特許第6026545号(P6026545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6026545
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】液体採取装置およびその方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   G01N1/00 101F
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-532582(P2014-532582)
(86)(22)【出願日】2012年9月3日
(86)【国際出願番号】JP2012005574
(87)【国際公開番号】WO2014033798
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】510108858
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 宣弥
(72)【発明者】
【氏名】北村 圭司
(72)【発明者】
【氏名】西本 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕一
(72)【発明者】
【氏名】外山 宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴史
【審査官】 土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−530188(JP,A)
【文献】 特開2001−116666(JP,A)
【文献】 特開昭60−029150(JP,A)
【文献】 特表2009−515146(JP,A)
【文献】 特表2007−527008(JP,A)
【文献】 特開2004−093194(JP,A)
【文献】 実開昭60−145347(JP,U)
【文献】 特表2010−530969(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/106580(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00〜1/44、33/48〜33/98、35/00〜37/00、A61B5/00〜5/22、G01T1/00〜1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取対象の液体を時系列に分離して採取する液体採取装置であって、
所定の長さを有する流路と、
その流路に接続し前記採取対象の液体を押し引きする吸引吐出手段と、
前記流路を当該吸引吐出手段側に複数に分岐させる第1接続端子と、
前記吸引吐出手段側で前記流路を開閉する第1開閉手段と、
前記流路を採取元側に複数に分岐させる第2接続端子と、
当該第2接続端子で分岐した流路を開閉する第2開閉手段と、
前記第1接続端子で分岐した流路に接続され、分離採取された前記採取対象の液体を滴下する滴下口と
を備え
前記流路はチューブであるとともに、
前記第1開閉手段は、前記チューブの外側から圧力をかけることでチューブからなる流路を閉じて、チューブの外側からの圧力を開放することでチューブからなる流路を開けるピンチバルブであって、
前記第1開閉手段を構成する前記ピンチバルブは、前記チューブからなる2つの流路のうち、一方を開けたときに他方を閉じるように構成されていることを特徴とする液体採取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体採取装置において、
前記第2開閉手段は、前記チューブの外側から圧力をかけることでチューブからなる流路を閉じて、チューブの外側からの圧力を開放することでチューブからなる流路を開けるピンチバルブであることを特徴とする液体採取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体採取装置において、
前記採取対象の液体は血液であって、
液体採取装置は採血するための装置であることを特徴とする液体採取装置。
【請求項4】
採取対象の液体を時系列に分離して採取する液体採取方法であって、
液体採取装置は、
所定の長さを有する流路と、
その流路に接続し前記採取対象の液体を押し引きする吸引吐出手段と、
前記流路を当該吸引吐出手段側に複数に分岐させる第1接続端子と、
前記吸引吐出手段側で前記流路を開閉する第1開閉手段と、
前記流路を採取元側に複数に分岐させる第2接続端子と、
当該第2接続端子で分岐した流路を開閉する第2開閉手段と、
前記第1接続端子で分岐した流路に接続され、分離採取された前記採取対象の液体を滴下する滴下口と
を備え、
液体,気体の少なくともいずれか一方からなる流体を採取対象の液体よりも前記吸引吐出手段側の前記流路に満たし、
前記吸引吐出手段,前記第1開閉手段および前記第2開閉手段を制御して、吸引吐出手段側の流路に満たされた前記流体を吸引吐出手段により押し引きして、採取対象の液体を移動制御し、
前記第2接続端子で分岐した流路に採取対象の液体を流すとともに、前記第1接続端子で分岐した流路に採取対象の液体を流して、第1接続端子で分岐した流路内を流れる液体の方を最優先に採取することを特徴とする液体採取方法。
【請求項5】
請求項4に記載の液体採取方法において、
前記吸引吐出手段側の流路に満たされた前記流体を吸引吐出手段側に吸引することで前記採取対象の液体を吸引し、吸引吐出手段側の流路に満たされた流体を採取元に押し戻すことで採取対象の液体を押し戻し、
前記第1開閉手段は、前記第1接続端子よりも上流に位置する前記流路を第1流路としたときに当該第1流路を開閉し、前記第1接続端子よりも下流で前記滴下口よりも上流に位置する前記流路を第2流路としたときに当該第2流路を開閉するように、第1開閉手段を構成するとともに、
前記吸引吐出手段は、前記第1接続端子で分岐した複数の流路のうち、滴下口を接続する前記第2流路とは別の流路を第3流路としたときに当該第3流路に接続するように、吸引吐出手段を構成し、
前記第2開閉手段は、前記第2接続端子で前記第1流路から分岐した当該第2接続端子よりも下流に位置する流路を第4流路としたときに当該第4流路を開閉するように、第2開閉手段を構成し、
第1開閉手段により、前記第1流路を開けて、前記第2流路を閉じた状態、かつ第2開閉手段により前記第4流路を開けた状態で、吸引吐出手段により前記流体の上流端が第2接続端子に位置するまで吸引吐出手段により当該流体を押し引きすることで、前記採取対象の液体を第4流路に流す第1流出工程と、
その第1流出工程の後に、第1開閉手段により、第1流路を開けて、第2流路を閉じた状態、かつ第2開閉手段により第4流路を閉じた状態で、吸引吐出手段により前記流体の上流端と採取対象の液体との境界が第1接続端子よりも吸引吐出手段側に位置するまで吸引吐出手段により当該流体を吸引することで、当該液体を吸引する第1吸引工程と、
その第1吸引工程の後に、第1開閉手段により、第1流路を閉じて、第2流路を開けた状態、かつ第2開閉手段により第4流路を開けた状態で、前記第1吸引工程で引き出された前記採取対象の液体とともに前記流体を押し戻して、第2流路を経由して流体を滴下口で止めて、採取対象の液体を滴下口から吐出して採取しつつ、採取元側にある当該液体を第4流路に流す第2流出工程と、
その第2流出工程の後に、第1開閉手段により、第1流路を閉じて、第2流路を開けた状態、かつ第2開閉手段により第4流路を開けた状態で、吸引吐出手段により前記流体の上流端が第1接続端子よりも吸引吐出手段側に位置するまで吸引吐出手段により当該流体を吸引することで、採取対象の液体を吸引しつつ、採取元側にある当該液体を第4流路に流す第2吸引・第3流出工程と
を備えることを特徴とする液体採取方法。
【請求項6】
請求項5に記載の液体採取方法において、
前記第2吸引・第3流出工程の後に、前記第1開閉手段により、前記第1流路を開けて、前記第2流路を閉じた状態、かつ前記第2開閉手段により前記第4流路を開けた状態で、前記流体の上流端が前記第2接続端子に位置するまで、前記第2吸引・第3流出工程で引き出された前記採取対象の液体とともに当該流体を押すことで、採取元側にある当該液体を第4流路に流す押し戻し工程を備え、
当該押し戻し工程の後に、前記第1吸引工程,前記第2流出工程および前記第2吸引・第3流出工程を繰り返し行うことを特徴とする液体採取方法。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれかに記載の液体採取方法において、
前記流体は液体および気体であって、
当該液体を前記吸引吐出手段側の前記流路に満たし、
前記吸引吐出手段側の前記流路に満たされた当該液体と前記採取対象の液体との間に前記気体を流路内に挟み込み、
前記吸引吐出手段側の流路に満たされた当該液体を吸引吐出手段により押し引きすることにより前記気体を押し引きして、採取対象の液体を移動制御することを特徴とする液体採取方法。
【請求項8】
請求項4から請求項6のいずれかに記載の液体採取方法において、
前記流体は気体であって、
当該気体を前記採取対象の液体よりも前記吸引吐出手段側の前記流路に満たし、
前記吸引吐出手段側の流路に満たされた当該気体を吸引吐出手段により押し引きして、採取対象の液体を移動制御することを特徴とする液体採取方法。
【請求項9】
請求項4から請求項6のいずれかに記載の液体採取方法において、
前記流体は液体であって、
当該液体を前記採取対象の液体よりも前記吸引吐出手段側の前記流路に満たし、
前記吸引吐出手段側の流路に満たされた当該液体を吸引吐出手段により押し引きして、採取対象の液体を移動制御することを特徴とする液体採取方法。
【請求項10】
請求項4から請求項9のいずれかに記載の液体採取方法において、
前記採取対象の液体は血液であって、
液体採取方法は採血するための方法であることを特徴とする液体採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、採取対象の液体を時系列に分離して採取する液体採取装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体採取装置として、血液を採取する、すなわち採血する採血装置を例にとって説明する。採血装置は、核医学診断(例えば、PET(Positron Emission Tomography)など)における定量解析で用いられる。核医学診断において、神経受容体の濃度や腫瘍の代謝などの生体機能情報を定量解析するためには、動脈血の血漿中の薬剤濃度、すなわち放射能濃度の時間変化の測定が必要となる。血中放射能濃度を測定するための自動採血装置として以下の方式が採用されている(例えば、特許文献1、2、非特許文献1〜3参照)。これらの装置は、小動物(例えばマウスやラットなど)の動脈血中の放射能濃度の測定に用いられている。なお、特許文献2の自動採血装置は他の手法と使用目的が異なる。
【0003】
(特許文献1、非特許文献1)
マウス血圧にて自出された動脈血を、図9に示すようにマイクロチップ(素子)MC上に導く方式である。マイクロチップMCには、1本の主流路F、選択可能な支流路F、および流路洗浄や血液排出用に使用するヘパリン(heparin)溶液Hを流し込み、あるいは使用されたヘパリン溶液Hや血液Bを流し出すための側路Fを配設している。支流路Fの各々の先には容器を配設しており、支流路Fのいずれか1つが、マイクロチップMCに供給されるアルゴンガスGasのガス圧、マイクロチップMCのメカニズムによって選択されるように構成されている。支流路Fのいずれか1つが選択された状態で血液Bを流し込む。各々の流路F,Fが、マイクロチップMCに対して所定の寸法で溝加工したもので形成されており、流し込まれた血液Bの溝長あるいは溝領域がわかれば、その血液Bの微小体積が規定されるのがマイクロチップMCの特徴である。その規定された微小体積によって、予め定められた体積の血液Bが流路内に満ちた状況で、ヘパリン溶液Hの圧入によって所定の受け容器(図示省略)に血液Bを送り込む。その後、各流路F,Fをヘパリン溶液Hで洗浄し、次の採血に備える。受け容器内の血液Bを、生理食塩水とともに別容器に吸い上げ、ウェルカウンタによって血液B中の放射線を計数する。
【0004】
(非特許文献2)
非特許文献2では、動脈に挿入したカテーテルの途中に、カテーテルを挟み込む形で放射線検出器を設置することで、血中放射能濃度を測定する。ダイオードは、長さが30[mm]の細長い形状を有し、長辺方向に沿って血液が入ったチューブを配管することで、検出可能面積を増加させ、β線の検出効率を確保している。カテーテルの他端にはシリンジポンプを接続し、シリンジポンプを一定速度で引いて血液を引き出し、さらにその速度から流量を求めてカテーテルの内径から体積を算出して放射能濃度を計測する。
【0005】
(非特許文献3)
非特許文献3では、図10に示すように動脈Aに挿入したカテーテルCの他端から静脈Vに血液を戻し、カテーテルCの途中にLYSO検出器DおよびペリスタポンプPを設置する。カテーテルC内部を流れる動脈血内のβ線が対消滅することで発生するγ線がLYSO検出器Dに入射して光り、その光は光ファイバFを収集ボックスBで計数する。血液の流量はペリスタポンプPによって制御され、その流量およびカテーテルの内径から制御PCは体積を算出して放射能濃度を計測する。
【0006】
(特許文献2)
5方ジョイントで流路を切り替えて、血液や洗浄液の排出や血液の採取を繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009−515146号公報
【特許文献2】特開2001−116666号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H. -M. Wu, G. Sui, C. -C. Lee, M. L. Prins, W. Ladno, H. -D. Lin, A. S. Yu, M. E. Phelps, and S. -C. Huang, “In vivo quantitation of glucose metabolism in mice using small-animal PET and a microfluidic device”, J Nucl Med, vol. 48, pp. 837-845, 2007.
【非特許文献2】L. Convert, G. M. Brassard, J. Cadorette, D. Rouleau, E. Croteau, M. Archambault, R. Fontaine, and R. Lecomte, “A microvolumetric β blood counter for pharmacokinetic PET studies in small animals,” IEEE Nuclear Sci, vol. 54, no. 1, 2007.
【非特許文献3】“Blood Sampler twilite”、 [online] 、Swisstrace社、インターネット< URL : http://www.swisstrace.ch/blood-sampler-twilite.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの方式については以下の課題がある。特に、上述した特許文献2の場合には、血液を動物体内に押し戻す処理がある。この処理は、失血量を減らすために採血終了毎に毎回実施される。しかし、動物から血液を直接的に採取する場合には、押し戻された血液は動脈の末梢へは流れずに採血部位付近に留まり、結果的に新鮮な血液が採取されないという問題がある。
【0010】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、新鮮な液体を採取することができる液体採取装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、上記の問題を解決するために研究した結果、次のような知見を得た。
【0012】
すなわち、従来では失血を抑制するために血液を採取元の動物に押し戻すという発想を変えて、液体供給側である採取元側から血液を連続的に流し続けることに着目した。そのために、採取元側から分岐した流路に血液を流すとともに、採取元側から離れて分岐した別の流路にも血液を流し、採取元側から離れて分岐した別の流路内を流れる血液の方を最優先に採取することが有効であるという知見を得た。
【0013】
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、この発明に係る液体採取装置は、採取対象の液体を時系列に分離して採取する液体採取装置であって、所定の長さを有する流路と、その流路に接続し前記採取対象の液体を押し引きする吸引吐出手段と、前記流路を当該吸引吐出手段側に複数に分岐させる第1接続端子と、前記吸引吐出手段側で前記流路を開閉する第1開閉手段と、前記流路を採取元側に複数に分岐させる第2接続端子と、当該第2接続端子で分岐した流路を開閉する第2開閉手段と、前記第1接続端子で分岐した流路に接続され、分離採取された前記採取対象の液体を滴下する滴下口とを備え、前記流路はチューブであるとともに、前記第1開閉手段は、前記チューブの外側から圧力をかけることでチューブからなる流路を閉じて、チューブの外側からの圧力を開放することでチューブからなる流路を開けるピンチバルブであって、前記第1開閉手段を構成する前記ピンチバルブは、前記チューブからなる2つの流路のうち、一方を開けたときに他方を閉じるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
この発明に係る液体採取装置によれば、吸引吐出手段により採取対象の液体を能動的に押し引きすることで液体の供給元(採取元)の状況に依らず液体を採取することができる。例えば、動物の場合で採取対象の液体が血液の場合には、動物の生理状態によって血圧が低下しても採血することができる。その結果、たとえ動物の血圧が低下した状況でも、液体を採取することができる。また、所定の長さを有する流路を備えることで、長さが予め規定され体積が既知の流路を有するので、採取対象の液体の長さや採取量を体積測定手段(例えば、光学的な測定手段)で測定することなく、規定の体積量を採取することができる。このように測定手段が不要となることで液体採取装置を小型化することができ、液体の採取元(例えば動物)の近傍することができる。この結果、デッドボリューム(無効となる体積を指す)の減少、delay, dispersionといった濃度波形の歪みの要因の排除を実現している。さらに、第1接続端子および第2接続端子を備えるとともに、第1開閉手段および第2開閉手段を備え、液体供給側である採取元側から第2接続端子で分岐した流路に採取対象の液体を第2開閉手段により流すとともに、採取元側から離れて第1接続端子で分岐した別の流路にも採取対象の液体を第1開閉手段により流すことで、採取元側から採取対象の液体を第2開閉手段により連続的に流し続けることが可能になる。よって、採取元側から離れて流れた採取対象の液体が採取元側(すなわち上流側)に押し戻されることなく、新鮮な液体を常に流し続け、必要なとき(採取時)のみ採取元側から離れて第1接続端子で分岐した流路に採取対象の液体を流して採取することができる。その結果、液体の供給元である採取元から新鮮な液体を採取することができる。
【0015】
上述した流路チューブである。チューブの場合にはチューブの外側から圧力をかけても復元力があるので、後述するピンチバルブによって第1開閉手段あるいは第2開閉手段を構成することができる。また、第1開閉手段、チューブの外側から圧力をかけることでチューブからなる流路を閉じて、チューブの外側からの圧力を開放することでチューブからなる流路を開けるピンチバルブである。内部に液体を通すタイプのバルブ(開閉手段)と比較するとデッドボリュームが小さく、さらにチューブからなる流路のみの交換で済み、第1開閉手段の交換が不要になる。また、ピンチバルブからなる開閉手段は小型であるので、液体の供給元(採取元)の近傍に設置することができ、採取元から開閉手段までの間のデッドボリュームのさらなる減少、delay, dispersionといった濃度波形の歪みの要因の排除を実現することができる。例えば、動物の場合で採取対象の液体が血液の場合には、採取元である動物の近傍にピンチバルブを設置することができる。また、チューブを細い径(細径)で形成することができるので、細径のチューブを流路として用いてピンチバルブで開閉すれば、液体が流れる流路の径が小さくなった結果、流路の体積を減らして、流す液体の体積を小さくすることができる。
【0016】
また、流路の体積を減らして、流す液体の体積を小さくすることで流量を抑えることができる。例えば、採取対象の液体が血液である場合に血液を流し続けることによる失血を最小限に抑えることができる。
【0017】
上述した第1開閉手段を構成するピンチバルブはチューブからなる2つの流路のうち、一方を開けたときに他方を閉じるように構成されている。一方を開けたときに他方を閉じるようにピンチバルブを構成することで、2つの流路の開閉を1つのピンチバルブで行うことができ、第1開閉手段の構成部品を減らすことができる。
【0018】
第1開閉手段と同様に、第2開閉手段の一例はピンチバルブである。第1開閉手段の作用・効果でも上述したように、チューブからなる流路のみの交換で済み、第2開閉手段の交換が不要になる。液体の供給元(採取元)の近傍にピンチバルブを設置することができ、採取元から開閉手段までの間のデッドボリュームをさらに小さくすることができる。
【0019】
上述したこれらの発明に係る液体採取装置において、採取対象の液体の一例は血液である。この場合には、液体採取装置は採血するための装置(採血装置)となる。なお、採取対象の液体であれば、血液に限定されずに、血液以外の生理液(例えばリンパ液やタンパクが含まれた液など)や、蛍光剤が含まれた液体や、分析装置に用いられる混合液などであってもよい。
【0020】
また、この発明に係る液体採取方法は、採取対象の液体を時系列に分離して採取する液体採取方法であって、液体採取装置は、所定の長さを有する流路と、その流路に接続し前記採取対象の液体を押し引きする吸引吐出手段と、前記流路を当該吸引吐出手段側に複数に分岐させる第1接続端子と、前記吸引吐出手段側で前記流路を開閉する第1開閉手段と、前記流路を採取元側に複数に分岐させる第2接続端子と、当該第2接続端子で分岐した流路を開閉する第2開閉手段と、前記第1接続端子で分岐した流路に接続され、分離採取された前記採取対象の液体を滴下する滴下口とを備え、液体,気体の少なくともいずれか一方からなる流体を採取対象の液体よりも前記吸引吐出手段側の前記流路に満たし、前記吸引吐出手段,前記第1開閉手段および前記第2開閉手段を制御して、吸引吐出手段側の流路に満たされた前記流体を吸引吐出手段により押し引きして、採取対象の液体を移動制御し、前記第2接続端子で分岐した流路に採取対象の液体を流すとともに、前記第1接続端子で分岐した流路に採取対象の液体を流して、第1接続端子で分岐した流路内を流れる液体の方を最優先に採取することを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る液体採取方法によれば、この発明に係る液体採取装置を用いて液体を採取するので、採取対象の液体の長さや採取量を体積測定手段(例えば、光学的な測定手段)で測定することなく、規定の体積量を採取することができる。さらに、第2接続端子で分岐した流路に採取対象の液体を流すとともに、第1接続端子で分岐した流路に採取対象の液体を流して、第1接続端子で分岐した流路内を流れる液体の方を最優先に採取するので、液体の供給元である採取元から新鮮な液体を採取することができる。
【0022】
上述したこの発明に係る液体採取方法において、以下のように採取するのが好ましい。
すなわち、液体採取方法において、前記吸引吐出手段側の流路に満たされた前記流体を吸引吐出手段側に吸引することで前記採取対象の液体を吸引し、吸引吐出手段側の流路に満たされた流体を採取元に押し戻すことで採取対象の液体を押し戻し、前記第1開閉手段は、前記第1接続端子よりも上流に位置する前記流路を第1流路としたときに当該第1流路を開閉し、前記第1接続端子よりも下流で前記滴下口よりも上流に位置する前記流路を第2流路としたときに当該第2流路を開閉するように、第1開閉手段を構成するとともに、前記吸引吐出手段は、前記第1接続端子で分岐した複数の流路のうち、滴下口を接続する前記第2流路とは別の流路を第3流路としたときに当該第3流路に接続するように、吸引吐出手段を構成し、前記第2開閉手段は、前記第2接続端子で前記第1流路から分岐した当該第2接続端子よりも下流に位置する流路を第4流路としたときに当該第4流路を開閉するように、第2開閉手段を構成し、第1開閉手段により、前記第1流路を開けて、前記第2流路を閉じた状態、かつ第2開閉手段により前記第4流路を開けた状態で、吸引吐出手段により前記流体の上流端が第2接続端子に位置するまで吸引吐出手段により当該流体を押し引きすることで、前記採取対象の液体を第4流路に流す第1流出工程と、その第1流出工程の後に、第1開閉手段により、第1流路を開けて、第2流路を閉じた状態、かつ第2開閉手段により第4流路を閉じた状態で、吸引吐出手段により前記流体の上流端と採取対象の液体との境界が第1接続端子よりも吸引吐出手段側に位置するまで吸引吐出手段により当該流体を吸引することで、当該液体を吸引する第1吸引工程と、その第1吸引工程の後に、第1開閉手段により、第1流路を閉じて、第2流路を開けた状態、かつ第2開閉手段により第4流路を開けた状態で、前記第1吸引工程で引き出された前記採取対象の液体とともに前記流体を押し戻して、第2流路を経由して流体を滴下口で止めて、採取対象の液体を滴下口から吐出して採取しつつ、採取元側にある当該液体を第4流路に流す第2流出工程と、その第2流出工程の後に、第1開閉手段により、第1流路を閉じて、第2流路を開けた状態、かつ第2開閉手段により第4流路を開けた状態で、吸引吐出手段により前記流体の上流端が第1接続端子よりも吸引吐出手段側に位置するまで吸引吐出手段により当該流体を吸引することで、採取対象の液体を吸引しつつ、採取元側にある当該液体を第4流路に流す第2吸引・第3流出工程とを備えることを特徴とするものである。
【0023】
かかる工程を備えた液体採取方法によれば、第1流出工程,第1吸引工程,第2流出工程,第2吸引・第3流出工程を順に行うことで、第2接続端子で分岐した第4流路に採取対象の液体を流すとともに、第1接続端子で分岐した第2流路に採取対象の液体を流して、第1接続端子で分岐した当該第2流路内を流れる液体の方を最優先に採取することになる。よって、新鮮な液体を効率良く採取することができる。
【0024】
また、第2吸引・第3流出工程の後に、第1開閉手段により、第1流路を開けて、第2流路を閉じた状態、かつ第2開閉手段により第4流路を開けた状態で、流体の上流端が第2接続端子に位置するまで、第2吸引・第3流出工程で引き出された採取対象の液体とともに当該流体を押すことで、採取元側にある当該液体を第4流路に流す押し戻し工程を備え、当該押し戻し工程の後に、第1吸引工程,第2流出工程および第2吸引・第3流出工程を繰り返し行うのが好ましい。新鮮な液体の採取を複数回にわたって効率良く行うことができる。
【0025】
流体としては、下記のように液体および気体の両方、気体のみ、あるいは液体のみが挙げられる。
すなわち、最初の一例は、流体は液体および気体であって、当該液体を吸引吐出手段側の流路に満たし、吸引吐出手段側の流路に満たされた当該液体と採取対象の液体との間に気体を流路内に挟み込み、吸引吐出手段側の流路に満たされた当該液体を吸引吐出手段により押し引きすることにより気体を押し引きして、採取対象の液体を移動制御することである。このように採取対象の液体とは別の液体を流路に詰めて、採取対象の液体との間に気体を挟み込んで押し引きすれば、吸引吐出手段による押し引きによって圧縮または膨張される気体の体積が減るので採取対象の液体を精度良く動かすことができる。さらに、吸引吐出手段側の流路に満たされた液体と採取対象の液体との間に気体を挟み込むことで、前者の液体と後者の(採取対象の)液体とが接触して混合するのを防止することができ、混合により採取の対象の液体が薄まることも防止することができる。
【0026】
また、次の一例は、流体は気体であって、当該気体を採取対象の液体よりも吸引吐出手段側の流路に満たし、吸引吐出手段側の流路に満たされた当該気体を吸引吐出手段により押し引きして、採取対象の液体を移動制御することである。この一例の場合には、気体を媒体として吸引吐出手段により押し引きして、採取対象の液体を移動制御することができる。
【0027】
最後の一例は、流体は液体であって、当該液体を採取対象の液体よりも吸引吐出手段側の流路に満たし、吸引吐出手段側の流路に満たされた当該液体を吸引吐出手段により押し引きして、採取対象の液体を移動制御することである。この一例の場合には、液体を媒体として吸引吐出手段により押し引きして、採取対象の液体を移動制御することができる。
【0028】
上述したこれらの発明に係る液体採取方法において、採取対象の液体の一例は血液である。この場合には、液体採取方法は採血するための方法(採血方法)となる。採血装置でも述べたように、採取対象の液体であれば、血液に限定されずに、血液以外の生理液(例えばリンパ液やタンパクが含まれた液など)や、蛍光剤が含まれた液体や、分析装置に用いられる混合液などであってもよい。
【発明の効果】
【0029】
この発明に係る液体採取装置およびその方法によれば、第2接続端子で分岐した流路に採取対象の液体を流すとともに、第1接続端子で分岐した流路に採取対象の液体を流して、第1接続端子で分岐した流路内を流れる液体の方を最優先に採取するので、液体の供給元である採取元から新鮮な液体を採取することができる。
この発明に係る液体採取装置において、流路はチューブであって、チューブの外側から圧力をかけても復元力があるので、ピンチバルブによって第1開閉手段あるいは第2開閉手段を構成することができる。また、第1開閉手段は、チューブの外側から圧力をかけることでチューブからなる流路を閉じて、チューブの外側からの圧力を開放することでチューブからなる流路を開けるピンチバルブである。よって、第1開閉手段の交換が不要になり、デッドボリュームの減少、delay, dispersionといった濃度波形の歪みの要因の排除を実現することができる。一方を開けたときに他方を閉じるようにピンチバルブを構成することで、2つの流路の開閉を1つのピンチバルブで行うことができ、第1開閉手段の構成部品を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】各実施例に係る採血装置の概略図である。
図2】各実施例に係る一連の採血処理の流れを示したフローチャートである。
図3】実施例1に係る一連の採血動作を順に説明した概略図である。
図4】実施例2に係る一連の採血動作を順に説明した概略図である。
図5】実施例3に係る一連の採血動作を順に説明した概略図である。
図6】第4流路を有さない採血装置の概略図である。
図7図6の採血装置による実験結果の例である。
図8図1の採血装置による実験結果の例である。
図9】従来の微小流体素子方式のときのマイクロチップの全体構成を示す平面図である。
図10】従来の動脈に挿入したカテーテルの他端から静脈に血液を戻す方式のときの採血装置の概略図である。
【実施例1】
【0031】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。図1は、各実施例に係る採血装置の概略図である。後述する実施例2、3も含めて、本実施例1では、採取対象の液体として血液を例に採って説明するとともに、液体採取装置として採血装置を例に採って説明する。
【0032】
図1に示すように、各実施例に係る採血装置1は、採取対象の血液を時系列に分離して採取する。また、採血装置1の周辺には、採取された血液を溜める容器10を設置している。後述する実施例2、3も含めて、本実施例1では、小動物(例えばマウスやラットなど)の動脈血中の放射能濃度を測定する。また、容器10を遠心機(図示省略)で回転させることで遠心分離を行う。各実施例では血液の遠心分離を行うので、血漿分離を行い、血漿分離された血漿および血球に含まれている放射線をそれぞれ測定する。採血装置1は、この発明における液体採取装置に相当する。
【0033】
採血装置1は、所定の長さを有する流路(各実施例では第1流路2,第2流路3,第3流路4および第4流路23)と、その流路のうち第3流路4に接続し採取対象の血液を押し引きする吸引吐出機構5と、流路を複数(各実施例では2つ)に分岐させる接続端子6と、流路(各実施例では第1流路2および第2流路3)を開閉するピンチバルブ7と、分岐した流路(各実施例では第2流路3)に接続され、分離採取された採取対象の血液を滴下する滴下口8とを備えている。第1流路2,第2流路3,第3流路4および第4流路23は、この発明における流路に相当し、第1流路2は、この発明における第1流路に相当し、第2流路3は、この発明における第2流路に相当し、第3流路4は、この発明における第3流路に相当し、第4流路23は、この発明における第4流路に相当し、吸引吐出機構5は、この発明における吸引吐出手段に相当し、接続端子6は、この発明における第1開閉手段に相当し、ピンチバルブ7は、この発明における第1開閉手段に相当するとともに、この発明におけるピンチバルブにも相当し、滴下口8は、この発明における滴下口8に相当する。
【0034】
血液を押し戻す場合を除いて血液の採取の流れを基準にすると、液体の供給元である採取元(各実施例では小動物)側が上流となり、滴下口8側が下流となる。よって、本明細書では、接続端子6よりも上流に位置する流路を第1流路2とし、接続端子6よりも下流で滴下口8よりも上流に位置する流路を第2流路3とする。また、吸引吐出機構5は、滴下口8を接続する第2流路3とは別の流路を第3流路4としたときに当該第3流路4に接続するように、吸引吐出機構5を構成している。
【0035】
流路(第1流路2,第2流路3,第3流路4および第4流路23)は、採血量を減らすために断面積が小さい(すなわち細い径の)チューブを使用している。各実施例では、内径0.28[mm]のポリエチレンチューブと、ピンチバルブ7や後述する(第4流路23を開閉する)ピンチバルブ22でピンチされる部分だけポリエチレンチューブよりも柔らかく復元力のある内径0.5[mm]のシリコーンの一種であるシラスコン(登録商標)からなるチューブ(シラスコンチューブ)とをそれぞれ使用している。また、流路のうち、第1流路2および第2流路3は、吸引吐出機構5による押し引きだけで液体(各実施例では血液)の動きの制御を可能とするように長さが予め決められている。もちろん、吸引吐出機構5に接続された第3流路4についても、長さを予め決めてもよい。
【0036】
吸引吐出機構5は、シリンジポンプを使用する。吸引吐出機構5にシリンジポンプを使うことで数[μL]の液体(各実施例では血液)を高速かつ精度良く押し引きして液体(血液)を採取することができる。また、動物の生理状態によって血圧が変動しても、その影響を受けずに安定して採血することができる。このように、吸引吐出機構5は、精度良く液体(血液)の押し引きが可能なシリンジポンプであり、第1流路2および第2流路3は、予め長さおよび断面積がわかっていることから体積を計算することができるので、吸引吐出機構5で押し引きした体積の分だけ第1流路2または第2流路3の内部を流れる血液を動かす。
【0037】
なお、押し引きによる媒体(流体)として本実施例1では液体および気体を採用する。また、押し引きによる気体については、空気であってもよいし、ヘリウムやネオンやアルゴンなどの希ガス、あるいは窒素ガスに例示されるように、血液やヘパリン溶液と反応しないガスであれば良い。押し引きによる液体については、特に限定されないが、流路洗浄や血液排出用に使用するヘパリン溶液などに代表される洗浄液を用いるのが好ましい。その他にも、血液の制御精度を上げるために水やミネラルオイルのような低粘性の液体が好ましい。
【0038】
第1流路2,第2流路3および第3流路4は接続端子6により接続されている。各実施例では、接続端子6は、微小な流路の穴を有するPDMS樹脂(Polydimethylsiloxane)からなるブロックを使用している。各々の当該穴に第1流路2,第2流路3および第3流路4をそれぞれ接続する。また、上流側を基準にすると、接続端子6は、第1流路2を2つの第2流路3および第3流路4に分岐させることになる。
【0039】
各実施例では、この発明における第1開閉手段は、チューブをピンチするピンチバルブ7を使用している。ピンチバルブ7は、チューブの外側から圧力をかける(図1や後述する図3の「閉塞部7a」を参照)ことでチューブからなる流路(第1流路2および第2流路3)を閉じて、チューブの外側からの圧力を開放することでチューブからなる流路(第1流路2および第2流路3)を開けるように構成されている。また、各実施例では、ピンチバルブ7は、チューブからなる2つの流路(第1流路2および第2流路3)のうち、一方を開けたときに他方を閉じるように構成されている。したがって、ピンチバルブ7は、第1流路2を開けたときに第2流路3を閉じて、逆に第2流路3を開けたときに第1流路2を閉じるように閉塞部7aを切り替える。
【0040】
また、新たに分岐点と開閉手段(第2開閉手段)とを追加している。図1に示すように、流路を採取元側に複数(各実施例では2つ)に分岐させる接続端子21と、接続端子21で分岐した流路(各実施例では第4流路23)を開閉するピンチバルブ22とを備えている。また、接続端子21で第1流路2から分岐した当該接続端子21よりも下流に位置する流路を第4流路23とする。接続端子21は、この発明における第2接続端子に相当し、ピンチバルブ22は、この発明における第2開閉手段に相当する。
【0041】
これにより、第1接続端子に相当する接続端子6は、第1流路2を2つの第2流路3および第3流路4に分岐させ、第1開閉手段に相当するピンチバルブ7は、吸引吐出機構5側で流路(各実施例では第1流路2および第2流路3)を開閉する。さらに、第2接続端子に相当する接続端子21は、第1流路2を2つに分岐させて、分岐した流路のうち、吸引吐出機構5に接続された第1流路2(下流側では第3流路4)とは別の流路を第4流路23として、第2開閉手段に相当するピンチバルブ22は、接続端子21で分岐した第4流路23を開閉する。
【0042】
この発明における第1開閉手段に相当するピンチバルブ7と同様に、この発明における第2開閉手段は、チューブをピンチするピンチバルブ22を使用している。ピンチバルブ7と相違して、ピンチバルブ22は、チューブからなる1つの流路(第4流路23)の開閉を行うように構成されている。図1や後述する図3の閉塞部22aは、ピンチバルブ22によりチューブの外側から圧力をかける(すなわちピンチする)箇所である。
【0043】
次に、一連の採血処理について、図2および図3を参照して説明する。図2は、各実施例に係る一連の採血処理の流れを示したフローチャートであり、図3は、実施例1に係る一連の採血動作を順に説明した概略図である。なお、図3中の符号BLは採取対象の血液であり、図3中の符号Lは採取対象の血液BLとは異なる液体であり、図3中の符号Gは気体である。また、図3では、採取対象の血液BLを黒塗りで図示するとともに、液体Lを点描のハッチングで図示し、気体Gを白塗りで図示する。
【0044】
(ステップS1)第1流出
図3のステップS1は採血前の待機状態を示す。ピンチバルブ7により、第1流路2を開けて、第2流路3を閉じた状態、かつピンチバルブ22により第4流路23を開けた状態で、吸引吐出機構5により流体(本実施例1では液体L・気体G)の上流端が接続端子21に位置するまで吸引吐出機構5により当該流体(液体L・気体G)を押し引きすることで、血液BLを第4流路23に流す。これにより、接続端子21から吸引吐出機構5まで第1流路2および第3流路4内に流体(液体L・気体G)が充填され、動物から引き出された血液BLは、開放状態にある第4流路23へ逃げて流れ続ける。このステップS1は、この発明における第1流出工程に相当する。
【0045】
(ステップS2)第1吸引
ステップS1の第1流出の後に、ピンチバルブ7により、第1流路2を開けて、第2流路3を閉じた状態、かつピンチバルブ22により第4流路23を閉じた状態で、吸引吐出機構5により流体(液体L・気体G)の上流端と血液BLとの境界が接続端子6よりも吸引吐出機構5側に位置するまで吸引吐出機構5により当該流体流体(液体L・気体G)を吸引することで、当該血液BLを吸引する。これにより、第4流路23は閉止状態となり、動物から引き出された血液BLは、接続端子6での分岐点よりも吸引吐出機構5側(図3中の右側)まで矢印の方向に引き出される。このステップS2は、この発明における第1吸引工程に相当する。
【0046】
(ステップS3)第2流出
ステップS2の第1吸引の後に、ピンチバルブ7により、第1流路2を閉じて、第2流路3を開けた状態で(すなわち閉塞部7aを第2流路3から第1流路2に切り替えて)、かつピンチバルブ22により第4流路23を開けた状態で、ステップS1で引き出された血液BLとともに流体(液体L・気体G)を押し戻して、第2流路3を経由して流体(液体L・気体G)を滴下口8で止めて、血液BLを滴下口8から吐出して採取しつつ、採取元側にある当該液体BLを第4流路23に流す。これにより、矢印の方向に第2流路3を経由した血液BLを滴下口8から容器10へ滴下する。その際に、動物から引き出された血液BLは、開放状態にある第4流路23へ逃げて流れ続ける。このステップS3は、この発明における第2流出工程に相当する。
【0047】
(ステップS4)第2吸引・第3流出
ステップS3の第2流出の後に、ピンチバルブ7により、第1流路2を閉じて、第2流路3を開けた状態、かつピンチバルブ22により第4流路23を開けた状態で、吸引吐出機構5により流体(液体L・気体G)の上流端が接続端子よりも吸引吐出手段5側に位置するまで吸引吐出機構5により当該流体(液体L・気体G)を吸引することで、血液BLを吸引しつつ、採取元側にある当該血液BLを第4流路23に流す。これにより、滴下口8で止まっていた流体(液体L・気体G)は第2流路3を経由して接続端子6での分岐点よりも吸引吐出機構5側(図3中の右側)まで矢印の方向に引き出される。一方、動物から引き出された血液BLは、ステップS3から引き続いて開放状態にある第4流路23へ逃げて流れ続ける。このステップS4は、この発明における第2吸引・第3流出に相当する。
【0048】
(ステップS5)採取するか?
引き続いて採血を行う場合には、ステップS6の押し戻しを行った後に戻って、同様のステップS2〜S5の処理を繰り返して行う。採血を行わない場合には、一連の採血処理を終了する。
【0049】
(ステップS6)押し戻し
ステップS4の第2吸引・第3流出の後に、ピンチバルブ7により、第1流路2を開けて、第2流路3を閉じた状態で(すなわち閉塞部7aを第1流路2から第2流路3に切り替えて)、かつピンチバルブ22により第4流路23を開けた状態で、流体(液体L・気体G)の上流端が接続端子21に位置するまで、ステップS4で引き出された血液BLとともに当該流体(液体L・気体G)を押すことで、採取元側にある当該血液BLを第4流路23に流してステップS1に戻る。このように、このステップS6の押し戻しの後に、ステップS2の第1吸引,ステップS3の第2流出およびステップS4の第2吸引・第3流出を繰り返し行う。このステップS6は、この発明における押し戻し工程に相当する。
【0050】
本実施例1に係る採血装置1によれば、吸引吐出機構5により採取対象の液体(各実施例では血液)を能動的に押し引きすることで液体(血液)の供給元(採取元)の状況に依らず液体(血液)を採取することができる。各実施例のように、動物の場合で採取対象の液体が血液の場合には、動物の生理状態によって血圧が低下しても採血することができる。その結果、たとえ動物の血圧が低下した状況でも、液体(血液)を採取することができる。また、所定の長さを有する流路(各実施例では第1流路2,第2流路3,第3流路4および第4流路23)を備えることで、長さが予め規定され体積が既知の流路を有するので、採取対象の液体(血液)の長さや採取量を体積測定手段(例えば、光学的な測定手段)で測定することなく、規定の体積量を採取することができる。このように測定手段が不要となることで液体採取装置(各実施例では採血装置1)を小型化することができ、液体の採取元(各実施例では動物)の近傍に設置することができる。この結果、デッドボリューム(無効となる体積を指す)の減少、delay, dispersionといった濃度波形の歪みの要因の排除を実現している。
【0051】
さらに、第1接続端子に相当する接続端子6および第2接続端子に相当する接続端子21を備えるとともに、第1開閉手段に相当するピンチバルブ7および第2開閉手段に相当するピンチバルブ22を備え、液体供給側である採取元側から接続端子21で分岐した流路(各実施例では第4流路23)に採取対象の液体(血液)をピンチバルブ22により流すとともに、採取元側から離れて接続端子6で分岐した別の流路(各実施例では第2流路3)にも採取対象の液体(血液)をピンチバルブ7により流すことで、採取元側から採取対象の液体(血液)をピンチバルブ22により連続的に流し続けることが可能になる。よって、採取元側から離れて流れた採取対象の液体(血液)が採取元側(すなわち上流側)に押し戻されることなく、新鮮な液体(血液)を常に流し続け、必要なとき(採取時)のみ採取元側から離れて接続端子6で分岐した流路(第2流路3)に採取対象の液体(血液)を流して採取することができる。その結果、液体(血液)の供給元である採取元から新鮮な液体(血液)を採取することができる。
【0052】
各実施例では、流路はチューブである。チューブの場合にはチューブの外側から圧力をかけても復元力があるので、上述したピンチバルブ7,22によって第1開閉手段や第2開閉手段を構成することができる。また、各実施例では、第1開閉手段は、チューブの外側から圧力をかけることでチューブからなる流路を閉じて、チューブの外側からの圧力を開放することでチューブからなる流路を開けるピンチバルブ7である。内部に液体を通すタイプのバルブ(開閉手段)と比較するとデッドボリュームが小さく、さらにチューブからなる流路のみの交換で済み、第1開閉手段の交換が不要になる。また、ピンチバルブ7からなる開閉手段は小型であるので、液体(血液)の供給元(採取元)の近傍に設置することができ、採取元から開閉手段までの間のデッドボリュームのさらなる減少、delay, dispersionといった濃度波形の歪みの要因の排除を実現することができる。各実施例のように、動物の場合で採取対象の液体が血液の場合には、採取元である動物の近傍にピンチバルブ7を設置することができる。また、チューブを細い径(細径)で形成することができるので、細径のチューブを流路として用いてピンチバルブ7で開閉すれば、液体(血液)が流れる流路の径が小さくなった結果、流路の体積を減らして、流す液体(血液)の体積を小さくすることができる。
【0053】
また、流路の体積を減らして、流す液体(血液)の体積を小さくすることで流量を抑えることができる。例えば、各実施例のように採取対象の液体が血液である場合に血液を流し続けることによる失血を最小限に抑えることができる。
【0054】
各実施例では、ピンチバルブ7は、チューブからなる2つの流路(各実施例では第1流路2および第2流路3)のうち、一方を開けたときに他方を閉じるように構成されている。一方を開けたときに他方を閉じるようにピンチバルブ7を構成した場合には、2つの流路の開閉を1つのピンチバルブで行うことができ、第1開閉手段の構成部品を減らすことができる。
【0055】
第1開閉手段に相当するピンチバルブ7と同様に、各実施例では第2開閉手段はピンチバルブ22である。ピンチバルブ7の作用・効果でも上述したように、チューブからなる流路(ここでは第4流路23)のみの交換で済み、第2開閉手段の交換が不要になる。液体(血液)の供給元(採取元)の近傍にピンチバルブ22を設置することができ、採取元から開閉手段までの間のデッドボリュームをさらに小さくすることができる。
【0056】
各実施例では、採取対象の液体として血液を例に説明している。したがって、液体採取装置は採血するための装置、すなわち採血装置1となる。また、液体採取方法は採血するための方法、すなわち採血方法となる。
【0057】
本実施例1に係る採血方法によれば、この発明に係る液体採取装置(各実施例では採血装置1)を用いて液体(血液)を採取するので、採血装置1でも述べたように、採取対象の液体(血液)の長さや採取量を体積測定手段(例えば、光学的な測定手段)で測定することなく、規定の体積量を採取することができる。さらに、接続端子21で分岐した流路(第4流路23)に採取対象の液体(血液)を流すとともに、接続端子6で分岐した流路(第2流路3)に採取対象の液体(血液)を流して、接続端子6で分岐した流路(第2流路3)内を流れる液体(血液)の方を最優先に採取するので、液体(血液)の供給元である採取元から新鮮な液体(血液)を採取することができる。
【0058】
図2図3のステップS1〜S6を備えた採血方法によれば、ステップS1の第1流出,ステップS2の第1吸引,ステップS3の第2流出,ステップS4の第2吸引・第3流出を順に行うことで、接続端子21で分岐した第4流路23に採取対象の液体(血液)を流すとともに、接続端子6で分岐した第2流路3に採取対象の液体(血液)を流して、接続端子6で分岐した当該第2流路3内を流れる液体(血液)の方を最優先に採取することになる。よって、新鮮な液体(血液)を効率良く採取することができる。
【0059】
本実施例1では、ステップS4の第2吸引・第3流出の後に、ピンチバルブ7により、第1流路2を開けて、第2流路3を閉じた状態、かつピンチバルブ22により第4流路23を開けた状態で、流体(本実施例1では液体L・気体G)の上流端が接続端子22に位置するまで、ステップS4で引き出された採取対象の液体(血液)とともに当該流体(液体L・気体G)を押すことで、採取元側にある当該液体(血液)をステップS6の押し戻しで第4流路23に流し、ステップS6の押し戻しの後に、ステップS2の第1吸引,ステップS3の第2流出およびステップS4の第2吸引・第3流出を繰り返し行うのが好ましい。新鮮な液体(液体)の採取(採血)を複数回にわたって効率良く行うことができる。
【0060】
本実施例1では、流体は液体Lおよび気体Gであって、当該液体Lを吸引吐出機構5側の流路に満たし、吸引吐出機構5側の流路に満たされた当該液体Lと採取対象の液体(図1図3では血液BL)との間に気体Gを流路内に挟み込み、吸引吐出機構5側の流路に満たされた当該液体Lを吸引吐出機構5により押し引きすることにより気体Gを押し引きして、採取対象の液体(血液)を移動制御している。このように採取対象の液体(血液)とは別の液体Lを流路に詰めて、採取対象の液体(血液)との間に気体Gを挟み込んで押し引きすれば、吸引吐出機構5による押し引きによって圧縮または膨張される気体Gの体積が減るので採取対象の液体(血液)を精度良く動かすことができる。さらに、吸引吐出機構5側の流路に満たされた液体Lと採取対象の液体(血液)との間に気体Gを挟み込むことで、前者の液体Lと後者の(採取対象の)液体(血液)とが接触して混合するのを防止することができ、混合により採取対象の液体(血液)が薄まることも防止することができる。
【実施例2】
【0061】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。図4は、実施例2に係る一連の採血動作を順に説明した概略図である。上述した実施例1と共通する箇所については、同じ符号を付して、その説明を省略するとともに、図示を省略する。
【0062】
本実施例2に係る採血装置1も、図1に示すように、上述した実施例1に係る採血装置1と同じ構成である。実施例1と相違する点は、本実施例2では、図4に示すように、押し引きによる媒体(流体)として気体のみを採用している点である。図4では、当該気体Gを採取対象の液体(血液)よりも吸引吐出機構5側の流路に満たし、吸引吐出機構側の流路に満たされた当該気体Gを吸引吐出機構5により押し引きして、採取対象の液体(血液)を移動制御している。
【0063】
気体Gについては、特に限定されず、実施例1のような空気であってもよいし、ヘリウムやネオンやアルゴンなどの希ガス、あるいは窒素ガスに例示されるように、血液やヘパリン溶液と反応しないガスであれば良い。図4でも、気体Gを白塗りで図示する。
【0064】
各ステップS1〜S6のフローチャートについては、実施例1と同じであるので、その説明について省略する。
【0065】
本実施例2に係る採血装置1および採血方法の作用・効果については、上述した実施例1と同じであるので、その説明を省略する。本実施例2の場合には、気体Gを媒体として吸引吐出機構5により押し引きして、採取対象の液体(血液)を移動制御することができる。
【実施例3】
【0066】
次に、図面を参照してこの発明の実施例3を説明する。図5は、実施例3に係る一連の採血動作を順に説明した概略図である。上述した実施例1、2と共通する箇所については、同じ符号を付して、その説明を省略するとともに、図示を省略する。
【0067】
本実施例3に係る採血装置1も、図1に示すように、上述した実施例1、2に係る採血装置1と同じ構成である。実施例1、2と相違する点は、本実施例3では、図5に示すように、押し引きによる媒体(流体)として液体のみを採用している点である。図5では、当該液体Lを採取対象の液体(血液)よりも吸引吐出機構5側の流路に満たし、吸引吐出機構側の流路に満たされた当該液体Lを吸引吐出機構5により押し引きして、採取対象の液体(血液)を移動制御している。
【0068】
押し引きによる媒体(流体)として液体のみを採用した場合、液体と採取対象の液体(血液)と接触する。そのため滴下の際に採取対象の液体(血液)とともに媒体(流体)である液体も一緒に滴下されることを避ける目的で、採取対象の液体(血液)すべてを滴下口から押し出しきらないようにする。
【0069】
液体Lについては、特に限定されず、実施例1のようにヘパリン溶液や水やミネラルオイルである。図5でも、液体Lを点描のハッチングで図示する。
【0070】
各ステップS1〜S6のフローチャートについては、実施例1、2と同じであるので、その説明について省略する。
【0071】
本実施例3に係る採血装置1および採血方法の作用・効果については、上述した実施例1、2と同じであるので、その説明を省略する。本実施例3の場合には、液体Lを媒体として吸引吐出機構5により押し引きして、採取対象の液体(血液)を移動制御することができる。
【0072】
[実験結果]
続いて、各実施例に係る図1の採血装置と、第4流路を有さずに血液を極力廃棄しない図6の採血装置とを比較して得られた実験結果(図7および図8)について述べる。図6は、第4流路を有さない採血装置の概略図であり、図7は、図6の採血装置による実験結果の例であり、図8は、図1の採血装置による実験結果の例である。図1と共通する箇所については、同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0073】
また、図7および図8の横軸は時間軸(「time[sec]」で表記)であり、縦軸は血中放射能濃度(「activity concentration[kBq/μL]」で表記)である。全血(「Whole Blood」で表記)と血漿分離された血漿(「Plasma」で表記)との両方でそれぞれ測定している。内枠のグラフは、外枠のグラフの時間軸を拡大したものである。
【0074】
図6では、図1と相違して、接続端子21,ピンチバルブ22および第4流路23を有さず、血液を極力廃棄しない構成となっている。また、図1の第2流路3および滴下口8は採取専用であったのに対して、図6の第2流路3および滴下口8は採取とともに、不要な血液を排出して廃棄する機能を兼ねた構成となっている。
【0075】
よって、図6では、不要な血液を排出して廃棄する際には、滴下口8の直下に容器10が位置しないように、滴下口8を移動させる滴下口移動機構9を備えている。この滴下口移動機構9は、分離採取された採取対象の血液を滴下する位置を変えるために滴下口8を移動させる機能をも有している。滴下口移動機構9は、ステッピングモータによる電動スライダを使用し、電動スライダにより滴下口8を前後左右(水平方向)に移動させる。
【0076】
図6の場合には、特許文献2でも述べたように、失血量を減らすために血液を動物体内に押し戻す処理が採血終了毎に毎回実施される。採血間隔が10秒,20秒と短い場合、血液を押し戻した直後に次の採血タイミングが来て血液を引き出すので、押し戻した血液を採血することになってピークを持つはずの血中放射能濃度が、図7の内枠のグラフに示すようにピークがブロードになって正確に測定することができない。
【0077】
一方、図1の場合には、上述したように常に新鮮な血液を採取することができる。したがって、図8の内枠のグラフに示すように血中放射能濃度の急峻なピークが得られている。
【0078】
図8の実験結果は40分という長時間にわたる実験であるので、第4流路23から血液を流し続けると動物が失血死を起こす。そこで採血間隔が長くなる5分以降は、次の採血までの待機時間にピンチバルブ22を閉じて第4流路23からの血液の流れを止めて失血を抑え、次の採血の少し前にピンチバルブ22を開けて第4流路23を開放して押し戻した血液を放出して新鮮な血液を得る。
【0079】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0080】
(1)上述した各実施例では、液体採取装置(各実施例では採血装置1)およびその方法において、採取対象の液体として血液を例に採って説明したが、採取対象の液体であれば、血液に限定されずに、血液以外の生理液(例えばリンパ液やタンパクが含まれた液など)や、蛍光剤が含まれた液体や、分析装置に用いられる混合液などであってもよい。
【0081】
(2)上述した各実施例では、第1接続端子は、第1流路2を2つの第2流路3および第4流路4に分岐させて、分岐数は2つであったが、複数であれば3つ以上であってもよく、第1接続端子は流路を3つ以上に分岐させてもよい。例えば、図1の第1流路2を2つ以上の第2流路3に分岐させて、滴下口を同数に備えてもよいし、途中で合流させてもよい。同様に、図1の第1流路2を2つ以上の第3流路4に分岐させて、吸引吐出手段(吸引吐出機構)を同数に備えてもよいし、途中で合流させてもよい。また、排出専用の流路を第4流路23とは別に別途に設けて、第1接続端子は流路を3つ以上に分岐させてもよい。同様に、第2接続端子も上述した各実施例では分岐数は2つであったが、複数であれば3つ以上であってもよく、第2接続端子は流路を3つ以上に分岐させてもよい。例えば、図1の第4流路を2つ以上に分岐させてもよいし、途中で合流させてもよい。
【0082】
(3)上述した各実施例では、流路はチューブであったが、例えば基板等に設けられた溝であってもよい。その場合には、第1開閉手段や第2開閉手段については、ピンチバルブ以外の内部に液体を通すタイプのバルブを使用して、溝を開閉するのが好ましい。
【0083】
(4)上述した各実施例では、第1開閉手段や第2開閉手段はピンチバルブであったが、上述した変形例(3)でも述べたように、ピンチバルブ以外の内部に液体を通すタイプのバルブであってもよい。
【0084】
(5)上述した各実施例では、ピンチバルブでピンチされる部分だけシラスコンチューブで第1流路,第2流路および第4流路を形成したが、シラスコンに限定されない。シリコーン、タイゴン(登録商標)、ポリウレタンなどの柔らかく復元力のあるゴム系の材質のチューブで各流路を形成してもよい。また、ピンチされる部分だけ材質を変えず、第1流路,第2流路および第4流路、あるいは第1〜第4流路全体が同一の素材であってもよい。
【0085】
(6)上述した各実施例では、ピンチバルブ7は、チューブからなる2つの流路(各実施例では第1流路2および第2流路3)のうち、一方を開けたときに他方を閉じるように構成されていたが、ピンチバルブ22と同様に、チューブからなる1つの流路(各実施例では第4流路23)の開閉を行うように構成されていてもよい。例えば、図1の場合には、第1流路2のみの開閉を行う第1流路専用のピンチバルブ、第2流路3のみの開閉を行う第2流路専用のピンチバルブをそれぞれ備えてもよい。
【0086】
(7)上述した各実施例では、滴下口移動手段(滴下口移動機構)を備えなかったが、図6に示すような滴下口移動機構9を備えてもよい。滴下先の収容部(溝)が複数存在する場合には、各々の収容部の位置に合わせて滴下口8を滴下口移動機構9が移動させることで、各々の収容部に液体をそれぞれ滴下することができる。また、滴下先の容器の方を移動させる場合には、この発明に係る液体採取装置(各実施例では採血装置1)では滴下口移動手段が不要となる。もちろん、この発明に係る液体採取装置(各実施例では採血装置1)が滴下口移動手段を備えるとともに、滴下先の容器の方を移動させる移動手段を備え、滴下口と滴下先の容器とを相対的に移動(一方を固定して他方を移動、あるいは両方を移動)させてもよい。また、滴下口移動手段の移動方向は平行移動に限定されず、回転方向であってもよい。
【0087】
(8)上述した各実施例では、第4流路を流れる液体を廃棄したが、さほどに新鮮な液体を必要とせずに二次利用を行う場合には、必ずしも第4流路を流れる液体を廃棄する必要はない。第1接続端子(各実施例では接続端子6)で分岐した流路内を流れる液体の方を最優先に採取するのであれば、第2接続端子(各実施例では接続端子21)で分岐した流路に採取対象の液体をも採取して再利用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 … 採血装置
2 … 第1流路
3 … 第2流路
4 … 第3流路
5 … 吸引吐出機構
6,21 … 接続端子
7,22 … ピンチバルブ
8 … 滴下口
BL … 血液
L … 液体
G … 気体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10