【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、車両のフロント側に配設される車両用ビーム10を示した図で、車両への配設状態において上方から見た概略平面図であり、図の上方が車両前側である。この車両用ビーム10は、
図1の左右方向である車両幅方向に長い長手形状を成しており、両端部において車体のサイドメンバ12の前端に図示しないボルトにより一体的に取り付けられるとともに、車両用ビーム10の外側(車両前側)には合成樹脂製のバンパーフェイシア14が配設される。
【0019】
図2は、車両用ビーム10の左半分を示す斜視図で、
図3は
図2における III−III 矢視部分の断面図、
図4は
図1におけるIV−IV矢視部分の断面図である。また、
図5は、
図2の車両用ビーム10において衝撃吸収部22とビーム本体20とが一体化される前の状態を示す図で、
図2に対応する斜視図であり、
図6は、
図5と同じく衝撃吸収部22とビーム本体20とが一体化される前の状態を示す図で、
図3に対応する断面図である。車両用ビーム10の右半分は、
図2に示す左半分と対称的に構成されている。
【0020】
車両用ビーム10は、車両幅方向に沿って配設される長手状のビーム本体20と、そのビーム本体20の長手方向の両端部に車両前後方向に沿って設けられる一対の筒状の衝撃吸収部22とから構成されている。ビーム本体20および衝撃吸収部22は別体に構成されており、衝撃吸収部22は、4箇所のコーナー部分が丸められた角筒形状の筒状部24と、その筒状部24の後端すなわち前記サイドメンバ12に固定される側の端部に一体に設けられた平板状の取付部26とを備えている。取付部26は、サイドメンバ12の前端面に密着(面接触)させられるように、筒状部24の中心線に対して略垂直になる姿勢で設けられているとともに、筒状部24の端部を閉塞する底板状に設けられている。この取付部26は、筒状部24から外側へ突き出すフランジを備えており、そのフランジにはサイドメンバ12に固定するためのボルトが挿通させられる複数の挿通穴28が設けられている。
【0021】
上記衝撃吸収部22は、繊維強化熱可塑性樹脂の射出成形品で、本実施例では強化繊維としてガラス繊維が用いられているとともに、母材樹脂である熱可塑性樹脂はポリプロピレンである。強化繊維の含有比率は、ビーム本体20に要求される衝撃吸収特性とは関係なく、衝撃吸収部22に要求される強度や衝撃吸収特性等に応じて自由に設定される。
【0022】
ビーム本体20は、上記衝撃吸収部22の取付部26と重なるように配置される平板状の結合部30と、その結合部30から車両前方側へ延び出すようにクランク状に曲げられた屈曲部32とを連続して備えている。これ等の結合部30および屈曲部32はビーム本体20の両端部に設けられており、両側の屈曲部32を連結するようにビーム部34が設けられている。ビーム部34は、中央部分が車両前側へ突き出すように滑らかに湾曲させられており、屈曲部32の延び出し寸法は、このビーム部34が衝撃吸収部22の先端部よりも車両前方側へ突き出すように定められている。また、このビーム部34の断面形状、すなわち車両幅方向である長手方向と直角な断面形状は、
図4に示すようにハット断面形状であり、そのハット断面の開口側が車両内側向きとなる姿勢で配設される。屈曲部32もハット断面形状を成しているが、そのハット断面の高さ寸法(
図4の上下方向の寸法)は結合部30側へ向かうに従って連続的に小さくなっている。
【0023】
上記ビーム本体20は、プレス成形された繊維強化熱可塑性樹脂のスタンパブルシートにて構成されており、本実施例では強化繊維として炭素繊維が用いられているとともに、母材樹脂である熱可塑性樹脂はポリプロピレンである。強化繊維の含有比率は、衝撃吸収部22に要求される衝撃吸収特性とは関係なく、ビーム本体20に要求される強度や衝撃吸収特性等に応じて自由に設定される。
【0024】
ビーム本体20の結合部30の板厚は、前記衝撃吸収部22の取付部26の板厚よりも薄いとともに、その結合部30の端部は、
図5から明らかなように三角形状を成している。一方、取付部26の下面すなわち筒状部24と反対側の面には、結合部30の板厚と略等しい深さで結合凹所40が設けられており、結合部30はその結合凹所40に重ね合わされ、その上面が取付部26に密着(面接触)させられる。また、結合凹所40の壁面42は、結合部30の端部の三角形状に対応してL字状に凹んでおり、結合部30の三角形状の端面がそのL字形状の壁面42に略密着するように嵌め合わされることにより、両者が位置決めされる。結合部30の三角形状の端部および結合凹所40のL字形状の壁面42は、互いに嵌め合わされる嵌合部に相当する。
【0025】
上記結合部30の上面には、複数のボス44が垂直に上方へ突き出すように立設されている一方、取付部26には、それ等のボス44に対応する位置にそれぞれ貫通穴46が設けられている。ボス44は、貫通穴46を完全に貫通する長さ寸法を有し、その貫通穴46から突き出す先端部が、例えば超音波かしめ等により傘状にかしめられることにより、取付部26と結合部30とが互いに密着するように重ね合わされた状態で一体的に結合される。これにより、ビーム本体20の両端部に一対の衝撃吸収部22が一体的に連結された車両用ビーム10が得られる。
【0026】
そして、このように衝撃吸収部22とビーム本体20とが一体的に連結された状態、すなわち車両用ビーム10の状態においては、
図3に示されるように取付部26の下面と結合部30の下面とが略面一とされ、その両者がそれぞれ前記サイドメンバ12の前端面に密着させられるように固定される。すなわち、前記挿通穴28を挿通させられたボルトによって取付部26がサイドメンバ12に締結固定されることにより、その取付部26を介して結合部30もサイドメンバ12に押圧され、取付部26とサイドメンバ12との間で挟圧された状態でサイドメンバ12に一体的に固定される。
【0027】
このような車両用ビーム10においては、ビーム本体20と衝撃吸収部22とが別体に構成されており、別々に成形できるため、成形型等の成形設備を小型化できるなど製造コストを低減できる。また、ビーム本体20および衝撃吸収部22について、それぞれ要求特性等に応じて個別に樹脂材料の種類や成形方法等を定めることができるため、全体として最適な衝撃吸収特性を備えた車両用ビーム10を得ることができる。本実施例では、ビーム本体20が繊維強化熱可塑性樹脂のスタンパブルシートにて構成されているため、ビーム本体20に要求される強度や衝撃吸収特性が得られ易くなるとともに、必ずしも金属等の補強部材が必要でなく、衝撃吸収部22が繊維強化熱可塑性樹脂の射出成形品であることと相まって製造コストを一層低減できる。
【0028】
一方、ビーム本体20はクランク状に曲げられた屈曲部32を備えており、その屈曲部32に連続して設けられた結合部30が衝撃吸収部22の取付部26に重ね合わされて一体的に連結されているため、ビーム本体20に加えられた衝突荷重は結合部30からサイドメンバ12に直接伝達される。これにより、ビーム本体20に衝突荷重が加えられた場合に、そのビーム本体20と衝撃吸収部22との連結部にモーメントが作用して変形したり破断したりすることが確実に回避され、ビーム本体20および衝撃吸収部22による衝撃吸収性能が何れも確実に得られる。
【0029】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。