特許第6026539号(P6026539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6026539
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】生物学的生成物の単一容器製造
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20161107BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20161107BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   C12P21/02 A
   C12P21/02 C
   C12P21/08
   C12M1/04
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-529773(P2014-529773)
(86)(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公表番号】特表2014-527808(P2014-527808A)
(43)【公表日】2014年10月23日
(86)【国際出願番号】US2012053079
(87)【国際公開番号】WO2013036429
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】13/227,324
(32)【優先日】2011年9月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514057606
【氏名又は名称】セラピューティック プロテインズ インターナショナル, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ニアジ, サルファラーズ
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0198286(US,A1)
【文献】 特表2008−501347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00−41/00
C12M 1/00−3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的生成物を生産および精製するための方法であって、前記方法は、
a)所定の体積の栄養培地を収めるために好適なバイオリアクターを提供するステップであって、前記バイオリアクターは、
i)少なくとも1つの内部壁および内側体積を有する単回使用可撓性容器と、
ii)前記容器内に位置付けられて下側チャンバおよび上側チャンバを画定する隔壁であって、前記隔壁は、サイズが1μm〜1000μmの範囲の複数の細孔を有し、前記複数の細孔は、前記下側チャンバと前記上側チャンバとの間での流体連通を提供する、隔壁と、
iii)浸漬管を有する前記上側チャンバにおける少なくとも1つの液体入口であって、前記浸漬管は、前記上側チャンバの底部に達し、少なくとも1つのバッファー溶液源、少なくとも1つの栄養培地源、および少なくとも1つの生物学的培養物源と流体連通する、液体入口と、
iv)流量を制御するための弁を有する前記下側チャンバにおける少なくとも1つの液体出口と、
v)圧縮ガス源と流体連通する少なくとも1つのガス入口であって、前記ガス入口は、前記下側チャンバにおいて位置し、前記圧縮ガス源と前記容器との間に位置付けられる滅菌フィルタをさらに備える、ガス入口と、
vi)ガスの流量を制御する手段を有する前記上側チャンバにおける少なくとも1つのガス出口と、
vii)前記栄養培地を加熱または冷却する手段と、
を備える、ステップと、
b)前記上側チャンバにおける前記液体入口を通して、前記栄養培地を前記容器中に導入するステップと、
c)前記栄養培地において成長可能な生物学的培養物を導入し、前記上側チャンバにおける前記液体入口を通して、前記栄養培地における生物学的生成物を前記容器中に分泌するステップと、
d)前記加熱または冷却の手段を使用して、前記液体培地を所定の温度に加熱または冷却するステップと、
e)前記下側チャンバにおける前記ガス入口を圧縮ガス源に接続するステップと、
f)気泡が、前記隔壁における前記細孔を通り抜け、前記上側チャンバ中に入り、また、前記容器における前記栄養培地の表面を突破するための、十分な圧力を有する前記圧縮ガスの前記下側チャンバ中への流動を開始するステップと、
g)所定の流量で所定の時間の長さの間、前記圧縮ガスの流動を継続するステップと、
h)所定の時間間隔で、前記栄養培地における前記生物学的培養物の密度および生存度を検知するステップと、
i)所定の時間間隔で、前記栄養培地における前記生物学的生成物の濃度を検知するステップと、
j)前記栄養培地において、前記生物学的培養物の生存度または前記生物学的生成物の濃度が、所定の値に達する場合、前記圧縮ガスの流動を停止するステップと、
k)十分な量のクロマトグラフィ媒体を、前記液体入口を通して前記上側チャンバ中に加えるステップであって、前記クロマトグラフィ媒体は、前記生物学的生成物の実質的に全てを結合することが可能であって、前記隔壁における前記細孔の直径よりも大きい粒子サイズを有する、ステップと、
l)前記下側チャンバ中への前記圧縮ガスの流動を開始して、前記クロマトグラフィ媒体を撹拌するステップと、
m)必要に応じて、前記液体入口を通して、第1のバッファーを加えることにより、前記栄養培地のpHおよび/または伝導性を調節して、前記生物学的生成物と前記クロマトグラフィ媒体との結合を発生または増強する、ステップと、
n)前記栄養培地中の生物学的生成物の濃度を、それが所定の低値に達するまで、測定するステップと、
o)前記底部チャンバにおける前記液体出口を開放するステップと、
p)前記下側チャンバにおける前記液体出口を通して、前記栄養培地および前記生物学的培養物を除去および廃棄するステップと、
q)前記底部チャンバにおける前記液体出口を閉鎖するステップと、
r)前記容器に、前記上側チャンバにおける前記液体入口を通して、前記クロマトグラフィ媒体を浸すために十分な量で、第2のバッファーを加えるステップであって、前記第2のバッファーは、前記クロマトグラフィ媒体から、結合または非結合の任意の汚染物質を解離させることが可能である、ステップと、
s)前記圧縮ガスの流動を開始して、所定の時間の長さの間、前記クロマトグラフィ媒体を撹拌するステップと、
t)前記下側チャンバにおける前記液体出口を開放して、前記第2のバッファーの流出を可能にし、汚染物質のレベルをモニターし、前記第2のバッファーを廃棄するステップと、
u)必要に応じて、ステップ(r)〜(t)を繰り返して、前記廃棄された第2のバッファー中の汚染物質の所定の低レベルを達成するステップと、
v)前記容器に、前記上側チャンバにおける前記液体入口を通して、前記クロマトグラフィ媒体を浸すために十分な量で、第3のバッファーを加えるステップであって、前記第3のバッファーは、前記クロマトグラフィ媒体から、前記結合および非結合汚染物質をさらに解離させることが可能であり、また、前記生物学的生成物の1%〜5%である、ステップと、
w)前記ガスの流動を開始して、所定の時間の長さの間、前記クロマトグラフィ媒体を撹拌するステップと、
x)前記下側チャンバにおける前記液体出口を開放して、前記第3のバッファーの流出を可能にするステップと、
y)ステップ(x)における前記生物学的生成物の濃度をモニターし、除去された前記第3のバッファーを廃棄するステップと、
z)前記上側チャンバにおける前記液体入口から前記容器に第4のバッファーを加えるステップであって、前記第4のバッファーは、前記生物学的生成物の実質的に全てを前記クロマトグラフィ媒体から解離させることが可能である、ステップと、
aa)前記ガスの流動を開始して、所定の時間の長さの間、前記クロマトグラフィ媒体を撹拌するステップと、
bb)前記下側チャンバにおける前記液体出口を開放して、前記第4のバッファーの流出を可能にするステップと、
cc)ステップ(bb)における前記生物学的生成物の濃度をモニターし、除去された前記第4のバッファーを収集するステップと、
dd)前記第4のバッファー中の前記生物学的生成物が所定の低濃度になるまで、ステップ(z)〜(cc)を繰り返すステップと、
ee)前記第4のバッファーの全ての収集された画分を組み合わせるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(ee)における前記組み合わせられた画分は、必要に応じて、追加的な精製ステップに曝される、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項3】
前記隔壁における前記細孔は、1/32インチ〜1インチ離れている、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項4】
前記容器は、実質的に形状が円筒形、卵形、直方体、丸形、長方形、または正方形である、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項5】
前記容器は、概して、2次元可撓性バッグであり、前記容器の少なくとも内部部分は、生体適合性材料から成る、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項6】
前記容器はさらに、複数のセンサを備える、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項7】
前記生物学的培養物は、細菌、酵母、ハイブリドーマ、バキュロウイルス、哺乳類細胞、または植物細胞を含む、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項8】
前記生物学的生成物は、可溶化封入体、低分子タンパク質、エナメル基質タンパク質、融合タンパク質、タグタンパク質、ホルモン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、ゴナドトロピン、インスリン、ACTH、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、メラニン細胞刺激ホルモン、サイロトロピン、カルシトニン、エンケファリン、アンジオテンシン、サイトカイン、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、グルコースイソメラーゼ、α−アミラーゼ、エンド−β−グルカナーゼ、成長ホルモン(GH)、IGF−1、IGF−2、PTH、PGE、TGF−β、TGF−α、bEGF、EGF、PDGF−AB、PDGF−BB、オステオプロテゲリン(OPG)、オステオポンチン(OP)、FGF−1、FGF−2、甲状腺ホルモン、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−6、BMP−7、VEGF、L25(OH)、ビタミンD、カルシトニン、IFN−アルファ、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、OCN(オステオカルシン)、ON(オステオネクチン)、OP−1(骨形成タンパク質−1)、NGF、コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリノゲン、トロンビン、第XIII因子、組み換えタンパク質、組み換え抗体、および組み換えペプチドから成る群から選択される、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項9】
前記クロマトグラフィ媒体は、イオン交換クロマトグラフィ媒体、疎水性クロマトグラフィ媒体、アフィニティークロマトグラフィ媒体、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項10】
前記クロマトグラフィ媒体は、タンパク質またはペプチドを、リガンドとして含む、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項11】
前記クロマトグラフィ媒体は、前記生物学的生成物に対する特異的親和性を有するクロマトグラフィ媒体を含む、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項12】
前記クロマトグラフィ媒体は、複数のクロマトグラフィ媒体を含む、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項13】
前記クロマトグラフィ媒体粒子は、前記隔壁の前記細孔の直径よりも大きいサイズである、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項14】
ステップ(ee)からの前記生物学的生成物は、別のバイオリアクターに移され、前記ステップ(k)〜(ee)を繰り返す、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項15】
前記方法は、ISO7からISO9の大気汚染防止基準に適合する環境において行なわれる、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【請求項16】
前記容器内に位置付けられる前記隔壁が房状形態である、請求項1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
典型的には細胞培養物が成長されるチャンバであるバイオリアクターは、多くの形態で生産されている。しばしば、バイオリアクターは、哺乳類細胞培養物を成長させるために使用され、ここで、細胞は、抗体または組み換えタンパク質等の細胞外成分を生産する。バイオリアクターはまた、ウイルス生産のためにも使用される。分離プロセスが、バイオリアクターからの所望の成分を濃縮および精製するために行なわれ、これらの成分は、例えば、治療剤または診断剤として有用であり得る。バイオリアクターは、主に、液体の混合およびガス化を提供することによって生物学的培養物を成長させる複合機械的デバイスである。このステップの後で、細胞の分離、栄養培地の体積を減少させるための濾過、クロマトグラフィカラム上への装填、およびいくつかの精製ステップを含むいくつかの追加的ユニットプロセスが続く。近年、短い所要時間で多くの生物学的生成物を生産することに関心が高まりつつあり、なぜなら、特に、これがテロ関連の必要性に対処するために必要になる生成物に関連するためである。これはまた、ワクチンおよび抗体を迅速に開発および製造する必要性を含む。現在の方法は、これらの生成物を製造するために、無菌室の可用性、大きな資本投資、および冗長かつ骨の折れるプロセスを必要とする。至適条件下で生物学的生成物を生産することが可能であり、同一の容器内で生物学的生成物製造の全ステップを組み合わせ可能であり、所有および機能させるためのコストが最低限となるバイオリアクターシステムを作り出すことについての大きな必要性が、満たされていない。追加的に、これは、閉鎖されたシステムであり、この閉鎖されたシステムは、無菌室の必要なく、任意の場所で設置および使用されることができ、ここで、オペレータは、同様に、生成物により保護される。そのような発明は、薬物の発見および製造の過程を変化させ、妥当なコストで、命を救う新しい薬物を人類に提供することを可能にする。独立して、本発明は、テロ対策作戦および伝染病の制御の多くの重要な必要性を担う。
【背景技術】
【0002】
混合およびガス化は、今日、あらゆる利用可能なバイオリアクターが果たす、主要機能である。概して、別個の機械的デバイスが、これらの機能を果たすために、提供されるが、いくつかの事例では、上向きに動く空気の塊が混合機能も提供する気泡リアクターが、使用される。ガス化要件と混合機能性との間の不均衡のため、理想的に2つの機能を1つに組み合わせる(すなわち、流体を混合するようにガス化を使用する)ことは、不可能である。バイオリアクターにおける反応のうちの多くは、生成物を環境から保護し、人員を生成物から保護する環境において行なわれる必要がある。これは、構築および認証のために数百万ドルもかかり得る無菌室設備の設置を必要とする。追加的に、生物学的薬物の精製において必要とされる多くのステップは、生物学的生成物が(例えば、生成物を分泌するCHO細胞から、または封入体としてそれを生産する細菌から)生産されるときのフェーズから独立して行なわれる。
【0003】
機能全体の間、閉鎖されたままである同一の容器内で、生物学的生成物の製造における全ステップ(それらを分泌する細胞を成長させることから、生物学的生成物を分離および精製することまで)を組み合わせるシステムは、生物学的薬物が開発および製造される方法を変化させる。これは、このシステムが製造の迅速な展開を可能にするため、テロ対策作戦において、および公衆を伝染病から保護する場合等、生成物が迅速に製造される必要がある状況にとって最も好適である。非制御環境において生物学的薬物を製造する能力は、種々の生成物を製造することを現在のそのコストの何分の一かで可能にし、その可用性を増加させ、封入されたシステムによって提供される保護は、別の方法では安全に行なわれ得ない生物学的生成物の製造を可能にする。
【0004】
バイオリアクター内で薬物の採取および精製を組み合わせことについての局面は、新規かつ破壊的な技術である。バイオリアクターが細菌または他の細胞を成長させる目的のために専ら使用される一方で、その役割は、バイオリアクター内で完了され得る他のプロセスを含むように拡張可能である。栄養培地において生物学的生成物を発現させて他の成分から分離するためのバイオリアクターを開発することの必要性が、満たされておらず、このバイオリアクターは、バイオリアクター内で生物学的生成物とクロマトグラフィ媒体を結合させ、栄養培地を除き、生物学的生成物を濃縮溶液として溶出させることによって、バイオリアクター内で発現および分離のステップを組み合わせる。これは、生物学的生成物の分離および精製において、少なくとも3つのステップを除く。すなわち、細胞培養物を除去するための濾過または遠心分離、体積減少のための限外濾過の実行、およびバイオリアクターからの選択的溶出による生物学的生成物の精製である。最後の用途は、バイオリアクターをクロマトグラフィカラムにする。
【0005】
濾過、クロマトグラフィ、および精製の時間およびコストがかかるステップは、製造プロセスを減速させ、(特に無菌室環境における)cGMPグレードの製造機能を確立するための実質的資本コスト要件を増大させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一つの局面では、種々の生物学的生成物を調製するための方法を提供する。この方法は、所定の体積の栄養培地を収めるために好適なバイオリアクターを提供することを含み、(a)少なくとも1つの内部壁を有する容器と、(b)容器内に位置付けられて下側チャンバおよび上側チャンバを画定する隔壁と、(c)下側チャンバと上側チャンバとの間に流体連通を提供する複数の細孔を有する隔壁と、(d)少なくとも1つの栄養培地の入口と、(c)少なくとも1つの栄養培地の出口と、(d)少なくとも1つのガスの入口と、(e)少なくとも1つのガスの出口とを備える。バイオリアクターは、(f)栄養培地および(g)生物学的培養物を加え、(h)栄養培地の温度を調節し、(i)ガスの流動を開始して栄養培地を撹拌し、ガスを栄養培地中に吸収させ、十分な時間の長さの間、バイオリアクターを機能させ、生物学的培養物が、所望の生物学的生成物を生産することを可能にすることによって、機能させられる。プロセスがこの時点で停止可能である一方で、それは、ただ一つの封入された容器を使用することによって、(j)クロマトグラフィ媒体をバイオリアクター中に加えて、分泌された生物学的生成物を結合し、次いで、(k)それをいくつかの洗浄および精製ステップに曝し、純粋な形態の生物学的生成物を得ることにより、継続可能である。
【0007】
生物学的生成物を調製する前述の方法は、密閉された容器(好ましくは、2次元可撓性バッグ)の内側で行なわれ、これらの機能が、あまり制御されていない環境で行なわれることを可能にする。さらに、これは、これがヒトに何らかの有害な影響を有する場合、オペレータが生物学的生成物から保護されることを可能にする。
特定の実施形態において、本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
生物学的生成物を生産および精製するための方法であって、前記方法は、
a)所定の体積の栄養培地を収めるために好適なバイオリアクターを提供するステップであって、前記バイオリアクターは、
i)少なくとも1つの内部壁および内側体積を有する単回使用可撓性容器と、
ii)前記容器内に位置付けられて下側チャンバおよび上側チャンバを画定する隔壁であって、前記隔壁は、サイズが1μm〜1000μmの範囲の複数の細孔を有し、前記複数の細孔は、前記下側チャンバと前記上側チャンバとの間での流体連通を提供する、隔壁と、
iii)浸漬管を有する前記上側チャンバにおける少なくとも1つの液体入口であって、前記浸漬管は、前記上側チャンバの底部に達し、少なくとも1つのバッファー溶液源、少なくとも1つの栄養培地源、および少なくとも1つの生物学的培養物源と流体連通する、液体入口と、
iv)流量を制御するための弁を有する前記下側チャンバにおける少なくとも1つの液体出口と、
v)圧縮ガス源と流体連通する少なくとも1つのガス入口であって、前記ガス入口は、前記下側チャンバにおいて位置し、前記圧縮ガス源と前記容器との間に位置付けられる滅菌フィルタをさらに備える、ガス入口と、
vi)ガスの流量を制御する手段を有する前記上側チャンバにおける少なくとも1つのガス出口と、
vii)前記栄養培地を加熱または冷却する手段と、
を備える、ステップと、
b)前記上側チャンバにおける前記液体入口を通して、前記栄養培地を前記容器中に導入するステップと、
c)前記栄養培地において成長可能な生物学的培養物を導入し、前記上側チャンバにおける前記液体入口を通して、前記栄養培地における生物学的生成物を前記容器中に分泌するステップと、
d)前記加熱または冷却の手段を使用して、前記液体培地を所定の温度に加熱または冷却するステップと、
e)前記下側チャンバにおける前記ガス入口を圧縮ガス源に接続するステップと、
f)気泡が、前記隔壁における前記細孔を通り抜け、前記上側チャンバ中に入り、また、前記容器における前記栄養培地の表面を突破するための、十分な圧力を有する前記圧縮ガスの前記下側チャンバ中への流動を開始するステップと、
g)所定の流量で所定の時間の長さの間、前記圧縮ガスの流動を継続するステップと、
h)所定の時間間隔で、前記栄養培地における前記生物学的培養物の密度および生存度を検知するステップと、
i)所定の時間間隔で、前記栄養培地における前記生物学的生成物の濃度を検知するステップと、
j)前記栄養培地において、前記生物学的培養物の生存度または前記生物学的生成物の濃度が、所定の値に達する場合、前記圧縮ガスの流動を停止するステップと、
k)十分な量のクロマトグラフィ媒体を、前記液体入口を通して前記上側チャンバ中に加えるステップであって、前記クロマトグラフィ媒体は、前記生物学的生成物の実質的に全てを結合することが可能であって、前記隔壁における前記細孔の直径よりも大きい粒子サイズを有する、ステップと、
l)前記下側チャンバ中への前記圧縮ガスの流動を開始して、前記クロマトグラフィ媒体を撹拌するステップと、
m)必要に応じて、前記液体入口を通して、第1のバッファーを加えることにより、前記栄養培地のpHおよび/または伝導性を調節して、前記生物学的生成物と前記クロマトグラフィ媒体との結合を発生または増強する、ステップと、
n)前記栄養培地中の生物学的生成物の濃度を、それが所定の低値に達するまで、測定するステップと、
o)前記底部チャンバにおける前記液体出口を開放するステップと、
p)前記下側チャンバにおける前記液体出口を通して、前記栄養培地および前記生物学的培養物を除去および廃棄するステップと、
q)前記底部チャンバにおける前記液体出口を閉鎖するステップと、
r)前記容器に、前記上側チャンバにおける前記液体入口を通して、前記クロマトグラフィ媒体を浸すために十分な量で、第2のバッファーを加えるステップであって、前記第2のバッファーは、前記クロマトグラフィ媒体から、結合または非結合の任意の汚染物質を解離させることが可能である、ステップと、
s)前記圧縮ガスの流動を開始して、所定の時間の長さの間、前記クロマトグラフィ媒体を撹拌するステップと、
t)前記下側チャンバにおける前記液体出口を開放して、前記第2のバッファーの流出を可能にし、汚染物質のレベルをモニターし、前記第2のバッファーを廃棄するステップと、
u)必要に応じて、ステップ(r)〜(t)を繰り返して、前記廃棄された第2のバッファー中の汚染物質の所定の低レベルを達成するステップと、
v)前記容器に、前記上側チャンバにおける前記液体入口を通して、前記クロマトグラフィ媒体を浸すために十分な量で、第3のバッファーを加えるステップであって、前記第3のバッファーは、前記クロマトグラフィ媒体から、前記結合および非結合汚染物質をさらに解離させることが可能であり、また、前記生物学的生成物の1%〜5%である、ステップと、
w)前記ガスの流動を開始して、所定の時間の長さの間、前記クロマトグラフィ媒体を撹拌するステップと、
x)前記下側チャンバにおける前記液体出口を開放して、前記第3のバッファーの流出を可能にするステップと、
y)ステップ(x)における前記生物学的生成物の濃度をモニターし、除去された前記第3のバッファーを廃棄するステップと、
z)前記上側チャンバにおける前記液体入口から前記容器に第4のバッファーを加えるステップであって、前記第4のバッファーは、前記生物学的生成物の実質的に全てを前記クロマトグラフィ媒体から解離させることが可能である、ステップと、
aa)前記ガスの流動を開始して、所定の時間の長さの間、前記クロマトグラフィ媒体を撹拌するステップと、
bb)前記下側チャンバにおける前記液体出口を開放して、前記第4のバッファーの流出を可能にするステップと、
cc)ステップ(bb)における前記生物学的生成物の濃度をモニターし、除去された前記第4のバッファーを収集するステップと、
dd)前記第4のバッファー中の前記生物学的生成物が所定の低濃度になるまで、ステップ(z)〜(cc)を繰り返すステップと、
ee)前記第4のバッファーの全ての収集された画分を組み合わせるステップと
を含む、方法。
(項目2)
ステップ(ee)における前記組み合わせられた画分は、必要に応じて、追加的な精製ステップに曝される、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
(項目3)
前記隔壁における前記細孔は、1/32インチ〜1インチ離れている、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
(項目4)
前記容器は、実質的に形状が円筒形、卵形、直方体、丸形、長方形、または正方形である、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
(項目5)
前記容器は、概して、2次元可撓性バッグであり、前記容器の少なくとも内部部分は、生体適合性材料から成る、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
(項目6)
前記容器はさらに、複数のセンサを備える、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
(項目7)
前記生物学的培養物は、細菌、酵母、ハイブリドーマ、バキュロウイルス、哺乳類細胞、または植物細胞を含む、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
(項目8)
前記生物学的生成物は、可溶化封入体、低分子タンパク質、エナメル基質タンパク質、融合タンパク質、タグタンパク質、ホルモン、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、ゴナドトロピン、インスリン、ACTH、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、メラニン細胞刺激ホルモン、サイロトロピン、カルシトニン、エンケファリン、アンジオテンシン、サイトカイン、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、グルコースイソメラーゼ、α−アミラーゼ、エンド−β−グルカナーゼ、成長ホルモン(GH)、IGF−1、IGF−2、PTH、PGE、TGF−β、TGF−α、bEGF、EGF、PDGF−AB、PDGF−BB、オステオプロテゲリン(OPG)、オステオポンチン(OP)、FGF−1、FGF−2、甲状腺ホルモン、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−6、BMP−7、VEGF、L25(OH)、ビタミンD、カルシトニン、IFN−アルファ、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、OCN(オステオカルシン)、ON(オステオネクチン)、OP−1(骨形成タンパク質−1)、NGF、コラーゲン、フィブロネクチン、フィブリノゲン、トロンビン、第XIII因子、組み換えタンパク質、組み換え抗体、および組み換えペプチドから成る群から選択される、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
(項目9)
前記クロマトグラフィ媒体は、イオン交換クロマトグラフィ媒体、疎水性クロマトグラフィ媒体、アフィニティークロマトグラフィ媒体、またはこれらの混合物を含む、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
(項目10)
前記クロマトグラフィ媒体は、タンパク質またはペプチドを、リガンドとして含む、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
(項目11)
前記クロマトグラフィ媒体は、前記生物学的生成物に対する特異的親和性を有するクロマトグラフィ媒体を含む、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
(項目12)
前記クロマトグラフィ媒体は、複数のクロマトグラフィ媒体を含む、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
(項目13)
前記クロマトグラフィ媒体粒子は、前記隔壁の前記細孔の直径よりも大きいサイズである、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
(項目14)
ステップ(ee)からの前記生物学的生成物は、別のバイオリアクターに移され、前記ステップ(k)〜(ee)を繰り返す、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
(項目15)
前記方法は、ISO7からISO9の大気汚染防止基準に適合する環境において行なわれる、項目1に記載の生物学的生成物を生産および精製するための方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態によるバイオリアクターの側面断面図である。
【0009】
図2図2は、本発明の好ましい実施形態によるバイオリアクターにおける隔壁の局所図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一局面では、本発明は、精製された生物学的生成物を所定の体積の栄養培地から調製するために好適なバイオリアクターと、関連使用方法とを提供する。
【0011】
最初に図1を参照すると、本発明のバイオリアクターの好ましい実施形態の側面断面図が、図示される。この実施形態では、少なくとも1つの内部壁と、必要に応じて、垂直構造15上に添着された容器4のための支持体16とを有する容器4が提供される。
【0012】
容器4は、栄養培地が存在して所望の生物学的生成物の成長が生じる貯蔵部を提供する。容器は、容器内に位置付けられて下側チャンバ12および上側チャンバ20を画定する隔壁13を有し、この隔壁は、下側チャンバと上側チャンバとの間の流体連通を提供する複数の細孔5を有する。追加的に、隔壁13は、加圧の間にそれが膨張することを防止するために、容器の底部に房状化17される。容器4は、ガス入口9を含むいくつかのポートを備え、このガス入口は、滅菌フィルタ7および弁8をさらに備える。ガス入口7は、圧縮ガス源に接続される。ガス源がオンにされると、ガスは、滅菌フィルタ7を通過後、ガス入口9を通して下側チャンバ12に流入する。隔壁13における複数の細孔5がより小さい直径を有するため、隔壁13を横断するガスの流動は、妨害されて、下側チャンバ12の内側に圧力の高まりをもたらす。下側チャンバにおいて臨界圧力に達すると、ガスは、複数の細孔5を通り抜け、上側チャンバ20に侵入し、容器4の内容物を横切り、最後に、容器の中の液体14の表面を突破し、最後に、ガス出口2を通して容器から流出する。容器はまた、液体出口11を通しての栄養培地および生物学的培養物の除去を制御する弁10を含む。上側チャンバ20はさらに、栄養培地および生物学的培養物を容器4に導入するための液体入口1を備え、この液体出口は、バッファー、栄養培地、生物学的培養物、およびクロマトグラフィ媒体への接続18を可能にするマニホールド19を有する。必要に応じて(ptionally)、サンプリングポート3が、その内容物の分析のため栄養培地を定期的に除去するために提供される。
【0013】
図1に戻ると、容器4(特に、さらに本明細書で説明されるような可撓性容器)は、支持体によって支持されることが所望され、後者は、好ましくは、プラットフォーム16および側壁15を備える。プラットフォームおよび側壁は、可撓性容器を支持するよう十分に硬質である限り、任意の好適な材料(例えば、金属または硬質ポリマー)から成ってもよい。望ましくは、図1に図示されるように、プラットフォーム(および、容器)は、床または他の表面に対して持ち上げられる。これは、入口および出口が、側面、またはプラットフォーム上に位置する容器に位置することを可能にする。例えば、図示されるように、この実施形態では、容器4の少なくとも1つのガス入口9は、プラットフォームと同一の広がりがある容器の一部に位置することが所望され、ここで、プラットフォームは、それを通る開口部を含み、プラットフォームを通じ、ガス入口9を通じてガスを容器4内へ通す。容器4は、支持表面16上に位置し、構造の支持表面は、必要な場合、今度は垂直構造15によって支持される。支持表面16の下側表面は、容器4のための冷却加熱の手段6を、追加的に含む。
【0014】
ガス入口9は、容器4と滅菌フィルタ7との間に配される追加的制御弁8を有する。制御弁8は、圧縮ガス源と滅菌フィルタ7との間にある。
【0015】
硬質支持プラットフォーム16は、追加的に、容器4と接触することによって、栄養培地を所望の温度(多くの場合、37°C)に保たせることが可能な、それと反対側に取着された加熱要素6を含む。
【0016】
図2は、隔壁13の局所図を示し、ここで、複数の孔5が、隔壁13の水平表面全体を通して均一または特定のパターンで分布している。より具体的には、隔壁13は、容器4の底部寸法とほぼ同一のサイズのプラスチックの可撓性シートを備え、それは、表面全体を通して均整をとって配された細孔を作り出すように、レーザビームを使用するような機械的手段によって穿孔される。隔壁は、可撓性バッグの上部層と底部層との間に差し挟まれ、房状形態17で底部表面に取着されて、加圧の間に2つの層が分離しないように保つ。下側チャンバにおける圧力は、栄養培地の内側における微細な泡として、細孔5からガスを押し出す。栄養培地は容器4の両チャンバにおいて存在することが、理解される。
【0017】
一般的実施形態
【0018】
第1の実施形態では、本発明は、バッグの内側または外側のいずれにおいても、任意の外部の動作を容器に与えることなく、かつ任意の機械的デバイスを容器に取着させることなく、ガス化の要件にかかわらず、あらゆるタイプの細胞および有機体を成長させることが可能なバイオリアクターを提示する。
【0019】
第2の実施形態では、本発明は、それをクロマトグラフィ媒体と結合させることによって、生物学的生成物を捕捉することにより、バイオリアクターにおける生物学的生成物の採取の容易な手段を提供することによって、バイオリアクターの追加的機能を提示する。機械的(mechanicam)デバイスは、必要とされない。したがって、本発明は、薬物の生物学的製造における少なくとも1つの重要なステップを上流処理と組み合わせる。
【0020】
第3の実施形態では、本発明は、生物学的生成物をバイオリアクター内の栄養培地および生物学的培養物から分離する方法を提供し、生物学的培養物を除去するための栄養培地の遠心分離と、その体積を減少させるための栄養培地の濾過との必要性を除く。
【0021】
第4の実施形態では、本発明は、バイオリアクターにおいて生物学的生成物を精製する方法を提示し、ここで、生物学的生成物をクロマトグラフィ媒体に選択的に結合させて、徐々にそれを溶出させることは、通常、クロマトグラフィカラムにおいて行なわれる同一の機能を果たす。したがって、そのような事例では、本発明は、クロマトグラフィカラムのように作用する。
【0022】
第5の実施形態では、本発明は、最もコストがかかり、かつ時間がかかるステップのうちのいくつかを除くことによって、組み換え薬物製造のコストを実質的に削減する手段を提供する。
【0023】
第6の実施形態では、本発明は、いかなる特別な制約も伴わずに危険な生物学的物質を製造する手段を提供し、また、生物学的生成物を環境および人員から保護する。
【0024】
先行技術
【0025】
本発明は、分離バイオリアクター(separative bioreactor)としても役割を果たす気泡リアクターのタイプである。
【0026】
Fureyの米国特許第7,875,448号は、使い捨てバイオリアクターを教示し、この使い捨てバイオリアクターは、流体培養物を保持するための容器と、該容器内に配置される第1の拡散部と、該容器の底部から培養物を引き出すための出口管と、培養物の少なくとも一部を出口管から該拡散部を通して該容器に戻すための入口管とを備え、該第1の拡散部は、該容器底部の上方に配置され、該容器が流体培養物を保持する際に培養物の中に完全に配置され、ここで、該第1の拡散部は、該容器への該戻り培養物を、該第1の拡散部なしで該入口管を使用して生じるより広くかつより多くの分散流へと散布し、ここで、該第1の拡散部は、該容器への該散布前に、容器の外部源からのガスを該戻り培養物と組み合わせる。本発明の特許請求の範囲は、流体培養物(本発明の栄養培地および生物学的培養物の混合物)の再循環が存在しないため、このバイオリアクターに読み取れない。拡散部が、米国特許7,875,448号では、スクリーンメッシュとして記載されている一方で、本発明は、圧力を発生させてガスを容器中に移す多孔質隔壁を使用する。さらに、先行技術が栄養培地において細胞を成長させる方法を単に説明する一方、本発明は、多孔質隔壁を使用して、フィルタとして作用させ、いくつかの追加的機能を果たす。
【0027】
Hodgeの米国特許7,629,167号は、バイオリアクターシステムを教示し、このバイリアクターシステムは、処理のための生物材料を格納するための使い捨て容器であって、少なくとも1つの入力ポートを含む単一チャンバを備える、使い捨て容器と、入力ポートと関連付けられ、入口ガス流の通過を可能にし、単一チャンバの内部への入口ガス流の付加の前に気泡のサイズおよび分布を制御するために構成される多孔質表面を備え、多孔質表面の細孔サイズが、マクロ、ミクロン、サブミクロン、ナノ、およびそれらの組み合わせから選ばれる、接続部と、使い捨て混合システムであって、多孔質表面の上方、かつ単一チャンバの下側部分において単一チャンバ内に位置付けられるインペラを備え、インペラが、単一チャンバ内に含まれる生物材料が混合されて気泡の循環が増加されるように、インペラに磁気的に連結されて単一チャンバの下側部分の外部にあるモータによって駆動されるように構成される、使い捨て混合システムと、少なくとも1つの排出ポートと、少なくとも1つの採取ポートと、使い捨て容器を支持するための構造と、容器における生物材料の一つまたはそれよりも多くのパラメータを感知するための一つまたはそれよりも多くのセンサと、使い捨て容器の内容物を加熱するためのヒータであって、サーモスタットを有する、ヒータとを備える。ここで提供される多孔質表面が、ガス入口と関連付けられて、本発明に請求されるような容器の底部全体を通して散布される流れを提供しないので、この特許は、本発明に関する先行技術を構成しない。
【0028】
微生物および細胞を培養するための使い捨てバイオリアクターを教示するGaugler et al.の米国特許6,432,698号が、提供される。バイオリアクターは、微生物学または無菌技法に習熟していない個人による使用に好適である。それは、可撓性または半可撓性の防水シートから構築されて、その中で培養される微生物に混合およびガス交換を提供するように設計される容器を形成する。混合およびガス交換は、楔形状または丸底を有する容器の最下端における単一の場所から、または平坦底容器にわたる複数の場所からのいずれかで、培養物を通してガスを気泡化させることによって達成される。この特許は、この発明が容器の底部全体からのガスの拡散を提供するため、先行技術を構成しない。
【0029】
米国特許第5,081,036号は、1.生物学的生成物を液体成長媒体中に放出する細胞を成長させるためのエアリフト式(air lift)バイオリアクターを教示し、このバイオリアクターは、a.細胞および液体成長媒体を受け取って細胞成長のための環境を提供する成長チャンバであって、中央領域を画定する内部側壁を有する、成長チャンバと、b.該成長チャンバの中央領域を通して上方にガス流を緩やかに気泡化させ、それによって、該成長チャンバの中央領域を通して上方に液体成長媒体の緩やかな循環を生じさせ、次いで、該成長チャンバの内部側壁に沿って下方に戻らせるための手段と、c.該成長チャンバ内に位置するステンレス鋼フィラメントスポンジであって、該バイオリアクターが機能中のときに該バイオリアクターにおいて存在する液体成長媒体の緩やかな循環の少なくとも一部と交差し、該ステンレス鋼スポンジは、該液体成長媒体中へのガス流の少なくとも一部の吸収を促進するため、およびスポンジ内に細胞を取り込みまたは付着させるが液体媒体の緩やかな循環を維持するための、十分な表面積およびフィラメント間隔を有する、ステンレス鋼スポンジとを備える。エアリフト式バイオリアクターに関するこの参考文献は、本発明に関する先行技術を構成しない。
【0030】
「調製」機能を提供する気泡リアクターに関する米国特許データベースの検索では、1件の参考文献が得られた。Downsの米国特許第6,723,555号は、複数の発酵管を使用して、既知かつ反復可能な量の、汚染されていない発酵生成物を生産するように構築される発酵装置を教示する。他の生成物処理ステップと適合性があるさらなる処理を促進するために、発酵装置は、容器フレームにおいて配列されるサンプル管のアレイを有する。容器フレームは、発酵中にサンプル管を保持し、管アレイを別の処理ステーションに移し、またはそこから移すように構成される。サンプル管アレイにおけるサンプル管の数に対応して、カニューレアレイは、各カニューレがサンプル管の内側に配され得るように構成される。カニューレアレイは、酸素および/または一つまたはそれよりも多くの他のガスをガス源からカニューレを通してサンプル管中に送達するガス分散器に取着される。各個別サンプル管についての発酵体積がバルク発酵装置より小さいため、発酵生成物収率は、予測可能であり、細胞成長速度は、効果的に最適化され得る。この参考文献は、本発明に関する先行技術を構成しない。
【0031】
Hansen et alの米国特許第7,699,976号は、上昇流機能のために構成される入口および出口を有する管を含む上昇流式バイオリアクターを教示する。隔壁が、管内に位置付けられ、下側チャンバおよび上側チャンバを画定する。隔壁は、上側チャンバと下側チャンバとの間の流体連通を提供する開口部を含む。バイオリアクターはまた、下側チャンバにおける圧力の高まりを解放するための手段を含む。一つの構成では、隔壁は、開放位置および閉鎖位置を有する解放可能部分を含む。解放可能部分は、下側チャンバにおける圧力の高まりに応じて開放位置に動くように構成される。開放位置では、下側チャンバと上側チャンバとの間での流体連通が、増加する。代替として、下側チャンバは、圧力の高まりによって選択的に作動させられる圧力解放ラインを含むことができる。圧力解放機構は、バイオリアクターが閉塞することを防止し、かつ/または高い圧力によって生じるバイオリアクターへの壊滅的損傷を防止することができる。本発明において提供される隔壁は使用中に破られないため、この参考文献は、本発明に関する先行技術を構成しない。
【0032】
「分離」機能を提供する気泡リアクターに関する米国特許データベースの検索では、参考文献は得られなかった。
【0033】
アルゴンヌ国立研究所(www.anl.gov)の科学者は、最近、酸を取り扱うための通常の代謝プロセスに非常に類似する形で、電気的な力を使用して、有機酸を生体触媒からイオン交換膜を横断して濃縮チャンバ中に移された。コスト効率的な方式で電気を提供するために、研究者は、電気再生式脱イオン化(EDI)に目を向けた。EDIは、高純度の水を生産するための確立された商業的技術である。以前に、アルゴンヌ国立研究所の科学者は、それが化学生成物および農産物の脱塩のために使用され得るように、EDIを改変している。これを達成するために、研究者は、ばらばらの(loose)イオン交換クロマトグラフィ媒体ビーズを多孔質クロマトグラフィ媒体ウエハに成形し、高エネルギー効率で希釈レベルにおける電荷の(charge)塩および酸の捕捉を可能にし、従来の処理と比較して、無駄な流れを有意に低減させた。これは、アルゴンヌ国立研究所の分離バイオリアクターについての基礎となった。研究者はまた、膜上での直接酵素固定化が優れた生成物分離をもたらすが、不十分な酵素密度が全体的性能を制限することを、認識した。密度を増加させるために、科学者は、酵素固定化技術を多孔質クロマトグラフィ媒体ウエハに組み入れ、効率的に有機酸を生産および除去することができる材料を作り出した。アルゴンヌ国立研究所が、その分離バイオリアクターを設計する際、研究者は、酵素捕捉クロマトグラフィ媒体ビーズをクロマトグラフィ媒体ウエハの中に組み込んだ。糖類が、固定化された生物触媒によってターゲットの酸に変換され、生成物が、濃縮チャネル中に電気的に移された。これは、緩衝または中和なしで生じる反応をもたらした。アルゴンヌ国立研究所の固定化技術はまた、システムを分解せずに、原位置での(in−situ)、劣化した酵素の取り除きおよび交換を可能にする。分離バイオリアクターに関するアルゴンヌ国立研究所のこの発明は、米国特許第6797140号(Electrodeionization method)、米国特許第6495014号(Electrodeionization substrate,and device for electrodeionization treatment)、US 24060875A1(Electrodeionization method)、US 24115783A1(Immobilized biocatalytic enzymes in electrodeionization)、US 25056547A1(Single stage separation and esterification of cation salt carboxylates using electrodeionization)において記載されている。これらの特許のいずれもが、本発明に関する先行技術を構成しない。
【0034】
分離バイオリアクターを記載している米国特許は、第8,007,647号(Retention of counterions in the separative bioreactor)、第7,981,261号(Integrated device and substrate for separating charged carriers and reducing photocorrosion and method for the photoelectrochemical production of electricity and photocatalytic production of hydrogen)、第7,141,154号(Single−stage separation and esterification of cation salt carboxylates using electrodeionization)を含む。これらの特許のいずれもが、本発明に関する先行技術を構成しない。
【0035】
米国特許第7,977,395号(Electronically and ionically conductive porous material and method for manufacture of resin wafers therefrom)、第7,799,548号(Method of stripping genetically tagged biomolecules from porous solid ion exchange wafer)、第7,507,318号(Devices using resin wafers and applications thereof)、第7,452,920号(Electronically and ionically conductive porous material and method for manufacture of resin wafers therefrom)、および第7,306,934号(Porous solid ion exchange wafer for immobilizing biomolecules)は、生体分子捕捉クロマトグラフィ媒体およびイオン交換クロマトグラフィ媒体の組み合わせを備え、ウエハ内に+2価の遷移金属アニオンを含有する荷電捕捉クロマトグラフィ媒体を形成する多孔質固体イオン交換ウエハを教示する。追加的に、この出願は、分離バイオリアクターを請求し、この分離バイオリアクターは、アノードおよびカソードと、複数の反応チャンバ(少なくともいくつかは、生体分子捕捉クロマトグラフィ媒体およびイオン交換クロマトグラフィ媒体の組み合わせを有する多孔質固体イオン交換ウエハから形成され、該ウエハ内に荷電捕捉クロマトグラフィ媒体を形成し、該荷電捕捉クロマトグラフィ媒体上に固定化された遺伝子的に標識された生体分子を有し、該多孔質固体イオン交換ウエハの各々は、その内に荷電捕捉クロマトグラフィ媒体を有し、それは、カチオン交換膜とアニオン交換膜との間に交互配置される)と、アノードとカソードとの間に電位を供給するための機構とを備える。これらの開示のいずれもが、本発明と共通せず、本発明の不可欠な特徴は、この発明に挙げられていない。
【0036】
要するに、本発明で成される特許請求の範囲が読み取り可能な、文献中の先行技術は存在しない。可撓性多孔質隔壁を使用することによって、ガスを導入し、液体を混合させることと、クロマトグラフィ媒体を使用することによって、生物学的生成物を採取および精製することは、新規、非自明性、かつ有用である。
図1
図2