(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6026811
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】セラミックフィルタ集塵装置
(51)【国際特許分類】
B01D 46/24 20060101AFI20161107BHJP
B01D 29/33 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
B01D46/24 B
B01D29/32 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-176182(P2012-176182)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-33994(P2014-33994A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】川崎 一平
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 直人
【審査官】
関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−168524(JP,A)
【文献】
特開2001−300228(JP,A)
【文献】
特開2003−019412(JP,A)
【文献】
特開平07−068106(JP,A)
【文献】
米国特許第04306896(US,A)
【文献】
特表2000−510386(JP,A)
【文献】
実開平06−007814(JP,U)
【文献】
特開平08−000165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/24
B01D 29/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部にフランジ部を有するキャンドル型セラミックフィルタと、
前記キャンドル型セラミックフィルタの他方の端部が挿通される支持孔を有し、他方の端部が支持孔に挿通されたキャンドル型セラミックフィルタのフランジ部を上面に当接させることによってキャンドル型セラミックフィルタを支持する支持部材と、
前記フランジ部を収容可能な大きさの凹部を底部に有し、前記支持部材によって支持されているキャンドル型セラミックフィルタのフランジ部の上面を凹部の底面で押圧することによってキャンドル型セラミックフィルタを前記支持部材に対して固定する固定部材と、
を備え、
前記固定部材は、前記凹部の底面が前記フランジ部の上面に当接するように前記フランジ部の上面に載置されるものであることを特徴とするセラミックフィルタ集塵装置。
【請求項2】
前記固定部材は、他の固定部材が有する前記凹部に係合可能な大きさを有する凸部を備えることを特徴とする請求項1に記載のセラミックフィルタ集塵装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記キャンドル型セラミックフィルタの排ガス排出口に連通する貫通孔を有する円筒形状の部材によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックフィルタ集塵装置。
【請求項4】
前記フランジ部と前記支持部材の上面との間に介在するシール部材を備えることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか1項に記載のセラミックフィルタ集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温状態のガスの集塵処理に適用して好適なセラミックフィルタ集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、キャンドル型と呼ばれる有底円筒状のセラミックフィルタの外周面に含塵排ガスを導入して外周面にダストを付着させ、内周面から清浄なガスを排出することによって、排ガス中のダストを捕集して清浄なガスとして外部に排出するセラミックフィルタ集塵装置が知られている(例えば特許文献1参照)。このような集塵装置では、セラミックフィルタは、閉塞されていない一方の端部側に形成されたフランジ部を集塵装置の取付部にボルトで固定することによって、閉塞されている他方の端部側を下方にして吊り下げられた状態で集塵装置に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−59374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、セラミックフィルタの耐熱温度は高いために、セラミックフィルタ集塵装置は600〜900℃程度の高温状態のガスの集塵処理に適用することができる。しかしながら、従来のセラミックフィルタ集塵装置によれば、セラミックフィルタがボルトによって取付部に固定されているために、高温状態のガスの集塵処理を行った際、熱によってボルトが変形することによりセラミックフィルタを安定的に固定できなくなる可能性があった。このため、高温状態のガスの集塵処理を行ってもセラミックフィルタを安定的に固定可能な技術の提供が期待されていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、高温状態のガスの集塵処理を行ってもセラミックフィルタを安定的に固定可能なセラミックフィルタ集塵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るセラミックフィルタ集塵装置は、一方の端部にフランジ部を有するキャンドル型セラミックフィルタと、前記キャンドル型セラミックフィルタの他方の端部が挿通される支持孔を有し、他方の端部が支持孔に挿通されたキャンドル型セラミックフィルタのフランジ部を上面に当接させることによってキャンドル型セラミックフィルタを支持する支持部材と、前記フランジ部を収容可能な大きさの凹部を底部に有し、前記支持部材によって支持されているキャンドル型セラミックフィルタのフランジ部の上面を凹部の底面で押圧することによってキャンドル型セラミックフィルタを固定する固定部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るセラミックフィルタ集塵装置は、上記の発明において、前記固定部材が、他の固定部材が有する前記凹部に係合可能な大きさを有する凸部を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るセラミックフィルタ集塵装置は、上記の発明において、前記固定部材が、前記キャンドル型セラミックフィルタの排ガス排出口に連通する貫通孔を有する円筒形状の部材によって形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るセラミックフィルタ集塵装置は、上記の発明において、前記フランジ部と前記支持部材の上面との間に介在するシール部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るセラミックフィルタ集塵装置によれば、ボルトを用いることなく、フランジ部の上面に載置された固定部材によってセラミックフィルタを押圧することによりセラミックフィルタを固定するので、高温状態のガスの集塵処理を行ってもセラミックフィルタを安定的に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態であるセラミックフィルタ集塵装置の構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態であるキャンドル型セラミックフィルタの固定構造を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す固定部材の構成を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態であるキャンドル型セラミックフィルタの固定方法を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す固定部材が積層された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態であるセラミックフィルタ集塵装置について説明する。
【0013】
〔セラミックフィルタ集塵装置の構成〕
図1は、本発明の一実施形態であるセラミックフィルタ集塵装置の構成を示す断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態であるセラミックフィルタ集塵装置1は、例えば四角筒状の缶体10を備えている。缶体10の下端部には、下方に延びる例えば角錐状のホッパ11が固定され、ホッパ11の下端部には、捕集されたダストDを外部に排出する集塵ダスト排出装置12が接続されている。
【0014】
缶体10の下方側部には、ダストDを含む排ガス(以下、含塵排ガスと表記)を缶体10内に導入する排ガス供給管13が配設されている。缶体10の上部には、配管14a,14bを介してダストDが除去された排ガス(以下、除塵排ガスと表記)を外部に排出する排ガス排出管15が配設されている。缶体10内部の排ガス供給管13と排ガス排出管15との間の空間には、複数のキャンドル型セラミックフィルタ16(16a〜16h)が水平方向に沿って配設されている。
【0015】
缶体10の上方側部には、缶体10内部の排ガス排出管15と複数のキャンドル型セラミックフィルタ16a〜16hとの間の空間内において水平方向に延伸する逆洗配管17,18が配設されている。逆洗配管17は、それぞれキャンドル型セラミックフィルタ16a〜16dの排ガス排出口に向けて高圧の空気を噴出する噴出口17a〜17dを備えている。逆洗配管18は、それぞれキャンドル型セラミックフィルタ16e〜16hの排ガス排出口に向けて高圧の空気を噴出する噴出口18a〜18dを備えている。逆洗配管17の終端部と逆洗配管18の終端部とは所定間隔を空けて離間している。
【0016】
このような構成を有するセラミックフィルタ集塵装置1では、排ガス供給管13から缶体10内部に含塵排ガスが供給されると、含塵排ガスは、キャンドル型セラミックフィルタ16の外周面に導入される。外周面に導入された含塵排ガスは、キャンドル型セラミックフィルタ16を透過して内周面側に流出する。この際、含塵排ガス中のダストDはキャンドル型セラミックフィルタ16によって捕集される。これにより、配管14a,14b及び排ガス排出管15を介して清浄な除塵排ガスが外部に排出される。
【0017】
一方、キャンドル型セラミックフィルタ16に対し逆洗処理を施す際には、逆洗配管17,18に高圧状態の空気を供給する。逆洗配管17,18に高圧状態の空気が供給されると、高圧状態の空気が噴出口17a〜17d,18a〜18dを介して対応するキャンドル型セラミックフィルタ16の内周面に噴出される。内周面に高圧状態の空気が噴出されると、高圧状態の空気が、キャンドル型セラミックフィルタ16を通過し、捕集されているダストDを外周面側に排出する。外周面側から排出されたダストDは、ホッパ11の下端部に落下し、ホッパ11の下端部に接続されている集塵ダスト排出装置12によって外部に排出される。
【0018】
〔セラミックフィルタの固定構造〕
次に、
図2,3を参照して、
図1に示すキャンドル型セラミックフィルタ16の固定構造について説明する。
図2は、
図1に示すキャンドル型セラミックフィルタ16の固定構造を示す模式図である。
図3は、
図2に示す固定部材20の構成を示す斜視図である。
【0019】
図2に示すように、キャンドル型セラミックフィルタ16は、有底円筒状のセラミックフィルタ本体161と、セラミックフィルタ本体161の閉塞されていない一方の端部側に形成されたフランジ部162と、を備えている。キャンドル型セラミックフィルタ16は、缶体10に形成された支持孔10aにセラミックフィルタ本体161の閉塞されていない他方の端部を上方向から挿通し、フランジ部162を支持孔10aの周縁部に当接させることによって缶体10に支持されている。フランジ部162と支持孔10aの周縁部との間には、本発明に係るシール部材として機能するドーナツ形状のガスケット30が介在している。フランジ部162の上部には、固定部材20が載置されている。
図3に示すように、固定部材20は、開口部21を有する円筒形状の部材によって形成され、その底部及び上部にはそれぞれ凹部22及び凸部23が形成されている。
【0020】
開口部21は、セラミックフィルタ本体161の内周面に連通し、逆洗処理時に噴出口17a〜17d,18a〜18d(
図1参照)から噴出された高圧状態の空気をセラミックフィルタ本体161の内周面に導く。凹部22は、フランジ部162を収容可能な大きさを有し、その底面においてフランジ部162の上面に当接することによってフランジ部162に押圧することによりキャンドル型セラミックフィルタ16を固定する。凸部23は、他の固定部材の凹部22に係合可能な大きさを有している。
【0021】
〔セラミックフィルタの固定方法〕
次に、
図4を参照して、
図1に示すキャンドル型セラミックフィルタ16の固定方法について説明する。
図4は、
図1に示すキャンドル型セラミックフィルタ16の固定方法を示す模式図である。
【0022】
図4に示すように、キャンドル型セラミックフィルタ16を固定する際には、始めに、セラミックフィルタ本体161の閉塞されている他方の端部側からガスケット30を挿通する。次に、セラミックフィルタ本体161の閉塞されている他方の端部を支持孔10aの上方向から挿通し、ガスケット30を介してフランジ部162を支持孔10aの周縁部に当接させる。これにより、キャンドル型セラミックフィルタ16は、缶体10の上面部において支持される。
【0023】
次に、凹部22の底面がフランジ部162の上面に当接するようにフランジ部162の上面に固定部材20を載置する。これにより、フランジ部162は固定部材20によって下方向に押圧され、キャンドル型セラミックフィルタ16は固定される。また、フランジ部162と支持孔10aの周縁部との間にはガスケット30が介在しているので、排ガス供給管13側の空間と排ガス排出管15側の空間との間のシール性を向上させることができる。また、凹部22は、フランジ部162を収容可能な大きさを有しているので、固定部材20が水平方向にずれることが抑制され、フランジ部162に均等に荷重をかけることができる。
【0024】
なお、本実施形態では、1個の固定部材20をフランジ部162の上面に載置することによってキャンドル型セラミックフィルタ16を固定したが、フランジ部162の上面に載置する固定部材20の個数は1個に限定されることはない。すなわち、既に述べたように、固定部材20の上部に形成された凸部23の大きさは、固定部材20の底部に形成された凹部23に収容可能な大きさに設計されている。つまり、
図5に示すように、固定部材20は、一方の固定部材20Aの凸部23Aを他方の固定部材20Bの凹部22Bに係合させることによって、任意の個数に積層することができる。
【0025】
従って、固定するキャンドル型セラミックフィルタ16の重量に合わせてフランジ部162の上面に載置する固定部材20の個数を適切に設定するとよい。具体的には、重量が軽いキャンドル型セラミックフィルタ16では、逆洗処理の際に高圧状態の空気を供給した際、キャンドル型セラミックフィルタ16が高圧状態の空気によって揺動する可能性がある。このため、自重の軽いキャンドル型セラミックフィルタ16を固定する際には、フランジ部162の上面に載置する固定部材20の個数を通常の個数より多くすると良い。これにより、逆洗処理の際に高圧状態の空気を供給した際、キャンドル型セラミックフィルタ16が揺動することを抑制できる。
【0026】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1 セラミックフィルタ集塵装置
10 缶体
10a 支持孔
11 ホッパ
12 集塵ダスト排出装置
13 排ガス供給管
14a,14b 配管
15 排ガス排出管
16(16a〜16h) キャンドル型セラミックフィルタ
17,18 逆洗配管
17a〜17d,18a〜18d 噴出口
20 固定部材
21 開口部
22 凹部
23 凸部
30 ガスケット
161 セラミックフィルタ本体
162 フランジ部
D ダスト