特許第6026334号(P6026334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6026334ヒューム除去方法、鋼板の塗装方法及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6026334
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ヒューム除去方法、鋼板の塗装方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 31/00 20060101AFI20161107BHJP
   B23K 9/23 20060101ALI20161107BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20161107BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20161107BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20161107BHJP
   C23G 1/02 20060101ALI20161107BHJP
   C23C 22/06 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   B23K31/00 A
   B23K31/00 G
   B23K9/23 K
   B05D7/14 A
   B05D3/00 A
   B05D3/10 H
   C23G1/02
   C23C22/06
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-63820(P2013-63820)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-188528(P2014-188528A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229597
【氏名又は名称】日本パーカライジング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】福士 英一
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛生
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌博
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−020994(JP,A)
【文献】 特開平01−294789(JP,A)
【文献】 特開平09−279371(JP,A)
【文献】 特開2012−162762(JP,A)
【文献】 特表2014−518752(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0260938(US,A1)
【文献】 特開2006−045608(JP,A)
【文献】 特公昭50−028063(JP,B1)
【文献】 特開昭63−105985(JP,A)
【文献】 特開2013−226585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 31/00
B05D 3/00
B05D 3/10
B05D 7/14
B23K 9/23
C23C 22/06
C23G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシメチル基を有するキレート剤を添加した溶媒に、ヒュームが付着した亜鉛めっき鋼板を浸漬させる、ヒューム除去方法であって、
前記キレート剤としてクエン酸を用い、前記溶媒のpHを3〜6の範囲とするヒューム除去方法
【請求項2】
前記亜鉛めっき鋼板は溶接部を有することを特徴とする、請求項1に記載のヒューム除去方法。
【請求項3】
前記キレート剤のキレート安定度定数が大きくなる範囲に前記溶媒のpHを調整することを特徴とする、請求項1又は2に記載のヒューム除去方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒューム除去方法により、亜鉛めっき鋼板からヒュームを除去する工程と、
ヒュームを除去した後、前記亜鉛めっき鋼板に塗装を施す工程と、
を有する、鋼板の塗装方法
【請求項5】
亜鉛めっき鋼板を溶接する工程と、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒューム除去方法により、溶接後の前記亜鉛めっき鋼板からヒュームを除去する工程と、
ヒュームを除去した後、前記亜鉛めっき鋼板を塗装する工程と、
を有する、鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューム除去方法、鋼板の塗装方法、及び鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車関連機器や家電製品では、耐食性に優れた亜鉛めっき鋼板が広く用いられている。亜鉛めっき鋼板に対して溶接を行うと、溶接時の熱影響により亜鉛めっき中の亜鉛が蒸発し、多量のヒュームが発生する。この原因は、亜鉛の沸点が鉄の融点よりも低いため、溶接時に鉄が溶融する時点では亜鉛が蒸発して、空気中で固化してしまうことに起因する。
【0003】
ヒュームが付着した鋼板に塗装を行うと、防錆性能が劣化することが知られている。このため、溶接時に鋼板へのヒュームの発生を抑制するための様々な技術開発が行われている。例えば、特許文献1には、ヘリウムガスに酸素ガスが3容量%以上10容量%以下を混合したシールドガス中でレーザ溶接を行うことを特徴とする、亜鉛めっき鋼板の溶接方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−192365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の溶接方法を用いることで、溶接時におけるヒュームの発生を低減できる。しかし、ヒュームの発生を完全に防止できるわけではなく、ヒュームは少なからず鋼板に付着してしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、鋼板に付着したヒュームを効果的に除去できるヒューム除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるヒューム除去方法は、カルボキシメチル基を有するキレート剤を添加した溶媒に、ヒュームが付着した亜鉛めっき鋼板を浸漬させる、ヒューム除去方法であって、
前記キレート剤としてクエン酸を用い、前記溶媒のpHを3〜6の範囲とするものである
【0008】
上述のヒューム除去方法においては、亜鉛めっき鋼板は溶接部を有してもよい。
また、上述のヒューム除去方法においては、キレート剤のキレート安定度定数が大きくなる範囲に前記溶媒のpHを調整してもよい。


【0009】
本発明にかかる鋼板の塗装方法は、上述のヒューム除去方法により、亜鉛めっき鋼板からヒュームを除去する工程と、ヒュームを除去した後、前記亜鉛めっき鋼板に塗装を施す工程と、を有するものである。
【0010】
本発明にかかる鋼板の製造方法は、亜鉛めっき鋼板を溶接する工程と、上述のヒューム除去方法により、溶接後の前記亜鉛めっき鋼板からヒュームを除去する工程と、ヒュームを除去した後、前記亜鉛めっき鋼板を塗装する工程と、を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、鋼板に付着したヒュームを効果的に除去できるヒューム除去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態にかかる鋼板の製造方法を示すフロー図である。
図2】本発明の実施の形態にかかるヒューム除去方法の、ヒューム除去性の評価基準を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態1にかかるヒューム除去方法は、カルボキシメチル基を有するキレート剤を添加した溶媒に、ヒュームが付着した亜鉛めっき鋼板を浸漬させ、ヒュームを溶媒に溶解させて除去するものである。
【0014】
亜鉛めっき鋼板の溶接時に発生するヒュームは、主に、亜鉛めっき鋼板中の亜鉛が溶接時の熱により酸化された酸化亜鉛である。ヒュームは、溶接部の周囲に付着することが多い。本発明は、亜鉛イオンがキレート剤と反応することを利用して、ヒュームを除去する。
【0015】
本発明にかかるヒューム除去方法では、キレート剤として、例えば、EDTA(Ethylene Diamine Tetraacetic Acid:エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(Diethylene Triamine Pentaacetic Acid:ジエチレントリアミン五酢酸)、クエン酸を用いることが好ましい。
【0016】
キレート剤として用いられる、EDTA、DTPA、及びクエン酸は、ともにカルボキシメチル基を有する。これらのキレート剤が有するカルボキシメチル基が、亜鉛イオンに対してキレート効果を発揮して、安定な錯塩を亜鉛イオンと形成し、ヒュームを溶解して除去する。
【0017】
EDTA、DTPA、及びクエン酸の溶媒中の濃度は、10〜50mmol/Lとするのが好ましい。溶媒中のキレート剤の濃度が薄くなると、鋼板上のヒュームを全てキレート化するには、キレート剤の絶対量が足りなくなるからである。
また、溶媒としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態1にかかる鋼板の製造方法を示すフロー図である。
図1に従って、本発明の実施の形態1にかかる鋼板の製造方法を説明する。まず、亜鉛めっき鋼板を溶接する(溶接工程S11)。次に、溶接した亜鉛めっき鋼板を、キレート剤を添加した溶媒に浸漬させることにより、溶接後の鋼板表面からヒュームを除去する(ヒューム除去工程S12)。最後に、ヒューム除去後の前記亜鉛めっき鋼板を塗装する(塗装工程S13)。これにより、本発明の実施の形態にかかる鋼板が製造される。
【0019】
このように、鋼板表面のヒュームを除去してから塗装を行うことで、鋼板表面が滑らかになり、塗装が鋼板表面に均一に塗布される。均一に塗布された塗料ははがれにくいので、本発明にかかる鋼板の製造方法により、防錆性能の高い鋼板を製造することができる。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例に基づいて、本発明について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。本発明にかかるヒューム除去方法の実施例1〜6及び比較例1〜5について、ヒューム除去性を評価した。
実施例1〜6及び比較例1〜5においては、濃度が0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液にキレート剤を添加したものを、溶媒として用いた。また、実施例1〜6及び比較例1〜5において、ヒュームが付着した亜鉛めっき鋼板を、液温40℃とした溶媒中に2分間浸漬した。
【0021】
実施例1、実施例2、及び比較例1では、キレート剤としてEDTAを溶媒に添加した。また、実施例3、実施例4、及び比較例2では、キレート剤としてDTPAを溶媒に添加した。さらには、実施例5、実施例6、及び比較例3では、キレート剤としてクエン酸を溶媒に添加した。そして、比較例7ではアジピン酸を、比較例8ではアミノヘキサン酸を、キレート剤として溶媒に添加した。
【0022】
[実施例1〜6]
実施例1では、溶媒である水酸化ナトリウム水溶液に、EDTAを、濃度が10mmol/Lとなるまで添加した。さらに、炭酸ガス又は水酸化ナトリウムを溶媒に添加することにより、溶媒のpHが9となるよう調整を行った。炭酸ガスを溶媒に添加するとpHは小さくなり、水酸化ナトリウムを溶媒に添加するとpHは大きくなる。
〈実施例1におけるヒューム除去方法の実施条件〉
・キレート剤:EDTA
・キレート剤濃度:10mmol/L
・溶媒のpH:9
【0023】
実施例2は、実施例1のEDTA濃度を10mmol/Lから50mmol/Lに変更したものである。
〈実施例2におけるヒューム除去方法の実施条件〉
・キレート剤:EDTA
・キレート剤濃度:50mmol/L
・溶媒のpH:9
【0024】
実施例3は、実施例1のキレート剤を、EDTAからDTPAに変更したものである。
〈実施例3におけるヒューム除去方法の実施条件〉
・キレート剤:DTPA
・キレート剤濃度:10mmol/L
・溶媒のpH:9
【0025】
実施例4は、実施例1のキレート剤をEDTAからDTPAに変更し、キレート剤の濃度を10mmol/Lから50mmol/Lに変更したものである。
〈実施例4におけるヒューム除去方法の実施条件〉
・キレート剤:DTPA
・キレート剤濃度:50mmol/L
・溶媒のpH:9
【0026】
実施例5は、実施例1のキレート剤をEDTAからクエン酸に変更し、あわせて、溶媒のpHを9から5に変更したものである。
〈実施例5におけるヒューム除去方法の実施条件〉
・キレート剤:クエン酸
・キレート剤濃度:10mmol/L
・溶媒のpH:5
【0027】
実施例6は、実施例1のキレート剤をEDTAからクエン酸に変更して、溶媒のpHを9から5に変更し、さらに、キレート剤の濃度も10mmol/Lから50mmol/Lに変更したものである。
〈実施例6におけるヒューム除去方法の実施条件〉
・キレート剤:クエン酸
・キレート剤濃度:50mmol/L
・溶媒のpH:5
【0028】
[比較例1〜5]
比較例1は、実施例1のEDTA濃度を10mmol/Lから2mmol/Lに変更したものである。
〈比較例1におけるヒューム除去方法の実施条件〉
・キレート剤:EDTA
・キレート剤濃度:2mmol/L
・溶媒のpH:9
【0029】
比較例2は、実施例1のキレート剤をEDTAからDTPAに変更し、キレート剤の濃度を10mmol/Lから2mmol/Lに変更したものである。
〈比較例2におけるヒューム除去方法の実施条件〉
・キレート剤:DTPA
・キレート剤濃度:2mmol/L
・溶媒のpH:9
【0030】
比較例3は、実施例1のキレート剤をEDTAからクエン酸に変更し、キレート剤の濃度を10mmol/Lから2mmol/Lに変更したものである。あわせて、溶媒のpHを、9から5に変更した。
〈比較例3におけるヒューム除去方法の実施条件〉
・キレート剤:クエン酸
・キレート剤濃度:2mmol/L
・溶媒のpH:5
【0031】
比較例4は、実施例1のキレート剤をEDTAからアジピン酸に変更し、キレート剤の濃度を10mmol/Lから50mmol/Lに変更したものである。
〈比較例4におけるヒューム除去方法の実施条件〉
・キレート剤:アジピン酸
・キレート剤濃度:50mmol/L
・溶媒のpH:9
【0032】
比較例5は、実施例1のキレート剤をEDTAからアミノヘキサン酸に変更し、キレート剤の濃度を10mmol/Lから50mmol/Lに変更したものである。
〈比較例5におけるヒューム除去方法の実施条件〉
・キレート剤:EDTA
・キレート剤濃度:50mmol/L
・溶媒のpH:9
【0033】
表1は、実施例と比較例について、ヒューム除去性を評価した結果を示す表である。ヒューム除去性は、ヒュームの付着残量を目視で評価した。ヒューム除去性の評価基準の一例は図2に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
図2は、本発明の実施の形態にかかるヒューム除去方法の、ヒューム除去性の評価基準を示す図である。図2の(A)〜(C)は、本実施形態にかかるヒューム除去方法を、溶接後の亜鉛めっき鋼板に実施した後の、亜鉛めっき鋼板の表面の写真である。(A)は粉状ヒュームが残存している状態、(B)は粉状ヒュームが一部除去されている状態、(C)は粉状ヒュームが完全に除去されている状態の一例である。
【0036】
実施例と比較例についての、ヒュームの付着残量の評価結果から、以下のことが推察できる。
亜鉛めっき鋼板に付着しているヒューム量に対して、キレート剤の絶対量が足りないと、ヒュームが十分に除去できないと推察される。キレート剤は、1:1の比率で金属イオンと反応して錯塩を形成することで、ヒュームを溶解していると考えられるからである。
【0037】
比較例1〜3の評価結果では、キレート剤濃度が2mmol/Lと低い場合は、ヒュームを十分に除去できていない。キレート剤は1:1の比率で金属イオンと反応するため、ヒューム量に対してキレート剤の絶対量が足りず、ヒュームを十分に除去できていないと推察される。
【0038】
実施例1及び2の評価結果から、本実施例において発生するヒューム量では、EDTA濃度は10〜50mmol/Lが好ましいと考えられる。
また、実施例3〜6の評価結果から、キレート剤としてDTPA又はクエン酸を用いた場合も同様に、濃度は10〜50mmol/Lが好ましいと考えられる。
【0039】
なお、ヒュームを除去するために必要なキレート剤の濃度は、鋼板に付着したヒューム量によって変化するものであり、本実施例の濃度に限定されるものではない。
鋼板に付着したヒューム量が本実施例よりも少ない場合には、本実施例よりも低いキレート剤濃度でも、ヒュームを十分に除去できると考えられる。それに対して、鋼板に付着したヒューム量が本実施例よりも多い場合には、本実施例よりも高いキレート剤濃度であっても、ヒュームを十分に除去できないことがあると考えられる。
【0040】
溶媒のpHは、添加するキレート剤の亜鉛とのキレート安定度定数が大きくなる範囲に調整する。
EDTA又はDTPAを添加した溶媒のpHは、8〜11とするのが好ましく、さらには、9〜10とするのがより好適である。キレート安定度定数は、pHが8〜11の範囲で大きくなり、pHが9〜10の範囲でさらに大きくなるからである。
【0041】
また、溶媒のpHは、鋼板上の亜鉛めっきを必要以上に溶解しない範囲に調整する。クエン酸を添加した溶媒のpHは、3〜6とするのが好ましく、さらには、4〜5とするのがより好適である。pHが3より小さいと、亜鉛めっきの溶解過多となるおそれがある。他方、pHが6より大きいと、キレート安定度定数が十分に大きくならず、ヒューム除去性が悪化するおそれがある。
【0042】
さらにまた、キレート剤として、アジピン酸やアミノヘキサン酸を用いた場合には、ヒュームは十分に除去できなかった。
EDTA、DTPA、クエン酸はカルボキシメチル基を持っているのに対して、アジピン酸やアミノヘキサン酸はカルボキシメチル基を持たない。カチオン帯電している亜鉛イオンとキレート錯体を形成するためには、少なくとも一つのカルボキシメチル基が必要だと推察される。
【0043】
表2は、鋼板の防錆性能評価結果を示す表であり、ヒューム除去性と鋼板の防錆性能との相関を示している。亜鉛めっき鋼板の試験片に対して、本発明にかかるヒューム除去方法でヒュームを除去した後に、化成処理及び電着塗装を行い、その後に防錆性能評価を行った。
【0044】
【表2】
【0045】
表2における防錆性能評価は、CCT−C試験を90サイクルで行った。CCTとは、Cyclic Corrosion Testの略語であり、複合サイクル腐食試験のことである。CCT試験の中でも、C法は、海塩粒子が飛来する一般的な大気環境を想定した試験法である。
【0046】
CCT−C試験では、まず、5%塩水を試験片に4時間連続で噴霧した後に、5時間で強制乾燥を行う。つづいて、湿潤雰囲気に試験片を12時間保持し、2時間の強制乾燥の後に1時間の自然乾燥を行う。CCT−C試験は、以上の24時間1サイクルの処理を行う試験方法である。
このCCT−C試験を90サイクル繰り返した後に、試験片の腐食面積率と最大浸食深さを測定する。
【0047】
表2から、ヒューム除去性が高いほど、腐食面積率及び最大浸食深さが小さくなり、防錆性能が向上していることがわかる。
本発明にかかるヒューム除去方法でヒュームを除去した後に、塗装を施した鋼板は防錆性能が向上する。鋼板表面が滑らかになり、塗装が均一に塗布されるからである。均一に塗布された塗料ははがれにくいため、鋼板の防錆性能が向上する。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、溶媒に添加するキレート剤は一種に限定されるものではなく、二種以上を混合して用いてもよい。
図1
図2