【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0078】
1.測定方法
「溶存酸素濃度」
(株)堀場製作所製「ハンディpHメーター D−55」の溶存酸素濃度測定用電極を取り付けて測定した。
【0079】
「ORP」
(株)堀場製作所製「ハンディpHメーター D−55」のORP測定用電極を取り付けて測定した。
【0080】
「pH」
(株)堀場製作所製「ハンディpHメーター D−55」のpH測定用電極を取り付けて測定した。
【0081】
「T-N」
JIS K0102(2013)「45.4 銅カドミウムカラム還元法」に則って測定した。
【0082】
「BOD」
JIS K0102(2013)「21 生物化学的酸素消費量(BOD)」に則って測定した。
【0083】
「NH
4」
(株)共立理化学研究所製 「パックテストWAK―NH4」を用いて測定した。
【0084】
「NO
2」
(株)共立理化学研究所製 「パックテストWAK―NO2」を用いて測定した。
【0085】
「NO
3」
(株)共立理化学研究所製 「パックテストWAK―NO3」を用いて測定した。
【0086】
「COD」
(株)共立理化学研究所製 「パックテストWAK―COD」を用いて測定した。
【0087】
「3D蛍光スペクトル測定」
装置:F―4500形 (HITACHI)
測定条件:フォトマル電圧:700V、スリット幅:2.5nm
試料調製:粉末試料を0.01M NaOHで溶解させ、試料溶液とした。
励起光波長240nm〜540nm、蛍光波長290nm〜590nmの測定を行い、3Dスペクトルを求めた。
(1)フルボ酸
分布から410nm付近(390〜450nm)のピーク値/310nm付近(300nm〜360nm範囲内)のピークの有無を判断し、フルボ酸の有無を確認した。さらに、410nm付近(390〜450nm)のピーク値/310nm付近(300nm〜360nm範囲内)のピーク値(蛍光波長の蛍光強度(If)/励起光波長の吸光度(Abs))を、「フルボ酸−蛍光スペクトル比」とした。
(2)フミン酸
フミン酸が存在する場合、450nm/530nm(励起光/蛍光)付近に、ピークがみられるため、このピークの有無を確認した。
【0088】
2.フルボ酸馴養汚泥(I)の製造
[原料]
・有機性物質(i):豚舎汚水(BOD:6,800mg/L、T−N:2,200mg/L)
・高濃度フルボ酸含有液(i):リードアップ Lot.No.2J11, 3C01, 3K07, 4B01(株式会社T&G社製「フルボ酸を含む水溶液」の製品名称)
・シリケイト(i):株式会社サンクロック科学研究所製、グリーンタフ微粉末(医王石)
・水(生活用水相当)
【0089】
[製造工程]
前記有機性物質(i)100Lと、水500Lとを混合した混合液に高濃度フルボ酸含有液(i)700mLおよびシリケイト(i)1,000gを添加し、撹拌後、常温で、曝気して培養した。なお、この培養工程で有機性物質(i)混合直後から混合液の有機物の消費に伴い、必然的に6時間程度は嫌気的培養条件となる。この曝気状態での培養を72時間行い、有機性物質(i)が消費された後、さらに有機性物質(i)を200L添加して、曝気状態での培養を再度48時間行った。その後、さらに、有機性物質(i)を200L添加して、曝気状態での培養を再度24時間行い得られた培養液をフルボ酸馴養汚泥(I)として製造した。なお、培養中のpHは6.5〜7.5であり、ORP値は150mV以下であった。この製造により得られたこのフルボ酸馴養汚泥(I)のフルボ酸−蛍光スペクトル比は、およそ35,000であり、フミン酸に相当するピークは観察されなかった。
【0090】
3.フルボ酸含有培養液の製造
前記2.項に記載の原料、製造工程で得られたフルボ酸馴養汚泥(I)などを用いて、フルボ酸含有培養液を製造した実施例について、以下に述べる。
【0091】
[実施例1]
フルボ酸製造装置100の構成を有する製造装置を用いて、豚舎汚水からフルボ酸の製造を行った。
【0092】
[有機性物質槽]
有機性物質槽1に、豚舎汚水を貯留した。この豚舎汚水は、BODがおよそ6,800mg/L、T−Nがおよそ2,200mg/Lであった。
【0093】
[嫌気的培養工程(1)]
有効容積150Lの嫌気的培養槽2に、運転開始時に前記フルボ酸馴養汚泥(I)100L(MLSS3,000mg/L)を加え、ここに前記有機性物質槽1に貯留されている豚舎汚水を50L/dayの流量で連続的に供給して混合し有機性物質混合液として、嫌気的培養工程(1)を行った。この嫌気的培養槽2では、撹拌の目的で、曝気を定期的に行ったが、流入する有機物の消費過程で溶存酸素は直ちに消費され、運転中の平均溶存酸素濃度は0.1mg/L以下を維持した。
【0094】
この槽の容積V1(150L)と、有機性物質槽1の有機性物質の溶液(豚舎汚水)の流入量q1(50L/day)と、後述する好気的培養槽3からの返送量q2(50L/day)と、分離工程5から嫌気的培養槽2へのフルボ酸馴養汚泥の返送量q3(25L/day)とから、この槽での平均滞留時間はおよそ28.8時間である(平均滞留時間=V1/(q1+q2+q3):150/(50+50+25))。また、この嫌気的培養工程(1)における運転中のpHは8.0〜9.5であり、ORPは−350mV以下として管理した。
【0095】
[好気的培養工程(1)]
容積200Lの好気的培養槽3に、前記嫌気的培養工程(1)で嫌気的に培養された嫌気的培養液は、供給される。この好気的培養槽3では、制御部32、ポンプ33、給気配管34により、曝気することで、溶存酸素濃度が平均0.5mg/Lとなるように運転し、好気的培養工程(1)を行った。
【0096】
この槽の容積V2(200L)と、嫌気的培養槽2に流入し好気的培養槽3へフローする液量(有機性物質の溶液(豚舎汚水)の流入量q1(50L/day)および、好気的培養槽3からの返送量q2(50L/day)、分離工程からのフルボ酸馴養汚泥の返送量q3(25L/day))と、分離槽5から好気的培養槽3へ返送する返送量q4(10L/day)から、この槽での平均滞留時間はおよそ35.6時間である(平均滞留時間=V2/(q1+q2+q3+q4):200/(50+50+25+10))。また、この好気的培養工程(1)における運転中のpHは6.5〜8.0であり、ORPは150mV以下として管理した。
【0097】
[好気的培養液返送工程(1)]
好気的培養工程(1)で好気的に培養された培養液は、返送手段として機能するポンプ41、配管42によって、50L/dayの流量で、定常的に嫌気的培養工程(1)を行う嫌気的培養槽2に返送した。
【0098】
[分離工程・フルボ酸馴養汚泥返送工程]
好気的培養液返送工程(1)から適宜返送されながら、嫌気的培養工程(1)および好気的培養工程(1)により培養加工された液は、フルボ酸含有培養液(1)として、分離槽5に流入させ、分離槽5で自然沈降分離によって、上澄みであるフルボ酸含有液と、沈降するフルボ酸馴養汚泥とに分離した。そして沈降物をフルボ酸馴養汚泥(1)として、25L/dayを嫌気的培養槽2に、25L/dayを好気的培養槽3に返送しながら運転した。なお、分離槽で分離された上澄みであるフルボ酸含有液をフルボ酸含有液(1)として取り出した。このフルボ酸含有液(1)として得られる液量は、豚舎汚水の供給量である50L/dayとほぼ同量である。これは、本発明のフルボ酸含有液の製造装置では、適宜次の工程への送液や、返送しながら運転している間にほぼ取り出されないため、最初に供給する量が取出し量となるためである。
上記条件の運転を4週以上連続して安定した運転を行うことができ、豚舎汚水の処理方法としても優れたものであった。
【0099】
[フルボ酸含有液(1)の評価]
得られたフルボ酸含有液(1)のBODは、安定して100mg/L以下であり、T−Nは150mg/L以下であり、pHは6.5〜8.0であった。なお、このフルボ酸含有液(1)は、適宜フィルター(孔径0.4μmの中空糸膜等)を用いて、固形物を取り除き、1次精製したフルボ酸含有液を得ることができる。なお、この1次精製したフルボ酸含有液のpHは7.2、BODは2.7mg/L、全窒素(T−N)は130.0mg/Lであり、大腸菌は検出されなかった。
【0100】
[実施例2]
フルボ酸製造装置100の構成を有する製造装置を用いて、廃棄トマト粉砕液からフルボ酸の製造を行った。
【0101】
[有機性物質槽]
有機性物質槽1に、廃棄トマト粉砕水を貯留した。この廃棄トマト粉砕液は、BODがおよそ5,000mg/L、T−Nがおよそ1,000mg/Lであった。
【0102】
[嫌気的培養工程(2)]
容積25Lの嫌気的培養槽2に、前記フルボ酸馴養汚泥(I)20L(MLSS3,000mg/L)を加え、ここに前記有機性物質槽1に貯留されている廃棄トマト粉砕液を10L/dayの流量で供給して混合し有機性物質混合液として、嫌気的培養工程(2)を行った。この嫌気的培養槽2では、撹拌の目的で、曝気を定期的に行ったが、流入した有機物の消費過程で溶存酸素は直ちに消費され、運転中の平均溶存酸素濃度は0.1mg/L以下を維持した。
【0103】
この槽の容積V1´(25L)と、有機性物質槽1の有機性物質の溶液(廃棄トマト粉砕液)の流入量q1´(10L/day)と、後述する好気的培養槽3からの返送量q2´(10L/day)と、分離工程5から嫌気的培養槽2へのフルボ酸馴養汚泥の返送量q3´(5L/day)とから、この槽での平均滞留時間はおよそ24時間である(平均滞留時間=V1´/(q1´+q2´+q3´):25/(10+10+5))。また、この嫌気的培養工程(2)における運転中のpHは8.0〜9.5であり、ORPは−350mV以下として管理した。
【0104】
[好気的培養工程(2)]
容積500Lの好気的培養槽3に、前記嫌気的培養工程(2)で嫌気的に培養された嫌気的培養液は、供給される。この好気的培養槽3では、制御部32、ポンプ33、給気配管34により、曝気することで、溶存酸素濃度が平均0.6mg/Lとなるように運転し、好気的培養工程(2)を行った。
【0105】
この槽の容積V2´(30L)と、嫌気的培養槽2に流入し好気的培養槽3へフローする液量(有機性物質の溶液(廃棄トマト粉砕液)の流入量q1´(10L/day)および、好気的培養槽3からの返送量q2´(10L/day)、分離工程からのフルボ酸馴養汚泥の返送量q3´(5L/day))と、分離槽5から好気的培養槽3へ返送する返送量q4´(2L/day)から、この槽での平均滞留時間はおよそ26.7時間である(平均滞留時間=V2´/(q1´+q2´+q3´+q4´):30/(10+10+5+2))。また、この好気的培養工程(2)における運転中のpHは6.5〜8.0であり、ORPは150mV以下として管理した。
【0106】
[好気的培養液返送工程(2)]
好気的培養工程(2)で好気的に培養された培養液は、返送手段として機能するポンプ41、配管42によって、10L/dayの流量で、定常的に嫌気的培養工程(2)を行う嫌気的培養槽2に返送した。
【0107】
[分離工程・フルボ酸馴養汚泥返送工程]
好気的培養液返送工程(2)から適宜返送されながら、嫌気的培養工程(2)および好気的培養工程(2)により培養加工された液は、フルボ酸含有培養液(2)として、分離槽5に流入させ、分離槽5で自然沈降分離によって、上澄みであるフルボ酸含有液と、沈降するフルボ酸馴養汚泥とに分離した。そして沈降物をフルボ酸馴養汚泥(2)として、5L/dayは嫌気的培養槽2に、2L/dayは好気的培養槽3に返送した。なお、分離槽で分離された上澄みであるフルボ酸含有液をフルボ酸含有液(2)として取り出した。このフルボ酸含有液(2)として得られる液量は、豚舎汚水の供給量である10L/dayとほぼ同量である。
上記条件の運転を1週連続して安定した運転を行うことができた。
【0108】
[フルボ酸含有液(2)の評価]
得られたフルボ酸含有液(2)のBODは、安定して100mg/L以下であり、T−Nは100mg/L以下であり、pHは6.5〜7.5であった。なお、このフルボ酸含有液(2)は、適宜フィルター(孔径0.4μmの中空糸膜等)を用いて、固形物を取り除き、1次精製したフルボ酸含有液を得ることができる。
【0109】
[実施例3]
フルボ酸製造装置101の構成を有する製造装置を用いて、キャベツ外葉懸濁液からフルボ酸の製造を行った。
【0110】
[有機性物質]
有機性物質としてキャベツ外葉を粉砕して用い、水で希釈した懸濁液(キャベツ外葉懸濁液)とした。このキャベツ外葉懸濁液は、BODがおよそ4,000mg/L、T−Nがおよそ8
00mg/Lであった。
【0111】
[反応槽7]
容積120Lの反応槽7に、前記キャベツ外葉懸濁液10Lと、フルボ酸馴養汚泥(I)110Lとを混合して有機性物質混合液(3)とした。
この有機性物質混合液(3)を、嫌気的培養と好気的培養との培養加工を行った。
反応槽7には、ポンプ71と、給気配管72と、ポンプ71の運転を制御する制御手段73が設けられており、この運転時間の制御手段73の設定により、反応槽7内での嫌気的培養と、好気的培養とを切り替えながら運転することができる。
【0112】
ポンプ71の運転を停止し、培養工程時間中の溶存酸素濃度が平均0.1mg/L以下となった状態で培養される嫌気的培養工程(1´)を24分と、培養工程時間中の溶存酸素濃度が平均0.7mg/Lとなるように設定された状態で培養される好気的培養工程(1´)を36分行う運転を、標準サイクル(1´)として設定し、この標準サイクル(1´)を繰り返し実施することで合計20時間の培養加工を行った。これにより、嫌気的培養工程(1´)は合計8時間、好気的培養工程(1´)は合計12時間行った。
【0113】
なお、この嫌気的培養工程(1´)における運転中のpHは7.0〜8.0であり、ORPは−350mV以下として管理した。また、この好気的培養工程(1´)における運転中のpHは6.5〜7.5であり、ORPは100mV以下として管理した。
【0114】
[分離工程]
所定回数の標準サイクル(1´)を行った後、嫌気的培養と好気的培養を所定時間終了した培養液は、フルボ酸含有培養液となっている。このフルボ酸含有培養液を、反応槽7内で4時間静置(曝気撹拌停止)することで、上澄みであるフルボ酸含有液と、沈降するフルボ酸馴養汚泥とに自然沈降分離した。そして沈降物の100Lをフルボ酸馴養汚泥(1´)として、反応槽7内に残した。また、残部となる上澄み約1,00Lをフルボ酸含有液(3)として取り出した。
【0115】
この単槽のバッチ式の運転を1週以上連続して安定した運転を行うことができ、キャベツ外葉の処理方法としても優れたものであった。
【0116】
[フルボ酸含有液(3)の評価]
得られたフルボ酸含有液(3)のBODは、安定して100mg/L以下であり、T−Nは100mg/L以下であり、pHは6.5〜7.5であった。なお、このフルボ酸含有液(3)は、適宜フィルター(孔径0.4μmの中空糸膜等)を用いて、固形物を取り除き、1次精製したフルボ酸含有液を得ることができる。
【0117】
実施例1〜3により得られたフルボ酸含有液を、「3D蛍光スペクトル測定」により評価した結果、いずれもフルボ酸が含有されていることを確認することができた。ここで、「標準段戸フルボ酸(日本腐植物質学会頒布 標準フルボ酸:略称DFA)」および、実施例1、2のフルボ酸含有液の3D蛍光スペクトルの分布を
図5に示す。なお、参考として、標準フミン酸(SHA:土壌由来段戸フミン酸)の3D蛍光スペクトルの分布を
図6に示す。
図6から明らかなようにフミン酸を含む場合、450nm/530nm(励起光/蛍光)付近に、ピークがみられる。
【0118】
また、「フルボ酸−蛍光スペクトル比」は、標準段戸フルボ酸が約30,500(蛍光420nm/励起光320nm)、実施例1のフルボ酸含有培養液で約28,000、実施例2のフルボ酸含有培養液で約24,000であった。
【0119】
「フルボ酸の測定」
フルボ酸含有液にフルボ酸が含まれていることは、簡易的なため運転状況の確認の指標としても適している「3D蛍光スペクトル測定」に加えて、「液体
1H−および
13C−NMR」「
13C CP MASNMRスペクトル」、「フーリエ変換遠赤外分光法(FT−IR)」、「元素分析」、「蛍光X線」、「3D蛍光スペクトル測定」、「界面活性能測定」、「UV−visスペクトル測定」、「TG−DTA」、「官能基分析 ・全酸度分析、・カルボキシル基分析、・全水酸基」による分析を行い、フルボ酸の標準試薬の一つである、標準段戸フルボ酸に匹敵するフルボ酸を得ることができることを確認した。