特許第6026900号(P6026900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6026900電子部品収納用パッケージおよびそれを用いた電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6026900
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】電子部品収納用パッケージおよびそれを用いた電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/06 20060101AFI20161107BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20161107BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   H01L23/06 B
   H01L23/02 H
   H01L23/36 D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-15272(P2013-15272)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2014-146739(P2014-146739A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】生地 正樹
(72)【発明者】
【氏名】作本 大輔
【審査官】 小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−109126(JP,A)
【文献】 特開2012−221971(JP,A)
【文献】 特開2000−294888(JP,A)
【文献】 特開2011−077225(JP,A)
【文献】 特開2004−298962(JP,A)
【文献】 特表2012−513683(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0028025(US,A1)
【文献】 特開平09−275170(JP,A)
【文献】 特開2002−324865(JP,A)
【文献】 特開2005−317648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/06
H01L 23/02
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面にヒートシンク接続領域を有する金属からなる第1金属板と、
該第1金属板の上面に気孔を含む第1金属接合部材を介して接合された、前記第1金属板の金属よりも熱膨張率が小さい金属からなる第2金属板と、
該第2金属板の上面に気孔を含む第2金属接合部材を介して接合された、上面に電子部品実装領域を有する、前記第2金属板の金属よりも熱膨張率が大きい金属からなる第3金属板と
を含んだ積層構造体を備え、
前記第1金属接合部材の気孔率が前記第2金属接合部材の気孔率よりも大きいことを特徴とする電子部品収納用パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品収納用パッケージにおいて、
前記第3金属板が嵌め込まれたセラミック枠体をさらに備えていることを特徴とする電子部品収納用パッケージ。
【請求項3】
請求項2に記載の電子部品収納用パッケージにおいて、
前記第2金属板および前記第3金属板の外縁は、前記第1金属板の上面が露出するように、それぞれ前記第1金属板の外縁よりも内側に位置しており、
前記セラミック枠体は、前記第3金属板とともに前記第2金属板が嵌め込まれて、前記第1金属板の露出した上面に接合されていることを特徴とする電子部品収納用パッケージ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電子部品収納用パッケージと、
該電子部品収納用パッケージの前記電子部品実装領域に実装された電子部品とを備える電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を収納することが可能な電子部品収納用パッケージおよびそれに電子部品を収納してなる電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信用の半導体などの電子部品を実装することが可能な電子部品収納用パッケージが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなパッケージでは、電子部品から発生する熱を放熱するために、放熱板として、銅とモリブデンと銅との3層構造の接合板からなり、上面に電子部品が実装される積層構造体が用いられる。なお、銅の熱膨張率は17ppm/℃程度であり、モリブデンの熱膨張率は5.1ppm/℃程度であることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−324865号公報
【特許文献2】特開2005−317648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の電子部品収納用パッケージにおいて、積層構造体は、一般的に半導体材料からなる電子部品に比べると熱膨張率が高いが、低熱膨張率の金属材料であるモリブデンが積層されていることから、高熱膨張率の金属材料である銅からなるヒートシンクよりは、低い熱膨張率を有している。それゆえ、例えば電子部品の発熱によって、電子部品、積層構造体およびヒートシンクが熱膨張した際に、電子部品の熱膨張量と積層構造体の熱膨張量との差、および積層構造体の熱膨張量とヒートシンクの熱膨張量との差がいずれも大きいことから、電子部品と積層構造体との間および積層構造体とヒートシンクとの間に熱応力が加わり、電子部品が積層構造体から剥離しやすく、また積層構造体とヒートシンクとが剥離しやすい。その結果、電子部品が発生した熱が放出されにくくなり、電子部品が高温になって誤動作するなどの不具合が生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態にかかる電子部品収納用パッケージは、下面にヒートシンク接続領域を有する金属からなる第1金属板と、該第1金属板の上面に気孔を含む第1金属接合部材を介して接合された、前記第1金属板の金属よりも熱膨張率が小さい金属からなる第2金属板と、該第2金属板の上面に気孔を含む第2金属接合部材を介して接合された、上面に電子部品実装領域を有する、前記第2金属板の金属よりも熱膨張率が大きい金属からなる第3金属板とを含んだ積層構造体を備え、前記第1金属接合部材の気孔率が前記第2金属接合部材の気孔率よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、積層構造体が上記の構成を有していることから、電子部品と積層構造体との接続信頼性、および積層構造体とヒートシンクとの接続信頼性を向上させることができる。その結果、実装された電子部品の電気的信頼性を確保することが可能な電子部品収納用パッケージおよび電子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一実施形態にかかる電子部品収納用パッケージおよびそれを用いた電子装置の斜視図である。
図2図2は、図1に示した電子部品収納用パッケージの平面図である。
図3図3は、図1に示した電子部品収納用パッケージをI―I’断面で切断した断面図である。
図4図4は、図3に示した電子部品収納用パッケージのA部を拡大した拡大図である。
図5図5は、図1に示した電子部品収納用パッケージおよびそれを用いた電子装置の一製造工程を説明する斜視図である。
図6図6は、図1に示した電子部品収納用パッケージおよびそれを用いた電子装置の一製造工程を説明する斜視図である。
図7図7は、図1に示した電子部品収納用パッケージおよびそれを用いた電子装置の一製造工程を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(電子部品収納用パッケージおよびそれを用いた電子装置)
以下、本発明の一実施形態にかかる電子部品収納用パッケージおよびそれを用いた電子装置について、図1および2を参照しながら説明する。なお、図1は、電子部品収納用パッケージおよびそれを用いた電子装置を示す概観斜視図であって、蓋体を外した電子部品収納用パッケージを示している。図2は、図1に示した蓋体を外した電子部品収納用パッケージを上面から示した平面図である。図3は、図1に示した蓋体を外した電子部品収納用パッケージをI―I’断面にて切断した断面図であり、電子部品およびヒートシンクを取り除き、積層構造体の構造および積層構造体とセラミック枠体との位置関係を詳細に示している。図4は、図3に示した電子部品収納用パッケージのA部を拡大した拡大図であり、第1金属板とセラミック枠体との位置関係について詳細に示している。
【0009】
電子装置1は、電子部品収納用パッケージ2と電子部品収納用パッケージ2内に収納された電子部品3とを含んでいる。この電子装置1は、例えば光通信用の光送信モジュールまたは光受信モジュールなどに組み込まれて、電子装置1の外部に向けて光信号を送信したり、電子装置1の外部からの光信号を受信したりする。
【0010】
電子部品収納用パッケージ2は、電子部品3を収納して保護するものであり、ヒートシンク4上に配されている。この電子部品収納用パッケージ2は、電子部品3が実装される電子部品実装領域を有する積層構造体5と、積層構造体5の電子部品実装領域を取り囲むように位置しているとともに、側部に形成された貫通孔Vおよび切欠き部Hを有するセラミック枠体6と、セラミック枠体6の上面に配された蓋体7と、セラミック枠体6を内側から外側にかけて貫通して形成され、上面視にて一部が切欠き部Hに位置している信号配線8Aおよびグランド層8Bと、信号配線8A上に配されたリード端子9とを含んでいる。
【0011】
この電子部品収納用パッケージ2は、例えば、貫通孔Vに光ファイバが挿入固定され、この光ファイバからの光が受光素子などの電子部品3によって電気信号に変換された後に、この電気信号を信号配線8Aおよびリード端子9を介して外部回路(不図示)に伝達する。
【0012】
電子部品3は、積層構造体5の上面に実装されているとともにボンディングワイヤなどを介して信号配線8Aと接続され、光信号や電気信号を相互に変換するなどの処理を行なう。具体的には、電子部品3は、例えば上面のみに電極を有し積層構造体5の上面にはんだなどの低融点金属材料を介して、積層構造体5の上面に接合される。電子部品3は、例えば、フォトダイオード、IC、LSI、発光ダイオードまたはレーザダイオードなどの半導体素子であり、例えばシリコンまたは窒化ガリウムなどの半導体材料からなる。一般
的に電子部品3の熱膨張率は、電子部品収納用パッケージ2の積層構造体5の熱膨張率よりも小さく、例えば3ppm/℃以上8ppm/℃以下に設定されている。なお、熱膨張率は、例えば、市販のTMA(熱機械分析)装置を用いて、JIS K7197−1991に準じた測定方法によって測定される。
【0013】
ヒートシンク4は、電子部品収納用パッケージ2の下面に配されて、電子部品収納用パッケージ2を介して、電子部品3から発生した熱を放出する。具体的には、ヒートシンク4は、はんだなどの低融点金属材料や伝熱性の樹脂材料を介して、積層構造体5の下面に接合される。ヒートシンク4は、例えば銅またはアルミニウムなどの金属材料からなり、熱膨張率は、電子部品収納用パッケージ2の積層構造体5よりも大きい。ヒートシンク4の熱膨張率は、例えば12ppm/℃以上35ppm/℃以下に設定されている。
【0014】
積層構造体5は、上面中央部に電子部品3が実装されて電子部品3を支持するとともに、ヒートシンク4の上面に配されて電子部品3から発生した熱をヒートシンク4に伝達する。積層構造体5は、平板状に形成されており、上面中央部に電子部品3が実装される電子部品実装領域を有し、下面にヒートシンク接続領域を有する。効果的な放熱の観点から、積層構造体5の下面全体がヒートシンク接続領域となっていることが好ましい。
【0015】
具体的には、図3に示したように、積層構造体5は、第1金属板511、第2金属板512および第3金属板513が下から順に積層されて形成されている。第1金属板511は下面にヒートシンク接続領域を有し、第3金属板513は上面に電子部品実装領域を有している。第1金属板511と第2金属板512とは第1金属接合部材521を介して接合されており、第2金属板512と第3金属板513とは第2金属接合部材522を介して接合されている。なお、各金属板同士を確実に接合させるという観点から、第1接合部材521および第2接合部材522は、対応する金属板が重ね合わされた領域全体に配されていることが望ましい。
【0016】
第1金属板511は、上面視にて、矩形状に形成されている。第1金属板511の横の長さ(X軸方向の長さ)は、例えば5mm以上50mm以下に設定されている。第1金属板511の縦の長さ(Y軸方向の長さ)は、例えば5mm以上50mm以下に設定されている。第1金属板511の厚み(Z軸方向の長さ)は、例えば0.1mm以上3mm以下に設定されている。
【0017】
第1金属板511は、例えば銅または銀などの金属材料からなる。第1金属板511の熱膨張率は、例えば12ppm/℃以上25ppm/℃以下に設定されている。第1金属板511の熱伝導率は、例えば300W/m・K以上450W/m・K以下に設定されている。第1金属板511のヤング率は、例えば80GPa以上150GPa以下に設定されている。なお、熱伝導率は、例えばレーザフラッシュ法を用いて測定される。ヤング率は、ナノインデンターを用いて、ISO527−1:1993に準じた測定方法によって測定される。
【0018】
第2金属板512は、上面視にて、矩形状に形成されている。第2金属板512の横の長さ(X軸方向の長さ)は、例えば4mm以上40mm以下に設定されている。第2金属板512の縦の長さ(Y軸方向の長さ)は、例えば4mm以上40mm以下に設定されている。第2金属板512の厚み(Z軸方向の長さ)は、例えば0.1mm以上3mm以下に設定されている。
【0019】
第2金属板512は、例えばモリブデンまたはタングステンなどの金属材料からなり、熱膨張率が第1金属板511よりも小さい。第2金属板512の熱膨張率は、例えば3.5ppm/℃以上7ppm/℃以下に設定されている。第2金属板512の熱伝導率は、
例えば100W/m・K以上150W/m・K以下に設定されている。第2金属板512のヤング率は、例えば300GPa以上350GPa以下に設定されている。
【0020】
第3金属板513は、上面視にて、矩形状に形成されている。第3金属板513の横の長さ(X軸方向の長さ)は、例えば4mm以上40mm以下に設定されている。第3金属板513の縦の長さ(Y軸方向の長さ)は、例えば4mm以上40mm以下に設定されている。第3金属板513の厚み(Z軸方向の長さ)は、例えば0.1mm以上3mm以下に設定されている。
【0021】
第3金属板513は、例えば銅または銀などの金属材料からなり、熱膨張率が第2金属板512よりも大きい。第3金属板513の熱膨張率は、例えば12ppm/℃以上25ppm/℃以下に設定されている。第3金属板513の熱伝導率は、例えば300W/m・K以上450W/m・K以下に設定されている。第3金属板513のヤング率は、例えば80GPa以上150GPa以下に設定されている。なお、第3金属板513は、第1金属板511と同じ材料であってもよい。
【0022】
第1金属接合部材521は、例えば銀および銅などを主成分とする合金からなる銀ロウを用いることができ、気孔を含んでいる。第1金属接合部材521の気孔率は、例えば5%以上40%以下に設定されている。なお、気孔率は、例えば超音波探傷検査法によって測定される。第1金属接合部材521の熱伝導率は、例えば150W/m・K以上450W/m・K以下に設定されている。
【0023】
第2金属接合部材522は、例えば銀および銅などを主成分とする合金からなる銀ロウを用いることができ、気孔を含んでいる。ここで、第2金属接合部材522の気孔率は、第1金属接合部材521の気孔率よりも小さく、例えば1%以上30%以下に設定されている。第2金接合部材522の熱伝導率は、例えば150W/m・K以上450W/m・K以下に設定されている。
【0024】
このような気孔率の調整は、例えば、ロウ付けで接合する際の加熱時間の調整によって行なうことができる。具体的には、第1金属板511と第2金属板522との接合時の第1金属接合部材521の加熱時間を、第2金属板522と第3金属板523との接合時の第2金属接合部材522の加熱時間よりも短くする。これにより、第1金属接合部材522から抜ける気泡の量を少なくし、第2金属接合部材522から抜ける気泡の量を多くすることができる。その結果、第2金属接合部材522の気孔率を、第1金属接合部材522の気孔率よりも小さくすることができる。
【0025】
以上のように、第1金属板511と第2金属板512とを接合する第1金属接合部材521の気孔率は、第2金属板512と第3金属板513とを接合する第2金属接合部材522の気孔率よりも大きい。その結果、熱膨張率が低い第2金属板512による第1金属板511の拘束力が小さくなるので、第1金属板511の熱膨張量を大きくすることができる。その一方で、第2金属板512による第3金属板513の拘束力が大きくなるので、第3金属板513の熱膨張量を小さくすることができる。これにより、積層構造体5の下側の第1金属板511の熱膨張量は、熱膨張率の高いヒートシンク4の熱膨張量との差が小さくなる。また、積層構造体5の上側の第3金属板513の熱膨張量は、熱膨張率が低い電子部品3の熱膨張量との差が小さくなる。
【0026】
以上説明した作用によって、電子部品3と積層構造体5との剥離、および積層構造体5とヒートシンク4との剥離が起こりにくくなる。その結果、電子部品3と積層構造体5との接続信頼性、および積層構造体5とヒートシンク4との接続信頼性を向上させることができる。したがって、電子部品3から発生した熱の放出を維持できることから、電子部品
3の電気的信頼性を確保することができ、ひいては電子装置1の電気的信頼性を向上させることができる。
【0027】
第2金属板512のヤング率は、第1金属板511および第3金属板513のそれぞれのヤング率よりも大きいことが望ましい。その結果、第1金属板511の熱膨張量と第3金属板513の熱膨張量の違いから、第2金属板512の上下面にて熱膨張量が異なる場合でも、第1金属板511および第3金属板513の熱膨張による第2金属板512の変形への影響を小さくすることができることから、第2金属板512の平坦度を保持することができ、積層構造体5の反りを抑制することができる。それゆえ、電子部品3と積層構造体5との接続、または積層構造体5とヒートシンク4との接続を確保することができ、ひいては電子装置1の電気的信頼性を向上させることができる。
【0028】
第1金属接合部材521の気孔は、上面透視して第1金属接合部材521の外縁部よりも中央部に多く分布していることが望ましい。その結果、電子部品3の直下の領域における熱伝導率が小さくなることから、電子部品3から発生した熱を積層構造体5の平面方向に伝えやすくなり、電子部品3から発生した熱を積層構造体5の下面全体からヒートシンク4に伝えることができるからである。それゆえ、電子部品3から発生した熱の放熱効率を向上させることができることから、電子部品3の電気的信頼性を向上させることができ、ひいては電子装置1の電気的信頼性を向上させることができる。なお、第1金属接合部材521の気孔の分布の調整は、第1金属接合部材521の加熱時間を調整することによって行なう。第1金属接合部材521に含まれる気泡は、第1金属接合部材521の外縁部の気泡から抜けていくので、第1金属接合部材521の中央部の気泡が抜ける前に加熱を止めることにより、中央部の気泡を残存させることができる。
【0029】
第2金属接合部材522の気孔は、上面透視して第2金属接合部材522の外縁部よりも中央部に多く分布していることが望ましい。その結果、電子部品3の直下の領域における熱伝導率が小さくなることから、電子部品3から発生した熱を積層構造体5の平面方向に伝えやすくなり、電子部品3の直下の領域において、積層構造体5が局所的に大きく熱膨張することを防止することができるからである。それゆえ、積層構造体5と電子部品3との接続信頼性を向上させることができる。なお、第2金属接合部材522の気孔の分布の調整は、第1金属接合部材521の気孔の分布の調整と同様に行なう。
【0030】
第1金属板511の熱伝導率は、第2金属板512の熱伝導率よりも大きいことが望ましい。その結果、電子部品3から発生して第2金属板512に伝達した熱が、第1金属板511に伝達しやすくなることから、第2金属板512に熱が滞留することを低減することができる。それゆえ、第2金属板512の熱膨張量を低減することができ、第3金属板513の熱膨張量を抑制することができる。したがって、第1金属板511がない場合と比較して、積層構造体4の熱膨張量とヒートシンク4の熱膨張量との差を低減することができるだけでなく、さらに電子部品3の熱膨張量と積層構造体4の熱膨張量との差を良好に低減することができる。
【0031】
第3金属板513の熱伝導率は、第2金属板512の熱伝導率よりも大きいことが望ましい。その結果、電子部品3から発生する熱が第3金属板513に伝達しやすくなり、積電子部品3からの熱が積層構造体5の上面にて滞留することを低減することができる。それゆえ、電子部品3に熱が蓄積することを抑制することができることから、電子部品3の電気的信頼性を確保することができ、ひいては電子装置1の電気的信頼性を向上させることができる。
【0032】
セラミック枠体6は、積層構造体5の電子部品実装領域を取り囲むように位置し、電子部品実装領域に実装された電子部品3を保護する。セラミック枠体6は、例えば酸化アル
ミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体または窒化珪素質焼結体などのセラミックスからなる。また、セラミック枠体6は、複数の焼結体からなるセラミック層の積層体で構成されている。なお、セラミック枠体6の熱膨張率は、例えば3ppm/℃以上10ppm/℃以下に設定されている。セラミック枠体6の熱伝導率は、例えば5W/m・K以上50W/m・K以下に設定されている。セラミック枠体6のヤング率は、例えば200GPa以上450GPa以下に設定されている。
【0033】
セラミック枠体6は、上下面を有する枠状に形成されているとともに、セラミック枠体6の内縁は矩形形状に形成されている。
【0034】
なお、セラミック枠体6の内縁の横の長さ(X軸方向の長さ)は、例えば5mm以上50mm以下に設定されている。セラミック枠体6の内縁の縦の長さ(Y軸方向の長さ)は、例えば5mm以上50mm以下に設定されている。セラミック枠体6の厚みは(Z軸方向の長さ)は、例えば0.5mm以上50mm以下に設定されている。
【0035】
また、セラミック枠体6には、図3に示したように、第3金属板513が嵌め込まれていることが望ましい。その結果、セラミック枠体6は、セラミック枠体6に嵌め込まれた第3金属板513の平面方向への熱膨張を抑制することができることから、第3金属板513の熱膨張量と電子部品3の熱膨張量との差を低減することができる。したがって、積層構造体5の熱膨張量と電子部品3の熱膨張量との差を小さくすることができ、電子装置1の電気的信頼性を向上することができる。
【0036】
セラミック枠体6の内縁の角部は、上面視にて、曲線であることが望ましい。その結果、第3金属板513が嵌め込まれている場合に、第3基板513の熱膨張量によってセラミック枠体5の角部に熱応力が集中することを低減し、セラミック枠体6におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0037】
第2金属板512および第3金属板513の外縁は、第1金属板511の上面が露出するように、それぞれ第1金属板511の外縁よりも内側に位置させることが望ましい。そして、セラミック枠体6には、第3金属板513とともに第2金属板512が嵌め込まれて、第1金属板511の露出した上面に接合されていることが望ましい。その結果、セラミック枠体6によって第3金属板513の熱膨張量を低減することができるとともに、セラミック枠体6を通じて第1金属板511まで、電子部品3から発生した熱を伝達することができ、電子部品収納用パッケージ2の放熱効率を向上させることができる。
【0038】
さらに、図4に示したように、第1金属板511の上面には、第2金属板512を取り囲むように溝状の凹部Tが形成されており、セラミック枠体6の下端部は、凹部Tに入り込んでいることが望ましい。その結果、セラミック枠体6がくさびのように機能し、第2金属板512の直下における第1金属板511の上面側の熱膨張量を低減することから、第1金属板511と第2金属板512との剥離を抑制することができる。なお、凹部の深さは、第1金属板の厚みの30%以下に設定されている。
【0039】
第1金属板511の外縁は、セラミック枠体6の内縁と外縁との間に位置することが望ましい。すなわち、セラミック枠体6の下端が第1金属板511の外縁を押さえつけるように、セラミック枠体6が第1金属板511上に配置されている。その結果、第2金属板512と接合していない第1金属板511の外縁部が反ることを抑制することができる。それゆえ、第1金属板511の下面、ひいては積層構造体5の下面全体とヒートシンク4の上面とが良好に接触することから、電子部品3から発生した熱の放熱効率を向上させることができる。
【0040】
蓋体7は、セラミック枠体6の上面に配されており、セラミック枠体6とともに電子部品3を保護する。蓋体7は、セラミック枠体6の上面に配されたシールリング10を介して、セラミック枠体6に接合されている。また、蓋体7およびシールリング10のそれぞれは、例えば鉄、銅、銀、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデンまたはタングステンなどの金属材料、あるいはこれらの金属材料を複数組み合わせた合金または積層体からなる。
【0041】
信号配線8Aは、セラミック枠体6の内部に、セラミック枠体6の内側から外側にかけて配されており、電子部品3が電気的に接続される。この信号配線8Aは、例えば銅、金、銀、白金、ニッケル、モリブデンまたはマンガンなどの金属材料からなる。そして、例えばボンディングワイヤなどを介して電子部品3と電気的に接続される。なお、信号配線8Aの熱伝導率は、例えば、25℃において60W/m・K以上400W/m・K以下に設定されている。
【0042】
グランド層8Bは、信号配線8Aを挟んで両側に位置し、信号配線8Aの電気的特性を向上させる。グランド層8Bは、信号配線8Aと同様の材料からなる。
【0043】
リード端子9は、信号配線8A上に配されて、外部基板に電気的に接続されることで、電子部品3と外部基板とを電気的に接続する。このリード端子9は、例えば、鉄、銅、銀、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデンまたはタングステンなどの金属材料からなる。
【0044】
本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。
【0045】
例えば、上述した本発明の実施形態は、セラミック枠体6に第2金属板512および第3金属板513が嵌め込まれている構成を例に説明したが、セラミック枠体6は第3金属板513の上面に配されていてもよい。この場合、第3金属板513の熱膨張によるセラミック枠体6に加わる応力を小さくすることができ、セラミック枠体6におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0046】
上述した本発明の実施形態は、電子部品3が、はんだなどを介して積層構造体5の上面に接合されている構成を例に説明したが、電子部品3は、例えば、セラミック基板またはペルチェ素子などを介して、積層構造体5上に配されていてもよい。この場合においても、積層構造体5の熱膨張量を小さくすることによって、積層構造体5とセラミック基板またはペルチェ素子などとの接続信頼性を向上させることができ、ひいては電子部品3の電気的信頼性を向上させることができる。
【0047】
上述した本発明の実施形態は、ヒートシンク4が、はんだなどを介して積層構造体5の下面に接合されている構成を例に説明したが、ヒートシンク4は、例えばネジなどによって積層構造体5に固定されていてもよい。この場合においても、積層構造体5の熱膨張量とヒートシンク4の熱膨張量との差を小さくすることによって、ネジに加わるせん断応力を低減し、ネジの破断などの問題を防止することができることから、積層構造体5とヒートシンク4との接続信頼性を向上させることができる。
【0048】
(電子装置の製造方法)
以下、図1に示す電子装置1の製造方法について、図5図7を参照しながら説明する。なお、図5は、第1グリーンシートおよび第2グリーンシートのそれぞれの形状を示している。図6は、第1グリーンシートと第2グリーンシートとを積層して、グリーンシート積層体を形成する様子を示している。図7は、第1金属板511、第2金属板512お
よび第3金属板513から積層構造体5を形成する様子を示している。
【0049】
(1)セラミック枠体6の形成方法を以下に説明する。まず、複数のグリーンシートを形成する。具体的には、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化ケイ素、炭化ケイ素または酸化ベリリウムなどのセラミック粉末に、有機バインダー、可塑剤または溶剤等を添加混合して混合物を得て、混合物を層状に形成して複数のグリーンシートを作製する。次いで、図5に示したように、後に切欠き部Hが形成される窪みを有する第1グリーンシート11と、配線形成部12を有する第2グリーンシート13とを準備する。
【0050】
(2)タングステンまたはモリブデンなどの高融点金属粉末を準備し、この粉末に有機バインダー、可塑剤または溶剤などを添加混合して金属ペーストを準備する。次いで、図5に示したように、第2グリーンシート13の配線形成部12に、金属ペーストを所定のパターンに印刷する。
【0051】
(3)図6に示したように、第1グリーンシート11と第2グリーンシート13とを積層する。このとき、第2グリーンシート13に形成された後に切欠き部Hとなる窪みを除いて第1グリーンシート11の外形と第2グリーンシート13の外形とが一致するように、複数の第1グリーンシート11と第2グリーンシート13とを積層して、グリーンシート積層体14を形成する。
【0052】
(4)グリーンシート積層体14を焼成することによって、セラミック枠体6とし、配線形成部12に所定のパターンに印刷された金属ペーストを信号配線8Aおよびグランド層8Bとする。
【0053】
(5)積層構造体5の形成方法を以下に説明する。まず、図7に示したように、銅からなる第1金属板511、モリブデンからなる第2金属板512、銅からなる第3金属板513を準備する。そして、第2金属板512と第3金属板513とを、銀ロウからなる第2金属接合部材522によって接合する。第2金属板512と第3金属板513との接合は、第2金属板512の上面に第2金属接合部材522を介して第3金属板513を配した後、第2金属接合部材522の融点以上沸点以下の温度で、第2金属接合部材522を加熱することによって行なう。具体的には、第2金属接合部材522の加熱温度は、例えば780℃以上900℃以下に、第2金属接合部材522の加熱時間は、例えば10分以上20分以下に設定されている。
【0054】
次いで、第1金属部材511の上面に、銀ロウからなる第1金属接合部材521を介して第2金属板512を接合する。第1金属板511と第2金属板512との接合は、第1金属板511の上面に第1金属接合部材521を介して第2金属板512を配した後、第1金属接合部材521の融点以上沸点以下の温度で、第1金属接合部材521を加熱することによって行なう。具体的には、第1金属接合部材521の加熱温度は、例えば780℃以上900℃以下に、第1金属接合部材521の加熱時間は、例えば5分以上10分以下に設定されている。以上のように積層構造体5を形成する。
【0055】
(6)セラミック枠体6の下面に積層構造体5を接合する。そして、その積層構造体5の上面に電子部品3を実装した後、セラミック枠体6の上面に蓋体7を接合することによって、電子部品収納用パッケージ2およびそれを用いた電子装置1を作製することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 電子装置
2 電子部品収納用パッケージ
3 電子部品
4 ヒートシンク
5 積層構造体
511 第1金属板
512 第2金属板
513 第3金属板
521 第1金属接合部材
522 第2金属接合部材
6 セラミック枠体
7 蓋体
8A 信号配線
8B グランド層
9 リード端子
10 シールリング
11 第1グリーンシート
12 配線形成部
13 第2グリーンシート
14 グリーンシート積層体
H 切欠き部
T 凹部
V 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7