特許第6026894号(P6026894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6026894
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】発泡性樹脂組成物及び発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/12 20060101AFI20161107BHJP
   C08L 3/02 20060101ALI20161107BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20161107BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20161107BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20161107BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20161107BHJP
【FI】
   C08J9/12CES
   C08J9/12CFJ
   C08L3/02ZBP
   C08L23/10
   C08L29/04 B
   C08L101/12
   !C08L101/16
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-9904(P2013-9904)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-31494(P2014-31494A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年9月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-155449(P2012-155449)
(32)【優先日】2012年7月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000214788
【氏名又は名称】DMノバフォーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(72)【発明者】
【氏名】三宅 祐治
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−191835(JP,A)
【文献】 特開2003−011201(JP,A)
【文献】 特開2007−182500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/12
C08L 3/02
C08L 23/10
C08L 29/04
C08L 101/12
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水により発泡可能である樹脂組成物であって、生分解性樹脂と、ポリプロピレン系樹脂と、軟質ポリマーとを含んでおり、前記生分解性樹脂がデンプンとポリビニルアルコール系樹脂とを含み、前記デンプンが、アミロペクチンを65〜100重量%の割合で含み、前記軟質ポリマーが、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ウレタン系エラストマー、メタロセン触媒を用いて重合したポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、オレフィン系ゴムから選択された少なくとも一種であり、前記軟質ポリマーの割合が、前記生分解性樹脂及びポリプロピレン系樹脂の合計100重量部に対して、3〜40重量部である発泡性樹脂組成物。
【請求項2】
軟質ポリマーのショアD硬度が、JIS K7215に準じて、5〜55である請求項1記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項3】
軟質ポリマーが、軟質ポリオレフィン及び軟質スチレン系ポリマーから選択された少なくとも一種を含む請求項1又は2記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項4】
軟質ポリマーが、メタロセン触媒を用いて重合したポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体又はその酸変性物、及びスチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体又はその酸変性物から選択された少なくとも一種を含む請求項1〜3のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項5】
軟質ポリマーの割合が、生分解性樹脂及びポリプロピレン系樹脂の合計100重量部に対して、5〜30重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項6】
ポリプロピレン系樹脂が、融点151〜165℃及びメルトフローレート1〜35g/10分のうち、少なくとも一方の特性を満たす請求項1〜5のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項7】
デンプンが、未変性デンプン、エーテル化デンプン及びエステル化デンプンから選択された少なくとも一種を含む請求項1〜6のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項8】
デンプンの平均粒子径が、5〜45μmである請求項1〜7のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項9】
デンプン100重量部に対するポリビニルアルコール系樹脂の割合が7〜50重量部である請求項1〜8のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項10】
生分解性樹脂とポリプロピレン系樹脂との割合(重量比)が、前者/後者=30/70〜95/5である請求項1〜9のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項11】
さらに、生分解性樹脂及びポリプロピレン系樹脂の合計100重量部に対して、1.8〜20重量部の割合で水系発泡剤を含む請求項1〜10のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の発泡性樹脂組成物で発泡成形された発泡体。
【請求項13】
連続気泡率が10〜60体積%である請求項12記載の発泡体。
【請求項14】
見かけ密度が0.01〜0.05g/cmである請求項12又は13記載の発泡体。
【請求項15】
ロッド、ネット又はシートである請求項12〜14のいずれかに記載の発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも水を含むガス発生成分により、高い発泡率で均一に発泡できるとともに、強度(曲げ強度など)、柔軟性、復元性に優れた発泡体を形成するのに有用な樹脂組成物及びこの樹脂組成物により形成された発泡体(例えば、連続気泡発泡体)に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡体は、弾力性、柔軟性、断熱性などの性質を利用して、包装材、断熱材、緩衝材、容器などの各種用途で多用されている。また、近年では、環境的配慮から、生分解性樹脂を用いた発泡体も知られている。
【0003】
発泡体は、発泡剤を用いて樹脂組成物を発泡成形することにより得られる。発泡剤としては、有機系発泡剤、例えば、プロパン、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素が汎用されているが、取扱性の点から、水を利用することも提案されている。
【0004】
例えば、特開昭59−213738号公報(特許文献1)には、熱可塑性樹脂粉粒体と、この熱可塑性樹脂粉粒体の表面に露出した状態で部分的に埋め込まれた親水性固体微粉末とからなる多孔性集合塊よりなる水蒸気の吸着率が0.05%以上の水発泡用樹脂コンパウンドが開示されている。この文献には、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコールなどのビニル系樹脂などが例示され、親水性固体微粉末として、デンプンなどの穀物粉、タルク、炭酸カルシウム、シリカなどの無機質粉末などが例示されている。この文献の実施例では、ポリプロピレンとタルクと表面活性剤と着色剤と酸化防止剤とを加熱混合し、得られた混合物を冷却し粗砕して樹脂コンパウンドを作製し、この樹脂コンパウンドに、アルキルベンゼンスルホン酸塩1%含有の水道水を含浸し、発泡押出し、独立気泡構造を有する樹脂発泡体を作製した例が記載されている。しかし、この発泡体は、生分解性を有さないうえ、柔軟性及び復元性も十分ではない。
【0005】
特開2001−200084号公報(特許文献2)には、セルロースアセテート系樹脂を主成分として含有し、かつデンプンなどの生分解性付与剤と、ポリエチレン樹脂などの改質材と、生分解性可塑剤と、生分解性調整剤と、タルクなどの発泡調整剤とを含有する発泡性樹脂組成物を押出すると同時に水分の気化膨張力により発泡させることにより製造されるセルロースアセテート系樹脂発泡体が開示されている。しかし、この発泡体は、生分解性を有するものの、均一な発泡性が低下するとともに、柔軟性及び復元性も低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−213738号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開2001−200084号公報(特許請求の範囲、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、少なくとも水により、高い発泡率で均一に発泡できるとともに、強度、柔軟性、復元性に優れた発泡体を形成するのに有用な樹脂組成物及びこの樹脂組成物で形成された発泡体を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、表面平滑性や耐熱性に優れた発泡体を形成するのに有用な樹脂組成物及びこの樹脂組成物で形成された発泡体を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、生分解性を有し、環境に優しい発泡体を形成するのに有用な樹脂組成物及びこの樹脂組成物で形成された発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定のデンプンを含む生分解性樹脂とポリプロピレン系樹脂と軟質ポリマーとを含む樹脂組成物を、少なくとも水により発泡させると、高い発泡率で均一に発泡できるとともに、軟質ポリマーにより気泡を微細化でき、生成する発泡体の強度(曲げ強度など)、柔軟性及び復元性を著しく向上できることを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の樹脂組成物は、少なくとも水により発泡可能である。このような発泡性樹脂組成物は、デンプンを含む生分解性樹脂とポリプロピレン系樹脂と軟質ポリマー(又はエラストマー)とを含む。前記デンプンは、アミロペクチンを65〜100重量%の割合で含んでいる。前記デンプンは、未変性デンプン、エーテル化デンプン及びエステル化デンプンから選択された少なくとも一種を含んでいてもよい。デンプンの平均粒子径は5〜45μm程度であってもよい。
【0012】
生分解性樹脂は、さらにポリビニルアルコール系樹脂を含んでいてもよい。ポリプロピレン系樹脂の融点は151〜165℃程度であってもよく、メルトフローレートは1〜35g/10分程度であってもよい。生分解性樹脂とポリプロピレン系樹脂との割合(重量比)は、前者/後者=30/70〜95/5程度であってもよい。
【0013】
軟質ポリマーのショアD硬度は、JIS K7215に準じて、5〜55程度であってもよい。軟質ポリマーは、軟質ポリオレフィン及び軟質スチレン系ポリマーから選択された少なくとも一種を含んでいてもよい。軟質ポリマーは、メタロセン触媒を用いて重合したポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体又はその酸変性物、及びスチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体又はその酸変性物から選択された少なくとも一種を含んでいてもよい。軟質ポリマーの割合は、生分解性樹脂及びポリプロピレン系樹脂の合計100重量部に対して、5〜30重量部程度であってもよい。
【0014】
発泡性樹脂組成物は、さらに、水系発泡剤を含んでいてもよい。水系発泡剤の割合は、生分解性樹脂及びポリプロピレン系樹脂の合計100重量部に対して、1.8〜20重量部程度であってもよい。
【0015】
本発明は、上記の発泡性樹脂組成物で発泡成形された発泡体を包含する。発泡体の連続気泡率は10〜60体積%程度であってもよく、見かけ密度は0.01〜0.05g/cm程度であってもよい。発泡体は、ロッド(又は棒状体)、ネット又はシートであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、生分解性樹脂とポリプロピレン系樹脂と軟質ポリマーとを組み合わせるため、少なくとも水により、高い発泡率で均一に発泡できるとともに、得られる発泡体の強度、柔軟性及び復元性を著しく向上できる。また、本発明では、発泡体の表面平滑性、耐熱性も向上できる。このような発泡体は、生分解性を有し、環境に優しい材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[発泡性樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、少なくとも水により発泡可能であり、生分解性樹脂とポリプロピレン系樹脂と軟質ポリマー(又はエラストマー)とを含んでいる。
【0018】
(樹脂成分)
(A)生分解性樹脂
生分解性樹脂は、微生物などにより分解可能な樹脂である限り特に制限されず、少なくともデンプンを含んでいる。デンプンは、線状のアミロース及び/又は分岐状のアミロペクチンを含んでいる。本発明では、発泡性を向上できる点から、アミロペクチンの含有量が多いデンプン、具体的には、アミロペクチンを65〜100重量%、好ましくは70〜100重量%、さらに好ましくは75〜100重量%(例えば、80〜100重量%)の割合で含むデンプンが好ましい。アミロペクチンの含有量は、沈殿法、電位差滴定法、濾紙クロマトグラフィーなどにより測定できる。
【0019】
デンプンは、未変性デンプン(例えば、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン、小麦デンプン、米デンプン、タピオカデンプン、豆類(ソラマメ、エンドウマメ、小豆など)の各種生デンプン)であってもよく、化学変性デンプン(酸化デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、カチオン化デンプン、架橋デンプンなど)、物理変性デンプン(α化デンプンなど)などであってもよい。これらのデンプンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、上記デンプンのうち、アミロペクチン含有量の少ないデンプン(ハイアミロースコーンスターチなど)は、アミロペクチン含有量の多いデンプン(ワキシーコーンスターチなど)と組み合わせることにより、デンプン全体のアミロペクチン濃度が高くなるように調整して用いるのが好ましい。
【0020】
好ましいデンプンとしては、未変性デンプン、エステル化デンプン(有機酸及び/又は無機酸でデンプンのヒドロキシル基の少なくとも一部をエステル化したデンプン、例えば、アシル化デンプン(例えば、アセチル化デンプン)などのカルボン酸変性デンプン;硝酸エステル化デンプン、リン酸エステル化デンプンなどの無機酸変性デンプンなど)、エーテル化デンプン(デンプンのヒドロキシル基の少なくとも一部がエーテル化されたデンプン、例えば、メチルデンプンなどのアルキルデンプン;ヒドロキシエチルデンプンなどのヒドロキシアルキルデンプン;カルボキシメチルデンプンなどのカルボキシアルキルデンプンなど)などが挙げられる。
【0021】
デンプンは水分を含んでいる。デンプン中の水分量(平衡水分量)は、例えば、温度23℃、相対湿度50%RHの条件で、5〜19重量%、好ましくは8〜16重量%、さらに好ましくは10〜14重量%程度である。デンプン中の水分含量は、慣用の方法、例えば、カールフィッシャー法などに基づいて測定できる。
【0022】
デンプンの糊化温度は、例えば、50〜85℃、好ましくは55〜82℃、さらに好ましくは60〜80℃程度である。
【0023】
デンプンの平均粒子径(粒度積算分布50%径:D50)は、例えば、0.5〜50μm、好ましくは1〜45μm(例えば、2〜40μm)、通常、5〜45μm程度である。平均粒子径が小さすぎると分散性が低下し発泡倍率が不均一になり、平均粒子径が大きすぎると発泡が不揃いになり外観が低下しやすい。なお、平均粒子径は、慣用の方法、例えば、レーザー回折法に基づいて測定できる。
【0024】
生分解性樹脂は、本発明の効果(発泡性など)を阻害しない限り、デンプン以外の成分、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペートなど)、キチン、キトサンなどを含んでいてもよい。また、生分解性樹脂は、セルロースエーテルを含んでいてもよい。これらの成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの成分のうち、デンプンの脆さを補う点から、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
【0025】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコール単位を含んでいればよく、通常、酢酸ビニルの単独又は共重合体の鹸化物(部分又は完全鹸化物)である。共重合性単量体としては、オレフィン系単量体(例えば、エチレンなどのα−C2−4オレフィン)、不飽和有機酸系単量体[例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、(無水)マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその塩;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和カルボン酸エステルなど]などが例示できる。これらの共重合性単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0026】
共重合性単量体の割合は、酢酸ビニル100重量部に対して、例えば、30重量部以下、好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは15重量部以下(例えば、0.1〜10重量部)程度である。
【0027】
好ましいポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体(特に、ポリビニルアルコール)などが例示できる。
【0028】
ポリビニルアルコール系樹脂の鹸化度は、例えば、80モル%以上、好ましくは90〜99.9モル%(例えば、95〜99.5モル%)、さらに好ましくは98〜99モル%程度である。
【0029】
ポリビニルアルコール系樹脂の4重量%粘度は、B型粘度計を用いて温度20℃で測定したとき、例えば、10〜50mPa・s、好ましくは20〜40mPa・s程度である。
【0030】
デンプン以外の生分解性樹脂(ポリビニルアルコール系樹脂など)の割合は、デンプン100重量部に対して、例えば、5〜100重量部、好ましくは7〜50重量部、さらに好ましくは10〜30重量部程度である。
【0031】
(B)ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂と比較して、高融点であり、固化温度が高いためか、少なくとも水により均一に発泡可能である。
【0032】
ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレンホモポリマーであってもよく、ポリプロピレンコポリマー(ブロックコポリマーなど)であってもよい。ポリプロピレンコポリマーとしては、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、2−ブテンなどのプロピレン以外のα−C2−6オレフィンなど)との共重合体(例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体など)などが例示できる。
【0033】
ポリプロピレンコポリマーにおいて、プロピレンと、プロピレン以外のα−オレフィンとの割合(モル比)は、前者/後者=70/30〜99.9/0.1、好ましくは80/20〜99.5/0.5、さらに好ましくは90/10〜99/1程度であってもよい。
【0034】
これらのポリプロピレン系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリプロピレン系樹脂のうち、発泡性、曲げ強度、復元性の点から、ポリプロピレンホモポリマーが好ましい。
【0035】
ポリプロピレン系樹脂は、側鎖のメチル基の配置に基づく立体規則性により、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのいずれであってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0036】
また、ポリプロピレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)触媒を用いて重合したポリマーであってもよく、立体規則性を有し、分子量分布を狭くできる点から、メタロセン触媒を用いて重合したポリマーであってもよい。
【0037】
ポリプロピレン系樹脂の融点は、150℃を超える範囲から選択でき、例えば、151〜165℃、好ましくは155〜163℃(例えば、157〜162℃)程度である。融点は、示差走査熱量計(DSC)において、昇温速度10℃/分の条件で測定できる。
【0038】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、例えば、1〜35g/10分、好ましくは2〜30g/10分(例えば、5〜25g/10分)程度である。MFRが小さすぎても、逆に大きすぎても、発泡性、曲げ強度、復元性が低下する傾向にある。MFRは、JIS K7210に準拠して、試験温度230℃、荷重2.15kgfの条件で測定できる。
【0039】
生分解性樹脂とポリプロピレン系樹脂との割合(重量比)は、前者/後者=1/99〜99/1程度の範囲から選択でき、例えば、25/75〜97/3、好ましくは30/70〜95/5(例えば、35/65〜93/7)、さらに好ましくは40/60〜90/10(例えば、45/55〜85/15)程度であってもよく、40/60〜80/20(例えば、50/50〜70/30)程度であってもよい。ポリプロピレン系樹脂の割合が少なすぎると発泡倍率を向上できず、強度が低下して、曲げ加工時に亀裂が入りやすくなり、多すぎると、生分解性に加えて、柔軟性や復元性が低下する。
【0040】
(C)軟質ポリマー(又はエラストマー)
軟質ポリマーは、気泡を微細化でき、発泡体の強度、柔軟性及び復元性を向上できる。また、軟質ポリマーは、発泡体の耐熱性も向上でき、発泡体を高温下に晒しても、発泡体が破損するのを抑制できる。軟質ポリマーとしては、軟質ポリオレフィン(又はオレフィン系エラストマー)、軟質スチレン系ポリマー(又はスチレン系エラストマー)、軟質ポリエステル(又はポリエステル系エラストマー)、軟質ポリアミド(又はポリアミド系エラストマー)、軟質ポリウレタン(又はウレタン系エラストマー)などが例示できる。これらの軟質ポリマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの軟質ポリマーのうち、相溶性などの点から、軟質ポリオレフィン、軟質スチレン系ポリマーが好ましい。
【0041】
軟質ポリオレフィンとしては、オレフィン系エラストマー、例えば、α−オレフィン(例えば、エチレン、プロピレンなどのα−C2−4オレフィン)の単独又は共重合体で構成されたハードセグメントと、ゴム(例えば、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)などのオレフィン系ゴム;ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのジエン系ゴム;ニトリルゴム;アクリルゴム;ブチルゴム;天然ゴム)で構成されたソフトセグメントとのブロック又はグラフト共重合体(又はその水素添加物)などが例示できる。ブロック構造としては、特に制限されず、リニア(直線状)型(AB型、ABA型など)、星型(ラジアルテレブロック型など)、テーパー型などが例示できる。
【0042】
オレフィン系エラストマーにおいて、ハードセグメントとソフトセグメントとの割合(重量比)は、前者/後者=1/99〜99/1程度の範囲から選択でき、軟質性の点から、例えば、1/99〜50/50、好ましくは5/95〜45/55、さらに好ましくは10/90〜40/60程度であってもよい。
【0043】
軟質ポリオレフィンとしては、メタロセン触媒を用いて重合したポリエチレン(低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなど)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体(エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体などのエチレン−アクリル酸C1−6アルキルエステル共重合体など)、オレフィン系ゴム(エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムなど)なども例示できる。
【0044】
好ましい軟質ポリオレフィンとしては、メタロセン触媒を用いて重合したポリエチレン(例えば、直鎖状低密度ポリエチレン)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴムなどが例示できる。
【0045】
軟質スチレン系ポリマーとしては、スチレン系エラストマー、例えば、芳香族ビニル系単量体(例えば、スチレン;α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの置換スチレン)の単独又は共重合体で構成されたハードセグメントと、α−オレフィン系単量体(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−C2−12オレフィン)及びジエン系単量体(例えば、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン)から選択された少なくとも一種の単量体の単独又は共重合体で構成されたソフトセグメントとのブロック又はグラフト共重合体(又はその水素添加物)などが例示できる。ブロック構造としては、オレフィン系エラストマーの項で例示したブロック構造(リニア型、星型、テーパー型など)などが例示できる。
【0046】
スチレン系エラストマーにおけるハードセグメントとソフトセグメントとの割合は、オレフィン系エラストマーにおける両者の割合と同様の範囲から選択できる。
【0047】
好ましい軟質スチレン系ポリマーとしては、スチレン−ジエン−スチレンブロック共重合体[スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)など]、水素添加ブロック共重合体[スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS又は水添SBS)、スチレン− エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS又は水添SIS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)など]、これらの共重合体の酸変性物[例えば、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸類で変性された共重合体(SBS、SEBSなど)]などが例示できる。
【0048】
軟質ポリマーのデュロメーター硬さ(ショアD硬度)は、JIS K7215に準じて、例えば、4〜57、好ましくは5〜55(例えば、5〜52)程度である。
【0049】
軟質ポリマーの曲げ弾性率は、JIS K7171に準じて、例えば、150MPa以下、好ましくは1〜100MPa、さらに好ましくは5〜60MPa程度である。
【0050】
軟質ポリマーの割合(添加量)は、ベース樹脂[生分解性樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)との合計]100重量部に対して、例えば、3〜40重量部、好ましくは4〜35重量部、さらに好ましくは5〜30重量部程度である。
【0051】
(添加剤)
樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない限り、添加剤、例えば、核剤、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維などの繊維充填剤など)、安定剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤などの酸化防止剤;紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤など)、発泡剤、発泡助剤、難燃剤、着色剤(染料、顔料など)、分散剤、離型剤、防曇剤、滑剤、潤滑剤、衝撃改良剤、可塑剤、収縮防止剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、防腐剤、防カビ剤、光触媒(酸化チタンなど)などを含有してもよい。これらの添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0052】
上記添加剤のうち、少なくとも水を含むガス発生成分を吸着し、気泡を微細化して、気泡膜を薄膜化でき、発泡体の強度、柔軟性、表面平滑性を向上できる点から、核剤を使用してもよい。
【0053】
核剤は、有機系核剤であってもよいが、通常、無機系核剤である。核剤の形態は、球状、楕円体状、扁平状(平板状など)、無定形状などであってもよい。
【0054】
無機系核剤としては、炭素材(グラファイト、カーボンブラックなど)、金属珪酸塩(珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、アルミノ珪酸マグネシウム、タルク、クレー、マイカ、珪藻土、カオリン、ベントナイト、スメクタイト、ワラストナイトなど)、金属炭酸塩(炭酸カルシウムなど)、金属酸化物(シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛など)などが例示できる。これらの核剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの核剤のうち、タルク、炭酸カルシウム、シリカが好ましい。
【0055】
核剤の平均径(平均粒子径D50など)は、例えば、25μm以下、好ましくは0.1〜20μm、さらに好ましくは0.3〜18μm程度であってもよく、通常、15μm以下(例えば、0.5〜10μm程度)である。平均径が小さすぎると、発泡体特性の改善効果が十分でなく、大きすぎると、発泡が阻害されるようである。なお、核剤の平均径は、デンプンの平均粒子径と同様、レーザー回折法に基づいて測定できる。
【0056】
核剤の比表面積は、例えば、1〜100m/g、好ましくは2〜80m/g(例えば、3〜60m/g)程度である。比表面積は、慣用の方法、例えば、BET法(窒素ガス吸着法)に基づいて測定できる。
【0057】
核剤は、少なくとも水を含むガス発生成分の吸着の点から、多孔性であるのが好ましい。多孔性の核剤において、平均孔径は、例えば、1〜500nm、好ましくは2〜300nm、さらに好ましくは3〜100nm程度である。細孔容積は、例えば、0.1〜2.5mL/g、好ましくは0.15〜2mL/g、さらに好ましくは0.2〜1.5mL/g程度である。
【0058】
核剤の割合(添加量)は、樹脂成分[又はベース樹脂(生分解性樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)との合計)]100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜9重量部(例えば、0.3〜8.5重量部)、さらに好ましくは0.4〜8重量部(例えば、0.5〜7.5重量部)程度であってもよい。
【0059】
核剤と軟質ポリマーとの割合(重量比)は、例えば、前者/後者=99/1〜1/99、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは80/20〜20/80(例えば、70/30〜30/70)程度であってもよい。
【0060】
樹脂組成物のデンプンに水分が含まれるため、水系発泡剤は必ずしも必要ないが、水系発泡剤を用いると、より高い発泡率で発泡できるとともに、均一な気泡構造を形成できる点で有利である。すなわち、本発明の樹脂組成物は、水系発泡剤を用いて発泡成形する用途にも適している。
【0061】
樹脂組成物は予め水系発泡剤を含んでいてもよく、発泡成形過程で樹脂組成物に水系発泡剤を添加又は注入(又は圧入)してもよい。水系発泡剤は、環境負荷が小さく、取扱性に優れる点で有利である。
【0062】
水系発泡剤(揮発型発泡剤又は物理発泡剤)としては、水、水混和性有機溶媒[例えば、アルコール類(メタノール、エタノールなどのC1−4アルコール、エチレングリコールなどのC2−4アルキレングリコールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブなど)、グリコールエステル類(メチルカルビトールなど)など]などが例示できる。これらの発泡剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの発泡剤のうち、少なくとも水を含む発泡剤(特に、水)が好ましい。
【0063】
水系発泡剤の沸点(常圧における沸点)は、発泡成形温度で気化可能であれば特に制限されず、例えば、80〜200℃、好ましくは85〜170℃、さらに好ましくは90〜150℃程度である。
【0064】
水系発泡剤の割合(使用量)は、発泡性の点から、樹脂成分[又はベース樹脂(生分解性樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)との合計)]100重量部に対して、例えば、1〜30重量部、好ましくは1.2〜25重量部(例えば、1.5〜22重量部)、さらに好ましくは1.8〜20重量部(例えば、2〜20重量部)程度であってもよい。
【0065】
代表的な樹脂組成物は、アミロペクチンを65〜100重量%含むデンプンと、ポリビニルアルコール系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂と、軟質ポリマーと、必要により水系発泡剤とを含んでいる。このような樹脂組成物において、デンプンとポリビニルアルコール系樹脂とポリプロピレン系樹脂との合計を100重量部としたとき、デンプンの割合は10〜90重量部(例えば、20〜80重量部)程度であり、ポリビニルアルコール系樹脂の割合は4〜30重量部(例えば、5〜20重量部)程度であり、ポリプロピレン系樹脂の割合は5〜70重量部(例えば、10〜60重量部)程度であってもよい。なお、デンプンの割合が50重量部以上であると、生分解性が高く、環境負荷が少ない材料として極めて有用である。上記樹脂組成物全体に対して、水(デンプン、水系発泡剤などに含まれる水の合計)の割合は1.5〜30重量%(例えば、1.8〜20重量%)程度であってもよい。
【0066】
樹脂組成物は、生分解性樹脂及びポリプロピレン系樹脂のうち、一方の樹脂がマトリックスを形成し、このマトリックスに他方の樹脂が分散した相分離構造を形成していてもよい。マトリックスに対する分散相の分散形態は、特に制限されず、例えば、海島構造、コア/シェル構造、サラミ構造、オニオン構造などのいずれであってもよいが、通常、海島構造である場合が多い。なお、分散相の形状は、特に制限されず、球状、楕円体状であってもよく、棒状などであってもよい。分散相のサイズ(平均径)は、例えば、0.01〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.2〜3μm程度であってもよい。
【0067】
本発明の樹脂組成物は、慣用の方法により、構成成分を混合(又は混練)することにより製造できる。発泡性樹脂組成物は、例えば、構成成分を、溶融混練することなく、粉粒状又はペレット状の形態で単純に混合するドライブレンド(通常、タンブラー、V型ブレンダーなどの混合機を用いて、室温で混合するドライブレンド)により調製してもよく、構成成分を溶融混練することにより調製してもよい。代表的な方法では、必要により混合機(タンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、リボンミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機など)で構成成分を予備混合した後、種々の溶融混練機(例えば、ニーダー、一軸又は二軸押出し機など)を用いて、溶融混練する場合が多い。溶融混練温度は、例えば、150〜300℃、好ましくは160〜280℃、さらに好ましくは170〜250℃程度であってもよい。上記溶融混練物は、慣用のペレット化手段(ペレタイザーなど)により、ペレット化してもよい。
【0068】
なお、生分解性樹脂、ポリプロピレン系樹脂、軟質ポリマー又は添加剤(核剤など)に発泡剤を含浸させたり、生分解性樹脂とポリプロピレン系樹脂と軟質ポリマーと発泡剤とを混合することにより、樹脂組成物に予め発泡剤を含有させてもよく、発泡成形過程で樹脂組成物に発泡剤を添加又は注入してもよい。
【0069】
[発泡体]
本発明の発泡体は、慣用の方法により、前記樹脂組成物を発泡成形することにより製造できる。発泡成形法としては、種々の方法、例えば、押出成形法(例えば、Tダイ法、インフレーション法など)、射出成形法などが使用できる。
【0070】
発泡体の形状は、特に制限されず、例えば、棒(ロッド)状、紐状などの一次元的形状、シート状、フィルム状、二次元網目(ネット)状などの二次元的形状、ブロック状、板状、三次元網目状、パイプ状などの三次元的形状であってもよい。
【0071】
発泡体の表面は平滑であってもよく、凹凸を有していてもよい。例えば、シート状(又はフィルム状)の発泡体には、両面が平滑なシート、一方の面に凹凸(リブなど)を有し、かつ他方の面が平滑なシート、両面に凹凸(リブなど)を有するシートなどが含まれる。本発明では、軟質ポリマーにより気泡膜を薄膜化できるため、表面平滑性を向上することもできる。
【0072】
発泡体の厚み(平均厚み)は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、0.5〜50mm、好ましくは0.7〜30mm、さらに好ましくは1〜20mm程度であってもよい。
【0073】
発泡体の発泡倍率は、例えば、30〜200倍、好ましくは32〜170倍、さらに好ましくは35〜160倍程度である。本発明では、特定の成分の組み合わせにより、比較的高い発泡倍率(例えば、40〜200倍、好ましくは50〜150倍程度)で発泡することもできる。発泡倍率は、発泡性樹脂組成物の密度を発泡体の密度で除することにより算出できる。
【0074】
発泡体の密度(見掛け密度)は、JIS K6767に準じて、例えば、0.005〜0.1g/cm、好ましくは0.01〜0.1g/cm(例えば、0.01〜0.08g/cm)、さらに好ましくは0.01〜0.05g/cm(例えば、0.012〜0.04g/cm)程度である。見掛け密度が小さすぎると剛性が低下して脆くなり、見掛け密度が大きすぎると剛性が大きくなりソフト性が低下しやすい。
【0075】
発泡体の気泡構造は、連続気泡構造、独立気泡構造、これらが混合した構造などであってもよく、均一かつ安定な気泡を形成し、強度、柔軟性及び復元性を向上できる点から、連続気泡構造が好ましい。連続気泡の形状(又は断面形状)は、特に制限されず、不定形状であってもよいが、通常、円形状(例えば、円形状、楕円形状など)や多角形状(例えば、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状など)であってもよく、これらの形状は二種以上混在していてもよい。
【0076】
発泡体の連続気泡率は、例えば、10〜65体積%、好ましくは15〜62体積%、さらに好ましくは20〜60体積%(例えば、25〜55体積%)程度であってもよく、通常、10〜60体積%程度である。連続気泡率が小さすぎるとソフト性が低下し、連続気泡率が大きすぎると発泡倍率が低下し剛性が大きくなりソフト性が低下しやすい。連続気泡率は、予め重量を測定した発泡体を、水中に静置した後、−400mmHgの減圧下に1分間放置して、連続気泡構造の中に水を浸透させ、減圧状態から大気圧力に戻し、発泡体の表面に付着した水を除去して重量を測定し、これらの測定値を下記式(1)に代入することにより計算できる。
【0077】
連続気泡率(体積%)=100×{(w−w)/d}/(w/d−w/d) (1)
(wは吸水後の発泡体重量、wは吸水前の発泡体重量、dは発泡体の見掛け密度、dは発泡体に使用されている樹脂組成物の見掛け密度、dは測定時の水の密度)。
【0078】
発泡体の平均気泡径は、軟質ポリマー(樹脂組成物が核剤を含む場合、軟質ポリマー及び核剤)により微細化されており、例えば、2000μm以下、好ましくは25〜1900μm、好ましくは50〜1700μm、さらに好ましくは100〜1500μm程度である。平均気泡径は、慣用の方法、例えば、三次元表面構造解析顕微鏡を用いて測定することにより算出できる。
【0079】
発泡体は、強度、柔軟性に優れており、所定部位を基点として折り曲げても、亀裂が生成するのを抑制できる。また、発泡体は、復元性(圧縮復元性)に優れている。例えば、高さAの発泡体を高さA/2まで圧縮したのち、圧縮を解放して120秒経過後の発泡体の高さをBとするとき、(B/A)×100%で表される復元率は、例えば、70%以上(例えば、75〜100%程度)、好ましくは80%以上(例えば、85〜100%程度)、さらに好ましくは90%以上(例えば、95〜99%程度)である。なお、上記復元率は、通常、室温又は常温下(例えば、25℃)における測定値であってもよい。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、試験片の原料及び評価方法は、以下の通りである。
【0081】
[原料]
(A)デンプン
コーンスターチA(日本コーンスターチ(株)製、コーンスターチ、アミロペクチン含有量75重量%、平均粒子径15.8μm)
タピオカデンプン1(日本コーンスターチ(株)製、タップル25、アセチル化デンプン、アミロペクチン含有量83重量%、平均粒子径16.2μm)
タピオカデンプン2(日本コーンスターチ(株)製、HPT−1、エーテル化デンプン、アミロペクチン含有量75重量%、平均粒子径17.3μm)
ワキシーコーンスターチB(日本コーンスターチ(株)製、コンシスタ、エステル化デンプン、アミロペクチン含有量100重量%、平均粒子径16.7μm)
ソラマメ(松本ノーサン(株)製、ソラマメ、アミロペクチン含有量67.5重量%)
ハイアミローストウモロコシB(日本食品化工(株)製、ハイアミロースコーンスターチ、アミロペクチン含有量35重量%)
混合デンプン(コーンスターチA/ハイアミローストウモロコシB=63/37、アミロペクチン含有量60重量%)
なお、デンプンの平均粒子径(粒度積算分布50%径)は、レーザー回折・散乱式粒度分析計(日機装(株)製、マイクロトラックMT3300)を用いて測定した。
【0082】
(B)ポリプロピレン
PP1(日本ポリプロ(株)製、MA1B、ホモポリマー、MFR=21g/10分、融点162℃)
PP2(住友化学(株)製、FS2016、ホモポリマー、MFR=2.1g/10分、融点160℃)
【0083】
(C)ポリビニルアルコール
PVA(日本酢ビポバール(株)製、JF−17S)
【0084】
(D)軟質ポリマー
m−PE1(日本ポリエチレン(株)製、カーネルKF260T、メタロセン系ポリエチレン、ショアD硬度44)
m−PE2(宇部丸善ポリエチレン(株)製、ユメリット1520F、メタロセン系ポリエチレン、ショアD硬度51)
SEBS1(旭化成ケミカルズ(株)製、タフテックH1221、スチレンブロック共重合体、ショアD硬度6)
SEBS2(クレイトンポリマージャパン(株)製、クレイトンG1652、スチレンブロック共重合体、ショアD硬度19)
SEBS3(クレイトンポリマージャパン(株)製、クレイトンFG1924(無水マレイン酸変性)、スチレンブロック共重合体、ショアD硬度10)
SEBS4(旭化成ケミカルズ(株)製、タフテックM1943、酸変性スチレンブロック共重合体、ショアD硬度18)
SBS1(旭化成ケミカルズ(株)製、タフプレンA、スチレンブロック共重合体、ショアD硬度32)
SBS2は、SBS1(旭化成ケミカルズ(株)製、タフプレンA)100質量部および無水マレイン酸(MAH)1質量部に、ジクミルパーオキサイド(DCP)0.5質量部を加え、ラボプラストミルにより180℃で混練して、SBS1にMAHをグラフト重合させた。
【0085】
EVA1(住友化学(株)製、エバテートK3010、エチレン酢酸ビニル共重合体、ショアD硬度30)
EVA2(住友化学(株)製、エバテートD2021、エチレン酢酸ビニル共重合体、ショアD硬度45)
EPDM(三井化学(株)製、三井EPT3012P、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ショアD硬度19)
LDPE(住友化学(株)製、エクセレンGMH GH030、メタロセン系ポリエチレン、ショアD硬度49)
【0086】
[発泡性]
発泡性は、発泡倍率から計算して以下の基準により評価した。
【0087】
1…10倍未満
2…10倍以上35倍未満
3…35倍以上60倍未満
4…60倍以上。
【0088】
[脆性]
試験片の長さ方向の中心部を基点にして180°に曲げ、その曲げた部分の状態(亀裂の有無)を目視で観察する。曲げ操作を10回実施し、次式により脆性の割合を計算し、以下の基準により脆性を評価した。
【0089】
脆性(%)=亀裂が認められた回数/曲げ操作を実施した回数×100
1…50%以上の割合で亀裂が入る
2…50%未満の割合で亀裂が入る
3…亀裂は入らないが、折り曲げた跡が残る
4…亀裂が入らず、折り曲げた跡も目立たない。
【0090】
[復元性(ソフト性)]
試験片の外径方向(厚み方向)に外径(厚み)の50%まで圧縮し、直ちに圧縮を解除して120秒後の外径(厚み)を測定し、次式により復元性を計算し、以下の基準により評価した。
【0091】
復元性(%)=圧縮を解除してから120秒後の外径(厚み)/圧縮前の外径(厚み)×100
1…50%未満
2…50%以上80%未満
3…80%以上95%未満
4…95%以上。
【0092】
[総合判定:発泡体特性]
発泡性、脆性、復元性(ソフト性)の評価値を合計し、以下の基準により評価した。
【0093】
不良…8以下
良好…9以上。
【0094】
実施例1〜38、比較例1〜3
デンプン、ポリビニルアルコール及び/又はポリプロピレンと軟質ポリマーとを、表1〜表3に示す割合で混合し、得られた組成物を押出機(口金2.6mmφ)内で溶融混練し、押出機の途中から発泡剤を表1〜表3に示す割合で注入し、棒状に押し出し、外径約15mmφの発泡体を得た。得られた発泡体を長さ200mmに切断して棒状の試験片を作製した。
【0095】
実施例39
2軸押出機(スクリュー径46mmφ)に、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン及び軟質ポリマーを、表3に示す割合で含む組成物を入れ、押出機の中間部から発泡剤を表3に示す割合で注入した。押出機の樹脂温度を発泡温度にして、押出機先端に装着されたダイス直径160mm、押出し溝数70、押出し溝の直径1.0mmの金型で回転押し出しにより、筒状に連続的に押し出し、得られた筒状ネットを径方向にカットして二分した後、所定の寸法(幅320mm×長さ460mm)に切断し、ネット状の試験片(ストランド径8mm、ピッチ35mm、ストランド数35本)を作製した。
【0096】
実施例40
2軸押出機(スクリュー径46mmφ)に、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン及び軟質ポリマーを、表3に示す割合で含む組成物を入れ、押出機の中間部から発泡剤を表3に示す割合で注入した。押出機の樹脂温度を発泡温度にして、押出機先端に装着されたサーキュラーダイから筒状に連続的に押し出し、得られた筒状の発泡シートをセンターカットした後、所定の寸法(幅350mm×長さ420mm)に切断し、一方の面が平滑であり、かつ他方の面に46個のリブ(幅6mm)が平行に延びたシート状の試験片(厚み:凸部5mm、平坦部5mm)を作製した。
【0097】
実施例及び比較例の評価結果を表1〜3に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
表1〜3から明らかなように、比較例に比べ、実施例では発泡体特性、すなわち、発泡性、強度、柔軟性、復元性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の樹脂組成物は、強度、柔軟性及び復元性に優れた発泡体を形成できる。そのため、本発明の樹脂組成物及び発泡体は、種々の用途、例えば、電気・電子部品の梱包用資材、建築資材(壁材、隙間又は目地部の充填材など)、土木資材、農業資材、自動車部品(自動車天井材などの内装材、外装材など)、包装資材(容器、緩衝材など)、生活資材(日用品など)などに利用できる。なお、緩衝材は、シート状、ネット状、繭玉状、袋状、キャップ状などの種々の形態であってもよい。