(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6026546
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】電子デバイスの製造装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 67/00 20060101AFI20161107BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20161107BHJP
H01G 4/12 20060101ALI20161107BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20161107BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20161107BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20161107BHJP
【FI】
B29C67/00
H01G13/00 391E
H01G4/12 448
H05K1/16 A
B33Y10/00
B33Y30/00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-535313(P2014-535313)
(86)(22)【出願日】2012年9月13日
(86)【国際出願番号】JP2012073539
(87)【国際公開番号】WO2014041670
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】児玉 誠吾
(72)【発明者】
【氏名】塚田 謙磁
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政利
【審査官】
鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−98280(JP,A)
【文献】
特開平7−40445(JP,A)
【文献】
特表2010−512255(JP,A)
【文献】
特表平7−501019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00−67/08
H01G 4/12,13/00
H05K 1/16
B33Y 10/00,30/00,70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形対象となる三次元形状の電子デバイスを所定厚みでスライスした複数層の断面形状を積層して三次元形状の電子デバイスを製造する電子デバイスの製造装置において、
複数種の材料を用いて各層の断面形状をその下層の断面形状に積層するように形成する断面形状形成手段と、
前記断面形状形成手段により各層の断面形状を形成する毎に当該断面形状に紫外光、レーザ光、可視光、電子線のいずれかを照射して当該断面形状を硬化又は焼結する固化手段と
を備え、
前記断面形状形成手段は、液滴吐出法により液状の材料を吐出して断面形状を形成する第1造形手段と、粉末状の材料を層状に敷き詰めて液滴吐出法によりバインダーを吐出してその吐出領域の粉末状の材料を結合して造形する第2造形手段とを有し、造形に使用する材料の種類に応じて前記第1造形手段と前記第2造形手段とを使い分けて造形することを特徴とする電子デバイスの製造装置。
【請求項2】
前記断面形状形成手段は、前記第1造形手段及び前記第2造形手段に加え、粉末状の材料を層状に敷き詰めてレーザ光を照射してその照射領域の粉末状の材料を焼結して造形する第3造形手段を有し、造形に使用する材料の種類に応じて前記第1造形手段と前記第2造形手段と前記第3造形手段とを使い分けて造形することを特徴とする請求項1に記載の電子デバイスの製造装置。
【請求項3】
前記複数種の材料は、導電性材料、絶縁性材料、誘電性材料、抵抗体材料、半導体性材料のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子デバイスの製造装置。
【請求項4】
造形対象となる三次元形状の電子デバイスを所定厚みでスライスした複数層の断面形状を積層して三次元形状の電子デバイスを製造する電子デバイスの製造方法において、
複数種の材料を用いて各層の断面形状をその下層の断面形状に積層するように形成する断面形状形成工程と、
各層の断面形状を形成する毎に当該断面形状に紫外線、レーザ光、可視光、電子線のいずれかを照射して当該断面形状を硬化又は焼結する工程と
を含み、
前記断面形状形成工程では、液滴吐出法により液状の材料を吐出して断面形状を形成する第1造形方法と、粉末状の材料を層状に敷き詰めて液滴吐出法によりバインダーを吐出してその吐出領域の粉末状の材料を結合して造形する第2造形方法とを、造形に使用する材料の種類に応じて使い分けて造形することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形対象となる三次元形状の電子デバイスを所定厚みでスライスした複数層の断面形状を積層して三次元形状の電子デバイスを製造する電子デバイスの製造装置及びその製造方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、特許文献1(特開平11−274671号公報)に記載されているように、インクジェット法により基板に導電性材料、絶縁性材料、誘電性材料、抵抗体材料等のいずれかを噴射して、基板に、配線パターン、コイル、コンデンサ、抵抗、能動素子等の回路素子を形成するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−274671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクジェット法により三次元形状の電子デバイスを形成する場合は、三次元形状の電子デバイスを所定厚みでスライスした複数層の断面形状を積層して三次元形状の電子デバイスを製造する必要がある。この場合、1層分の断面形状の印刷を行う毎にワークを焼成炉に移し替えて焼成し、焼成後のワークを印刷装置に戻して次の層の断面形状の印刷を行うという工程を繰り返して三次元形状の電子デバイスを製造するため、各層の断面形状の印刷毎にワークの位置決めが必要となる。しかも、印刷に使用する材料の種類によっては、焼成毎に焼成収縮したり熱膨張したりして、変形するため、各層の印刷毎に焼成による変形に対する補正を行う必要がある。更に、ワークを何回も焼成すると、ワークの加熱・冷却が何回も繰り返されて、ワークが熱膨張・収縮を繰り返すことになり、それによって、ワークにクラック(ひび割れ)や剥離等が生じる可能性があり、不良発生率が増加する原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、造形対象となる三次元形状の電子デバイスを所定厚みでスライスした複数層の断面形状を積層して三次元形状の電子デバイスを製造する電子デバイスの製造装置及びその製造方法において、複数種の材料を用いて各層の断面形状をその下層の断面形状に積層するように形成する断面形状形成手段(断面形状形成工程)と、前記断面形状形成手段(断面形状形成工程)により各層の断面形状を形成する毎に当該断面形状に紫外線、レーザ光、可視光、電子線のいずれかを照射して当該断面形状を硬化又は焼結する固化手段(固化工程)とを備え
、前記断面形状形成手段(断面形状形成工程)は、液滴吐出法により液状の材料を吐出して断面形状を形成する第1造形手段(第1造形方法)と、粉末状の材料を層状に敷き詰めて液滴吐出法によりバインダーを吐出してその吐出領域の粉末状の材料を結合して造形する第2造形手段(第2造形方法)とを有し、造形に使用する材料の種類に応じて前記第1造形手段(第1造形方法)と前記第2造形手段(第2造形方法)とを使い分けて造形することを特徴とするものである。
【0006】
本発明のように、複数種の材料を用いて各層の断面形状をその下層の断面形状に積層するように形成し、各層の断面形状を形成する毎に当該断面形状に紫外光、レーザ光、可視光、電子線のいずれかを照射して当該断面形状を硬化又は焼結するようにすれば、各層の断面形状の形成と固化(硬化又は焼結)をワークを移し替えることなく同じ位置で行うことが可能となり、ワークの位置決めを何回も行う必要がなく、1回の位置決めで済む。しかも、紫外線、レーザ光、可視光、電子線のいずれかを照射して断面形状を固化するため、固化の際にワークに局所的に光エネルギ等を照射するだけで済み、固化の際のワークの変形を少なくすることができて、固化時の変形に対する補正を不要又は少なくすることができる。更に、1層毎のワークの熱膨張・収縮を少なくすることができて、ワークにクラ
ック(ひび割れ)や剥離等が生じにくくなり、不良発生率を低減できる。
【0007】
この場合、各層の断面形状
を造形
する断面形状形成手段(断面形状形成工程)は、インクジェット印刷やディスペンサ等による液滴吐出法により液状の材料を吐出して断面形状を形成する
第1造形手段(第1造形方法)と、粉末状の材料を層状に敷き詰めて、液滴吐出法によりバインダーを吐出してその吐出領域の粉末状の材料を結合して造形する
第2造形手段(第2造形方法)を、使用する材料の種類によって造形方法を使い分けて造形するようにしたり、或は、第1造形手段(第1造形方法)と第2造形手段(第2造形方法)と粉末状の材料を層状に敷き詰めて、レーザ光を照射してその照射領域の粉末状の材料を焼結して造形
する第3造形手段(第3造形方法)とを、使用する材料の種類によって造形方法を使い分けて造形するようにしても良い。
【0008】
造形に使用する複数種の材料は、導電性材料、絶縁性材料、誘電性材料、抵抗体材料、半導体性材料のいずれかを用いれば良い。例えば、配線パターンやコンデンサの電極を形成する部分には、導電性材料を用いれば良く、また、絶縁層を形成する部分には、絶縁性材料を用いれば良く、また、コンデンサの誘電体層を形成する部分には、誘電性材料を用いれば良く、抵抗体を形成する部分には、抵抗体材料を用いれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本発明の実施例1の製造方法で造形する電子デバイスを示す斜視図である。
【
図2】
図2は実施例1の製造方法で造形する電子デバイスを所定厚みでスライスした複数層の断面形状を示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)〜(d)は実施例1の製造方法を説明する工程図である。
【
図4】
図4(a)〜(f)は実施例2の製造方法を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した2つの実施例1,2を説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例1を
図1乃至
図3に基づいて説明する。
本実施例1の製造方法で造形する三次元形状の電子デバイス11は、例えばパソコンのマウス等のように、樹脂部分(絶縁部分)と金属部分(導電性部分)とからなる立体構造物であり、当該電子デバイス11を所定厚みでスライスした複数層の断面形状12を回路基板13上に積層して造形する。
【0012】
本実施例1では、インクジェット印刷装置14を用いて電子デバイス11を造形する方法を
図3を用いて説明する。
【0013】
インクジェット印刷装置14には、導電性材料を噴射するインクジェットヘッド15、絶縁性材料を噴射するインクジェットヘッド16、抵抗体材料を噴射するインクジェットヘッド17、誘電性材料を噴射するインクジェットヘッド18、半導体性材料を噴射するインクジェットヘッド19等が搭載されている。更に、このインクジェット印刷装置14には、各層の印刷毎にその印刷部分に紫外光、可視光等の光エネルギを照射して硬化又は焼成する紫外光源21、可視光源22、レーザ光源(図示せず)等が搭載されている。インクジェット印刷装置14の記憶装置(図示せず)には、造形対象となる三次元形状の電子デバイス11を所定厚みでスライスした複数層の断面形状データがサーバー(図示せず)等からダウンロードされて保存されている。
【0014】
電子デバイス11を造形する場合は、まず、インクジェット印刷装置14に回路基板13を搬入して該回路基板13を所定の印刷位置に位置決めしてクランプ装置(図示せず)でクランプした状態にする。
【0015】
この後、インクジェット印刷装置14の記憶装置に保存されている1層目の断面形状データを読み込み、その断面形状データに従ってインクジェットヘッド15〜19を駆動して回路基板13上に導電性材料、絶縁性材料、誘電性材料、抵抗体材料、半導体性材料のいずれかを噴射して1層目の断面形状12を印刷する。導電性材料としては、例えば金属ナノ粒子を含むインク、絶縁性材料としては、例えば紫外線硬化樹脂、抵抗体材料としては、例えば導電性フィラーを含む樹脂、誘電性材料としては、例えば強誘電体粒子(チタン酸バリウム等)、半導体性材料としては、例えば有機半導体等を使用すれば良い。例えば、配線パターンやコンデンサの電極を形成する部分には、導電性材料を用いれば良く、また、絶縁層を形成する部分には、絶縁性材料を用いれば良く、また、コンデンサの誘電体層を形成する部分には、誘電性材料を用いれば良く、抵抗体を形成する部分には、抵抗体材料を用いれば良い。
【0016】
この後、紫外光源21、可視光源22、レーザ光源等の中から印刷材料の硬化・焼成に適した光源を選択して、当該印刷部分に光エネルギを照射して硬化又は焼成する。例えば、紫外線硬化樹脂を印刷した部分には、紫外光源21から紫外光を照射して硬化させる。また、導電性材料、抵抗体材料等を印刷した部分には、可視光源22又はレーザ光源から高エネルギの可視光又はレーザ光を照射して当該印刷部分を局所的に加熱して焼成する。これにより、1層目の断面形状12の造形が終了する。
【0017】
この後、インクジェット印刷装置14の記憶装置に保存されている2層目の断面形状データを読み込み、1層目と同様の方法で、1層目の断面形状12上に2層目の断面形状12を重ねて印刷し、その印刷部分を硬化又は焼成する。以後、同様の方法で、3層目以降の断面形状12の印刷と硬化・焼成を行うことで、複数層の断面形状12を積層して三次元形状の電子デバイス11を製造する。これにより、三次元形状の電子デバイス11の内部や表面に、配線、抵抗体、コイル、コンデンサ等を形成できる。配線、抵抗体、コイル、コンデンサ等を厚く形成する必要がある場合は、厚く形成する部分の積層数を増やすことで対応できる。
【0018】
以上説明した本実施例1によれば、複数種の材料を用いて各層の断面形状12をその下層の断面形状12に積層するように印刷し、各層の断面形状12を形成する毎に当該断面形状12に紫外光、レーザ光、可視光等を照射して当該断面形状12を硬化又は焼成するようにしたので、各層の断面形状12の印刷と硬化・焼成をワークを移し替えることなく同じ位置で行うことが可能となり、ワークの位置決めを何回も行う必要がなく、1回の位置決めで済む。しかも、紫外線、レーザ光、可視光等の光エネルギを照射して断面形状12を硬化・焼成するため、硬化・焼成の際にワークに局所的に光エネルギを照射するだけで済み、硬化・焼成の際のワークの変形を少なくすることができ、硬化・焼成による変形に対する補正を不要又は少なくすることができ、上述したワークの位置決めが1回で済むことと相待って、生産性を向上できる。更に、1層毎のワークの熱膨張・収縮を少なくすることができて、ワークにクラック(ひび割れ)や剥離等が生じにくくなり、不良発生率を低減できる。
【0019】
尚、本実施例1では、インクジェット印刷装置14を用いて各層の断面形状12を印刷するようにしたが、インクジェット印刷以外の液滴吐出法(例えばディスペンサ等)により各層の断面形状12を描画しても良く、勿論、使用する材料の種類や印刷パターンの線幅(微細度合)に応じてインクジェット印刷とそれ以外の液滴吐出法とを切り替えて使用するようにしても良い。
【実施例2】
【0020】
上記実施例1では、インクジェット印刷等の液滴吐出法により各層の断面形状12を描画するようにしたが、
図4に示す本発明の実施例2では、粉末状の材料を層状に敷き詰めて、液滴吐出法によりバインダーを吐出してその吐出領域の粉末状の材料を結合して造形したり、或は、粉末状の材料を層状に敷き詰めて、レーザ光を照射してその照射領域の粉末状の材料を焼結して造形するようにしている。
【0021】
以下、本実施例2の製造方法を説明する。
まず、
図4(a)に示すように、皿状の容器31内に粉末状の材料(例えば石膏等の絶縁性材料の粉末)を収容してスキージ32で層状に敷き詰める。この後、
図4(b)に示すように、当該材料の断面形状データに基づいてインクジェットヘッド33(又はディスペンサ)によりバインダーを吐出してその吐出領域の当該材料を結合して当該材料の断面形状を造形する。この後、
図4(c)に示すように、バインダーで結合されていない不要部分の材料を取り除いた後、
図4(d)に示すように、次の粉末状の材料(例えば粉末金属材料)をスキージ32で層状に敷き詰める。この後、
図4(e)に示すように、当該材料の断面形状データに基づいてレーザ光源34からレーザ光を照射してその照射領域の当該材料を焼結して当該材料の断面形状を造形した後、
図4(f)に示すように、焼結されていない不要部分の材料を取り除く。
【0022】
以上説明したバインダー又はレーザ光を用いた造形処理を、1層の断面形状に含まれる材料の種類毎に行って、1層分の断面形状を造形した後、その断面形状上に次の層の断面形状を造形するという処理を繰り返すことで、複数層の断面形状を積層して三次元形状の電子デバイスを製造する。
【0023】
以上説明した本実施例2でも、前述した実施例1と同様の効果を得ることができる。
尚、本発明は、造形に使用する材料の種類に応じて実施例1と実施例2の造形方法を組み合わせて実施しても良い。
【0024】
その他、本発明は、
図1に示す構造の電子デバイスに限定されず、様々な構造の電子デバイスに適用して実施でき、また、複数の部材の構造物に限定されず、1つの回路素子を造形する場合にも適用して実施できる等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0025】
11…電子デバイス、12…断面形状、13…回路基板、14…インクジェット印刷装置、15〜19…インクジェットヘッド、21…紫外光源、22…可視光源、33…インクジェットヘッド、34…レーザ光源