(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の
図8のゴム芯入り組紐リングでは、接合部が覆い布で巻かれているが、この覆い布は、特に色違いのゴム芯入り紐が用いられた場合には、デザイン的に浮いてしまう。また、2本のゴム芯入り紐を交互に撚った縒り紐の両端部が束ねられて覆い布で覆われることから、接合部だけ他の領域よりも径太になってしまう。特許文献1の
図8のゴム芯入り組紐リングは、この点でもデザイン的に好ましくなく、さらには、例えば、ゴム芯入り組紐リングがヘアバンドとして使用された場合には、このような接合部は(そこだけ強く押圧するので)使用者に違和感を与えてしまう。加えて、特許文献1の
図8のゴム芯入り組紐リングには、両端部を束ねて糸で縛って、その上から覆い布を巻き付けるという接合作業が面倒であるという問題もある。
【0006】
特許文献1の
図6に示されたゴム芯入り組紐リングは、上記ゴム芯入り組紐リングの問題点を克服するものとして特許文献1に開示されており、1本のゴム芯入り紐の一端とその中程を合わせて輪部を形成し、輪部の外側に残りの部位を複数回巻き付かせた後、そのゴム芯入り紐の両端を接着することで構成されている。
【0007】
特許文献1の
図6に示されたゴム芯入り組紐リングでは、
図8に示されたゴム芯入り組紐リングにおける接合部の盛り上がりや覆い布の問題は解消されている。しかしながら、1本のゴム芯入り組紐リングを用いているので、
図6のゴム芯入り組紐リングは、
図8に示されたゴム芯入り組紐リングのように(色違いのゴム芯入り紐を用いて)カラフルさを演出することはできない。さらに、特許文献1の
図2乃至
図5に示されているように、
図6に示されたゴム芯入り組紐リングは、ゴム芯入り組紐の中程を押さえて、一端から中程までの間に撚りを加える工程と、加えた撚りを保ちながら、ゴム芯入り組紐の一端にその中程を合わせて輪部を形成する工程と、この輪部の外にある残りの部位を輪部に複数回巻き付かせる工程と、ゴム芯入り紐の両端を接着する工程とを必要としている。1つのゴム芯入り組紐リングを作製する毎に、撚りを加える工程と、輪部を形成する工程と、輪部以外の部位を輪部に複数回巻き付かせる工程とを手作業で行うことは極めて面倒であって、
図6に示されたゴム芯入り組紐リングは、製造工程の点で、
図8に示されたゴム芯入り組紐リングよりも優れているとは到底言い難い。また、製造されるゴム芯入り組紐リングに個体差が生じやすいという問題もある。
【0008】
本発明は、これらの問題を解決して、複数のゴム芯入り紐を編んで又は縒って、且つリング状にしたゴムリングであって、従来製品と比較して簡単な工程を用いて製造可能なゴムリングと、当該ゴムリングを製造する方法とを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のゴムリングは、各々がゴム芯と前記ゴム芯を覆う繊維糸製伸縮性カバーとを備える複数のゴム芯入り紐を編んで又は縒って、且つリング状にしたゴムリングにおいて、前記複数のゴム芯入り紐を編んで又は縒って構成したゴム組紐が、その両端面を接着することでリング状に構成されており、前記ゴム組紐の両端部は、固化剤で固められており、各ゴム芯入り紐のゴム芯及び伸縮性カバーが一体に固められ、前記複数のゴム芯入り紐が解けないように前記複数のゴム芯入り紐の複数の伸縮性カバーが一体に固められている。
【0010】
本発明のゴムリングでは、前記固化剤が固まった前記ゴム組紐の両端部の固化部分は多孔質であってよい。
【0011】
本発明の第1のゴムリングの製造方法は、各々がゴム芯と前記ゴム芯を覆う繊維糸製伸縮性カバーとを備える複数のゴム芯入り紐を編んで又は縒って、且つリング状にしたゴムリングの製造方法において、長尺の複数のゴム芯入り紐を編んで又は縒って構成した長尺のゴム組紐を、前記長尺のゴム組紐の長さ方向に所定の間隔で離れた複数の箇所にて固化剤で固める工程と、前記固化剤で固められた複数の部分の各々が分断されるように前記長尺のゴム組紐を切断して、両端部分が固められている1又は複数の短尺のゴム組紐を得る工程と、前記1又は複数の短尺のゴム組紐の各々を、その両端面を接着してリング状に構成する工程とを含んでおり、前記固化剤は、前記長尺の複数のゴム芯入り紐の各々のゴム芯及び伸縮性カバーを一体に固めると共に、前記長尺の複数のゴム芯入り紐が離れないように前記長尺の複数のゴム芯入り紐の複数の伸縮性カバーを一体に固める。
【0012】
本発明の第2のゴムリングの製造方法は、各々がゴム芯と前記ゴム芯を覆う繊維糸製伸縮性カバーとを備える複数のゴム芯入り紐を編んで又は縒って、且つリング状にしたゴムリングの製造方法において、長尺の複数のゴム芯入り紐を編んで又は縒って構成した長尺のゴム組紐から短尺のゴム組紐を作製する工程であって、前記短尺のゴム組紐を構成する複数のゴム芯入り紐は、前記短尺のゴム組紐の長さ方向に離れた2箇所にて結束部材で結束されている工程と、前記短尺のゴム組紐における各結束部材に隣接又は近接した部分を、固化剤を用いて固める工程であって、固められた部分は、それら結束部材の間に位置している工程と、固められた部分の各々が分断されるように、前記短尺のゴム組紐の両側の部分を切断して除去する工程と、前記両側の部分が除去された前記短尺のゴム組紐を、その両端面を接着してリング状に構成する工程とを含んでおり、前記固化剤は、前記短尺のゴム組紐を構成する複数のゴム芯入り紐の各々のゴム芯及び伸縮性カバーを一体に固めると共に、前記短尺のゴム組紐を構成する複数のゴム芯入り紐が離れないように、前記短尺のゴム組紐を構成する複数のゴム芯入り紐の複数の伸縮性カバーを一体に固める。
【0013】
本発明の第2のゴムリングの製造方法では、前記長尺のゴム組紐から前記短尺のゴム組紐を作製する工程は、前記長尺のゴム組紐から、前記長尺のゴム組紐の長さ方向に離れた複数の箇所の各々において、前記長尺の複数のゴム芯入り紐を結束部材を用いて結束する工程と、前記複数の箇所にある結束部材が分断されるように、前記所定の間隔で前記長尺のゴム組紐を切断する工程とを含んでよい。
【0014】
本発明の第2のゴムリングの製造方法では、前記長尺のゴム組紐から前記短尺のゴム組紐を作製する工程は、前記長尺のゴム組紐から、前記長尺のゴム組紐の長さ方向に離間した複数の箇所の各々において、前記長尺の複数のゴム芯入り紐を一対の結束部材を用いて結束する工程と、前記複数の箇所の各々にある一対の結束部材の間で、前記長尺のゴム組紐を切断する工程とを含んでよい。
【0015】
本発明の第1又は第2のゴムリングの製造方法では、前記固化剤は、膨張剤、分解菌、分解酵素、又は有機溶剤系洗浄剤を含んでおり、固化すると多孔質になってよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のゴムリングでは、複数のゴム芯入り紐を編んで又は縒って構成したゴム組紐が、その両端面を接着することでリング状に構成されているので、接合部にて径太にならず、接合部がゴムリングの美観を損ねることはない。固化剤を用いることによって、ゴム組紐の両端部にて、複数のゴム芯入り紐の複数の伸縮性カバーが一体に固められており、複数のゴム芯入り紐が解けない状態で、ゴム組紐の両端面を接着できるので、本発明のゴムリングにより、ゴム組紐をリング状にする工程は簡単且つ容易になる。
【0017】
本発明のゴムリングでは、ゴム組紐の両端部にて、各ゴム芯入り紐のゴム芯及び伸縮性カバーも一体に固められている。これによって、伸縮性カバーの端部の毛羽立ちが抑制されると共に、ゴム芯の端面が伸縮性カバー内に入って凹まないので、(特許文献1の
図8のゴム芯入り組紐リングのように結束用の糸や覆い布を用いることなく)ゴム組紐の両端面を接着剤を用いて簡単に且つ強固に接合できる。さらに、固化剤が固化した固化部分が多孔質にされることで、ゴム組紐の両端面はさらに強固に接着される。
【0018】
本発明の第1及び第2のゴムリングの製造方法では、ゴム組紐を固化剤で固める工程を行い、その後、固まった部分を分断することで、複数のゴム芯入り紐が両端部にて解けない状態のゴム組紐が得られる。そして、当該ゴム組紐の両端を接着する工程が簡単且つ容易に行われる。製造されたゴムリングは、接合部にて径太にならず、接合部がゴムリングの美観を損ねることはない。さらに、ゴム組紐の両端部にて、各ゴム芯入り紐のゴム芯及び伸縮性カバーが一体に固められているので、伸縮性カバーの端部の毛羽立ちが抑制されると共に、ゴム芯の端面が伸縮性カバー内に入って凹まないので、ゴム組紐の両端面は、接着剤を用いて簡単に且つ強固に接合される。膨張剤、分解菌、又は分解酵素を含んだ固化剤を用いることで、固化剤が固化した固化部分に細孔が形成されて、ゴム組紐の両端はさらに強固に接着剤で接着される。
【0019】
本発明の第1のゴムリングの製造方法は、複数のゴム芯入り紐が両端部にて解けることがない状態の多数のゴム組紐が容易に得られるので、多数のゴムリングを効率的に製造することを可能とする。
【0020】
本発明の第2のゴムリングの製造方法では、長さ方向に離間した2箇所において複数のゴム芯入り紐が結束されたゴム組紐が得られるので、当該ゴム組紐を部分的に固化剤で固める工程が容易に行われる。使用した結束部材は、その後の工程によって除去される。ゴム組紐を結束する工程は、ゴム組紐やゴムリングの美観を気にすることなく行えるので、製造工程に過度の負担を与えない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のゴムリングの実施例と本発明のゴムリングの製造方法の実施例とについて、図面を用いて具体的に説明する。
図1は、本発明の実施例である伸縮自在なゴムリング(1)の斜視図である。ゴムリング(1)は、3本のゴム芯入り紐(13a)(13b)(13c)を三つ編みにしたゴム組紐(11)の両端面をどうしを突き合わせて接着剤(31)で接着することで構成されている。
図2は、ゴム芯入り紐(13a)を長さ又は軸方向に沿って破断した模様を模式的に示す部分断面図である(固化剤(51)で固められていない部分におけるゴム芯入り紐(13a)の断面図である)。
図3は、ゴム組紐(11)の一方の端面(第1端部(19a)に含まれる端面)を模式的に示す説明図である。
図2及び
図3に示すように、ゴム芯入り紐(13a)(13b)(13c)の各々は、糸ゴム又はゴム芯(15a)(15b)(15c)と、そのゴム芯(15a)(15b)(15c)を覆う伸縮性カバー(17a)(17b)(17c)とを備えている。
【0023】
ゴム芯(15a)(15b)(15c)は、天然ゴム又は合成ゴムで形成されている。実施例では、ゴム芯(15a)(15b)(15c)の断面は丸形にされているが、本発明において、ゴム芯(15a)(15b)(15c)の断面形状は特に限定されず、例えば矩形にされてもよい。伸縮性カバー(17a)(17b)(17c)は、ゴム芯入り紐(13a)(13b)(13c)(又はゴム組紐(11))の伸縮に対応できるように、ゴム芯入り紐(13a)(13b)(13c)の長さ方向に伸縮可能に繊維糸を編んで形成されている。伸縮性カバー(17a)(17b)(17c)を形成する繊維糸としては、例えば、綿糸、ポリエステル糸、レーヨン糸やポリウレタン糸が使用される。伸縮性カバー(17a)(17b)(17c)を色違いにすることで、カラフルさを演出して、デザイン面でゴムリング(1)を特徴づけることができる。なお、本明細書において、ゴム組紐は、複数のゴム芯入り紐を組み合わせて作った紐を意味しており、複数のゴム芯入り紐を編んで作ったゴム編紐や、複数のゴム芯入り紐を縒って作ったゴム縒紐などを含むものとして使用される。
【0024】
一方の端面を含むゴム組紐(11)の第1端部(19a)と他方の端面を含むゴム組紐(11)の第2端部(19b)とは、後述する固化剤(51)(
図6(b)及び
図7(c)参照)を用いて固められている。
図4は、第1端部(19a)を構成するゴム芯入り紐(13a)(13b)の端部を模式的に示す部分断面図である。
図4に示すように、ゴム組紐(11)に含浸した固化剤(51)が固化して固化部分(53)が形成されることで2本のゴム芯入り紐(13a)(13b)の伸縮性カバー(17a)(17b)は、一体的に固められている。固化剤(51)が伸縮性カバー(17a)(17b)に浸透することで、これらの伸縮性カバー(17a)(17b)間に加えて、繊維糸製の伸縮性カバー(17a)(17b)内にも固化部分(53)が形成されている(
図5参照)。なお、
図4では、伸縮性カバー(17a)(17b)の間に固化部分(53)が形成されている模様が示されているが、これら伸縮性カバー(17a)(17b)は、第1端部(19a)にて(少なくとも部分的には)接触している又は接触してよいことは当然のことである。
【0025】
伸縮性カバー(17b)(17c)の対、さらに、伸縮性カバー(17a)(17c)の対についても、伸縮性カバー(17a)(17b)の対と同様に一体的に固められている(図示せず)。その結果、3つの伸縮性カバー(17a)(17b)(17c)が一体に固められており、ゴム組紐(11)の両端面を突き合わせて接着する際に、第1端部(19a)と第2端部(19b)にて、ゴム芯入り紐(13a)(13b)(13c)が離れない、つまりゴム組紐(11)が解けないようになっている。第1端部(19a)と同様にして、第2端部(19b)においても、3つの伸縮性カバー(17a)(17b)(17c)は一体に固められている。
【0026】
図4に示すように、ゴム組紐(11)に含浸した固化剤(51)が固化して固化部分(53)が形成されることによって、ゴム組紐(11)の第1端部(19a)では、ゴム芯入り紐(13a)(13b)のゴム芯(15a)(15b)の各々とそれを覆う伸縮性カバー(17a)(17b)とも一体に固められている。同様に、第1端部(19a)では、ゴム芯入り紐(13c)のゴム芯(15c)とそれを覆う伸縮性カバー(17c)も一体に固められている(図示せず)。また、ゴム組紐(11)の第2端部(19b)においても、ゴム芯入り紐(13a)(13b)(13c)のゴム芯(15a)(15b)(15c)の各々とそれを覆う伸縮性カバー(17a)(17b)(17c)とは一体に固められている。
【0027】
図5は、
図4に示されているゴム芯入り紐(13b)の断面を拡大したものであって、固化剤(51)が固化した固化部分(53)に多数の細孔(55)が形成されている模様を模式的に示している。本発明では、このように、固化部分(53)に多数の細孔(55)が形成されることが好ましい。ゴム組紐(11)の両端面を接着剤(31)で接着する際に、固化部分(53)の細孔(55)に接着剤(31)が浸透することで、接着面積が増大するからである。
【0028】
図6(a)乃至(d)は、各々がゴム芯とそのゴム芯を覆う繊維糸製伸縮性カバーとを備える複数のゴム芯入り紐を編んで(又は縒って)リング状にしたゴムリングを製造する本発明の第1の製造方法の実施例であって、上記ゴムリング(1)を製造する工程を示している。
【0029】
本実施例では、まず、
図6(a)に示すように、長尺のゴム組紐(11')が準備される。長尺のゴム組紐(11')は、長尺のゴム芯入り紐(13a')(13b')(13c')を編み機等を用いて三つ編みにすることで作製されている。
【0030】
次に、
図6(b)に示すように、長尺のゴム組紐(11')の長さ方向に所定の間隔(或いは所定の周期又は距離)で離れた複数の箇所にて、長尺のゴム組紐(11')に液状の固化剤(51)を含浸させる工程が行われる。当該所定の間隔は、作製されるゴムリング(1)の周長又は展開長さLを踏まえて設定される。当然のことなから、当該工程において、長尺のゴム組紐(11')が引き伸ばされている場合には、当該所定の間隔は、ゴムリング(1)の周長Lよりも長くなる(しかしながら、
図6(d)に示す切断工程の後に得られる1又は複数の短尺のゴム組紐(11)の長さは、ゴムリング(1)の周長Lと等しくされる)。
【0031】
固化剤(51)としては、固化作用成分を溶媒に溶解させたものが使用される。さらには、上述したように、固化剤(51)が固化した固化部分(53)に細孔(55)を形成するために、膨張剤が固化剤(51)に含められる。例えば、溶媒として水を、固化作用成分としてポリビニールアルコール系糊を、膨張剤として炭酸水素ナトリウムを含んでいる固化剤(51)が使用されてよい。
【0032】
固化剤(51)の溶媒としては、水以外に、有機溶剤などが使用されてよい。固化作用成分としては、ポリビニールアルコール系糊の他に、小麦粉、でんぷん粉や上新粉などがあるが、これらに限定されない。膨張剤としては、炭酸水素ナトリウムの他に、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、酒石酸、酒石酸水素カリウム、焼ミョウバン、イーストパウダー、ベーキングパウダーなどがあるが、これらに限定されない。本発明で使用可能な膨張剤には、発泡剤として一般に認識又は使用されているものも含まれる。
【0033】
本実施例では、上記所定の間隔で配置された複数のノズル(71a)(71b)を介して液状の固化剤(51)をゴム組紐(11')に滴下することで、ゴム組紐(11')に固化剤(51)を塗布又は付着させている。長尺のゴム組紐(11')は、直線状に水平に配置されており、その上に一列に配置された複数のノズル(71a)(71b)が、放出口を下側にして配置される。複数のノズル(71a)(71b)の上流側は、固化剤(51)を貯蔵したタンクと繋がっており、当該タンクと複数のノズル(71a)(71b)と繋ぐ流路には、固化剤(51)の滴下を制御するバルブ等の機構が設けられている(何れも図示せず)。
図6(b)では、2本のノズル(71a)(71b)のみが図示されているが、ノズル(71a)(71b)の数、つまり、液状の固化剤(51)を含浸させる箇所(又は、固化剤(51)で固められる箇所)の数が3以上であってよいのは当然のことである。
【0034】
複数のノズル(71a)(71b)から固化剤(51)を滴下する手法以外の手法を用いて、ゴム組紐(11')に固化剤(51)が塗布又は付着されてもよい。例えば、固化剤(51)は、複数のノズル(71a)(71b)からゴム組紐(11')に向かって噴出されてよい。また、ゴム組紐(11')に沿って1本のノズルを水平移動させることで、所定の間隔で固化剤(51)がゴム組紐(11')に塗布又は付着されてもよい。さらには、固化剤(51)が付着又は含浸した部材(例えば、ハケやスポンジ)をゴム組紐(11')に当てることで、所定の間隔で固化剤(51)がゴム組紐(11')に塗布又は付着されてもよい。
【0035】
図6(b)に示すように長尺のゴム組紐(11')に液状の固化剤(51)を含浸させる工程が行われると、ゴム組紐(11')に含浸した固化剤(51)を乾燥させて固化させる工程が行われる。この工程は、自然乾燥によって行われてもよいが、例えば、長尺のゴム組紐(11')に温風を当てることで、固化剤(51)の乾燥が促進されてもよい。固化剤(51)の乾燥中に、固化剤(51)中の水分や揮発性成分は、蒸発又は気化して、乾燥した固化部分(53)には、それら蒸発や気化によって多数の微細孔が残り、多孔質となる。膨張剤は、それら微細孔を拡大させて細孔(55)を形成する働きをする。例えば、固化剤(51)が膨張剤として炭酸水素ナトリウムを含んでいる場合には、炭酸水素ナトリウムは65℃以上で分解するので、ゴム組紐(11')の温度はそれを超える温度(例えば、70℃程度)にされるのが好ましい。
【0036】
固化剤(51)が乾燥して固化部分(53)が形成されると、
図6(c)に示すように、固化剤(51)が含浸したゴム組紐(11')の部分(21a)(21b)が固められる。当該部分(21a)(21b)では、先に説明したように、長尺のゴム芯入り紐(13a')(13b')(13c')の各々のゴム芯及び伸縮性カバーが一体に固められており、さらに、ゴム芯入り紐(13a')(13b')(13c')が離れないように、それらの伸縮性カバーも一体に固められている。
【0037】
次に、
図6(d)に示すように、固化剤(51)で固められた複数の部分(21a)(21b)の各々が分断されるように長尺のゴム組紐(11')を上記の所定の間隔で(長さ方向と直交して)切断する工程が行われる。このように長尺のゴム組紐(11')が切断されることで、両端部(19a)(19b)が固まっている1又は複数の短尺のゴム組紐(11)が得られる。固化剤(51)で予め固められた(21a)(21b)が分断されることで、第1端部(19a)及び第2端部(19b)にて、切断に起因したゴム芯入り紐(13a)(13b)(13c)の毛羽立ちが抑制されると共に、ゴム芯(15a)(15b)(15c)が収縮して、それらの端面が伸縮性カバー(17a)(17b)(17c)内に入り込む事態が防止される。その結果、ゴム組紐(11)の第1端部(19a)及び第2端部(19b)の端面は、突き合わせて接着し易いように(巨視的に)平坦にされる。
【0038】
図6(d)に示す切断工程の後、切断工程で得られた各ゴム組紐(11)の両端面が接着剤(31)を用いて接着されることで、
図1に示すようなゴムリング(1)が作製される。接着工程では、例えば、一方の端面に接着剤(31)を塗布した後に、両端面どうしを突き合わせて、突き合わせ方向に加圧することで、ゴム組紐(11)の両端面が接合される。接着剤(31)としては、浸透性を有しており、且つ非水溶性の接着剤が使用されるのが好ましく、例えば、シアノアクリレート系接着剤が使用されてよい。
【0039】
ゴム組紐(11)の両端面の接合は、
図1に示すように、ゴム組紐(11)を構成するゴム芯入り紐(13a)(13b)(13c)の各々の端面どうしを突き合わせて接着することが、デザイン的には好ましいが、必ずしもそのように接合する必要はない。例えば、異なるゴム芯入り紐(13a)(13b)(13c)の端面を突き合わせて接着してもよい。
【0040】
図7(a)乃至(c)と
図8(a)及び(b)は、各々がゴム芯と前記ゴム芯を覆う繊維糸製伸縮性カバーとを備える複数のゴム芯入り紐を編んで(又は縒って)リング状にしたゴムリングを製造する本発明の第2の製造方法の第1実施例であって、上記ゴムリング(1)を製造する工程を示している。
【0041】
本実施例では、まず、先の実施例と同じく、
図6(a)に示すような長尺のゴム組紐(11')が準備される。次に、
図7(a)に示すように、長尺のゴム組紐(11')の長さ方向に所定の間隔(或いは、所定の周期又は距離)で離れた複数箇所において、長尺のゴム芯入り紐(13a')(13b')(13c')を、破断可能な結束部材(91)を用いて結束する工程が実行される。本実施例では、結束部材(91)である帯体が所定の間隔でゴム組紐(11')に巻き付けられている。帯体としては、例えば、市販の粘着テープが使用されてよい。結束部材で結束される箇所の間隔は、作製されるゴムリング(1)の周長又は展開長さLと結束部材(91)の幅を考慮して決定される。なお、先の実施例と同様に、長尺のゴム組紐(11')が引き伸ばされている場合には、当該所定の間隔は、その伸びを考慮して設定される。
図7(a)には、2つの結束部材(91)のみが図示されているが、結束部材(91)の数、つまり、長尺のゴム組紐(11')のゴム芯入り紐(13a')(13b')(13c')を結束する箇所の数は、3以上であってよいのは当然のことである。
【0042】
次に、
図7(b)に示すように、結束部材(91)の各々が分断されるように長尺のゴム組紐(11')を上記の所定の間隔で切断する工程が行われる。このように長尺のゴム組紐(11')が切断されることで、分断された結束部材(93a)(93b)で両端が結束された1又は複数の短尺のゴム組紐(11'')が得られる。本実施例では、各結束部材(91)は、幅が等しい2つの結束部材(93a)(93b)に分断される。短尺のゴム組紐(11'')の長さL'は、ゴムリング(1)の周長又は展開長さLに結束部材(91)を加えた値よりも長くされる。
【0043】
次に、切断工程で得られた1又は複数の短尺のゴム組紐(11'')の各々について、各結束部材(93a)(93b)に隣接又は近接した部分に液状の固化剤(51)を含浸させる工程が行われる。固化剤(51)を含浸させる部分は、これら結束部材(93a)(93b)の間に位置している。言い換えると、含浸工程では、少なくとも、各結束箇所からゴム組紐(11'')の長さ方法に沿って内側にある部分、つまり結束部材(93a)(93b)の各々からゴム組紐(11'')の長さ方向について内側にある部分にて、液状の固化剤(51)をゴム組紐(11'')に含浸させる。本実施例では、本工程は、
図7(c)に示すように、容器又は漕に入れられた固化剤(51)に、(分断された)結束部材(93a)(93b)が固化剤(51)の液面下に位置するようにゴム組紐(11'')の両端部の各々を浸漬することで実行される。
【0044】
含浸工程は、例えば、分断された結束部材(93a)(93b)で結束された箇所から(ゴム組紐(11'')の長さ方向について)内側にある部分に、ゴム組紐(11'')に液状の固化剤(51)を塗布又は付着させることで実行されてもよい。
図7(c)に例示した工程では、結束部材(93a)(93b)で結束された部分にも、ゴム組紐(11'')に固化剤(51)が含浸するが、固化剤(51)が含浸、塗布又は付着される部分又は箇所は、結束部材(93a)(93b)から若干離れていてもよい。固化剤(51)については、先の実施例と同様である。
【0045】
含浸工程の後、各ゴム組紐(11'')に含浸した固化剤(51)を乾燥させて固化させる工程が行われる。この工程は、先の実施例と同様に、自然乾燥によって行われてもよいが、例えば、ゴム組紐(11'')に温風を当てることで、固化剤(51)の乾燥が促進されてもよい。
【0046】
固化剤(51)が乾燥すると、
図8(a)に示すように、各結束部材(93a)(93b)に隣接又は近接した含浸部分(23a)(23b)にて、ゴム組紐(11')が固められる。言い換えると、少なくとも、各結束箇所からから(ゴム組紐(11'')の長さ方向について)内側にある部分(23a)(23b)、つまり少なくとも結束部材(93a)(93b)から内側の部分(23a)(23b)にて、ゴム組紐(11')が固化剤(51)で固められる。当該部分(23a)(23b)では、先に説明したように、ゴム組紐(11'')を構成するゴム芯入り紐(13a'')(13b'')(13c'')の各々のゴム芯及び伸縮性カバーが一体に固められており、さらに、ゴム芯入り紐(13a'')(13b'')(13c'')が離れないように、それらの伸縮性カバーも一体に固められている。
【0047】
次に、
図8(b)に示すように、固められた部分(23a)(23b)が分断されるようにゴム組紐(11'')の両端部を(長さ方向と直交して)切断して除去する工程が行われる。当該工程は、切断後の長さがゴムリング(1)の周長Lと同じになるように実行され、その結果、両端部(19a)(19b)が固まっているゴム組紐(11)が得られる。その後、先の実施例と同様な接着工程によってゴム組紐(11)がリング状にされることで、
図1に示したゴムリング(1)が完成する。
【0048】
図9(a)及び(b)は、本発明の第2の製造方法の第2実施例の工程を説明する説明図である。
図9(a)に示すように、本実施例では、先の実施例の結束部材(91)に代わって、一対の結束部材(95a)(95b)が使用されている。一対の結束部材(95a)(95b)の各々は、先と同様に帯体であってよく、帯体としては、粘着テープが使用されてよい。本実施例では、一対の結束部材(95a)(95b)の各々に、糸や紐なども使用できる。また、結束部材(95a)(95b)の各々には、金属製のクリップなども使用できる。
【0049】
図9(a)に示すように、長尺のゴム組紐(11')の長さ方向に離間した複数の箇所の各々において、長さ方向について所定の間隔で、長尺の複数のゴム芯入り紐(13a')(13b')(13c')を一対の結束部材(95a)(95b)を用いて結束した後、
図9(b)に示すように、各々の箇所の一対の結束部材(95a)(95b)の間で、長尺のゴム組紐(11')を切断する工程が行われる。これにより、両側側で結束部材(95a)(95b)で結束されている1又は複数のゴム組紐(11'')が得られる。その後の工程は、先の実施例と同様である。
【0050】
本発明に関する上記の説明では、3本のゴム芯入り紐(13a)(13b)(13c)を三つ編みにしてゴム組紐をリング状にしたゴムリング(1)を本発明の実施例として、また、そのようなゴムリング(1)を製造するものとして本発明に係る製造方法を説明した。しかしながら、本発明の作用効果が得られる限りにおいて、本発明のゴムリング又は本発明により製造されるゴムリングを構成するゴム芯入り紐の数は限定されず、例えば、ゴムリングは、2本のゴム芯入り紐を2つ編みにした、或いは4本のゴム芯入り紐を4つ編みにしたゴム組紐をリング状にしたものであってもよい。本発明の作用効果が得られる限りにおいて、複数のゴム芯入り紐の編み方も限定されない。
【0051】
本発明の上記の実施例では、3本のゴム芯入り紐(13a)(13b)(13c)を編んだゴム組紐(11)をリング状にすることでゴムリング(1)が作製されているが、本発明のゴムリングは、複数のゴム芯入り紐を編んだゴム組紐、つまりゴム編紐ではなく、複数のゴム芯入り紐を縒って構成したゴム組紐、つまりゴム縒紐をリング状にしたものであってもよい。また、本発明の製造方法の上記の実施例は、長尺のゴム組紐(11')を長尺のゴム縒紐に置き換えるだけで、ゴム縒紐をリング状にしたゴムリングにも適用できることは明らかである。
【0052】
本発明の上記の実施例では、固化剤(51)が固まった固化部分(53)にて形成された孔を大きくするために膨張剤が用いられているが、膨張剤の代わりに、分解菌、分解酵素、又は有機溶剤系洗浄剤が固化剤(51)に含まれてよい。分解菌及び分解酵素は、固化作用成分を分解して、固化剤(51)の固化部分(53)の微細孔を拡大して細孔(55)を形成する。分解菌、分解酵素の例として、イースト菌、ビール酵母、麹菌、ポリビニールアルコール分解菌等を挙げることができる。有機溶剤系洗浄剤は、ゴム芯の表面からゴム内部の微細な孔に浸透して孔を詰まらせている汚れや油分を除去すると共に、洗浄剤自体は気化して、固化剤(51)の固化部分(53)に細孔(55)を残す働きがある。有機溶剤系洗浄剤としては、アノン、メタノ−ル、メチルエチルケトン、プロピレンジクロライド、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、n−ヘプタン、アセトン等が使用されてよい。
【0053】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。