特許第6026522号(P6026522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6026522自動パージを備える浄水のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6026522
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】自動パージを備える浄水のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20161107BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20161107BHJP
   B01D 61/20 20060101ALI20161107BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20161107BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20161107BHJP
   C02F 1/32 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   C02F1/44 A
   C02F1/44 D
   B01D61/14
   B01D61/20
   B01D61/58
   B01D65/02
   C02F1/32
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-516478(P2014-516478)
(86)(22)【出願日】2012年6月20日
(65)【公表番号】特表2014-519980(P2014-519980A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】IB2012053115
(87)【国際公開番号】WO2012176135
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2014年2月17日
(31)【優先権主張番号】1155632
(32)【優先日】2011年6月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲーネ,イブ
(72)【発明者】
【氏名】メイエ,デイデイエ
(72)【発明者】
【氏名】ボール,ジユリアン
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0134080(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0094406(US,A1)
【文献】 特開平06−304559(JP,A)
【文献】 特開平08−252440(JP,A)
【文献】 特開2009−285565(JP,A)
【文献】 特開2005−254193(JP,A)
【文献】 特開平06−277665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
C02F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水流ループ(110)を備える処理水浄化システム(107)であって、前記ループ(110)は、浄化すべき処理水のタンク(10)に向けて閉じられ、該タンクで残留ガスが大気に戻され、前記ループ(110)は、タンク(10)の下流にかつ水が流れる方向に、少なくとも1つのポンプ手段(102)と、フィルタ膜を備える少なくとも1つの第1の濾過手段(103)と、フィルタ膜、フィルタ膜の上流側でループに接続された2つのパイプ、および第2の濾過手段(104)の下流側に利用地点(U)を備える少なくとも1つの第2の濾過手段(104)と、少なくとも1つの利用地点(U)とを連続的に備えており、
前記システムがさらに、第1の濾過手段(103)をタンク(10)に連結する少なくとも1つの迂回パイプ(112)と、第2の濾過手段(104)をタンク(10)に連結するループ戻りパイプ(114)とを備えており、
迂回パイプ(112)は、第1の濾過手段(103)をパージするように、かつ水流ループ(110)内を流れることができる水の流れの30%以下であるわずかな部分だけがこの迂回パイプ(112)を介して通過するように構成されており、
ループ戻りパイプ(114)は、該パイプ(114)内の水流が第2の濾過手段(104)をパージするように構成されており、ループ戻りパイプ(114)が、第2の濾過手段(104)の膜の上流側に配置されており、残留ガスが、タンクで大気に戻されることを特徴とする、前記システム(107)。
【請求項2】
ポンプ手段がポンプ(102)である、請求項1に記載のシステム(107)。
【請求項3】
ポンプ手段(102)が、ループ(110)上に存在する停止手段(101)に結合されている、請求項1または2に記載のシステム(107)。
【請求項4】
停止手段が逆止め弁(101)である、請求項3に記載のシステム(107)。
【請求項5】
第2の濾過手段がフィルタ(104)である、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(107)。
【請求項6】
第2の濾過手段がアブソリュートフィルタ(104)である、請求項5に記載のシステム(107)。
【請求項7】
利用地点(U)が、第2の濾過手段(104)の場所に位置する、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(107)。
【請求項8】
第1の濾過手段(103)が限外濾過フィルタ(103)である、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム(107)。
【請求項9】
少なくとも1つの滅菌手段をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム(107)。
【請求項10】
第1のおよび第2の濾過手段、ならびに隣接する回路構成要素を備える水流ループの一部が、1組の消耗型構成要素(107B)である、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム(107)。
【請求項11】
閉じた水流ループ(110)内に処理水流を作り出すステップを備えた、請求項1−10のいずれか一項に記載されたシステムを用いて処理水を浄化する方法であって、該方法は、ループに処理水を供給する少なくとも1つのステップ(A)と、前記ループ(107)上に存在し、ループ(110)のタンク(10)貯蔵場所に水を配置する少なくとも1つのステップとを備えており、前記浄化する方法が、第1の濾過手段による第1の濾過ステップ(103)と第2の濾過手段(104)による第2の濾過ステップとを含む少なくとも2つの濾過ステップを備えており、前記方法はまた、第2の濾過ステップ(104)の時点で取出しを行う少なくとも1つのステップ(U)を備えており、
前記方法が、ループ(110)内を流れる水の一部をループから分水路(112)に流れさせることにより、第1の濾過手段(103)をパージする少なくとも1つのステップと、ループ(110)内を流れる水を第2の濾過手段(104)とタンク(10)との間に流れさせることにより、第2の濾過手段(104)をパージする少なくとも1つのステップとを備えることを特徴とする、前記方法。
【請求項12】
少なくとも1つの第1の濾過手段(103)による第1の濾過ステップが、限外濾過ステップである、請求項11に記載の浄化する方法。
【請求項13】
少なくとも1つの第2の濾過手段(104)による第2の濾過ステップが、精密濾過ステップ(104)である、請求項11または12に記載の浄化する方法。
【請求項14】
少なくとも1つの滅菌ステップをさらに備える、請求項11から13のいずれか一項に記載の浄化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水の生産および配分を可能にする水濾過構成要素の自動パージを備える水浄化システムに関する。本発明はまた、このようなシステムを使用して水を浄化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
詳細には、分析化学および分析生物学研究所では、数多くの用途が純水または超純水さえ使用する必要がある。これらのシステムはまた、内科療法、たとえば透析のために、または非常に高いレベルの浄化を必要とする(血液、尿などのための)生物学的分析装置のために使用される。
【0003】
水浄化システムは、最も頻繁に分析研究所の設備、内科の血液透析設備、または生物学的分析装置のために、所望の品質の水を生産するために設計されてきた。
【0004】
これに関連して、純水または超純水の分配は、一般に、発熱物質レベル0.005EU/mL以下および細菌レベル100CFU/L以下の浄水の分配を可能にする。CFUは「Colony Forming Unit(コロニー形成単位)」を意味する。EUは、「Endotoxin Unit(内毒素単位)」を意味する。CFUとEUの両方のパラメータは、液体の容積に関して計測される。
【0005】
したがって、図1は、従来技術による水浄化用システム100を示す。
【0006】
図1では、システム100は、利用地点106で利用者に分配される準備ができた、浄化された純水または超純水を生産する。システム100は、供給地点Aで(逆浸透および/または電気脱イオン化により得られる)純水または超純水EVで満たされ、かつ水が流れる方向に、下流に、タンク10の底部に接続された純水または超純水用タンク10を備える流動ループ105と、所望の浄水の流動を利用地点106に提供し、閉流動ループ100内部に流れを維持し、濾過構成要素および流体回路に特有の水頭損失を補償することを可能にするポンプ102と、一般に限外濾過フィルタまたはアブソリュート限外フィルタである濾過構成要素103と、一般にフィルタ膜3を備える精密濾過フィルタであり、浄水ループ105のTコネクタ115上の分水路上に位置決めされた濾過構成要素104とからなる。
【0007】
利用者がシステム100から浄水を抜き取る利用地点106は、膜3の下流の、フィルタ104の場所に位置する。利用者により抜き取られない浄水は、弁101を介してタンク10に向けて閉ループ105の中を流れ続ける。弁101は、一般に較正された弁(またはばね付き逆止め)または吐出し弁のタイプからなる。ポンプ102の組立体および弁101の組立体が、ループ105内に、詳細にはフィルタ104のエントリに圧力を発生させ、十分な流量が、フィルタ出口106で得られ、かつタンク10で、生産された過剰な浄水(または抜き取りが終了した場合、生産された浄水の全体)をさらに再循環させることが可能になる。
【0008】
この流動ループ105上にタンク10が存在することにより、利用者の流動要件に適合する処理水の貯蔵が利用者に提供される。一変形形態(図示されず)によれば、ループ105からの戻りが、タンクを介して通過せずに直接ポンプの上流に作られてもよく、タンク10は、処理すべき水の貯蔵の役割を果たす。
【0009】
フィルタ103および104はそれぞれ、湿ったときに気密性のある少なくとも1つの親水性膜を備える。フィルタ内に含まれる空気またはどんな残留ガスも、水が膜を通過するように、パージされなければならない。このことが、フィルタのコミッショニングだけでなく動作中にも当てはまるのは、流れている水の中に含まれる溶解したどんなガスも、気泡を形成する場合があり、フィルタ内に1つまたは複数の空気ポケットを生成する気泡を形成する場合があり、膜の水頭損失を増大させ、浄水流動ループ内部の水の流量を低減させるためである。
【0010】
この従来技術によれば、利用者は、一定の間隔で、個々のフィルタ103および104用の手動式パージ弁108および109の各々をそれぞれ開けることにより、大気へのガス抜きを行うことが必要とされる。一般に、利用者は、コミッショニングで、その後、動作全体の間に一定間隔で、パージ弁108および109を開ける。これが常に容易であるわけではないのは、手動式パージ弁108または109へのアクセスが制限される場合があり、浄水が、各パージでフィルタ103または104の外部に解放されるためである。さらに、たとえば血液透析装置を維持する場合のように、利用者は患者であり技術者ではない場合があり、これにより、患者に手動式パージを行わせることがなおさら注意を要するようになる。
【0011】
米国特許出願公開第2008/0230450号明細書で説明される他のデバイスが、フィルタの自動パージを得るために、フィルタ通気孔の出口に取り付けられた疎水性膜の特性を使用する。それにもかかわらず、この構成は、圧力が高い(すなわち、疎水性膜の泡立ち点を超える)場合に不要な水を放出するリスク、すなわち水が、通気孔フィルタの孔の能力を奪い、かつ通気孔フィルタがガスを効果的に通過させる能力を低減するという可能性、および/またはこのフィルタを通して微生物を通過させることによる汚染のリスクを伴う。
【0012】
他の2つの前述のデバイスと異なり、たとえば米国特許第5,851,390号明細書で示されるような他のデバイスが、親水性膜を備えて組み立てられた疎水性膜フィルタを使用する。このようなデバイスは自動パージングを可能にする。それにもかかわらず疎水性膜が、フィルタの完全性が計測されるのを妨げるので、フィルタの完全性は保証されることができない。
【0013】
たとえば、米国特許第5,259,54号明細書、米国特許第7,250,619号明細書、米国特許第4,495,67号明細書、および米国特許第4,810,388号明細書で説明される、非発熱性無菌水を生産するための数多くのデバイスが、ライン内で1つまたは複数の使い捨てのフィルタを使用して、1つまたは複数のフィルタ用のどんな再循環ループおよび自動パージングデバイスも存在しない場合に浄水を生産する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0230450号明細書
【特許文献2】米国特許第5851390号明細書
【特許文献3】米国特許第5259954号明細書
【特許文献4】米国特許第7250619号明細書
【特許文献5】米国特許第4495067号明細書
【特許文献6】米国特許第4810388号明細書
【特許文献7】米国特許第5762789号明細書
【特許文献8】英国特許出願公開第2132913号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
生じる問題が、詳細には、デバイスをパージするだけでなく、受け入れることができる使用時間を利用者に保証すると同時に、生産される水の品質を保証するために、利用者による技術的関与をできるだけ避けながら、可能な限り最も純粋な浄水を、つまり、可能な限り汚染の最も少ない浄水を分配することが可能になる水浄化用システムを設計し、生産することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によるシステムにより、有利には、効果的解決策が提供され、かつ従来技術のデバイスの欠点を軽減することが可能になる。
【0017】
この目的のために、本発明の一様態が、水流ループを備える処理水浄化システムにして、前記ループは、浄化される処理水のタンクに向けて閉じられ、前記ループは、タンクの下流に、水が流れる方向に、少なくとも1つのポンプ手段と、少なくとも1つの第1の濾過手段と、少なくとも1つの第2の濾過手段と、利用地点とを連続的に備える処理水浄化システムであって、
少なくとも1つの第1の濾過手段をタンクに連結する少なくとも1つの、好ましくは1つの迂回パイプと、第2の濾過手段をタンクに連結するループ戻りパイプとをさらに備えることを特徴とするシステムに関する。
【0018】
ループ戻りパイプは浄水流パイプである。
【0019】
一般に、第2の濾過手段が膜を備えるとき、利用地点は、第2の濾過手段の膜の下流に位置する。
【0020】
有利には、2つの濾過手段を備えるこのシステムにより、システムに供給する処理水が良好な品質であり、かつ汚染が存在しない場合、良好な品質の水が所与の時間に得られことが可能になる。それにもかかわらず、本発明の好ましい一実施形態によれば、流体回路を定期的に除染することが必要である、および/または好ましい場合がある。
【0021】
迂回パイプおよび戻りパイプはそれぞれ、これらのパイプに関連する濾過手段内に蓄積したどんな残留ガスの自動パージングも行い、水の死容積の除去を行うことを可能にするパージングパイプである。濾過手段が膜を備えるとき、これらのガスは、それぞれ第1のおよび第2の濾過手段の膜の表面に最も頻繁に蓄積していた。さらに、残留ガスは、一般にタンクで大気に戻される。
【0022】
これは非常に有利である。実際には、既存の浄化システムにより、手作業によるパージングだけが行われることが可能になる。しかしながら、このパージング動作は、利用者が患者であり、資格を与えられた技術者ではないので、殊に透析システムで実施するには注意を要する。
【0023】
一般に、迂回パイプに連結された第1の濾過手段は、少なくとも1つの膜を含み、迂回パイプは、第1の濾過手段の1つまたは複数の膜の上流に位置する。
【0024】
本発明によれば、たとえば特許文献である米国特許第5,762,789号明細書または英国特許出願公開第2,132,913号明細書で説明されている、1つの入口および2つの出口を有するフィルタシステムを使用することが、有利には、自動パージング用迂回パイプのための接続を容易にする。
【0025】
迂回パイプは、一般に、好ましくは、濾過手段内に含まれるどんな残留ガスも、この迂回パイプを介して通過する水により移送され、それにより、このガスをタンク内の大気に排出し、死容積のどんなポケットの形成も妨げるように構成される。すべての場合において、迂回パイプ内の水の流量が、第1の濾過手段をパージするのに十分であり、詳細には、第1の濾過手段が膜を備えるとき、前記膜の上流および前記膜上に蓄積したガスをパージするのに十分である。迂回パイプ内の流動は、有利には、たとえば、制限する手段を使用することにより、または迂回パイプを構成する管の直径を低減することにより、制限されてもよい。また、迂回パイプが流動ループの下流部分を構成することも可能である。これは、利用地点で抜き取りがないとき、特に有利である。
【0026】
したがって、迂回パイプは、好ましくは、流動ループ内を流れることができる水の流動のわずかな部分だけがこの迂回パイプを介して通過するように構成される。ここで、「わずかな部分」は、流動の30%以下を、好ましくは5〜10%を意味する。したがって、水の大部分は、一般にループ内を流れる。当業者は、閉流動ループの他のパラメータを考慮して、適切な寸法を迂回パイプに与えることができる。一般に、当業者は、ループを構成するパイプ内の線速度に適合しながら、濾過手段内に蓄積したガスをパージするための迂回パイプの寸法を計算する。これにより、有利には、パイプの壁上のどんなバイオフィルムの形成も回避されることが可能になる。
【0027】
ループ戻りパイプは、一般に、このパイプ内の水流が第2の濾過手段をパージするように構成される。したがって、第2の濾過手段が膜を備えるとき、流れる水が、水の死容積を除去し、かつこの膜の上流およびこの膜上に蓄積したガスをパージするように、膜の上流側の表面を洗い流す。
【0028】
本発明によれば、処理水という用語は、タンク内に存在する水の少なくとも一部が浄化された場合でさえ、タンク内に存在する水に対して使用される。
【0029】
本発明によれば、浄水という用語は、ループ内を流れる水の少なくとも一部が処理され、かつ完全に浄化されていない場合でさえ、ループ内を流れる水に対して使用される。
【0030】
本発明により生産される浄水は、有利には、細菌(100CFU/L未満)および発熱物質(0.005EU/mL未満)を含む、非常に低いレベルの微生物を有する。
【0031】
ポンプ手段は、好ましくはポンプである。さらに、ポンプ手段は、好ましくは、ループ上に存在する停止手段(背圧手段)に結合され、前記停止手段は、好ましくは逆止め弁(またはばね付き逆止め弁)である。ポンプ手段により、有利には、所望の量の浄水が利用地点で提供され、濾過および流体回路の構成要素に特有の水頭損失を補償することにより閉流動ループ内部の流れを維持することが可能になる。
【0032】
本発明によれば、システムは、限外濾過フィルタであることが好ましい第1の濾過手段を備える。この限外濾過フィルタは、一般に少なくとも1つの膜を備える。この限外濾過フィルタは、本発明によれば、カットオフしきい値が一般に1,000Da〜1,000,000Daまで変化する膜を備えるフィルタとして規定される。カットオフしきい値は、求められる性能に従って当業者により選択される。この限外濾過フィルタは、一般に、溶解されても、されなくてもよい、流体中に存在する分子を保持し、分子量は膜の選択のための、保持力の決定要因を構成する。本発明に関連して、保持力しきい値は、一般に水の発熱物質除去を可能にするように選択される。
【0033】
第1の濾過手段はまた、有利には0.1μmまたは0.22μmフィルタの特性と限外濾過フィルタの特性を組み合わせる、正に帯電したアブソリュートフィルタであってもよい。正確に言えば、アブソリュートフィルタの正電荷が、分子量排除ではなく、または分子量排除に加えて、親和力により発熱物質の吸収を可能にする。
【0034】
第1の濾過手段は、一般に、ポンプ手段の下流、かつ利用地点に近接した第2の濾過手段の上流に位置する。
【0035】
第2の濾過手段は、一般にフィルタリング構成要素またはフィルタであり、ほとんどの場合、好ましくはアブソリュートフィルタである。このアブソリュートフィルタは、一般に少なくとも1つの膜を、たとえば孔径0.22μmまたは0.1μmの膜を備えるフィルタを備える。
【0036】
ループ戻りパイプは、このフィルタをパージするためのパイプの役割を果たす。ループ戻りパイプは、一般に、第2の濾過手段が膜フィルタであるとき、ループ内を水が流れる方向に、膜の上流に位置する。
【0037】
好ましくは、本発明によれば、本発明のシステムのすべての濾過手段の完全性が、コミッショニング前に100%まで試験された。
【0038】
利用地点は、一般に第2の濾過手段の場所に、さらにより好ましくは、前記濾過手段上に、ほとんどの場合、ループからの分水路上、かつ第2の濾過手段が膜を備えるときには膜の下流に位置する。したがって、第2の濾過手段は、一般に「最終」とみなされる。
【0039】
これにより、有利には、一般に膜により、ループと利用地点の間の完全な分離が可能になる。第2の濾過手段はまた、ループ上のライン内に位置してもよく、ループ内を流れる水は、第2の濾過手段を構成するフィルタを通過し、利用地点は、前記フィルタの下流のループ上に位置する。それにもかかわらず、これは好ましくない。実際は、このような場合、利用地点は(たとえば膜により)ループから分離されず、抜き取る地点で水の逆汚染のリスクが存在する。
【0040】
その結果、有利には、本発明によれば、各濾過手段は、好ましくは、自動で動作するように適合されたパージラインまたはパイプに結合される。
【0041】
本発明によるシステムはまた、少なくとも1つの滅菌手段をさらに備える。この滅菌手段は、一般に少なくとも1つのU.V.ランプを、好ましくは少なくとも2つのU.V.ランプを備える。有利には、この滅菌手段により、一定期間システムの性能を維持することが可能になる。
【0042】
本発明に関連して、「UVによる滅菌」は、一般に連続動作で、1回または複数回の殺菌性紫外線放射によって、生きた要素を破壊する行為を意味するために使用される。紫外線放射は、ほとんどの場合254nmである。
【0043】
したがって、本発明のシステムは、少なくとも1つの滅菌手段を、たとえばUVランプを、たとえばタンクの場所に、好ましくはタンク内に取り付けられて、備えてもよい。タンクのこの滅菌手段は、タンク内に潜在的に存在する処理水だけでなく、沈められていない領域内のタンクの壁に付着した1つまたは複数の凝縮物も滅菌するように適合される。このような滅菌手段により、有利には、閉ループである流体回路が定期的に、および断続的に(すなわち、一定間隔で、たとえば1日あたり15分の4回の作業で)または連続的に除染されることが可能になる。
【0044】
独立であっても、なくても、本発明のシステムは、流動ループ上に少なくとも1つの滅菌手段を備えてもよい。このような滅菌手段は、好ましくは、ループ上に配置されたU.V.ランプである。流動ループのこの滅菌手段は、有利には、ループ内を流れる水を滅菌するための手段を提供し、ほとんどの場合、第1のおよび第2の濾過手段の上流に位置し、これにより、有利には、ループ内のバイオフィルムの形成および微生物の成長を制限する。
【0045】
滅菌手段は、一般に殺菌性紫外線放射を放出するU.V.水銀灯であり、このランプは、1つまたは複数のLED(「発光ダイオード」)または殺菌性放射を同じく放射する放電ランプにより置換されることができる。
【0046】
本発明によれば、本発明によるシステムの一部が、より具体的には濾過手段、好ましくは両方存在するときには第1のおよび第2の濾過手段、ならびに隣接する回路構成要素を備える流動ループの一部が、1組の消耗型構成要素であることがさらに好ましい。本発明によれば、「消耗型構成要素」は、性能が特定の寿命に対して、または利用地点で分配される浄水の特定の容積に対して適格である使い捨ての構成要素を意味する。
【0047】
消耗型構成要素は、一般に、第1のおよび第2の濾過手段、ならびに隣接するパイプにより構成され、ほとんどの場合、利用地点をさらに備える。
【0048】
1組の消耗型構成要素は、一般に単一の部分を形成し、可能である場合には、照射または他の技法により無菌の、または除染された状態で1組のパッケージングで配送される。これにより、単純な機械的接続手段を使用して、消耗型この部分を迅速かつ簡単に変えることが可能になり、ループの、または1つもしくは複数の濾過構成要素の、汚染のリスクが低減される。1組は、その使用期間中の1組の性能の完全性を保証するためには、寿命が限られている、または水処理能力が限られている。1組はまた、1組がループ上に存在することが解析され、かつ1組の寿命または処理水の容積を追跡することが可能になる検出および認識のための手段を備えてもよい。検出手段は、RFIDタグ、バーコード、メモリ回路、または光学的もしくは機械的な偏向デバイスもしくは他の手段の形をとってもよい。使い捨てのループの両端に無菌コネクタを、たとえばLYNX S2Sコネクタを使用することができ、これにより、使い捨て用品と、無菌コネクタが接続されるシステムの残りの部分との間に無菌接続を作ることができるようになる。
【0049】
本発明による水浄化システムに供給する処理水生産システムは、一般に、イオン交換樹脂タイプまたは電気脱イオン化モジュールの脱イオン化ステップが加えられてもよい逆浸透処理デバイスを備える。
【0050】
本発明はまた、本発明によるシステムの使用法に関する。したがって、本発明は、特にこのようなシステムを使用する方法に関する。前記方法は、一般に、閉水流ループ内に処理水流を作り出すステップを備える、処理水を浄化する方法であって、前記方法は、ループに処理水を供給する少なくとも1つのステップと、前記ループ上に存在する少なくとも1つのタンクに供給することにより貯蔵場所の中に水を置く少なくとも1つのステップとを備え、浄化する方法は、少なくとも2つの濾過ステップを備え、少なくとも1つの第1の濾過手段による第1の濾過ステップは、好ましくは限外濾過ステップであり、少なくとも1つの第2の濾過手段による第2の濾過ステップは、好ましくは精密濾過ステップであり、方法は、第2の濾過ステップの時間に抽出する(または送出する)少なくとも1つのステップを備え、
前記方法は、ループ内を流れる水の一部をループから分水路の中に流れさせることにより、第1の濾過手段をパージする少なくとも1つのステップと、ループ内を流れる水を第2の濾過手段とタンクの間に流れさせることにより、第2の濾過手段をパージする少なくとも1つのステップとを備えることを特徴とする。
【0051】
好ましくは、第1のおよび第2の濾過手段はそれぞれ膜フィルタである。このような場合、好ましい一変形形態によれば、方法は、第1の濾過手段および/または第2の濾過手段からのどんな残留ガスも、タンク内の大気に戻されるようなものである。詳細には、本発明による方法は、有利には、ループ内の水を第1のおよび第2の濾過手段の各々のフィルタ膜の上流で流れさせることにより、自動パージを行い、それにより、死容積を除去し、どんな残留ガスも膜の上流の表面で排出する。
【0052】
本発明による方法は、好ましくは、連続的に行われる、つまり、水はループの中を、および存在する場合にはループの分水路の中を連続的に流れる。本発明による方法は、一般にループ内を流れる水、および/またはタンク内に存在する水を滅菌する少なくとも1つのステップをさらに備えることが好ましい。この滅菌ステップは、一般に、少なくとも1つの滅菌手段により行われる。この実施形態によれば、ループ内を流れる水が、少なくとも1つの滅菌ステップを介して通過するので、この水は連続的に浄化される。
【0053】
利用地点を介して水を抽出するステップは、利用者の必要に従って連続的に、または不連続に実施される。
【0054】
好ましくは、本発明による方法は、充填の開始レベルと充填の停止レベルの間を連続的に、または不連続に、処理水生産システムからタンクを自動充填できるようにするレベルセンサまたは自動充填弁を使用して、タンク内の水の容積を計測する少なくとも1つの追加ステップを備える。
【0055】
本発明は、以下の添付図面に照らしてよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】従来技術による水浄化用システムの図である。
図2】本発明による水浄化用システムの図である。
図3図2のシステムで使用可能な2つの濾過構成要素を使用する使い捨ての、消耗型モジュールの斜視図の形の図である。
図4】同じケーシング内に組み立てられた、図2のシステムで使用可能な2つの濾過構成要素を使用するコンパクトで使い捨ての、消耗型モジュールの断面図の形の図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図面では、同じ参照記号が同一構成要素を表す。
【0058】
図1は、前段で解説された。
【0059】
図2は、本発明による水浄化用システム107の図である。システム107は、固定部分107Aと、使い捨ての、または消耗型部分107Bとを備え、かつタンクを形成する容器10に向けて閉じられた水流ループ110からなる。
【0060】
ループ110は、ループ内を水が流れる方向に、ポンプ102と、膜123を備える限外濾過用の第1のフィルタ103と、膜3を備え、かつ膜3の場所に利用地点U(分水路上)が位置する、精密濾過用の第2のフィルタ104と、最後にタンク10への水の戻り上の弁101とを備える。
【0061】
本発明によれば、システム107は、流動ループ110に対する迂回パイプである、横断するパージパイプ(113、112)を備える。パイプ113、次いでパイプ112は、第1の濾過構成要素103をタンク10に連結し、パージパイプ(112、113)を通して、ループを流れる水のわずかな部分の流動を可能にする。迂回パイプ113は、たとえば、弁などの機械的制限、またはパイプ113で使用される管の直径を特に低減することにより、タンク10に流れる水の流量を調整するための手段111に水を供給し、次いで、パイプ112は、手段111から得られる水をタンク10に運ぶ。
【0062】
パイプ(112、113)はまた、膜123上であらかじめ捕獲された空気および溶解したガスである、パイプ(112、113)の中を流れるガスを排出するための手段(図2に示されず)を備えてもよい。空気排出手段は、フィルタ103の位置決め、パイプ113に向けてのフィルタ103の接続、およびタンク10に対するパイプ112の位置決めのおかげで動作する。次いで、空気および残留し、溶解したガスは、タンク10の中に、次いで大気に排出される。典型的には、タンクは本質的に閉システムであり、ガスがフィルタを横断して移動するが、外部の汚染物質、たとえば汚物、ほこり、または細菌がフィルタを通ってタンク10の中に進むのを妨げることができる疎水性ガスフィルタを介した外側の環境への連絡路である。
【0063】
第2の濾過構成要素104のパージングに役立つその他の迂回パイプが、濾過構成要素104とタンク10の間のループ110の戻りライン114を使用する。このライン114により、膜3の上流側を洗い流すことにより、濾過構成要素104の膜3の上流で捕獲されたどんな残留ガスも、およびこの膜3上のどんなガスも排出することが可能になる。このために、濾過構成要素104は、利用者が出口Uで浄水を利用していないとき、およびすべての浄水がライン114内を流れているとき、膜3の上流の死容積を除去することが有利には可能になる、膜3の上流の入口および出口を所有する。
【0064】
一般に、第1の濾過構成要素103および第2の濾過構成要素104は、これらのパージ出口が上方に置かれるように位置決めされる。これにより、パージの有効性が保証されることが可能になる。
【0065】
さらに、消耗型部分107B用の、3つの流水接続および締結地点A、B、およびCが存在する。したがって、接続地点Cは、ポンプ102の下流かつ第1のフィルタ103の上流に位置するループ110の一部の中に配置される。迂回パイプ113は、接続地点Bを備える。最後に、第2のフィルタ104の下流かつ弁101の上流に位置するループ110の一部が、接続地点Aを備える。
【0066】
推奨される使用時間に到達した、またはさらに付け加えると、水の分析結果が水の品質劣化を示す場合、第1の濾過構成要素103および第2の濾過構成要素104、ならびにこれらに関連するパイプを備える、消耗型部分107Bを、地点A、B、およびCに残る固定部分107Aから分離し、未使用で無菌の新しい部分107Bを取り付けることは非常に容易である。
【0067】
図3および図4はそれぞれ、消耗型部分107’Bおよび107”Bをそれぞれ図式的に表す。
【0068】
図3に表される、消耗型部分またはモジュール107’Bは、3つの接続A、B、およびCだけでなく、機械式ロックシステムも備えるカセット内に置かれた可撓性のある管により連結された別個のフィルタ103および104を使用する。矢印Fは、利用地点Uに向けて、ループ110の中を水の主要な部分が流れる方向を示す。
【0069】
図3に提示される製品例では、地点Bでの迂回パイプ112内の流量は、0.2リットル/分である。ポンプ102を出る地点Cでの水の流量は、1.8リットル/分である。したがって、利用地点Uでは、利用者に対する水の流量は、1.6リットル/分を達成する場合がある。
【0070】
図4に表される、消耗型部分またはモジュール107”Bは、ケースが機械的に一緒に組み立てられるフィルタ103および104を使用し、これにより、部品数の低減、および組み立てるためのコンパクト性が可能になる。フィルタ膜を含むこの使い捨てのモジュール107”Bは、図3の個々のフィルタを置換してもよい、または流体管により接続A、B、およびCに単独で連結されてもよい。
【0071】
本発明は、以下の実施例に照らしてよりよく理解されようが、以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく本発明を例示する。
【0072】
(実施例)
この実施例は、この試験用の供給水の品質に適合したU.V.ランプが存在する、本発明の好ましい一実施形態を示す。当業者は、この実施例が、純水が供給され、かつU.V.ランプの存在なしに実施されることができると考えることができる。
【0073】
以下の表1および表2では、逆浸透(RO)および電気脱イオン化(EDI)水処理システムから得られる処理水を使用して、図2に表されるような固定部分107Aと、U.V.ランプ(図2に示されず、貯水器とポンプ入口の間に位置する)がさらに存在する、図3に示されるような消耗型部分107’Bとを備えるシステムを使って浄化することにより、汚染値が得られた。第1のフィルタ103は、カットオフしきい値が13,000Daである限外濾過膜を備え、第2のフィルタ104は、膜が孔径0.22μmを有するアブソリュートフィルタである。
【0074】
UV水銀灯の出力は17Wである。
【0075】
動作流量は以下のとおりである。
【0076】
ポンプ102の出口:1.8L/分(一定)
パージングパイプ112:0.2L/分(一定)
利用地点Uからの抜き取り:0.5L/分(平均)、1.1L/分(最大値)
供給地点Aに入る処理水の生産量:0.5L/分(一定)
【0077】
測定は135日の期間にわたり行われた。
【0078】
得られた値(平均)が以下の表1に示される。
【0079】
水のサンプルは、サンプリング弁および膜濾過方法(0.45μmの孔サイズの膜を備えるMillipore社のMilliflex)を使用して最終フィルタの出口から得られた。
【0080】
濾過後、膜は、35℃で5日間増殖培地プレート(R2AおよびTSA)上で培養された。
【0081】
培養時間後、膜上のCFUがカウントされ、表1および表2に示される。
【0082】
【表1】
【0083】
毎日の測定値が以下の表2に要約されている。
【0084】
【表2】
【0085】
したがって、使用するのが簡単であり、かつ経時的に安定した方法で超純水が生産されることが可能な、本発明によるシステムの有効性が理解されることができる。
図1
図2
図3
図4