(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、搬送装置でワークを搬送する場合、ワークには一定の振動が生じてしまうが、特許文献1ではワークに生じた振動を考慮しておらず、更なる工夫の余地があった。特に、搬送装置が停止した場合には、ワークには通常生じる振動とは異なる大きな振動が生じてしまいワーク及び作業用ロボットを破損してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような要求に鑑みてなされたものであり、搬送中のワークに対して作業を行う作業方法及び作業装置に関し、特に、搬送装置の停止に伴うワーク及び作業用ロボットの破損を防止可能な作業方法及び作業装置を提供することを目的とする。なお、搬送装置の停止としては、搬送路に異常が生じた場合における停止のほか、作業装置に異常が生じることにより搬送装置も併せて停止する場合がある。本発明は、特に、作業装置に異常が生じた場合の搬送装置の停止に伴うワーク及び作業用ロボットの破損防止を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、作業装置(例えば、後述の作業装置1、ロボット131)が備える第1制御部(例えば、後述の第1制御部15A)及び第2制御部(例えば、後述の第2制御部15B)の制御により、搬送装置(例えば、後述のワーク搬送装置2)により搬送される作業対象物(例えば、後述のワークW)に対し前記作業装置が作業を施す作業方法において、第1制御部が、前記搬送装置と機械的に連結することなく前記作業装置を前記作業対象物と同期移動させる同期工程(例えば、後述の同期制御)と、第2制御部が、前記作業装置を制御して同期搬送中の前記作業対象物に対して作業を施す作業工程と、前記第1制御部又は前記第2制御部のいずれかに異常が生じた場合に、正常な前記第1制御部又は前記第2制御部が、前記搬送装置に対して搬送を停止させる信号を供給するとともに、前記搬送装置の停止に伴い前記作業対象物に生じる振動を前記作業装置に再現させる異常時制御工程(例えば、後述の異常時制御)と、を含む。
【0008】
このような本発明に係る作業方法では、作業装置が備える第1制御部及び第2制御部のいずれか一方に異常が発生し搬送装置が停止しても、正常な制御部が、搬送装置の停止に伴い作業対象物に生じる振動を搬送装置と機械的に連結されていない作業装置に再現させる。これにより、当該振動に伴い作業対象物と作業装置とに生じるずれを除外することができ、作業対象物及び作業装置の破損を防止することができ、作業性を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る作業工程では、前記作業装置は、所定範囲で移動する移動部(例えば、後述の移動部11)と、当該移動部に設置された作業部(例えば、後述の作業部13)と、を含み、前記異常時制御工程では、前記移動部又は前記作業部を制御し、前記作業対象物に生じる振動を前記作業装置に再現させる。
ここで、搬送装置の停止に伴い作業対象物に生じる振動は、搬送方向に沿った振動であるため、移動部及び作業部を制御することで適切に除外することができ、結果、作業対象物及び作業装置の破損を防止することができる。
【0010】
また、搬送装置(例えば、後述のワーク搬送装置2)により搬送される作業対象物(例えば、後述のワークW)に対し作業を施す作業装置(例えば、後述の作業装置1、ロボット131)において、前記搬送装置と機械的に連結することなく前記作業装置を前記作業対象物と同期移動させる第1制御部(例えば、後述の第1制御部15A)と、前記作業装置を制御して同期搬送中の前記作業対象物に対して作業を施す第2制御部(例えば、後述の第2制御部15B)と、を備え、前記第1制御部又は前記第2制御部は、他方に異常が生じた場合に、前記搬送装置に対して搬送を停止させる信号を供給するとともに、前記搬送装置の停止に伴い前記作業対象物に生じる振動を前記作業装置に再現させることを特徴とする。
【0011】
また、前記作業装置は、所定範囲で移動する移動部(例えば、後述の移動部11)と、当該移動部に設置された作業部(例えば、後述の作業部13)と、を含み、前記第1制御部又は前記第2制御部は、前記移動部又は前記作業部を制御し、前記作業対象物に生じる振動を前記作業装置に再現させる。
【0012】
この作業装置によれば、上記の作業方法の発明と同様の効果がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、搬送装置の停止に伴うワーク及び作業用ロボットの破損を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。
【0016】
[搬送システム30の概略]
初めに、
図1及び
図2を参照して、本発明を実施する搬送システム30の概略について説明する。
図1は、搬送システム30の機能構成を示す機能ブロック図であり、
図2は、搬送システム30を模式的に示す模式図である。
【0017】
図1を参照して、搬送システム30は、ワークWに対する作業を行う作業装置1と、ワークWを搬送するワーク搬送装置2と、を含んで構成される。
なお、以下に説明するように、本実施形態では、ワークWとして塗装工程が終了した自動車の車体を用い、ワーク搬送装置2としてワークWを上方から吊るして搬送するオーバーヘッドコンベアを用いることとしている。このとき、作業装置1は、ワーク搬送装置2が搬送するワークWから塗装のために仮付けしておいたドアを取り外す作業を行う。勿論、ワークW、ワーク搬送装置2及び/又はワークに対する作業の内容は、一例に過ぎずこれに限られるものではない。
【0018】
図1に示すように作業装置1は、移動部11と、第1振動検出部12と、作業部13と、第2振動検出部14と、制御部15と、記憶部16と、を含んで構成され、ワーク搬送装置2が搬送中のワークWに対して所定の作業を行う。
【0019】
移動部11は、制御部15の制御に従い、ワークWの搬送方向に沿って移動する。このとき、移動部11は、ワークWの搬送速度と同速度でワークWの搬送方向に沿って移動、即ちワーク搬送装置2により搬送されるワークWと同期して移動する。特に、移動部11は、同期に際してワーク搬送装置2及びワークWと接触することなく非接触の状態で、即ち同期のためにワーク搬送装置2及びワークWと機械的に連結することなくワークWと同期して移動する。
図2を参照して、移動部11は、例えば、ワークWの搬送方向に平行して設けられたレール112a,112b(
図4等参照、以下、夫々を区別しない場合「レール112」と呼ぶ)を移動する台車111a,111bである。なお、本実施形態では、ワークW(車体)からドアを取り外す作業を行うため、ワークWの両側に2つの台車111a,111b(以下、夫々を区別しない場合「台車111」と呼ぶ)を用いることとしている。
【0020】
第1振動検出部12は、ワーク搬送装置2の搬送に伴いワークWに生じた振動を検出する。一例として、第1振動検出部12は、ワークWの任意の点の位置情報を検出するセンサ装置であり、制御部15と協働することで検出した位置情報の変化からワークWに生じた振動を検出する。
ここで、
図2に示すように本実施形態ではワークWの底面の任意の位置P1,P2,P3(例えば、底面に設けられた溶接用穴部近傍の3箇所)の位置情報から底面中央部である位置Pの位置情報及び振動を検出する。そこで、本実施形態では、台車111の上面にセンサ装置121a,121b,121c(以下、夫々を区別しない場合「センサ装置121」と呼ぶ)を設置し、台車111と同期して移動するワークWの下方から位置P1,P2,P3(以下、夫々を区別しない場合「位置Pn」と呼ぶ)の位置情報を検出することとしている。一例として、台車111aには、搬送方向下流側の任意の位置に位置P1の位置情報を検出するセンサ装置121aを設置し、台車111bには、搬送方向下流側の任意の位置に位置P2の位置情報を検出するセンサ装置121b、搬送方向上流側の任意の位置に位置P3の位置情報を検出するセンサ装置121cを設置することとしている。
なお、ワークWに生じた振動を除外し作業を行うためには、3軸(X,Y,Z軸)の位置情報を検出することが好ましい。そのため、本実施形態では、センサ装置121として、位置PnのZ軸(垂直方向)の位置情報を検知するレーザー変位計、及び位置PnのX,Y軸(水平面)の位置情報を検知する2Dリアルタイムカメラを用いることとしている。
【0021】
作業部13は、多関節マニピュレータにより構成される作業ロボットであり、制御部15の制御の下、ワークWに対して所定の作業を行う。また、作業部13は、移動部11の上面に設置され、移動部11の移動に伴いワークWと同期して搬送方向に移動する。
ここで、
図2に示すように本実施形態では、作業部13はワークWからドアを取り外す作業を行うため、ワークWの片側に2つずつ計4つのロボット131a,131b,131c,131dを設置することとしている。即ち、台車111aには、ロボット131a,131bが設置され、台車111bには、ロボット131c,131dが設置される。なお、以下では、夫々を区別しない場合には単に「ロボット131」と呼ぶ。
【0022】
第2振動検出部14は、作業部13に生じた振動を検出する。一例として、第2振動検出部14は、作業部13の位置情報を検出するセンサ装置であり、制御部15と協働することで検出した位置情報の変化から作業部13の先端に生じた振動を検出する。
ここで、本実施形態では、作業部13の位置情報を超音波方式で検出することとしている。なお、超音波方式とは、発信装置から発信された超音波を複数(3個以上)の受信装置で受信し、夫々の受信装置までの超音波の到達時間の違いを利用して三点測量により位置情報を検出する方式である。そこで、
図2に示すように、本実施形態の第2振動検出部14は、ロボット131夫々に設置され超音波を発信する超音波発信装置141a,141b,141c,141dと、搬送経路に沿った任意の位置に設置され超音波を受信する超音波受信装置142a,142b,142c,142dと、を含んで構成されることとしている。なお、以下、夫々を区別しない場合「超音波発信装置141」「超音波受信装置142」と呼ぶ。このとき、超音波受信装置142の夫々は3個の受信部を備え、対応する超音波発信装置141から発信された超音波を3個の受信部で受信することで、超音波発信装置141の位置情報を検出する。即ち、超音波受信装置142aは超音波発信装置141aの位置情報を検出し、超音波受信装置142bは超音波発信装置141bの位置情報を検出し、超音波受信装置142cは超音波発信装置141cの位置情報を検出し、超音波受信装置142dは超音波発信装置141dの位置情報を検出する。なお、本発明ではワークWに生じた振動をロボット131に再現させることで、ワークWに生じた振動を除外し、搬送中のワークWに対するロボット131による作業を可能にしている。そのため、超音波発信装置141は、ロボット131のうち、ワークWに対して作業を行う部分、例えばワークWを把持する把持部やワークWのボルトを緩め/締めするボルト操作部等(以下「作業部分」と呼ぶ)の近傍、好適にはロボット131の先端に設置することが好ましい。また、ロボット131が複数の作業部分を備える場合には、当該複数の作業部分の夫々の近傍に超音波発信装置141を備えることが好ましい。
【0023】
制御部15は、作業装置1を統括的に制御するコントロールユニットであり、一例として、制御部15は、搬送方向に沿って作業装置1を移動するように移動部11を制御し、また、ワークWに対して所定の作業を行うように作業部13を制御する。なお、本実施形態では、制御部15として、第1制御部15Aと第2制御部15Bと並列的に設け、基本的に第1制御部15Aが移動部11を制御し、第2制御部15Bが作業部13を制御することとしている。
具体的には、第1制御部15Aは、移動部11を制御し後述の同期制御を実行する。また、第2制御部15Bは、作業部13を制御しワークWに対して作業を施すとともに、後述の振動予測制御、及び振動再現制御を実行する。また、第1制御部15A及び第2制御部15Bは、いずれかに異常が生じた場合に後述の異常時制御を実行する。なお、異常時制御では、第1制御部15Aが作業部13を制御することがあり、また、第2制御部15Bが移動部11を制御することがある。このような異常時制御のため、第1制御部15A及び第2制御部15Bは、異常が生じたか否かを互いに監視することとする。
【0024】
ここで、同期制御とは、ワーク搬送装置2により搬送されるワークWと同期して移動部11を移動させる制御をいう。同期制御の方法としては適宜好適な方法を利用することができるが、本実施形態では、ワーク搬送装置2に図示しないエンコーダを設け、このエンコーダからの信号に基づいて移動部11を制御することで同期制御を行うこととしている。
【0025】
また、振動予測制御とは、ワーク搬送装置2により搬送されるワークWに生じた振動を予測する制御をいう。ワーク搬送装置2により搬送されるワークWには、一定の周期性を持った振動が生じている。そこで、制御部15は、第1振動検出部12が検出した所定期間の振動から以後ワークWに発生する振動を予測する。なお、所定期間は、ワークWの振動の予測が可能な期間であればよく、適宜任意の期間を設定することができる。また、振動の予測後に第1振動検出部12が検出した振動を用いて、振動予測制御で予測した振動を補正することとしてもよい。以下、振動予測制御で予測したワークWの振動を「予測振動パターン」と呼ぶ。
【0026】
また、振動再現制御とは、作業部13に対して、より詳細には作業部13としてのロボット131の作業部分に対して予測振動パターンに応じた振動を再現させる制御をいう。なお、作業部13は、移動部11により搬送方向に移動しているため、ワーク搬送装置2により搬送されるワークWとは異なる振動が生じる可能性があり、その結果、作業部13にワークWの振動を再現しようとしても、作業部13には予測振動パターンと異なる振動が生じる可能性がある。そこで、本実施形態では、振動再現制御を、振動実行制御及び振動調整制御の2段階で行うこととしている。
なお、振動実行制御とは、作業部13を予測振動パターンに応じて振動させる制御をいう。具体的には、制御部15は、作業部13に対して予測振動パターンと適合する制御信号を供給し、作業部13としてのロボット131の作業部分が予測した振動で振動するように制御する。
また、振動調整制御とは、振動実行制御により作業部13に生じた振動と、振動予測制御により予測した振動との間の相違を調整する制御である。具体的には、制御部15は、第2振動検出部14と協働して振動実行制御中に作業部13に生じた振動を検出し、検出した振動と予測振動パターンとを比較し、両者が一致しない場合に予測振動パターンと一致するように作業部13の振動を調整する。
【0027】
また、異常時制御とは、第1制御部15A及び第2制御部15Bのいずれかに異常が生じた場合に、異常のない制御部が異常の生じた制御部に代わりワークWに生じる振動を作業部13に再現させる制御をいう。本実施形態では、第1制御部15A及び第2制御部15Bのいずれかに異常が生じた場合に、ワーク搬送装置2及び移動部11を停止する。即ち、同期制御に関係のない第2制御部15Bに異常が生じた場合であっても、同期制御を行う第1制御部15Aに異常が生じた場合であっても、移動部11は停止し、またワーク搬送装置2も停止する。
ここで、ワーク搬送装置2が停止した場合、搬送されていたワークWには慣性による振動(以下、「異常時振動」と呼ぶ)が発生する。このような異常時振動を適切に再現しなければ、ワークWや作業部13の関節部分等が破損してしまうため、第1制御部15A又は第2制御部15Bの異常発生時に、正常な第1制御部15A又は第2制御部15Bが異常時振動を再現する。具体的には、ワーク搬送装置2を停止した際に生じる異常時振動の波形を後述の記憶部16に予め記憶しておき、第1制御部15A又は第2制御部15Bに異常が生じた場合に、正常な第1制御部15A又は第2制御部15Bは、記憶部16からこの異常時振動の波形を読み出し、作業部13に異常時振動を再現させる。なお、異常時振動は慣性により生じる進行方向前後の振動であるため、作業部13に対する異常時振動の再現は、作業部13を制御することにより行うこととしてもよく、移動部11を進行方向前後に移動させることにより行うこととしてもよく、また、作業部13及び移動部11の両方を制御することにより行うこととしてもよい。また、作業部13を制御する場合には、必要に応じて作業部13に実際に生じた振動に基づくフィードバックを行うこととしてもよい。即ち、正常な第1制御部15A又は第2制御部15Bは、第2振動検出部14と協働して作業部13に生じた振動を検出し、記憶部16に記憶された異常時振動の波形と一致するように作業部13の振動を調整することとしてもよい。
【0028】
記憶部16は、異常発生時のワーク搬送装置2の停止に伴いワークWに生じる異常時振動を記憶する。
図3に記憶部16の一例を示すデータテーブルを示す。異常時振動は、搬送しているワークWの種別や搬送路の種別により異なるため、記憶部16は、ワーク種別や搬送路種別に対応付けて異常時振動を記憶する。もちろん、記憶部16は、異常時振動が異なる可能性のあるその他の情報も併せて記憶することとしてもよい。
【0029】
[異常時制御の詳細]
続いて、
図4を参照して、異常時制御の詳細について説明する。
図4は、搬送されるワークWに生じた振動と作業部13に再現させた振動との関係を示す図であり、
図4最上段にワークWに生じた振動を示し、
図4の2段目に第2制御部15Bの制御による作業部13の振動を示し、
図4の3段目に第1制御部15Aの制御による作業部13の振動を示し、
図4最下段に作業部13に実際に生じた振動(2段目と3段目との合成)を示す。
図4では、時間t1のタイミングで第2制御部15Bに異常が発生し、第2制御部15Bの動作が停止したものとする。なお、本実施形態では、第2制御部15Bに異常が発生した場合についてのみ説明するが、第1制御部15Aに異常が発生した場合も基本的に同様である。
【0030】
時間t0〜時間t1において、第1制御部15Aの制御により移動部11がワークWと同期して移動している。このとき、作業部13は、第2制御部15Bの制御(振動再現制御)により振動し(2段目)、結果、最下段に示すように作業部13には、最上段に示すワークWの振動と近似する振動が生じている。
【0031】
時間t1において、第2制御部15Bに異常が発生すると、第2制御部15Bの異常発生が第1制御部15A及びワーク搬送装置2に通知され、移動部11及びワーク搬送装置2が停止する。この停止に伴い、最上段に示すようにワークWには、慣性による異常時振動が生じることになる。このとき、発生した異常により第2制御部15Bの動作が停止しているため、第2制御部15Bは異常時振動を再現することができない。
そこで、正常な第1制御部15Aが予め記憶部16に設定しておいた異常時振動(詳細には、異常時振動を再現させるデータ)を読み出し、作業部13又は移動部11を制御することで、作業部13に異常時振動を再現する。これにより、第1制御部15A又は第2制御部15Bに異常が発生した場合に、ワーク搬送装置2の停止に伴うワークWの異常時振動を作業部13に再現させることができ、ワークWや作業部13の破損を防止することができる。
【0032】
[搬送システム30の具体的構成]
続いて、本発明を実施する搬送システム30の一実施形態を、
図5〜
図8を参照して説明する。
図5は搬送システム30の側面図であり、
図6は搬送システム30の平面図である。また、
図7は搬送システム30を構成する作業装置1の側面図であり、
図8は作業装置1の背面図である。
【0033】
図5及び
図6を参照して、搬送システム30は、ワークWに対する作業を行う作業装置1と、ワークWを搬送するワーク搬送装置2と、を含んで構成される。図中A−B地点間は、ワークWに対して作業を行うステーションを示している。
【0034】
ワーク搬送装置2は、自動車の車体(ワークW)の製造ラインの一部を構成するものであり、本実施形態ではオーバーヘッドコンベアである。具体的には、ワーク搬送装置2は、搬送経路に沿って設けられた支持レール21と、支持レール21に吊り下げられて移動するハンガ22と、を含んで構成される。また、支持レール21には、図示しないチェーンが設けられており、当該チェーンが支持レール21に案内されて移動することで、ハンガ22が牽引される。
【0035】
図6に示すように、作業装置1は、前述の移動部11としての台車111及びレール112を含んで構成される。レール112は、ワークWの搬送経路に沿って設けられ、台車111の移動を規制する。また、台車111は、図示せぬモータを備え、制御部15から供給されるパルス信号に従いレール112上をA地点からB地点まで移動する。具体的には、台車111は、A地点からワークWとの同期を開始し、B地点まで移動する。その後、B地点に到着すると当該ワークWとの同期を解除し、A地点まで移動し、次のワークWとの同期を開始する。なお、
図5及び
図6では、前後のワークWの間隔及びA−B地点間の距離を説明の都合上適宜簡略化して図示している。
【0036】
また、A−B地点間の所定の位置には、前述の第2振動検出部14の一部を構成する超音波受信装置142が設置されている。超音波受信装置142の夫々は、ロボット131の作業部分に取り付けられた超音波発信装置141(
図7参照)から発信された超音波を3箇所の受信部で受信し、当該作業部分の位置情報を取得する。
【0037】
また、
図7及び
図8に示すように、台車111の上面には、前述の第1振動検出部12としてのセンサ装置121、前述の作業部13としてのロボット131、及び前述の制御部15としてのコントロールユニット151が設置されている。
【0038】
センサ装置121は、台車111の上面のうちワークWの下方の位置に設置され、ワークWの底面の任意の位置Pnの位置情報を取得する。例えば、センサ装置121は、上方に向けて所定のレーザー光を照射することでワークWの底面までの距離を測定し、また、センサ装置121は、ワークWの底面の任意の位置Pnを観測することで位置Pnの水平方向の移動量を測定する。そして、センサ装置121は、このワークWの底面までの距離及び水平方向の移動量から位置Pnの3軸方向、即ち3次元上の位置情報を取得する。
【0039】
ロボット131は、台車111の上面に設置され、台車111と同期搬送中のワークWに対して側面から所定の作業を行う作業ロボットである。また、ロボット131は、複数の関節が独立して回転動作する多関節マニピュレータにより構成される作業ロボットであり、先端の任意の位置に超音波発信装置141を備える。なお、先端の任意の位置とは、ワークWに対して作業を行う作業部分の近傍であり、当該作業部分による作業の妨げにならない位置である。
この超音波発信装置141は、超音波受信装置142とともに前述の第2振動検出部14を構成するものであり、対応する超音波受信装置142に対して超音波を発信することで、超音波発信装置141が設置された部分の位置情報及び位置情報の変化(即ち、振動)を検出可能に構成される。
【0040】
コントロールユニット151は、第1制御部15Aとしてのコントロールユニット151Aと、第2制御部15Bとしてのコントロールユニット151Bと、により構成され、作業装置1を統括的に制御する。
具体的には、コントロールユニット151Aは、ワーク搬送装置2に設けられた図示せぬエンコーダからの信号に基づいてワークWを吊るしたハンガ22の位置情報を特定し、この位置情報に基づいて前述の同期制御、即ちワークWと同期して移動するように台車111の移動を制御する。また、コントロールユニット151Bは、センサ装置121が所定期間にわたりワークWの振動を検出すると、検出した所定期間の振動に基づいて前述の振動予測制御、即ち以後ワークWに生じる予測振動パターンを予測する。また、コントロールユニット151Bは、振動予測制御で予測した予測振動パターンに基づいて振動再現制御、即ちワークWの予測振動パターンと一致するようにロボット131を振動させる。このとき、コントロールユニット151Bは、超音波発信装置141及び超音波受信装置142と協働してロボット131の振動を測定しておき、ロボット131の振動が予測振動パターンと異なる場合には、一致するようにロボット131の振動を調整する。また、コントロールユニット151A,Bは、コントロールユニット151A,Bのいずれかに異常が発生した場合に、予め記憶された異常時振動の波形を読み出し前述の異常時制御、即ちワークWに発生する異常時振動と一致するようにロボット131を振動させる。
【0041】
[搬送システム30の動作]
続いて、
図9を参照して、搬送システム30の動作について説明する。
図9は、搬送システム30の動作の流れを示すフローチャートである。
【0042】
ステップST1に示すように、第1制御部15A及び第2制御部15Bとしてのコントロールユニット151A,151Bは、互いを監視し他方に異常が生じたか否かを判定する。このとき、コントロールユニット151A,151Bのいずれにも異常が生じていない場合には、処理をステップST2に移し、このステップST2において、コントロールユニット151A,151Bは、通常時制御を実行する。即ち、コントロールユニット151Aは、台車111を制御し、作業対象のワークWと同期して移動させる同期制御を実行する。また、コントロールユニット151Bは、ロボット131を制御し、ワークWに生じた振動を再現させつつ(振動予測制御及び振動再現制御)、ワークWに対して所定の作業を施す。
【0043】
他方、コントロールユニット151A,151Bのいずれかに異常が生じていた場合には、処理をステップST3に移し、このステップST3において、正常なコントロールユニット151A,151Bは、ワーク搬送装置2に対して停止要求を行う。続いて、ステップST3において、正常なコントロールユニット151A,151Bは、停止時制御を実行する。具体的には、正常なコントロールユニット151A,151Bは、記憶部16から予め記憶された異常時振動を再現させるためのデータを読み出し、このデータに従い台車111又は/及びロボット131を制御することで、ワーク搬送装置2の停止に伴いワークWに生じる異常時振動をロボット131に再現させる。
【0044】
以上、本実施形態について説明した。このような搬送システム30では、ワーク搬送装置2の停止に伴いワークWに生じる異常時振動(より詳細には、異常時振動を再現するためのデータ、即ち台車111の制御データ又は/及びロボット131の制御データ)を予め記憶しておきロボット131に再現させる。これにより、コントロールユニット151A,151Bのいずれかに異常が生じワーク搬送装置2が停止したとしても、ワーク搬送装置2と非接触の状態で同期移動するロボット131に異常時振動が再現され、異常時振動によるワークWとロボット131とのずれを除外することができる。その結果、ワークW及びロボット131が破損することなく、作業性を向上させることができる。
また、異常時振動は搬送停止に伴い生じる慣性による振動であるため、搬送中に生じる振動と比べて大きな振動になるが、ロボット131だけでなく台車111も併せて制御することで、大きな異常時振動をロボット131に確実に再現することができ、結果、ワークW及びロボット131が破損することを防止できる。
【0045】
以上、本実施形態に係る搬送システム30について説明した。なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0046】
例えば、上記実施形態では、移動部11として台車111及びレール112を例にとって説明したが、移動部11はこれに限られるものではなく、その他の構成により実現することとしてもよい。このとき、移動部11は、ワークWに対して作業を行う作業部13、即ちロボット131の先端に設けられた作業部分が、搬送方向に沿ってワークWと同期していれば足りる。即ち、移動部11は、上記実施形態のように作業部13が設置された台車111のように作業部13自体を移動させる構成としてもよく、作業部13自体は移動せずワークWに対して作業を行う作業部分のみが移動する構成としてもよい。作業部分のみが移動する構成としては、任意の位置に固定的に設置され、所定の長さのアームを供える作業用ロボットが挙げられる。このような作業用ロボットは、自身は移動しないものの、アームを伸縮あるいは関節を屈伸することで作業部分をA−B地点間で移動可能に構成される。
【0047】
また、上記実施形態では、第1振動検出部12は、ワークWの底面の任意の3点(位置P1,P2,P3)から位置Pの位置情報を検出することとしているが、これに限られるものではなく、必要に応じて3点以上の位置から位置Pの位置情報を検出することとしてもよい。
また、第1振動検出部12は、ワークWに生じた振動を検出できれば足り、上記実施形態のようなセンサ装置121に限られず、他の構成により実現することとしてもよい。例えば、ワークWをカメラ等の撮像装置により撮像し、撮像した動画像を解析することでワークWに生じた振動を検出することとしてもよい。
また、例えば、ワークWを搬送するハンガ22に加速度センサ、角速度センサ、地磁気センサ等の各種センサを取り付けることで、ハンガ22の振動を検出し、当該ハンガ22の振動をワークWの振動として用いることとしてもよい。また、これら加速度センサ等の各種センサをワークW自身に取り付けることで、ワークWに生じた振動を検出することとしてもよい。このような構成であっても既存の製造ラインに対する変更は最小限ですみ、既存設備を好適に利用することができる。
【0048】
また、第2振動検出部14についても同様に、作業部13の作業部分に生じた振動を検出できれば足り、上記実施形態のような超音波方式に限られるものではない。例えば、作業部13の作業部分に加速度センサ等の各種センサを取り付けることで振動を検出することとしてもよく、また、作業部分をカメラ等で撮像し、動画像を解析することで振動を検出することとしてもよい。
また、第2振動検出部14は、ワークWに対して作業を行う作業部分の全てから振動を検出する必要はなく、作業の内容によって振動を検出しない、又は検出精度を異ならせることとしてもよい。例えば、ワークWからドアを取り外す際に、ボルトを緩め/締めするボルト操作部等では高精度の振動の再現が要求される一方で、ドアを把持する把持部等ではそこまで高精度の振動の再現は要求されない。そこで、第2振動検出部14は、作業の内容に応じて、作業部分の振動の検出方法を変えることとしてもよく、また、振動再現時の精度を変えることとしてもよい。