【実施例】
【0148】
下記に記載する実施例は特定の実施形態を例示し、技術を限定しない。
【0149】
(実施例1)
4−((6−アミノ−2−(2−メトキシエトキシ)−8−オキソ−7H−プリン−9(8H)−イル)メチル)安息香酸(化合物7)の合成
この実施例は、化合物AおよびSC12を調製することができる方法を詳述し、下記の方法およびデータが含まれる。
−4−((6−アミノ−2−(2−メトキシエトキシ)−8−オキソ−7H−プリン−9(8H)−イル)メチル)安息香酸(化合物7)の調製方法、および1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)とのそのコンジュゲート
−化合物7の調製のための条件、およびマルチグラムスケールでの調製のスケールアップ
−化合物Aを得るための、化合物7と1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)とのコンジュゲートの方法
−マルチグラムスケールで化合物Aを調製する方法
−中間体およびコンジュゲート化合物のための分析方法
−化合物Aの安定性研究
−7と1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE))とのコンジュゲート誘導体である、SC12としても公知である化合物8の調製方法
−SC12の安定性研究。
【0150】
下記のスキームは、化合物AおよびSC12を調製するために使用し得る方法の例を提示する。他の合成法を化合物AおよびSC12を調製するために使用してもよく、これらの他の合成法の例を、
図20〜23に提供する。
【0151】
スキーム1
【0152】
【化9】
【0153】
A.4−((6−アミノ−2−(2−メトキシエトキシ)−8−オキソ−7H−プリン−9(8H)−イル)メチル)安息香酸7の調製
化合物2
【0154】
【化10】
【0155】
2,6−ジクロロプリン(100g、0.53mol)を、機械式撹拌機、油浴、温度計、滴下漏斗、還流凝縮器および窒素注入口を備えた四つ口丸底フラスコ(3L)に充填する。N,N−ジメチルアセトアミド(1L)、続いて固体ブロモメチル−ベンゾニトリル(114.6g、0.58mol、1.1当量)および炭酸カリウム(109.7g、0.79mol、1.5当量)を加える。混合物を激しく撹拌し、85〜90℃で3時間加熱し、次いでこれを室温に冷却し、水(2L)と共に加える。大量の黄色の固体が直ちに形成される。混合物を30分間撹拌し、次いでこれをブフナー漏斗中で濾過し、水(2×200mL)および酢酸エチルで洗浄し、恒量が観察されるまで65℃にて真空中で乾燥させる(約5時間)。中間体2バッチCH730/2/1を、下記の試料の量および純度で淡黄色の固体として得る。160g;99%Y;90.2%HPLC純度。NMRおよびMS分析は、構造と一致する。
【0156】
600gの2,6−ジクロロプリンから出発して、反応をスケールアップし、繰り返す。下記の試料の量および純度で中間体2バッチCH730/3/1を得る。950g;98.3%Y;92%HPLC純度。
【0157】
化合物3
【0158】
【化11】
【0159】
中間体2(100g、0.33mol)を、機械式撹拌機、油浴、温度計、滴下漏斗、還流凝縮器および窒素注入口を備えた四つ口丸底フラスコ(3L)に充填する。乾燥ジメチルホルムアミド(700mL)、続いてメタノール中のアンモニア溶液(7N)(100mL、0.66mol、2当量)を加える。混合物を室温で激しく撹拌する。2時間後、茶色の溶液を得て、次いで大量の固体が沈殿する。混合物を12時間さらに撹拌し、次いで固体をブフナー漏斗上で濾過し、酢酸エチル(200mL)で洗浄する。生成物を、恒量が観察されるまで65℃にて真空中で乾燥させる(約6時間)。中間体3バッチCH730/3/2を、下記の試料の量および純度で白っぽい固体として得る。66g;71%Y;92.9%HPLC純度。NMRおよびMS分析は、構造と一致する。
【0160】
900gの中間体2で反応をスケールアップし、繰り返す。中間体3バッチCH730/6/2を、下記の試料の量および純度で得る。680g;77%Y;91%HPLC純度。
【0161】
化合物4
【0162】
【化12】
【0163】
機械式撹拌機、油浴、温度計、滴下漏斗、還流凝縮器および窒素注入口を備えた四つ口丸底フラスコ(1L)に、2−メトキシエタノール(500mL)を充填する。ナトリウム(6g、0.26mol、1.5当量)を、室温でアルゴン雰囲気下にて少量ずつ加える。中間体3(50g、0.175mol)を一度に加える。反応混合物を撹拌し、100℃に6時間加熱し、次いでこれを室温に冷却する。水(1L)を加え、混合物を室温で30分間撹拌する。固体をブフナー漏斗上で濾過し、水(200mL)で洗浄し、恒量まで真空中で65℃にて乾燥させる(約8時間)。中間体4バッチCH730/2/3を、下記の試料の量および純度で白っぽい固体として得る。40g;70%Y;95%HPLC純度。NMRおよびMS分析は、構造と一致する。
【0164】
反応をスケールアップし、550gの化合物3で繰り返す。中間体4バッチCH730/6/3を、下記の試料の量および純度で得る。532g;78%Y、94%HPLC純度。
【0165】
化合物5
【0166】
【化13】
【0167】
中間体4(100g、0.3mol)を、機械式撹拌機、油浴、温度計、滴下漏斗、還流凝縮器および窒素注入口を備えた四つ口丸底フラスコ(2L)に充填する。ジクロロメタン(1.5L)を加え、混合物を室温で激しく撹拌する。臭素(19mL、0.37mol、1.2当量)を、室温にて滴下で添加する。8時間撹拌した後、固体を濾過し、ジクロロメタン(300mL)で洗浄し、粗化合物5を黄色の固体として得る。これをアセトン(500mL)で結晶化し、中間体5を下記の試料の量および純度で淡黄色の固体として得る。バッチCH730/3/4;109g;88%Y。82%HPLC純度。
【0168】
反応を、150gの化合物4で繰り返す。中間体5バッチCH730/4/4を下記の試料の量および純度で得る。170g;92%Y;81%HPLC純度。第3の調製を行う。中間体5バッチCH730/11/4を下記の試料の量および純度で得る。80g;91%HPLC純度。
【0169】
化合物7
【0170】
【化14】
【0171】
機械式撹拌機、油浴、温度計、滴下漏斗、還流凝縮器および窒素注入口を備えた四つ口丸底フラスコ(3L)に、メタノール(700mL)を充填する。ナトリウム(11.9g、0.52mol、3当量)を、少量ずつ加える。中間体5(70g、0.17mol)を、溶液に一度に加える。透明な溶液が得られる(約6時間)まで、懸濁液を還流させながら激しく撹拌する。混合物を室温に冷却し、次いで水(500mL)、続いて水酸化ナトリウム(34g、0.85mol)を加える。混合物を8時間再び加熱還流させ、次いで室温に冷却する。濃塩酸を加える(120mL)。白色の固体が反応混合物から沈殿する。1時間撹拌した後、固体をブフナー漏斗上で濾過する。真空中で65℃にて乾燥させた後(約8時間)、粗化合物6(50g)を得る。これをアセトニトリル(500mL)に懸濁させ、ヨウ化ナトリウム(Aldrich、34g、0.23mol)と共に加える。クロロトリメチルシラン(Aldrich、29mL、0.23mol)を滴下で添加した後、混合物を激しく撹拌し、50℃に3時間加熱する。室温に冷却した後に、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液を加え、反応混合物中でpH6を得る。沈殿した固体をブフナー漏斗上で濾過し、最初に水(100mL)で、次いでメタノール(50mL)で洗浄する。粗化合物7バッチCH730/18/6bを、下記の試料の量および純度で淡黄色の固体として得る。40g、HPLC純度89%
これを氷酢酸で2回結晶化させる(各回600mL)。真空中で65℃にて8時間乾燥させた後、化合物7バッチCH730/18/6cを、下記の試料の量および純度で得る。34g;5から55%Y;93.6%HPLC純度。
【0172】
反応を、70gの中間体5で繰り返す。化合物7バッチCH730/16/6bを、下記の試料の量および純度で得る。38g;61%Y;92%HPLC純度。反応を、30gの化合物5で再び繰り返す。化合物7バッチCH730/21/6dを、下記の試料の量および純度で得る。18g;62%Y;92.2%HPLC純度。
【0173】
酸7は、通常の溶媒(メタノール、エタノール、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトン、クロロホルム)の大部分において可溶性でない。酸7を結晶化することを目的に多くの試みがなされる。ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド/水、DMSO/水、メタノール、アセトンを試験するが、全ての場合において、結晶化後の生成物は、結晶化前と同じ純度を有する。氷酢酸は、7の純度を増強するのに有効であり得る。最初の結晶化後に純度は増加するが、処理を繰り返すときに変化しない。目標値(98%HPLC)は達成されなかった。
【0174】
化合物Aの調製
【0175】
【化15】
【0176】
良好な収率および純度で化合物Aを調製することを目的に多くの試みがなされる。最初に、酸7とDOPEとの直接のカップリングを試みる(方法Aおよび方法B)。次いで、酸7を、DOPEとのカップリングの前に活性化させる(方法Cおよび方法D)。方法Aおよび方法Dの両方によって合理的な結果が得られる一方、反応混合物の後処理の間および精製相の間、困難が生じ得る。
【0177】
方法A:酸7(2.6g、7.2mmol)を、アルゴン雰囲気下にて乾燥ジメチルホルムアミド(10mL)に懸濁させる。HATU(O−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;2.94g、7.6mmol、1.05当量)を一度に、続いてトリエチルアミン(2mL、14.4mmol、2当量)を加える。混合物を室温で15分間撹拌し、次いでDOPE(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、5.37g、7.2mmol、1当量)の乾燥ジクロロメタン(150mL)溶液を滴下で添加する。このように得られた溶液を、試薬が完全に変換するまで12時間撹拌する。HPLC分析は、化合物Aが粗反応混合物において約85%であることを示す。ジクロロメタンを減圧下で蒸発させ、残渣を水(150mL)に滴下で添加する。固体が反応混合物から分離する。生成物は結晶性ではなく、フィルターがブロックされるため、真空下での濾過の試みは失敗し得る。
【0178】
この時点でジクロロメタン(150mL)を加え、相を分離させる。ミルク状懸濁液が形成され、2相の分離は可能でない。濾過および抽出手順が失敗した場合、溶媒を真空下で蒸留によって完全に除去し、残渣を、ジクロロメタン/メタノール/酢酸(8/2/0.1)で溶出するフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。化合物Aを、一例のHPLC純度94.6%(0.5g)で、白色のアモルファス固体として得る。
【0179】
15gの酸7から出発して反応を繰り返す。反応の結果は、前の操作と同様である。粗製物をクロマトグラフィーによって精製するが、標的生成物は低い収率で得られる(7.2g;16%Y)。精製のために使用したシリカゲルをメタノール/酢酸(7/3)で洗浄するとき、残留生成物を回収する。その精製を、クロマトグラフィーによって再び試みる。クロマトグラフィーによる精製は、1〜2グラムのスケールで有効である。カラムに充填した化合物Aの量を増加させ、多量の生成物をシリカゲルによって保持するが、回収率は低い。メタノールおよび酢酸の量を増加させなくてならず、この時点で生成物を、その不純物と一緒に定量的に回収する。
【0180】
結晶化技術をまた試みて、化合物Aを精製する。ジエチルエーテル、ヘキサン、アセトン、アセトン/水および他の溶媒を試験する。メタノールはいくつかの不純物を低下させるのに有効であるが、メタノール中での長時間加熱の後で、新しい不純物が検出される(20%まで)。
【0181】
この時点で、反応条件を研究し、反応粗製物中の不純物を最小化する。温度を低下させることは、より良好なプロファイルをもたらし、化合物Aは、反応混合物中にて88%HPLC純度で得られる。
【0182】
方法B:酸7とDOPEとの反応を、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)をカップリング剤として使用して試みる。どちらの場合でも、反応は起こらず、出発物質は未変化で回収される。
【0183】
方法C:酸7の活性化は、溶媒としてジクロロメタン中の1−ヒドロキシピロリジンで試みる。ジクロロメタン中での7の不溶性によって、反応は失敗する。
【0184】
方法D:酸7(10g、0.028mol)を、室温およびアルゴン雰囲気下にて、アセトニトリル(60mL)およびジメチルスルホキシド(DMSO)(60mL)の混合物に溶解する。カルボニルジイミダゾール(4.55g、0.028mol、1当量)を加え、このように得られた溶液を1時間撹拌する。DOPE(日油株式会社、>99%;20.8g、0.028mol、1当量)の乾燥ジクロロメタン溶液を、滴下で添加する。反応混合物を、試薬が完全に変換するまで16時間撹拌する。アセトニトリルを蒸留によって真空中で除去する。水(200mL)を残渣に加える。白色の固体が分離するが、濾過は可能でない。混合物を30分間遠心分離する。溶媒を廃棄し、化合物AバッチCH730/16/8を固体(25g)として得る。これをシリカゲルに急速に通過させ、ジクロロメタン/イソプロパノール/酢酸(7/2/1)(CH730/16/8c、下記の試料の量および純度:21g;89.6%HPLC純度)で溶出させ、次いで室温にて30分間メタノールで処理し、ブフナー漏斗上で濾過する。化合物Aを、固体として得る(19g、HPLC純度94.5%)。20gの酸7で反応を繰り返し、同様の結果を得る。
【0185】
方法AおよびDを比較し、粗化合物Aの収率および純度に関する限りは同様の結果が得られるが、不純物プロファイルは異なる。マルチグラムスケールで方法Aによって得た試料の精製は実現可能でないことが決定される。酸7とDOPEとの間のカップリング反応を数回繰り返すが、純度>90%の化合物Aの単離は容易に達成されない。
【0186】
合成工程
図20は、式Aまたは式Bの構造を有する特定の化合物を製造するために利用することができる他の合成工程の実施形態の例を示す。
図20は、化合物AおよびSC12を製造するための合成工程を特に示す。これらの工程の実施形態は、縮合環部分(8−ヒドロキシル)に結合しているヒドロキシル部分が、−O−(C1〜C6アルキル)部分であることを除いて、式Aまたは式Bの構造を有する中間体を含む。次いで、この−O−(C1〜C6アルキル)部分を、式Aまたは式Bに示すヒドロキシル部分に変換する。−O−(C1〜C6アルキル)部分は、
図20の中間体9において特に示すように−OCH3部分(すなわち、−OMe部分)であることがある。−O−(C1〜C6アルキル)部分は、TMSCl/NaI加水分解手順(例えば、Carey、Advanced Organic Chemistry IV Ed. − Part B: Reaction and Synthesis、163頁)および/またはメチルエノールエーテル加水分解(例えば、Bioorganic & Medicinal Chemistry、12巻(2004年)1091〜1099頁)などの当技術分野において公知の工程によって、ヒドロキシル部分に変換することができる。
【0187】
図21および22は、式Aまたは式Bの構造を有する特定の化合物を製造するために利用することができる合成工程の実施形態のさらなる例を示す。
図21および
図22は、化合物AおよびSC12を製造するための合成工程を特に示す。これらの工程の実施形態は、スキーム1の中間体7における第一級アミン部分が、構造−NH−(prot)を有する第二級アミンである(prot部分は、保護基である)(例えば、
図21における中間体13および
図22における中間体17)ことを除いて、上記に示したスキーム1における中間体7の構造を有する中間体を含む。これらの工程の実施形態はまた、式Aまたは式Bにおける第一級アミン部分が、構造−NH−(prot)を有する第二級アミンである(例えば、
図21における中間体14および
図22における中間体18)ことを除いて、式Aまたは式Bの構造を有する中間体を含む。当技術分野において公知の任意の適切な保護基を利用することができ、保護基は、例示として
図21に示すようなtert−ブトキシカルボニル(Boc)保護基(例えば、
図21における中間体13および14)、または例示として
図22に示すようなベンジル保護基(例えば、
図22における中間体17および18)であることがある。特定の保護基は、RdおよびReが飽和アルキル部分(例えば、Bocおよびベンジル)である化合物を生成するのに適しており、特定の保護基は、RdおよびReが1つ以上の不飽和を含むアルキル部分(例えば、Boc)である化合物を生成するのに適している。
【0188】
図23は、式Aまたは式Bの構造を有する特定の化合物を製造するために利用することができる他の合成工程の実施形態の例を示す。
図23は、SC12を製造するための合成工程を特に示す。この工程の実施形態は、中間体7における第一級アミン部分が、構造−NH−(prot)を有する第二級アミンである(prot部分は、保護基である)(例えば、
図23における中間体17)ことを除いて、上記に示したスキーム1における中間体7の構造を有する中間体を含む。この工程の実施形態はまた、式Aまたは式Bにおける第一級アミン部分が、構造−NH−(prot)を有する第二級アミンである(例えば、
図23における中間体18)ことを除いて、式Aまたは式Bの構造を有する中間体を含む。この工程の実施形態は、中間体6における第一級アミン部分が、構造−NH−(prot)を有する第二級アミンである(例えば、
図23における中間体21)ことを除いて、上記に示したスキーム1における中間体6の構造を有する中間体をさらに含む。当技術分野において公知の任意の適切な保護基を利用することができ、保護基は例示として
図23に示すようなベンジル保護基であることがある。
【0189】
図20〜23において、合成スキームにおける様々な化合物についての番号の指定は、他の図において使用される数、またはこの実施例1において使用される数と対応しなくてもよい。
【0190】
HPLCのための試料の調製:
中間体番号5:10mlのクラスAメスフラスコ中で、約10mgの正確に秤量した試料を、数滴のジメチルスルホキシドと共にメタノールに溶解した(最終濃度、約1mg/ml)。中間体番号7:10mlのクラスAメスフラスコ中で、約5mgの正確に秤量した試料を、数滴のジメチルスルホキシドと共にメタノールに溶解した(最終濃度、約0.5mg/ml)。
【0191】
化合物A(下記で示した一番上の化合物)の断片化
【0192】
【化16】
【0193】
X線回折(XRD)
化合物Aの試料がアモルファスであったことが決定された。
【0194】
乾重量および化学組成(CHN)
実験値は、化合物Aの構造と一致した。
【0195】
旋光度
試料調製:20mgの化合物Aをクロロホルムに溶解し、分析した。[α]D=−37.08(分析の偏差:43%)。偏差の高い値は溶液の乳白光を発する挙動によるものである可能性があると決定された。
【0196】
5mgの化合物Aをクロロホルムに溶解して分析を繰り返した。[α]D=−8.7であることが見出された(分析の偏差:16%)。
【0197】
溶解性
ヨーロッパ薬局方6.0に報告されている方法を使用した。
化合物Aは、水に可溶性でなかった。
化合物Aは、アセトニトリルに可溶性でなかった。
化合物Aは、クロロホルム(100mg/mL)に可溶性であった。
化合物Aは、DMSOに可溶性であった。
【0198】
DMSOへの化合物Aの溶解性は、生成物の3つの異なるバッチを使用して決定した。
−CH730/16/8c(HPLC純度59%)
−CH730/16/8g(HPLC純度71.5%)
−CH730/23/8e(HPLC純度95.6%)
バッチCH730/16/8gを、ヨーロッパ薬局方に記載されている方法によって試験した。DMSOを0.1mLずつ103.7mgの生成物に加え、各々の添加の後に、懸濁液をVortex機器で3分間振盪した。DMSO中の化合物AバッチCh730/16/8gの溶解性は、259mg/mLであることが見出された。次いで、バッチCH730/16/8c、CH730/16/8gおよびCH730/23/8eを、各懸濁液をより長時間撹拌しながら試験した。30分間撹拌した後、100mgの各バッチは、0.2mLのDMSOに完全に溶解した。この方法によると、DMSO中の化合物Aの溶解性は、500mg/mLであった。
【0199】
化合物Aの安定性
化合物Aのいくつかの試料をHPLCによって再試験し、それらの純度が数日で減少したことが見出された。結果を下記の表Aに報告する。
【0200】
表A
【表A】
【0201】
分解を起こした試料は、結晶化容器中で室温にて自然光下で貯蔵した。RRT1.1およびRRT1.2において2つの主要な不純物はいつも存在した。結果として、化合物Aは、室温および/または光の存在下で安定的な化合物でなかったことが決定された。この時点で、安定性研究をバッチCH730/16/8gで行った。下記の貯蔵条件を試験した。
−室温(約25℃)および光の存在下での固体
−外部温度(28〜35℃)、太陽光下での固体
−+4℃での固体
−室温および光の存在下でのクロロホルム中の溶液
−+4℃でのクロロホルム中の溶液
−外部温度(28〜35℃)、太陽光下でのクロロホルム中の溶液
得られた結果は、以下の表Bに報告する。
表B: CH730/16/8Gの安定性
【表B】
【0202】
数日後に、固体試料は殆ど完全に分解した。化合物Aは、溶液中でより安定的のようであった。化合物AバッチCH730/16/8gの試料は、t=0で低い純度を有したため、安定性研究を新たに調製した試料(バッチCH730/23/8e)で繰り返した。得られた結果を、以下の表Cに報告する。
表C: CH730/23/8Eの安定性
【表C】
【0203】
化合物AはT>25℃および光の存在下で急速な分解を起こすことが、HPLC分析によって確認された。化合物は溶液中でより安定的であったことが示された。
【0204】
化合物Aのストレスをかけた試料についてのHPLC−MS分析
6日間外部温度(28〜35℃;HPLC純度35.4%;報告番号#0112)にて太陽光下で貯蔵した化合物AバッチCH730/16/8gの試料を、HPLC−MSによって分析し、新たに調製したバッチCH730/23/8eと比較した。この研究の目的は、安定性研究の間にHPLCによって検出した不純物が、分析の人為産物ではなく、不純物が熱および光の作用によって本当に形成されたことを示すことであった。
【0205】
【化17】
【0206】
試料調製
溶液a:2mg/mlの濃度を有するために、試料をジメチルスルホキシド−イソプロパノール(20:80)に溶解した。
溶液b:「溶液a」を、メタノール:イソプロパノール:水(50:20:30)+0.1%ギ酸で1:5に希釈した。
【0207】
(実施例2)
SC12の合成
以下で記載するのは、(2−(4−((6−アミノ−2−(2−メトキシエトキシ)−8−オキソ−7H−プリン−9(8H)−イル)メチル)ベンズアミド)エチル2,3−ビス(オレオイルオキシ)プロピルホスフェート)の調製である。
【0208】
化合物AバッチCH730/16/8gで行ったHPLC−MS分析は、化合物の分解によって形成された主要な不純物が、酸化誘導体であったことを示した。酸7(化合物7)を1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)とコンジュゲートさせ、その安定性を研究した。生成物は、化合物8およびSC12と称される。化合物SC8およびSC18は、化合物7を、DLPEとコンジュゲートする代わりに、各々、1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンまたは1,2−ジステアロイル(distrearoyl)−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンとコンジュゲートすることを除いて同様に合成した。
【0209】
A.SC12(化合物8)の調製
【0210】
【化18】
【0211】
SC12を調製する方法のこの例において、酸7(化合物7)(バッチCH730/18/6d;1g、0.0028mol)を、アセトニトリル(6mL)およびDMSO(6mL)の混合物に室温およびアルゴン雰囲気下にて溶解する。カルボニルジイミダゾール(455mg、0.0028mol、1当量)を加え、このように得られた溶液を1時間撹拌する。DLPE(>99%;1.78g、0.0028mol、1当量)の乾燥ジクロロメタン溶液を、滴下で添加する。試薬が完全に変換するまで、反応混合物を16時間撹拌する。アセトニトリルを真空中で蒸留によって除去する。水(200mL)を残渣に加える。白色の固体が分離する。固体をブフナー漏斗上で濾過し、メタノール(5mL)で洗浄する。真空中で35℃にて乾燥させた後、白色の固体としてSC12を得る。1.8g、Y65%、HPLC純度90.3%、HPLC報告番号0121。
【0212】
B.SC12の分析的特性決定
SC12の構造を、1H−NMR、13C−NMRおよびMSによって確認した。
【0213】
C.SC12の安定性
安定性研究をSC12で行い、下記の条件を試験した。
−室温(約25℃)および光の存在下でクロロホルム中の溶液
−室温および光の存在下での固体
−外部温度(28〜35℃)、太陽光下での固体
試料を、t=0においておよび20日後に分析した。
【0214】
結果を下記の表1において報告し、これらのRRTと共に形成された主要な不純物を一覧表示する。
表1
【0215】
【表1】
【0216】
得られたデータは、SC12が化合物Aより安定的であったことを示す。さらに、表2は、熱に関して化合物AおよびSC12の安定性の間の比較を示す。各化合物の固体試料を80℃で維持し、HPLCによって分析した。
表2
【0217】
【表2】
【0218】
(実施例3)
化合物の作用強度
PBMCモデルおよびマウスマクロファージ細胞株Raw264.7におけるTLR7アゴニスト活性を有する5つの試料の作用強度は、炎症促進性サイトカインであるIL−6およびTNF−αの用量依存的な刺激を測定することによって決定した。
【0219】
方法および実験配置
研究は、下記に概要を述べるように2つのモデルにおいて配置した。
−モデル1:5つのTLR7アゴニストを、マウスマクロファージ細胞株モデルRaw264.7において試験した。エンドポイントは、IL−6およびTNF−αの測定であった。
−モデル2:5つのTLR7アゴニストを、PBMCモデルにおける作用強度について試験した。エンドポイントは、分泌されたIL−6およびTNF−αの測定であった。
【0220】
モデル1
5つのTLRアゴニストの作用強度を、Raw264.7細胞株において、陽性対照(イミキモド)と比較して査定した。EC50値を、IL−6およびTNF−α分泌について対照および各薬物候補について決定した。
【0221】
方法:Raw264.7細胞を、RPMI培地および10%FCSを使用してサプライヤーからの条件によって増殖させた。細胞を96ウェルプレートに蒔き、7つの用量でTLR7アゴニストによって24時間処理した。条件培地をELISA分析のために24時間後に除去した。サプライヤーからのガイドラインによるXTTアッセイを使用して、細胞を生存率について続いてアッセイした。
【0222】
実験配置:
1.未処理細胞
2.イミキモド
3.TLR7アゴニスト1
4.TLR7アゴニスト2
5.TLR7アゴニスト3
6.TLR7アゴニスト4
7.TLR7アゴニスト5
化合物を、7つの用量(0.003、0.01、03、0.1、0.5、2.0、10.0マイクロモル)で試験した。各試験シリーズについて4連ウェルにおいて実験を行い、上清をプールし、ELISAによって3連で測定した。
【0223】
モデル2
5つのTLRアゴニストの作用強度を、IL−6およびTNF−α分泌を刺激する能力に基づいて査定し、作用強度をPBMCモデルにおいて陽性対照(イミキモド)と比較した。IL−6およびTNF−α分泌についてのEC50値を、対照および各薬物候補について決定した。
【0224】
方法:PBMCを3人のドナーから精製し、96ウェルプレート中、ヒト2%加熱不活化AB血清、グルタミン、Pen−strepおよびβ−メルカプトエタノールを含むRPMI培地において2×10
5個の細胞/ウェルで蒔いた。細胞を、7つの用量でTLR7アゴニストによって24時間処理した。条件培地を、IL−6およびTNF−αについてのELISA分析のために除去し、細胞生存をサプライヤーからのプロトコルに従ってXTT法によって決定した。
【0225】
実験配置:
1.未処理細胞
2.イミキモド
3.TLR7アゴニスト1
4.TLR7アゴニスト2
5.TLR7アゴニスト3
6.TLR7アゴニスト4
7.TLR7アゴニスト5
7つの用量(0.003、0.01、03、0.1、0.5、2.0、10.0マイクロモル)で化合物を試験した。
【0226】
データ処理:
IL−6およびTNF−αの濃度を、Microsoft Excelソフトウェアを使用してR&D SystemsからのELISAによって決定した。結果を、用量反応曲線を調製するために、およびEC50値の決定のために、Graph Pad Prismで分析した。
【0227】
統計分析:
ドナーの数によって、個々のEC50値の間の統計的評価は関連性のあるものでなかった。
【0228】
結果および考察:
モデル1において、IL−6およびTNF−α分泌は、全ての化合物によって用量依存的に誘発されたが、DMSO自体によって誘発されなかった(
図1〜2)。化合物は、異なるレベルの最大サイトカインレベルに達し、また異なるEC50値を示した。作用強度の順序は、最も強力なものが最初で下記の通りである。化合物A<SC12<SC18<SC8=遊離ファルマコフォア<イミキモド(表3)。遊離ファルマコフォア(「遊離ph」)は、構造
【0229】
【化19】
【0230】
を有する。
【0231】
XTTアッセイ(
図3、Y軸=相対的生存、x軸=処理のための濃度)は、細胞が、より高い濃度の化合物によって僅かに影響されたことを示し、これはいくつかの化合物については、最も高い濃度におけるサイトカイン産生の減少に反映された(特に、化合物A、SC12およびSC18について;
図1および2)。最も高い濃度によって誘発されたサイトカインレベルに基づいて、用量反応曲線の最大プラトーが決定されたため、最も高い濃度の化合物を考慮しなかった場合、このプラトーは僅かに増加した可能性がある。しかし、ダイナミックレンジにおける用量は、これによって影響されず、これはEC50値が最小限に影響されることを意味する。
【0232】
表3、各化合物の試験した7つの用量に基づいてRaw264.7細胞株において決定されたEC50値
【0233】
【表3】
【0234】
モデル1について結論として、化合物Aは、最も強力なTLR7アゴニストであり、続いてSC12、SC18、遊離ファルマコフォアと共にSC8、最後にイミキモドであった。この点において、このモデルにおいて5つの化合物全てはイミキモドより強力であった。
【0235】
モデル2について、PBMCは、健康な匿名の成人ヒトドナーからのバフィーコートに由来した。3人のドナーにおいて、両方のIL−6およびTNF−α分泌は、大部分の化合物によって用量依存的に誘発された。イミキモド、SC8および遊離ファルマコフォアなどのいくつかの化合物は、あるドナーにおいてサイトカインを誘発する弱い能力を示し、そこでは最も高い用量のみがサイトカイン産生を誘発した。化合物Aは、3人のドナー全てにおいて、IL−6分泌について最も強力な化合物であった。ドナー2において、SC12は化合物Aと同じぐらい強力であり、一方、ドナー1および3において、SC12は2番目に強力な化合物であった(表4)。平均して、化合物は、下記のような作用強度の順序を示した。化合物A<SC12<遊離ファルマコフォア<イミキモド<SC18<SC8。SC8は、確固とした用量反応曲線を可能としないサイトカインのレベルを示した。3人のドナーからの結果に基づいて、TNF−α分泌について、SC12は、化合物Aより平均して僅かに強力であった(表4)。作用強度の順序は下記の通りである。SC12<化合物A<遊離ファルマコフォア<SC18<SC8<イミキモド(
図7〜9)。しかし、イミキモドおよびSC8についてのデータは不明確であり、3人のドナー全てにおいて、弱いTNF−α分泌のみを誘発した。生存アッセイは、研究に亘って試験した全ての濃度で全体的に良好な細胞の生存を示し、明らかな細胞毒性は観察されなかった。SC12で処置された1人のドナー(2番)は、生存反応の増加を有した(
図10)が、サイトカイン反応の違いを反映しなかった(
図5および8)。
【0236】
表4、6つのTLR7アゴニストについて3人のドナーからのPBMCにおいて決定したEC50値(平均作用強度を示す)
【0237】
【表4】
【0238】
モデル2について結論として、化合物AおよびSC12は、最も強力なTLR7アゴニストであった。化合物Aは、IL−6の最も強力な刺激物質であり、SC12は、TNF−α分泌について化合物Aより僅かに強力であった。他の化合物は、異なるドナーにおけるPBMCからIL−6およびTNF−αを誘発する異なる能力を示したが、これらの作用強度は一般に、順序付けることができない。イミキモドおよびSC8は、試験した最も高い濃度におけるサイトカイン誘発、および低いレベルの分泌されたサイトカインを示した。したがって、EC50値は、イミキモドおよびSC8について決定することができない。SC18および遊離ファルマコフォアは、IL−6およびTNF−α分泌の両方について同様の反応を示し、イミキモドおよびSC8についてよりも高いレベルに達したが、Raw264.7モデルについてよりも高い値を有した。
【0239】
Raw264.7細胞株は試験した全ての化合物に反応し、化合物Aが最も強力であり、続いてSC12であった。これらの2つの後がSC18、SC8および遊離ファルマコフォアであり、同様の作用強度を示し、イミキモドはIL−6およびTNF−αの最も弱い誘発を示した。
【0240】
PBMC実験は、2つの最も強力なTLR7アゴニストとして化合物AおよびSC12、続いてSC18および遊離ファルマコフォアを示したが、イミキモドおよびSC8による処理の後に低いサイトカイン分泌が測定された。
【0241】
(実施例4)
ヒトPBMCにおける化合物AおよびSC12の2つの異なるバッチからのTLR7アゴニストの作用強度についての試験
目的
IL−6分泌の誘発について、ヒトPBMCにおける2つの異なるバッチにおいて産生される2つのTLR7アゴニストの作用強度を決定すること。
【0242】
方法および実験配置
PBMCを2人のドナーから精製し、96ウェルプレートにおいて、ヒト2%加熱不活化AB血清、グルタミン、Pen−strepおよびβ−メルカプト−エタノールを含むRPMI培地中で、2×10
5個の細胞/ウェルで蒔いた。細胞を、4つの用量においてTLR7アゴニストによって24時間処理した。条件培地を、IL−6のためのELISA分析のために除去し、EC50値を各化合物および各バッチについて決定した。
【0243】
実験配置:
1.未処理細胞
2.未処理細胞(ビヒクル対照)
3.イミキモド
4.化合物A(新しいバッチ#20289)
5.化合物A(古いバッチ#CH730/25/8)
6.SC12(新しいバッチ#20288)
7.SC12(古いバッチ#CH730/2/13D)
全ての化合物を、4つの濃度(10、1、0.1、0.01マイクロモル)で試験した。IL6を、ELISAによって条件培地中での24時間のインキュベーションの後で決定した(IL6は、最後の実験において、最も比較できる用量反応結果を生じた)。
【0244】
データ処理:
IL−6の濃度は、Microsoft Excelソフトウェアを使用してR&D SystemsからのELISAによって決定した。結果は、用量反応曲線を調製するために、およびEC50値の決定のために、Graph Pad Prismで分析した。
【0245】
統計分析:
少ない数のドナーのために、個々のEC50値の間の統計的評価は決定されなかった。
【0246】
結果および考察
IL−6は、最も高い濃度(10マイクロモル)でのみIL−6を誘発することにおいて活性であったイミキモドを除いて、全ての化合物によって用量依存的に誘発された。結果の要約を試験した2人のドナーについてのEC50値(上の2つの列)を示した表5に示し、3人のドナーで行った2つの化合物についての第1の実験からの値(下の3つの列)と比較した。イミキモドについてのEC50値は、この本実験において最後の実験と比較していくらかより高いようであった。これは、4℃での貯蔵、および潜在的に、使用前に完全に化合物を可溶化するのに使用する加熱手順によって説明することができる。この実験と、バッチCH730/2/13Dを試験したときの前の実験とを比較して、SC12は同様のEC50値を示した。古いSC12バッチ(CH730/2/13D)は、新しいバッチ(#20288)と比較して、また同様のEC50値を示した。化合物Aは、この実験とバッチ(CH730/25/8)を試験したときの前の実験との両方においてまた同様のEC50値を示した。新しい化合物Aバッチ#20289は、古いバッチと比較して、また同様のEC50値を示した。最後の実験が試験した濃度において細胞毒性活性を示さなかったため、細胞生存についての試験は行わなかった。
【0247】
表5: SC12および化合物Aの異なるバッチによる、異なる時点において5人の異なるドナーからのPBMCにおいて決定したEC50値
【0248】
【表5】
【0249】
結論
2つのTLR7アゴニストであるSC12および化合物Aは、本実験において同様のEC50を示したが、これらは同じ量の活性化合物を含有することを示す。これは、化合物(CH730/2/13DおよびCH730/25/8)は、4℃でのDMSO中の5カ月の貯蔵の間、活性を失わなかったことをさらに示す。
【0250】
(実施例5)
ラット、ウサギ、ミニブタおよびヒト血漿における化合物Aの代謝安定性の調査、ならびにウサギおよびヒト血漿における代謝プロファイル;ヒト血漿における化合物AおよびSC12安定性の比較
略語:
2−ピペリジノエチル4−アミノ−5−クロロ−2−メトキシベンゾエート−M7319
アセトニトリル−ACN
大気圧化学イオン化−APCI
ジメチルスルホキシド−DMSO
電子スプレーイオン化−ESI
ギ酸−HCOOH
液体クロマトグラフィー/質量分析法−LC/MS
メタノール−MeOH
多重反応モデル−MRM
保持時間−R.T.
超高性能液体クロマトグラフィー−UPLC。
【0251】
要約
化合物A
*(化合物Aの別のバッチ)の安定性を、ラット、ウサギ、ミニブタおよびヒト血漿において試験し、代謝プロファイルをウサギおよびヒト血漿において査定した。化合物A
*は、ウサギおよびヒトにおいてエステラーゼによって高度に代謝され、ミニブタおよびラット種においてより低い程度で代謝された。ウサギについて30分および120分において、ならびにヒトについて60分および300分において、2つの種において親化合物の残存百分率を概ね一定に維持しながら代謝を研究した。3つの代謝物がウサギにおいて見出され、ヒトにおいてこれらの2つが見出された。
【0252】
ウサギにおいて、主要な代謝物はモノエステルおよび酸代謝物であり、一方、僅かに微量のジ加水分解された代謝物が観察された。ヒト血漿において、ウサギで従前に検出された最初の2つの主要な代謝物のみが、選択された時点において同定され、酸生成物は120分において主流の代謝物であった。
【0253】
ヒトおよびウサギ種において、2つの主要な代謝物のみの形成に伴い、クリアランスの比較できるプロファイルおよび代謝プロファイルが見出され、律速段階はモノエステルの形成をもたらす加水分解であったが、これは酸誘導体に急速に変換されたことがこの研究によって見出された。
【0254】
ヒト血漿においてSC12と比較して化合物Aの第2のバッチ(バッチ20289)で行った第2の実験において、SC12は120分まで代謝されず、化合物の70%超は300分においてまだ存在したため、SC12は化合物Aより安定的であったことが示唆された。これに反して、化合物Aは、60分のインキュベーションの後で不安定性を示した。
【0255】
イントロダクション
血漿中に存在する加水分解酵素は、化合物の代謝に強力に貢献した。エステル結合を含有する多くの薬物をプロドラッグとして使用して、透過性もしくは溶解性を増加させ、または全身の毒性作用を減少させた。エステラーゼは多くの種類で存在し、種差は一般に、生体媒質中の異なるタイプの存在、およびこれらの基質特異性の差異からもたらされることがある。さらに、生物変換は、様々な要因(年齢、性別および疾患など)によって影響されることがある。
【0256】
目的
アッセイの目的は、異なる時点におけるいくつかの血漿種における、親化合物の残存百分率として安定性を比較することであった。2つの時点において血漿中のインキュベーションの後で形成された主要な代謝物のプロファイリングを、ウサギおよびヒト血漿において行った。
【0257】
化合物Aの異なるバッチによる第2の実験を、異なるバッチのヒト血漿を利用することによって、SC12と比較して行った。
【0258】
血漿安定性および代謝研究
材料
下記の物質は、示したソースから得た。ACNは、J.T Baker、Germanyから、リドカイン、ベラパミルおよびM7319は、Sigma−Aldrichから、HCOOHは、Flukaから、脱イオン水は、MilliQ apparatus(Millipore)から。
【0259】
血漿試料は、示したソースから得た。
ラット血漿は、Charles River、Calco、Italyから、ミニブタ、ヒトおよびウサギ血漿は、Biopredic、Rennes、Franceから。
【0260】
化合物A、2−(4−((6−アミノ−2−(2−メトキシエトキシ)−8−オキソ−7H−プリン−9(8H)−イル)メチル)ベンズアミド)エチル2,3−ビス(オレオイルオキシ)プロピルホスフェート
バッチコード:化合物A
*(第1の実験)、20289(第2の実験)
貯蔵条件:粉末として4℃、DMSO中のストック溶液として−20℃
化合物SC−12:2−(4−((6−アミノ−2−(2−メトキシエトキシ)−8−オキソ−7H−プリン−9(8H)−イル)メチル)ベンズアミド)エチル2,3−ビス(オレオイルオキシ)プロピルホスフェート
バッチコード:20288
貯蔵条件:粉末として4℃、乾燥させて、直接光から離して貯蔵
機器
クリアランス決定のためのPremiere XEトリプル四重極(Waters)とインターフェースしているUPLC(Waters)、および代謝プロファイルのためのイオントラップHCTultra(Bruker Daltonics)とインターフェースしているUPLC(Waters)。
【0261】
方法
第1の実験:試験化合物(50mMのDMSO)を、ACNで250μMの最終濃度に希釈した(2連で)。異なる種の血漿(1ml)を化合物の250μM溶液(10μl)でスパイクし、一定分量の50μl容量を、0分、15分、30分、60分、120分および5時間で採取し、ベラパミル(250ng/ml)(内部標準、I.S.)のACN溶液(200μl)で直ちにクエンチした。10μlのMeOHを加えて、溶解性を改善した。次いで、試料を13000rpmで5分間遠心分離し、下記で報告するように分析した。リドカインおよびM7319を参照標準として使用し、上記のようにインキュベートした。上清画分を、LC/MS/MSによって分析した。ゼロ時間インキュベーションを、100%値として使用した。インキュベーションにおける基質の喪失パーセントを決定し、試験化合物のインビトロの半減期を推定した。
【0262】
50μMの試験化合物の最終濃度で代謝実験を行い、化合物の半減期に照らして確立した試料を2つの時点で集め、ACNおよび内部標準を加えた後でLC/MS/MSによって分析した。
【0263】
第2の実験:試験化合物(DMSO中5mM)を、ACN−MeOH(1:1)で250μMの最終濃度に希釈した。
【0264】
ヒト血漿(1.180ml)を、化合物の250μM溶液(20μl)(4.16μMの最終濃度)でスパイクし、一定分量の50μl容量を、0分、15分、30分、60分、120分および5時間で採取し、ベラパミル(250ng/ml)(内部標準、I.S.)のACN:MeOH(95:5)溶液(200μl)で直ちにクエンチした。次いで、試料を3000rpmで10℃にて20分間遠心分離し、下記で報告するように分析した。リドカインおよびM7319を参照標準として使用し、上記のようにインキュベートした。上清画分を、LC/MS/MSによって分析した。ゼロ時間インキュベーションを、100%値として使用した。
【0265】
試料分析
血漿安定性決定についての試料分析(第1の実験)
試料を、Premiere XEトリプル四重極(Waters)とインターフェースしているUPLC(Waters)で分析した。
【0266】
溶離液は、以下であった。
相A:95%H2O、5%MeOH、0.1%HCOOH
相B:5%H2O、95%MeOH、0.1%HCOOH
カラム:Acquity BEH C8、2.1×5mm、1.7um、55℃
注入容量:5μl
クロマトグラフ法を、表6において下記で報告する。
【0267】
表6、クリアランス決定のためのクロマトグラフ法
【0268】
【表6】
【0269】
ESI陽性、キャピラリー3.4kV、抽出器5V、ソース温度115℃、脱溶媒和温度450℃、コーンガス98L/h、増倍管630V。
【0270】
表7において、化合物Aに適用したMRM転移を報告した。
【0271】
表7、適用したMRM転移およびパラメーター
【0272】
【表7】
【0273】
代謝プロファイルのための試料分析
試料を、Bruker Daltonics HCTultra(登録商標)イオントラップ質量分析計とカップリングしたWaters UPLCクロマトグラフィーシステムを使用して分析した。インキュベートした試料の分析の前に、化合物Aを手動で注入し、親化合物の断片化を理解した。DMSO中の50mM溶液をACN/MeOH(1/1)で1μMに希釈することによって、注入を行った。試料溶液を、イオントラップソースに4ul/分の流量で注入した。
【0274】
Tユニオンを介して、UPLCシステムからの75μl/分のH
2O/ACN(1/1)+0.1%ギ酸を、化合物溶液流と混合し、流量およびシグナルを安定化させた。
【0275】
下記の条件をイオントラップに適用した。ESI陽性、キャピラリー−4KV、キャピラリー出口164.3V、スキマー40V、トラップドライブ88.4、ネブライザーガス70psi、ドライガス10l/分、乾燥温度350℃。
【0276】
インキュベートした試料を、イオントラップHCT ultra(Bruker Daltonics)とインターフェースしているUPLC(Waters)で分析した。
【0277】
溶離液は、以下であった。
相A:95%H2O、5%MeOH、0.1%HCOOH
相B:5%H2O、95%MeOH、0.1%HCOOH
カラム:Acquity BEH C8、50×2.1mm、1.7um、55℃
注入容量:5ul
クロマトグラフ法を、表8において下記で報告する。
【0278】
表8、代謝プロファイルのためのクロマトグラフ法
【0279】
【表8】
【0280】
試料分析(第2の実験)
化合物AおよびSC12を、Bruker Daltonics HCTultra(登録商標)イオントラップ質量分析計とカップリングしたWaters UPLCクロマトグラフィーシステムを使用して分析した。
【0281】
溶離液は、以下であった。
相A:95%H2O、5%MeOH、0.1%HCOOH
相B:5%H2O、95%MeOH、0.1%HCOOH
流量0.6ml/分、カラム:Supelco、Discovery HS F5、3.3cm×2.1mm;55℃
注入量:10μl
クロマトグラフ法を、表9において下記で報告する。
【0282】
表9、クロマトグラフ法
【0283】
【表9】
【0284】
下記の条件を、イオントラップに適用した。
−化合物Aについて:ESI陽性、キャピラリー−4KV、キャピラリー出口164.3V、スキマー40V、トラップドライブ88.4、ネブライザーガス70PSI、ドライガス10l/分、乾燥温度350℃。
−SC12について:ESI陽性、キャピラリー−4KV、キャピラリー出口200V、スキマー49.5V、トラップドライブ85.0、ネブライザーガス70PSI、ドライガス10l/分、乾燥温度350℃。
【0285】
定量化のために使用するMRM転移を、表10において報告した。
【0286】
表10、MRM転移
【0287】
【表10】
【0288】
データ分析
安定性を、0分時点における面積比(化合物/I.S.)に対する各時点における面積比(化合物/I.S.)の残存百分率として計算した。一般安定性分類を、表11に報告する。
【0289】
表11、1時間のインキュベーションにおける一般安定性分類
【0290】
【表11】
【0291】
ヒト血漿について60分および300分において、ならびにウサギ血漿について30分および120分において、すなわち、2つの種が、親化合物の同様の残存百分率を示した時点において、代謝を研究した。スペクトルのMS/MS分析と親スペクトルを比較することによって構造の割当を行った。
【0292】
結果
血漿安定性(第1の実験)
血漿安定性実験で得た結果を、表12に示す。
【0293】
化合物Aは、全ての試験した種において不安定であった。ウサギは最も高いクリアランスを有する種であり、続いてヒトおよびラット種であり、ミニブタは最も低いクリアランスを示した。ウサギ、ラットおよびヒト血漿において、30分までの曲線の最初の部分は急勾配であり、一方、残りの部分は、より穏やかな勾配を有する。標準物質は、文献のデータと一致した。
【0294】
表12、ラット、ウサギ、ミニブタおよびヒト血漿における化合物Aの残存百分率(残存%−平均±S.D.)
【0295】
【表12】
【0296】
データは、平均±S.D.として表す、n=2、(
*)であるとき(n=1)を除いて
血漿安定性(第2の実験)
化合物AおよびSC12についてのヒト血漿安定性実験の結果を表13に示した。化合物Aについて、60分のインキュベーション後に不安定性(約80%の残存)が観察され、300分において56%の残存に到達した。この第2の実験において、異なるバッチの化合物Aが、第1の実験に関してヒト血漿の異なる分析条件およびバッチと一緒に利用された。これによって、得られた残存パーセントの間に観察された差異について説明することができた。
【0297】
SC12は、120分までヒト血漿において安定的であった。化合物の70%超が、300分のインキュベーションの後にまだ存在した。このデータは、前の実験において見出されたものと一致する(データは示さず)。同じ実験において試験した標準化合物は、文献のデータと一致した(表14)。
【0298】
表13、ヒト血漿における化合物AおよびSC12の残存百分率
【0299】
【表13】
【0300】
データは、平均±S.D.として表す、n=2;(
*)であるとき(n=1)を除いて
表14、ヒト血漿における標準化合物の残存百分率
【0301】
【表14】
【0302】
代謝プロファイル
親化合物の断片化:主要なフラグメントは、表15に報告するようにMS/MSスペクトルから属性付けした。
【0303】
表15、化合物Aの主要なフラグメントの属性
【0304】
【表15】
【0305】
代謝物プロファイリング
代謝プロファイルを、ウサギおよびヒト血漿において研究した。両方のマトリックスにおいて、親化合物(50uM、開始濃度)は最後の時点で完全に代謝された。代謝物をフルスキャンで検出し、ピークをMH+およびMS/MSスペクトルによって割り当てた。親化合物はフルスキャンプロファイルにおいて低い反応を示し、したがって最初のフルスキャンクロマトグラムは有意でなかった。
【0306】
代謝物の概略をMH+および保持時間と共に、表16において報告した。ウサギ種において、各々、557、821および360のMH+を有する3つの代謝物を、1.1分、6.3分および6.4分の保持時間(r.t.)で検出した。
【0307】
最も大量のピークは、MH+821(M2)に相当し、これはモノ−エステル生成物に割り当てられたが、120分において酸代謝物に1:1で変換された。ジ加水分解された生成物に相当する小さなピークのみが、存在した(MH+557、M1)。ヒト血漿において同様のプロファイルがまた観察されたが、2つの主要な代謝物は、ウサギプロファイルと同じMH+および保持時間を示し、これらの比は60分のインキュベーションの後で1:1であり、一方、代謝物M3が300分において主要な生成物であった。微量のジ加水分解された代謝物(MH+557)が、ヒト血漿中で既に0時間において存在し、したがってこれは代謝物と見なさなかった。したがって、代謝の律速段階はモノエステルの形成であったが、一方、全ての他の分解段階はより一層速く起こると仮定された。ジアシルグリセロール部分の1位または3位における加水分解の潜在的選択性は属性付けられなかった。
【0308】
表16、ウサギおよびヒト血漿において同定される代謝物
【0309】
【表16】
【0310】
結論
血漿中の化合物Aの安定性を、4つの種(ウサギ、ヒト、ラットおよびミニブタ)において研究した。生成物は、ウサギおよびヒトにおいてエステラーゼによって高度に、ならびにミニブタおよびラットにおいてより少ない程度で代謝された。ウサギについて30分および120分において、ならびにヒトについて60分および300分において、2つの種において親化合物の残存百分率を概ね一定に維持しながら、代謝を研究した。3つの代謝物がウサギにおいて見出され(M1、M2およびM3)、それらの2つがヒトにおいて見出された(M2およびM3)。ウサギにおいて、主要な代謝物は、モノエステルおよび酸代謝物であり、一方で、ほんの微量のジ加水分解された代謝物が観察された。ヒト血漿において、ウサギにおいて従前に検出されたモノエステルおよび酸代謝物のみが、選択された時点で同定され、酸生成物は120分において主流の代謝物であった。
【0311】
結論として、2つの種は、2つの主要な代謝物のみの形成によって、クリアランスの比較できるプロファイルおよび代謝プロファイルを提示し、律速段階はモノエステル形成をもたらす加水分解であったが、これは酸誘導体に急速に変換された。
【0312】
SC12は、ヒト血漿において化合物Aより安定的であると思われ、化合物の70%が300分においてまだ存在した。
【0313】
(実施例6)
ヒト全血アッセイにおける形質細胞様DC、骨髄DCおよびB細胞に対するTLR7アゴニストの作用強度
目的
イミキモドと比較して、全血アッセイにおいて2つのTLR7アゴニストの作用強度を決定すること。具体的には、2つのTLR7アゴニストである化合物AおよびSC12が、全血アッセイにおける免疫細胞の活性化における作用強度の差異を示すかについて調査する。化合物AおよびSC12の生物学的作用の間の差異を示すことができるための最適なパラメーターは、B細胞、骨髄DCおよび形質細胞様DCの活性化の測定であると考えられた。
【0314】
方法および実験配置
概ね55mLの新鮮な全血の容量を、(J.A. Ida、Journal of Immunol Methods、310巻、2006年、86〜99頁)に記載されているように、3人の健康な成人の匿名ボランティアからのヘパリン添加Vacutainer中に採取した。ドナーは健康であり、公知の免疫障害を患っておらず、薬物治療を受けていなかった。血液を採取する前に、化合物を、10×希釈した試料に20ulで96ウェル丸底プレートへと加えた。化合物を、血清を有さず、抗生物質を有するRPMI培地で希釈した。抗生物質を、10×濃度で加えた。血液を採取した後、全血試料を穏やかに混合し、均一な試料を得て、180ulを、各ウェルに加えた。
【0315】
6時間および24時間のインキュベーション後に、血漿を、ELISAのために取り出した(IL−6、IL−10、IL−12p40およびIFN−α)。ELISAは、全ての濃度について6時間および24時間の時点において行った。選択された化合物濃度での24時間のインキュベーションの後、細胞をFACSによって活性化マーカーについて分析した。
【0316】
下記の試料を調製した。
【0317】
実験配置:
1.未処理細胞
2.未処理細胞(ビヒクル対照)
3.イミキモド(古いバッチ)
4.化合物A(古いバッチ)
5.SC12(古いバッチ)
全ての化合物を、最終濃度として0、0.01、0.03、0.1、0.5、2.0、10.0マイクロモルの濃度で配置した。ビヒクル対照はDMSO対照であり、本発明者らは化合物について使用した最も高い濃度を使用した。血液を加えた後、全てのプレートを、収集まで37℃および5%CO
2で穏やかに撹拌した。試料を6時間または24時間のインキュベーションの後に取り出し、適当なチューブ(2ml)中にプールした。
【0318】
6時間の時点について、プレートを500×gで遠心分離した。上清(SN)をチューブに移し、10.000×gで10分間遠心分離し、細胞およびタンパク質凝集物を除いた。浄化した上清を、分析まで−80Cで冷凍した。
【0319】
24時間の時点について、ウェル中の試料をチューブ中にプールし、これを500×gで4Cにて10分間遠心分離し、SNを浄化した。SNを別のチューブに取り出し、10.000×gで10分間遠心分離し、凝集物などを除いた。浄化した上清を、分析まで−80℃で冷凍した。
【0320】
FACS分析
フローサイトメトリー分析は、2つの化合物濃度による24時間の処理の後に、3人のドナーからの全血で行った。ドナー1およびドナー2についてのFACS分析は、ドナー3とは異なる日に行った。化合物濃度は下記の通りであった。
B細胞活性化:2uMおよび10uM
mDC/pDC:0.1uMおよび0.5uM。
【0321】
FACS分析を使用して、試験化合物が、B細胞、ならびに2つの異なるサブセットの樹状細胞、すなわち、骨髄CD11c+/CD123−DCおよび形質細胞様CD11c−/CD123+DCの活性化を誘発することができるかを同定した。下記のマーカーを研究し、異なるサブセットの活性化状態を同定した。
B細胞:HLA−DR/CD20/CD40
pDC:HLA−DR/CD123+/CD11c−/CD80
HLA−DR/CD123+/CD11c−/CD86
HLA−DR/CD123+/CD11c+/CCR7
mDC:HLA−DR/CD123−/CD11c+/CD80
HLA−DR/CD123−/CD11c+/CD86
HLA−DR/CD123−/CD11c+/CCR7。
【0322】
メーカーの説明書によって、FACS染色を行った。自己蛍光を最小化するために、赤血球の溶解はFACS染色の前に行った。研究にできるだけ多くのB細胞およびDCを含めるために、FACS分析は各染色について全部で500,000個の細胞で行った。P1ゲートを設定して、FSC対SSC上の関連する細胞のみを含めた(
図12〜15を参照されたい)。所与のゲート設定における特定の活性化マーカーは実際の細胞サブセットを表すため、個々の分析の結果を平均蛍光強度(MFI)値として提示した。アイソタイプバックグラウンド値を使用して、最大で非特異的染色細胞の2%が陽性ゲートにおいて見出すことができるようにゲートを設定した。
【0323】
データ処理:
サイトカインの濃度は、R&D SystemsからのELISAによって決定した。結果は、用量反応曲線を調製するために、およびEC50値の決定のために、Graph Pad Prismで分析した。FACS分析をBecton−Dickinson FACSDivaソフトウェアを使用することによって行い、続いてGraph Pad Prismで例示した。
【0324】
統計分析:
個々のEC50値の間の統計的評価は、不均一分散を伴う両側T検定を使用して決定する関連するサイトカインについてであった。
【0325】
結果および考察:
サイトカイン分泌
6時間および24時間後のIL−6分泌
化合物AおよびSC12との6時間のインキュベーションの後に、全てのドナーは、IL−6分泌を用量依存的に誘発した。イミキモドは、低く僅かな量のIL−6を誘発し、これによって化合物AおよびSC12についてのようにシグモイド用量反応曲線は可能でなかった。表17に見られるように、EC50値を化合物AおよびSC12について決定した。3人のドナー全てにおいて、SC12が化合物Aより僅かに強力なEC50値を示す傾向があった。しかし、3人のドナーのみに基づいており、これは統計的に有意であると確認することができなかった。
【0326】
表17、TLR7アゴニストによる全血における6時間のインキュベーションの後のIL−6分泌についてのEC50値
【0327】
【表17】
【0328】
化合物A、SC12およびイミキモドとの24時間のインキュベーションの後、全てのドナーは、IL−6分泌を誘発したが、イミキモドは、試験した最も高い濃度においてのみ誘発した。EC50値を全ての化合物について決定したが、しかしイミキモドについては最も高い濃度のみが検出可能なレベルを有意に超えたためこの決定は正確でなく、これによってシグモイド用量反応曲線は可能ではなかった。24時間のインキュベーション後のIL−6のレベルは、6時間のインキュベーションの後に見られたIL−6のレベルをほんの僅かに超えた。24時間のインキュベーション後のIL−6分泌についての全ての化合物のEC50値は、表18に見られた。SC12が僅かにより強力であり、3人のドナー全てにおいて化合物Aより低いEC50値を示したという6時間においての傾向と同じ傾向が24時間においてあった。化合物AおよびSC12についてのEC50値における3人のドナー全てについての結果の間の両側T検定を使用した比較は、0.07のP値を示したが、これは2つの化合物についての反応に有意差がなかったことを示す。
【0329】
表18、TLR7アゴニストによる全血における24時間のインキュベーションの後のIL−6分泌についてのEC50値
【0330】
【表18】
【0331】
要約すれば、3人のドナー全てにおいて、化合物AおよびSC12によってIL6−分泌が同様のレベルまで誘発され、同様のEC50値であったが、SC12は僅かにより強力である傾向を示した。さらに、IL−6分泌の範囲(4000〜8000pg/ml)は、Clarkeら、Jour. Interferon & Cytokine Research、29巻、2号、2009年、113〜126頁によって公開された結果と一致した。
【0332】
6時間および24時間後のIFN−α分泌
化合物AおよびSC12との6時間のインキュベーションの後に、全てのドナーは、IFN−α分泌を用量依存的に誘発し、一方、イミキモドは、IFN−α分泌を誘発しなかった。ドナー1および2は、IFN−αを2000pg/ml範囲のレベルに誘発したが、一方、ドナー3は、500pg/ml範囲に誘発したのみであった。表19に見られるように、化合物AおよびSC12についてEC50値を決定した。3人のドナー全てにおいてSC12が化合物Aより僅かに強力なEC50値を示す傾向が再びあったが、これは有意でなかった(P=0.23)。
【0333】
表19、TLR7アゴニストによる全血における6時間のインキュベーションの後のIFN−α分泌についてのEC50値
【0334】
【表19】
【0335】
化合物A、SC12およびイミキモドとの24時間のインキュベーションの後に、全てのドナーは、IFN−α分泌を誘発したが、イミキモドは再び、試験した最も高い濃度においてのみ誘発した。EC50値を、化合物AおよびSC12について決定した。イミキモドについてのEC50値は、最も高い濃度のみにおける誘発によって再び正確ではなかった。ドナー1および2について、24時間のインキュベーションの後のIFN−αのレベルは、6時間のインキュベーションの後に見られるIFN−αのレベル未満であったが、このサイトカインはアッセイにおいて細胞によって除去することができることを示す。24時間のインキュベーション後のIFN−α分泌についての全ての化合物のEC50値は、表20において見られた。24時間後、3人のドナー全ては、1000pg/ml範囲でIFN−αを誘発し、ドナー3は、ドナー1および2より遅く化合物AおよびSC12に反応したことを示した。SC12は再び、化合物Aより僅かに強力であったが、これは有意差がなかった(P=0.11)。
【0336】
表20、TLR7アゴニストによる全血における24時間のインキュベーションの後のIFN−α分泌についてのEC50値
【0337】
【表20】
【0338】
結論として、IFN−α分泌は、3人のドナー全てにおいて化合物AおよびSC12によって同様のレベルまで誘発され、同様のEC50値を有したが、SC12は、僅かにより強力である傾向を示した。公開された結果と比較して、この研究において分泌されたIFN−αの範囲(1000〜2000pg/ml)は、レシキモドで示された公開されたデータよりも高かった(<200pg/ml)(Clarkeら、Jour. Interferon & Cytokine Research、29巻、2号、2009年、113〜126頁)。しかし、これは化合物AおよびSC12と比較した、予想されるより低いレシキモドの作用強度によって説明することができる。第2に、IFN−α分泌は主にpDCによって誘発されることが公知であったが、この研究においてIFN−αが6時間後に既に分泌されていたため、pDCは、化合物AおよびSC12による全血細胞の処理の後に見られる最初の反応の1つとして活性化されたことをこれは示す(J.A. Ida、Journal of immunol methods、310巻、2006年、86〜99頁)。
【0339】
6時間および24時間後のIL−10分泌
イミキモド、化合物AまたはSC12との6時間のインキュベーションの後に、IL−10産生は見られなかったが、これは、IL−10分泌が、TLR7アゴニストによる全血細胞の処理に対する二次的作用であったことを示す。化合物A、SC12またはイミキモドとの24時間のインキュベーションの後に、全てのドナーはIL−10分泌を誘発したが、イミキモドは再び、試験した最も高い濃度のみにおいて誘発した。EC50値を全ての化合物について決定したが、しかしイミキモドについて、この決定は再び最も高い濃度のみにおけるIL−10の誘発によって正確でなかった。24時間のインキュベーションの後のIL−10分泌についての全ての化合物のEC50値は、表21に見られた。24時間後、3人のドナー全ては、2000〜40000pg/ml範囲でIL−10を誘発した。化合物AおよびSC12は、IL−10を誘発する同様の能力を示したが、2つの化合物の間に有意差はなかった。
【0340】
表21、TLR7アゴニストによる全血における24時間のインキュベーションの後のIL−10分泌についてのEC50値
【0341】
【表21】
【0342】
結論として、IL−10は、アッセイにおいて後で誘発された(6時間後に誘発はないが、24時間のインキュベーションの後にのみ誘発された)。これは、IL−10が、恐らく試験した化合物によるTLR7ライゲーションの直接の作用としてではなく、アッセイにおける二次反応として誘発されたことを示す。これは、IL−10がヒトPBMCモデルにおいて4時間後ではなく、12時間および20時間後にのみ誘発されたDouagiら、Journal of Immunology、182巻、2009年、1991〜2001頁による研究と一致した。さらに、Douagiらは、mDCが、pDCと比較して、IL−10の主要な産生細胞であったことを示した。マウスマクロファージおよびmDCが、TLRライゲーションの後でpDCよりIL−10を一層強力に産生したことを示したBoonstraら、Journal of Immunology、177巻、2006年、7551〜7558頁による研究によって支持されて、TLR7ライゲーションによるIL−10分泌についての現在の結果は、IL−10の分泌が、mDCまたは潜在的に全血アッセイにおいて存在するマクロファージにおいて、潜在的に二次反応として起こることを示す。
【0343】
6時間および24時間後のIL−12p40分泌
化合物AおよびSC12との6時間のインキュベーションの後に、全てのドナーは、用量反応的態様でIL−12p40分泌を誘発し、一方、イミキモドは、最も高い濃度においてでさえもIL−12p40分泌を誘発しなかった。全てのドナーは、8.000〜12.000pg/ml範囲のレベルにIL−12p40を誘発した。表22に見られるように、EC50値は化合物AおよびSC12について決定した。化合物は、IL−12p40の誘発において同様に強力であるようであった(有意差なし)。
【0344】
表22、TLR7アゴニストによる全血における6時間のインキュベーションの後のIL−12p40分泌についてのEC50値
【0345】
【表22】
【0346】
化合物A、SC12またはイミキモドとの24時間のインキュベーションの後に、全てのドナーは、化合物AおよびSC12による処理の後で、20.000〜25.000pg/ml範囲のIL−12p40のレベルにIL−12p40分泌を誘発し、一方、イミキモドは、最も高い濃度においてでさえもIL−12p40を誘発しなかった。表23に見られるように、EC50値を化合物AおよびSC12について決定した。両方の化合物は、同様のEC50値を示した(有意差なし)。
【0347】
表23、TLR7アゴニストによる全血における24時間のインキュベーションの後のIL−12p40分泌についてのEC50値
【0348】
【表23】
【0349】
結論として、IL−12p40−分泌は、3人のドナー全てにおいて化合物AおよびSC12によって同様のレベルに誘発され、同様のEC50値を有した。誘発は6時間および24時間の処理の両方において見られ、24時間の時点で量は増加した。マクロファージおよびpDCにおける産生と比較して、マウス細胞においてIL−12p40は、TLRライゲーションによってmDCにより主に産生される(Boonstraら、Journal of immunology、177巻、2006年、7551〜7558頁)。IL−12p40発現の同様のパターンがヒト細胞について見られた場合、化合物AおよびSC12が、ヒトmDCにおいて同様の活性化プロファイルに従うことを示す。
【0350】
サイトカイン分泌に関する結論
化合物AおよびSC12は、全血細胞アッセイからの上清において同定されたDCにより分泌されるサイトカインの強力な誘発物質であり、一方、イミキモドはこれらのサイトカインの弱い誘発物質であった。PBMCモデルにおける同じ化合物による従前の結果に基づいて、この結果は予想された。SC12が、化合物Aの作用強度と比較して、IL−6およびIFN−αの誘発において僅かにより強力である傾向があった。しかし、使用された3人のドナーの数によって、これは、統計的に有意であると示すことができなかった。
【0351】
IL−10およびIL−12p40分泌について、化合物AおよびSC12は、この研究に基づいて同様に強力であった。IL−10は、6時間のインキュベーション後に産生されなかったが、24時間のインキュベーションの後のみに産生された。IL−12p40は、6時間のインキュベーションの後および24時間のインキュベーションの後の両方で誘発された。
【0352】
PBMCおよび全血アッセイのTLR7活性化に関する現在の知識に基づいて、pDCは、IFN−αの主要な産生細胞であることが公知である。IL−6は、mDCおよびpDCの両方によって産生され、IL−10は、mDCによって主に産生され、IL−12p40は、mDCによって主に産生された。IL−6およびIFN−αの産生パターンは、SC12が化合物AよりpDCの活性化において僅かに強力であったことを示すことができた。ヒト初代細胞によるアッセイにおいて、pDCのTLR7リガンドの存在および活性化は、B細胞増殖の刺激のために必要であり、pDCからのIFN−αの産生は、B細胞増殖の活性化および抗体産生の開始のために必要であることが公知であった(Douagiら、Journal of immunology、182巻、2009年、1991〜2001頁、
図2および3)。
【0353】
PBMCモデルにおける化合物AおよびSC12の試験による従前のモデルにおいて、化合物Aは、IL−6分泌においてSC12より僅かに強力である傾向を示したが、これは従前の研究において有意でなかった。2つのモデルにおける化合物の作用強度における差異は、親油性の差異が各アッセイにおける細胞プールへの分配における差異を潜在的に示すため、化合物の化学的または物理学的性質における差異によって潜在的に説明することができる。全血アッセイは、大量の赤血球および血小板の存在によって概ね50%の細胞容積を含有する。対照的に、PBMCモデルは、より一層低い細胞容積(<5%)を含有する。これに関して、全血アッセイ中に存在する多量の細胞は、高度に親油性の化合物のための緩衝液として作用し得る。
【0354】
FACS分析
B細胞分析(
図12):
B細胞上の活性化マーカーCD40の発現の分析を、二重陽性HLA−DR(MHCクラスII)(P4ゲート)およびCD20細胞(B細胞マーカー)(P8ゲート)で行った。
図12は、3人のドナー(D1〜D3)からの全血で行った、示したような試験試薬による24時間のインキュベーションの後の、二重陽性HLA−DR+/CD20+B細胞に対するCD40発現についてのMFI値を含めた、試験化合物による24時間の処理の後の3人のドナーからの結果を示す。
【0355】
活性化マーカーCD40は、最も高い濃度(10uM)での対照化合物イミキモドによる処理の後で、未処理またはDMSO処理細胞と比較して、3人のドナー全てにおいて発現の増加を示す。試験化合物である化合物AおよびSC12の両方は、ドナー1およびドナー2において、全ての試験した濃度でCD40発現を誘発した。しかし、ドナー3において、未処理細胞と比較して、最も高い濃度の2つの試験化合物のみがCD40発現を誘発した。3人のドナー全てにおいて、化合物Aは、10uMで試験したときに、3人のドナー全てにおいてSC12より僅かに高いCD40発現を刺激する弱い傾向を示した。しかし、この傾向は、少数のドナーのために、統計的に有意であると確認することができない。
【0356】
DC分析(
図13〜15):
同時刺激活性化マーカーCD80およびCD86ならびにケモカイン受容体CCR7の発現パターンを、2つの異なるサブセットのDCで調査した。ドナー1からの未処理細胞についてのDC分析のための試料は失われたが、未処理の(DMSO)対照細胞であった平行試料は、同様の対照細胞としての役割を果たした。
【0357】
1.骨髄樹状細胞(mDC):
骨髄DCの分析は、HLA−DR+/CD11c+/CD123−細胞に基づいており、したがって、全ての分析した細胞は、HLA−DR+(P3)ゲートおよびCD11c+/CD123−(Q4)ゲートに含まれた(
図13〜15におけるゲートを参照されたい)。
【0358】
ドナー1および2においてイミキモドはCD80の弱い発現を誘発したことが見出されたが、これはCD80発現が高かったドナー3と対照的であった。試験化合物である化合物AおよびSC12の両方は、3人のドナー全てにおいて、注目すべきCD80発現を誘発した。3人のうち2人のドナー(D1およびD3)において、最も高い濃度(0.5uM)のSC12は、CD80発現に対して強力な刺激を示したが、これは化合物Aについて見られたレベルより高かった。ドナー2において、化合物Aは、最も高い濃度においてのみSC12より僅かに強力にCD80発現を刺激した。
【0359】
mDCにおけるCD86発現の分析は、未処理細胞が、3人のドナー全てにおいて高レベルのCD86を既に発現していたことを示したが、これは珍しい観察ではなかった。しかし、化合物Aは、3人のドナー全てにおいて、CD86の発現をさらに刺激する。SC12は、ドナー2および3において、弱いCD86発現を誘発するが、ドナー1において誘発しない。0.1uMでの最も低い濃度の両方の試験化合物は、CD86発現を最も強力に誘発することを示した。これは、0.5uMでの最も高い試験した用量が最も強力な濃度であったCD80発現と対照的であった。
【0360】
リンパ節ホーミング受容体であるケモカイン受容体CCR7をまた、mDCで調査した。CCR7発現は、CD80およびCD86より高いドナー間の差異を示した。全てのドナーについて、化合物Aは、最も高いCCR7発現を誘発し、ドナー1および3について、イミキモドはまた、高いCCR7発現を示したが、これはドナー2において見られなかった。SC12は、全てのドナーについてCCR7発現のより強力でない刺激物質であった。
【0361】
2.形質細胞様樹状細胞(pDC)
pDCの分析は、HLA−DR+/CD11c−/CD123+細胞に基づき、したがって、全ての分析した細胞は、HLA−DR+(P3)ゲートおよびCD11c−/CD123+(Q1)ゲートに含まれた。(
図13〜15)。
【0362】
pDCにおいて、化合物AおよびSC12の両方は、3人のドナー全てにおいてCD80発現パターンにおける比較できる作用を示す。しかし、SC12は、3人のドナー全てにおいて、化合物Aより僅かに高いCD80発現を誘発する(ドナー3におけるより低い濃度を除く)。
【0363】
pDCにおけるCD86の発現は、SC12が、3人のドナー全てにおいて、化合物Aよりも高いCD86発現を誘発する傾向を有することを示す。しかし、ドナー1および3において、0.1uMでの最も低い用量が最も高いCD86発現を誘発し、一方、ドナー2において、0.5uMは最も強力な濃度であったため、最も強力な濃度は変化する。イミキモドは、ドナー3においてSC12および化合物Aと同様の高いCD86発現を誘発する。
【0364】
pDCにおけるCCR7発現パターンは、mDCにおいて本発明者らが見出したものと同様であった。化合物Aは、3人のドナー全てにおいて、SC12より非常に高いCCR7発現を誘発した。
図16において、イミキモドは、3人のドナー(D1〜D3)からの全血に対して行った、示されるような試験試薬による24時間のインキュベーションの後に、HLA−DR+/CD11c−/CD123+pDCにおいてCD80、CD86およびCCR7発現についてMFI値を示す。
【0365】
FACS分析の結論:
B細胞研究についての全体的な結論は、3人のドナー全てにおいて、最も高い濃度(10uM)での化合物AがSC12より僅かに高いレベルの成熟マーカーCD40を刺激するということであった。
【0366】
DC活性化について、SC12は、活性化マーカーCD80の刺激に関して、化合物Aより非常に強力であったが、(少数の例外が見られたが)mDCおよびpDCの両方についても同様であった。
【0367】
活性化マーカーCD86について、化合物Aは、mDCにおいてSC12より僅かに強力であり、一方、SC12は、pDCにおいて化合物Aより僅かに強力であったため、結果は少し異なった。しかし、CD86の発現についての最も強力な濃度は、ドナーによって異なる。
【0368】
ケモカイン受容体CCR7の発現は、化合物Aが、大部分のドナーにおいて両方のDCサブセットにおいてSC12より強力であったことを示した。CD86発現に関して、CCR7誘発についての最も強力な化合物濃度は、ドナーによって異なった。
【0369】
イミキモドは一般に、全ての調査したマーカーの発現について、B細胞、mDCならびにpDCにおいて、ドナー3においてのみ強力であることを示した。
【0370】
結果
化合物AおよびSC12は、サイトカインIL−6、IL−10、IL−12p40およびIFN−αの誘発、ならびにB細胞、pDCおよびmDCの両方における成熟マーカーの発現の増加において強力であった。これらのパラメーターについて測定した化合物AおよびSC12の生物学的作用の間の差異は、有意でなかった。しかし、より多数のドナーが使用された場合、統計的に有意な作用を示すことが可能であり得る。いくつかの作用は、ボーダーラインの有意性を示し、いくつかの成熟マーカーは、化合物の1つによってより強力に誘発される傾向を示した。
【0371】
傾向は、以下を示した。
化合物Aは、下記のエンドポイントについてSC12より強力である傾向を示した。
1.mDCにおける成熟マーカーCD86の誘発
2.mDCおよびpDCの両方についての移動受容体CCR7の誘発
3.B細胞活性化マーカーCD40の誘発
SC12は、下記のエンドポイントについて化合物Aより強力である傾向を示した。
1.mDCおよびpDCの両方における成熟マーカーCD80の誘発
2.pDCにおける移動マーカーCD86の誘発
3.サイトカインIL−6およびIFN−αの誘発
IL−10またはIL−12p40誘発のレベルにおいて、傾向を見ることができなかった。
【0372】
これらの結果に基づいて、化合物AおよびSC12は、新鮮なヒト血液と共にインキュベートするときに、有意に異なって挙動すると結論付けることはできない。
【0373】
CD80およびCD86は、SC12によってpDCにおいてより強力に誘発され、pDCサイトカインIFN−αは、SC12によってより強力に誘発されたため、SC12は、pDC活性化において化合物Aより僅かに強力であった。さらに、化合物Aは、B細胞活性化において僅かにより強力であり得る(10uMの濃度で試験したときに特に見られる)。
【0374】
(実施例7)
正所性ラット膀胱におけるイミキモドおよびSC12による前臨床プラセボ対照有効性研究
この研究のゴールは、F344ラットの正所性膀胱がんモデルにおけるイミキモド(R−487(1))およびSC12の液体製剤の有効性を評価することであった。4つの群(イミキモド、SC12、ビヒクルおよびプラセボ群)を比較した。処理後、動物の健康な状態をモニターし、ラット膀胱および腫瘍に対する反応を組織病理学的に評価した。
【0375】
動物、材料および方法
腫瘍細胞
AY−27ラット膀胱がん細胞株は、FANFT(N−[4−(5−ニトロ−2−フリル)−2−チアゾリル]ホルムアミド)を与えられたFischer F344ラットにおける原発性膀胱腫瘍から確立した。細胞株は、University of AlbertaおよびCross Cancer Institute、Edmonton、Alberta、Canadaから親切にも提供された。細胞を、加湿した95%空気/5%二酸化炭素雰囲気中で、10%ウシ胎仔血清(Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri)、100U/mLのペニシリンGおよび100μg/mLのストレプトマイシン(Invitrogen、Carlsbad、California)を補充したRPMI−1640(L−グルタミンを有する培地(Invitrogen、Carlsbad、California))において単層として培養した。培地を1週間に2回交換し、コンフルエントとなったとき、細胞を標準的トリプシン処理手順で継代した。実験のために使用した継代数は、28および29であった。
【0376】
動物
全部で56匹の雌性Fischer F344ラットはCharles River(L’Arbresle Cedex、France)から購入し、実験の開始前に少なくとも1週間順応させた。170g±10gの体重のラットを、12時間の明/暗サイクルを伴う温度制御した環境で、gold flakes敷料(SPPS、Frasne、France)を有し、環境に恵まれた個々のケージ(Techniplast、Milan、Italy)に収容し、標準的な固形飼料および水に自由にアクセスさせた。毎日、ラットを秤量し、健康な状態についてモニターした。動物手順は動物実験委員会(IACUC)、Committee for Animal Experiments(Radboud University Nijmegen Medical Centre、The Netherlands)によって承認される必要があり、オランダおよびヨーロッパの規制に従ったプロトコルに従って行った。
【0377】
試料サイズの計算
50%の予想される治療作用、0.05のα、80%の累乗および80%腫瘍発生を使用して、群のサイズを計算した。これによって、14の最小の群のサイズを得た。
【0378】
腫瘍細胞埋込み
腫瘍細胞埋込みを、Xiaoらのプロトコルによって0日目に行った(2)。F344ラットは、アイソジェニック腫瘍細胞を受け入れ、80%超の膀胱腫瘍の確立がもたらされた(3)。エンロフロキサシン(Bayer、Leverkusen、Germany)(5〜10mg/kg)を、各カテーテル処置前に抗菌予防のために皮下に注射した。吸入麻酔:イソフルラン2〜5%(導入)、続いてイソフルラン2%、一酸化窒素0.5L/分および酸素1L/分下で実験を行った。ラット膀胱を、16ゲージ(1.4mm)のプラスチック静脈内カニューレ(BD Biosystems、Erembodegem−Aalst、Belgium)によって尿道を介してカテーテル処置し、排出させた。膀胱を0.1Mの塩酸塩(HCl)(0.4mL)の15秒の滴下注入によって事前調整し、0.1Mの水酸化カリウム(KOH)(0.4mL)を15秒間加えることによって中和した。膀胱から排出させ、0.01MのPBS(0.8mL)で3回フラッシュした。新たに収集したAY−27細胞(28継代および29継代)を培地に再懸濁させた。膀胱調整の直後、および細胞収集後1時間以内に、細胞(0.5mlの培地中1.5
*10
6個)をラット膀胱に滴下注入し、1時間留置した。ラットを15分毎に90°回転させた。1時間後、カテーテルを除去し、ラットは自発的に排泄することができた。
【0379】
表24: 処理群
【0380】
【表24】
【0381】
処理
全てのラットは、膀胱内滴下注入を2日目および5日目に受けた。最初に上記のように、ラットを1時間の吸入によって麻酔した。続いてラットを、1.4mmカニューレ(BD Biosystems)を使用して尿道を介してカテーテル処置し、膀胱から排出させ、pHインジケーターストリップ(Merck、Darmstadt Germany)を使用してpHを測定した。膀胱内滴下注入を、1mLのLuer−Lokシリンジ(BD Biosystems)を使用して投与した。群1(n=14)を、0.5mlのイミキモド(0.1%)で処理した。群2を、0.5mlのSC12(0.38%)で処理した。群3は、ビヒクルによる滴下注入(Phosal50)を受け、群4は、対照としてNaClによる滴下注入を受けた。試験剤を、ビヒクルとしてPhosal50(Lipoid AG)に溶解した。滴下注入は膀胱内に1時間留まり、ラットを15分毎に90°回転させた。1時間後、カテーテルを除去した。自発的に排出された尿のpHを、pHインジケーターストリップ(Merck)を使用して測定した。
【0382】
病理学的評価
12日目に、二酸化炭素吸入を使用してラットを殺処分した。屍検で内臓を検査し、嚢胞切除を行った。膀胱を秤量し、4%緩衝を使用して固定し、薄片にし、パラフィンに包埋した。5μmの切片を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)を使用して染色した。泌尿器病理学者が膀胱切片を評価し、TNM分類を使用してT段階をスコア化した(Union International Contre le Cancer、UICC、2002年)。さらに、膀胱毎の腫瘍の総数および腫瘍の浸潤深度を測定した。膀胱壁および/または周辺組織における炎症の量を、0(炎症なし)、1(軽度)、2(中程度)および3(重度の炎症)でスコア化した。
【0383】
結果
実験の間、ラットの健康な状態が損なわれた徴候はなく、人道的なエンドポイントに達したラットはなかった。予想される体重の僅かな減少が麻酔後の一日目にのみ見られたが、滴下注入後の日においては、全てのラットは体重を取り戻した。カテーテル処置の日に軽度の血尿が時折報告された。後日、尿は正常となった。処理の前および後の尿のpHは差異を示さなかった。全ての尿のpHは、6.5〜7.0で変化した。屍検において、膀胱以外の内臓への異常は見られなかった。肉眼での評価において、腫瘍陽性膀胱は、膀胱外の成長を伴わずに腫瘍塊を有するようである。1つのラット膀胱のみ(群3、ビヒクル処理)が、右の尿道口の近くに右尿管に向かって伸びる塊を示した。
【0384】
膀胱重量
膀胱重量は、腫瘍の存在と相関した(p<0.0001、独立試料T検定)。表において、平均および範囲の概要を示す。群2(SC12)と群3(ビヒクル)との間に平均膀胱重量の差異があった(p=0.005、独立試料T検定)。他の群の間に平均膀胱重量における差異は見られなかった。
【0385】
表25:処理群および対照群毎のラット膀胱の重量、重量(グラム)
【0386】
【表25】
【0387】
炎症
殆ど全部のラットにおいて、ある程度の炎症が存在した。群の間で、統計的有意差は観察されなかった(p=0.106、ピアソンのカイ二乗検定)。軽度および中程度の炎症は、全ての56ケースの87.5%を占めた。
【0388】
腫瘍および腫瘍反応
腫瘍陽性膀胱を有するラットの数は、イミキモド処理群(群1)について14匹中9匹、SC12処理群(群2)について14匹中8匹、ビヒクル対照群(群3)について14匹中11匹、およびまたNaCl対照群(群4)について14匹中11匹であった。ビヒクル群における1つのpTa腫瘍を除いて、全ての腫瘍はpT2段階を示す。pT2腫瘍は、排尿筋に及ぶ。pTa腫瘍を有するラットにおいて、がん細胞の小さな部分が、正常な尿路上皮内層の上に見られ、浸潤は見られなかった。腫瘍発生に関して、個々の群の間に統計的有意差はなかった。群2と群4との間の腫瘍発生の差異は、0.210の有意でないp値を示す(フィッシャー直接検定)。所与の処理(例えば、イミキモド、SC12、ビヒクルまたはNaCl)は、ロジスティック回帰分析をデータ上で行ったときに、結果を予測するものでなかった(腫瘍陽性対腫瘍陰性)。
【0389】
【表26】
【0390】
浸潤深度
腫瘍の浸潤深度を、H&E染色した膀胱切片の組織病理学的評価において泌尿器病理学者が測定した。腫瘍細胞が見られた最も深いポイントを、浸潤深度とした。腫瘍陽性膀胱の平均浸潤深度は、個々の処理群(独立試料T検定、p=0.486〜0.912)の間で、またはSC12処理(群1、2)および対照処理(群3、4)動物(独立試料T検定、p=0.705)の間で有意差を示さなかった。
【0391】
表27: 平均腫瘍浸潤深度
【0392】
【表27】
【0393】
腫瘍数
膀胱毎の腫瘍の絶対数は、泌尿器病理学者がカウントした。ビヒクル対照群における腫瘍の数は、他の群より多かった。単変量解析において、ビヒクル群(群3)における腫瘍の数は、群1および群4(p=0.02)と、ならびに群2(p=0.006)と有意に異なった。
【0394】
表28:ラット膀胱毎の腫瘍の平均数
【0395】
【表28】
【0396】
結論
イミキモドおよびSC12は、抗腫瘍活性を引き起こし得る局所的免疫応答をもたらす。この実験の間に毒性の徴候は見られなかった。腫瘍割合に対する処理の作用は統計的に有意ではなかったが、イミキモドおよびSC12処理された動物に対して好ましい傾向が見られる。これらのデータに基づいて、今後の実験は、有効性を改善するために処理頻度の増加を有し得る。
【0397】
実施例7についての参照文献
(1)Hayashi T、Crain B、Corr M、Chan M、Cottam HB、Maj Rら、Intravesical Toll−like receptor 7 agonist IMIQUIMOD: Optimization of its formulation in an orthotopic mouse model of bladder cancer 1、International Journal of Urology、2010年5月;17巻(5号):483〜90頁。
(2)Xiao Z、McCallum TJ、Brown KM、Miller GG、Halls SB、Parney Iら、Characterization of a novel transplantable orthotopic rat bladder transitional cell tumor model 3、British Journal of Cancer、1999年10月;81巻(4号):638〜46頁。
(3)Hendricksen K、Molkenboer−Kuenen J、Oosterwijk E、De Kaa CAHV、Witjes JA.、Evaluation of an orthotopic rat bladder urothelial cell carcinoma model by cystoscopy、Bju International、2008年4月;101巻(7号):889〜93頁。
【0398】
(実施例8)
SC12−細菌変異アッセイの毒性分析
Salmonella typhimuriumおよびEscherichia coliの試験株における遺伝子変異を誘発する能力について、栄養要求性菌株から原栄養性への復帰変異によって測定するように、SC12を調査した。5つの試験株であるTA1535、TA1537、TA98、TA100およびWP2 uvrAを使用した。フェノバルビトンおよびβナフトフラボンで事前処理したラットからの肝臓S9画分を使用して、代謝活性化の不存在下および存在下の両方で実験を行った。SC12をジメチルスルホキシド(DMSO)中の溶液として使用した。SC12を、5000マイクログラム/プレートの最高濃度、および概ねハーフログ間隔を置いた4つのより低い濃度(1580、500、158および50.0マイクログラム/プレート)で毒性試験においてアッセイした。インキュベーション期間の終わりに、SC12の沈殿が2つの最も高い濃度において観察された。S9代謝の存在下または不存在下で、任意の用量レベルの任意の試験株において毒性は観察されなかった。
【0399】
平板混入法を使用して、5000マイクログラム/プレートの最大用量レベル、および2倍希釈によって間隔を置いた4つのより低い用量レベル(2500、1250、625、および313マイクログラム/プレート)でSC12をアッセイした。S9代謝の存在下または不存在下で、任意の用量レベルの任意の試験株において毒性は観察されなかった。インキュベーション期間の終わりに、2つの最も高い濃度において、SC12の沈殿が観察された。
【0400】
試験した任意の濃度で復帰変異体の数の増加は観察されなかったため、プレインキュベーションステップを、主要アッセイIIの全ての処理のために含めた。SC12を、主要アッセイIにおいて用いた同じ用量範囲でアッセイした。S9代謝の存在下または不存在下で、任意の用量レベルの任意の試験株において毒性は観察されなかった。
【0401】
スコア化を妨げなかったSC12の用量が関連する沈殿は、インキュベーション期間の終わりに4つの最も高い濃度において観察された。
【0402】
SC12は、平板混入またはプレインキュベーションアッセイにおいて、任意の用量レベルで、S9代謝の存在下または不存在下で、任意の試験株によって復帰変異体コロニーの数の2倍の増加を誘発しなかった。
【0403】
SC12は、報告した実験条件下で、S9代謝の存在下または不存在下で、Salmonella typhimuriumまたはEscherichia coliにおいて復帰突然変異を誘発しないことが結論付けられた。
【0404】
(実施例9)
ラットにおけるSC12−単回用量静脈内研究の毒性分析
SC12の急性毒性を、Sprague−Dawleyラットへの単一の静脈内投与、それに続く14日の観察期間の後に調査した。引き続いて1匹の雄および1匹の雌ラットの群に76、100、85および90mg/kgを投与し、7日の期間観察することによって予備相を行った。同様に構成されたさらなる群は、ビヒクル単独を投与され、対照としての役目を果たした。76mg/kgで死亡は起こらなかった。臨床的症状は、投与の日に観察された立毛および活性の低下に限定された。
【0405】
第2の群は、100mg/kgで投与された。両方の動物は投与によって痙攣の後に死亡した。次いで、第3の群は、85mg/kgで投与された。投与の日に、立毛が観察された。第4の群は、最終的に90mg/kgで投与された。死亡は起こらなかった。研究の2日目から4日目まで、立毛は観察されなかった。ビヒクル単独で処理された雄および雌動物において死亡は起こらず、臨床的症状は指摘されなかった。
【0406】
主要相において、5匹の雄動物および5匹の雌動物を90mg/kgで投与し、14日の期間観察した。同様に構成された第2の群は、ビヒクル単独を受け、対照としての役目を果たした。90mg/kgで処理された3匹の雄は、投与の直後に死亡し、一方、2匹の雌は投与後2時間で死亡した。さらに、90mg/kgで投与された1匹の雄および1匹の雌は、研究の2日目に死亡していることが見つかった。単収縮、運動失調、立毛、活性の低下および猫背の姿勢が、動物において死亡前に観察される主要な徴候であった。運動失調、立毛、活性の低下、猫背の姿勢および半分閉じた目が、投与の日に生き残っている動物において指摘された。立毛は、研究の3日目まで観察された。同様に構成された第2の群は、80mg/kgで投与された。観察期間の間に、死亡は起こらず、臨床的症状は記録されなかった。ビヒクル単独を受けた動物において、死亡は起こらず、臨床的症状は観察されなかった。
【0407】
90mg/kgで処理された生き残っている動物、および80mg/kgで投与された動物は、研究の2日目に僅かから中程度の体重の減少を示した。15日目までに回復が起こり、体重の変化は、研究の終わりに動物のこの種および年齢について予想される範囲内であった。研究の間にビヒクル単独を受けた動物において、体重の関連する変化は観察されなかった。生き残っている動物を、観察期間の終わりに二酸化炭素麻酔によって死亡させた。初期に死亡した動物を含めた全ての動物は、屍検に供された。90mg/kgでの処理された動物(初期に死亡した動物を含めた)、80mg/kgでの処理された動物、および対照動物の全てにおいて行った屍検において、異常は観察されなかった。これらの結果は、試験品目SC12が、90mg/kgでの単回用量の静脈内投与に続いてラットにおいて死亡または毒性の有意な徴候を誘発し、一方、死亡および毒性の徴候は80mg/kgでは観察されなかったことを示す。したがって、この研究における最大耐用量は、80mg/kgであると考えられた。
【0408】
(実施例10)
結合アッセイ
イミキモドおよびSC12を、各々
図17、および18に示すように、酵素学的および放射線学的結合アッセイにおいて分析した。SC12およびイミキモドを、異なるヒト組換え受容体タイプおよびサブタイプ、またはげっ歯類組織ホモジネートからの膜画分を使用して、放射性リガンド結合アッセイにおいて73の主要な分子標的の中で評価した。30マイクロモルの一定の濃度でSC12を試験した。
【0409】
Aldara(イミキモド)による処理の後に、イミキモドは、患者において最も通常の有害事象である疼痛関連症候群と関連する受容体(例えば、アデノシンおよびナトリウムチャネル)と結合することが示された。SC12は、このタイプの受容体に結合しなかった。
【0410】
(実施例11)
マウスにおけるSC12の静脈内薬物動態の調査
空腹時CD−1雄マウスにおいてSC12の薬物動態をアッセイした。
【0411】
材料および方法
IV急速投与を、5ml中1mg/kgの用量で尾静脈に投与した。化合物重量は、2.08/10.04mlであった。24匹のマウスを研究した。麻酔下の瀉血によって5分、15分、30分、60分、240分、480分、および24時間においてサンプリングを得た。SC12を、5ml/kgの用量で、水中の3%DMSO、20%β−シクロ−デキストリンの製剤で投与した。実験の終わりにエチルエーテルを使用して動物を殺処分した。
【0412】
試料の調製:Siroccoフィルタープレート中で、100マイクロリットルの血漿を、5マイクロリットルのIS(IV298、10マイクログラム/ml)および10マイクロリットルの5%H
3PO
4でスパイクした300マイクロリットルのACN/MeOHに加えた。プレートを80rpmで10分間振盪し、次いで真空下で5分間濾過した。
【0413】
分析方法:LC/MS/MS:Premiere XE、溶離液:水(A)、MeOH(B)および0.1%HCOOH、勾配15%B〜100%B、0.1〜0.5、次いで、均一濃度100%B、1.5分まで、流量0.8ml/分;カラムAcquity UPLC BEH C18、1.7マイクロメートル、2.1×50mm、50℃のカラム温度で5マイクロリットルの注入量、ESI陽性、MRM、抽出器5V;キャピラリー3.5kV;ソース温度115℃;溶解温度450℃。SC12:MH+921.5>385.05/439.29、CV35CE33、LLOQ:5ng/ml。
【0414】
データ分析:ノンコンパートメント分析、WinNonlin5.1;線形台形、均一な重量。
【0415】
結果
有害な行動上の作用は、処理において指摘されなかった。
【0416】
SC12は、高いクリアランスに反映される、短いMRTを伴う541ng/mlの血漿中のCmaxを示す(表29)。恐らく減衰の最初の部分における非常に急速なクリアランスによって、最初の時点(5分)においていくらかの動物間のばらつきが観察され、一方、曲線の第2の部分において、血漿中濃度はゆっくりと減少し、2時間後にLLOQ(定量化の下限)未満となった。
【0417】
生データおよびノンコンパートメント分析結果を、表30に報告する。
【0418】
表29:薬物動態パラメーター
【0419】
【表29】
【0420】
表30:生データおよびノンコンパートメント分析結果
【0421】
【表30】
【0422】
(実施例12)
ヒトCYP450のインビトロでの阻害
SC12とチトクロムP450酵素との相互作用を、蛍光ハイスループットP450アッセイ(Gentest)使用して試験した。化合物のIC50は、アイソエンザイム(CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2C8、CYP2B6、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4およびCYP3A5)で計算した。
【0423】
材料および方法
P450アイソフォームの阻害を、CYP代謝によって蛍光性となった特異的基質を使用して特異的アッセイにおいて測定した。ACN(アセトニトリル)(CYP2E1、CYP2C8、CYP2B6、CYP3A5)またはDMSO(全ての残りのアイソフォーム)に溶解した化合物を、インキュベーション/NADPH再生緩衝液を含有する96ウェルプレートにおいて、濃度反応曲線(8つの濃度)において2連で試験した(n=2)。特異的アイソエンザイムおよび基質を加え、37℃でインキュベートした。アッセイによって反応は異なる時に終了し、プレートを適当な発光/励起波長でFluoroskan Ascentで読み取った。各アイソエンザイムのための公知の阻害剤についての2連で行った濃度反応曲線を、全てのアッセイにおいて陽性対照として試験した。
【0424】
データ分析
各化合物および標準物質について、IC50(50%阻害における濃度)は、Grafit v.5.0.1を使用することによって決定した。
【0425】
結果
結果を、表31(化合物)および表32(標準物質)に示す。
【0426】
SC12は、CYP2E1、CYP3A5およびCYP3A4アイソフォームに対して中程度の阻害、ならびにCYP2C9に対して弱い阻害を示した一方、他のアイソフォーム活性を阻害しないようであった。SC12は、特にACN中で低溶解性を示したため、結果を過小評価することができた。行われた実験の全てにおいて標準参照阻害剤は、予想される作用強度を示した。
【0427】
表31: P450の結果
【0428】
【表31】
【0429】
略語
BFC: 7−ベンジルオキシ−4−(トリフルオロメチル)−クマリン
CEC: 3−シアノ−7−エトキシクマリン
AMMC: 3−[2(N,N−ジエチル−N−メチルアミノ)エチル]−7−メトキシ−4−メチルクマリン
DBF: ジベンジルフルオレセイン
DMSO: ジメチルスルホキシド
EFC: 7−エトキシ−4−トリフルオロメチルクマリン
MFC: 7−メトキシ−4−トリフルオロメチルクマリン。
【0430】
表32: 標準的阻害剤に対するP450の結果
【0431】
【表32】
【0432】
(実施例13)
哺乳動物血漿における化合物Aの代謝安定性およびプロファイリングの調査、ならびにヒト血漿における化合物AおよびSC12の安定性の比較
化合物Aの安定性を、5時間までラット、ウサギ、ミニブタおよびヒト血漿において試験し、代謝プロファイルを、ウサギおよびヒト血漿において査定した。化合物Aは、ウサギおよびヒトにおいてエステラーゼ/アミダーゼによって高度に代謝され、ならびにミニブタおよびラット種においてより少ない程度で代謝された。ウサギについて30分および120分において、ならびにヒトについて60分および300分において(すなわち、2つの種において、親化合物の概ね同じ残留百分率で機能する)代謝を研究した。3つの代謝物がウサギにおいて見出され、ヒトにおいてそれらの2つが見出された。
【0433】
ウサギにおいて、主要な代謝物は、モノエステル(1つのオレイン酸の喪失、M2)および酸代謝物(アミド加水分解、M3)であったが、一方、ほんの微量のジ加水分解された代謝物(両方のオレイン酸の喪失、M1)が観察された。ヒト血漿において、ウサギにおいて従前検出された最初の2つの主要な代謝物のみが、選択した時点で同定され、酸生成物(M3)は、120分において主流の代謝物であった。
【0434】
結論として、ヒトおよびウサギ種において、2つの主要な代謝物のみの形成によって、クリアランスの比較できるプロファイル、および代謝プロファイルが見出され、律速段階はモノエステル形成(M2)をもたらす加水分解であり、これは酸誘導体(M3)に急速に変換される。
【0435】
SC12は120分まで代謝されず、化合物の70%超が300分においてまだ存在した(300分において未変化の化合物A:55%)ため、SC12と比較して、ヒト血漿において化合物Aの第2のバッチによって行った第2の実験は、SC12が化合物Aより少し安定的であることを示唆した。
【0436】
(実施例14)
皮膚がん細胞株に対するSC12の直接的アポトーシス促進性作用:
イミキモドとの比較
イミキモドは、その免疫調節性作用に加えて、腫瘍細胞においてアポトーシスを直接的に誘発することが報告されてきており、これはインビボでの異なる起源の腫瘍において確認されてきた。必要とされる濃度はAldara5%クリーム中の濃度のまだ概ね3ログ未満であるであるため、イミキモドのアポトーシス促進性活性は、インビボでのイミキモドの抗腫瘍作用の一因となり得る。
【0437】
実験方法および結果
細胞株:
皮膚扁平上皮細胞癌(SCC)細胞株(ヒト)SCL−I、SCL−II、SCC−12、SCC−13は、これらの成長挙動、およびデスリガンド(CD95L、TRAIL、TNF−α)に対するアポトーシス感受性に関して、ならびに他の処理に関して良好に特性決定された。SCC細胞は、標準条件(10%FBS)下で増殖する。
【0438】
SCC細胞に対するSC12の直接アポトーシス促進性および細胞毒性作用の決定:
総細胞数に対する作用の時間依存性および用量依存性を、細胞数に相当する、マイクロタイターウェル(E−plates、Roche)における電導度の連続モニタリングに基づくリアルタイム細胞分析によって調査した。異なる濃度のSC12ならびにイミキモド(Imq)を使用して4つの細胞株を処理し、細胞数を未処理対照細胞と比較した(各細胞株について2つの独立した実験、トリプル値、異なる濃度)。これらのアッセイについて、4つの細胞株を使用して、SCC細胞に対する作用についての代表的な概要が得られるはずである。このように、細胞を異なる濃度のSC12またはイミキモドで処理した。成長およびアポトーシス作用を、少なくとも7日間顕微鏡によってモニターした。
【0439】
図17は、SC12およびイミキモドによる細胞数の減少を示す。皮膚SCC細胞株を、細胞数に相当する、マイクロタイターウェル(E−plates、Roche)における電導度について連続的にモニターした。TMXは、チャートにおいてSC12を示す。
図18は、SC12およびイミキモドによって誘発された同様の形態学的変化を示す写真を提供する。3日目に、細胞脱離、形態学的変化および増殖の阻害を、SC12またはイミキモドで処理されたSCC細胞において観察することができる。処理時間3d、濃度:120マイクロモル。
【0440】
(実施例15)
アジュバントとしての化合物AおよびSC12
化合物AおよびSC12のアジュバントタンパク質抗原を使用してパイロット免疫化研究を行った。免疫化実験を、E.coliにおいて発現している2つの組換えタンパク質で行った。1つの抗原はマラリア寄生虫Plasmodium falciparumに由来し、他の抗原はMycobacterium ulcerans(潰瘍性皮膚疾患であるブルーリ潰瘍をもたらす)に由来した。
【0441】
5匹のマウスの群は、3週間の間隔で、10ナノモルの化合物AまたはSC12と混合した20マイクログラムの標的抗原による3回の皮下免疫化を受けた。
【0442】
第3の免疫化の後、20匹の免疫されたマウスの全ては、各々の標的抗原に対してIgG応答を発生した。化合物AおよびSC12の性能は同程度であった。局所的副作用(腫脹または潰瘍形成など)は観察されなかった。マウスにおける使用について承認された市販のアジュバントによる平行した免疫化は、より高い抗体価を生じたが、ここで局所的反応が観察された。
【0443】
図19は、M.ulcerans抗原に対するIgG力価の発生を示す(左:化合物A、右、SC12)。
【0444】
(実施例16)
膀胱内の慢性処理後のマウス血清におけるイミキモドおよびSC12の曝露の調査
材料および方法
6〜8週齢のC57BL/6雌マウスを、イミキモド(全部で208nmol中0.1w/v%)またはSC12(全部で206.5nmol中0.38w/v%)によって膀胱内で処理した。血清試料をいくつかの時点(0日目、2時間、1日目、24時間、および6日目、2時間)において採取した。
【0445】
試料の調製
イミキモド:Siroccoフィルタープレート(Waters)中で、50マイクロリットルのマウス血清を、5マイクロリットルのIS(イミキモド−D9、100マイクログラム/ml)でスパイクした195マイクロリットルのアセトニトリル/メタノール(1:1)に加えた。プレートを10分間振盪し、真空下で濾過した(5〜10mm Hg)。
【0446】
SC12:Siroccoフィルタープレート(Waters)中で、70マイクロリットルのマウス血清を、5マイクロリットルのIS(イミキモド−D9、100ng/ml)でスパイクした210マイクロリットルのアセトニトリル/メタノール(1:1)に加えた。プレートを10分間振盪し、真空下で濾過した(5〜10mm Hg)。試料を蒸発させ、70マイクロリットルのアセトニトリル/メタノール(1:1)に再懸濁させた。
【0447】
分析方法
イミキモド:LC/MS/MS:Premiere XE、溶離液:(ACN/H2O 95/5(A)+0.1%HCOOH、5/95(B))、流量0.60ml/分、98%A(0〜0.20分)から100%Bへの勾配(0.6分で)、次いで、1.1分まで100%Bとする、0.4分間再調整。
カラム:Acquity BEH C18、50×2.1mm、1.7マイクロメートル;注入量5マイクロリットル、カラム温度50℃。
SC12:LC/MS/MS:Premiere XE、溶離液:(MeOH/H2O 95/5(A)+0.1%HCOOH、5/95(B))、流量0.80ml/分、85%A(0〜0.10分)から100%Bへの勾配(0.4分で)、次いで、1.5分まで100%Bとする、0.7分間再調整。
カラム:Acquity BEH C8、50×2.1mm、1.7マイクロメートル、注入容量10マイクロリットル、カラム温度50℃。
SC12、Q1/Q3 921.5/385.05;CV35、CE33
921.5/439.29;CV35、CE33
イミキモド、Q1/Q3 241.1/113.98;CV30、CE45
241.1/140.9;CV30、CE40
IS:イミキモド−D9、Q1/Q3 250.1/113.98;CV30、CE45
ESI陽性、MRM、抽出器5V;キャピラリー3.5kV;ソース温度140℃;脱溶媒和温度450℃
LLOQ:SC12について0.5ng/ml、およびイミキモドについて2.5ng/ml
結果
この研究の目的は、イミキモドおよびSC12の膀胱内慢性投与後の、血清の曝露を評価することであった。SC12およびイミキモドの血清レベルを、各々表33および表34に報告する。両方の化合物について、特に、SC12について、低濃度が観察されたが、試料の主要な部分は、たとえSC12について得たLLOQが、イミキモドについて得たLLOQの5分の1であったとしても(0.5対2.5ng/ml)、LLOQ未満であった。イミキモドは投与の2時間後まで血清中に存在したが、蓄積は起こらず、24時間においてLLOQ未満をもたらし、処理の6日後の値は1日目と同程度である。
【0448】
表33:血清中のSC12レベル
結果は平均±S.D.として表す、n=2
【0449】
【表33】
【0450】
表34:血清中のイミキモドレベル
結果は平均±S.D.として表す、n=2
【0451】
【表34】
【0452】
略語の一覧
アセトニトリル ACN
衝突エネルギー CE
コーン電圧 CV
ジメチルスルホキシド DMSO
電子スプレーイオン化 ESI
内部標準 IS
液体クロマトグラフィー/質量分析法 LC−MS/MS
定量化の下限 LLOQ
メタノール MeOH
多重反応モニタリング MRM
超高性能液体クロマトグラフィー UPLC。
【0453】
(実施例17)
RAW264細胞における細胞内取込み
細胞アッセイにおいて、SC12は、高い細胞内濃度に急速に達する。5×10
6個のRAW264細胞は、10cmの組織培養皿に一晩接着した。培地を、10マイクロモルの化合物AおよびSC12を含有する10mlの新しい培地に交換した。細胞を、1時間、6時間、および18時間インキュベートした。上清(2ml)および細胞(ペレット)をトリプシン処理によって集め、LC−MSによるそれに続く分析のために20℃で冷凍した。表35は、この分析の結果を示す。
【0454】
表35、細胞内取込みアッセイの結果
【0455】
【表35】
【0456】
本明細書において参照されている各特許、特許出願、刊行物および文献の全体は、参照により組み込まれている。上記の特許、特許出願、刊行物および文献を引用することは、上記のいずれかが適切な従来技術であるという承認ではなく、これらの刊行物または文献の内容または日付に関する承認を構成しない。
【0457】
技術の基本的態様から逸脱することなく上記に対して修正を行ってもよい。技術を1つ以上の特定の実施形態を参照して十分に詳細に記載してきたが、本出願に特に開示されている実施形態に対して変更を行ってもよいことを当業者は認識するが、これらの修正および改善は、技術の範囲内および精神内である。
【0458】
本明細書に例示的に適切に記載されている技術は、本明細書において特に開示されていない任意の要素(複数可)の非存在下で行ってもよい。したがって、例えば、本明細書においてどの場合にも、「含む」、「本質的にからなる」および「からなる」という用語のいずれかは、他の2つの用語のいずれかと置き換えてもよい。用いられてきた用語および表現は、限定する用語としてではなく記載する用語として使用し、このような用語および表現を使用することは、示され、記載されている特徴またはその部分の任意の同等物を除外せず、様々な修正が特許請求した技術の範囲内で可能である。「a」または「an」という用語は、要素の1つまたは要素の複数が記載されていることが文脈的に明らかでない限り、それが修飾する要素の1つ以上を意味することができる(例えば、「1つの試薬」は、1つ以上の試薬を意味することができる)。「約」という用語は、本明細書において使用する場合、基礎を成すパラメーターの10%以内の値(すなわち、プラスまたはマイナス10%)を意味し、一連の値の最初の「約」という用語の使用は、値の各々を修飾する(すなわち、「約1、2および3」は、約1、約2および約3を意味する)。例えば、「約100グラム」の重量は、90グラム〜110グラムの重量を含むことができる。さらに、値の一覧が本明細書に記載されているとき(例えば、約50%、60%、70%、80%、85%または86%)、一覧は、全ての中間値およびその小数値(例えば、54%、85.4%)を含む。したがって、本技術は代表的実施形態および任意選択の特徴によって特に開示されているが、本明細書において開示されている概念の修正および変形を当業者は用いてもよく、このような修正および変形はこの技術の範囲内であると考えられることを理解すべきである。
【0459】
技術の特定の実施形態を、下記の特許請求の範囲(複数可)において記載する。