特許第6026306号(P6026306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6026306磁気メモリ用プローバチャック及びそれを備えた磁気メモリ用プローバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6026306
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】磁気メモリ用プローバチャック及びそれを備えた磁気メモリ用プローバ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20161107BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20161107BHJP
   H01L 21/8246 20060101ALI20161107BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   H01L21/66 B
   H01L21/68 N
   H01L27/10 447
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-20591(P2013-20591)
(22)【出願日】2013年2月5日
(65)【公開番号】特開2014-154588(P2014-154588A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】302042379
【氏名又は名称】株式会社東栄科学産業
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山城 智万
(72)【発明者】
【氏名】劔重 博幸
(72)【発明者】
【氏名】内海 良一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂行
【審査官】 溝本 安展
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−004730(JP,A)
【文献】 特開2004−101308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 21/683
H01L 21/8246
H01L 27/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気メモリが形成されたウエハを保持する磁気メモリ用プローバチャックであって、
導電材料で形成され、前記ウエハが載置されるチャックトップと、
絶縁材料で形成され、前記チャックトップの底面を支持する絶縁層と、
導電材料で形成されると共に前記絶縁層の下方に配置され、前記絶縁層により前記チャックトップと絶縁されているガード層と、を備え、
前記チャックトップ及び前記ガード層を含む前記チャックを構成する全ての部材は、非磁性体で構成されていることを特徴とする磁気メモリ用プローバチャック。
【請求項2】
絶縁材料で形成され、前記ガード層の下方に配置される第2の絶縁層と、
導電材料で形成されると共に前記第2の絶縁層の下方に配置され、前記第2の絶縁層により前記ガード層と絶縁されているグランド層と、を更に備える請求項1に記載の磁気メモリ用プローバチャック。
【請求項3】
前記絶縁層及び前記第2の絶縁層は、前記ガード層よりも寸法が大きく形成され、前記絶縁層及び前記第2の絶縁層の間には、前記ガード層が介在しない領域が形成されており、当該領域には、双方の絶縁層同士を固定する非磁性体の固定部が設けられている請求項2に記載の磁気メモリ用プローバチャック。
【請求項4】
前記固定部は、非磁性体の絶縁接着剤である請求項3に記載の磁気メモリ用プローバチャック。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の磁気メモリ用プローバチャックと、
前記チャックをZ軸回りに回転可能に且つX軸Y軸に沿って移動可能に支持するθXYステージと、
取付けられたプローブカードの針をZ軸に沿って移動させることにより、前記チャックに保持されるウエハに対して前記針を接離可能にするZステージと、
前記チャックの下方に配置され、前記チャックを通過させて前記ウエハに磁場を印加する磁場発生部と、を備え、
前記θXYステージは、前記チャックの下方を避けた側方に足場が配置され、前記磁場発生部を配置するための中空空間を前記チャックの下方に有する中空ステージであり、前記チャックのZ軸の位置が不変となるように動作方向が設定されていることを特徴とする磁気メモリ用プローバ。
【請求項6】
前記Zステージには、非磁性体の導電材料で形成され、検査時に前記ウエハの上方に配置される第2のガード層が設けられている請求項5に記載の磁気メモリ用プローバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ上に形成される磁気メモリの電気的な検査を行うため使用される、ウエハを保持する磁気メモリ用プローバチャック及びそれを備えた磁気メモリ用プローバに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気メモリではないが、集積回路などの半導体素子は、一般的に、ウエハ上に形成された後、切り離され、電子部品として組み立てられてパッケージングされて製造される。検査工程として、各素子を切り離す前に、ウエハ上の各々の素子の動作を確認するプローブテストが実施される。
【0003】
プローブテストでは、プローバが用いられる。プローバは、ウエハを保持するプローバチャックと、ウエハと接触するための針に対してチャックを相対移動させるためのステージとを有する。まず、ウエハをチャックに載置して保持し、ステージの動作により半導体素子の電極と針とを接触させ、針を介してテスタから電気信号を素子に供給し、素子から出力される信号をテスタで検出して、素子が正常に動作するかを検査する。
【0004】
低リーク評価を可能にするため、微小電流を高精度で測定可能な低リークチャックとして、例えば特許文献1には、ウエハが載置される導電性チャックトップと、導電性チャックトップの底面を保持する絶縁部材と、絶縁部材の下表面に形成されるニッケルメッキなどの導電材からなるガード層と、を有するプローバ用チャックが開示されている。ここでは、ウエハ背面に接触するシグナル層としての導電性チャックトップとガード層とに同電位を印加することにより、シグナル層から図示されていないグランド層(アース)へ流れるリーク電流を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−4730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、磁気メモリが注目されている。磁気メモリは、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)やSTT−RAM(Spin Transfer Torque RAM)と呼ばれ、電子のスピンをメモリ素子として利用するスピンエレクトロニクスを採用したメモリである。磁気メモリは、磁性層に磁化を与える方向の違いを利用してデータを記憶する。具体的には、絶縁層を挟む2つの磁性層を有する磁気トンネル接合(MTJ;Magnetic Tunnel Junction)素子を記憶素子とし、2つの磁性層のうち片方の磁性層を磁化方向が固定された固定層とし、他方の磁性層を磁化方向が可変な可変層とし、可変層の磁化方向を変化させることで抵抗値を切り替え、各々の状態を0と1に対応させて使用される。
【0007】
このような磁気メモリの動作を検査する際にも、半導体素子と同様に、リーク電流を抑制することが好ましい。リーク電流を抑制するために、上記で述べたシグナル層とガード層とを同電位にしてリーク電流を抑制する構造をプローバチャックに搭載することが考えられる。
【0008】
磁気メモリのプローブテストでは、磁気メモリの可変層の磁化方向をテストに必要な所望の方向に強制的に切り替えるために、磁気メモリ(ウエハ)に対して例えば1T(テスラ)等の磁場を印加することが考えられる。この場合、従来の半導体素子用のプローバチャックは、シグナル層及びガード層を構成する導電材料、ネジ等の接合部材、その他の金属部材に、低コスト及び強度確保のために、鉄などの磁性材料が使用されるのが一般的である。このようなチャックに、例えば0.1T(テスラ)以上の磁場を印加した場合、磁性材料を含むチャックが磁力により物理的に引っ張られ、振動してノイズ源となり、低リーク評価が難しくなってしまう。
【0009】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、磁場が印加される環境下において磁気メモリの低リーク評価を実施可能なプローバチャック及びそれを備えた磁気メモリ用プローバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
【0011】
すなわち、本発明の磁気メモリ用プローバチャックは、磁気メモリが形成されたウエハを保持する磁気メモリ用プローバチャックであって、導電材料で形成され、前記ウエハが載置されるチャックトップと、絶縁材料で形成され、前記チャックトップの底面を支持する絶縁層と、導電材料で形成されると共に前記絶縁層の下方に配置され、前記絶縁層により前記チャックトップと絶縁されているガード層と、を備え、前記チャックトップ及び前記ガード層を含む前記チャックを構成する全ての部材は、非磁性体で構成されていることを特徴とする。
【0012】
非磁性体は、例えば1T(テスラ)などの所定強さの磁場において引力及び斥力を発現しない部材を意味する。非磁性体の導電材料は、例えば、金、アルミ、銅、チタン、白金が挙げられる。絶縁材料では、各種セラミック材、各種樹脂材などが挙げられる。
【0013】
このように、チャックトップ及びガード層を含むチャックを構成する全ての部材は非磁性部材で構成されているので、ウエハに対して磁場を印加しても、チャックを構成する部材が磁場において引力及び斥力を発現しないので、磁場を印加することに起因する振動を防止し、低リーク評価が可能となる。それでいて、ウエハが載置されるチャックトップが導電材料であり、その下方に絶縁層を介して導電材料のガード層が配置されているので、双方に同電位を印加すれば、リーク電流が発現したとしてもその影響を低減又は無くすことができ、低リーク評価が可能となる。
【0014】
より一層低リーク評価に適したチャックを提供するためには、絶縁材料で形成され、前記ガード層の下方に配置される第2の絶縁層と、導電材料で形成されると共に前記第2の絶縁層の下方に配置され、前記第2の絶縁層により前記ガード層と絶縁されているグランド層と、を更に備えることが好ましい。
【0015】
上記各層を、磁場の影響を受けず且つ強度を確保して固定するためには、前記絶縁層及び前記第2の絶縁層は、前記ガード層よりも寸法が大きく形成され、前記絶縁層及び前記第2の絶縁層の間には、前記ガード層が介在しない領域が形成されており、当該領域には、双方の絶縁層同士を固定する非磁性体の固定部が設けられていることが好ましい。
固定部には、ネジ、ボルトやナットなどの締着具、接着剤などが挙げられる。
【0016】
電気的な影響を回避しつつ、チャックの薄型化を追求するためには、前記固定部は、非磁性体の絶縁接着剤であることが好ましい。
【0017】
上記チャックは、下記プローバに好適である。
すなわち、本発明の磁気メモリ用プローバは、上記磁気メモリ用プローバチャックと、前記チャックをZ軸回りに回転可能に且つX軸Y軸に沿って移動可能に支持するθXYステージと、取付けられたプローブカードの針をZ軸に沿って移動させることにより、前記チャックに保持されるウエハに対して前記針を接離可能にするZステージと、前記チャックの下方に配置され、前記チャックを通過させて前記ウエハに磁場を印加する磁場発生部と、を備え、前記θXYステージは、前記チャックの下方を避けた側方に足場が配置され、前記磁場発生部を配置するための中空空間を前記チャックの下方に有する中空ステージであり、前記チャックのZ軸の位置が不変となるように動作方向が設定されていることを特徴とする。
【0018】
鉛直方向をZ軸、水平方向のうち或る方向をX軸、水平方向のうちX軸に直交する方向をY軸としている。
この構成によれば、中空空間に配置した磁場発生部とチャックで保持するウエハの距離が常に一定となるので、磁場発生装置がウエハに印加する磁場の強さを一定にでき、計測に適したプローバを提供することが可能となる。
【0019】
より一層低リーク評価に適したチャックを提供するためには、前記Zステージには、非磁性体の導電材料で形成され、検査時に前記ウエハの上方に配置される第2のガード層が設けられていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る磁気メモリ用プローバチャックを模式的に示す断面図。
図2A】チャックを構成する各部材の径を示す模式平面図。
図2B】第2のガード層を模式的に示す平面図。
図3】本実施形態に係る磁気メモリ用プローバを模式的に示す正面図。
図4】本発明の上記以外の実施形態に係るチャック及びチャックを備えたプローバを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態の磁気メモリ用のプローバチャック1及びそれを備えたプローバ3について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1に示すように、プローバチャック1は、ウエハW上に形成された磁気メモリの電気的な検査を行うために用いられ、磁気メモリが形成されたウエハWを保持する。プローバチャック1は、シグナル層としてのチャックトップ10と、絶縁層11と、ガード層12と、第2の絶縁層13と、グランド層14とを有し、各々の部材10〜14が円盤状で、積層構造をなしている。
【0023】
チャックトップ10は、非磁性体の導電材料で形成され、ウエハWが載置される。非磁性体は、例えば1T(テスラ)などの所定強さの磁場において引力及び斥力を発現しない部材を意味する。また、外部磁場(環境磁場)に影響を与えない部材ともいえる。本実施形態では、材料として金が用いられているが、非磁性体の導電材料であれば、これ以外も利用可能である。例えば、アルミ、銅、チタン、白金などが挙げられる。ウエハWとの接触抵抗を低減するためには、金を用いることが好ましい。
【0024】
絶縁層11は、非磁性体の絶縁材料で形成され、チャックトップ10の底面を支持する。本実施形態では、アルミナや窒化珪素等のセラミックが用いられているが、非磁性体の絶縁材料であれば、これ以外も利用可能である。例えば、各種セラミック材、各種樹脂材、Peek(高絶縁抵抗体)などが挙げられる。検査の際には、ウエハを介してかなりの荷重がかけられるため、薄くても強度のあるセラミックを用いることが好ましい。なお、「Peek」は、英国のビクトレックス社の登録商標で、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とも呼ばれる。
【0025】
ガード層12は、非磁性体の導電材料で形成されると共に絶縁層11の下方に配置され、絶縁層11によりチャックトップ10と絶縁されている。本実施形態では、金が用いられているが、ガード層12もチャックトップ10と同様に、非磁性体の導電材料であれば、これ以外も利用可能である。
【0026】
第2の絶縁層13は、非磁性体の絶縁材料で形成され、ガード層12の下方に配置される。本実施形態では、絶縁層11と同じ材料が用いられる。
【0027】
グランド層14は、非磁性体の導電材料で形成されると共に第2の絶縁層13の下方に配置され、第2の絶縁層13によりガード層12と絶縁されている。本実施形態では、金が用いられているが、ガード層12もチャックトップ10と同様に、非磁性体の導電材料であれば、これ以外も利用可能である。
【0028】
図2Aに示すように、チャックトップ10の径R1は、ガード層12の径R2よりも小さい。これにより、シグナル層としてのチャックトップ10をガード層12で電気的に保護でき、より一層低リーク評価に好ましくなる。グランド層14の径R3はガード層12の径R2以上あればよい。本実施形態では、グランド層14の径R3はガード層12の径R2よりも大きくしてある。すなわち、チャックトップ10の径R1<ガード層12の径R2<グランド層14の径R3、となる。このように導電層(チャックトップ10、ガード層12、グランド層14)の全ての径が異なるので、配線の引き出しを容易にしてある。勿論、チャックトップ10の径R1<ガード層12の径R2≦グランド層14の径R3でもよい。
【0029】
なお、図示しないが、チャック1は、ガード層12及びグランド層14と電気的に接続される接続端子を有する。また、チャック1の種類によっては、チャック1に、ウエハWを吸引するためのエアー穴、溝が形成されている場合がある。
【0030】
図3は、上記プローバチャック1を備えるプローバ3を模式的に示す正面図である。プローブテストの際には、上記チャック1の上方のスペースには、ウエハW上の磁気メモリに針4aを接触させて電気的な検査を行うためのプローブカード4が配置されるため、電磁石などの磁場発生部30は、チャック1の下方に配置されている。図1に示すように、磁場発生部30からチャック1を通過させて磁場HをウエハWに印加するためには、チャック1の厚みが薄いほど磁場Hの強さの減衰が小さくなるので、チャック1は可能な限り薄いことが好ましい。チャック1の厚みが厚ければ、強力な電磁石30が必要となり、電磁石が大型化してしまうからである。また、上記のように複数層構造のチャック1を製造するには、チャック1を構成する部材を固定する手段が必要となる。
【0031】
そこで、本実施形態では、チャック1を薄く形成するために、チャックトップ10、ガード層12及びグランド層14を金メッキで絶縁材料に形成している。一般的に、金メッキを絶縁材料に施すためには、ニッケルなどの磁性体の導電材料を下地として用いるが、磁性体を使用できないため、例えば非磁性体である銅を下地として用いる。勿論、下地を用いずに、メッキすることも有効である。例えば、絶縁材料の表面を粗くすることでメッキを可能にすることも可能である。その他、導電材料を絶縁材料に薄く形成する手段には、スパッタリングや真空蒸着といったドライプロセスが挙げられる。ドライプロセスでは、下地としてアルミ、チタン、白金などを用いることが可能である。
【0032】
本実施形態では、下地無しの金メッキ処理により、絶縁層11の上面にチャックトップ10を形成し、絶縁層11の下面にガード層12を形成している。また、第2の絶縁層13の下面にグランド層14を形成している。勿論、ガード層12を第2の絶縁層13の上面に形成してもよい。
【0033】
図2Aに示すように、絶縁層11と第2の絶縁層13の径R4は、ガード層12の径R2よりも大きい寸法に設定されている。これにより、図1に示すように、絶縁層11及び第2の絶縁層13の間には、ガード層12が介在しない領域Ar1が形成されている。絶縁層11と第2の絶縁層13とを固定するために、この領域Ar1には、双方の絶縁層同士11、12を固定する非磁性体の固定部15が設けられている。具体的に、固定部15は、非磁性体の絶縁接着剤である。本実施形態では、固定部15は、エポキシ系接着剤を用いているが、これに限定されない。ここで、接着剤に絶縁材料を用いているのは、接着剤は絶縁層11と第2の絶縁層13に或る程度浸透するため、導電材料を使用すれば、これら絶縁層の絶縁機能が低下してしまうからである。なお、本実施形態の固定部15は接着剤であるが、ネジ、ボルト、ナット、クランプ機構などの非磁性体の締着具を用いてもよい。
【0034】
本実施形態では、図1に示すように、チャックトップ10、絶縁層11、ガード層12、第2の絶縁層13及びグランド層14を含むチャック1の厚みD1は、約4mmに設定されている。磁場発生部30の大型化を避けてウエハWに十分な強さの磁場を印加するためには、約5mm以下であることが好ましい。約5mmよりも厚くなると、電磁石(磁場発生部30)が大型化してしまうからである。内訳として、絶縁層11及び第2の絶縁層の各層はそれぞれ約2mm以下であり、チャックトップ10、ガード層12及びグランド層14の各層は20μm以下である。なお、絶縁材料は一般的に厚みがあるほど、絶縁効果が高くなるので、集積回路などの一般的な半導体素子を検査するために用いるチャックでは、絶縁効果を高くするために絶縁層が厚く形成されており、チャックは少なくとも10mm以上の厚みに設定されているのが通例である。
【0035】
次に、上記プローバチャック1を備えるプローバ3について図3を用いて説明する。なお、この明細書において、鉛直方向をZ軸、水平方向のうち或る方向をX軸、水平方向のうちX軸に直交する方向をY軸として説明する。
【0036】
磁気メモリ用プローバ3は、上記プローバチャック1と、θXYステージ31と、Zステージ32と、磁場発生部30と、を有する。
【0037】
θXYステージ31は、チャック1をZ軸回りに回転可能に且つX軸Y軸に沿って移動可能に支持する。θXYステージ31は、チャック1の下方を避けた側方に足場が配置され、これにより、磁場発生部30を配置するための中空空間SPがチャック1の下方に形成された中空ステージである。θXYステージ31の動作方向は、チャック1のZ軸の位置が不変となるように設定されている。θXYステージ31は、Yステージ33と、Xステージ34と、θステージ35とを有する。
【0038】
具体的には、図3に示すように、図示しない筐体に対してYステージ33が設けられている。Yステージ33は、足場として配置される対をなすYレール部33aと、両Yレール部33aにY軸に沿って移動可能に支持されるYステージ本体33bとを有する。Yステージ本体33bは、板状をなし端部がYレール部33aに支持される。Yステージ本体33bの中央部には、磁場発生部30を配置するための孔が形成されている。
【0039】
Xステージ34は、Yステージ本体33b上に設けられている。Xステージ34は、足場として配置される対をなすXレール部34aと、両Xレール部34aにX軸に沿って移動可能に支持されるXステージ本体34bとを有する。Xステージ本体34bは、板状をなし端部がXレール部34aに支持される。Xステージ本体34bの中央部には、磁場発生部30を配置するための孔が形成されている。
【0040】
θステージ35は、Xステージ本体34b上に設けられている。θステージ35は、足場として配置される環状のθレール部35aと、Z軸回りに回転可能にθレール部35aに支持されるθステージ本体35bとを有する。θステージ本体35bは、板状をなし端部がθレール部35aに支持される。θステージ本体35bの中央部には孔が形成されている。その孔の周縁には、プローバチャック1を保持するチャック保持部(図示せず)が設けられている。
【0041】
このように、チャック1の下方を避けた側方に各々の足場(33a、34a、35a)が配置され、各々の足場に板状のステージ本体(33b,34b,35b)が掛け渡された形状であるので、θXYステージ31は、磁場発生部30を配置するための中空空間SPをチャック1の下方に有する中空ステージを構成している。また、各ステージ33,34,35の動作方向は、X軸に沿った直線動作、Y軸に沿った直線動作、Z軸回りの回転動作のみであるので、チャック1のZ軸の位置が不変となる。
【0042】
Zステージ32は、プローブカード4が取付け可能であり、取付けられたプローブカード4の針4aをZ軸に沿って移動させることにより、チャック1に保持されるウエハWに対して針4aを接離させる。具体的には、Zステージ32は、プローブカード4が取付けられる板状のZステージ本体32bと、図示しない筐体を足場としてZステージ本体32bをZ軸に沿って移動可能に支持するZ支持部32aとを有する。Zステージ32には、非磁性体の導電材料で形成され、検査時にウエハWの上方に配置される第2のガード層2が設けられている。図2Bに示すように、第2のガード層2の中央部には、プローブカード4の針4aを通すための孔2hが形成されている。
【0043】
図3に示すように、磁場発生部30は、チャック1の下方に配置され、チャック1を通過させてウエハWに磁場Hを印加する(図1参照)。本実施形態では、垂直磁化膜の磁気デバイスを検査対象としているので、垂直磁場を印加する電磁石を磁場発生部30として設けているが、磁気メモリに応じて面内磁場を印加する電磁石を用いてもよい。磁場発生部30は、チャック1の底面に近接し、例えば約1mm離間した状態で配置される。なお、磁場発生部30は、電磁石が好ましいが、場合によっては永久磁石を用いることも可能である。
【0044】
図1に示すように、プローブテストの際には、テスタ5とプローブカード4とが接続され、シグナル層(チャックトップ10)、ガード層12及び第2のガード層2が同電位に印加され、グランド層14が接地される。磁場発生部30は、ウエハWに対して約1T(テスラ)の磁場を印加する。プローバ3は、テスト対象となる磁気メモリに対して針4aが接触するように、ステージ32〜35の駆動を制御する。ウエハWには所定強さの磁場が印加された状態で検査が実施される。
【0045】
以上のように、本実施形態の磁気メモリ用プローバチャック1は、磁気メモリが形成されたウエハWを保持するチャックであって、導電材料で形成され、ウエハWが載置されるチャックトップ10と、絶縁材料で形成され、チャックトップ10の底面を支持する絶縁層11と、導電材料で形成されると共に絶縁層11の下方に配置され、絶縁層11によりチャックトップ10と絶縁されているガード層12と、を備え、チャックトップ10及びガード層12を含むチャック1を構成する全ての部材は、非磁性体で構成されている。
【0046】
このように、チャックトップ10及びガード層12を含むチャック1を構成する全ての部材は非磁性部材で構成されているので、ウエハWに対して磁場を印加しても、チャック1を構成する部材が磁場において引力及び斥力を発現しないので、磁場を印加することに起因する振動を防止し、低リーク評価が可能となる。それでいて、ウエハWが載置されるチャックトップ10が導電材料であり、その下方に絶縁層11を介して導電材料のガード層12が配置されているので、双方に同電位を印加すれば、リーク電流が発現したとしてもその影響を低減又は無くすことができ、低リーク評価が可能となる。
【0047】
特に、本実施形態のチャック1は、絶縁材料で形成され、ガード層12の下方に配置される第2の絶縁層13と、導電材料で形成されると共に第2の絶縁層13の下方に配置され、第2の絶縁層13によりガード層12と絶縁されているグランド層14と、を更に備える。
この構成によれば、チャック1にグランド層14が設けられるので、グランド層14を接地すれば、外乱ノイズをチャック1にて防ぐことができ、より一層低リーク評価に適したチャックを提供することが可能となる。
【0048】
上記構成のチャックを製造するにあたり、磁場の減衰を抑えるために、チャックは可能な限り薄いことが好ましく、複数層構造のチャックを製造するためには、各層を固定する手段が必要となる。そこで、本実施形態では、前記絶縁層及び前記第2の絶縁層は、前記ガード層よりも寸法が大きく形成され、前記絶縁層及び前記第2の絶縁層の間には、前記ガード層が介在しない領域が形成されており、当該領域には、双方の絶縁層同士を固定する非磁性体の固定部が設けられている。
この構成によれば、非磁性体の固定部15を用いて絶縁層11及び第2の絶縁層13を固定しているので、磁場において固定部15が引力及び斥力を発現しせず、低リーク評価を実現することが可能となる。それでいて、ガード層12が介在しない領域Ar1において固定部15が絶縁層と第2の絶縁層に接触して固定しているので、強度を確保することも可能となる。
【0049】
上記固定部15に、ネジ、ボルトやナット、クランプ機構などの締着具を用いて双方の絶縁層11,13を固定することも不可能ではないが、絶縁層11,13に或る程度の厚みが必要となる。そこで、本実施形態では、前記固定部は、非磁性体の絶縁接着剤にしている。この構成によれば、チャック1の厚みを薄くしても、双方の絶縁層11,13を的確に固定することが可能となる。さらに、接着剤に絶縁材料を用いているので、接着剤が電気的な影響を与えることもない。したがって、上記構成のチャックの薄型化を追求することが可能となる。
【0050】
本実施形態のチャック1は、下記プローバ3に適用するのが好ましい。すなわち、本実施形態の磁気メモリ用プローバ3は、磁気メモリ用プローバチャック1と、チャック1をZ軸回りに回転可能に且つX軸Y軸に沿って移動可能に支持するθXYステージ31と、取付けられたプローブカード4の針4aをZ軸に沿って移動させることにより、チャック1に保持されるウエハWに対して針4aを接離可能にするZステージ32と、チャック1の下方に配置され、チャック1を通過させてウエハWに磁場を印加する磁場発生部30と、を備え、θXYステージ31は、チャック1の下方を避けた側方に足場(33a,34a,35a)が配置され、磁場発生部30を配置するための中空空間SPをチャック1の下方に有する中空ステージであり、チャック1のZ軸の位置が不変となるように動作方向が設定されている。
【0051】
この構成によれば、中空空間SPに配置した磁場発生部30と、チャック1で保持するウエハWの距離が常に一定となるので、磁場発生部30がウエハWに印加する磁場の強さを一定にでき、計測に適したプローバ3を提供することが可能となる。
【0052】
さらに、本実施形態では、Zステージ32には、非磁性体の導電材料で形成され、検査時にウエハWの上方に配置される第2のガード層2が設けられている。この構成によれば、ガード層12と第2のガード層2とがウエハWを挟む位置関係となるので、双方のガード層12,2を同電位にすれば、空気層からのリーク電流及びノイズを低減することが可能となり、より一層低リーク評価に適したチャックを提供することが可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0054】
[他の実施形態]
例えば、本実施形態では、図3に示すように、プローバ3のZステージに第2のガード層2を設けているが、これを省略することも可能である。
【0055】
また、本実施形態では、図1に示すように、グランド層14がチャック1に一体に組み込まれているが、図4に示すように、グランド層をチャック101に組み込まず、プローバ103にグランド層114を設けてもよい。
【0056】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0057】
W…ウエハ
1…プローバチャック
10…チャックトップ
11…絶縁層
12…ガード層
13…第2の絶縁層
14…グランド層
15…固定部(接着剤)
3…プローバ
31…θXYステージ
32…Zステージ
30…磁場発生部(電磁石)
図1
図2A
図2B
図3
図4