特許第6026419号(P6026419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6026419遺伝子型3aのC型肝炎ウイルスゲノム由来の核酸を含む核酸構築物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6026419
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】遺伝子型3aのC型肝炎ウイルスゲノム由来の核酸を含む核酸構築物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161107BHJP
   C12N 7/04 20060101ALI20161107BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20161107BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20161107BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20161107BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20161107BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALI20161107BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20161107BHJP
   A61K 39/29 20060101ALI20161107BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N7/04
   C12N7/00
   C12N5/10
   C07K16/10
   C12Q1/02
   C12Q1/70
   C12Q1/68 A
   A61K39/29
   A61P31/14
【請求項の数】20
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2013-531425(P2013-531425)
(86)(22)【出願日】2012年8月31日
(86)【国際出願番号】JP2012072179
(87)【国際公開番号】WO2013031956
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年5月7日
(31)【優先権主張番号】特願2011-189695(P2011-189695)
(32)【優先日】2011年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591222245
【氏名又は名称】国立感染症研究所長
(73)【特許権者】
【識別番号】511013049
【氏名又は名称】インセルム インスティチュート ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100170221
【弁理士】
【氏名又は名称】小瀬村 暁子
(72)【発明者】
【氏名】脇田 隆字
(72)【発明者】
【氏名】サイード モッサン
(72)【発明者】
【氏名】モーレル パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ゴンドー クレール
(72)【発明者】
【氏名】横川 寛
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/074249(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/028652(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/104198(WO,A1)
【文献】 J. Virol.,2010年,Vol. 84, No. 10,pp. 5277-5293
【文献】 Gastroenterology,2007年,Vol. 133,pp. 1614-1626
【文献】 Biochem. Biophys. Res. Commun.,2010年,Vol. 402,pp. 549-553
【文献】 Antimicrob. Agents. Chemother.,2012年10月,Vol.56, No.10,pp. 5365-5373,published ahead of print 6 August 2012,
【文献】 J. Virol.,2009年,Vol. 83, No. 22,pp. 11456-11466
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
C12N 7/00−7/08
C12N 5/10
C12Q 1/02
C12Q 1/68
C12Q 1/70
C07K 16/10
C07K 14/085
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子型3aのC型肝炎ウイルスゲノムの、配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列を含む5’非翻訳領域と、配列番号14のアミノ酸番号1033〜1663のNS3タンパク質のアミノ酸配列、アミノ酸番号1664〜1717のNS4Aタンパク質のアミノ酸配列、アミノ酸番号1718〜1978のNS4Bタンパク質のアミノ酸配列、アミノ酸番号1979〜2430のNS5Aタンパク質のアミノ酸配列、及びアミノ酸番号2431〜3021のNS5Bタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と、配列番号1の塩基番号9407〜9655の塩基配列を含む3’非翻訳領域とをこの順番で含む、核酸(ただし、該核酸がRNAの場合は、塩基配列中のチミン(t)をウラシル(u)に読み替える)。
【請求項2】
前記NS3タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列が配列番号1の塩基番号3437〜5329の塩基配列を含み、
前記NS4Aタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列が配列番号1の塩基番号5330〜5491の塩基配列を含み、
前記NS4Bタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列が配列番号1の塩基番号5492〜6274の塩基配列を含み、
前記NS5Aタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列が配列番号1の塩基番号6275〜7630の塩基配列を含み、
前記NS5Bタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列が配列番号1の塩基番号7631〜9406の塩基配列を含む、請求項1記載の核酸。
【請求項3】
前記5’非翻訳領域が、配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列中に、1〜20個の塩基の欠失、置換又は付加を含む、請求項1又は2記載の核酸。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載の核酸の塩基配列に塩基変異を有する核酸であり、該塩基変異が配列番号14に示されるアミノ酸配列を基準とした場合に以下の(a)〜(g)の少なくとも1つのアミノ酸置換を引き起こす塩基変異からなる、核酸。
(a) 第1286番目のスレオニンのイソロイシンへの置換
(b) 第2188番目のスレオニンのアラニンへの置換
(c) 第2198番目のアルギニンのヒスチジンへの置換
(d) 第2210番目のセリンのイソロイシンへの置換
(e) 第2496番目のスレオニンのイソロイシンへの置換
(f) 第2895番目のアルギニンのグリシンへの置換
(g) 第2895番目のアルギニンのリジンへの置換
【請求項5】
薬剤耐性遺伝子及び/又はレポーター遺伝子、並びにIRES配列をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸。
【請求項6】
C型肝炎ウイルスゲノムの、Coreタンパク質をコードする塩基配列、E1タンパク質をコードする塩基配列、E2タンパク質をコードする塩基配列、p7タンパク質をコードする塩基配列、及びNS2タンパク質をコードする塩基配列をさらに含む、請求項1〜のいずれか一項記載の核酸。
【請求項7】
Coreタンパク質をコードする塩基配列が、配列番号14のアミノ酸番号1〜191のCoreタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であり、
E1タンパク質をコードする塩基配列が、配列番号14のアミノ酸番号192〜383のE1タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であり、
E2タンパク質をコードする塩基配列が、配列番号14のアミノ酸番号384〜752のE2タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であり、
p7タンパク質をコードする塩基配列が、配列番号14のアミノ酸番号753〜815のp7タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であり、
NS2タンパク質をコードする塩基配列が、配列番号14のアミノ酸番号816〜1032のNS2タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列である、
請求項記載の核酸。
【請求項8】
配列番号1及び49〜51のいずれかに示される塩基配列を含む、請求項記載の核酸。
【請求項9】
配列番号17〜23及び54のいずれかに示される塩基配列を含む、請求項記載の核酸。
【請求項10】
請求項1〜及びのいずれか一項記載の核酸を含む、C型肝炎ウイルスのサブゲノムレプリコンRNA。
【請求項11】
請求項のいずれか一項記載の核酸を含む、C型肝炎ウイルスのフルゲノムレプリコンRNA。
【請求項12】
請求項のいずれか一項記載の核酸をウイルスゲノムとして含有する、C型肝炎ウイルス粒子。
【請求項13】
請求項1〜のいずれか一項記載の核酸が導入された、細胞。
【請求項14】
請求項12記載のC型肝炎ウイルス粒子を含有する、C型肝炎ウイルスワクチン。
【請求項15】
請求項12記載のC型肝炎ウイルス粒子を抗原として非ヒト動物に投与することを特徴とするC型肝炎ウイルス抗を製造する方法
【請求項16】
被験物質の存在下及び非存在下の双方で、請求項13記載の細胞、又は、請求項12記載のC型肝炎ウイルス粒子とC型肝炎ウイルス感受性細胞との混合物、を培養する培養ステップと、
前記培養ステップで培養物中に得られたサブゲノムレプリコンRNA、フルゲノムレプリコンRNA又はC型肝炎ウイルス粒子の量を定量する定量ステップと、
前記定量ステップの結果、被験物質の存在下で培養した培養物中で定量されたサブゲノムレプリコンRNA、フルゲノムレプリコンRNA又はC型肝炎ウイルス粒子の量が、それぞれ前記被験物質の非存在下で培養した培養物中で定量されたサブゲノムレプリコンRNA、フルゲノムレプリコンRNA又はC型肝炎ウイルス粒子の量より少ない場合に、前記被験物質は抗C型肝炎ウイルス活性を有すると評価する評価ステップと、
を含む、抗C型肝炎ウイルス物質をスクリーニングする方法。
【請求項17】
前記核酸が2以上のC型肝炎ウイルス株のゲノムに由来するキメラ核酸であり、
配列番号1のC型肝炎ウイルスゲノム以外のC型肝炎ウイルスゲノムのCoreタンパク質をコードする塩基配列、E1タンパク質をコードする塩基配列、E2タンパク質をコードする塩基配列及びp7タンパク質をコードする塩基配列と、
配列番号1の塩基番号2786〜3436の配列からなるNS2タンパク質をコードする塩基配列、配列番号1のC型肝炎ウイルスゲノム以外のC型肝炎ウイルスゲノムのNS2タンパク質をコードする塩基配列、又は、配列番号1の塩基番号2786〜3436の塩基配列からなるNS2タンパク質をコードする塩基配列の一部と配列番号1のC型肝炎ウイルスゲノム以外のC型肝炎ウイルスゲノムのNS2タンパク質をコードする塩基配列の一部とが連結されたキメラ型のNS2タンパク質をコードする塩基配列と、
配列番号1における、塩基番号3437〜5329の配列からなるNS3タンパク質をコードする塩基配列、塩基番号5330〜5491の配列からなるNS4Aタンパク質をコードする塩基配列、塩基番号5492〜6274の配列からなるNS4Bタンパク質をコードする塩基配列、塩基番号6275〜7630の配列からなるNS5Aタンパク質をコードする塩基配列及び塩基番号7631〜9406の配列からなるNS5Bタンパク質をコードする塩基配列とを、
5’側から3’側に向かって、この順で含む、請求項記載の核酸。
【請求項18】
請求項17記載の核酸の塩基配列に塩基変異を有する核酸であり、該塩基変異は、配列番号14に示されるアミノ酸配列を基準とした場合に以下の(a)〜(g)の少なくとも1つのアミノ酸置換を引き起こす塩基変異からなる、核酸。
(a) 第1286番目のスレオニンのイソロイシンへの置換
(b) 第2188番目のスレオニンのアラニンへの置換
(c) 第2198番目のアルギニンのヒスチジンへの置換
(d) 第2210番目のセリンのイソロイシンへの置換
(e) 第2496番目のスレオニンのイソロイシンへの置換
(f) 第2895番目のアルギニンのグリシンへの置換
(g) 第2895番目のアルギニンのリジンへの置換
【請求項19】
前記配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列を含む5’非翻訳領域に代えて、配列番号1のC型肝炎ウイルスゲノム以外のC型肝炎ウイルスゲノムの5’非翻訳領域を含む、請求項17又は18記載の核酸。
【請求項20】
請求項1719のいずれか一項記載の核酸を含む、C型肝炎ウイルスのキメラフルゲノムレプリコンRNA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子型3aのC型肝炎ウイルスゲノム由来の核酸、該核酸を含む核酸構築物及び抗C型肝炎ウイルス物質をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus;以下、HCV)の基礎研究及び抗HCV薬の開発研究では、HCVを効率よく増幅できる実験系が必要不可欠である。具体的には、培養細胞においてHCVを増幅させる系や培養細胞においてHCVの増殖を評価する系が必要であり、これらの系が構築できれば上記の研究は飛躍的に進歩すると考えられる。
【0003】
HCVは、フラビウイルス科に属する一本鎖の(+)鎖センスRNAをゲノムとするウイルスで、C型肝炎の原因になることが知られている。HCVは、遺伝子型又は血清型により多数の型に分類されており、HCV株の塩基配列を用いたSimmondsらによる系統解析法によると、HCVの遺伝子型は遺伝子型1〜6に分類され、さらにそれらはサブタイプに分類されている(非特許文献1)。現在では、HCVの複数の遺伝子型について、ゲノム全長の塩基配列が決定されている(非特許文献2〜5)。
【0004】
HCVの感染は全世界に広がっており、日本、米国及び欧州においては、遺伝子型1のHCV感染患者の割合が多い。一方、インド、ネパール、パキスタン及びオーストラリアでは遺伝子型3のHCV感染患者の割合が多いのが特徴である(非特許文献6及び7)。
【0005】
近年までは、HCVを培養細胞に感染させたり、HCVゲノムを培養細胞中で複製させたりすることはできなかったため、HCVの複製機構や感染機構についての研究は、チンパンジーを実験動物として用いたin vivoの実験をする必要があった。しかし、遺伝子型1bのHCVであるCon1株、HCV−N株及びHCV−O株、並びに遺伝子型1aのHCVであるH77c株からサブゲノムレプリコンRNAが作製されたことにより、HCVの複製機構の研究については、培養細胞を用いたin vitroの実験をすることが可能となった(特許文献1及び非特許文献8〜11)。ここで、HCVのサブゲノムレプリコンRNAとは、HCVゲノムの一部を含むRNAで、感染性HCV粒子の産生能はないが、培養細胞に導入した場合にHCVゲノム由来のRNAを自律複製できるRNAのことである。
【0006】
また、遺伝子型2aのHCVであるJFH−1株からは、サブゲノムレプリコンRNAの作製のみならず、in vitroで感染性HCV粒子を産生するフルゲノムレプリコンRNAが作製され、HCVの感染機構の研究についても、培養細胞を用いたin vitroの実験をすることが可能となった(非特許文献12及び13)。ここで、HCVのフルゲノムレプリコンRNAとは、HCVゲノムの全長、すなわち、5’非翻訳領域、構造遺伝子、非構造遺伝子及び3’非翻訳領域を含むRNAで、培養細胞に導入した場合にHCVゲノム由来のRNAを自律複製できるRNAのことである。
【0007】
現在のところ、培養細胞を用いたin vitroの系で感染性HCV粒子を産生する能力を有するRNAは、遺伝子型2aのJFH−1株由来のRNAだけであり、HCVワクチンの原料を得るためにin vitroの系でHCV粒子を大量調製できるのは、JFH−1株のHCV又はJFH−1株由来のフルゲノムレプリコンに限られている。
【0008】
C型肝炎に対する主な治療は、インターフェロン−αやインターフェロン−βの単独療法及びインターフェロン−αとプリン−ヌクレオシド誘導体であるリバビリンとの併用療法により行われている。しかしながら、これらの治療を行っても、全治療者の約60%に治療効果が認められるだけであり、効果が出た患者であっても治療を中止すれば半分以上で再燃することがわかっている。また、インターフェロンの治療効果は、HCVの遺伝子型と関連し、遺伝子型1bに対しては効果が低く、遺伝子型2aや3aに対してはより効果が高いことが知られている(非特許文献14)。インターフェロンの治療効果がHCVの遺伝子型によって異なる原因については未だ明らかにされていないが、この原因の一つは、HCVの複製機構や複製効率に違いがあることによると考えられている。
【0009】
近年、C型肝炎に対する新たな治療剤として、HCV由来のプロテアーゼやポリメラーゼに対する阻害剤も開発されつつある。しかし、HCVのNS3/4プロテアーゼ阻害剤であるTMC435は、遺伝子型3aを除く遺伝子型1〜6に対しては阻害効果が高いが、遺伝子型3aに対しては阻害効果が低く、遺伝子型によりHCVに対する効果が異なることが報告されている(非特許文献15)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−17187号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Simmondsら、Hepatology、1994年、第10巻、p.1321−1324
【非特許文献2】Chooら、Science、1989年、第244巻、p.359−362
【非特許文献3】Katoら、Journal of Medical Virology、1992年、第64巻、p.334−339
【非特許文献4】Okamotoら、Journal of General Virology、1992年、第73巻、p.673−679
【非特許文献5】Yoshiokaら、Hepatology、1992年、第16巻、p.293−299
【非特許文献6】GRAVITZ、Nature、2011年、 第474巻、p.s2−s4
【非特許文献7】Rehmanら、Genetic Vaccines and Therapy、2011年、第9巻、p.2−5
【非特許文献8】Lomannら、Science、1999年、第285巻、p.110−113
【非特許文献9】Blightら、Science、2000年、第290巻、p.1972−1974
【非特許文献10】Friebeら、Journal of Virology、2001年、第75巻、p.12047−12057
【非特許文献11】Ikedaら、Journal of Virology、2002年、第76巻、p.2997−3006
【非特許文献12】Katoら、Gastroenterology、2003年、第125巻、p.1808−1817
【非特許文献13】Wakitaら、Nature Medicine、2005年、第11巻、p.791−796
【非特許文献14】Moriら、Biochemical and Biophysical Research Communications、1992年、第183巻、p.334−342
【非特許文献15】Reesinkら、Gastroenterology、2010年、第138巻、p.913−921
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、現在作製されているHCVのサブゲノムレプリコンRNAは遺伝子型1a、1b及び2aのHCV株由来の数種類に限られており、また、感染性HCV粒子を産生するフルゲノムレプリコンRNAについては、作製されているのは、遺伝子型2aのJFH−1株のゲノム由来又はJFH−1株とは異なる株由来の構造遺伝子とJFH−1株の非構造遺伝子とのキメラからなるゲノム由来のもののみである。したがって、HCVの遺伝子型と、HCVの複製機構又は複製効率との関係を解明することは困難であり、HCVワクチンの原料となる人為的に調製可能なHCV粒子の種類についても遺伝子型2aに限定されるのが現状である。
【0013】
さらに、同じ遺伝子型のHCV由来のサブゲノムレプリコンRNA又はフルゲノムレプリコンRNAを用いた研究では、異なる遺伝子型間でHCVの複製機構又は複製効率の差異を比較することができず、遺伝子型に依存しないで治療効果を発揮する抗HCV薬の開発の糸口が未だ見つかっていない。
【0014】
すなわち、HCVの研究分野及び医療分野において、遺伝子型に依存しない抗HCV薬、特に、遺伝子型3aに対する抗HCV薬の開発のためには、遺伝子型3aのHCVの、株の取得及びレプリコンRNAの作製が強く望まれている。
【0015】
そこで本発明は、新規な遺伝子型3aのHCVの株、さらには、新規な遺伝子型3aのHCV株由来の自律複製能を有するレプリコンRNAを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、急性C型肝炎患者から分離した新規な遺伝子型3aのHCVであるS310A株を見出し、このS310A株から、自律複製能を有するレプリコンRNAの作製に成功し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、以下を包含する。
【0018】
[1] 遺伝子型3aのC型肝炎ウイルスゲノムの、配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列を含む5’非翻訳領域と、配列番号14のアミノ酸番号1033〜1663のNS3タンパク質のアミノ酸配列、アミノ酸番号1664〜1717のNS4Aタンパク質のアミノ酸配列、アミノ酸番号1718〜1978のNS4Bタンパク質のアミノ酸配列、アミノ酸番号1979〜2430のNS5Aタンパク質のアミノ酸配列、及びアミノ酸番号2431〜3021のNS5Bタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と、配列番号1の塩基番号9407〜9655の塩基配列を含む3’非翻訳領域とをこの順番で含む、核酸(ただし、該核酸がRNAの場合は、塩基配列中のチミン(t)をウラシル(u)に読み替える)。
【0019】
[2] 上記NS3タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列が配列番号1の塩基番号3437〜5329の塩基配列を含み、
上記NS4Aタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列が配列番号1の塩基番号5330〜5491の塩基配列を含み、
上記NS4Bタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列が配列番号1の塩基番号5492〜6274の塩基配列を含み、
上記NS5Aタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列が配列番号1の塩基番号6275〜7630の塩基配列を含み、
上記NS5Bタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列が配列番号1の塩基番号7631〜9406の塩基配列を含む、
上記[1]記載の核酸。
【0020】
[3] 上記5’非翻訳領域が、配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列中に、1又は複数の塩基の欠失、置換又は付加を含む、上記[1]又は[2]記載の核酸。
【0021】
[4] 上記[1]〜[3]のいずれか記載の核酸の塩基配列に塩基変異を有する核酸であり、該塩基変異が配列番号14に示されるアミノ酸配列を基準とした場合に以下の(a)〜(g)の少なくとも1つのアミノ酸置換を引き起こす塩基変異を含む、核酸。
(a) 第1286番目のスレオニンのイソロイシンへの置換
(b) 第2188番目のスレオニンのアラニンへの置換
(c) 第2198番目のアルギニンのヒスチジンへの置換
(d) 第2210番目のセリンのイソロイシンへの置換
(e) 第2496番目のスレオニンのイソロイシンへの置換
(f) 第2895番目のアルギニンのグリシンへの置換
(g) 第2895番目のアルギニンのリジンへの置換
【0022】
[5] C型肝炎ウイルスゲノムの、Coreタンパク質をコードする塩基配列、E1タンパク質をコードする塩基配列、E2タンパク質をコードする塩基配列、p7タンパク質をコードする塩基配列、及びNS2タンパク質をコードする塩基配列をさらに含む、上記[1]〜[4]のいずれか記載の核酸。
【0023】
[6] Coreタンパク質をコードする塩基配列が、配列番号14のアミノ酸番号1〜191のCoreタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であり、
E1タンパク質をコードする塩基配列が、配列番号14のアミノ酸番号192〜383のE1タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であり、
E2タンパク質をコードする塩基配列が、配列番号14のアミノ酸番号384〜752のE2タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であり、
p7タンパク質をコードする塩基配列が、配列番号14のアミノ酸番号753〜815のp7タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であり、
NS2タンパク質をコードする塩基配列が、配列番号14のアミノ酸番号816〜1032のNS2タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列である、
上記[5]記載の核酸。
【0024】
[7] 配列番号1及び49〜51のいずれかに示される塩基配列を含む、上記[5]記載の核酸。
【0025】
[8] 配列番号17〜23及び54のいずれかに示される塩基配列を含む、上記[4]記載の核酸。
【0026】
上記[1]〜[8]記載の核酸は、外来遺伝子及び/又はIRES配列をさらに含んでもよい。
【0027】
[9] 上記[1]〜[4]及び[8]のいずれか記載の核酸を含む、C型肝炎ウイルスのサブゲノムレプリコンRNA。
【0028】
[10] 上記[5]〜[7]のいずれか記載の核酸を含む、C型肝炎ウイルスのフルゲノムレプリコンRNA。
【0029】
[11] 上記[5]〜[7]のいずれか記載の核酸をウイルスゲノムとして含有する、C型肝炎ウイルス粒子。
【0030】
上記[1]〜[8]記載の核酸は、DNAであってもよい。また上記[1]〜[8]記載の核酸、特にそのようなDNAを含む、発現ベクターも、本発明の好ましい態様である。
【0031】
[12] 上記[1]〜[8]のいずれか記載の核酸が導入された、細胞。
【0032】
[13] 上記[11]記載のC型肝炎ウイルス粒子又はその一部分を含有する、C型肝炎ウイルスワクチン。
【0033】
[14] 上記[11]のC型肝炎ウイルス粒子を抗原として認識する、C型肝炎ウイルスの抗体。
【0034】
[15] 被験物質の存在下及び非存在下の双方で、上記[12]記載の細胞、又は上記[11]記載のC型肝炎ウイルス粒子とC型肝炎ウイルス感受性細胞との混合物、を培養する培養ステップと、
上記培養ステップで培養物中に得られたサブゲノムレプリコンRNA、フルゲノムレプリコンRNA又はC型肝炎ウイルス粒子の量を定量する定量ステップと、
上記定量ステップの結果、被験物質の存在下で培養した培養物中で定量されたサブゲノムレプリコンRNA、フルゲノムレプリコンRNA又はC型肝炎ウイルス粒子の量が、それぞれ上記被験物質の非存在下で培養した培養物中で定量されたサブゲノムレプリコンRNA、フルゲノムレプリコンRNA又はC型肝炎ウイルス粒子の量より少ない場合に、上記被験物質は抗C型肝炎ウイルス活性を有すると評価する評価ステップと、
を含む、抗C型肝炎ウイルス物質をスクリーニングする方法。
【0035】
[16] 上記核酸が2以上のC型肝炎ウイルス株のゲノムに由来するキメラ核酸であり、配列番号1のC型肝炎ウイルスゲノム以外のC型肝炎ウイルスゲノムのCoreタンパク質をコードする塩基配列、E1タンパク質をコードする塩基配列、E2タンパク質をコードする塩基配列及びp7タンパク質をコードする塩基配列と、
配列番号1の塩基番号2786〜3436の配列からなるNS2タンパク質をコードする塩基配列、配列番号1のC型肝炎ウイルスゲノム以外のC型肝炎ウイルスゲノムのNS2タンパク質をコードする塩基配列、又は、配列番号1の塩基番号2786〜3436の塩基配列からなるNS2タンパク質をコードする塩基配列の一部と配列番号1のC型肝炎ウイルスゲノム以外のC型肝炎ウイルスゲノムのNS2タンパク質をコードする塩基配列の一部とが連結されたキメラ型のNS2タンパク質をコードする塩基配列と、
配列番号1における、塩基番号3437〜5329の配列からなるNS3タンパク質をコードする塩基配列、塩基番号5330〜5491の配列からなるNS4Aタンパク質をコードする塩基配列、塩基番号5492〜6274の配列からなるNS4Bタンパク質をコードする塩基配列、塩基番号6275〜7630の配列からなるNS5Aタンパク質をコードする塩基配列及び塩基番号7631〜9406の配列からなるNS5Bタンパク質をコードする塩基配列とを、
5’側から3’側に向かって、この順で含む、上記[5]記載の核酸。
【0036】
[17] 上記[16]記載の核酸の塩基配列に塩基変異を有する核酸であり、配列番号14に示されるアミノ酸配列を基準とした場合に以下の(a)〜(g)の少なくとも1つのアミノ酸置換を引き起こす塩基変異を有する、核酸。
(a) 第1286番目のスレオニンのイソロイシンへの置換
(b) 第2188番目のスレオニンのアラニンへの置換
(c) 第2198番目のアルギニンのヒスチジンへの置換
(d) 第2210番目のセリンのイソロイシンへの置換
(e) 第2496番目のスレオニンのイソロイシンへの置換
(f) 第2895番目のアルギニンのグリシンへの置換
(g) 第2895番目のアルギニンのリジンへの置換
【0037】
[18] 上記配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列を含む5’非翻訳領域に代えて、配列番号1のC型肝炎ウイルスゲノム以外のC型肝炎ウイルスゲノムの5’非翻訳領域を含む、上記[16]又は[17]記載の核酸。
【0038】
[19] 上記[16]〜[18]記載の核酸を含む、C型肝炎ウイルスのキメラフルゲノムレプリコンRNA。
【0039】
本明細書は本願の優先権主張の基礎となる日本国特許出願2011-189695号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、培養細胞において自律複製能を有する遺伝子型3aのHCVのレプリコンRNAを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】HCV S310A株(野生型)の全長ゲノムRNAの構造(A)、S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターpS310ASGR−Neoの構造(B)、及びpS310ASGR−NeoからT7ポリメラーゼで合成されるS310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAの構造(C)を示す図である。
図2】野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAを導入したHuh7細胞のコロニー形成の結果を示す。
図3】S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞(クローン)中に含まれるHCVサブゲノムレプリコンRNAのコピー数の定量結果を示す。
図4】S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞(クローン)におけるレプリコンRNA複製のインターフェロンに対する感受性を示す図である。
図5】S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞(クローン)におけるレプリコンRNA複製のNS3プロテアーゼ阻害剤VX−950に対する感受性を示す図である。
図6】S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞(クローン)におけるレプリコンRNA複製のNS3プロテアーゼ阻害剤BILN−2061に対する感受性を示す図である。
図7】S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞(クローン)におけるレプリコンRNA複製のNS5Bポリメラーゼ阻害剤JTK−109に対する感受性を示す図である。
図8】S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞(クローン)におけるレプリコンRNA複製のNS5Bポリメラーゼ阻害剤PSI−6130に対する感受性を示す図である。
図9】S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞(クローン)において同定したアミノ酸置換(変異)の位置を、pS310ASGR−Neoの構造上に模式的に示した図である。
図10】変異体S310A株(適応変異が導入されたS310A株)のHCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターの構造を示す図である。
図11】野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNA及びその変異体のHCVサブゲノムレプリコンRNAを導入した細胞のコロニー形成の結果を示す。
図12】Neo遺伝子の代わりにルシフェラーゼ遺伝子(Luc)を挿入したS310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNA及びその発現ベクターpS310ASGR−Lucの構造並びにそれらの作製過程を示す図である。
図13】ルシフェラーゼ遺伝子を含む変異体S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAの複製能(発光強度)を示す図である。
図14】変異体S310A株(適応変異が導入されたS310A株)のHCVフルゲノムレプリコンRNA(HCV全長ゲノム)の構造を示す図である。
図15】変異体S310A株のHCVフルゲノムレプリコンRNA(HCV全長ゲノム)のHCV粒子産生能(培養上清中のCoreタンパク質量)を示す図である。
図16】変異体S310A株(適応変異が導入されたS310A株)由来、J6CF株由来、JFH−1株由来及びTH株由来のHCVゲノムの構造、並びに変異体S310A株の非構造遺伝子とJ6CF株由来、JFH−1株由来又はTH株由来の構造遺伝子とを含む、キメラHCVゲノムの構造を示す図である。変異体S310A株のHCVフルゲノムレプリコンRNA(全長ゲノムRNA変異体)であるS310A R2198H、S310A S2210I、又はS310A R2895Kは、それぞれR2198H、S2210I、又はR2895Kの変異を含んでおり、最上部に示すHCVゲノムの構造上にはこれら変異の位置を一括して図示してある(実際は各変異を単独で含む)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書で使用される科学用語、技術用語及び命名法は、特に定義されない限り、当業者により普通に理解されるものと同じ意味を有する。また、分子生物学及び免疫学の分野における一般的技術及び学術用語については、SambrookらのMolecularCloning: A Laboratory Manual(第3版、2001年)及びEd HarlowらのAntibodies: A Laboratory Manual(1988年)に記載された手法及び定義に基づくものである。さらに、本明細書中に引用されている全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が本明細書に参考として援用されるものである。
【0043】
C型肝炎ウイルス(HCV)は、一本鎖の(+)鎖センスRNAをゲノムとするウイルスである。HCVのゲノムは、5’非翻訳領域(5’UTR)と、Coreタンパク質、E1タンパク質、E2タンパク質、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードする塩基配列(ウイルスタンパク質コード領域)と、3’非翻訳領域(3’UTR)からなる。HCVゲノム(HCV全長ゲノム)は、5’側から3’側に順番に、5’UTRと、Coreタンパク質、E1タンパク質、E2タンパク質、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードする塩基配列と、3’UTRを配置してなるRNAである。HCVゲノムの一部からなる核酸と区別するために、その全長からなるHCVゲノムを、「HCV全長ゲノム」、「全長HCVゲノム」、「HCV全長ゲノムRNA」、「全長HCVゲノムRNA」又は「全長ゲノムRNA」ともいう。
【0044】
HCVは、その実態としては、ウイルス粒子として存在する。HCVのウイルス粒子(HCV粒子)は、HCVの構造タンパク質から構成されるウイルスの殻の内部にHCVゲノムを含有している。
【0045】
HCVのCoreタンパク質、E1タンパク質、E2タンパク質及びp7タンパク質は、HCV粒子を形成する「構造タンパク質」であり、この構造タンパク質をコードする核酸を、「構造遺伝子」という。これらの構造遺伝子を含むHCVゲノム上の配列は「構造領域」とも呼ばれる。HCVのNS2タンパク質、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質は、HCV粒子を形成しない「非構造タンパク質」であり、この非構造タンパク質をコードする核酸を、「非構造遺伝子」という。これらの非構造遺伝子を含むHCVゲノム上の配列は「非構造領域」とも呼ばれる。非構造タンパク質は、HCVゲノムの複製、HCVタンパク質のプロセッシング等に関与する機能を有している。
【0046】
HCVの5’非翻訳領域(5’UTR)は、タンパク質翻訳のための内部リボソーム進入部位(以下、IRES)及び複製に必要なエレメントを提供する。HCVの5’UTRは、ゲノムの5’末端から約360ヌクレオチドの領域である。
【0047】
HCVの3’非翻訳領域(3’UTR)は、HCVの複製を補助する。HCVの3’UTRは可変領域、ポリU領域、及び約100ヌクレオチドの追加領域を含む。
【0048】
HCVにおいては10種類のウイルスタンパク質(Coreタンパク質、E1タンパク質、E2タンパク質、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質)がこの順番で連結した1つの前駆体タンパク質(ポリプロテイン)として翻訳され、その後、細胞内及びウイルスのプロテアーゼにより、それぞれ、10種類の成熟したウイルスタンパク質(Coreタンパク質、E1タンパク質、E2タンパク質、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質)となる。
【0049】
HCVには各種遺伝子型が知られているが、各種遺伝子型のHCVのゲノムが同様の遺伝子構造を有することが知られている。本発明において、HCVの「遺伝子型」とはSimmondsらによる国際分類に従って分類される遺伝子型を意味する。
【0050】
配列表の配列番号1の塩基配列からなる核酸は、急性重症C型肝炎患者から分離された新規な遺伝子型3aのHCVであるS310A株のゲノムである。配列番号1に示す配列は、S310A株の全長ゲノムRNAのcDNA配列であるが、該塩基配列中のチミン(t)をウラシル(u)に読み替えたものがRNA配列である。患者からHCVゲノムを分離する方法は、Katoら、Gastroenterology、2003年、第125巻、p.1808−1817に記載されている。
【0051】
上記のS310A株の全長HCVゲノム配列(配列番号1)においては、5’非翻訳領域(5’UTR)は、配列番号1の塩基番号1〜340の配列からなり、Coreタンパク質コード配列は、配列番号1の塩基番号341〜913の配列からなり、E1タンパク質コード配列は、配列番号1の塩基番号914〜1489の配列からなり、E2タンパク質コード配列は、配列番号1の塩基番号1490〜2596の配列からなり、p7タンパク質コード配列は、配列番号1の塩基番号2597〜2785の配列からなり、NS2タンパク質コード配列は、配列番号1の塩基番号2786〜3436の配列からなり、NS3タンパク質コード配列は、配列番号1の塩基番号3437〜5329の配列からなり、NS4Aタンパク質コード配列は、配列番号1の塩基番号5330〜5491の配列からなり、NS4Bタンパク質コード配列は、配列番号1の塩基番号5492〜6274の配列からなり、NS5Aタンパク質コード配列は、配列番号1の塩基番号6275〜7630の配列からなり、NS5Bタンパク質コード配列は、配列番号1の塩基番号7631〜9406の配列からなり、3’非翻訳領域(3’UTR)は、配列番号1の塩基番号9407〜9655の配列からなる。このS310A株の全長HCVゲノムの構造については、図1Aに示す。
【0052】
具体的には、S310A株の全長HCVゲノム(配列番号1)の5’非翻訳領域(5’UTR)は配列番号2に示す塩基配列からなり、Coreタンパク質コード配列は配列番号3に示す塩基配列からなり、E1タンパク質コード配列は配列番号4に示す塩基配列からなり、E2タンパク質コード配列は配列番号5に示す塩基配列からなり、p7タンパク質コード配列は配列番号6に示す塩基配列からなり、NS2タンパク質コード配列は配列番号7に示す塩基配列からなり、NS3タンパク質コード配列は配列番号8に示す塩基配列からなり、NS4Aタンパク質コード配列は配列番号9に示す塩基配列からなり、NS4Bタンパク質コード配列は配列番号10に示す塩基配列からなり、NS5Aタンパク質コード配列は配列番号11に示す塩基配列からなり、NS5Bタンパク質コード配列は配列番号12に示す塩基配列からなり、3’非翻訳領域(3’UTR)は配列番号13に示す塩基配列からなる。
【0053】
S310A株の前駆体タンパク質のアミノ酸配列は配列番号14に示されている。配列番号14に示されるS310A株の前駆体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1に示される野生型S310A株の全長ゲノムRNAのcDNA配列の塩基番号341〜9406(終止コドンを含む)の配列からなる部分の塩基配列によりコードされる。
【0054】
本発明は、上記の新規な遺伝子型3aのHCVであるS310A株のゲノム及び、このS310A株由来の自律複製能を有するレプリコンRNA又はその核酸を提供する。
【0055】
「核酸」には、RNA及びDNAが含まれるものとする。また、本明細書における「タンパク質コード領域」、「タンパク質をコードする塩基配列」、「タンパク質をコードする配列」及び「タンパク質コード配列」とは、所定のタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列のことをいい、開始コドン及び終止コドンは含んでいても含まなくてもよいものとする。
【0056】
本明細書において、核酸がRNAである場合に配列表の配列番号を引用してRNAの塩基配列又は塩基を特定するときは、その配列番号に示される塩基配列中のチミン(t)はウラシル(u)に読み替えるものとする。
【0057】
好ましい実施形態において、本発明は、遺伝子型3aのC型肝炎ウイルス(例えば、S310A株又はその変異体)のゲノムの、配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列を含む5’非翻訳領域と、配列番号14(配列番号1の塩基配列によってコードされている前駆体タンパク質)のアミノ酸番号1033〜1663のNS3タンパク質のアミノ酸配列、アミノ酸番号1664〜1717のNS4Aタンパク質のアミノ酸配列、アミノ酸番号1718〜1978のNS4Bタンパク質のアミノ酸配列、アミノ酸番号1979〜2430のNS5Aタンパク質のアミノ酸配列、及びアミノ酸番号2431〜3021のNS5Bタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と、配列番号1の塩基番号9407〜9655の塩基配列を含む3’非翻訳領域とをこの順番で含む、核酸を提供する。別の好ましい実施形態において、この核酸の5’非翻訳領域は、配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列中に、1又は複数(例えば2〜20個、好ましくは2〜5個)の塩基の欠失、置換又は付加を含んでもよい。該核酸の5’非翻訳領域は、配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上、例えば99.5%以上の塩基配列同一性を有することが好ましい。
【0058】
一実施形態では、本発明の核酸は、配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列を含む5’非翻訳領域と、配列番号1の塩基番号3437〜5329の、NS3タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と、配列番号1の塩基番号5330〜5491の、NS4Aタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と、配列番号1の塩基番号5492〜6274の、NS4Bタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と、配列番号1の塩基番号6275〜7630の、NS5Aタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と、配列番号1の塩基番号7631〜9406の、NS5Bタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と、配列番号1の塩基番号9407〜9655の塩基配列を含む3’非翻訳領域とをこの順番で含む、核酸である。別の好ましい実施形態において、この核酸の5’非翻訳領域は、配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列中に、1又は複数(例えば2〜20個、好ましくは2〜5個)の塩基の欠失、置換又は付加を含んでもよい。該核酸の5’非翻訳領域は、配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上、例えば99.5%以上の塩基配列同一性を有することが好ましい。
【0059】
本発明の核酸は、C型肝炎ウイルスゲノムの、Coreタンパク質をコードする塩基配列、E1タンパク質をコードする塩基配列、E2タンパク質をコードする塩基配列、p7タンパク質をコードする塩基配列、及びNS2タンパク質をコードする塩基配列を含まなくてもよい。そのような本発明の核酸は、HCVサブゲノムレプリコンRNAをコードしうる。
【0060】
本発明の核酸は、C型肝炎ウイルスゲノムの、Coreタンパク質をコードする塩基配列、E1タンパク質をコードする塩基配列、E2タンパク質をコードする塩基配列、p7タンパク質をコードする塩基配列、及びNS2タンパク質をコードする塩基配列をさらに含んでもよい。このような本発明の核酸は、HCVフルゲノムレプリコンRNAをコードしうる。この場合、Coreタンパク質をコードする塩基配列、E1タンパク質をコードする塩基配列、E2タンパク質をコードする塩基配列、p7タンパク質をコードする塩基配列、及びNS2タンパク質をコードする塩基配列は、遺伝子型3aのC型肝炎ウイルス(例えば、S310A株又はその変異体)のゲノム由来であってもよい。
【0061】
遺伝子型3aのC型肝炎ウイルスゲノム由来のものである場合、Coreタンパク質をコードする塩基配列は、配列番号14のアミノ酸番号1〜191のCoreタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であることが好ましい。またE1タンパク質をコードする塩基配列は、配列番号14のアミノ酸番号192〜383のE1タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であることが好ましい。E2タンパク質をコードする塩基配列が、配列番号14のアミノ酸番号384〜752のE2タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であることが好ましい。p7タンパク質をコードする塩基配列が、配列番号14のアミノ酸番号753〜815のp7タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であることが好ましい。NS2タンパク質をコードする塩基配列が、配列番号14のアミノ酸番号816〜1032のNS2タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列であることが好ましい。
【0062】
Coreタンパク質をコードする塩基配列、E1タンパク質をコードする塩基配列、E2タンパク質をコードする塩基配列、p7タンパク質をコードする塩基配列、及びNS2タンパク質をコードする塩基配列はまた、遺伝子型3a以外の遺伝子型(例えば、1a、1b、2a、2b、2c、3b、4、5a、又は6a)のHCV(例えばHCVの既存株)のゲノム由来であってもよく、この場合はキメラ型の核酸(キメラ核酸)となる。
【0063】
本発明の核酸は、上記核酸の塩基配列に1つ又は複数(好ましくは、2〜50個、例えば2〜10個)の塩基変異を含む核酸であってもよい。塩基変異は、限定するものではないが、好ましくは塩基の欠失、置換又は付加である。塩基変異は、アミノ酸置換を引き起こさない同義置換であってもよいし、自律複製能を喪失しない限り、アミノ酸置換を引き起こす非同義置換であってもよい。自律複製能を喪失しない限り、アミノ酸置換は保存的置換であっても非保存的置換であってもよい。
【0064】
本発明の核酸はまた、配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列を含む5’非翻訳領域に代えて、遺伝子型3a以外の遺伝子型(例えば、1a、1b、2a、2b、2c、3b、4、5a、又は6a)のHCV(例えばHCVの既存株)のゲノム由来の5’非翻訳領域を含んでもよい。
【0065】
本発明の核酸はまた、外来遺伝子(薬剤耐性遺伝子又はレポーター遺伝子等)及びIRES配列を含んでもよい。
【0066】
本発明の核酸は、HCVサブゲノムレプリコンRNA若しくはHCVフルゲノムレプリコンRNA等のHCVレプリコンRNA又はそれをコードする核酸であってよい。本発明の核酸は例えばHCVレプリコンRNAをコードする塩基配列を含む発現カセット等であってもよい。本発明の核酸は、DNA、RNA、又はDNAとRNAのキメラ等であってもよく、修飾塩基等を含んでいてもよい。
【0067】
本発明において「レプリコンRNA」とは、培養細胞(典型的にはHCV感受性細胞)内で自律複製する能力を有するRNAをいう。細胞に導入されたレプリコンRNAは、自律複製し、そのRNAコピーが細胞分裂後に娘細胞に分配されるため、レプリコンRNAを用いれば細胞への安定的な導入が可能である。
【0068】
HCVのレプリコンRNA(HCVレプリコンRNA)とは、HCVゲノムRNAの一部又は全長を含む、自律複製するRNAのことをいう。HCVゲノムRNAの一部を含む自律複製するRNAを、HCVサブゲノムレプリコンRNAと呼び、HCVゲノムRNAの全長を含む自律複製するRNAを、HCVフルゲノムレプリコンRNAと呼ぶ。「HCVレプリコンRNA」は、HCVサブゲノムレプリコンRNAとHCVフルゲノムレプリコンRNAの両方を包含する。
【0069】
本発明における「HCVサブゲノムレプリコンRNA」は、HCVの5’非翻訳領域(5’UTR)と、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードする塩基配列と、3’非翻訳領域(3’UTR)を、5’側から3’側に向かってこの順で含むことが好ましい。また、HCVサブゲノムレプリコンRNAは、その検出のために、外来遺伝子(例えば、薬剤耐性遺伝子又はレポーター遺伝子)及びIRES配列を含むことが好ましく、そのような場合、外来遺伝子(薬剤耐性遺伝子又はレポーター遺伝子)及びIRES配列は、HCVサブゲノムレプリコンRNAのNS3タンパク質コード領域の5’側に含むことが好ましい。
【0070】
本発明の「HCVサブゲノムレプリコンRNA」は、好ましくは本発明の核酸を含む。本発明の「HCVサブゲノムレプリコンRNA」は、本発明の核酸から発現されるものが好ましい。本発明における一つの好適な「HCVサブゲノムレプリコンRNA」の例は、HCVの5’非翻訳領域(5’UTR)と、Coreタンパク質をコードする塩基配列の5’末端から57ヌクレオチドの配列と、外来遺伝子(薬剤耐性遺伝子又はレポーター遺伝子)と、IRES配列と、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質、及びNS5Bタンパク質をコードする塩基配列と、3’非翻訳領域(3’UTR)を、5’側から3’側に向かってこの順で含むものである。
【0071】
本発明における「HCVフルゲノムレプリコンRNA」は、HCVの5’非翻訳領域(5’UTR)と、Coreタンパク質、E1タンパク質、E2タンパク質、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードする塩基配列と、3’非翻訳領域(3’UTR)を、5’側から3’側に向かってこの順で配置してなるものが好ましい。HCVフルゲノムレプリコンRNAは、さらに、外来遺伝子(薬剤耐性遺伝子又はレポーター遺伝子)及びIRES配列を含んでもよい。そのような場合、外来遺伝子(薬剤耐性遺伝子又はレポーター遺伝子)及びIRES配列は、HCVフルゲノムレプリコンRNAのCoreタンパク質をコードする塩基配列の5’側に含むことが好ましい。
【0072】
HCV全長ゲノム核酸が自律複製能を有する場合、該ゲノムはレプリコンRNAである。HCV全長ゲノム核酸を含むレプリコンRNAを、HCVフルゲノムレプリコンRNAと呼ぶ。HCV全長ゲノム配列からなるRNA(HCV全長ゲノムRNA)が自律複製能を有する場合、それはHCVフルゲノムレプリコンRNAである。
【0073】
HCVレプリコンRNA(HCVフルゲノムレプリコンRNA及びHCVサブゲノムレプリコンRNA)及び本発明の核酸が含み得る薬剤耐性遺伝子の例としては、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ピリチアミン耐性遺伝子、アデニリルトランスフェラーゼ遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラストシジンS耐性遺伝子などが挙げられるが、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子が好ましく、ネオマイシン耐性遺伝子がさらに好ましい。
【0074】
HCVレプリコンRNA及び本発明の核酸が含み得るレポーター遺伝子の例としては、例えば、発光反応や呈色反応を触媒する酵素の構造遺伝子が挙げられる。好ましいレポーター遺伝子の例としては、トランスポゾンTn9由来のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、大腸菌由来のβグルクロニダーゼ又はβガラクトシダーゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子、クラゲ由来のイクオリン遺伝子、分泌型胎盤アルカリフォスファターゼ(SEAP)遺伝子等が挙げられる。
【0075】
薬剤耐性遺伝子やレポーター遺伝子は、HCVレプリコンRNA又は本発明の核酸中にどちらか一方のみが含まれていてもよいし、両方が含まれていてもよい。薬剤耐性遺伝子又はレポーター遺伝子は、HCVレプリコンRNA又は本発明の核酸に1つ含まれていてもよいし、2つ以上含まれていてもよい。薬剤耐性遺伝子やレポーター遺伝子が2つ以上含まれる場合は、それぞれの遺伝子をウイルス由来の2Aペプチド遺伝子と正しい読み枠(インフレーム)となるように連結してもよい。2Aペプチドとしては、Thosea asigna virus由来の2Aペプチド(T2A)、Foot−and−mouth disease virus由来の2Aペプチド(F2A)、Equin rhinitis A virus由来の2A ペプチド(E2A)、Porcine teschovirus 1由来の2Aペプチド(P2A)が挙げられる(Kimら、PoLos One.、2011年、第6(4)巻、e18556)。
【0076】
HCVレプリコンRNA及び本発明の核酸が含み得るIRES配列とは、上記と同様であり、例えば、RNAの内部にリボソームを結合させて翻訳を開始させることが可能な内部リボゾーム結合部位を意味する。IRES配列の好ましい例としては、EMCV IRES(脳心筋炎ウイルスの内部リボゾーム結合部位)、FMDV IRES、HCV IRES等が挙げられるが、EMCV IRES及びHCV IRESがより好ましく、EMCV IRESが最も好ましい。
【0077】
HCVレプリコンRNA及び本発明の核酸においては、薬剤耐性遺伝子及び/又はレポーター遺伝子が、HCVレプリコンRNAから正しい読み枠(インフレーム)で翻訳されるように連結される。HCVレプリコンRNA又は本発明の核酸にコードされるタンパク質は、一続きのポリペプチドとして翻訳され発現された後でプロテアーゼによって各タンパク質へと切断され、遊離するように、プロテアーゼ切断部位等を介して互いに連結させることが好ましい。
【0078】
HCV感受性細胞とは、細胞培養系でHCV粒子の感染やHCVレプリコンRNAの複製を許容する細胞を指し、Huh7細胞、HepG2細胞、IMY−N9細胞、HeLa細胞、293細胞や、Huh7細胞の派生株であるHuh7.5細胞、Huh7.5.1細胞が挙げられる。また、Huh7細胞、HepG2細胞、IMY−N9細胞、HeLa細胞又は293細胞にCD81遺伝子及び/又はClaudin1遺伝子を発現させた細胞も挙げることができる(Lindenbachら、Science、2005年、第309巻、p.623−626; Evansら、Nature、2007年、第446巻、p.801−805; Akazawaら、J.Virol.2007年、第81巻、p.5036−5045)。中でも、Huh7細胞又はHuh7細胞の派生株が特に好ましく使用される。なお、本発明において「派生株」とは、当該細胞から誘導された株をいう。
【0079】
HCVゲノムの効率的な複製には、多くの場合、ゲノムの塩基配列に変異が起こることが必要であることが示されている(Lohmannら、Journal of Virology、2001年、第75巻、p.1437−1449)。複製能を向上させる変異は適応変異(adaptive mutation)と呼ばれている。
【0080】
本発明の核酸及びHCVレプリコンRNAも、適応変異を含んでよい。例えば、上記のS310A株の、HCVサブゲノムレプリコンRNAの複製能が向上する適応変異としては、配列番号14に示されるアミノ酸配列(S310A株の前駆体タンパク質の全長アミノ酸配列)を基準とした場合に、T1286I(第1286番目のスレオニン(T)がイソロイシン(I)に変異)、T2188A(第2188番目のスレオニン(T)がアラニン(A)に変異)、R2198H(第2198番目のアルギニン(R)がヒスチジン(H)に変異)、S2210I(第2210番目のセリン(S)がイソロイシン(I)に変異)、T2496I(第2496番目のスレオニン(T)がイソロイシン(I)に変異)、R2895G(第2895番目のアルギニン(R)がグリシン(G)に変異)及びR2895K(第2895番目のアルギニン(R)がリジン(K)に変異)が挙げられる。これら適応変異を、単独で又は組み合わせて、本発明の核酸及びHCVレプリコンRNA、例えば上記のS310A株のHCVゲノムに導入することにより、複製能の向上したHCVサブゲノムレプリコンRNA若しくはHCVフルゲノムレプリコンRNA又はそれらをコードする核酸を取得できる。本発明において、本発明の核酸及びHCVレプリコンRNAが有する、より好ましい塩基の変異は、アミノ酸配列のT1286Iの変異、R2198Hの変異、S2210Iの変異又はR2895Kの変異を引き起こす変異であり、さらに好ましい塩基の変異は、アミノ酸配列のR2198Hの変異、S2210Iの変異又はR2895Kの変異を引き起こす変異である。また、公知文献記載の適応変異を単独で導入、又は上記変異と組み合わせて導入することもできる。導入する変異は、上記のS310A株由来のHCVレプリコンRNAの複製能が向上するものであればよい。なお、T1286IはNS3タンパク質、T2188A、R2198H及びS2210Iの変異はNS5Aタンパク質、T2496I、R2985G及びR2985KはNS5Bタンパク質内の変異である。
【0081】
本発明の核酸及びHCVレプリコンRNA、例えば単離した遺伝子型3aの野生型HCVゲノムに変異を導入するには、PCR法や市販の変異導入キット(例えば、東洋紡社製のKOD−Plus−Mutagenesis Kitなど)を用いることができる。PCR法としては、例えば、遺伝子型3aの野生型HCVゲノムRNAのcDNAをクローン化したベクターを鋳型とし、該cDNAの配列から設計された導入する変異を含む正方向及び逆方向プライマーを用いたPCRを実施することによって、目的の配列部分を増幅することができる。具体的には、互いに重複配列を有する異なるPCR産物を複数合成し、それらのPCR産物を混合し、これを鋳型として、目的核酸の5’端を含む正方向プライマーと、該核酸の相補鎖の5’端を含む逆方向プライマーを用いるPCRを実施することによって該目的核酸を増幅することができる。合成した核酸の各末端を制限酵素で切断し、同じ酵素で切断した野生型のHCVゲノムRNAのcDNAをクローン化したベクターに連結する。このような操作の基本技術は、例えば、国際公開第04/104198号、国際公開第06/022422号、Wakitaら、2005年、Nature Medicine、第11号、p.791−796、及びLindenbachら、2005年、Science、第309号、p.623−626にも記載されている。
【0082】
本発明の核酸及びHCVサブゲノムレプリコンRNAの一つの実施形態としては、上記のS310A株の全長HCVゲノム(配列番号1)中の、5’非翻訳領域(5’UTR)(配列番号2)、NS3タンパク質コード配列(配列番号8)、NS4Aタンパク質コード配列(配列番号9)、NS4Bタンパク質コード配列(配列番号10)、NS5Aタンパク質コード配列(配列番号11)、NS5Bタンパク質コード配列(配列番号12)、3’非翻訳領域(3’UTR)(配列番号13)を5’側から3’側に向かってこの順で含む核酸が挙げられる。
【0083】
本発明の核酸及びHCVサブゲノムレプリコンRNAの別の実施形態としては、S310A株の全長HCVゲノム(配列番号1)中の、5’非翻訳領域(5’UTR)(配列番号2)、NS3タンパク質コード配列(配列番号8)、NS4Aタンパク質コード配列(配列番号9)、NS4Bタンパク質コード配列(配列番号10)、NS5Aタンパク質コード配列(配列番号11)、NS5Bタンパク質コード配列(配列番号12)、3’非翻訳領域(3’UTR)(配列番号13)を5’側から3’側に向かってこの順で含む塩基配列において、T1286I、T2188A、R2198H、S2210I、T2496I、R2895G及びR2895Kからなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む核酸が挙げられる。好ましくは、本発明の核酸及びHCVサブゲノムレプリコンRNAとして、S310A株の全長HCVゲノム中の、5’非翻訳領域(5’UTR)、NS3タンパク質コード配列、NS4Aタンパク質コード配列、NS4Bタンパク質コード配列、NS5Aタンパク質コード配列、NS5Bタンパク質コード配列、3’非翻訳領域(3’UTR)を5’側から3’側に向かってこの順で含む核酸であり、かつ、T1286I、R2198H又はR2895Kの変異を含む核酸も挙げられる。さらに好ましくは、本発明の核酸及びHCVサブゲノムレプリコンRNAとして、S310A株の全長HCVゲノム中の、5’非翻訳領域(5’UTR)、NS3タンパク質コード配列、NS4Aタンパク質コード配列、NS4Bタンパク質コード配列、NS5Aタンパク質コード配列、NS5Bタンパク質コード配列、3’非翻訳領域(3’UTR)を5’側から3’側に向かってこの順で含む核酸であり、かつR2198H又はR2895Kの変異を含む核酸が挙げられる。
【0084】
上記のHCVサブゲノムレプリコンRNAは、薬剤耐性遺伝子及び/又はレポーター遺伝子並びにIRES配列をさらに含んでいてもよい。この際、5’UTRの下流に、薬剤耐性遺伝子又は/及びレポーター遺伝子を、さらにその下流にIRES配列を、挿入することが好ましい。
【0085】
本発明のHCVサブゲノムレプリコンRNAのさらに好ましい実施形態としては、配列番号16に示される塩基配列からなる核酸(野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNA、図1C)が挙げられる。本発明のHCVサブゲノムレプリコンRNAの好ましい別の実施形態としては、T1286I、T2188A、R2198H、S2210I、T2496I、R2895G、及びR2895Kからなる群より選択される変異が配列番号16に示される塩基配列に導入されたRNA、より好ましくはT1286I、R2198H若しくはR2895Kの変異が導入されたRNAが挙げられる。例えば、配列番号17(野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAにおいて、T1286Iの変異を含む配列)、配列番号18(野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAにおいて、R2198Hの変異を含む配列)又は、配列番号19(野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAにおいて、R2895Kの変異を含む配列)に示される塩基配列を含む核酸を例示できる。
【0086】
本発明のHCVサブゲノムレプリコンRNAを構成する核酸は、上記の変異を引き起こす塩基以外の塩基において、さらに他の変異を有しているが、上記の変異を含む核酸と同等の複製能をもたらす核酸であってもよい。そのような他の変異としては、1又は複数の塩基の置換が挙げられ、該他の変異を有する核酸は元の核酸の塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の塩基配列同一性を有することが好ましい。またさらに、そのような他の変異としては、1又は複数の塩基の欠失又は付加が挙げられる。この場合、該他の変異を有する核酸は元の核酸の塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の塩基配列同一性を有し、かつタンパク質をコードする配列内の欠失又は付加の場合は、タンパク質のアミノ酸配列に翻訳される読み枠がずれないことが好ましい。さらに、そのような他の変異としては、HCVゲノムの5’非翻訳領域内又は3’非翻訳領域内の1又は複数の塩基の欠失、置換又は付加が挙げられ、該他の変異を有する核酸は元の核酸の塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の塩基配列同一性を有することが好ましい。またさらに、そのような他の変異としては、HCVゲノムのHCVタンパク質をコードする塩基配列(ウイルスタンパク質コード領域)内の1又は複数の塩基の欠失、置換又は付加が挙げられ、該他の変異を有する核酸は元の核酸の塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の塩基配列同一性を有し、かつ欠失又は付加の場合は、HCVタンパク質のアミノ酸配列に翻訳される読み枠がずれないことが好ましい。
【0087】
本明細書において、アミノ酸又はアミノ酸残基は、生物学分野で通常用いられるアミノ酸の1文字表記又は3文字表記(Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual Second Edition、1989年)によって記載し、そのように表記されたアミノ酸は水酸化、糖鎖付加、硫酸化等の翻訳後修飾を受けたアミノ酸も包含するものとする。
【0088】
本明細書においては、配列番号で示されるアミノ酸配列中の特定の位置のアミノ酸を、「配列番号“X”に示される…アミノ酸配列を基準とした場合に第“Y”番目の(アミノ酸)」という表現により指定することがある。例えば「配列番号14に示されるS310A株の前駆体タンパク質のアミノ酸配列を基準とした場合に第“Y”番目の(アミノ酸)」という記載は、そのアミノ酸が、配列番号14に示されるHCVのS310A株の前駆体タンパク質のアミノ酸配列においてN末端の第1アミノ酸(メチオニン)を第1番目としたときに第“Y”番目に位置するアミノ酸残基であることを意味する。「配列番号“X”に示される…アミノ酸配列を基準とした場合に第“Y”番目の(アミノ酸)」という表現を用いて指定されるアミノ酸は、配列番号“X”の“Y”番目のアミノ酸に配列アラインメント上で対応している限り、例えば配列番号“X”の配列変異体(末端切断配列など)中で第“Y”番目に位置してもよいが、第“Y”番目に位置しなくてもよい。具体的には、例えば「配列番号14に示されるS310A株の前駆体タンパク質のアミノ酸配列を基準とした場合に第2496番目のスレオニンがイソロイシンに置換されている、S310A株のNS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質のアミノ酸配列からなる前駆体タンパク質」と記載する場合、例えば、配列番号14のアミノ酸配列のN末端の末端切断(truncation)により、配列番号14では第2496番目に位置しているが末端切断配列上のN末端からの位置が第2496番目ではなくなったスレオニンが、タンパク質中でイソロイシンに置換されていることをも意味する。
【0089】
本明細書において、R2895K等の表記は、特定の位置のアミノ酸の置換を示すが、文脈によりそのアミノ酸置換を引き起こす塩基変異をも意味する。例えば、核酸の塩基が変異し、元の核酸がコードするアミノ酸配列における第2895番目のR(アルギニン)がK(リジン)に置換された場合、該塩基変異をR2895K置換(変異)と称することがある。また、該変異を有するアミノ酸配列をコードする核酸を、R2895K置換(変異)を含む核酸、又はR2895K置換(変異)が導入された核酸と称する場合がある。あるいは、そのような変異を、アミノ酸配列におけるR2895K置換(変異)を引き起こす塩基変異、又はアミノ酸配列におけるR2895K置換(変異)を引き起こす変異と称することもある。例えば、R2895K置換(変異)が導入されたHCVレプリコンRNAを、R2895K変異体HCVレプリコンRNAということがある。同時に複数の変異を有する場合には、例えば、T2496Iのアミノ酸置換とR2895Kのアミノ酸置換を有する場合、「T2496I/R2895Kの置換(変異)を含む」と表現することがある。「アミノ酸置換」を「アミノ酸変異」と表現する場合がある。
【0090】
特定のアミノ酸置換を引き起こす塩基変異は、周知の遺伝暗号表に基づいて選択することができる。例えば、R2895K置換を引き起こす変異は、アルギニンをコードするコドン「CGU」、「CGC」、「CGA」、「CGG」、「AGA」又は「AGG」から、リジンをコードするコドン「AAA」又は「AAG」への変化をもたらす変異である。S310A株の全長ゲノム配列(配列番号1)において、R2895K置換を引き起こす塩基変異は、コドン「AGA」(配列番号1の第9023番目〜第9025番目)を「AAG」又は「AAA」に変化させる変異である。これはすなわち、配列番号1の第9024番目〜第9025番目の塩基配列を5’−GA−3’から5’−AG−3’に変異させるか、又は第9024番目の塩基をGからAに変異させるものである。
【0091】
同様に、配列番号14に示されるS310A株の前駆体タンパク質のアミノ酸配列を基準とした場合に第2198番目のアルギニンのヒスチジンへのアミノ酸置換は、R2198Hと表記される。S310A株の全長ゲノム配列(配列番号1)において、R2198H置換を引き起こす塩基変異は、アルギニンをコードするコドン「CGU」(配列番号1の第6932番目〜第6934番目)を、ヒスチジンをコードするコドン「CAU」又は「CAC」に変化させる変異である。
【0092】
同様に、配列番号14に示されるS310A株の前駆体タンパク質のアミノ酸配列を基準とした場合に第1286番目のスレオニンのイソロイシンへのアミノ酸置換は、T1286Iと表記される。S310A株の全長ゲノム配列(配列番号1)において、T1286I置換を引き起こす塩基変異は、スレオニンをコードするコドン「ACU」(配列番号1の第4196番目〜第4198番目)を、イソロイシンをコードするコドン「AUU」、「AUC」、又は「AUA」に変化させる変異である。
【0093】
また、本明細書において、配列番号に示される塩基配列の塩基番号は、配列番号に示される塩基配列において5’末端の第1塩基を第1番目として塩基番号をつけたものを基準とする。
【0094】
HCVサブゲノムレプリコンRNAは、発現ベクターから転写する(発現させる)ことにより取得できる。HCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターの構築に関する基本技術は、Lohmannら、Science、1999年、第285巻、p.110−113及びKatoら、Gastroenterology、2003年、第125巻、p.1808−1817に記載されている。具体的には、例えば、5’側から3’側の方向に、5’非翻訳領域(5’UTR)、Coreタンパク質をコードする領域の57ヌクレオチド、外来遺伝子(薬剤耐性遺伝子又はレポーター遺伝子)、EMCV IRES配列、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードする塩基配列並びに3’非翻訳領域(3’UTR)の順に連結されたcDNAをT7プロモーターの下流に挿入することにより、HCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターを構築することができる。なお、各塩基配列の連結において、連結部位には制限酵素部位などの付加配列を含みうる。
【0095】
上記のHCVサブゲノムレプリコンRNAは、構築されたHCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターからポリメラーゼにより合成することができる。例えば、T7プロモーターの制御下にHCV cDNAをクローン化した核酸を鋳型として、in vitroでRNAを作製する方法として、MEGAscript T7 kit(Ambion社)などによる合成が挙げられる。このベクターから転写されたHCVサブゲノムレプリコンRNAは、細胞に導入されると自律複製する。本発明は、HCVサブゲノムレプリコンRNAが導入された細胞を包含する。
【0096】
プロモーターとしては、T7プロモーターだけでなく、SP6プロモーター、T3プロモーター、T5プロモーターなどの任意のプロモーターを用いることができるが、T7プロモーターが好ましい。
【0097】
ベクターとしては、pUC19(TaKaRa社)、pBR322(TaKaRa社)、pGEM−T、pGEM−T Easy、pGEM−3Z(いずれもPromega社)、pSP72(Promega社)、pCRII(Invitrogen社)、pT7Blue(Novagen社)などの各種ベクターを使用することができる。
【0098】
HCVサブゲノムレプリコンRNAを導入する細胞としては、HCVサブゲノムレプリコンRNAの複製を許容する細胞であればよく、上記のHCV感受性細胞が挙げられる。Huh7細胞又はHuh7細胞の派生株が特に好ましく使用される。
【0099】
HCVサブゲノムレプリコンRNAを細胞に導入する方法としては、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リン酸カルシウム共沈殿法、DEAEデキストラン法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法を挙げることができるが、好ましくはリポフェクション法及びエレクトロポレーション法が、さらに好ましくはエレクトロポレーション法が挙げられる。
【0100】
導入したHCVサブゲノムレプリコンRNAの複製能を評価する方法としては、HCVサブゲノムレプリコンRNAに連結された外来遺伝子の機能、すなわち該遺伝子の発現により表れる機能を測定することが挙げられる。外来遺伝子が薬剤耐性遺伝子の場合、薬剤を含有した選択培地で増殖する細胞数又は細胞のコロニー数を計測することにより、HCVサブゲノムレプリコンRNAの複製能を評価できる。この場合、細胞数又は細胞のコロニー数が多いほど複製能が高いと評価することができる。外来遺伝子が酵素の場合は、その酵素活性を計測することにより、HCVサブゲノムレプリコンRNAの複製能を評価できる。この場合、酵素活性が高いほど複製能が高いと評価することができる。また別の方法として、定量的RT−PCRにて複製したRNAの量を定量することによっても、HCVサブゲノムレプリコンRNAの複製能を直接評価することができる。
【0101】
本発明のHCVフルゲノムレプリコンRNAは、HCV全長ゲノムRNAそのものも包含するものであり、上記のHCVサブゲノムレプリコンRNAと同様の手順で作製することができる。本発明のHCVフルゲノムレプリコンRNAは、上記のHCVサブゲノムレプリコンRNAの複製能が向上する適応変異を、上記のHCVサブゲノムレプリコンRNAと同様に、遺伝子型3aの野生型のS310A株等のHCV全長ゲノムRNAに導入することで、HCVフルゲノムレプリコンRNAを作製してもよい。ここで、野生型のS310A株のHCV全長ゲノムRNAに、上記の適応変異が導入されたHCVゲノムを、S310A株変異体又は変異体S310A株と呼ぶ。
【0102】
変異の導入の方法としては、野生型のS310A株のHCV全長ゲノムに上記の方法を利用して変異を導入してもよく、サブゲノムレプリコン変異体に野生型のHCVゲノムの構造遺伝子部分を連結させることによって変異を導入してもよい。
【0103】
上記のHCVフルゲノムレプリコンRNAの一つの実施形態は、S310A株の全長ゲノムRNA(配列番号1)、すなわち、5’非翻訳領域(5’UTR)(配列番号2)、Coreタンパク質コード配列(配列番号3)、E1タンパク質コード配列(配列番号4)、E2タンパク質コード配列(配列番号5)、p7タンパク質コード配列(配列番号6)、NS2タンパク質コード配列(配列番号7)、NS3タンパク質コード配列(配列番号8)、NS4Aタンパク質コード配列(配列番号9)、NS4Bタンパク質コード配列(配列番号10)、NS5Aタンパク質コード配列(配列番号11)、NS5Bタンパク質コード配列(配列番号12)及び3’非翻訳領域(3’UTR)(配列番号13)を5’側から3’側に向かってこの順で含むレプリコンRNAである。
【0104】
上記のHCVフルゲノムレプリコンRNAの別の実施形態は、S310株の全長ゲノムRNAに、上記の適応変異が導入された核酸である。このHCVフルゲノムレプリコンRNAの好ましい実施形態としては、上記のS310A株の全長ゲノムRNA(配列番号1)、すなわち、5’非翻訳領域(5’UTR)(配列番号2)、Coreタンパク質コード配列(配列番号3)、E1タンパク質コード配列(配列番号4)、E2タンパク質コード配列(配列番号5)、p7タンパク質コード配列(配列番号6)、NS2タンパク質コード配列(配列番号7)、NS3タンパク質コード配列(配列番号8)、NS4Aタンパク質コード配列(配列番号9)、NS4Bタンパク質コード配列(配列番号10)、NS5Aタンパク質コード配列(配列番号11)、NS5Bタンパク質コード配列(配列番号12)及び3’非翻訳領域(3’UTR)(配列番号13)を5’側から3’側に向かってこの順で含む塩基配列において、T1286I、T2188A、R2198H、S2210I、T2496I、R2895G又はR2895Kの変異を含むRNAが挙げられる。好ましくは、S310A株の全長ゲノムRNA(配列番号1)、すなわち、5’非翻訳領域(5’UTR)、Coreタンパク質コード配列、E1タンパク質コード配列、E2タンパク質コード配列、p7タンパク質コード配列、NS2タンパク質コード配列、NS3タンパク質コード配列、NS4Aタンパク質コード配列、NS4Bタンパク質コード配列、NS5Aタンパク質コード配列、NS5Bタンパク質コード配列及び3’非翻訳領域(3’UTR)を5’側から3’側に向かってこの順で含む塩基配列において、R2198H、S2210I又はR2895Kの変異を含む核酸が挙げられる。
【0105】
HCVフルゲノムレプリコンRNAは、薬剤耐性遺伝子及び/又はレポーター遺伝子、並びにIRES配列をさらに含んでいてもよい。この際、5’非翻訳領域(5’UTR)の下流に、薬剤耐性遺伝子又は/及びレポーター遺伝子を、さらにその下流にIRES配列を、挿入することが好ましい。
【0106】
上記HCVフルゲノムレプリコンRNAのさらに好ましい実施形態としては、配列番号49(S2210Iの変異を含むフルゲノム塩基配列)、配列番号50(R2198Hの変異を含むフルゲノム塩基配列)又は、配列番号51(R2895Kの変異を含むフルゲノム塩基配列)に示される塩基配列を含むRNAが挙げられる。具体的には、配列番号49に示される、第2210位のセリンのイソロイシンへの置換を引き起こす変異を有する塩基配列からなる核酸、配列番号50に示される、第2198位のアルギニンのヒスチジンへの置換を引き起こす変異を有する塩基配列からなる核酸、又は、配列番号51に示される、第2895位のアルギニンのリジンへの置換を引き起こす変異を有する塩基配列からなる核酸が該当する。
【0107】
本発明のHCVフルゲノムレプリコンRNAを構成する核酸は、上記の変異を引き起こす塩基以外の塩基において、さらに他の変異を有しているが、上記の変異を含む核酸と同等の複製能をもたらす核酸であってもよい。そのような他の変異としては、1又は複数の塩基の欠失、置換又は付加が挙げられ、該他の変異を有する核酸は元の核酸の塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の塩基配列同一性を有することが好ましい。さらに、そのような他の変異としては、HCVゲノムの5’非翻訳領域内又は3’非翻訳領域内の1又は複数の塩基の欠失、置換又は付加が挙げられ、該他の変異を有する核酸は元の核酸の塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の塩基配列同一性を有することが好ましい。さらに、そのような他の変異としては、HCVゲノムのHCVタンパク質をコードする塩基配列(ウイルスタンパク質コード領域)内の1又は複数の塩基の欠失、置換又は付加が挙げられ、該他の変異を有する核酸は元の核酸の塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の塩基配列同一性を有し、かつ欠失又は付加の場合は、HCVタンパク質のアミノ酸配列に翻訳される読み枠がずれないことが好ましい。
【0108】
上記のHCVフルゲノムレプリコンRNAの作製に用いる発現ベクターは、国際公開第05/080575号に記載された技術を使用することで作製できる。具体的には、HCVの全長ゲノムRNAに対応するcDNAを、常法により再構築してプロモーターの下流に挿入して、DNAクローンを作製する。上記プロモーターは、プラスミドクローン中に含まれるものであることが好ましい。プロモーターとしては、T7プロモーター、SP6プロモーター、T3プロモーター、T5プロモーターなどを用いることができるが、T7プロモーターが好ましい。ベクターとしては、pUC19(TaKaRa社)、pBR322(TaKaRa社)、pGEM−T、pGEM−T Easy、pGEM−3Z(いずれもPromega社)、pSP72(Promega社)、pCRII(Invitrogen社)、pT7Blue(Novagen社)などを使用することができる。
【0109】
発現ベクターからHCVフルゲノムレプリコンRNAを作製するには、作製された上記DNAクローンを鋳型として、ポリメラーゼによりRNAを合成する。T7プロモーターの制御下にHCV cDNAをクローン化した核酸を鋳型として、in vitroでRNAを作製する場合は、MEGAscript T7 kit(Ambion社)などで合成することができる。RNA合成は、5’UTRから、常法により開始させることができる。DNAクローンがプラスミドクローンの場合には、プラスミドクローンから制限酵素によって切り出したDNA断片を鋳型として用いてRNAを合成することもできる。なお、合成されるRNAの3’末端がHCVゲノムRNAの3’UTRの末端と一致しており、他の配列が付加されたり削除されたりしないことが好ましい。
【0110】
上記のHCVフルゲノムレプリコンRNA又はその核酸は、培養細胞(典型的にはHCV感受性細胞)に導入されると自律複製し、HCV粒子(C型肝炎ウイルス)が産生されることとなり、また、上記のHCVフルゲノムレプリコンRNA又はその核酸をウイルスゲノムとして含有するHCV粒子を培養細胞(典型的にはHCV感受性細胞)に感染させると、HCV粒子が産生されることとなる。すなわち、上記のHCVフルゲノムレプリコンRNA若しくはその核酸が導入された培養細胞、又は、上記のHCVフルゲノムレプリコンRNA若しくはその核酸をウイルスゲノムとして含有するHCV粒子に感染された培養細胞は、HCV粒子の大量生産への利用が可能となる。
【0111】
より具体的には、上記のHCVフルゲノムレプリコンRNA若しくはその核酸が導入された培養細胞(典型的にはHCV感受性細胞)、又は、上記のHCVフルゲノムレプリコンRNA若しくはその核酸をウイルスゲノムとして含有するHCV粒子(C型肝炎ウイルス)に感染された培養細胞(典型的にはHCV感受性細胞)から産生されたHCV粒子は、さらに別の培養細胞(典型的にはHCV感受性細胞)に感染し、その細胞内でHCVのゲノムRNAが複製され、パッケージングされ、HCV粒子を繰り返し産生することを可能にする。HCV粒子の培養細胞への感染は、例えば、HCVフルゲノムレプリコンRNA又はその核酸を導入した培養細胞の培養上清を、HCV感受性細胞(例えば、Huh7細胞)に添加することで実施できる。
【0112】
上記のHCVフルゲノムレプリコンRNA若しくはその核酸を導入する細胞、又は、上記HCV粒子(C型肝炎ウイルス)を感染させる細胞としては、培養細胞が好ましく、それはHCVレプリコンRNAの複製やHCV粒子形成を許容する細胞であればよく、上記のHCV感受性細胞が挙げられる。Huh7細胞又はHuh7細胞の派生株が特に好ましく使用される。
【0113】
HCVフルゲノムレプリコンRNAを細胞に導入する方法としては、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リン酸カルシウム共沈殿法、DEAEデキストラン法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法を挙げることができるが、好ましくはリポフェクション法及びエレクトロポレーション法が、さらに好ましくはエレクトロポレーション法が挙げられる。
【0114】
導入したHCVフルゲノムレプリコンRNAの複製能を評価する方法としては、HCVフルゲノムレプリコンRNAに連結された外来遺伝子の機能、すなわち該遺伝子の発現により表れる機能を測定することが挙げられる。外来遺伝子が薬剤耐性遺伝子の場合、薬剤を含有した選択培地で増殖する細胞数又は細胞のコロニー数を計測することにより、HCVフルゲノムレプリコンRNAの複製能を評価できる。この場合、細胞数又は細胞のコロニー数が多いほど複製能が高いと評価することができる。外来遺伝子が酵素の場合は、その酵素活性を計測することにより、HCVフルゲノムレプリコンRNAの複製能を評価できる。この場合、酵素活性が高いほど複製能が高いと評価することができる。また別の方法として、定量的RT−PCRにて複製したRNAの量を定量することによっても、HCVフルゲノムレプリコンRNAの複製能を直接評価することができる。
【0115】
なお、本発明は、上記核酸を含むウイルスゲノム及び上記核酸をウイルスゲノムとして含有するC型肝炎ウイルス粒子(C型肝炎ウイルス)をも包含している。
【0116】
上記のHCVフルゲノムレプリコンRNA又はその核酸は、培養細胞においてHCV粒子産生能を有している。HCVフルゲノムレプリコンRNA又はその核酸が、HCV粒子産生能を有しているか否かを評価するには、該RNAを細胞に導入して、その細胞培養上清中のHCV粒子の存在を測定すればよい。
【0117】
細胞のHCV粒子産生能は、培養上清中に放出されたHCV粒子を構成するタンパク質、例えば、Coreタンパク質、E1タンパク質、又はE2タンパク質に対する抗体を用いて検出することができる。また、培養上清中のHCV粒子が含有するHCVフルゲノムレプリコンRNAを、特異的プライマーを用いたRT−PCR法により増幅して検出することによって、HCV粒子の存在を間接的に検出することもできる。
【0118】
産生されたHCV粒子が感染能を有しているか否かの評価方法としては、HCVフルゲノムレプリコンRNA又はその核酸を導入した細胞の培養上清を、HCV感受性細胞(例えば、Huh7細胞)に処理して、例えば48時間後に細胞を抗Core抗体で免疫染色して感染細胞数を数えるか、細胞の抽出物をSDS−ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動し、ウエスタンブロットにて、Coreタンパク質を検出することで判断できる。
【0119】
本発明はまた、遺伝子型3aのHCV(例えばS310A株)を含む2以上のC型肝炎ウイルス株のゲノムに由来するキメラ核酸も提供する。具体的には、遺伝子型3aのS310A株由来のゲノム配列と、S310A株のHCVゲノム(配列番号1)以外のHCVゲノム、例えば各種遺伝子型(1a、1b、2a、2b、3a、3bなど)のHCV既存株や遺伝子型3a以外の遺伝子型のHCVのゲノム配列とを含む、キメラ型のHCVゲノム(キメラHCVゲノム)、キメラ型のHCVサブゲノムレプリコンRNA(キメラHCVサブゲノムレプリコンRNA)、キメラ型のHCVフルゲノムレプリコンRNA(キメラHCVフルゲノムレプリコンRNA)及びキメラ型のHCV粒子(キメラHCV粒子)等を提供する。ここで、キメラHCVゲノム及びキメラHCVフルゲノムレプリコンRNAとは、それぞれ、2以上の異なる株のHCVのゲノム配列を含むHCVゲノム及びHCVフルゲノムレプリコンRNAをいい、これらキメラHCVゲノム又はキメラHCVフルゲノムレプリコンRNAから産生されるHCV粒子をキメラ型HCV粒子という。このようなキメラHCVゲノムも、本発明の核酸に含まれる。
【0120】
上記のキメラHCVゲノムは、S310A株又はS310A株変異体(適応変異が導入されたS310A株)の非構造遺伝子と、それ以外(S310A株及びS310A株変異体以外)のHCV株の構造遺伝子とを含む、HCVのキメラゲノムであってよい。上記のキメラHCVゲノムは適応変異等の変異を有してもよく、S310A株変異体を用いて作製するものでもよい。上記のキメラHCVゲノムに用いるS310A株変異体は、具体的には、S310A株にT1286I、T2188A、R2198H、S2210I、T2496I、R2895G又はR2895Kの変異を含み、好ましくはR2198H、S2210I又はR2895Kの変異を含む。さらに具体的には、S310A株変異体は、配列番号49(S2210Iの変異を含むフルゲノム塩基配列)、配列番号50(R2198Hの変異を含むフルゲノム塩基配列)又は、配列番号51(R2895Kの変異を含むフルゲノム塩基配列)に示される塩基配列を含む核酸であってよい。
【0121】
キメラHCVゲノムは、例えば、C型肝炎ウイルスのCoreタンパク質をコードする塩基配列、E1タンパク質をコードする塩基配列、E2タンパク質をコードする塩基配列及びp7タンパク質をコードする塩基配列に加えて、配列表の配列番号1における、塩基番号3437〜5329の配列からなるNS3タンパク質をコードする塩基配列、塩基番号5330〜5491の配列からなるNS4Aタンパク質をコードする塩基配列、塩基番号5492〜6274の配列からなるNS4Bタンパク質をコードする塩基配列、塩基番号6275〜7630の配列からなるNS5Aタンパク質をコードする塩基配列及び塩基番号7631〜9406の配列からなるNS5Bタンパク質をコードする塩基配列を、5’側から3’側に向かって、この順で含んでもよい。
【0122】
本発明のキメラHCVゲノムはまた、例えば、S310A株以外のC型肝炎ウイルスのゲノム(例えばC型肝炎ウイルスの既存株のゲノム又は遺伝子型3a以外の遺伝子型のHCVのゲノム)のCoreタンパク質をコードする塩基配列、E1タンパク質をコードする塩基配列、E2タンパク質をコードする塩基配列及びp7タンパク質をコードする塩基配列と、
配列表の配列番号1の塩基番号2786〜3436の配列からなるNS2タンパク質をコードする塩基配列、S310A株以外のC型肝炎ウイルスのゲノム(例えばC型肝炎ウイルスの既存株のゲノム又は遺伝子型3a以外の遺伝子型のHCVのゲノム)のNS2タンパク質をコードする塩基配列、又は、配列表の配列番号1の塩基番号2786〜3436の配列からなるNS2タンパク質をコードする塩基配列の一部とS310A株以外のC型肝炎ウイルスのゲノム(例えばC型肝炎ウイルスの既存株のゲノム又は遺伝子型3a以外の遺伝子型のHCVのゲノム)のNS2タンパク質をコードする塩基配列の一部とが連結されたキメラ型のNS2タンパク質をコードする塩基配列と、
配列表の配列番号1における、塩基番号3437〜5329の配列からなるNS3タンパク質をコードする塩基配列、塩基番号5330〜5491の配列からなるNS4Aタンパク質をコードする塩基配列、塩基番号5492〜6274の配列からなるNS4Bタンパク質をコードする塩基配列、塩基番号6275〜7630の配列からなるNS5Aタンパク質をコードする塩基配列及び塩基番号7631〜9406の配列からなるNS5Bタンパク質をコードする塩基配列とが、
5’側から3’側に向かって、Coreタンパク質、E1タンパク質、E2タンパク質、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質、をコードする塩基配列の順で含まれている、核酸であってもよい。
【0123】
本発明のキメラHCVゲノムは、遺伝子型3aのHCVゲノムの5’非翻訳領域、例えば配列番号1の塩基番号1〜340の塩基配列を含む5’非翻訳領域を5’末端に含んでもよいし、その代わりに、S310A株のHCVゲノム(配列番号1)以外のHCVゲノム、例えば各種遺伝子型のHCV既存株のゲノムや遺伝子型3a以外の遺伝子型のC型肝炎ウイルスゲノムの5’非翻訳領域を5’末端に含んでもよい。
【0124】
このようなキメラHCVゲノムの例は図16に示されており、例えば、J6CF株、JFH−1株又はTH株の5’非翻訳領域、構造遺伝子(Core〜p7)とそのNS2遺伝子のN末端側の一部(例えばNS2タンパク質のN末端から第1〜第16番目のアミノ酸配列をコードする配列)、及びS310A株のNS2遺伝子のそれに引き続くC末端側の配列(例えばNS2タンパク質のN末端から第17〜第217番目のアミノ酸配列をコードする配列)とNS2遺伝子以外の非構造遺伝子(NS3〜NS5B)と3’非翻訳領域とを含むものが挙げられる。これらはT1286I、T2188A、R2198H、S2210I、T2496I、R2895G又はR2895Kの変異を含んでもよい。
【0125】
本発明は、これらのキメラHCVゲノムを含むキメラフルゲノムレプリコンRNAも提供する。
【0126】
キメラHCVゲノムの作製は、例えば、S310A株変異体のゲノムの構造遺伝子であるCoreタンパク質、E1タンパク質、E2タンパク質及びp7タンパク質のコード配列を、他のHCV株の構造遺伝子と組換えることにより作製することができる。この基本技術は、例えば、Wakitaら、Nature Medicine、2005年、第11巻、p.791−796; Lindenbachら、Science、2005年、第309巻、p.623−626; Pietschmannら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、2007年、第103巻、p.7408−7413に記載されている。
【0127】
HCV株の塩基配列を用いた系統解析法では、HCVは遺伝子型1から遺伝子型6までの6タイプに分類され、さらにそれら各タイプがいくつかのサブタイプに分類される。既に知られているHCVの既存株の例としては、具体的には、遺伝子型1aのHCV株としては、H77株(GenBank アクセッション番号AF011751)、遺伝型1b型のHCV株としては、J1株(GenBank アクセッション番号D89815)、Con1株(GenBank アクセッション番号AJ238799、Con−1株、con1株と称することもある)、TH株(Wakitaら、The Journal ofBiological Chemistry、1994年、第269巻、p.14205−14210; 特開2004−179号公報)、HCV−N株(GenBank アクセッション番号AF139594)及びHCV−O株(GenBank アクセッション番号AB191333)、遺伝子型2aのHCV株としては、JFH−1株(GenBank アクセッション番号AB047639、JFH1株と称することもある)、J6CF株(GenBank アクセッション番号AF177036)、JCH−1株(GenBank アクセッション番号AB047640)、JCH−2株(GenBank アクセッション番号AB047641)、JCH−3株(GenBank アクセッション番号AB047642)、JCH−4株(GenBank アクセッション番号AB047643)、JCH−5株(GenBank アクセッション番号AB047644)及びJCH−6株(GenBank アクセッション番号AB047645)が知られている。さらに遺伝子型2bのHCV株としては、HC−J8株(GenBank アクセッション番号D01221)などが、遺伝子型3aのHCV株としてはNZL1株(GenBank アクセッション番号D17763)、K3a/650株(GenBank アクセッション番号D28917)、S52株(GenBank アクセッション番号GU814263)などが、遺伝子型3bのHCV株としては、Tr−Kj株(GenBank アクセッション番号D49374)などが、遺伝子型4aのHCV株としては、ED43株(GenBank アクセッション番号Y11604)などが知られている。その他の株についても既にGenBankアクセッション番号のリストが報告されている(Tokitaら、Journal of General Virology、1998年、第79巻、p.1847−1857; Cristina,J.& Colina,R.、Virology Journal、2006年、第3巻、p.1−8)。
【0128】
上記のキメラHCVゲノムは、一実施形態では、S310A株変異体以外のHCV株由来のCoreタンパク質、E1タンパク質、E2タンパク質及びp7タンパク質、S310A株変異体又はS310A株変異体以外のHCV株由来のNS2タンパク質、並びに、S310A株変異体由来のNS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするそれぞれの塩基配列を、5’側から3’側に向かって、Coreタンパク質、E1タンパク質、E2タンパク質、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードする塩基配列の順序で配置してなるHCV由来のキメラ遺伝子を含む、核酸である。また、上記のNS2タンパク質は、S310A株変異体のNS2タンパク質とS310A株及びその変異体以外のHCV株由来のNS2タンパク質とのキメラ型のNS2タンパク質(キメラNS2タンパク質)であってもよい。ここで、HCVのS310A株以外でありS310A株変異体以外でもあるHCV株は、好ましくは上記のHCVの既存株である。
【0129】
ここでキメラNS2タンパク質は、S310A株変異体のNS2タンパク質のアミノ酸配列の一部とS310A株及びS310A株変異体以外のHCV株由来のNS2タンパク質のアミノ酸配列の一部が連結し、全体としてNS2の全長アミノ酸配列からなるNS2タンパク質をいう。上記のキメラHCVゲノムの核酸において、NS2タンパク質は、S310A株変異体由来であってもよいし、又は、S310A株変異体以外のHCV株由来のNS2タンパク質の一部と、S310A株変異体由来のNS2タンパク質の残部からなるキメラNS2タンパク質であってもよい。この場合、該キメラNS2タンパク質はキメラではないNS2タンパク質と同様の機能を有するものである。例えば、S310A株変異体以外のHCV株由来のNS2タンパク質の一部が、NS2タンパク質のN末端のアミノ酸残基から第16番目のアミノ酸残基までをコードする塩基配列からなる場合、S310A株及びその変異体由来のNS2タンパク質の残部は、N末端から第17番目のアミノ酸残基からC末端のアミノ酸残基までをコードする塩基配列からなる。
【0130】
上記のキメラHCVゲノムの核酸はさらに、上記Coreタンパク質をコードする塩基配列の5’側に5’UTR及び、上記NS5Bタンパク質をコードする領域の3’側に3’UTRを含むことが好ましい。5’UTR及び/又は3’UTRは、任意のHCV株由来の配列でよいが、好ましくは、S310A株変異体以外のHCV株由来の5’UTRと、S310A株変異体由来の3’UTRである。
【0131】
上記のキメラHCVゲノムにおいて、S310A株変異体以外のHCV株、即ちHCVの既存株は、遺伝子型1a、1b又は2aに属する株が好ましい。遺伝子型1aに属する株には、例えばH77株が含まれる。遺伝子型1bに属する株には、例えばTH株、Con1株、J1株及びそれらの派生株が含まれる。遺伝子型2aに属する株には、例えばJFH−1株、J6CF株などが含まれる。好ましい株は、JFH−1株、J6CF株又はTH株であり、特に好ましくは、JFH−1株である。なお、S310A株及びその変異体以外のHCV株のゲノム塩基配列情報は、上記の文献又はGenBankから入手可能である。
【0132】
上記のキメラHCVゲノムの核酸は、例えば、J6CF株とS310A株とに由来するキメラ核酸であり、かつ、T1286I、S2210I、R2198H及びR2895Kからなる群より選択される少なくとも1つの変異を含んでいる。上記のキメラHCVゲノムの核酸は、例えば、JFH−1株とS310A株とに由来するキメラ核酸であり、かつ、T1286I、S2210I、R2198H及びR2895Kからなる群より選択される少なくとも1つの変異を含んでいる。上記のキメラHCVゲノムの核酸は、例えば、TH株とS310A株とに由来するキメラ核酸であり、かつ、T1286I、S2210I、R2198H及びR2895Kからなる群より選択される少なくとも1つの変異を含んでいる。
【0133】
図16に、S310A株変異体(R2198H、S2210I又はR2895Kの適応変異が導入されたS310A株)、J6CF株、JFH−1株及びTH株のHCVのHCVゲノムの構造、並びに、キメラ核酸の例として、S310A株変異体(R2198H、S2210I又はR2895Kの適応変異が導入されたS310A株)の非構造遺伝子とJ6CF株、JFH−1株又はTH株の構造遺伝子とを含む、キメラHCVゲノム(それぞれJ6CF/S310A、JFH−1/S310A、TH/S310A)の構造を示す。図16に示すキメラ核酸J6CF/S310A、JFH−1/S310A、TH/S310Aにおいては、5’非翻訳領域は構造領域と同じHCV株(それぞれJ6CF株、JFH−1株又はTH株)由来であり、3’非翻訳領域は非構造領域と同じS310A株由来であり、NS2コード配列は、構造領域と同じHCV株(それぞれJ6CF株、JFH−1株又はTH株)由来のNS2配列とS310A株由来のNS2配列とのキメラである。これらのキメラ核酸は、R2198H、S2210I又はR2895Kの適応変異を有する。
【0134】
本発明は、上記のキメラHCVゲノムの核酸を含むHCVウイルスゲノム、上記のキメラHCVゲノムの核酸をウイルスゲノムとして含むC型肝炎ウイルス、HCVフルゲノムレプリコンRNA、発現ベクター又はキメラHCV粒子を提供する。このキメラHCV粒子は、細胞培養系において高効率で産生可能であり、また高い感染性を有しているという特徴をもつ。
【0135】
キメラHCV遺伝子は、各HCVゲノムRNAのcDNAをクローン化したベクターを鋳型にして、合成DNAをプライマーとしてPCRを行い、それぞれのHCV遺伝子の必要な領域を増幅し、連結することにより作製することができる。
【0136】
さらに、キメラHCV遺伝子cDNAを、T7プロモーターなどのプロモーターの下流の適切な制限酵素サイトに連結し、HCVゲノムRNAを合成するための発現ベクターを作製することができる。この発現ベクターから転写されたRNAをHCV感受性細胞(例えば、Huh7細胞など)に導入すると、ウイルスの複製及びパッケージングが起こり、感染性HCV粒子を産生することができる。
【0137】
上記キメラHCV遺伝子を含むHCVフルゲノムレプリコンRNAが細胞内で複製能を有することや、HCV粒子産生能を有すること、産生されたHCV粒子の感染性は、上記の方法で確認できる。
【0138】
本発明は、上記のHCVサブゲノムレプリコンRNA、HCVフルゲノムレプリコンRNA又はC型肝炎ウイルス粒子を用いた、抗C型肝炎ウイルス物質のスクリーニング方法も提供する。
【0139】
上記のHCVサブゲノムレプリコンRNAを導入した培養細胞は、HCVサブゲノムレプリコンRNAの複製を阻害する化合物のスクリーニングに使用することができる。すなわち、被験物質の存在下で、上記のHCVサブゲノムレプリコンRNAを導入した培養細胞を培養し、得られる培養物中のレプリコンRNAを検出することにより、抗HCV物質をスクリーニングすることができる。ここで、培養物とは培養上清や細胞破砕物を含む。この場合、培養物中にレプリコンRNAが存在しないか、あるいは被験物質の非存在下に比べ少ない場合に、上記被験物質はHCVサブゲノムレプリコンRNAの複製を阻害し得ると判定することができる。
【0140】
例えば、5’側から3’側の方向に、上記S310A株又はその変異体の、5’非翻訳領域(5’UTR)(配列番号2)、Coreタンパク質コード配列(配列番号3)の57ヌクレオチド、ルシフェラーゼ遺伝子、EMCV IRES配列、NS3タンパク質コード配列(配列番号8)、NS4Aタンパク質コード配列(配列番号9)、NS4Bタンパク質コード配列(配列番号10)、NS5Aタンパク質コード配列(配列番号11)、NS5Bタンパク質コード配列(配列番号12)及び3’非翻訳領域(3’UTR)(配列番号13)の順に連結されたRNAからなるHCVサブゲノムレプリコンRNAをHuh7細胞に導入し、引き続いて、被験物質を添加し、48〜72時間後にルシフェラーゼの活性を測定する。被験物質未添加と比較してルシフェラーゼ活性を抑制し得る被験物質は、HCVサブゲノムレプリコンRNAの複製を抑制する作用があると判定できる。
【0141】
上記HCVフルゲノムレプリコンRNA又はその核酸を培養細胞(典型的にはHCV感受性細胞)に導入等して得られるHCV粒子(キメラHCV粒子を含む)は、HCVの感染を阻害する中和抗体や化合物及びHCVの複製を阻害する化合物のスクリーニングに使用することができるほか、ワクチンとしての用途、抗HCV抗体作製のための抗原としての用途に好適に用いることができる。
【0142】
上記HCV粒子を、HCVの感染や複製を阻害する物質のスクリーニングに使用するには、被験物質の存在下又は非存在下で、上記HCV粒子を産生する細胞を培養するか、又は上記HCV粒子をHCV感受性細胞と培養し、すなわちHCV粒子とHCV感受性細胞の混合物を培養し、あるいは、上記HCV粒子が感染したHCV感染細胞を培養し、得られる培養物中のHCVレプリコンRNA又はHCV粒子を検出する方法が挙げられる。ここで、検出とは培養物中のHCVレプリコンRNA又はHCV粒子の量を定量することをいう。この場合、培養物中にHCVレプリコンRNA及びHCV粒子が存在しないか、あるいは被験物質の非存在下に比べ少ない場合に、上記被験物質はHCVの感染や複製を阻害し得ると評価することができる。
【0143】
具体的には、例えば、被験物質の存在下及び非存在下で、上記HCV粒子とともにHCV感受性細胞を培養し、得られる培養物中のHCVレプリコンRNA又はHCV粒子を検出し、その被験物質がHCVレプリコンRNAの複製又はHCV粒子の形成を抑制するかどうかを判定することにより、抗HCV物質をスクリーニングすることができる。
【0144】
培養物中のHCVレプリコンRNAの検出は、HCVレプリコンRNAに連結された外来遺伝子の機能、すなわち該遺伝子の発現により表れる機能を測定することが挙げられる。例えば、外来遺伝子が酵素の場合は、その酵素活性を計測することにより、HCVレプリコンRNAを検出できる。また別の方法として、定量的RT−PCRにて複製したRNAの量を定量することによっても、HCVレプリコンRNAを検出することができる。
【0145】
培養物中のHCV粒子の存在を検出するには、培養上清中に放出されたHCV粒子を構成するタンパク質(例えば、Coreタンパク質、E1タンパク質又はE2タンパク質)に対する抗体を用いて検出するか、感染細胞中の非構造タンパク質の存在を非構造タンパク質に対する抗体で免疫染色を行い検出するか、又は、培養上清中のHCV粒子が含有するHCVゲノムRNAを、特異的プライマーを用いたRT−PCR法により増幅して検出することによって、HCV粒子の存在を間接的に検出することもできる。
【0146】
また、スクリーニングに用いるHCVフルゲノムレプリコンRNAが外来遺伝子を含む場合として、具体的には例えば、S310A株変異体のHCVの、5’UTR、Coreタンパク質コード配列の57ヌクレオチド、ルシフェラーゼ遺伝子、EMCV IRES配列、Coreタンパク質コード配列、E1タンパク質コード配列、E2タンパク質コード配列、p7タンパク質コード配列、NS2タンパク質コード配列、NS3タンパク質コード配列、NS4Aタンパク質コード配列、NS4Bタンパク質コード配列、NS5Aタンパク質コード配列、NS5Bタンパク質コード配列及び3’UTRが、5’側から3’側の方向に順に連結されたRNAからなるHCVフルゲノムレプリコンRNAが挙げられる。なお、各塩基配列の連結において、連結部位には制限酵素部位などの付加配列を含みうる。上記HCVフルゲノムレプリコンRNAをHuh7細胞に導入し、HCV粒子を得て、該HCV粒子をHCV感受性細胞に感染させると同時に、被験物質を添加し、48〜72時間後にルシフェラーゼの活性を測定する。被験物質未添加と比較してルシフェラーゼ活性を抑制する物質はHCVの感染を抑制する作用があると判定できる。上記方法では、抗HCV物質は、ウイルス感染又は複製を抑制可能なものとして選択される。
【0147】
また、上記方法において、上記HCVフルゲノムレプリコンRNA又はその核酸を含むウイルスゲノム及び、上記HCVフルゲノムレプリコンRNA又はその核酸をウイルスゲノムとして含有するC型肝炎ウイルスを用いることもできる。
【0148】
さらに、本発明は、上記C型肝炎ウイルス粒子(HCV粒子)を含有するC型肝炎ウイルスワクチン(HCVワクチン)を提供する。
【0149】
ワクチンとしての用途では、具体的には、上記HCV粒子又はその一部分をそのままワクチンとして使用することもできるが、当該分野で既知の方法により弱毒化又は不活化して用いることが好ましい。ウイルスの不活化は、ホルマリン、β−プロピオラクトン、グルタルジアルデヒド等の不活化剤を、例えば、ウイルス浮遊液に添加混合し、ウイルスと反応させることにより達成することができる(Appaiahgari,M.B.&Vrati,S.、Vaccine、2004年、第22巻、p.3669−3675)。
【0150】
上記HCVワクチンは、溶液又は懸濁液のいずれかとして、投与可能に調製され得る。あるいは、使用直前に再構成可能なように、液体中の溶解又は懸濁に適した固形物(例えば凍結乾燥調製物)の形態で調製することができる。そのような固形物又は調製物は、乳濁されてもよいし、又はリポソームにカプセル化されてもよい。
【0151】
HCV粒子などの活性免疫原性成分は、薬学的に許容可能であって、活性成分に適合した賦形剤がしばしば混合され得る。適切な賦形剤には、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、又はそれらの混合物がある。
【0152】
さらに、所望であれば、上記HCVワクチンは、少量の補助剤(例えば、加湿剤又は乳化剤)、pH緩衝剤、及び/又はワクチンの効能を高めるアジュバントを含有し得る。
【0153】
アジュバントは、該免疫系の非特異的刺激因子である。それらは、上記HCVワクチンに対する宿主の免疫応答を増強する。したがって、好ましい形態においては、上記HCVワクチンはアジュバントを含む。アジュバントの効能は、HCV粒子から構成されるワクチンを投与することにより生じる抗体の量を測定することにより決定され得る。
【0154】
有効であり得るアジュバントの例は、限定されないが、以下を包含する。水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637、nor−MDPと称せられる)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、MTP−PEと称せられる)及びRIBI。RIBIは、バクテリアから抽出した3成分、すなわちモノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレート及び細胞壁骨格(HPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/Tween(登録商標)80エマルジョン中に含有している。
【0155】
所望により、アジュバント活性を有する1以上の化合物を上記HCVワクチンに加えることができる。当技術分野で公知のアジュバントの具体例としては、フロイント完全アジュバント及びフロイント不完全アジュバント、ビタミンE、非イオンブロック重合体、ムラミルジペプチド、サポニン、鉱油、植物油及びCarbopolが挙げられる。粘膜適用に特に適したアジュバントとしては、例えば、大腸菌(E.coli)易熱性毒素(LT)又はコレラ(Cholera)毒素(CT)が挙げられる。他の適当なアジュバントとしては、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム又は酸化アルミニウム、油性乳剤(例えば、Bayol(登録商標)又はMarcol 52(登録商標))、サポニン又はビタミンEソリュビリゼートが挙げられる。
【0156】
上記HCVワクチンは、通常、非経口的に、例えば皮下注射又は筋肉内注射のような、注射により投与される。他の投与態様に適切な別の処方としては、坐薬、及びある場合には経口処方薬が挙げられる。
【0157】
皮下、皮内、筋肉内、静脈内に投与する注射剤において、上記HCVワクチンと医薬上許容される担体又は希釈剤の具体例としては、安定化剤、炭水化物(例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、ショ糖、グルコース、デキストラン)、アルブミン又はカゼインなどのタンパク質、ウシ血清又は脱脂乳などのタンパク質含有物質、及びバッファー(例えば、リン酸バッファー)が挙げられる。
【0158】
坐薬に使用される従来の結合剤及び担体としては、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドが含まれ得る。このような坐薬は、活性成分を0.5%〜50%までの範囲で、好ましくは1%〜20%までの範囲で含有する混合物から形成され得る。経口処方薬は、通常用いられる賦形剤を含有する。この賦形剤としては、例えば、薬学的なグレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0159】
上記HCVワクチンは、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出処方剤、又は粉末剤の形態をとり、10%〜95%、好ましくは25%〜70%の活性成分(HCV粒子又はその一部分)を含有する。このHCVワクチンは、投与剤形に適した方法で、そして予防及び/又は治療効果を有するような量で投与される。投与されるべき抗原量は、通常投与当たり0.01μg〜100,000μgまでの範囲であるが、これは、投与される患者、その患者の免疫系での抗体合成能、及び所望の防御の程度に依存する。また、経口、皮下、皮内、筋肉内、静脈内投与経路などの投与経路にも依存する。
【0160】
また、上記HCVワクチンは、単独投与スケジュールで又は複合投与スケジュールで与えられ得る。好ましくは、複合投与スケジュールである。複合投与スケジュールでは、接種の開始時期に1〜10の個別の投与を行い、続いて免疫応答を維持する及び/又は強化するのに必要とされる時間間隔で、例えば2回目の投与として1〜4ヵ月後に、別の投与を行い得る。必要であれば、数ヶ月後に引き続き投与を行い得る。投与のレジメもまた、少なくとも部分的には、個体の必要性により決定され、医師の判断に依存する。上記HCVワクチンは、健常人に投与し、健常人にHCVに対する免疫応答を誘導し、新たなHCV感染に対して予防的に使用する方法がある。さらに、HCVに感染した患者に投与し、生体内にHCVに対する強い免疫反応を誘導することにより、HCVを排除する治療的ワクチンとしての使用方法がある。
【0161】
さらに、上記HCV粒子は、抗HCV抗体作製のための抗原として有用である。上記HCV粒子を、哺乳類又は鳥類に投与することにより、抗体を作製することができる。哺乳類動物として、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウシ、モルモット、ヒトコブラクダ、フタコブラクダ、ラマなどを挙げることができる。ヒトコブラクダ、フタコブラクダ及びラマはH鎖のみからなる抗体を作製するには好適である。鳥類動物としては、ニワトリ、ガチョウ、ダチョウなどを挙げることができる。上記HCV粒子を投与された動物の血清を採取して、既知の方法に従って抗体を取得することができる。
【0162】
本発明はこれらの抗HCV抗体も提供し、好ましくはこの抗HCV抗体は、HCVを不活化し得る中和抗体として利用できる。
【0163】
上記HCV粒子を免疫した動物の細胞を用いて、モノクローナル抗体産生細胞を産生するハイブリドーマを作製することができる。ハイブリドーマを製造する方法は周知であり、Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory、1988年)に記載された方法を用いることができる。
【0164】
モノクローナル抗体産生細胞は、細胞融合により作製してもよく、また癌遺伝子DNAの導入やEpstein−Barrウイルスの感染によりBリンパ球を不死化させるような他の方法で作製してもよい。
【0165】
これらの方法によって得られたモノクローナル抗体や、ポリクローナル抗体はHCVの診断や治療、予防に有用である。
【0166】
上記HCV粒子を抗原として用いて作製された抗体は、医薬として、医薬上許容される溶解剤、添加剤、安定剤、バッファーなどとともに投与され得る。投与経路はいずれの投与経路でもよいが、好ましくは、皮下、皮内、筋肉内投与であり、より好ましくは、静脈内投与が好ましい。
【0167】
本発明は上記のような本発明のワクチン又は抗体を治療が必要な被験体に投与することを含むHCVの治療又は予防方法も提供する。
【0168】
本発明はまた、本発明に係るワクチン又は抗体を含む医薬組成物も提供する。この医薬組成物は、溶解剤、添加剤、安定剤、バッファー等の製薬上許容される担体を含んでもよい。
【実施例】
【0169】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、これらの実施例は説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
【0170】
(実施例1)野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターの構築
遺伝子型3aのHCVに感染した71歳の急性C型肝炎患者からHCVウイルス株を単離し、S310A株と名付けた。この患者は、59歳のときに遺伝子型3aのHCVに感染していると診断され、4年後に肝硬変により、肝臓移植を受けていた。具体的には、患者血清からIsogen−LS(Nippon Gene社)を用いてRNAを抽出精製し、ランダムヘキサマープライマーでcDNAを合成した。既知の4種類の遺伝子型3aのHCVゲノムの保存された配列(GenBankアクセッション番号AF046866、D28917、X76918、及びD17763)を元にPCRプライマーを設計し、合成したcDNAを用いて、9つのフラグメントに分けてcDNAを増幅した。増幅産物が得られにくい5’末端の配列は5’RACE法を用いて増幅産物を得た。それぞれのフラグメントはシークエンス用クローニングベクター、pGEM−T EASY(Promega社)中にクローン化した。常法により、これらのクローンの塩基配列を解析し、S310A株の全長ゲノムRNA配列を決定した。この全長ゲノムRNAに対応するcDNA断片を常法により合成した。S310A株の全長ゲノムRNA配列に対応するcDNA配列を配列番号1に示す。
【0171】
以上のようにして得られた急性C型肝炎の患者から分離された新規な遺伝子型3aのHCV株であるS310A株の、全長ゲノムRNAに対応するcDNA(全長ゲノムcDNA;配列番号1)の非構造領域を用いて、以下のようにして、HCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターであるプラスミドpS310ASGR−Neoを構築した。S310A株の全長ゲノムRNA、HCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターpS310ASGR−Neo、及びその発現ベクターから発現されるHCVサブゲノムレプリコンRNAの構造を図1に示す。なお、アミノ酸変異を含む変異体と区別するために、本発明ではアミノ酸変異を含まないS310A株を野生型S310A株と呼ぶ。
【0172】
野生型S310A株の全長ゲノムの塩基配列を、配列番号1に示す。また、S310A株の5’UTRの塩基配列を配列番号2、Coreタンパク質コード配列を配列番号3、E1タンパク質コード配列を配列番号4、E2タンパク質コード配列を配列番号5、p7タンパク質コード配列を配列番号6、NS2タンパク質コード配列を配列番号7、NS3タンパク質コード配列を配列番号8、NS4Aタンパク質コード配列を配列番号9、NS4Bタンパク質コード配列を配列番号10、NS5Aタンパク質コード配列を配列番号11、NS5Bタンパク質コード配列を配列番号12、3’UTRの塩基配列を配列番号13に、それぞれ示す。なお配列番号1〜13にはDNA配列を記載しているが、RNA配列を意図する場合には各配列番号に示される塩基配列中のチミン(t)をウラシル(u)に読み替える。
【0173】
配列番号1の塩基配列(野生型S310A株の全長ゲノム配列)によってコードされるHCV前駆体タンパク質(ポリプロテイン)のアミノ酸配列を配列番号14に示す。配列番号14に示されるアミノ酸配列は、配列番号1の塩基配列の塩基番号341〜9406(終止コドンを含む)にコードされている。また、S310A株の前駆体タンパク質中のNS3タンパク質からNS5Bタンパク質までの領域のアミノ酸配列を配列番号15に示す。この配列番号15のアミノ酸配列(NS3〜NS5B領域)は、配列番号14に示されるアミノ酸配列のアミノ酸1033番目〜3021番目に対応する。
【0174】
HCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターpS310ASGR−Neoの構築は、Katoらの文献(Gastroenterology、2003年、第125巻、p.1808−1817)及び国際公開第04/104198号に示される手順に基づいて行った。
【0175】
具体的には、まず、野生型S310A株の全長ゲノムRNA(図1A)のcDNAを、プラスミドベクターpUC19中のT7プロモーターの制御下に挿入し、組換えプラスミドpS310Aを作製した。次いで、組換えプラスミドpS310Aの構造領域(Coreタンパク質、E1タンパク質、E2タンパク質及びp7タンパク質をコードする)と非構造領域の一部を、ネオマイシン耐性遺伝子(neo:ネオマイシンホスホトランフェラーゼ遺伝子とも称する)、及びEMCV IRES(脳心筋炎ウイルスの内部リボゾーム結合部位)で置換することにより、プラスミドpS310ASGR−Neoを構築した。これを、HCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターpS310ASGR−Neoと名付けた。
【0176】
図1Bは、HCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターpS310ASGR−Neoの構造を示している。発現ベクターpS310ASGR−Neoにおいて、5’UTR、Coreタンパク質コード配列のN末端から57ヌクレオチド(HCV IRES)、NS3〜NS5Bタンパク質コード配列及び3’UTRが、S310A株に由来する配列である。図中、「T7」はT7プロモーターを意味する。T7プロモーターは、それぞれの発現ベクターからT7 RNAポリメラーゼを用いてHCVサブゲノムレプリコンRNAを転写させるために必要な配列エレメントである。「neo」はネオマイシン耐性遺伝子、「EMCV IRES」は脳心筋炎ウイルスの内部リボソーム結合部位を示す。「C」はCoreタンパク質コード配列、「E1」はE1タンパク質コード配列、「E2」はE2タンパク質コード配列、「p7」はp7タンパク質コード配列、「NS2」はNS2タンパク質コード配列、「NS3」はNS3タンパク質コード配列、「4A」はNS4Aタンパク質コード配列、「4B」はNS4Bタンパク質コード配列、「NS5A」はNS5Aタンパク質コード配列及び「NS5B」はNS5Bタンパク質コード配列を示す。発現ベクターpS310ASGR−Neoから作製されるHCVサブゲノムレプリコンRNA(S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNA)は、図1Cに示すように、T7プロモーターより下流の領域が転写されたRNAである。また、図中の「EcoRI」、「PmeI」、「SnaBI」及び「XbaI」は制限酵素サイトを示す。なお、図9、10、12、14、16においても図中の表記は同様である。
【0177】
発現ベクターpS310ASGR−NeoはT7プロモーターの下流にS310AサブゲノムレプリコンRNAのcDNAが連結されている。S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAのcDNA塩基配列を配列番号16に示した。
【0178】
(実施例2)野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAの作製
実施例1で構築した発現ベクターpS310ASGR−Neoを、制限酵素XbaIで切断した。次いで、XbaI切断断片 10〜20μgに、Mung Bean Nuclease 20U(トータル反応液量 50μL)を加えて30℃で30分間インキュベートした。Mung Bean Nucleaseは、二本鎖DNA中の一本鎖部分を選択的に分解して平滑化する反応を触媒する酵素である。通常、上記XbaI切断断片をそのまま鋳型DNAとして用いてRNAポリメラーゼによるRNA転写を行うと、XbaIの認識配列の一部であるCUAGの4塩基が3’末端に余分に付加されたレプリコンRNAが合成されてしまう。そこで本実施例では、XbaI切断断片をMung Bean Nucleaseで処理することにより、XbaI切断断片からCTAGの4塩基を除去した。
【0179】
次いで、XbaI切断断片を含むMung Bean Nuclease処理後溶液について、常法に従ったタンパク質除去処理を行うことにより、CTAGの4塩基が除去されたXbaI切断断片を精製し、これを次の反応で用いる鋳型DNAとした。この鋳型DNAから、Ambion社のMEGAscript(登録商標)を用いて、T7プロモーターを利用した転写反応によりRNAをin vitro合成した。具体的には、鋳型DNAを0.5〜1.0μg含む反応液20μLを製造業者の使用説明書に基づいて調製し、37℃で3時間〜16時間反応させた。
【0180】
RNA合成終了後、反応溶液にDNase I(2U)を添加して37℃で15分間反応させることにより鋳型DNAを除去し、さらに酸性フェノールによるRNA抽出を行うことにより、pS310ASGR−Neoから転写された野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNA(図1C)(配列番号16)を取得した。
【0181】
(実施例3)S310A株のHCVサブゲノムレプリコン複製細胞クローンの樹立
実施例2で作製した野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNA(1μg、3μg、10μg又は30μg)をエレクトロポレーション法によりHuh7細胞に導入した。エレクトロポレーション処理を行ったHuh7細胞(3×10個)を培養ディッシュに播種し、16時間〜24時間培養した後に、培養ディッシュにG418(ネオマイシン)を添加した。その後、週に2回培養液を交換しながら培養を継続した。
【0182】
播種時から21日間培養した後、クリスタルバイオレットで生存細胞を染色した。その結果、10μg及び30μgのS310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAを導入した細胞について、コロニー形成が確認できた(図2)。コロニー形成は、その細胞においてHCVサブゲノムレプリコンRNAが複製されていることを示している。この結果、野生型S310A株のゲノム非構造領域を用いて作製したHCVサブゲノムレプリコンRNAが、培養細胞での自律複製能を有していることが示された。
【0183】
コロニー形成が認められた上記HCVサブゲノムレプリコンRNA導入細胞について、上記の培養21日後の培養ディッシュから、生存細胞のコロニーをさらにクローン化し、培養を継続した。このようなコロニーのクローニングにより、細胞クローンを10株樹立することができた。これらの細胞クローンを、S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞と名付け、また、各クローンにクローン番号(番号:1〜10)を付けた。こうして樹立された細胞クローンにおいては、導入されたS310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAが自律複製している。
【0184】
(実施例4)S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞内のHCVサブゲノムレプリコンRNAのコピー数の定量
樹立した10クローン(クローン番号:1〜10)のS310Aサブゲノムレプリコン複製細胞を用い、細胞内のHCVサブゲノムレプリコンRNAのコピー数を定量した。HCVサブゲノムレプリコンRNAのコピー数の定量はTakeuchiらの文献(Gastroenterology、1999年、第116巻、p.636−642)及びKatoらの文献(Gastroenterology、2003年、第125巻、p.1808−1817)に示された手法に基づいて行った。
【0185】
当該手法はTaqManプローブ法(Parkin Elmer社、Applied Biosystems社)を用いた検出系である。具体的には、まず、S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞から常法によりトータルRNAを抽出した。次にrTth DNAポリメラーゼを用いてトータルRNAからcDNAを合成し、合成されたcDNAを鋳型にしてプライマー 5’−CGGGAGAGCCATAGTGG−3’(配列番号24)と5’−AGTACCACAAGGCCTTTCG−3’(配列番号25)を用いてPCR増幅した。その際、塩基配列5’−CTGCGGAACCGGTGAGTACAC−3’(配列番号26)を有し、その5’末端に蛍光色素である6’−カルボキシ−フルオレセイン(FAM)が結合し、3’末端にクエンチャーである6’−カルボキシ−テトラメチル−ローダミン(TAMRA)が結合したプローブを加えた。このプローブが存在すると、増幅過程においてTaqポリメラーゼの5’エキソヌクレアーゼ活性により、鋳型cDNAにハイブリダイズしたプローブが分解され、蛍光色素がプローブから遊離し、クエンチャーによる抑制が解除されて蛍光が発せられる。そこで、この蛍光をABI Prism 7700(Parkin Elmer社、Applied Biosystems社)で検出し、HCVサブゲノムレプリコンRNAのコピー数を定量した。
【0186】
比較対照として、遺伝子型2aのJFH−1株のHCVサブゲノムレプリコンRNAを導入した細胞(JFH−1サブゲノムレプリコン複製細胞)を用いた。なお、JFH−1株のHCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクター(その構造は、JFH−1株のHCVの5’非翻訳領域(5’UTR)と、Coreタンパク質コード領域の5’末端の57ヌクレオチドの配列と、ネオマイシン耐性遺伝子と、EMCV IRES配列と、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質、及びNS5Bタンパク質をコードする塩基配列と、3’非翻訳領域(3’UTR)を、5’側から3’側に向かってこの順序で含む)の構築及びHCVサブゲノムレプリコンRNAの作製は、Katoらの文献(Gastroenterology、2003年、第125巻、p.1808−1817)及び国際公開第04/104198号に記載の方法に基づき実施した。Huh7細胞への導入及びコピー数定量は上記と同じ方法で行った。
【0187】
定量結果を図3に示す。図の横軸の数字はS310Aサブゲノムレプリコン複製細胞クローンのクローン番号を示す。また、縦軸は細胞のトータルRNA1μg当たりの細胞内のHCVサブゲノムレプリコンRNAのコピー数を示す。なお、棒グラフ上部の数値は、各細胞内のHCVサブゲノムレプリコンRNAのコピー数を示す。
【0188】
その結果、樹立した10クローンのS310Aサブゲノムレプリコン複製細胞は、JFH−1サブゲノムレプリコン複製細胞と同等又はそれ以上のRNAコピー数が検出された。S310A株由来のHCVサブゲノムレプリコンRNAは、JFH−1株のHCVサブゲノムレプリコンRNAとほぼ同等又はそれ以上の複製能を有している事が示された。
【0189】
(実施例5)S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞におけるレプリコンRNA複製に対する抗ウイルス剤の効果
樹立したS310Aサブゲノムレプリコン複製細胞(クローン)におけるレプリコンRNA複製に対する抗ウイルス剤の効果を調べた。
【0190】
S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞(クローン)及びJFH−1サブゲノムレプリコン複製細胞を1ウェル当たり5×10個となるように24ウェルプレートに播種し、翌日に、インターフェロン−α(IFN−α)、NS3プロテアーゼ阻害剤であるVX−950(telaprevir)(Linら、Journal of Biological Chemistry、2004年、第279巻、p.17508−17514)及びBILN−2061(Danielら、Nature、2003年、第426巻、p.186−189)、並びに、NS5Bポリメラーゼ阻害剤であるJTK−109(Hirashimaら、Journal of Medicinal Chemistry、2006年、第49巻、p.4721−4736)及びPSI−6130(Clarkら、Journal of Medicinal Chemistry、2005年、第48巻、p.5504−5508)をそれぞれ、ウェルに添加して3日間作用させた。その後、細胞を回収してトータルRNAを抽出し、実施例4と同じ手法で細胞内のHCVサブゲノムレプリコンRNAのコピー数を定量した。
【0191】
その結果を図4〜8に示す。図の横軸は添加した阻害剤の濃度を示す。また、縦軸はHCV RNA量の変化率を示し、これは、阻害剤を添加しない場合(0 IU又は0 M)の細胞のトータルRNA1μg当たりのサブゲノムレプリコンRNA量を100%とした場合の、阻害剤を添加した場合のサブゲノムレプリコンRNA量の比率(%)を示す。棒グラフは、各阻害剤濃度について最も左のバー(白)がJFH−1サブゲノムレプリコン複製細胞、左から二番目のバー(明るい灰色)がS310Aサブゲノムレプリコン複製細胞クローン6、左から三番目のバー(黒)がS310Aサブゲノムレプリコン複製細胞クローン9、最も右のバー(暗い灰色)がS310Aサブゲノムレプリコン複製細胞クローン10についての結果を示している。
【0192】
IFN−αを作用させた結果、JFH−1及びS310AサブゲノムレプリコンRNAはIFN−αによって細胞内でのRNA複製が顕著に阻害されることが示された(図4)。
【0193】
一方、NS3プロテアーゼ阻害剤であるVX−950及びBILN−2061は、JFH−1サブゲノムレプリコンに対する複製阻害作用が認められたが、S310Aサブゲノムレプリコンの複製は阻害しなかった(図5、6)。このことから、遺伝子型3aのNS3プロテアーゼは、遺伝子型2aのNS3プロテアーゼと異なり、既存NS3プロテアーゼ阻害剤では阻害されないことが示唆された。
【0194】
またNS5Bポリメラーゼ阻害剤であるJTK−109及びPSI−6130を作用させた結果、JFH−1サブゲノムレプリコンはJTK−109によるRNA複製阻害を受けないが、S310AサブゲノムレプリコンではそれぞれJTK−109により、著しいRNA複製阻害が認められた(図7)。一方、PSI−6130を作用させた場合は、JFH−1及びS310AサブゲノムレプリコンのRNA複製をいずれも濃度依存的に阻害した(図8)。
【0195】
以上から、本発明の遺伝子型3aのサブゲノムレプリコンは遺伝子型3aの複製を阻害する薬剤を評価するツールとして好適であることが示された。
【0196】
また、遺伝子型3aのHCV株由来のサブゲノムレプリコンの複製能は、遺伝子型2aのHCV株由来のサブゲノムレプリコンの複製能とは異なる要因により影響を受けることも示された。本発明の限定的な解釈を意図するものではないが、遺伝子型3aと2aではHCVゲノムにコードされるポリメラーゼの構造が異なっており、その結果、薬剤化合物による効果が異なるとも考えられる。
【0197】
(実施例6)S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞内のHCVサブゲノムレプリコンRNAの配列解析
実施例3で樹立したS310Aサブゲノムレプリコン複製細胞(クローン)内に存在するHCVサブゲノムレプリコンRNAの配列解析を行った。
【0198】
まず、樹立した10クローンとさらに追加した1クローンの計11クローンのS310Aサブゲノムレプリコン複製細胞からトータルRNAを抽出し、この中に含まれるHCVサブゲノムレプリコンRNAをRT−PCR法を用いて増幅した。HCVサブゲノムレプリコンRNAから逆転写により合成したcDNAを鋳型としたPCR増幅には、5’−TAATACGACTCACTATAG−3’(配列番号27)と5’−GCGGCTCACGGACCTTTCAC−3’(配列番号28)をプライマーとして使用した。PCR増幅産物はシークエンス用クローニングベクター中にクローン化し、常法により配列解析を行った。
【0199】
配列解析の結果、S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞内のHCVサブゲノムレプリコンRNAから同定された適応変異を表1に示す。
【表1】
【0200】
表1に示すように、S310Aサブゲノムレプリコン複製細胞から得られたHCVサブゲノムレプリコンRNAに、非構造領域であるNS3タンパク質領域で1箇所(T1286I:第1286番目のスレオニン(T)がイソロイシン(I)に変異)、NS5Aタンパク質領域で3箇所(T2188A:第2188番目のスレオニン(T)がアラニン(A)に変異、R2198H:第2198番目のアルギニン(R)がヒスチジン(H)に変異、S2210I:第2210番目のセリン(S)がイソロイシン(I)に変異)及び、NS5Bタンパク質領域で3箇所(T2496I:第2496番目のスレオニン(T)がイソロイシン(I)に変異、R2895G:第2895番目のアルギニン(R)がグリシン(G)に変異、R2895K:第2895番目のアルギニン(R)がリジン(K)に変異)の、アミノ酸置換を引き起こす塩基置換が見出された。また、クローン番号9ではNS5Bタンパク質領域内の変異であるT2496IとR2895Kが同時に検出された。図9には、これらアミノ酸置換の位置を、発現ベクターpS310ASGR−Neoの構造上に模式的に示した。なお、これらのアミノ酸置換の位置は、S310A株の前駆体タンパク質の全長アミノ酸配列(配列番号14)に基づいて記載されている。
【0201】
(実施例7)野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAへの変異導入及びそのレプリコン複製能への影響の解析
実施例6で見出されたアミノ酸置換を引き起こす塩基置換、すなわち塩基変異が野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAの細胞内での複製に影響を与えるかどうかを以下のようにして調べた。
【0202】
NS3タンパク質領域内のアミノ酸置換であるT1286I、NS5Aタンパク質領域内のアミノ酸置換であるT2188A、R2198H及びS2210I、並びに、NS5Bタンパク質領域内のアミノ酸置換であるT2496I、R2895G及びR2895K、を引き起こす塩基置換を単独でそれぞれ、実施例1で作製したS310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターpS310ASGR−Neoに導入した。また、NS5Bタンパク質領域内のアミノ酸置換であるT2496I及びR2895Kを引き起こす塩基置換を同時に発現ベクターpS310ASGR−Neoに導入した。
【0203】
図10に、これらアミノ酸置換をそれぞれ導入したHCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターの構造を示す。なお、発現ベクターpS310ASGR−Neoに、T1286I置換を単独で導入したものを「pS310ASGR−Neo T1286I」と名付けた。他のアミノ酸置換を単独で導入した発現ベクターもこれと同様に名付けた(図10参照)。また、発現ベクターpS310ASGR−Neoに、T2496I及びR2895K置換を同時に導入したものを「pS310ASGR−Neo T2496I/R2895K」と名付けた。
【0204】
具体的には、pS310ASGR−Neo及びそのPCR産物を鋳型DNAとして、導入するアミノ酸置換を引き起こす塩基変異を含んだプライマーを用い、繰り返し行うPCRにより、pS310ASGR−Neoに塩基置換を導入した。
【0205】
ここで用いたPCR条件は以下のとおりである。まず、PCRの鋳型DNAに、Pyrobest(登録商標) DNA Polymeraseキット(タカラバイオ社)に添付の、10×緩衝液を5μL、2.5mM dNTP混合液を4μL、100μMのプライマー(フォワード及びリバースそれぞれ)を0.25μL加え、脱イオン水を加え最終的に全量を49.75μLとした。その後、Pyrobest(登録商標) DNA Polymerase(タカラバイオ社)を0.25μL加え、PCRを行った。PCRは、98℃で2分間の熱変性処理後、98℃で20秒、55℃で30秒及び72℃で3分を1サイクルとして、25サイクル行った後、72℃で10分間の最終伸長反応を行った。
【0206】
T1286Iの導入のためには、まず、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、Neo−S4(5’−TCCTCGTGCTTTACGGTATC−3’(配列番号29))及び1286R(5’−GTTCCCAATGCGGACGTTGG−3’(配列番号30))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.1とした。
【0207】
次に、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、1286F(5’−CCAACGTCCGCATTGGGAAC−3’(配列番号31))及び5546R(5’−TCCTTGAACTGGTGGGCTATT−3’(配列番号32))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.2とした。
【0208】
それぞれのPCR産物を精製し、15μLのHOに溶解した。精製したPCR産物no.1とPCR産物no.2のDNAを、1μLずつ混合した。これを鋳型DNAとし、Neo−S4(5’−TCCTCGTGCTTTACGGTATC−3’(配列番号29))及び5546R(5’−TCCTTGAACTGGTGGGCTATT−3’(配列番号32))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.3とした。このPCR産物を精製し、30μLのHOに溶解した。
【0209】
pS310ASGR−Neo及び精製したPCR産物no.3をそれぞれ、制限酵素SnaBI及びEcoT22Iで消化し、各HCV cDNA断片をアガロースゲル電気泳動にて分画し、精製した。これら2つのDNA断片とDNA Ligation Kit(タカラバイオ社)を混合し、2つのDNA断片を連結した。こうして得られた組換え発現ベクター(アミノ酸置換T1286Iを引き起こす塩基置換を有する)をpS310SGR−Neo T1286Iと名付けた。なお、pS310ASGR−Neo T1286Iから合成されるHCVサブゲノムレプリコンRNAの配列を配列番号17に示す。
【0210】
T2188Aの導入のためには、まず、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、5240F(5’−TGGGGCCTGTCCAAAATGAA−3’(配列番号33))及び2188R(5’−GCCTCAGCGGCAATATGGGAA−3’(配列番号34))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.4とした。
【0211】
次に、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、2188F(5’−TTCCCATATTGCCGCTGAGGC−3’(配列番号35))及び7601R(5’−ACTAACGGTGGACCAAGAGT−3’(配列番号36))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.5とした。
【0212】
それぞれのPCR産物を精製し、15μLのHOに溶解した。PCR産物no.4とPCR産物no.5のDNAを1μLずつ混合した。これを鋳型DNAとし、5240F(5’−TGGGGCCTGTCCAAAATGAA−3’(配列番号33))及び7601R(5’−ACTAACGGTGGACCAAGAGT−3’(配列番号36))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.6とした。PCR産物を精製し、30μLのHOに溶解した。
【0213】
pS310ASGR−Neo及び精製したPCR産物no.6をそれぞれ、制限酵素XhoI及びBamHIで消化し、各HCV cDNA断片をアガロースゲル電気泳動にて分画し、精製した。これら2つのDNA断片とDNA Ligation Kit(タカラバイオ社)を混合し、2つのDNA断片を連結した。こうして得られた組換え発現ベクター(アミノ酸置換T2188Aを引き起こす塩基置換を有する)をpS310ASGR−Neo T2188Aと名付けた。pS310SAGR−Neo T2188Aから合成されるHCVサブゲノムレプリコンRNAの配列を配列番号21に示す。
【0214】
R2198Hの導入のためには、まず、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、5240F(5’−TGGGGCCGTCCAAAATGAA−3’(配列番号33))及び2198R(5’−GAGGGGACCCATGCGCAAGGC−3’(配列番号37))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.7とした。
【0215】
次に、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、2198F(5’−GCCTTGCGCATGGGTCCCCTC−3’(配列番号38))及び7601R(5’−ACTAACGGTGGACCAAGAGT−3’(配列番号36))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.8とした。
【0216】
それぞれのPCR産物を精製し、15μLのHOに溶解した。PCR産物no.7とPCR産物no.8のDNAを1μLずつ混合した。これを鋳型DNAとし、5240F(5’−TGGGGCCGTCCAAAATGAA−3’(配列番号33))及び7601R(5’−ACTAACGGTGGACCAAGAGT−3’(配列番号36))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.9とした。PCR産物を精製し、30μLのHOに溶解した。
【0217】
pS310ASGR−Neo及び精製したPCR産物no.9をそれぞれ、制限酵素XhoI及びBamHIで消化し、各HCV cDNA断片をアガロースゲル電気泳動にて分画し、精製した。これら2つのDNA断片とDNA Ligation Kit(タカラバイオ社)を混合し、2つのDNA断片を連結した。こうして得られた組換え発現ベクター(アミノ酸置換R2198Hを引き起こす塩基置換を有する)をpS310ASGR−Neo R2198Hと名付けた。なお、pS310ASGR−Neo R2198Hから合成されるHCVサブゲノムレプリコンRNAの配列を配列番号18に示す。
【0218】
T2496Iの導入のためには、まず、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、7276F(5’−GTACCACCAACTGTCCATGGA−3’(配列番号3))及び2496R(5’−TTAAAGCAATTTTGTAGTGGT−3’(配列番号40))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.10とした。
【0219】
次に、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、2496F(5’−ACCACTACAAAATTGCTTTAA−3’(配列番号41))及び8579R(5’−CCGCAGACAAGAAAGTCCGGGT−3’(配列番号42))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.11とした。
【0220】
それぞれのPCR産物を精製し、15μLのHOに溶解した。PCR産物no.10とPCR産物no.11のDNAを1μLずつ混合した。これを鋳型DNAとし、7276F(5’−GTACCACCAACTGTCCATGGA−3’(配列番号39))及び8579R(5’−CCGCAGACAAGAAAGTCCGGGT−3’(配列番号42))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.12とした。PCR産物を精製し、30μLのHOに溶解した。
【0221】
pS310ASGR−Neo及び精製したPCR産物no.12をそれぞれ、制限酵素XhoI及びEcoRVで消化し、各HCV cDNA断片をアガロースゲル電気泳動にて分画し、精製した。これら2つのDNA断片とDNA Ligation Kit(タカラバイオ社)を混合し、2つのDNA断片を連結した。こうして得られた組換え発現ベクター(アミノ酸置換T2496Iを引き起こす塩基置換を有する)をpS310ASGR−Neo T2496Iと名付けた。なお、pS310ASGR−Neo T2496Iから合成されるHCVサブゲノムレプリコンRNAの配列を配列番号22に示す。
【0222】
R2895Gの導入のためには、まず、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、7988F(5’−GCTCCGTCTGGGAGGACTTGC−3’(配列番号43))及びR2895G−R(5’−ATGGAGTCCTTCAATGATTGC−3’(配列番号44))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.13とした。
【0223】
次に、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、R2895G−F(5’−GCAATCATTGAAGGACTCCAT−3’(配列番号45))及び3X−54R−2a(5’−GCGGCTCACGGACCTTTCAC−3’(配列番号46))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.14とした。
【0224】
それぞれのPCR産物を精製し、15μLのHOに溶解した。PCR産物no.13とPCR産物no.14のDNAを1μLずつ混合した。これを鋳型DNAとし、7988F(5’−GCTCCGTCTGGGAGGACTTGC−3’(配列番号43))及び3X−54R−2a(5’−GCGGCTCACGGACCTTTCAC−3’(配列番号46))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.15とした。PCR産物を精製し、30μLのHOに溶解した。
【0225】
pS310ASGR−Neo及び精製したPCR産物no.15をそれぞれ、制限酵素EcoRV及びMfeIで消化し、各HCV cDNA断片をアガロースゲル電気泳動にて分画し、精製した。これら2つのDNA断片とDNA Ligation Kit(タカラバイオ社)を混合し、2つのDNA断片を連結した。こうして得られた組換え発現ベクター(アミノ酸置換R2895Gを引き起こす塩基置換を有する)をpS310ASGR−Neo R2895Gと名付けた。なお、pS310ASGR−Neo R2895Gから合成されるHCVサブゲノムレプリコンRNAの配列を配列番号23に示す。
【0226】
R2895Kの導入のためには、まず、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、7988F(5’−GCTCCGTCTGGGAGGACTTGC−3’(配列番号43))及びR2895K−R(5’−ATGGAGTTTTTCAATGATTGC−3’(配列番号47))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.16とした。
【0227】
次に、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、R2895K−F(5’−GCAATCATTGAAAAACTCCAT−3’(配列番号48))及び3X−54R−2a(5’−GCGGCTCACGGACCTTTCAC−3’(配列番号46))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.17とした。
【0228】
それぞれのPCR産物を精製し、15μLのHOに溶解した。PCR産物no.16とPCR産物no.17のDNAを1μLずつ混合した。これを鋳型DNAとし、7988F(5’−GCTCCGTCTGGGAGGACTTGC−3’(配列番号43))及び3X−54R−2a(5’−GCGGCTCACGGACCTTTCAC−3’(配列番号46))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.18とした。PCR産物を精製し、30μLのHOに溶解した。
【0229】
pS310ASGR−Neo及び精製したPCR産物no.18をそれぞれ、制限酵素EcoRV及びMfeIで消化し、各HCV cDNA断片をアガロースゲル電気泳動にて分画し、精製した。これら2つのDNA断片とDNA Ligation Kit(タカラバイオ社)を混合し、2つのDNA断片を連結した。こうして得られた組換え発現ベクター(アミノ酸置換R2895Kを引き起こす塩基置換を有する)をpS310ASGR−Neo R2895Kと名付けた。なお、pS310ASGR−Neo R2895Kから合成されるHCVサブゲノムレプリコンRNAの配列を配列番号19に示す。
【0230】
また、NS5Bタンパク質領域に2つのアミノ酸置換(T2496I及びR2895K)を導入した。具体的には、上記のpS310ASGR−Neo T2496I及び精製したPCR産物no.18をそれぞれ、制限酵素EcoRV及びMfeIで消化し、各HCV cDNA断片をアガロースゲル電気泳動にて分画し、精製した。これら2つのDNA断片とDNA Ligation Kit(タカラバイオ社)を混合し、2つのDNA断片を連結した。こうして得られた組換え発現ベクター(アミノ酸置換T2496I及びR2895Kを引き起こす塩基置換を有する)をpS310ASGR−Neo T2496I/R2895Kと名付けた。なお、pS310ASGR−Neo T2496I/R2895Kから合成されるHCVサブゲノムレプリコンRNAの配列を配列番号20に示す。
【0231】
S2210Iの導入のためには、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、5240F(5’−TGGGGCCGTCCAAAATGAA−3’(配列番号33))及び2210R(5’−CGACAGTTGGATGGCGGATGA−3’(配列番号52))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.19とした。
【0232】
次に、pS310ASGR−Neoを鋳型DNAとし、2210F(5’−TCATCCGCCATCCAACTGTCG−3’(配列番号53))及び7601R(5’−ACTAACGGTGGACCAAGAGT−3’(配列番号36))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.20とした。
【0233】
それぞれのPCR産物を精製し、15μLのHOに溶解した。PCR産物no.19とPCR産物no.20のDNAを1μLずつ混合した。これを鋳型DNAとし、5240F(5’−TGGGGCCGTCCAAAATGAA−3’(配列番号33))及び7601R(5’−ACTAACGGTGGACCAAGAGT−3’(配列番号36))をプライマーとして、上記PCR条件でPCRを行った。得られたPCR産物をPCR産物no.21とした。PCR産物を精製し、30μLのHOに溶解した。
【0234】
pS310ASGR−Neo及び精製したPCR産物no.21をそれぞれ、制限酵素XhoI及びBamHIで消化し、各HCV cDNA断片をアガロースゲル電気泳動にて分画し、精製した。これら2つのDNA断片とDNA Ligation Kit(タカラバイオ社)を混合し、2つのDNA断片を連結した。こうして得られた組換え発現ベクター(アミノ酸置換S2210Iを引き起こす塩基置換を有する)をpS310ASGR−Neo S2210Iと名付けた。なお、pS310ASGR−Neo S2210Iから合成されるHCVサブゲノムレプリコンRNAの配列を配列番号54に示す。
【0235】
次いで、実施例2と同様の方法で、発現ベクターpS310ASGR−Neo、pS310ASGR−Neo T1286I、pS310ASGR−Neo T2188A、pS310ASGR−Neo R2198H、pS310ASGR−Neo S2210I、pS310ASGR−Neo T2496I、pS310ASGR−Neo R2895G、pS310ASGR−Neo R2895K、及びpS310ASGR−Neo T2496I/R2895Kから、Ambion社のMEGAscript(商標登録)を用いて、HCVサブゲノムレプリコンRNAを合成した。作製したHCVサブゲノムレプリコンRNAについて、各サブゲノムレプリコンRNA 0.3μgをエレクトロポレーション法によりHuh7細胞に導入した。ただし、野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNA(pS310ASGR−Neoより発現)とT2496I変異体HCVサブゲノムレプリコンRNA(pS310ASGR−Neo T2496Iより発現)については10μgを導入した。エレクトロポレーション処理を行ったHuh7細胞を培養ディッシュに播種し、16時間〜24時間培養した後に、培養ディッシュにG418(ネオマイシン)を添加した。その後、週に2回培養液を交換しながら培養を継続した。播種時から21日間培養した後、クリスタルバイオレットで生存細胞を染色した。
【0236】
その結果を図11に示す。図中、「野生型」はpS310ASGR−Neo、「T1286I」はpS310ASGR−Neo T1286I、「T2188A」はpS310ASGR−Neo T2188A、「R2198H」はpS310ASGR−Neo R2198H、「S2210I」はpS310ASGR−Neo S2210I、「T2496I」はpS310ASGR−Neo T2496I、「R2895G」はpS310ASGR−Neo R2895G、「R2895K」はpS310ASGR−Neo R2895K、「T2496I/R2895K」はpS310ASGR−Neo T2496I/R2895K、からそれぞれ作製したHCVサブゲノムレプリコンRNAを導入した細胞の染色結果を示す。
【0237】
その結果、いずれのHCVサブゲノムレプリコンRNAを導入した細胞についても、コロニー形成が確認できたが、「T2496I」はコロニー形成能が低く、野生型と同様に10μgのRNAを導入することでコロニーを形成した。コロニー形成能が確認されたクローンのうち、「T1286I」、「R2198H」、「R2895K」及び「T2496I/R2895K」については、コロニー形成能が特に高く検出された。また、「T2496I」は野生型と同程度のコロニー形成能であり、また、「R2895K」と「T2496I/R2895K」のコロニー形成能の間に差は見られないことから、アミノ酸置換T2496Iは、サブゲノムレプリコンRNAの複製能に影響を与えないと考えられる(図11)。
【0238】
よって、野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAに、上記アミノ酸置換(変異)を導入すると自律複製能は維持されるか又は高まることが示された。特に、アミノ酸置換T1286I、R2198H又はR2895Kのアミノ酸置換を導入することにより、野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAの自律複製能が顕著に高まることが示された。
【0239】
(実施例8)ルシフェラーゼ遺伝子を用いた変異体S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNA複製効率の評価
実施例7、図11に示したレプリコン複製細胞の検出では、細胞が生存できる最低限のネオマイシン耐性を付与できるだけのレプリコン複製能があれば検出される。したがって、実施例7で用いた方法はレプリコン複製量の解析には不向きである。そこで、変異体S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAの複製効率をより定量的に評価するために、pS310ASGR−Neo中のネオマイシン耐性遺伝子をルシフェラーゼ遺伝子に組み換えた、HCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターpS310ASGR−Lucを作製した。HCVサブゲノムレプリコンRNA発現ベクターpS310ASGR−Luc及び、pS310ASGR−Lucから合成されるHCVサブゲノムレプリコンRNAの構造を図12に示す。
【0240】
発現ベクターpS310ASGR−Lucの構築は、Katoらの文献(Journal of Clinical Microbiology、2005年、第43巻、p.5679−5684)に示された手順に基づいて行った。具体的には、HCVサブゲノムレプリコン発現ベクターpS310ASGR−Neoのネオマイシン耐性遺伝子(neo)をホタルルシフェラーゼ遺伝子(Luc)に置換することにより、発現ベクターp310ASGR−Lucを作製した(図12)。
【0241】
さらに、上記のアミノ酸変異を含むS310A株のHCVサブゲノムレプリコン発現ベクターについても同様に、ネオマイシン耐性遺伝子(neo)をホタルルシフェラーゼ遺伝子(Luc)に置換して、p310ASGR−Lucの変異体を作製した。p310ASGR−Lucの変異体は、それぞれ、T1286I変異体はp310ASGR−Luc T1286I、T2188A変異体はp310ASGR−Luc T2188A、R2198H変異体はp310ASGR−Luc R2198H、S2210I変異体はpS310ASGR−Luc S2210I、T2496I変異体はp310ASGR−Luc T2496I、R2895G変異体はp310ASGR−Luc R2895G、R2895K変異体はp310ASGR−Luc R2895K、T2496I/R2895K変異体はp310ASGR−Luc T2496I/R2895Kと名付けた。
【0242】
実施例2と同様の手法を用いて野生型及び変異体のp310ASGR−LucからHCVサブゲノムレプリコンRNAを作製し、そのRNA 5μgを2×10のHuh7細胞にエレクトロポレーション法により導入し、12ウェルプレートに播種した。播種した細胞は24時間後及び72時間後に回収し、そのルシフェラーゼ活性をLuciferase assay system(Promega社)を用いて検出した。
【0243】
結果を図13に示す。図中、「野生型」はpS310ASGR−Luc、「T1286I」はpS310ASGR−Luc T1286I、「T2188A」はpS310ASGR−Luc T2188A、「R2198H」はpS310ASGR−Luc R2198H、「S2210I」はpS310ASGR−Luc S2210I、「T2496I」はpS310ASGR−Luc T2496I、「R2895G」はpS310ASGR−Luc R2895G、「R2895K」はpS310ASGR−Luc R2895K、「T2496I/R2895K」はpS310ASGR−Luc T2496I/R2895Kからそれぞれ作製したHCVサブゲノムレプリコンRNAを導入した細胞における結果を示す。
【0244】
また、JFH−1株のNS5Bポリメラーゼ中の2760番目のアミノ酸残基であるアスパラギン酸(D)がアスパラギン(N)に置換されたサブゲノムレプリコンRNA(JFH1/GND)をネガティブコントロールとして用いた(Katoら、J.Clin. Microbiol. 2005年、第43巻、p.5679−5684)。このサブゲノムレプリコンRNA(JFH1/GND)は、NS5Bポリメラーゼの変異により、導入後72時間では複製能を示さない。図の縦軸は、ルシフェラーゼの相対発光強度を示し、発光強度が高いほど複製能が高いことを示す。72時間後のルシフェラーゼ遺伝子の発現がJFH1/GNDより高い値を示す場合、持続的に遺伝子増幅をしている(自律複製能を持つ)ことを示す。
【0245】
その結果、「R2198H」、「S2210I」、「R2895G」、「R2895K」、及び「T2496I/R2895K」は、72時間後のルシフェラーゼ遺伝子の発現がJFH1/GNDと比較して高値であることが示された。このことから、R2198H、S2210I、R2895G、R2895K、又はT2496I/R2895Kのアミノ酸置換を含むHCVサブゲノムレプリコンRNAは持続的に遺伝子増幅をしていることが示された。
【0246】
(実施例9)変異体S310A株のHCVフルゲノムレプリコンRNA(全長ゲノムRNA)発現ベクターの構築
実施例6で見出された各アミノ酸置換を有するS310A株のHCVフルゲノムレプリコンRNAの、培養細胞におけるHCV粒子産生能を評価するため、全長HCVゲノム配列を有するHCVフルゲノムレプリコンRNA発現ベクターの構築を行った。
【0247】
実施例1で作製した発現ベクターpS310A(野生型S310A株の全長ゲノムRNAのcDNAをpUC19中のT7プロモーターの制御下に挿入した組換えプラスミド)と実施例7で作製した各pS310ASGR−Neo変異体を用いて、HCVフルゲノムレプリコンRNA発現ベクターを作製した。
【0248】
具体的には、実施例1で作製したpS310A及び実施例7で作製したpS310SGR−Neo T1286Iを、制限酵素SnaBIとBamHIで消化した。各HCV cDNA断片をアガロースゲル電気泳動にて分画し精製した。pS310AのDNA断片と各pS310ASGR−Neo変異体のDNA断片にDNA Ligation Kit(タカラバイオ社)を加え混合し、2つのDNA断片を連結した。こうして得られたアミノ酸置換を有するHCVフルゲノムレプリコンRNA発現ベクターを、pS310A T1286Iと名付けた。
【0249】
同様に、実施例7で作製したその他の各pS310ASGR−Neo変異体(pS310ASGR−Neo T2188A、pS310ASGR−Neo R2198H、pS310ASGR−Luc S2210I、pS310ASGR−Neo T2496I、pS310ASGR−Neo R2895G、及びpS310ASGR−Neo R2895K)を、各々適切な制限酵素(pS310ASGR−Neo T1286IはSnaBIとBamHI、pS310ASGR−Neo T2188A及びpS310ASGR−Neo R2198HはBamHIとXhoI、pS310ASGR−Neo T2496IはSacII、pS310ASGR−Neo R2895G及びpS310ASGR−Neo R2895KはScaI)で消化し、また、pS310Aを、組換え対象となる各pS310ASGR−Neo変異体を消化したのと同じ制限酵素で消化した。同じ制限酵素で消化した各pS310ASGR−Neo変異体とpS310AのDNA断片を上記と同じ方法で連結した。こうして得られたアミノ酸置換を有するHCVフルゲノムレプリコンRNAの発現ベクターを、それぞれpS310A T2188A、pS310A R2198H、pS310A S2210I、pS310A T2496I、pS310A R2895G、及びpS310A R2895Kと名付けた。
【0250】
(実施例10)変異体S310A株のHCVフルゲノムレプリコンRNA導入細胞におけるHCV粒子産生能の評価
実施例1で作製したpS310A及び実施例9で作製した各発現ベクターを、制限酵素XbaIで切断し、フェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿を行った。次いで、XbaI切断断片を、Mung Bean Nuclease処理し、XbaI切断断片からXbaI認識配列由来の余分な3’末端のCTAGの4塩基を除去した。次いで、XbaI切断断片を含むMung Bean Nuclease処理後溶液について、proteinaseK処理、フェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿を行ってDNA断片を精製した。これを鋳型DNAとして、MEGAscript(登録商標) T7 kit(Ambion社)を用いてRNAの合成を行った。
【0251】
RNA合成終了後、反応溶液にDNase(2U)を添加して37℃で15分間反応させることにより鋳型DNAを除去し、さらに酸性フェノールによるRNA抽出を行うことにより、野生型及び変異体のS310A株HCVフルゲノムレプリコンRNAを取得した。
【0252】
ここで得られた野生型及び変異体のS310A株HCVフルゲノムレプリコンRNAは、それぞれ、野生型及び変異体のS310A株の全長ゲノムRNAと同じ塩基配列を有する。なお、野生型のS310A株のHCVフルゲノムレプリコンRNA(野生型のS310A株全長ゲノムRNA)を「S310A」、T1286I、T2188A、T2198H、S2210I、T2496I、R2895G又はR2895Kのアミノ酸置換(変異)がそれぞれ導入されたS310株のHCVフルゲノムレプリコンRNA(S310A株の全長ゲノムRNA変異体)を、本実施例では、それぞれ、「S310A T1286I」、「S310A T2188A」、「S310A R2198H」、「S310A S2210I」、「S310A T2496I」、「S310A R2895G」及び「S310A R2895K」と呼ぶ。これらS310A株のHCVフルゲノムレプリコンRNA(HCV全長ゲノム)の構造を図14に示す。
【0253】
得られた野生型及び変異体S310AのHCVフルゲノムレプリコンRNA(10μg)を、エレクトロポレーション法によりHuh7細胞に導入(トランスフェクト)した。このエレクトロポレーション処理後のHuh7細胞を培養ディッシュに播種し、16時間〜24時間培養した後に、培養ディッシュにG418(ネオマイシン)を添加した。その後、週に2回継代しながら培養を継続した。経時的に、培養上清中に含まれるHCVのCoreタンパク質を、HCV抗原ELISAテストキット(オーソ社)を用いて定量することにより、HCV粒子産生の確認を行った。
【0254】
結果を図15に示す。グラフの横軸は野生型及び変異体S310A株のHCVフルゲノムレプリコンRNA(全長RNA)を細胞に導入した後の細胞培養時間であり、縦軸は細胞培養上清中のHCVコアタンパク質濃度を表す。「T1286I」はS310A T1286I、「T2188A」はS310A T2188A、「R2198H」はS310A R2198H、「S2210I」はS310A S2210I、「T2496I」はS310A T2496I、「R2895K」はS310A R2895K、「R2895G」はS310A R2895GのHCVフルゲノムレプリコンRNA(全長RNA)を導入した細胞を表す。
【0255】
HCVフルゲノムレプリコンRNA(全長RNA)導入の96時間後、「S2210I」、「R2198H」及び「R2895K」導入細胞において、細胞培養上清中のHCVコアタンパク質濃度が上昇している事が確認された。この3つの変異体S310A株のHCVフルゲノムレプリコンRNAのうち、「S2210I」導入細胞が、最も培養上清中のHCVコアタンパク質濃度が高く、S2210Iの変異は、最もHCV粒子形成能が高い変異であることが示された。「R2198H」導入細胞も、他と比べて明らかな培養上清中のHCVコアタンパク質濃度の上昇が認められた。「R2895K」導入細胞の培養上清中のHCVコアタンパク質濃度は、「S2210I」や「R2198H」に比べて低いものの、経時的な上昇が認められた。
【0256】
また、これら3つの変異体S310A株のHCVフルゲノムレプリコンRNA「S2210I」、「R2198H」又は「R2895K」の、遺伝子導入96時間後の細胞培養上清を別のHuh7細胞に添加すると、Huh7細胞からHCVコアタンパク質が検出された。したがって、変異体S310A株のHCVフルゲノムレプリコンRNA「S2210I」、「R2198H」又は「R2895K」を導入した細胞の培養上清中に感染性HCV粒子が分泌されていることを確認できた。
【0257】
この結果から、S2210I(配列番号49)、R2198H(配列番号50)又はR2895K(配列番号51)の変異を導入した変異体S310A株のHCVフルゲノムレプリコンRNA(全長RNA)を導入した細胞から、感染性HCV粒子が産生されることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0258】
培養細胞において増幅が可能な、遺伝子型3aのHCVサブゲノムレプリコンRNA、遺伝子型3aの感染性HCV粒子を産生するHCVフルゲノムレプリコンRNAを提供でき、遺伝子型に依存しない抗HCV薬、特に、効果的な治療薬のない遺伝子型3aに対する抗HCV薬のスクリーニングや、HCVの複製機構又は複製効率を解明するための研究、さらにはHCV粒子を用いたHCVワクチンの開発などに利用できる。
【0259】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はその全体を参照により本明細書にとり入れるものとする。
【配列表フリーテキスト】
【0260】
配列番号1:野生型S310A株の全長ゲノムRNAのcDNA配列。1〜340位は5’非翻訳領域(5’UTR)、また341〜913位はCoreタンパク質、914〜1489位はE1タンパク質、1490〜2596位はE2タンパク質、2597〜2785位はp7タンパク質、2786〜3436位はNS2タンパク質、3437〜5329位はNS3タンパク質、5330〜5491位はNS4Aタンパク質、5492〜6274位はNS4Bタンパク質、6275〜7630位はNS5Aタンパク質、7631〜9406位はNS5Bタンパク質をコードする配列、そして9407〜9655位は3’非翻訳領域(3’UTR)である。
【0261】
配列番号2:野生型S310A株ゲノムRNAの5’非翻訳領域(5’UTR)のcDNA配列
配列番号3:野生型S310A株ゲノムRNAのCoreタンパク質コード配列のcDNA配列
配列番号4:野生型S310A株ゲノムRNAのE1タンパク質コード配列のcDNA配列
配列番号5:野生型S310A株ゲノムRNAのE2タンパク質コード配列のcDNA配列
配列番号6:野生型S310A株ゲノムRNAのp7タンパク質コード配列のcDNA配列
配列番号7:野生型S310A株ゲノムRNAのNS2タンパク質コード配列のcDNA配列
配列番号8:野生型S310A株ゲノムRNAのNS3タンパク質コード配列のcDNA配列
配列番号9:野生型S310A株ゲノムRNAのNS4Aタンパク質コード配列のcDNA配列
配列番号10:野生型S310A株ゲノムRNAのNS4Bタンパク質コード配列のcDNA配列
配列番号11:野生型S310A株ゲノムRNAのNS5Aタンパク質コード配列のcDNA配列
配列番号12:野生型S310A株ゲノムRNAのNS5Bタンパク質コード配列のcDNA配列
配列番号13:野生型S310A株ゲノムRNAの3’非翻訳領域(3’UTR)のcDNA配列
配列番号14:野生型S310A株の前駆体タンパク質のアミノ酸配列。1〜191位はCoreタンパク質、192〜383位はE1タンパク質、384〜752位はE2タンパク質、753〜815位はp7タンパク質、816〜1032位はNS2タンパク質、1033〜1663位はNS3タンパク質、1664〜1717位はNS4Aタンパク質、1718〜1978位はNS4Bタンパク質、1979〜2430位はNS5Aタンパク質、2431〜3021位はNS5Bタンパク質のアミノ酸配列である。
【0262】
配列番号15:野生型S310A株の前駆体タンパク質中のNS3タンパク質からNS5Bタンパク質までの領域のアミノ酸配列
配列番号16:野生型S310A株のHCVサブゲノムレプリコンRNAのcDNA配列
配列番号17:pS310ASGR−Neo T1286Iから合成される、変異体S310A T1286I HCVサブゲノムレプリコンRNAのcDNA配列
配列番号18:pS310ASGR−Neo R2198Hから合成される、変異体S310A R2198H HCVサブゲノムレプリコンRNAのcDNA配列
配列番号19:pS310ASGR−Neo R2895Kから合成される、変異体S310A R2895K HCVサブゲノムレプリコンRNAのcDNA配列
配列番号20:pS310ASGR−Neo T2496I/R2895Kから合成される、変異体S310A T2496I/R2895K HCVサブゲノムレプリコンRNAのcDNA配列
配列番号21:pS310ASGR−Neo T2188Aから合成される、変異体S310A T2188A HCVサブゲノムレプリコンRNAのcDNA配列
配列番号22:pS310ASGR−Neo T2496Iから合成される、変異体S310A T2496I HCVサブゲノムレプリコンRNAのcDNA配列
配列番号23:pS310ASGR−Neo R2895Gから合成される、変異体S310A R2895G HCVサブゲノムレプリコンRNAのcDNA配列
配列番号24:TaqManプローブ法プライマー
配列番号25:TaqManプローブ法プライマー
配列番号26:TaqManプローブ法プローブ
配列番号27:プライマー
配列番号28:プライマー
配列番号29:プライマー Neo−S4
配列番号30:プライマー 1286R
配列番号31:プライマー 1286F
配列番号32:プライマー 5546R
配列番号33:プライマー 5240F
配列番号34:プライマー 2188R
配列番号35:プライマー 2188F
配列番号36:プライマー 7601R
配列番号37:プライマー 2198R
配列番号38:プライマー 2198F
配列番号39:プライマー 7276F
配列番号40:プライマー 2496R
配列番号41:プライマー 2496F
配列番号42:プライマー 8579R
配列番号43:プライマー 7988F
配列番号44:プライマー R2895G−R
配列番号45:プライマー R2895G−F
配列番号46:プライマー 3X−54R−2a
配列番号47:プライマー R2895K−R
配列番号48:プライマー R2895K−F
配列番号49:変異体S310A S2210I HCVフルゲノムレプリコンRNAのcDNA配列
配列番号50:変異体S310A R2198H HCVフルゲノムレプリコンRNAのcDNA配列
配列番号51:変異体S310A R2895K HCVフルゲノムレプリコンRNAのcDNA配列
配列番号52:プライマー 2210R
配列番号53:プライマー 2210F
配列番号54:pS310ASGR−Neo S2210Iから合成される、変異体S310A S2210I HCVサブゲノムレプリコンRNAのcDNA配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]