浸透を可能とする。
【0197】
本発明によれば、ろう付け合金の接合部への浸透および強化材の濡れが可能であり、ある特定の条件下で最適に生じることが明らかとなった。
【0198】
換言すれば、特に接合部の中心にろう付け合金のいかなる空隙も存在しない良好な充填を得るためには、いくつかの特定のステップに留意する必要があることが明らかとなった。
【0199】
これらの特定のステップは、以下の通りである。
【0200】
− まず、任意選択で、使用前に、強化材を高真空下で概して1300℃から1500℃、例えば1400℃の温度で、概して2時間から4時間、黒鉛炉内で熱処理する。
【0201】
− 強化材の熱処理後、すぐに使用しない場合は、好ましくはアルゴン下で保存しなければならない。
【0202】
− ろう付けサイクルは、以下に説明されるように(
図3を参照されたい)、任意選択で、第1のプラトーおよび強制的に第2のプラトー、すなわちろう付けプラトーで構成され得る。
【0203】
− 30分から180分、例えば120分から180分の保持時間で、850℃から910℃、例えば900℃の温度での第1のプラトー。このプラトーは、大きなサイズの部品には必須である。
【0204】
− 続いて、典型的には、SiC系強化材で構成される3cmの接合部長さの接合部を充填するために、後述されるような、特に1080℃から1100℃の温度で90分間から150分間、例えば1100℃の温度で120分間行われる、ろう付けプラトーである第2のプラトー。
【0205】
また、
図4に示されるように、ろう付け合金の接合部(42)への浸透の開始を促進するために、任意選択で、組み付けられ接合される部品(45、46)の、接合され組み付けられる表面(43、44)の間の接合部(42)から強化材(41)を「引き出す」ことが有利となり得る。
【0206】
この方法は、特にその端部において多孔質であるCMC材料等の複合材料に対して、特に推奨される。
【0207】
ろう付け合金がCMC等の複合材料の細孔に浸透する危険なしに、接合部(42)から引き出される、そこから伸びる強化材(49)を用いて、この開始を生じさせることができるように、ろう付け組成物は、例えば、部品(46)の端部(48)から離れた、すなわち端部から2mmから5mmの距離離れたろう付け合金のビーズ(47)の形態で堆積させることができる。
【0208】
図4において、強化材は、例えばSiCの強化粒子または繊維のペーストまたは懸濁液の形態で使用されているが、接合される表面(43、44)の間に挿入される、例えばSiC製の繊維の布を使用することも可能である。
【0209】
接合部は、概して少なくとも50体積%のSi−Ni合金(この合金は上述の組成物を有する)、および、概して最大50体積%の強化材、例えばセラミック粒子またはセラミック繊維(例えばSiCまたはC)からなる。
【0210】
ろう付けの準備が整った部品は、次いで、炉等の加熱デバイス内に配置されるか、または任意の他の好適な手段を用いた加熱に供される。
【0211】
炉は、概して、真空下または中性ガス雰囲気中の黒鉛炉であるが、金属炉もまた使用され得る。
【0212】
概して、真空は高真空であり、すなわち圧力が10
−3Paから10
−5Pa、例えば10
−4Paである。
【0213】
好ましくは、中性ガスはアルゴンである。
【0214】
本発明により、商業品質のアルゴン(概して5ppmのO
2を有する)を使用することも可能である。
【0215】
接合される部品は、例えば炉内で、加熱サイクルに供される。
【0216】
例えば、部品およびろう付け組成物により形成された組付体は、好ましくは、周囲温度からの1つまたは複数の温度傾斜を有する「緩やかな」温度上昇に従って、ろう付け温度まで上昇され得る。
【0217】
この温度上昇は、例えば、1℃/分から5℃/分の温度傾斜を用いて得ることができる。
【0218】
ろう付けプラトーは、概して、ろう付け温度である、選択されたろう付け組成物、ろう付け合金の融点または液相線温度より少なくとも15℃、より好ましくは少なくとも30℃高い温度で行われる。
【0219】
多孔質のろう付けされる表面のろう付けの場合、例えば、SiC表面コーティングが十分厚くない複合材料の場合、ろう付け温度プラトー中に半固体状態のろう付け合金を得るために、液相線と固相線との間の温度でろう付けを行うことが有用となり得る。すると、ろう付け合金は粘稠性となり、その細孔への浸透をより良好に制御することができる。
【0220】
このろう付け温度は、ろう付け組成物およびこの組成物中のNiおよびSiの相対的割合に依存して、概して1020℃から1150℃、好ましくは1080℃から1100℃である。
【0221】
組成物に依存して、液相線温度は、概して、1005℃から1125℃まで変動し、したがって、ろう付け温度は、例えば上述したように1020℃から1150℃まで変動する。
【0222】
1020℃の温度を最低ろう付け温度として挙げたのは、方法が、溶融温度とろう付け温度との間の差が15℃であっても有効であるためであるが、大きなサイズの部品に対しては少なくとも30℃の差が概して好ましく、その場合最低ろう付け温度は1035℃である。同様に、最高ろう付け温度は。1155℃となり得る。
【0223】
本発明の方法の別の利点によれば、組成物の前記融点により、850℃まで、さらには880℃までの温度で組付体を使用することができる。
【0224】
驚くべきことに、本発明によるろう付け組成物のろう付け温度は、1150℃未満であるが、これらのろう付け組成物を用いて行われる液滴試験により示されるように、急速な濡れの運動学により、炭化ケイ素の優れた接着および良好な濡れが得られ、したがって、1100℃で30分間のろう付け後に40°未満の接触角を得ることが可能である(実施例1および2を参照されたい)。
【0225】
この優れた濡れは、接合部の良好な品質の充填を確実とするため、形成された接合部の良好な品質を達成するためには必須であるが、機械的な挙動の特性は予測不可能であるため、必ずしも良好な機械的挙動を保証することはできない。しかしながら、驚くべきことに、本発明のろう付け組成物を用いて作製された接合部はまた、優れた機械的特性を有する。
【0226】
上で定義されたろう付け温度(1020℃から1150℃、好ましくは1080℃から1100℃)は、1分から150分、好ましくは30分から150分、より好ましくは60分から120分、最も好ましくは90分から120分の時間、例えば90分間保持され、これはろう付けプラトーと呼ばれる。
【0227】
比較的多孔質のろう付け表面を有する材料の場合、例えば、十分厚くないSiCコーティングを有する複合材料の場合、接合部の充填に有害となるろう付け組成物の材料の細孔への過剰の浸透を防止するために、概して30分から150分である通常のろう付け時間を、数分の時間、すなわち、例えば1分から30分の時間に短縮することが有用となり得る。
【0228】
ろう付けプラトーの期間は、接合される部品のサイズに依存し、より具体的には、ろう付けされる表面のサイズに依存する。ろう付けされる広い表面積、すなわち典型的には少なくとも50×50mm
2の表面積を有する非常に大きな部品に対しては、事実上この期間は150分に達し得る。
【0229】
本発明の方法のためのろう付けプラトーは、例えば、1100℃の温度で60分から90分間行われてもよい。
【0230】
選択されたろう付けプラトーの特定の温度は、ろう付け合金の組成の関数である。
【0231】
大きいサイズの部品(典型的には50×50mm
2以上)に対しては、接合される部品における熱的均質性を保証するために、例えば900℃での均質化プラトーが推奨され、さらには必須である。
【0232】
濡れの運動学は良好であるため、既に優れている濡れを促進する必要はなく、本発明のNi−Si組成物の場合のこの第1の温度プラトーは、本質的に、さらには唯一、均質化プラトーであることに留意されたい。
【0233】
このプラトーは、例えば約900℃付近の緩やかな温度上昇で置き換えられてもよい。
【0234】
第1のプラトーの期間およびろう付けプラトーの期間は、炉のサイズ、ろう付けされる部品のサイズ、およびろう付けされる部品を支持する工具に依存する。
【0235】
したがって均質化プラトーであるこの第1のプラトーは、既に上述した条件下で実際のろう付けプラトーを行う前に、概して、850℃から910℃、例えば900℃の温度で、1時間の最短推奨時間、期間、例えば60分から180分の時間観察される。
【0236】
毛管構成および「サンドイッチ」構成の両方において、前記第1のプラトーは、小さいサイズの部品には必須ではない。前記第1のプラトーは、概して、大きいサイズの部品、すなわち、および概して50×50mm
2を超えるろう付けされる表面を有する部品に対しては、接合される部品における熱的均質性を保証するために、これらの構成の両方において推奨され、さらには必須である。
【0237】
これらの温度プラトーの期間は増加されてもよく、例えば、非常に大きなサイズの部品、例えば0.5m
2以上のろう付けされる表面積を有する部品に対しては、第1のプラトーを180分に設定し、第2のプラトーを150分に設定してもよい。
【0238】
あるいは、熱的均質化は、この第1のプラトーを省略し、概して850℃から910℃、例えば約900℃で、この温度範囲に対する組付体の暴露時間が例えば約60分から180分であるように、緩やかな温度上昇(例えば0.5℃/分の速度で)を行うことによって得ることもできる。
【0239】
第1のプラトーと同様に、必須の前記の緩やかな温度上昇は、両方の構成において、大きなサイズの部品に対して望ましく、さらには必須である。
【0240】
ろう付けサイクルの終了時、ろう付けプラトーの後に、組付体は、例えば毎分5℃または6℃の速度で、周囲温度まで冷却される。
【0241】
冷却中、ろう付け合金は固化し、炭化ケイ素系材料製の部品の接合は、「サンドイッチ」構成が使用されるか、または「毛管」構成が使用されるかにかかわらず効果的となる。
【0242】
本発明の方法で形成された組付体を、周囲温度で圧縮/せん断試験に供した(
図6を参照されたい)。
【0243】
焼結SiC/強化材を含まない本発明のNiSiろう付け合金/焼結SiCの結合部の場合、2つの組付体に対して得られた破壊応力値は、26MPaおよび90MPaであり、これは、文献[3]において、65質量%のニッケルおよび35質量%のケイ素を含むNiSiろう付け合金を用いて得られた値よりもはるかに高い、優秀な結果である。
【0244】
Cerasep A40C(登録商標)型のCMC複合材(SiCマトリックス、SiC繊維)製の基板/強化材を含まない本発明のNiSiろう付け合金/CMC複合材の間の接合部の場合、得られた破壊応力値は約13MPaであり、ろう付け合金とCMCとの間の組付体の脆弱点は、化学気相堆積(CVD)により調製されたSiCであるCMCコーティングに位置する。
【0245】
既に指摘したように、この機械的強度は、特に、CMC製の部品等の複合材料製の部品に対しては、例えばろう付け組成物に、および/または組み付けられ接合される部品の、接合される表面の少なくとも1つの上、および/または組み付けられ接合される部品の、接合される表面の間に、強化材を追加することによりさらに改善され得る。
【0246】
複合材に関しては、脆弱な破壊点は、強化粒子を用いたとしても、複合材のSiCコーティングであり、したがって、破壊応力における機械的な利益を明確および定量的に決定することは不可能である。
【0247】
強化材を用いた場合、未処理の表面加工されていないCMCでの平均は17MPaであり、表面加工されたCMCでは16MPaである。
【0248】
一方、強化材の効果は、接合部の微細構造において明確に見られ、これは、特に500μm以上の亀裂の大幅な減少として反映される。これは、強化材により機械的強度が間違いなく改善されていることを定性的に実証している。
【0249】
これらの強化材は、例えば、SiC粉末の形態の粒子型、または、例えば、例えばSiC製の繊維のみの、もしくは織繊維の形態のセラミック繊維型の強化材であってもよい。強化材含量は、概して、ろう付け組成物の最大50体積%であり、概して、1または数体積%、例えば5体積%から49体積%までの範囲であってもよい。既に上述したように、接合部に事前に設置された強化材を用いた毛管ろう付けによる接合部の良好な充填を得るためには、ある特定の数の特定のステップに従う必要がある。
【0250】
本発明の方法を使用して作製された接合部を備える炭化ケイ素製の部品の組付体により、850℃、さらには880℃に達し得る高い使用温度を有する、複雑な形状の構造物、装置、構成要素を、非常に正確に得ることができる。
【0251】
炭化ケイ素の以下の特性:
− 高硬度、
− 高剛性、
− 低密度、
− 低膨張係数、
− 高破壊応力、
− 良好な耐熱衝撃性、
− および非常に良好な伝導性により、この材料は、現在および将来の、特に高温での産業用途において必須材料となっていることが、事実上知られている。
【0252】
さらに、SiCは、フッ化水素酸を含む様々な酸に対する非常に良好な耐薬品性を有し、また、空気中1300℃までの高温での酸化に対する非常に良好な耐性を有する。
【0253】
換言すれば、本発明の方法は、特に、接合部における良好な機械的強度および十分な封止、耐漏洩性の両方を保証することにより、炭化ケイ素製の少なくとも2つの基板、部品の間のある程度耐火性の接合、組み付けを必要とする、任意のデバイス、装置、構造物、構成要素の製造に適用することができる。
【0254】
この種のデバイス、装置、構造物、構成要素は、以下の様々な分野における必要性を満たすことができる。
【0255】
− 炭化ケイ素は良好な熱伝導性および極限環境中での高温に対する良好な耐性を有することから、特に高性能熱交換器の設計のための熱工学の分野。
【0256】
− 摩耗および機械的応力に抵抗する軽量、剛性、耐火性の構成要素を得るための、オンボードデバイスを製造する機械工学の分野。
【0257】
− 炭化ケイ素は、塩基および強酸等の多くの腐食性化学製品に対し耐性であることから、化学工学の分野。
【0258】
− 核燃料用クラッディングの製造のための、核工学の分野。
【0259】
− 空間光学(SiC製の望遠鏡ミラー)および航空学(SiC/SiC複合材製の部品)の分野。
【0260】
− SiC基板を使用するパワーエレクトロニクス。
【0261】
ここで、明らかに制限されない例示として示される以下の実施例を用いて、本発明を説明する。
【0262】
(実施例)
(実施例1)
この実施例は、64%のSiおよび36%のNi(原子百分率)、すなわち質量百分率で46%のSiおよび54%のNiの組成の、本発明のろう付け組成物、ろう付け合金を用いて行った、1100℃での単一ろう付けプラトーを観察する焼結純α−SiC上での液滴試験を説明する。
【0263】
a)ろう付け組成物およびろう付けペーストの調製
対象となるろう付け組成物:64原子%のSiおよび36原子%のNiを、純Si片および純Ni片から調製した。
【0264】
これらの材料片を、ろう付け組成物の割合に注意しながら秤量し、アルミナるつぼ内に設置した。組付体を金属炉内に設置し、アルゴン下、1250℃で120分間のプラトーでの熱サイクルに供した。
【0265】
冷却後、インゴットが得られた。粉末を得るためにこのインゴットを粉砕した。
【0266】
この粉末の混合物に有機結合剤(NICROBRAZ(登録商標)セメント)を添加し、粘稠性のペーストを形成した。
【0267】
b)1100℃での液滴試験
このようにして調製されたろう付けペーストを使用して、質量約50mgのろう付け合金の小さな山を形成した。このろう付け合金の山を、事前に清浄化したSiCプレート上に堆積させた。
【0268】
ろう付け合金の山およびプレートの組付体を、ろう付け炉内、ここでは金属炉内に設置し、高真空下、1100℃でのろう付けプラトーである単一プラトーのみでのろう付け熱サイクルに供した。
【0269】
この熱処理中、ろう付け合金の山は溶融し、付着液滴と呼ばれる液滴を形成する。
【0270】
観察窓により、液滴の広がりをその場で監視することができる。
【0271】
液滴に対し、観察窓を通してその場で液滴の濡れ、接触角を測定した。
【0272】
濡れ角は、5分の保持時間後に約60°、20分後に約50°、および30分後に40°未満であったが、これは良好な濡れに相当する。
【0273】
次いで、SiCおよびその固化したろう付け合金の液滴を切断し、コーティングおよび研磨して、走査型電子顕微鏡下で観察した。
【0274】
SiC/ろう付け合金界面は、走査型電子顕微鏡スケールではいかなる反応性も示しておらず、すなわち新たな化合物の形成は観察されなかった。特に、界面において壊れやすい化合物の形成は観察されなかった。
【0275】
(実施例2)
この実施例は、原子百分率で64%のSiおよび36%のNi、すなわち46質量%のSiおよび54質量%のNiの組成を有する、本発明のろう付け組成物、ろう付け合金を用いて行った、1100℃での単一ろう付けプラトーを観察するSiC/SiC Cerasep A40C(登録商標)複合材上での液滴試験を説明する。
【0276】
a)ろう付け組成物およびろう付けペーストの調製
対象となるろう付け組成物:64原子%のSiおよび36原子%のNiを、実施例1のように調製した。
【0277】
ろう付け組成物のペーストを、実施例1のように形成した。
【0278】
b)1100℃での液滴試験
このようにして調製されたろう付けペーストを使用して、質量約50mgのろう付け合金の小さな山を形成した。このろう付け合金の山を、SiCマトリックスおよびSiC繊維を用いたSiC/SiC複合材のプレート上に堆積させた。この複合材は、Snecma Propulsion Solide社から、CERASEP A40C(登録商標)の商品名で入手可能である。ろう付け合金を堆積させる前に、このプレートを事前に清浄化した。
【0279】
ろう付け合金の山およびプレートの組付体を、ろう付け炉内、ここでは金属炉内に設置し、高真空下、1100℃で60分間のろう付けプラトーである単一プラトーでのろう付け熱サイクルに供した。
【0280】
この熱処理中、ろう付け合金の山は溶融し、いわゆる付着液滴を形成する。
【0281】
観察窓により、液滴の広がりをその場で監視することができる。
【0282】
液滴に対し、観察窓を通してその場で液滴の濡れ、接触角を測定した。
【0283】
濡れ角は、5分の保持時間後に約40°、30分の保持時間後に30°、および60分の保持時間後に20°未満であったが、これは良好な濡れに相当する。
【0284】
次いで、複合材およびその固化したろう付け合金の液滴を切断し、コーティングおよび研磨して、走査型電子顕微鏡下で観察した。
【0285】
CMC/ろう付け合金界面は、走査型電子顕微鏡スケールではいかなる反応性も示しておらず、すなわち新たな化合物の形成は観察されなかった。特に、界面において壊れやすい化合物の形成は観察されなかった。
【0286】
(実施例3)
この実施例は、本発明によるろう付け方法を用いた、焼結純α−SiC炭化ケイ素製の2つの部品間の結合、接合部の作製を説明するが、ろう付けは、64原子%のSiおよび36原子%のNi、すなわち46質量%のSiおよび54質量%のNiで構成される本発明のろう付け組成物、ろう付け合金を使用して、毛管構成で行われる。この実施例はまた、試験、これらの組付体に対して行われた機械的試験を説明する。
【0287】
a)ろう付け組成物の調製、ろう付けペーストの調製および組み付けられ接合される部品の作製
対象となるろう付け組成物、すなわち64原子%のSiおよび36原子%のNiを、実施例1に記載の様式で調製した。
【0288】
ろう付け組成物のペーストを、実施例1のように調製した。
【0289】
組み付けられる焼結SiC製の部品は、サイズ20×10mm
2および厚さ1.5mmのプレートであった。
【0290】
部品を、アセトン、次いでエタノールで清浄化し、最後に乾燥させた。
【0291】
接合部の近辺にろう付けペーストを堆積させるための空間を残すように、1mmから2mmのわずかなオフセットを残して基板、部品を接触させた(この構成は、毛管構成と呼ばれる)。接合部の端部の利用可能な表面上に、ろう付け合金のビーズの形態でペーストをスパチュラで堆積させた(
図2を参照されたい)。堆積させたろう付け合金の量は、この組付体に対して20mgから30mgであった。
【0292】
b)ろう付け
ろう付けの準備が整った接触させた部品を、高真空下のろう付け炉(ここでは金属炉)内に設置し、真空下で、ろう付けプラトーである1100℃で60分の単一温度プラトーを含むろう付け熱サイクルに供した。
【0294】
c)接合部の観察
冷却後、組付体は良好に接合された。接合部を走査型電子顕微鏡により特性決定した。走査型電子顕微鏡下での観察スケールでは、「空隙」は観察されず、またSiCとろう付け合金との間の反応性は見られなかった。
【0295】
d)機械的試験片の作製および機械的試験の結果
それぞれ20×10×1.5mm
3のサイズの2つの部品(したがってろう付けされた試験片の厚さは1.5+1.5=3mmであった)(61、62)を、上記a)において調製されたろう付けペーストを用いて、上記b)に記載のろう付け条件下でろう付けすることにより、機械的試験用の組付体、試験片(2つの試験片)を作製した。セラミックの力学は統計的であるため、試験用に2つ以上の試験片を作製したが、同じ製造方法に従った。
【0296】
試験片を
図6に図式化する。試験片をマウント上に保持し、周囲温度での圧縮/せん断試験(63)の間せん断に供した。
【0297】
この試験によって純粋なせん断を保証することはできないが、好ましい様式であることに留意されたい。しかしながら、この試験によって組付体間の比較が可能となる。
【0298】
機械的試験の結果
2つの試験片のそれぞれに対し決定された破壊応力は、26MPaおよび90MPaであった。
【0299】
SiCにおいて降伏が生じたが、これは、ろう付け合金とSiC製の基板との間の強固な結合の特徴である。
【0300】
SiC/高Si含量のろう付け合金/SiC型の接合部、組付体の破壊応力値は、セラミック材料の壊れやすい性質のために、多かれ少なかれ分散し得ることに留意されたい。
【0301】
(実施例4)
この実施例は、本発明のろう付け方法を用いた、CMC製の、より具体的には、SiCマトリックスおよびSiC繊維を用いたSiC/SiC複合材製の2つの部品間の結合、組付体、接合部の作製を説明するが、ろう付けは、64原子%のSiおよび36原子%のNi、すなわち46質量%のSiおよび54質量%のNiで構成される本発明のろう付け組成物、ろう付け合金を使用して、毛管構成で行われる。この実施例はまた、試験、これらの組付体に対して行われた機械的試験を説明する。
【0302】
a)ろう付け組成物の調製、ろう付けペーストの調製および接合され組み付けられる部品の作製
対象となるろう付け組成物、すなわち64原子%のSiおよび34原子%のNiを、実施例1に記載の様式で調製した。
【0303】
ろう付け組成物のペーストを、実施例1のように調製した。
【0304】
ろう付けされ、接合され、組み付けられる部品、基板は、SiCマトリックスおよびSiC繊維を用いたSiC/SiC複合材のプレートであった。前記複合材料は、Snecma Propulsion Solide社から、Cerasep A40C(登録商標)の商品名で入手可能である。これらのプレートは、サイズ20×10mm
2および厚さ1.5mmであった。
【0305】
部品を、アセトン、次いでエタノールで清浄化し、最後に乾燥させた。
【0306】
接合部の近辺にろう付けペーストを堆積させるための空間を残すように、3mmのわずかなオフセットを残して基板、部品を接触させた(この構成は、毛管構成と呼ばれる)。実施例3に記載のように、接合部の端部の自由表面上に、ろう付け合金のビーズの形態でペーストをスパチュラで堆積させた(
図2を参照されたい)。堆積させたろう付け合金の量は、この組付体に対して180mgから220mgであった。
【0307】
CMC製のプレート間の隙間は、実施例3における焼結SiCのプレートの場合よりもはるかに大きかったため、このペーストの量は、実施例3の場合よりもはるかに多い。
【0308】
例えば、接合部の厚さは、CMCプレートの場合平面性の欠陥により500μmに達し得るが、SiCプレートの場合概して100μm未満である。
【0309】
b)ろう付け
接触させ、ろう付けの準備が整った部品を、高真空下のろう付け炉内に設置し、ろう付けプラトーである1100℃で60分から90分間の単一プラトーを含む真空ろう付け熱サイクルに供した。
【0311】
ろう付けは、金属炉内で1100℃で60分のプラトーで、または黒鉛炉内で90分のプラトーで行った。
【0312】
c)接合部の観察
冷却後、組付体は良好に接合された。接合部を走査型電子顕微鏡下で特性決定した。走査型電子顕微鏡下での観察スケールでは、「空隙」は観察されず、またSiCとろう付け合金との間の反応性は見られなかった。
【0313】
接合部の厚さは、CMCの局所的コーティング欠陥および平面性の欠陥により、観察領域に依存して100μmから500μmであった。
【0314】
d)機械的試験片の作製および機械的試験の結果
それぞれ20×10×1.5mm
3のサイズの2つの被検試料を、上記a)において調製されたろう付けペーストを用いて、上記b)に記載のろう付け条件下でろう付けすることにより、機械的試験用の組付体、試験片(3つの試験片)を作製した。
【0315】
2つの組付体を、金属炉内で1100℃で60分のプラトーでろう付けした。
【0316】
1つの組付体を、黒鉛炉内で1100℃で90分のプラトーでろう付けした。
【0317】
試験片は、実施例3における試験片と同様のサイズであり、圧縮/せん断下で同様に試験した。
【0318】
機械的試験の結果:
3つの試験片のそれぞれに対し決定された破壊応力は、11MPa、12MPaおよび13MPaであった。
【0319】
1つの試験片において、CMCからのSiCコーティングの剥離により降伏が生じた。したがって、このコーティングは、CMC/ろう付け合金/CMC組付体の脆弱点であることが分かる。
【0320】
他の2つの試験片においては、測定された応力は、複合材の劣化の開始に対応した。
【0321】
(実施例5)
この実施例は、本発明のろう付け方法を用いた、CMC製の、より具体的には、SiCマトリックスおよびSiC繊維を用いたSiC/SiC複合材製の2つの部品間の結合、接合部、組付体の作製を説明するが、ろう付けは、SiC粒子の強化材とともに、64原子%のSiおよび36原子%のNi、すなわち46質量%のSiおよび54質量%のNiで構成される本発明のろう付け組成物、ろう付け合金を使用して、毛管構成で行われる。
【0322】
この実施例は、さらに、これらの組付体に対して行われた機械的試験を説明する。
【0323】
a)ろう付け組成物の調製、ろう付けペーストの調製および接合され組み付けられる部品の作製
対象となるろう付け組成物、すなわち64原子%のSiおよび36原子%のNiを、実施例1に記載の様式で調製した。
【0324】
ろう付け組成物のペーストを、実施例1のように調製した。
【0325】
ろう付けされる部品、基板は、SiCマトリックスおよびSiC繊維を用いたSiC/SiC複合材の2つのプレート(71、72)であった。前記複合材料は、Snecma Propulsion Solide社から、Cerasep A40C(登録商標)の商品名で入手可能である。
【0326】
これらのプレートは、10×20mm
2のサイズであり、それぞれ1.5mmの厚さを有していた。
【0327】
プレートは、2つの表面状態:局所的欠陥が除去された表面加工された表面状態、または未処理の表面加工されていない表面状態を有し得る。
【0328】
表面加工されていない状態は、より多くの欠陥を有するため、より厚い接合部をもたらす。
【0329】
部品を、アセトン、続いてエタノールで清浄化し、次いで乾燥させた。
【0330】
プレートを、50μmの粒径のSiC粒子でコーティングする。
【0331】
複合材プレート上への堆積のために、Nicrobraz(登録商標)型のセメント等の有機結合剤でSiC粒子を互いに結合させたが、これによりCMCプレート上への堆積を容易にするペーストを得ることができる。堆積は、
図7に示すように行ったが、堆積させた粒子の量は、未処理の表面加工されていない表面状態のCMCプレートに対しては89±1mgであり、表面加工された状態のCMCプレートに対しては71mg±1mgであり、この量は、2つのプレートの間に分布した。
【0332】
次いで、接合部(75)の近辺にろう付けペーストを堆積させるための空間、自由表面(74)を形成するように、3mmのわずかなオフセット(73)を残してCMC製のプレート(71、72)を接触させた(この構成は、毛管構成と呼ばれる)。
【0333】
接合部(75)を、SiC強化粒子のペースト(76)で充填し、このペーストは、下のプレート(72)からオフセットした利用可能な自由表面(74)上に接合部(75)を超えて延在している。
【0334】
接合部の端部上の利用可能な自由表面(74)上に、ろう付け合金のビーズ(77)の形態でペーストをスパチュラを用いて堆積させた(
図7を参照されたい)。
【0335】
堆積させたろう付け合金の量は、表面加工された表面状態を有するCMCプレートを用いた組付体に対しては200mgから220mg、未処理の表面加工されていない表面状態を有するCMC組付体に対しては280mgから310mgであった。
【0336】
CMCプレート間の隙間は、焼結SiC製のプレート間よりもはるかに大きかったため、これらの量は、実施例3の場合よりもはるかに多いことに留意されたい。したがって、接合部の厚さは、これらのCMCプレートの場合平面性の欠陥により700μmに達し得るが、SiCプレートの場合概して100μm未満である。
【0337】
b)ろう付け
接触させ、ろう付けの準備が整った部品を、高真空下のろう付け炉(黒鉛炉)内に設置し、1100℃で90分の単一プラトーを含む真空ろう付け熱サイクルに供した。
【0338】
c)機械的試験片の作製および機械的試験の結果
それぞれ20×10×1.5mm
3のサイズの2つ部品を、上述のSiC粒子のコーティングとともに上記a)において調製されたろう付けペーストを用いて、上記b)に記載のろう付け条件下でろう付けすることにより、機械的試験用の組付体、試験片(9つの試験片)を作製した。
【0339】
試験片は、実施例3における試験片と同様のサイズであり、圧縮/せん断下で同じ様式で試験した。
【0340】
機械的試験の結果:
9つの試験片のそれぞれに対し決定された破壊応力を、Table 1(表1)およびTable 2(表2)に示す。
【0341】
6つの試験片において、CMCからのSiCコーティング(「シールコート」)の剥離により降伏が生じた。したがって、このコーティングは、CMC/ろう付け合金/CMC組付体の脆弱点であることが分かる。
【0342】
3つの試験片においては、測定された応力は、複合材の劣化の開始に対応した。
【0345】
d)走査型電子顕微鏡による接合部の観察
機械的試験の後、試験片を切断した。接合部は、ろう付け合金で良好に充填されていた。
【0346】
接合部の厚さは、CMCコーティング(「シールコート」)の局所的欠陥および平面性の欠陥により、観察領域に依存して100μmから700μmであった。実施例4の強化材なしおよびより薄い厚さの試験片と比較して、これらの試験片において結合部内の亀裂の大幅な低減が見られた。
【0347】
(実施例6)
この実施例は、本発明のろう付け方法を用いた、CMC製の、より具体的には、SiCマトリックスおよびSiC繊維を用いたSiC/SiC複合材製の2つの部品間の結合、接合部、組付体の作製を説明するが、ろう付けは、64原子%のSiおよび36原子%のNi、すなわち46質量%のSiおよび54質量%のNiで構成される本発明のろう付け組成物、ろう付け合金、ならびにSiC繊維の布で構成された強化材を使用して、毛管構成で行われる。
【0348】
a)ろう付け組成物の調製、ろう付けペーストの調製および接合され組み付けられる部品の作製
対象となるろう付け組成物である、64原子%のSiおよび36原子%のNiを、実施例1に記載の様式で調製した。
【0349】
ろう付け組成物のペーストを、実施例1のように調製した。
【0350】
ろう付けされ、接合され、組み付けられる部品、基板は、SiCマトリックスおよびSiC繊維を用いたSiC/SiC複合材の2つのプレート(81、82)であった。前記複合材料は、Snecma Propulsion Solide社から、Cerasep A40C(登録商標)の商品名で入手可能である。
【0351】
これらのプレートのサイズは、10×20mm
2であり、それぞれ1.5mmの厚さを有していた。
【0352】
部品を、アセトン、次いでエタノールで清浄化し、最後に乾燥させた。
【0353】
Nicalon NL 202(登録商標)の商品名で入手可能なSiC繊維製の布を、
図8に示されるように、ろう付けされるプレートの間に設置した。
【0354】
次いで、SiC繊維の布(86)が充填された接合部の近辺にろう付けペーストを堆積させるための自由な空間、表面(84)を残すように、3mmのわずかなオフセット(83)を残してCMC基板を接触させた(この構成は、毛管構成と呼ばれる)。
【0355】
接合部の端部の自由な利用可能表面上に、ろう付け合金のビーズ(87)の形態でペーストをスパチュラを用いて堆積させた(
図8を参照されたい)。
【0356】
堆積させたろう付け合金の量は、150mgから200mgであった。
【0357】
b)ろう付け
接触させ、ろう付けの準備が整った部品を、高真空下のろう付け炉(金属炉)内に設置し、1100℃で90分の単一温度保持を含む真空ろう付け熱サイクルに供した。
【0358】
ろう付けサイクルの後、ろう付け合金は接合部に良好に浸透しており、接合部は500μmの厚さを有していた。