特許第6026787号(P6026787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 綜合警備保障株式会社の特許一覧

特許6026787図形特徴抽出方法、図形探索方法、動き追跡方法、図形特徴抽出装置、図形探索装置および動き追跡装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6026787
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】図形特徴抽出方法、図形探索方法、動き追跡方法、図形特徴抽出装置、図形探索装置および動き追跡装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20060101AFI20161107BHJP
   G06T 7/20 20060101ALI20161107BHJP
   G06T 7/60 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   G06T7/00 300G
   G06T7/20 B
   G06T7/60 150P
   G06T7/60 150J
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-131144(P2012-131144)
(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公開番号】特開2013-254441(P2013-254441A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年6月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ViEW2011 ビジョン技術の実利用ワークショップ講演概要集
(73)【特許権者】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(72)【発明者】
【氏名】鍵谷 悠樹
【審査官】 板垣 有紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−151815(JP,A)
【文献】 特開平09−102039(JP,A)
【文献】 特開2012−133665(JP,A)
【文献】 林 宏樹,幾何エッジヒストグラム空間を用いた回転対応画像照合,電気学会論文誌C,日本,(社)電気学会,2006年 2月 1日,第126巻 第2号,pp.203-209
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 − 7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
探索対象の画像上に探索領域を設定し、該探索領域内のエッジ上の全ての画素について、該画素と前記探索領域の基準点とを結ぶ基準線分に対する前記エッジの接線または法線の成す角度θを求め、前記基準線分の長さをrとし且つ度数調整係数をAとするとき、該角度θについて度数A/rを計数した特徴ヒストグラムを作成し、該特徴ヒストグラムを前記エッジの図形特徴とすることを特徴とする図形特徴抽出方法。
【請求項2】
探索したい図形のみを含む画像上に探索領域を設定し、該探索領域内のエッジ上の全ての画素について、該画素と前記探索領域の基準点とを結ぶ基準線分に対する前記エッジの接線または法線の成す角度θを求め、前記基準線分の長さをrとし且つ度数調整係数をAとするとき、該角度θについて度数A/rを計数した判定規則作成用ヒストグラムを作成し、該判定規則作成用ヒストグラムを基に判定規則を作成し、
探索対象の画像上に探索領域を設定し、該探索領域内のエッジ上の全ての画素について、該画素と前記探索領域の基準点とを結ぶ基準線分に対する前記エッジの接線または法線の成す角度θを求め、前記基準線分の長さをrとし且つ度数調整係数をAとするとき、該角度θについて度数A/rを計数した特徴ヒストグラムを作成し、該特徴ヒストグラムを前記判定規則に照合して、前記探索したい図形が前記探索領域に含まれているか否かを判定することを特徴とする図形探索方法。
【請求項3】
請求項2に記載の図形探索方法において、前記判定規則作成用ヒストグラムの特定角度に特徴的に高いピークが存在するときは、前記特徴ヒストグラムの特定角度に特徴的に高いピークが存在するか否かを判定規則とすることを特徴とする図形探索方法。
【請求項4】
請求項2に記載の図形探索方法において、前記判定規則作成用ヒストグラムのピーク分布パターンが特徴的であるときは、前記特徴ヒストグラムのピーク分布パターンが前記判定規則作成用ヒストグラムのピーク分布パターンに類似するか否かを判定規則とすることを特徴とする図形探索方法。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の図形探索方法において、前記探索したい図形の最小サイズよりも小さいマスク領域を前記探索領域内に設定することを特徴とする図形探索方法。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれかに記載の図形探索方法において、前記探索したい図形の最大サイズのものをちょうど含みうる程度のサイズの前記探索領域を設定し、その探索領域のサイズよりも前記探索対象の画像のサイズが大きい場合は、前記探索領域を移動して前記探索対象の画像の全域を走査することを特徴とする図形探索方法。
【請求項7】
請求項6に記載の図形探索方法において、前記探索したい図形が前記探索領域に含まれていると判定したときの前記探索領域の位置に基づいて図形位置を取得することを特徴とする図形探索方法。
【請求項8】
時間経過順の複数の画像のそれぞれに対して請求項7の図形探索方法を実行し、前記図形位置の移動経路を取得することを特徴とする動き追跡方法。
【請求項9】
画像上に探索領域を設定する探索領域設定手段と、前記探索領域内のエッジ上の画素を抽出するエッジ画素抽出手段と、前記エッジ上の画素と前記探索領域の基準点とを結ぶ基準線分に対する前記エッジの接線または法線の成す角度θを求める角度取得手段と、前記基準線分の長さをrとし且つ度数調整係数をAとするとき前記角度θについて度数A/rを計数した特徴ヒストグラムを作成する特徴ヒストグラム作成手段とを具備したことを特徴とする図形特徴抽出装置。
【請求項10】
探索対象の画像上に探索領域を設定する探索領域設定手段と、前記探索領域内のエッジ上の画素を抽出するエッジ画素抽出手段と、前記エッジ上の画素と前記探索領域の基準点とを結ぶ基準線分に対する前記エッジの接線または法線の成す角度θを求める角度取得手段と、前記基準線分の長さをrとし且つ度数調整係数をAとするとき前記角度θについて度数A/rを計数した特徴ヒストグラムを作成する特徴ヒストグラム作成手段と、前記特徴ヒストグラムを予め設定された判定規則に照合して探索したい図形が前記探索領域に含まれているか否かを判定する判定手段とを具備したことを特徴とする図形探索装置。
【請求項11】
請求項10に記載の図形探索装置において、前記特徴ヒストグラムの特定角度に特徴的に高いピークが存在するか否かを判定規則とすることを特徴とする図形探索装置。
【請求項12】
請求項10に記載の図形探索装置において、前記特徴ヒストグラムのピーク分布パターンが予め設定されたピーク分布パターンに類似するか否かを判定規則とすることを特徴とする図形探索装置。
【請求項13】
請求項10から請求項12のいずれかに記載の図形探索装置において、前記探索領域設定手段は、探索したい図形の最小サイズよりも小さいマスク領域を前記探索領域内に設定することを特徴とする図形探索装置。
【請求項14】
請求項10から請求項13のいずれかに記載の図形探索装置において、前記探索領域設定手段は、前記探索したい図形の最大サイズのものをちょうど含みうる程度のサイズの前記探索領域を設定し、その探索領域のサイズよりも前記探索対象の画像のサイズが大きい場合は、前記探索領域を移動して前記探索対象の画像の全域を走査することを特徴とする図形探索装置。
【請求項15】
請求項14に記載の図形探索装置において、前記探索したい図形が前記探索領域に含まれていると判定したときの前記探索領域の位置に基づいて図形位置を取得する図形位置取得手段を具備したことを特徴とする図形探索装置。
【請求項16】
時間経過順の複数の画像を取得する画像取得手段と、請求項15に記載の図形探索装置と、前記図形探索装置により前記複数の画像のそれぞれから得た図形位置の移動経路を取得する移動経路取得手段とを具備したことを特徴とする動き追跡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円弧以外の図形にも適用できると共に拡大・縮小・回転された図形でも同じ種類であれば同じ特徴を抽出することが出来る図形特徴抽出方法、その図形特徴抽出方法を利用した図形探索方法、動き追跡方法、図形特徴抽出装置、図形探索装置および動き追跡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、注目画素を中心とした円に沿って配列されている複数の評価画素を抽出し、それら評価画素のそれぞれについて輝度の最大勾配方向を算出し、それらの最大勾配方向と注目画素と評価画素を結ぶ方向との成す角度を算出し、その角度が0°に近いほどその評価画素が注目画素を中心とした円弧上の画素である可能性が高いと評価する類半円検出装置が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−230714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の類半円検出装置は、画像上のある画素が円弧上の画素である可能性を判定することが出来た。
しかし、円弧以外の図形には全く適用できない問題点がある。また、評価画素を抽出する際の円と同じ半径の円弧上の画素である可能性の判定に限定され、異なる半径の円弧上の画素である可能性を判定するためには、その異なる半径の円に沿って配列されている複数の評価画素を抽出して角度算出をやり直す必要があり、処理が煩雑になる問題点があった。
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであって、円弧以外の図形にも適用できると共に拡大・縮小・回転された図形でも同じ種類であれば同じ特徴を抽出することが出来る図形特徴抽出方法、その図形特徴抽出方法を利用した図形探索方法、動き追跡方法、図形特徴抽出装置、図形探索装置および動き追跡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、探索対象の画像上に探索領域を設定し、該探索領域内のエッジ上の全ての画素について、該画素と前記探索領域の基準点とを結ぶ基準線分に対する前記エッジの接線または法線の成す角度θを求め、前記基準線分の長さをrとし且つ度数調整係数をAとするとき、該角度θについて度数A/rを計数した特徴ヒストグラムを作成し、該特徴ヒストグラムを前記エッジの図形特徴とすることを特徴とする図形特徴抽出方法を提供する。
【0006】
本発明は、探索したい図形のみを含む画像上に探索領域を設定し、該探索領域内のエッジ上の全ての画素について、該画素と前記探索領域の基準点とを結ぶ基準線分に対する前記エッジの接線または法線の成す角度θを求め、前記基準線分の長さをrとし且つ度数調整係数をAとするとき、該角度θについて度数A/rを計数した判定規則作成用ヒストグラムを作成し、該判定規則作成用ヒストグラムを基に判定規則を作成し、探索対象の画像上に探索領域を設定し、該探索領域内のエッジ上の全ての画素について、該画素と前記探索領域の基準点とを結ぶ基準線分に対する前記エッジの接線または法線の成す角度θを求め、前記基準線分の長さをrとし且つ度数調整係数をAとするとき、該角度θについて度数A/rを計数した特徴ヒストグラムを作成し、該特徴ヒストグラムを前記判定規則に照合して、前記探索したい図形が前記探索領域に含まれているか否かを判定することを特徴とする図形探索方法を提供する。
【0007】
本発明は、前記図形探索方法において、前記判定規則作成用ヒストグラムの特定角度に特徴的に高いピークが存在するときは、前記特徴ヒストグラムの特定角度に特徴的に高いピークが存在するか否かを判定規則とすることを特徴とする図形探索方法を提供する。
【0008】
本発明は、前記図形探索方法において、前記判定規則作成用ヒストグラムのピーク分布パターンが特徴的であるときは、前記特徴ヒストグラムのピーク分布パターンが前記判定規則作成用ヒストグラムのピーク分布パターンに類似するか否かを判定規則とすることを特徴とする図形探索方法を提供する。
【0009】
本発明は、前記図形探索方法において、前記探索したい図形の最小サイズよりも小さいマスク領域を前記探索領域内に設定することを特徴とする図形探索方法を提供する。
【0010】
本発明は、前記図形探索方法において、前記探索したい図形の最大サイズのものをちょうど含みうる程度のサイズの前記探索領域を設定し、その探索領域のサイズよりも前記探索対象の画像のサイズが大きい場合は、前記探索領域を移動して前記探索対象の画像の全域を走査することを特徴とする図形探索方法を提供する。
【0011】
本発明は、前記図形探索方法において、前記探索したい図形が前記探索領域に含まれていると判定したときの前記探索領域の位置に基づいて図形位置を取得することを特徴とする図形探索方法を提供する。
【0012】
本発明は、時間経過順の複数の画像のそれぞれに対して前記図形探索方法を実行し、前記図形位置の移動経路を取得することを特徴とする動き追跡方法を提供する。
【0013】
本発明は、画像上に探索領域を設定する探索領域設定手段と、前記探索領域内のエッジ上の画素を抽出するエッジ画素抽出手段と、前記エッジ上の画素と前記探索領域の基準点とを結ぶ基準線分に対する前記エッジの接線または法線の成す角度θを求める角度取得手段と、前記基準線分の長さをrとし且つ度数調整係数をAとするとき前記角度θについて度数A/rを計数した特徴ヒストグラムを作成する特徴ヒストグラム作成手段とを具備したことを特徴とする図形特徴抽出装置を提供する。
【0014】
本発明は、探索対象の画像上に探索領域を設定する探索領域設定手段と、前記探索領域内のエッジ上の画素を抽出するエッジ画素抽出手段と、前記エッジ上の画素と前記探索領域の基準点とを結ぶ基準線分に対する前記エッジの接線または法線の成す角度θを求める角度取得手段と、前記基準線分の長さをrとし且つ度数調整係数をAとするとき前記角度θについて度数A/rを計数した特徴ヒストグラムを作成する特徴ヒストグラム作成手段と、前記特徴ヒストグラムを予め設定された判定規則に照合して探索したい図形が前記探索領域に含まれているか否かを判定する判定手段とを具備したことを特徴とする図形探索装置を提供する。
【0015】
本発明は、前記図形探索装置において、前記特徴ヒストグラムの特定角度に特徴的に高いピークが存在するか否かを判定規則とすることを特徴とする図形探索装置を提供する。
【0016】
本発明は、前記図形探索装置において、前記特徴ヒストグラムのピーク分布パターンが予め設定されたピーク分布パターンに類似するか否かを判定規則とすることを特徴とする図形探索装置を提供する。
【0017】
本発明は、前記図形探索装置において、前記探索領域設定手段は、探索したい図形の最小サイズよりも小さいマスク領域を前記探索領域内に設定することを特徴とする図形探索装置を提供する。
【0018】
本発明は、前記図形探索装置において、前記探索領域設定手段は、前記探索したい図形の最大サイズのものをちょうど含みうる程度のサイズの前記探索領域を設定し、その探索領域のサイズよりも前記探索対象の画像のサイズが大きい場合は、前記探索領域を移動して前記探索対象の画像の全域を走査することを特徴とする図形探索装置を提供する。
【0019】
本発明は、前記図形探索装置において、前記探索したい図形が前記探索領域に含まれていると判定したときの前記探索領域の位置に基づいて図形位置を取得する図形位置取得手段を具備したことを特徴とする図形探索装置を提供する。
【0020】
本発明は、時間経過順の複数の画像を取得する画像取得手段と、前記図形探索装置と、前記図形探索装置により前記複数の画像のそれぞれから得た図形位置の移動経路を取得する移動経路取得手段とを具備したことを特徴とする動き追跡装置を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の図形特徴抽出方法および図形特徴抽出装置によれば、拡大・縮小・回転された図形でも同じ種類であれば同じ特徴を抽出することが出来る。また、円弧以外の図形にも適用できる。
本発明の図形探索方法および図形探索装置によれば、拡大・縮小・回転された図形でも探知することが出来る。また、円弧以外の図形にも適用できる。
本発明の動き追跡方法および動き追跡装置によれば、拡大・縮小・回転された図形の動きでも追跡することが出来る。また、円弧以外の図形にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明に係る図形探索装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、探索領域を示す説明図である。
図3図3は、本発明に係る図形特徴抽出処理を示すフロー図である。
図4図4は、探索したい図形のみを含む探索領域を示す説明図である。
図5図5は、図4の探索領域で得られた判定規則作成用ヒストグラムを示す例示図である。
図6図6は、実施例1に係る円形探索処理を示すフロー図である。
図7図7は、実施例1に係る円形判定処理を示すフロー図である。
図8図8は、探索対象の画像を示す例示図である。
図9図9は、探索対象の画像から作成したエッジ画像を示す例示図である。
図10図10は、探索対象の画像上で初期位置に設定した探索領域を示す例示図である。
図11図11は、位置を移動した探索領域を示す例示図である。
図12図12は、図11の探索領域で得られた特徴ヒストグラムを示す例示図である。
図13図13は、位置をさらに移動した探索領域を示す例示図である。
図14図14は、図13の探索領域で得られた特徴ヒストグラムを示す例示図である。
図15図15は、探索したい図形のみを含む探索領域を示す説明図である。
図16図16は、図15の探索領域で得られた判定規則作成用ヒストグラムを示す例示図である。
図17図17は、実施例2に係る図形探索処理を示すフロー図である。
図18図18は、実施例2に係る図形判定処理を示すフロー図である。
図19図19は、探索対象の画像上における探索領域を示す例示図である。
図20図20は、図19の探索領域で得られた特徴ヒストグラムを示す例示図である。
図21図21は、探索したい図形のエッジのみを含む探索領域を示す例示図である。
図22図22は、図21の探索領域で得られた判定規則作成用ヒストグラムを示す例示図である。
図23図23は、探索したい図形のエッジのみを含む探索領域を示す例示図である。
図24図24は、図23の探索領域で得られた判定規則作成用ヒストグラムを示す例示図である。
図25図25は、図22の判定規則作成用ヒストグラムと図24の判定規則作成用ヒストグラムから作成された判定規則作成用ヒストグラムを示す例示図である。
図26図26は、実施例4に係る動き追跡装置の構成を示すブロック図である。
図27図27は、追跡したい図形のエッジのみを含む探索領域を示す例示図である。
図28図28は、図27の探索領域で得られた判定規則作成用ヒストグラムを示す例示図である。
図29図29は、追跡したい図形の動きを示す例示図である。
図30図30は、探索領域内にマスク領域を設けることで検出しうる図形の最小サイズを調整できることを示す説明図である。
図31図31は、円周上の特定部分の円弧のみを探索するための探索領域を示す例示図である。
図32図32は、部分区画に分割した探索領域を示す例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例を説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
図1は、実施例1に係る図形探索装置100の構成を示すブロック図である。
この図形探索装置100は、画像入力部1と、エッジ画像作成部2と、探索領域設定部3と、図形特徴抽出部4と、図形判定部5とを具備している。これらの構成は、一般的なコンピュータシステム上に構築することが出来る。
【0025】
画像入力部1は、ビデオカメラで撮影した映像や通信回線を介して取得した映像から図形探索対象の画像を取得したり、静止画カメラで撮影したり通信回線を介して図形探索対象の画像を取得する。
図8に、画像入力部1が取得した図形探索対象の画像Gを例示する。
【0026】
エッジ画像作成部2は、公知のエッジ検出法により図形探索対象の画像Gからエッジ画像を作成する。
図9に、エッジ画像作成部2が作成したエッジ画像Eを例示する。エッジCは円形であり、エッジLは直線であるものとする。
【0027】
探索領域設定部3は、探索したい図形の最大サイズのものをちょうど含む程度のサイズの探索領域を設定し、その探索領域のサイズよりもエッジ画像Eのサイズが大きい場合は、エッジ画像E上の初期位置に探索領域を設定して図形特徴抽出部4に渡し、図形特徴抽出部4が図形特徴を抽出したら、エッジ画像E上の次の位置に探索領域を移動して図形特徴抽出部4に渡すことを繰り返して、エッジ画像Eの全域を走査する。
なお、探索したい図形の最大サイズのものをちょうど含む程度のサイズの探索領域を設定するのは、それよりサイズを大きくしてもノイズが増えるなどのデメリットがあるだけだからである。
図2に、方形の探索領域Fを例示する。この方形の探索領域Fでは、中心が基準点Oになっている。
図10に、エッジ画像E上の初期位置に設定した探索領域Fを例示する。この初期位置は、エッジ画像Eの左上隅部分を探索領域Fがカバーしうる位置になっている。gは、探索領域F内に存在するエッジ上の一つの画素である。Qは、画素gと基準点Oとを結ぶ基準線分である。θは、画素gにおけるエッジCの接線が基準線分Qに対して成す角度(=基準線分Qの延長線から時計回りに画素gにおけるエッジCの接線を見た角度)である。rは、基準線分Qの長さである。
なお、角度θとして、画素gにおけるエッジCの法線が基準線分Qに対して成す角度を用いてもよい。
【0028】
図形特徴抽出部4は、探索領域F内に存在するエッジ上の全ての画素について、該画素と探索領域Fの基準点Oとを結ぶ基準線分Qに対するエッジの接線の成す角度θを求め、基準線分Qの長さをrとし且つ度数調整係数をAとするとき、該角度θについて度数A/rを計数した特徴ヒストグラムを作成し、該特徴ヒストグラムを探索領域F内に存在するエッジの図形特徴とする。
図5に、図10の探索領域F内のエッジCに係る特徴ヒストグラムを例示する。
【0029】
図形判定部5は、特徴ヒストグラムを予め設定された判定規則に照合して探索したい図形が探索領域Fに含まれているか否かを判定する。
【0030】
この判定規則の作成に際しては、図4に示す如き探索したい図形(ここでは円形)のエッジCのみを含む探索領域Fを作成し、図3の図形特徴処理を実行する。
【0031】
図3のステップT1では、角度0°〜180°の全ての度数を0にしたヒストグラムを作成する。
ステップT2では、探索領域F内にエッジが存在するか否か判定し、エッジが存在するならステップT3へ進み、エッジが存在しなければステップT6へ進む。
【0032】
ステップT3では、連続しているエッジを1つのエッジとし、探索領域F内の各エッジに順番を付け、最初のエッジ上の全ての画素について、基準線分Qに対する該画素における当該エッジの接線の成す角度θを求め、基準線分の長さをrとし且つ係数をAとするとき、該角度θについて度数A/rをヒストグラムに加算する。なお、Aは、A/rがコンピュータで計数しやすい値となるように定める。
図4の例では、探索領域F内には1つのエッジCしかなく、そのエッジCが円形であり、その円の中心が基準点Oに一致している。このエッジC上のどの画素gでも角度θは90°になる。従って、図5に示すように、80°〜100°に特徴的なピークが存在するヒストグラムになる。このピークの度数は、エッジCの円周上の画素数だけA/rを加算した値となる。エッジCの円周上の画素数は円周長2πrに比例するから、ピークの度数は2πr×A/r=2πAに比例した値となる。すなわち、ピークの度数は、円形の半径rに依存しない値となる。換言すれば、大きな円形でも小さな円形でもヒストグラムは同一になる。
【0033】
ステップT4では、探索領域F内に次のエッジが存在するならステップT5ヘ進み、存在しないならステップT6へ進む。
【0034】
ステップT5では、次のエッジ上の全ての画素について、基準線分Qに対する該画素における当該エッジの接線の成す角度θを求め、基準線分の長さをrとし且つ係数をAとするとき、該角度θについて度数A/rをヒストグラムに加算する。そして、ステップT4に戻る。
【0035】
ステップT6では、現在のヒストグラムを探索領域Fが含む図形特徴を表す特徴ヒストスラムとする。また、基準点Oの位置を図形位置とする。そして、処理を終了する。
【0036】
図4の探索領域Fに対して作成された図5の特徴ヒストグラムは、判定規則作成用ヒストグラムである。この図5の判定規則作成用ヒストグラムから、「80°〜100°のビンの度数が閾値以上であれば、円形である。」という判定規則を作成する。閾値は、理想的な円形からの変形の程度,エッジのかすれの程度,ノイズの混入の程度などを考慮して定めればよい。例えば図5に示すように1.6πA(=理想的な円形の場合の度数2πAの80%)としてもよい。
つまり、閾値の調整によって、同一の図形と判定する範囲を調整することが出来る。
【0037】
図6は、実施例1に係る円形探索処理を示すフロー図である。
ステップS1では、画像入力部1は、検索対象となる画像として例えば図8に示す画像Gを取り込む。
ステップS2では、エッジ画像作成部2は、例えばキャニー法により図形探索対象の画像Gを2値化・細線化し、例えば図9に示すエッジ画像Eを作成する。
【0038】
ステップS3では、探索領域設定部3は、例えば図10に示すように、エッジ画像E上の初期枠位置p0に探索領域Fを設定する。また、エッジ画像Eの全体を走査できるように移動して探索領域Fを設定する全ての位置を準備しておく。探索領域Fの移動は、通常は1画素ずつ移動する。
【0039】
ステップS4では、図形特徴抽出部4は、図3に示す図形特徴抽出処理を実行する。
図10の探索領域F内は、図4に示す探索領域F内と同じであるから、図5の特徴ヒストグラムが得られる。拡大・縮小された円形でも図5の特徴ヒストグラムが得られる。円周の途中が途切れていても、多少変形した円形でも図5に類似した特徴ヒストグラムが得られる。
【0040】
ステップS5では、図形判定部5は、図7に示す円形判定処理を実行する。
【0041】
図7のステップU1では、図形判定部5は、特徴ヒストグラムにおける80°〜100°のビンの度数が閾値である1.6πA以上であれば位置piで円形を検出したと判定し、そうでなければ位置piで円形を検出しないと判定する。そして、処理を終了する。
【0042】
図6に戻り、ステップS6では、探索領域Fを移動する次の位置が残っているかチェックし、残っていればステップS7へ進み、残っていなければエッジ画像Eの全域を走査したので処理を終了する。
【0043】
ステップS7では、探索領域設定部3は、次の位置に探索領域Fを設定する。
ステップS8では、図形特徴抽出部4は、図3に示す図形特徴抽出処理を実行する。
ステップS9では、図形判定部5は、図7に示す円形判定処理を実行する。そして、ステップS6に戻る。
【0044】
さて、図11に示すように、円形のエッジCの80%未満が探索領域Fに含まれる場合、図12に示すような特徴ヒストグラムとなるため、この位置では円形を検出しないと判定する。
【0045】
また、図13に示すように、直線のエッジLが探索領域Fに含まれる場合、図14に示すような特徴ヒストグラムとなるため、この位置では円形を検出しないと判定する。
【0046】
実施例1に係る円形探索処理によれば、拡大・縮小された円形でも、円周の途中が途切れていても、多少変形した円形でも、検出することが出来る。
【実施例2】
【0047】
実施例2の図形探索装置の構成は、実施例1で説明した図1の構成と同じであるので、ここでの説明は省略する。
【0048】
実施例2の図形探索装置では、判定規則の作成に際しては、図15に示す如き探索したい図形(ここでは文字「B」)のエッジのみを含む探索領域Fを作成し、図3の図形特徴処理を実行する。これにより、図16に示す如き判定規則作成用ヒストグラムが得られたとすると、「特徴ヒストグラムのピーク分布パターンと判定規則作成用ヒストグラムのピーク分布パターンの類似度が閾値以上であれば、探索したい図形である。」という判定規則を作成する。閾値は、理想的な図形からの変形の程度,エッジのかすれの程度,ノイズの混入の程度などを考慮して定めればよい。
【0049】
図17は、実施例2に係る図形探索処理を示すフロー図である。
ステップS1では、画像入力部1は、検索対象となる画像を取り込む。
ステップS2では、エッジ画像作成部2は、例えばキャニー法により図形探索対象の画像Gを2値化・細線化し、例えば図19に示すエッジ画像Eを作成する。
【0050】
ステップS3では、探索領域設定部3は、エッジ画像上の初期枠位置p0に探索領域Fを設定する。また、エッジ画像の全体を走査できるように移動して探索領域Fを設定する全ての位置を準備しておく。通常は1画素ずつ移動する。
【0051】
ステップS4では、図形特徴抽出部4は、図3に示す図形特徴抽出処理を実行する。この図形特徴抽出処理は、実施例1で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0052】
ステップS15では、図形判定部5は、図18に示す図形判定処理を実行する。
図18のステップU1では、図形判定部5は、特徴ヒストグラムのピーク分布パターンと判定規則作成用ヒストグラムのピーク分布パターンの類似度が閾値よりも高ければ枠位置piで図形を検出したと判定し、類似度が閾値よりも高くなければ枠位置piで図形を検出しないと判定する。類似度は、例えばバタチャリヤ距離を計算し、それを指標とすればよい。
つまり、閾値の調整によって、同一の図形と判定する範囲を調整することが出来る。
【0053】
ステップS6では、探索領域Fを移動する次の位置が残っているかチェックし、残っていればステップS7へ進み、残っていなければエッジ画像Eの全域を走査したので処理を終了する。
【0054】
ステップS7では、探索領域設定部3は、次の位置に探索領域Fを設定する。
例えば図19に示す位置に探索領域Fが設定されたとする。
【0055】
ステップS8では、図形特徴抽出部4は、図3に示す図形特徴抽出処理を実行する。
図19に示す位置に探索領域Fが設定されていた場合、図20に示す如き特徴ヒストグラムが得られる。図19に示すように図形(=文字「B」)が画像上で回転していても、その回転中心が基準点Oに合致していれば、図形と基準点Oの相対位置関係は回転に影響されないので、特徴ヒストグラムは不変である。なお、図20のハッチングした度数は、探索領域F内に存在するノイズNのエッジに相当する誤差分を示している。
【0056】
ステップS19では、図形判定部5は、図18に示す図形判定処理を実行する。そして、ステップS6に戻る。
【0057】
実施例2に係る図形探索処理によれば、回転・拡大・縮小された図形でも、一部が途切れていても、多少変形した図形でも、検出することが出来る。
なお、異なる複数の図形についての判定規則をそれぞれ用意しておけば、画像上の図形の種類を判別することも可能である。
【実施例3】
【0058】
図21に示すように90°・60°・30°の内角を持つ直角三角形についての判定規則作成用ヒストグラムは、図22に示すようになる。
他方、図22に示すように図21の直角三角形をミラー反転した直角三角形についての判定規則作成用ヒストグラムは、図24に示すようになる。
図22のピーク分布パターンもしくは図22のピーク分布パターンとの類似度を判定規則にすれば、ミラー反転した図形を別の図形と判定することが出来る。
一方、図25に示すように、ビンの角度範囲を変更したピーク分布パターンにし、これとの類似度を判定規則にすれば、ミラー反転した図形を同一の図形と判定することが出来る。
つまり、ビンの角度の調整によって、同一の図形と判定する範囲を調整することが出来る。
【実施例4】
【0059】
図26は、本発明に係る動き追跡装置200の構成を示すブロック図である。
この動き追跡装置200は、動画取得部11と、静止画像取出部12と、実施例1の図形探索装置100と、移動経路取得部13とを具備している。これらの構成は、一般的なコンピュータシステム上に構築することが出来る。
【0060】
動画取得部11は、例えば防犯カメラで撮影したビデオ映像の如き動画を取得する。
【0061】
静止画像取出部12は、動画から時間経過順の複数の静止画像を取り出す。
【0062】
図形探索装置100は、時間経過順の複数の静止画像のそれぞれについて、探索したい図形を静止画像中で検出した位置piを出力する。
例えば図27に示すように、手のエッジ画像のみを含む探索領域Fより、図28に示す如き判定規則作成用ヒストグラムが得られたならば、「80°〜100°のビンの度数が閾値以上であれば、手である。」という判定規則を作成する。閾値は、理想的な円形からの変形の程度,エッジのかすれの程度,ノイズの混入の程度などを考慮して定めればよい。例えば図28に示すようにπA(=理想的な円形の場合の度数2πAの50%)としてもよい。
そして、図29(a)〜(c)に示すように、時間経過中の静止画像からそれぞれ作成したエッジ画像E1〜E3でそれぞれ手を検出した位置p1〜p3を出力する。
【0063】
移動経路取得部13は、位置p1〜p3を滑らかにつなぐ移動経路を取得する。
図29の(d)に示すように、手が頭の陰になっていても、先に取得した移動経路からエッジ画像E4での手の位置を推定することが出来る。
【実施例5】
【0064】
図30に示すように、探索したい図形(ここでは円形)の最小サイズの図形Coよりも小さいマスク領域mを探索領域F中に設ければ、探索したい図形と同種であって且つ探索したい図形の最小サイズの図形Coよりも小さい図形Csを検出しないように出来る。
【実施例6】
【0065】
図31の(a)(b)に示すような扇形の探索領域Fを設定し、その要位置に基準点Oを設ければ、図31の(a)に示すように基準点Oに中心が合致する円弧Caでは角度θが90°一定になるのに対して、図31の(b)に示すように基準点Oに中心が合致しない円弧Cbでは角度θが90°でない角度で一定になる。つまり、特徴的なピークが現れるビンの角度が異なるので、円周上の特定位置の円弧を判定することが出来る。
【実施例7】
【0066】
図32に示すように、探索領域Fを複数の部分区画f1〜f4に分割し、各部分区画f1〜f4を個別の探索領域として図形特徴抽出処理を実行すれば、探索領域Fに含まれる図形の特徴をより詳細に抽出することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の図形特徴抽出方法、図形探索方法、動き追跡方法、図形特徴抽出装置、図形探索装置および動き追跡装置は、防犯カメラの映像解析などに利用することが出来る。
【符号の説明】
【0068】
1 画像入力部
2 エッジ画像作成部
3 探索領域設定部
4 図形特徴抽出部
5 図形判定部
11 動画取得部
12 静止画像取出部
13 移動経路取得部
100 図形探索装置
200 動き追跡装置
A 度数調整計数
E,E1〜E4 エッジ画像
F 探索領域
f1〜f4 部分区画
g エッジ上の画素
G 画像
O 探索領域の基準点
Q 基準線分
r 基準線分の長さ
θ 基準線分に対するエッジの接線の成す角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32