(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6026892
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】リブ又はボスを有する成形体を一体成形するシートプレス成形方法及びシートプレス成形体
(51)【国際特許分類】
B29C 43/18 20060101AFI20161107BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
B29C43/18
B29C43/34
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-5214(P2013-5214)
(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公開番号】特開2014-136344(P2014-136344A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000225887
【氏名又は名称】難波プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096725
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 明▲ひこ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100119231
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100171697
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 尚子
(72)【発明者】
【氏名】戸田 泰行
(72)【発明者】
【氏名】石浦 龍之
(72)【発明者】
【氏名】大山 展央
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 文男
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−001698(JP,A)
【文献】
特開平06−039861(JP,A)
【文献】
特開平06−091774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/18
B29C 43/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リブを有する成形体を一体成形するシートプレス成形方法であって、
対向して配設される下型と上型とにより、表面の少なくとも一部が加熱溶融された熱可塑性材料から成るシート状基材をプレスしリブを有する成形体を一体成形するシートプレス成形工程から成り、
前記下型が、前記上型に対向する第1のプレス面であって、前記成形体の一方の表面を形成するための第1のプレス面を有し、
前記上型が、前記下型に対向する第2のプレス面であって、前記成形体の前記リブを含んで成る他方の表面を形成するための第2のプレス面を有し、
前記第2のプレス面が、主表面と、該主表面から前記第1のプレス面に対して凹んだ凹部と、前記主表面から前記第1のプレス面に向かって突出した凸部と、を含み、
前記凹部の表面と前記凸部の表面とが連続しており、
前記シートプレス成形工程において、溶融したシート状基材が前記凹部に流動充填される、
ことを特徴とするシートプレス成形方法。
【請求項2】
前記凹部に流動充填される前記溶融したシート状基材の容積が、前記凸部の容積以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載されたシートプレス成形方法。
【請求項3】
前記凹部に流動充填される前記溶融したシート状基材の容積が、前記凸部の容積の100パーセントないし10パーセントの範囲にある、
ことを特徴とする請求項1に記載されたシートプレス成形方法。
【請求項4】
前記凹部が前記凸部の中にある、
ことを特徴とする請求項1に記載されたシートプレス成形方法。
【請求項5】
前記凹部が複数ある、
ことを特徴とする請求項1に記載されたシートプレス成形方法。
【請求項6】
前記凸部の前記主表面から突出した距離dが、0.0mm<d≦2.0mmの範囲にあり、前記凹部の前記主表面から凹んだ距離hが、0.5mm≦h≦20.0mmの範囲にある、
ことを特徴とする請求項1に記載されたシートプレス成形方法。
【請求項7】
前記シートプレス成形工程において、前記シート状基材の一方の表面に表皮材がラミネートされる、
ことを特徴とする請求項1に記載されたシートプレス成形方法。
【請求項8】
リブを有するシートプレス成形体であって該成形体の表面、裏面のうちリブを含んで成る面が、成形面と、凸部である前記リブと、前記リブに隣り合う凹部とから成り、前記凹部の前記成形面に対する深さdが、0.0mm<d≦2.0mmの範囲にあるシートプレス成形体の製造方法であって、
対向して配設される下型と上型とにより、表面の少なくとも一部が加熱溶融された熱可塑性材料から成るシート状基材をプレスしリブを有する成形体を一体成形するシートプレス成形工程から成り、
前記下型が、前記上型に対向する第1のプレス面であって、前記成形体の一方の表面を形成するための第1のプレス面を有し、
前記上型が、前記下型に対向する第2のプレス面であって、前記成形体の前記リブを含んで成る他方の表面を形成するための第2のプレス面を有し、
前記第2のプレス面が、主表面と、該主表面から前記第1のプレス面に対して凹んだ凹部と、前記主表面から前記第1のプレス面に向かって突出した凸部と、を含み、
前記凹部の表面と前記凸部の表面とが連続しており、
前記シートプレス成形工程において、溶融したシート状基材が前記凹部に流動充填される、ことを特徴とするシートプレス成形体の製造方法。
【請求項9】
ボスを有する成形体を一体成形するシートプレス成形方法であって、
対向して配設される下型と上型とにより、表面の少なくとも一部が加熱溶融された熱可塑性材料から成るシート状基材をプレスしボスを有する成形体を一体成形するシートプレス成形工程から成り、
前記下型が、前記上型に対向する第1のプレス面であって、前記成形体の一方の表面を形成するための第1のプレス面を有し、
前記上型が、前記下型に対向する第2のプレス面であって、前記成形体の前記ボスを含んで成る他方の表面を形成するための第2のプレス面を有し、
前記第2のプレス面が、主表面と、該主表面から前記第1のプレス面に向かって凹凸となるボス形成用凹凸部と、前記主表面から前記第1のプレス面に向かって突出した圧縮用凸部と、を含み、
前記ボス形成用凹凸部が前記圧縮用凸部の中にあり、
前記シートプレス成形工程において、溶融したシート状基材が前記ボス形成用凹凸部の凹部に流動充填される、
ことを特徴とするシートプレス成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状基材をプレス成形することにより、リブ等の隆起部を有する成形体を一体成形するためのシートプレス成形方法、及び一体成形されたリブ等の隆起部を有するシートプレス成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性材料から成る成形品は、成形品の用途によってさまざまな形状に形成され、平均厚さを増すことなく強度、耐荷重性を与えるため、または他の機能を与えるために、しばしばリブを形成されて成る。または成形品は、用途によって、表皮材を形成されて成る。
【0003】
従来、TPOシート裏面に低融点オレフィン系樹脂からなる接着層を貼付した積層体である表皮材をモールドプレス成形用の金型に配置し型締めし、芯材となる半溶融樹脂をランナ、ゲートを通じて金型内に射出充填し、芯材と表皮材とをプレス一体化するモールドプレス成形によって、表皮材を有する成形品が製造された(特開平10−138268号広報:特許文献1)。
【0004】
リブを有する成形体は、一般に、射出成形によるモールド成形により製造される。または、機能性部品として予めリブ構造を有した別部品を金型内にインサートし金型内で熱溶着する方法や、後工程として成形品にリブ部品を超音波溶着、接着剤で付与する方法により製造される。
【0005】
射出成形によらず、シート状基材を金型でプレス成形する(シートプレス成形)ことによりリブ付き成形品を一体成形することは概して困難である。このため、従来、成形体を強化繊維15〜80重量%と熱可塑性樹脂20〜85重量%からなる繊維強化熱可塑性樹脂成形体とすることが提案された(特開2012−35534広報:特許文献2)。強化繊維を単繊維状に極めて良好に分散させることにより、成形しようとする成形体の形状が多少凹凸を有するものであっても、形状の精度や均一な機械特性を実質的に損なうことなく、金型を用いたプレスによる一体成形を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−138268号広報
【特許文献2】特開2012−35534広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたモールドプレス成形や従来の射出成形では、成形下型に射出機が接続され、溶融状熱可塑性樹脂を金型内に射出充填する際に射出圧が高くなり、また、充填するためのゲートを必要とするため、特殊な金型構造をとらなければならず、金型作製のコストが増加した。その他の方法でも、生産設備や工程の複雑化が避けられなかった。
【0008】
また、特許文献2に記載された方法は、プレス成形でリブを有する成形品を一体成形するものであるが、シート状基材として繊維強化熱可塑性樹脂を使用し、シート状基材に強化繊維を混入する必要があり、通常シート状基材を使用してリブ付き成形体を一体成形することは、依然困難であった。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みて、工程や設備等を複雑化させることがなく、コストの増加や生産性の低下を招くことがなく、また、シート状基材に特殊な材料を必要とすることもなくリブ又はボス付き成形体を製造することができるシートプレス一体成形方法を提供することを目的とする。特に、本発明は、金型の形状を所定形状とする手段により、通常のシート状基材を用いて、リブ付き又はボス付き成形品を成形性よく容易に成形することができるシートプレス成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明に係るリブを有する成形体を一体成形するシートプレス成形方法は、対向して配設される下型と上型とにより、表面の少なくとも一部が加熱溶融された熱可塑性材料から成るシート状基材をプレスしリブを有する成形体を一体成形するシートプレス成形工程から成り、下型が、上型に対向する第1のプレス面であって、成形体の一方の表面を形成するための第1のプレス面を有し、上型が、下型に対向する第2のプレス面であって、成形体のリブを含んで成る他方の表面を形成するための第2のプレス面を有し、第2のプレス面が、主表面と、該主表面から第1のプレス面に向かって凹んだ凹部と、主表面から第1のプレス面に向かって突出した凸部と、を含み、凹部の表面と凸部の表面とが連続しており、シートプレス成形工程において、溶融したシート状基材が凹部に流動充填される、ことを特徴とする。
【0011】
このようにすることで、シートプレス成形において、リブを形成するための凹部に隣り合う凸部が半溶融状態となったシート状基材を圧縮し、凸部によるシート状基材の肉厚減少分の少なくとも一部が、リブ形成用凹部に流動充填されてリブが一体成形され、従来のシートプレス成形用設備を使用して容易にリブを有する成形体を製造することができる。
【0012】
本発明において、リブ形成用の凹部に流動充填される溶融したシート状基材の容積は、圧縮用の凸部の容積(肉厚減少分)以下である。
【0013】
好適に、リブ形成用の凹部に流動充填される溶融したシート状基材の容積は、圧縮用の凸部の容積の100パーセントないし10パーセントの範囲にある。
【0014】
また、好適に、凹部は凸部の中にある。このようにすることで、凹部の周囲全体から、溶融したシート状基材が流動充填され得る。
【0015】
上型のプレス面に形成されるリブ形成用の凹部は、リブ設計等の必要に応じて、複数あってよい。各々の凹部に隣り合う各々の凸部は、互いに独立していてよい。あるいは、複数の凹部に隣り合う凸部は、単一のものであってもよい。リブ形成用の凹部により成形される各々のリブの形状は、単一の板状であってよい。または、板状のリブが縦横に垂直に交差した格子状であってもよい。リブの形状はこれらに限定されず、金型設計の所定の要件に従って多様な形状とすることができる。
【0016】
本発明において、好適に、凸部の主表面から突出した距離dは、0.0mm<d≦2.0mmの範囲にあり、凹部の主表面から凹んだ距離hは、0.5mm≦h≦20.0mmの範囲にある。
【0017】
本発明に係るシートプレス成形工程では、シート状基材の一方の表面に表皮材がラミネートされてよい。このようにすることで、表皮材を有するリブ付き成形体を一体成形することができる。
【0018】
上記のシートプレス成形方法により成形された本発明に係るリブ付きシートプレス成形体は、成形体の表面、裏面のうちリブを含んで成る面が、主な表面である成形面と、凸部であるリブと、リブに隣り合う凹部とから成り、該凹部の成形面に対する深さdが、0.0mm<d≦2.0mmの範囲にある。
【0019】
本発明の他の態様は、ボスを有する成形体を一体成形するシートプレス成形方法であって、対向して配設される下型と上型とにより、表面の少なくとも一部が加熱溶融された熱可塑性材料から成るシート状基材をプレスしボスを有する成形体を一体成形するシートプレス成形工程から成り、下型が、上型に対向する第1のプレス面であって、成形体の一方の表面を形成するための第1のプレス面を有し、上型が、下型に対向する第2のプレス面であって、成形体のボスを含んで成る他方の表面を形成するための第2のプレス面を有し、第2のプレス面が、主表面と、該主表面から第1のプレス面に向かって凹凸となるボス形成用凹凸部と、主表面から第1のプレス面に向かって突出した圧縮用凸部と、を含み、ボス形成用凹凸部が圧縮用凸部の中にあり、シートプレス成形工程において、溶融したシート状基材がボス形成用凹凸部の凹部に流動充填される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上記のとおり、本発明に係るシートプレス成形方法は、リブ又はボス付きの成形体をプレス一体成形することができ、生産効率が高く、初期投資を抑えることができ、大量生産に有利である。特に、車両用内装及び外装部品の製造において、金型の形状をリブ形成用として、従来のシートプレス設備を用いてリブを一体的に付与することができ、成形品の強度、剛性を向上させるとともにシート状基材の板厚を軽減することができ、軽量化とコストダウンとを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(a)、(b)は各々、本発明に係るリブ付きシートプレス成形体を模式的に示す一部拡大断面図である。
【
図2】
図2は本発明に係るリブ付きシートプレス成形体を製造するためのプレス金型を模式的に示す一部拡大断面図である。
【
図3】
図3は本発明に係るシートプレス成形工程の一つの実施形態を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は本発明に係るシートプレス成形工程の他の実施形態を模式的に示す図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は各々、本発明に係るリブ付きシートプレス成形体の実施形態を模式的に示す部分平面図である。
【
図6】
図6は(a)、(b)、(c)は各々、本発明に係るリブ付きシートプレス成形体の他の実施形態を模式的に示す部分平面図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明に係るボス付きシートプレス成形体の一つの実施形態を模式的に示す斜視図であり、
図7(b)は
図7(a)の中央部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の好適な実施形態が説明される。図面は説明のためのものであり、厚さ等の寸法は誇張され、尺度も必ずしも一致しない。同様の又は対応する構成要件に、同じ符号が使用されることがある。図面に記載された構成は、例示として示されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0023】
図1(a)、(b)に、本発明に係るリブ付きシートプレス成形体100、100’の一部の断面図が示されている。シートプレス成形体100は、シート状(薄板状)基材をプレス成形して成る本体部1から成り、上面S1及び下面S2を有する(
図1(a))。シートプレス成形体100’は、シート状基材を成形して成る本体部1及びシート状表皮材を成形してなる表皮部2から成り、上面S1’及び下面S2’を有する(
図1(b))。シートプレス成形体100、100’は各々、車両用内装部品であるドアトリム、リアシェルフや車両用外装部品であるエンジンアンダーカバー等であってよい。
【0024】
シートプレス成形体100、100’の各々の上面S1、S1’は、リブを形成されて成る。上面S1、S1’は同様の構成を有するため、以下では上面S1について説明する。
【0025】
シートプレス成形体100の上面S1は、プレス成形により形成された成形面11、成形面11に対して凹んだ凹部12、12、及び成形面11に対して突出したリブ13から成る。上面S1は、成形体100の使用時に裏側になる面であってよく、下面S2は、成形体100の使用時に表側になる面であってよく、リブを有しなくてよい。
【0026】
好適に、リブ13は、成形面11を基準に高さhを有し、高さhは、0.5mm以上、20.0mm以下の範囲にある。リブ(頂部)の幅w1は、0.5mm以上、3.0mm以下の範囲にある。
【0027】
リブ13に各々隣り合う凹部12、12は各々、成形面11を基準に深さdを有し、深さdは、2mmを超えない範囲にある。凹部12、12の各々の幅w2は、30mmを超えない範囲にある。
【0028】
リブ13と凹部12、12との各々の境界の角部(リブ13のつけ根)には、好適に、曲面R(図示せず)が形成されている。また、凹部12の底部と側面との境界の角部、凹部12と成形面11との境界の角部にも、曲面Rが形成されていてよい。
【0029】
リブ13の頂部の形状は平坦であってよい。または、リブ13の頂部の形状は、曲面に形成されていてもよい。リブの幅wは、リブ13の頂部から下方のつけ根部分まで鉛直方向に一定(w1)であってよく、下方のつけ根部分に向けて次第に大きくなっていてもよい。
【0030】
凹部12の深さdは一定であってよく、凹部12の平坦な底部がリブ13の高さ方向に垂直であってよい。あるいは、凹部12のリブ13側の深さd1が、成形面11側の深さd2よりも浅く、凹部12の平坦な底部がリブ13の高さ方向に垂直から傾斜していてもよい。
【0031】
図2に、本発明に係る、下型30及び上型40から成るシートプレス成形用金型300の断面の部分が図示されている。プレス金型300は、成形体の成形面11を形成する部分は従来の金型と同様であり、全体的な金型構造については特殊な構造を有しないため、リブを形成するための構造を有する部分のみが図示され、その他の部分は省略されている。
【0032】
下型30、上型40は対向するプレス面3、4を各々有する。下型30のプレス面3は、シートプレス成形体100(100’)の下面S2(S2’)を形成するための形状を有し、上型40のプレス面4は、シートプレス成形体100(100’)の上面S1(S1’)を形成するための形状を有する(
図1)。
【0033】
ここで、プレス面4は、上面S1を成形する工程においてリブ13をプレス一体成形するために、成形面11を形成する主表面41と、主表面41から下型30に向かって突出した凸部42、42と、主表面41から下型に向かって凹んだ間隙である凹部43から成る。凹部及び凸部の寸法は各々、成形されるリブ及びリブ周辺の凹部に対応するものである。凹部(リブ形成用の間隙)43は凸部42、42と隣接しており、凹部43の表面は凸部42、42の表面に連続している。
【0034】
図3に、本発明に係るシートプレス成形工程の一つの実施形態が図示されている。
【0035】
(I)熱可塑性樹脂等から成る、加熱され半溶融状となったシート状基材5がプレス機械に固定された下型30の上に配置される。シート状基材5はヒータ等により予め加熱されて下型30の上に移載される。あるいは、金型に配置されたあとに加熱されてもよい。
【0036】
半溶融状とは、固相と液相が共存した状態であり、好適に、シート状基材5は、上型40に対向する表面を中心に半溶融状となっている。
【0037】
(II)下型30に対向して上下移動可能に配設された上型40が下降し、シート状基材5がプレスされる。上型40のリブ形成用の凹部(間隙)に隣接した凸部がシート状基材5を圧縮することにより、半溶融状の熱可塑性樹脂がリブ形成用の凹部に流動していき、シート状基材5の肉厚減少分の少なくとも一部が、凹部に流動充填される。凹部の両側に凸部があることで、凹部の両側から流れ込んだ熱可塑性樹脂が、凹部の高さ方向上方に向かって方向性よく流動することができる。
【0038】
(III)プレスが終了した段階で、半溶融状シート状基材5が、上型40の凹部の略全体に流動充填され、リブ付きシートプレス成形品が得られる。
【0039】
図4に、本発明に係るシートプレス成形工程の他の実施形態が示されている。
【0040】
(I)上面が加熱され半溶融状となり、下面も加熱軟化されたシート状基材5とシート状表皮材6とがプレス金型の下型30の上に配置される。シート状表皮材6は、複数の繊維が絡まった3次元構造を有する不織布等から成る。
【0041】
(II)上型40が下降し、上記と同様にリブがプレス一体成形される。また、シート状表皮材6の表面に、加熱軟化されたシート状基材5の下面がプレスされ、シート状基材5の一部がシート状表皮材(繊維シート材)6を構成する繊維同士の間の空隙に入り込みアンカー効果が発揮されることにより接着される。このようにすることで、リブを有する本体部と表皮部とをプレス一体成形することができる。
【0042】
または、シート状基材5は、予め表皮材6をラミネートされ、シートプレス成形用金型300の下型30の上に、表皮材6をラミネートされた側の面を下型30に対向させ配置される。シート状基材5の上型40に対向する側の面は加熱により半溶融状とされている。
【0043】
好適に、シート状基材から成る成形体のリブに隣接する凹部の容積(すなわち、上型の凸部に係るシート状基材5の肉厚減少分)に対し、形成されるリブの容積比は、100パーセント〜10パーセントの範囲にある。特に、100パーセント〜40パーセントが好ましい。
【0044】
シート状基材及び表皮材から成る成形体のリブの容積もまた、隣接する凹部の容積の100パーセント〜10パーセントの範囲にある。特に、100パーセント〜40パーセントであることが好ましい。シート状基材とニードルパンチ不織布等の表皮材のプレス一体成形においても、半溶融状のシート状基材の流動性はほぼ下がらないと考えられる。
【0045】
シート状基材5の主原料となる熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの汎用プラスチックを使用することができる。その他、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネートなどのエンジニアプラスチック等を使用することができる。熱流動性の観点から、汎用プラスチックを使用することが好ましい。
【0046】
剛性強度や溶融粘度の調整のために、二種以上の熱可塑性樹脂を混合しシート状基材5の材料に使用してもよい。
【0047】
また、上記のような熱可塑性樹脂に、剛性強度を向上させるためのフィラー材として、木粉、無機鉱物などの粉砕品を混合してもよい。さらに、添加剤として、相溶化剤や発泡剤、難燃剤を混合してもよい。
【0048】
シート状基材の材料の構成は、重量部比で、熱可塑性樹脂:フィラー材:添加剤=40〜100部:0〜60部:0〜30部である。このような構成割合とすることで、プレス成形において成形性がよく、強度等の品質、外観に優れたリブ付きシートプレス成形品を得ることができる。
【0049】
シート状表皮材6としては、ニードルパンチカーペットなどの不織布、または織布を使用することができる。
【0050】
実施例
本発明に係るシートプレス一体成形により、補強用リブを有するシートプレス成形体が製造された。
図5(a)、(b)に、製造されたリブ付きシートプレス成形体100の一部が図示されている。
図5(a)、(b)に図示されたシートプレス成形体100は各々、幅w1が約1.0mm、長さlが約50.0mmのリブ13を有するものであった。
【0051】
シートプレス一体成形のためのシート状基材として、(i)ポリプロピレン単体から成る熱可塑性樹脂から成る基材と、(ii)ポリプロピレン50部、木粉50部を混合したウッドプラスチックから成る基材の2種類が使用された。板厚tは、PP単体から成るシート状基材で1.7mm、ウッドプラスチックから成るシート状基材で1.8mmであった。
【0052】
プレス金型として、本発明に係るリブ形成用の凹部及び該凹部の表面に連続する表面を有する凸部から成るリブ成形構造を有する金型であって、その他の部分は従来の構造を有する金型が使用された。
【0053】
以下の表1に示されているように、実施例1ないし5において、圧縮部分であるプレス上型の凸部の大きさ(幅w2、w3)を変化させることにより、成形性が確認された。圧縮深さdは、0.5mmであった。
【0054】
実施例1ないし3は、
図5(a)に図示されているように、リブ13に隣接する凹部12、12がリブ13の付け根の長辺に隣接するようにしたものであり、実施例4及び5は、
図5(b)に示されているように、リブ13に隣接する凹部12が、リブ13の付け根の短辺を含む全周に隣接するようにしたものであった。
【0056】
実施例1〜3では、一体成形される補強用リブの両側(長辺側)がプレス金型の凸部により等しく圧縮され、リブ高さhのバラつきは1.5〜3.0mmと大きかったが、幅w2が10mmの実施例1、2は、圧縮部容積(
図5(a)のグレーに色塗りされた部分)に対するリブ容積比が40%以上と圧縮効率がよく、肉厚減少分が効率的に金型のリブ形成用凹部に流動充填された。
【0057】
実施例4及び5では、一体成形される補強用リブの全周がプレス金型の凸部により圧縮され、リブ高さのバラつきは1.0mm以内と小さかった。実施例5のシート状基材材料としてウッドプラスチックを使用したものは、PP基材に比べて圧縮効率がおよそ半減しており、これは溶融粘度がウッドプラスチックの方が高いことに起因するものと考えられる。上記の実施例1ないし5の圧縮効率(肉厚減少分に対するリブの容積)は、プレス金型の温度を調節することにより向上させることができる。
【0058】
以上により、リブを有する成形体のシートプレス一体成形には、シート状基材に溶融粘度の低い材料を使用することが好適であり、また、成形されるリブ高さにバラツキが生じないよう、上型のリブ形成用の凹部が凸部の中にある(凹部の表面全体が凸部の表面に連続している)ことが好適である。また、高い圧縮効率を得るために、プレス上型の凸部の幅を10mm程度とすることが好ましい。
【0059】
図6に示されているように、プレス上型の凸部、凹部の形状に応じて、多様なリブを一体成形することができる。
図6(a)では、リブ13a、13bの表面と成形体100の成形面11に対する凹部12a、12b、12cの表面が連続しており、図でグレーに色塗りされた凹部12a、12b、12cの容積の合計に対し、リブ13a、13bの成形面11から突出した容積の合計が、100パーセントないし10パーセントの範囲にある。
図6(b)、
図6(c)でも同様に、リブ容積比は、リブと凹部(プレス上型のリブ形成用凹部と圧縮用の凸部)の表面が連続する範囲に関する。
【0060】
図7(a)に、本発明に係るシートプレス一体成形により成形されたボスを有するシートプレス成型体200が図示されている。成形体200の一方の面は、成形面21と、成形面21から凹んだ凹部22と、セルフ・タッピングねじ等をねじ締結するためのボス孔及び成形面21から突出した凸部から成るボス23を含む。
【0061】
図7(b)に成形体200の中央部分の断面が示されている。成形体200は、上記のシートプレス一体成形方法により、ウッドプラスチック(ポリプロピレン50部、木粉50部から成るウッドストック)材料から成るシート状基材(t1.9)2枚とニードルパンチカーペットから成るシート状表皮材(目付け210g/m
2)との3枚を重ねてプレス一体成形し製造された。成形体の厚さ(成形体200の下面から成形面21までの高さ)は4.0mm(t4.0)であった。なお、プレス成形金型の上型は42度に温度調節された。成形体200の基準面r(成形面21)に対して凹んだドーナツ状の凹部(圧縮部)の体積V
1は約934mm
3、基準面rから突出したドーナツ状のボスの凸部の体積V
2は約680mm
3であり、V
1:V
2=1.37:1(圧縮部に対するボスの凸部の容積比が73パーセント)であった。
【0062】
本発明の思想及び態様から離れることなく多くのさまざまな修正が可能であることは当業者の知るところである。したがって、言うまでもなく、本発明の態様は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0063】
30 下型
40 上型
41 主表面
42 圧縮用凸部
43 リブ形成用凹部
300 シートプレス成形用金型