(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固形分あたりの水酸基価が5〜80mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂を含む水酸基含有樹脂(A)及び防錆顔料組成物(B)を含む主剤成分(I)と、ポリイソシアネート化合物(C)を含む硬化剤成分(II)とを塗装前に混合して得られる2液型のポリウレタン塗料組成物であって、
防錆顔料組成物(B)がその成分の一部として、シリカ(b1)並びにリン酸系金属塩(b2)を共に含有し、リン酸系金属塩(b2)が、金属として少なくともマグネシウムを含有する、リン酸、亜リン酸、トリポリリン酸のうちの少なくとも1種の酸の塩であり、
防錆顔料組成物(B)が、濃度が5質量%塩化ナトリウム水溶液に対して10質量%分の防錆顔料組成物(B)を添加し25℃で6時間撹拌、24時間静置後沈殿物を除去した上澄み液を、ICP発光分光分析によって測定した溶解元素量の合計が300μg/ml以下にあることを特徴とする有機溶剤系常温硬化性の2液型ポリウレタン塗料組成物。
防錆顔料組成物(B)におけるシリカ(b1)及びリン酸系金属塩(b2)の使用割合が前者/後者の質量比で10/90〜90/10の範囲内にある請求項1に記載の2液型ポリウレタン塗料組成物。
防錆顔料組成物(B)に含まれる亜鉛系防錆顔料の含有量が防錆顔料組成物(B)質量を基準として50質量%以下であり且つ主剤成分(I)に含まれる樹脂合計固形分100質量部を基準として5質量部以下にある請求項1又は2に記載の2液型ポリウレタン塗料組成物。
【背景技術】
【0002】
建築物等に使用される扉、各種配管、手すり等の金属面には錆の発生を抑制する目的から防錆下塗り材を塗装しその上に上塗り材を塗装する塗装仕上げが行われている。
【0003】
例えば特許文献1には水酸基含有非水分散型樹脂、キレート形成能を有する水酸基含有溶剤可溶型樹脂及びイソシアネート化合物を含有する下塗材組成物及び該下塗材組成物を塗付した後、上塗材を塗付する塗装方法が開示されている。
【0004】
かかる下塗材組成物によれば錆が著しく発生した金属面に対しても、少ない塗装回数で錆面に対するシール性と上塗り適合性を兼ね備えた下塗り塗膜を形成することができるものである。
【0005】
また、近年は1つの塗料で下塗りと上塗りが兼用可能ないわゆる、下上兼用塗料が望まれており、長期間に渡って耐候性と防錆性を有する塗料の開発が必要とされている。しかしながら、一般に塗膜の防錆性と耐候性は相反するものであり、これらを両立することは極めて困難である。
【0006】
下上兼用塗料組成物として特許文献2〜5にはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、オルガノシランを含む主剤とアミン硬化剤を使用する2液型の塗料組成物が提案されている。
【0007】
これらの塗料組成物によれば難しいとされている防錆性と耐候性の両方に優れた塗膜を形成することができ、下上兼用塗料として適用することができるものである。
【0008】
ところで、塗膜に防錆性を付与するために防錆顔料を配合することは広く行われており、近年では環境に対する配慮から非クロム系の防錆顔料が選択されてきている。
【0009】
非クロム系の防錆顔料としては燐酸亜鉛、トリポリ燐酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛など数多くのものが市場に出ており、非クロム系顔料を組合せたプライマーとして、種々のものが提案されている。
【0010】
例えば、特許文献6には、バナジウム化合物、シリカ微粒子及びリン酸系金属塩をそれぞれ特定割合で含む防錆顔料組成物が、また特許文献7には特定のバナジウム系化合物、カルシウム化合物、金属塩の金属がZn、Al又はMgであるリン酸系金属塩をそれぞれ特定割合で含む防錆顔料組成物が開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献6及び7に記載の組成物は加熱硬化型であり、防錆性向上を目的とするものであり、下上兼用塗料に求められるような長期の屋外での耐候性を満足するものとはいえない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のポリウレタン塗料組成物は、水酸基含有樹脂(A)及び防錆顔料組成物(B)を含む主剤成分(I)と、ポリイソシアネート化合物(C)を含む硬化剤成分(II)を塗装前に混合して得られる2液型の塗料組成物である。以下、順に説明する。
【0018】
<水酸基含有樹脂(A)>
本発明の2液型ポリウレタン塗料組成物において、後述のポリイソシアネート化合物(C)と共に耐候性と防錆性を両立するポリウレタン塗膜を形成し得る材料となる水酸基含有樹脂(A)としては、塗料分野で通常使用できる塗膜形成能を有する水酸基含有樹脂である限り特に制限なく使用することができ、代表例として、分子中に少なくとも2個の水酸基を含有する、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコン樹脂;これら2種以上の樹脂を変性してなる変性樹脂などの1種又は2種以上の混合樹脂を挙げることができる。
【0019】
かかる水酸基含有樹脂(A)としては、その成分の一部として水酸基含有アクリル樹脂を含むことが本発明塗料組成物から形成される塗膜の耐候性の観点から、望ましい。
【0020】
かかる水酸基含有アクリル樹脂の製造方法は特に制限されるものではなく、アゾ化合物や過酸化物を開始剤に用いたラジカル重合法など定法により製造してもよいし、又は市販品等を使用することも可能である。
【0021】
上記水酸基含有アクリル樹脂を構成する重合性不飽和モノマーとしては、水酸基含有重合性不飽和モノマーを必須とし、他のアクリル系重合性不飽和モノマー及びまたはビニル系重合性不飽和モノマーを用い、これらの重合性不飽和モノマーを通常のラジカル重合等によって重合させて得ることができる。
【0022】
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合するその他の重合性不飽和モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメトキシ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルコキシ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
上記水酸基含有アクリル樹脂は、弱溶剤に溶解可能であることが適している。弱溶剤とは当該分野でよく用いられる用語であって、一般的には溶解力の弱い溶剤を意味するものであり厳密に定義されるものではないが、労働安全衛生法による有機溶剤の分類において、第3種有機溶剤とされているものであることができる。その具体例としては、例えば、ガソリン、灯油、コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む)、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレピン油、ミネラルスピリット(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリットおよびミネラルターペンを含む)を挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上組み合わせたものであってもよく、労働安全衛生法における第1種有機溶剤、第2種有機溶剤を5質量%以下で含んだものであっても良い。
【0025】
なお、第1種有機溶剤とは、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロルエタン、1,2−ジクロルエチレン、1,1,2,2−テトラクロルエタン、トリクロルエタン、二硫化炭素、及び、これらのみからなる混合物等が挙げられ、第2種有機溶剤とは、いわゆる強溶剤と呼ばれるものであり、アセトン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソペンチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、オルト−ジクロロベンゼン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソペンチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−n−ペンチル、酢酸メチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、スチレン、テトラクロロエチレン、テトラヒドロフラン、1,1,1−トリクロルエタン、トルエン、n−ヘキサン、1−ブタノール、2−ブタノール、メタノール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ブチルケトン等を挙げることができる。
【0026】
上記弱溶剤としては市販品を使用することもでき、その具体例としては、「スワゾール1000」、「スワゾール1500」(以上、丸善石油株式会社製)、「ソルベッソ150」、「ソルベッソ200」、「HAWS」、「LAWS」(以上、シェルジャパン社製)、「エッソナフサNo.6」、「エクソールD30」(商品名、エクソンモービル化学社製)、「ペガゾール3040」(商品名、エクソンモービル化学社製)、「Aソルベント」、「クレンゾル」、「イプゾール100」(出光興産株式会社製)、「ミネラルスピリットA」、「ハイアロム2S」、「ハイアロム2S」(以上、新日本石油化学株式会社製)、「リニアレン10」、「リニアレン12」(以上、出光石油化学株式会社製)、「リカソルブ900」、「リカソルブ910B」、「リカソルブ1000」(以上、新日本理化株式会社製)などを挙げることができ、これらを単独または混合して用いることができる。
【0027】
水酸基含有アクリル樹脂の調製には、弱溶剤以外の他の有機溶剤も使用可能である。かかる他の有機溶剤としては、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタンなどの炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤等の従来公知の溶剤を挙げることができる。
【0028】
該水酸基含有アクリル樹脂としては固形分あたりの水酸基価が5〜80mgKOH/g、好ましくは10〜50mgKOH/gで、重量平均分子量が5000〜100000、好ましくは10000〜50000の範囲内にあることが形成塗膜の防錆性と耐候性の点から好適である。
【0029】
本明細書において固形分とは、不揮発分を意味するものであり、試料から、水、有機溶剤等の揮発する成分を除いた残渣を意味し、試料の質量に固形分濃度を乗じて算出することができる。固形分濃度は、試料約3グラムを、105℃、3時間乾燥させた残渣の質量を、乾燥前の質量で除することにより求めることができ、また、100分率で示す場合もある。
【0030】
また、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0031】
<防錆顔料組成物(B)>
本発明において防錆顔料組成物(B)は、シリカ(b1)並びにリン酸系金属塩(b2)を共に含有することを特徴とする組成物である。
【0032】
<シリカ(b1)>
本発明において防錆顔料組成物(B)に用いられるシリカ(b1)としては、その成分の一部として二酸化ケイ素(SiO
2)を含むものであれば合成物であっても天然物であってもよく、結晶型でもアモルファスであってもよい。また、上記シリカ(b1)としては、チョウ石、フッ石等などのシリカ系複合化合物も包含される。
【0033】
これら例示の化合物は無処理のものであっても、金属イオンを導入した金属イオン交換シリカであっても有機物等で表面を処理したものであってもよい。
【0034】
上記シリカ(b1)の市販品としては、「サイリシア710」、「サイリシア740」、「サイリシア550」、「アエロジルR972」(以上、いずれも富士シリシア化学(株)製)、「ミズカシルP−73」(水澤化学工業(株)製)、「ガシル200DF」(クロスフィールド社製)などを挙げることができる。
【0035】
また、アルコール類、グリコール類、エーテル類などの有機溶剤中に、平均粒子径が約5〜120nm程度のシリカ微粒子が分散された有機溶剤分散性コロイダルシリカとして、「オスカル(OSCAL)」シリーズ(触媒化成(株)製)、「オルガノゾル」(日産化学(株)製)などを挙げることができる。
【0036】
上記金属イオン交換シリカは、微細な多孔質のシリカ担体にイオン交換によって金属イオンが導入されたシリカである。金属イオンとして具体的には、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン等が挙げられる。
【0037】
シリカ担体への金属イオンの導入は、該金属イオンを含有する水溶液とシリカを攪拌、混合することで行うことができる。
【0038】
また、カルシウムイオン交換シリカとして、「SHIELDEX C303」、「SHIELDEX AC−3」、「SHIELDEX C−5」(商品名、以上、いずれもW.R.Grace & Co.社製)などが市販されており、これら市販品を使用することもできる。
【0039】
<リン酸系金属塩(b2)>
上記リン酸系金属塩(b2)としては、金属として少なくともマグネシウムを含有する、リン酸、亜リン酸、トリポリリン酸のうちの少なくとも1種の酸の塩である。
【0040】
いいかえれば、リン酸、亜リン酸、トリポリリン酸のうちの少なくとも1種の酸の塩であるリン酸系金属塩であり、かつ、少なくともマグネシウムを含有する化合物である。
【0041】
リン酸系金属塩(b2)が金属として少なくともマグネシウムを含有することによって、本発明塗料組成物が塗装時に適度な粘性を有して塗装作業性に優れると共に、形成塗膜の耐候性と防錆性の両立に効果がある。
【0042】
リン酸系金属塩(b2)としては、例えば、リン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム・アンモニウム共析物、リン酸一水素マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、リン酸マグネシウム・コバルト共析物、リン酸マグネシウム・ニッケル共析物、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸マグネシウム・カルシウム共析物、トリポリリン酸マグネシウム、トリポリリン酸二水素アルミニウムの酸化マグネシウム処理物、トリポリリン酸二水素亜鉛の酸化マグネシウム処理物等を挙げることができる。
【0043】
本発明において防錆顔料組成物(B)はシリカ(b1)及びリン酸系金属塩(b2)を共に含むことを特徴とするものであり、これらが併用されていることによって相乗的にポリウレタン塗膜の防錆性が向上し、また耐候性も良好であることができる。
【0044】
特にその使用割合が前者/後者の質量比で10/90〜90/10、好ましくは20/80〜80/20の範囲内にあることが塗膜の防錆性及び耐候性の観点から適している。
【0045】
また、上記防錆顔料組成物(B)は、シリカ(b1)及びリン酸系金属塩(b2)以外に、ケイ酸金属塩、リン酸系金属塩(b2)以外のリン酸系金属塩、五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム、バナジン酸マグネシウム及びメタバナジン酸アンモニウム、酸化マンガンと酸化バナジウムとの焼成物、リン酸カルシウムと酸化バナジウムとの焼成物等のバナジウム化合物:モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化コバルト等公知の防錆顔料を含ませることができる。これらの防錆顔料は1種で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0046】
これらのうちケイ酸金属塩としては、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸アルミニウム、オルトケイ酸アルミニウム、水化ケイ酸アルミニウム、アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ベリロケイ酸塩、ケイ酸アルミニウムカルシウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸アルミニウムベリリウム、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、ケイ酸カルシウムナトリウム、ケイ酸ジルコニウム、オルトケイ酸マグネシウム、メタケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムカルシウム、ケイ酸マンガン、ケイ酸バリウム等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでもケイ酸カルシウム、オルトケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウムなどのカルシウムに由来するケイ酸金属塩を好適に使用することができる。
【0047】
本発明において防錆顔料組成物(B)がケイ酸金属塩を含む場合、その場合は、その含有量としてはシリカ(b1)及びリン酸系金属塩(b2)の合計質量を基準として1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%の範囲内にあることが、塗料安定性と得られた塗膜の仕上がり性や防錆性の観点から適している。
【0048】
上記リン酸系金属塩(b2)以外のリン酸系金属塩としては、マグネシウムを含有しないリン酸系金属塩を挙げることができる。
【0049】
具体的には、例えば、リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、リン酸カルシウムアンモニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸塩化フッ化カルシウム、リン酸アルミニウム、リン酸水素アルミニウム;トリポリリン酸アルミニウム、トリポリリン酸ニ水素アルミニウム等の金属元素がアルミニウム、又はカルシウムであるトリポリリン酸金属塩等を挙げることができる。
【0050】
本発明の2液型ポリウレタン塗料組成物において、上記防錆顔料組成物(B)が塗膜の防錆性と耐候性の両立に寄与する理由は定かではないが、以下のように考察することができる。
【0051】
上記防錆顔料組成物(B)を含む塗膜が腐食環境に置かれると、シリカ(b1)が加水分解することにより腐食領域のpHを中性に戻しながら珪酸イオンを徐放し、基材面が腐食して溶出した鉄イオンなどの素地由来の金属イオンと沈殿性の塩を形成し、基材面の傷部や切断面などの露出部を効果的に被覆することができることから、防錆性が向上すると考察される。
【0052】
また、リン酸系金属塩(b2)はマグネシウムイオンとリン酸系のイオンをそれぞれ徐放し、マグネシウムイオンは鉄などの基材面が腐食し溶出した水酸化物イオンと、リン酸系のイオンは鉄イオン又はマグネシウムイオンなどの腐食領域に存在する金属イオンとそれぞれ沈殿性の塩を形成し、基材面の傷部や切断面などの露出部を効果的に被覆することができると考察される。
【0053】
上記の如き防錆顔料組成物(B)は、それぞれの成分が効果的、かつ相乗的に作用を補い合うために、少ない溶出量の割に腐食基材面に不動態性の被覆が形成されると考えられる。また少ない溶出量であるがゆえ、防錆成分の溶出によって形成される塗膜中の空隙が少ないため、優れた耐候性と防錆性を発揮できるものである。
【0054】
防錆顔料組成物(B)の溶出量は例えば防錆顔料組成物(B)を塩化ナトリウム水溶液に溶出させ、その溶出量をICP発光分光分析によって測定することによって知ることができる。
【0055】
より具体的には、濃度が5質量%塩化ナトリウム水溶液に対して10質量%分の防錆顔料組成物(B)を添加し25℃で6時間撹拌、24時間静置後沈殿物を除去した上澄み液を、ICP発光分光分析によって測定した溶解元素量の合計が300μg/ml以下、好ましくは50〜200μg/mlの範囲内にあることができる。
【0056】
本発明において防錆顔料組成物(B)はシリカ(b1)及びリン酸系金属塩(b2)を共に含有することを特徴とするものであるが、亜鉛系防錆顔料の含有量が少ない、もしくは含まないことも特徴の1つということができる。
【0057】
具体的には亜鉛系防錆顔料の含有量が防錆顔料組成物(B)質量を基準として50質量%以下、好ましくは30質量%以下であり、且つ主剤成分(I)に含まれる樹脂固形分100質量部を基準として5質量部以下、好ましくは3質量部以下にあることが好ましい。
【0058】
かかる亜鉛系防錆顔料としては、塗料分野で公知のものを挙げることができ、具体例としては亜鉛末、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、オルトリン酸亜鉛、ポリリン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛などを挙げることができる。
【0059】
上記した如き亜鉛系防錆顔料は非クロム系の防錆顔料として有用な顔料ではあるが本発明においてはこのものの含有量が多すぎると、主剤成分(I)と硬化剤成分(II)混合後の組成物の粘度上昇が早すぎて、塗装しにくくなる、いわゆるポットライフが短くなることがある。
【0060】
本発明のポリウレタン塗料組成物において、上記で説明したごとき防錆顔料組成物(B)の配合量としては、主剤成分(I)に含まれる樹脂合計固形分100質量部を基準として、3〜20質量部、好ましくは5〜15質量部の範囲内にあることが2液型ポリウレタン塗膜の防錆性と耐候性の観点から適している。
【0061】
また、本発明のポリウレタン塗料組成物はシランカップリング剤をさらに含むことが塗膜の防錆性の観点から適している。
【0062】
上記シランカップリング剤としては、従来公知のものを広く使用することができる。
例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γグリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;
β−カルボキシルエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(N−カルボキシルメチルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシ含有シランカップリング剤;
アミノ基含有シランカップリング剤と各種ケトンとの脱水縮合により得られるケチミン化されたシランカップリング剤;アミノ基含有シランカップリング剤とエポキシ基含有シランカップリング剤との反応物;メルカプト基含有シランカップリング剤とエポキシ基含有シランカップリング剤との反応物;アミノ基含有シランカップリング剤とエポキシ樹脂との反応物;メルカプト基含有シランカップリング剤とエポキシ樹脂との反応物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ含有シランカップリング剤等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
【0063】
本発明においては、主剤成分(II)及び硬化剤成分(II)のそれぞれの貯蔵安定性の観点から、アミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤は主剤成分(I)に、イソシアネート基含有シランカップリング剤は硬化剤成分(II)に、それぞれ含まれることが適しており、それ以外のシランカップリング剤成分は主剤成分(I)及び硬化剤成分(II)のいずれでもよいが好ましくは硬化剤成分(II)に含まれることが適している。
【0064】
上記シランカップリング剤の使用量としては、シランカップリング剤が主剤成分(I)に含まれる場合は、主剤成分(I)に含まれる樹脂固形分を基準として0.1〜3.5質量%、好ましくは0.3〜2.0質量%の範囲内にあることが適している。
【0065】
一方、シランカップリング剤が硬化剤成分(II)に含まれる場合は、硬化剤成分(II)に含まれるポリイソシアネート化合物有効成分質量を基準として2〜25質量%、3〜15質量%の範囲内にあることが、塗膜の防錆性と水酸基含有樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(C)との反応性の観点から、適している。
【0066】
上記主剤成分(I)には、前記水酸基含有樹脂(A)、防錆顔料組成物(B)及び必要に応じて配合されるシランカップリング剤以外に、塗料分野で使用できる着色顔料、体質顔料、防錆顔料組成物(B)以外の防錆顔料、有機溶剤;水酸基含有樹脂(A)以外の改質用樹脂;硬化触媒、防カビ剤、沈降防止剤、顔料分散剤、消泡剤、塗面調整剤などの添加剤等を必要に応じて配合することができる。
【0067】
上記着色顔料としては、例えばシアニンブルー、シアニングリーン、アゾ系やキナクリドン系等の有機赤顔料等の有機着色顔料;チタン白、チタンエロー、ベンガラ、カーボンブラック、各種焼成顔料等の無機着色顔料を挙げることができる。
【0068】
上記体質顔料としては、例えばタルク、クレー、シリカ、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等を挙げることができる。
【0069】
また、有機溶剤としては上記水酸基含有アクリル樹脂の説明で例示したごとき溶剤の中から適宜選んで使用することができる。
【0070】
<硬化剤成分(II)>
本発明において硬化剤成分(II)は、ポリイソシアネート化合物(C)を含む。
【0071】
かかるポリイソシアネート化合物(C)としては、1分子中に遊離のイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、従来公知のものを制限なく使用することができる。例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物及びこれらポリイソシアネート化合物の誘導体等を挙げることができる。
【0072】
ポリイソシアネート化合物の誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビュウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。これらポリイソシアネート化合物及びその誘導体は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせたものであってもよい。
【0073】
上記硬化剤成分(II)は、上記ポリイソシアネート化合物(C)及び必要に応じて配合されるシランカップリング剤以外に、塗料分野で使用できる有機溶剤;硬化触媒、防カビ剤、沈降防止剤、消泡剤、塗面調整剤などの添加剤等を必要に応じて配合することができる。
【0074】
<2液型ポリウレタン塗料組成物>
本発明の2液型ポリウレタン塗料組成物は、別個に保管された上記主剤成分(I)及び硬化剤成分(II)を塗装業者が塗装前に混合して得られるものであり、
その使用割合は、主剤成分(I)に含まれる水酸基1当量に対し、硬化剤成分(II)に含まれるイソシアネート基の当量比が0.3〜1.6、好ましくは0.6〜1.4の範囲内となるように調整されることが、塗膜の耐候性の観点から適している。
【0075】
また、主剤成分(I)及び硬化剤成分(II)の使用割合(質量比)は、一般に20/1〜3/1、好ましくは14/1〜4/1の範囲内にあることが望ましい。
【0076】
上記の如きして得られるポリウレタン塗料組成物は塗装作業者が塗装しやすい、塗装に適した粘度を有するものであるが、好ましくは主剤成分(I)及び硬化剤成分(II)を混合してから24時間以内、好ましくは12時間以内、さらに好ましくは3時間以内に塗装を行うことが適している。
【0077】
また、本発明のポリウレタン塗料組成物は弱溶剤型であることができ、貯蔵段階(封缶状態)における主剤成分(I)又は硬化剤成分(II)に含まれる弱溶剤含有量としては、全有機溶剤を基準として50質量%以上、特に70質量%以上の範囲内にあることができる。弱溶剤型であることで、本発明塗料組成物を旧塗膜の上に塗装したときのチヂミの発生などを抑制することができ、また、塗装による環境への負荷が比較的少ない利点を有する。
【0078】
本発明の2液型ポリウレタン塗料組成物は常温で硬化することができ、その硬化物であるポリウレタン塗膜は優れた性能を発揮するものであるが、強制乾燥や加熱硬化させても良い。
【0079】
本発明の2液型ポリウレタン塗料組成物が適用される被塗物面としては、必要に応じて下地処理した金属素材面、例えば鉄、鋼板面や亜鉛めっき面、ステンレス面、アルミニウム面、それらに塗装されてなる旧塗膜面などが挙げられるが、コンクリート、モルタル、スレート、スレート瓦等のアルカリ性を有する基材、窯業系建材、プラスチックなどの素材面やそれらに塗装されてなる旧塗膜面などにも塗装が可能である。
【0080】
その用途としては特に制限されるものではないが、建築物、構造物の扉、手すり、配管などの金属面塗装用途に適している。
【0081】
本発明のポリウレタン塗料組成物の塗装は、必要に応じて塗装粘度に希釈した後、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り、流し塗り等の公知の手段で行うことができ、一般に30〜400g/m
2、好ましくは50〜250g/m
2の塗布量で塗装することができる。
【0082】
本発明のポリウレタン塗料組成物は、優れた防錆性と耐候性を併せ持ち、下上兼用塗料として適用が可能であるが、被塗物及び塗装環境の状態に応じて公知の下塗り塗装又は上塗り塗装を行ってもよい。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0084】
実施例1〜31及び比較例1〜5
下記表1記載の配合組成で主剤及び硬化剤を製造し、両者を混合して各塗料組成物を得た。このときの主剤成分に含まれる水酸基1当量に対するイソシアネート基の当量比を表1に記載した。尚表1においてアクリル樹脂溶液の配合量に関しては固形分表示であり、それ以外の成分に関しては実配合表示である。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
(注1)アクリル樹脂溶液1:スチレン/イソブチルメタクリレート/2エチルヘキシルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート=30/30/30/10共重合体溶液、重量平均分子量2,0000、固形分あたりの水酸基価43mgKOH/g、固形分濃度50%、溶剤ミネラルスピリット、
(注2)アクリル樹脂溶液2:スチレン/イソブチルメタクリレート/2エチルヘキシルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸=30/35/29/5/1共重合体溶液、重量平均分子量2,0000、固形分あたりの水酸基価22mgKOH/g、固形分濃度50%、溶剤ミネラルスピリット、
(注3)ポリイソシアネート1:アロファネートとイソシアヌレートの3/7(質量比)混合物、
(注4)ポリイソシアネート2:アロファネートとイソシアヌレートの4/6(質量比)混合物。
【0088】
<防錆顔料組成物>
防錆顔料組成物1〜20は下記表2記載の組成にて各成分を混合、乳鉢ですりつぶし、その後150℃、3時間加温し、再び乳鉢にてすりつぶして得た。また、表2に明細書記載のICP発光分光分析による方法で測定した各防錆顔料組成物の溶出量を併せて示す。
【0089】
【表3】
【0090】
(注5)シリカ:「サイリシア710」(商品名、富士シリシア化学社製)、
(注6)カルシウムイオン交換型シリカ:「SHIELDEX C303」(商品名、W.R.Grace & Co.社製)、
(注7)マグネシウムイオン交換シリカ:
濃度5質量%の塩化マグネシウム水溶液10000質量部中に10質量部の「サイリシア710」(富士シリシア化学(株)製、商品名、シリカ微粒子)を5時間攪拌混合した後、ろ過して固形分を取り出し、固形分をよく水洗し乾燥してマグネシウムイオン交換シリカを得た。
(注8)コバルトイオン交換シリカ:
上記(注7)において、塩化マグネシウムを塩化コバルト(II)に置き換える以外は(注7)と同様にしてコバルトイオン交換シリカを得た。
(注9)ニッケルイオン交換シリカ:
上記(注7)において、塩化マグネシウムを塩化ニッケル(II)にする以外は同様にしてニッケルイオン交換シリカを得た。
【0091】
<性能評価>
実施例1〜31及び比較例1〜5で得られた各塗料組成物を下記性能方法、評価基準で評価した。結果を表1に併せて示す。
【0092】
(*)ポットライフ
主剤と硬化剤を混合して4時間後の塗料状態を観察した。
○:塗料のゲル化及び相分離のいずれも認められない、
△:塗料のゲル化及び相分離の少なくとも一つがややみられる、
×:塗料のゲル化及び相分離の少なくとも一つが著しくみられる。
(*)硬化性
ポリプロピレン板に、主剤と硬化剤を混合して直ぐの塗料を150μmのアプリケーターを用いて引き塗りし、室温23℃、湿度50%のチャンバーで7日間乾燥して得られた各塗板の塗膜をポリプロピレン板から剥離して単離塗膜とし、試験サンプルとした。この各試験サンプルを150メッシュの金網で包みキシレンに16時間浸したのち取り出して、キシレンでよくすすぎ洗いした後105℃で3時間乾燥させて、キシレン不溶分率(%)を測定し、下記基準により硬化性を評価した。(キシレン不溶分率(%)=(サンプルの乾燥後の質量/サンプルの初期質量)×100)
○:不溶分率(%)が85%以上、
△:不溶分率(%)が70%以上、85%未満、
×:不溶分率(%)が70%未満。
(*)耐食性
リン酸亜鉛処理された0.8mm厚SPCC鋼板に、主剤と硬化剤を混合して得られた各塗料組成物を混合してから30分以内に塗布量100g/m
2で刷毛塗装し、室温(20℃)で7日間養生させた後、カッターで長さ8cmのカットを入れたものを試験板とした。得られた試験板を5%塩水噴霧試験装置にて温度35℃で240時間試験した後、試験板の外観観察により4段階で評価した。
◎:カット部の錆幅(片側)が15mm未満で、一般部共に異常がない、
〇:カット部の錆幅(片側)が15mm〜20mmで、一般部に異常がない、
△:カット部の錆幅(片側)は20mm以下であるが、一般部にフクレや錆が発生している、
×:カット部の錆幅(片側)が20mmを超え、一般部にフクレや錆が発生している。
(*)耐候性
上記耐食性評価と同様の方法で各塗料組成物による試験塗板を作成し、JIS K 5600の7−7(キセノンランプ法)の促進耐候性試験に準じて、300時間照射した後、塗板を目視評価した。
◎:初期塗膜と比較して、光沢、色の変化が認められない、
○:初期塗膜と比較して、光沢、色の変化がやや認められる、
△:初期塗膜と比較して、光沢、色の変化が認められる、
×:初期塗膜と比較して、光沢、色の変化が著しい。