【実施例】
【0025】
図1は、本願発明の実施の形態の一例である衛生マスクを生産するマスク生産装置の概略ブロック図である。マスク生産装置1(本願請求項の「マスク生産装置」の一例)は、不織布3、5及び7(不織布3が本願請求項の「第1不織布」の一例であり、不織布5及び/又は7が本願請求項の「第2不織布」の一例である。)と、樹脂部材9(本願請求項の「形状支持部材」の一例)と、ノーズクリップ11と、第1溶着部13と、第2溶着部15と、折りたたみ部17(本願請求項の「折りたたみ部」の一例)と、第3溶着部19(本願請求項の「溶着部」の一例)と、切断部21と、耳紐取付部23を備える。
【0026】
図1のマスク生産装置1の第1溶着部13、第2溶着部15、折りたたみ部17、第3溶着部19、切断部21及び耳紐取付部23の基本的な動作は、それぞれ、
図6のマスク生産装置51の第1溶着部63、第2溶着部65、折りたたみ部67、第3溶着部69、切断部71及び耳紐取付部73と同じである。
図1のマスク生産装置1は、
図6のマスク生産装置51の各構成に加えて、樹脂部材9を備える。樹脂部材9は、一度折り曲げ加工がなされても、再度、広げて、広げた形状を保つことが可能な性質のものである。樹脂部材9が入る関係で、マスク本体を処理するための厚さ等の調整が必要となるが、
図1のマスク生産装置1は、樹脂部材9が不織布の間にある状態で、
図6のマスク生産装置51と同様の溶着処理等を行う。
【0027】
具体的には、不織布53、55及び57と樹脂部材9は、4層で、着用時に口元を覆うマスク本体(本願請求項の「マスク部」の一例)を構成する。第1溶着部63は、不織布53と不織布55の間に樹脂部材9がある3層に対し、立体形状を維持するための立体形状維持機能用溶着処理を行う。第2溶着部65は、ノーズクリップ61を不織布53、55及び57並びに樹脂部材9の中に溶着により埋め込むと共に、マスク本体の上下の向かい合う両辺側の溶着を行う。折りたたみ部67は、マスク本体を折りたたみ、プリーツ加工を行う。第3溶着部69は、マスク本体が折りたたまれた状態で、マスク本体が耳掛け部と接続すべき両辺側の溶着を行う。切断部71は、連続した状態から、個々のマスク本体を切断する。耳紐取付部73は、マスク本体の両側に耳紐を取り付ける。これにより、マスク本体と耳掛け部を有する使い捨て衛生マスクを生産することができる。
【0028】
図2〜5を参照して、本願発明の衛生マスクの一例として、
図1のマスク生産装置1を用いて試作した衛生マスクを具体的に説明する。
図2は、プリーツ加工を施した状態の衛生マスクを示す図である。
図2(a)と(b)は、それぞれ、装着時に外から見える側(「正面」という。)と顔に当たる側(「背面」という。)から撮影したものである。このように、従来のマスク生産装置において、基本的には樹脂部材を入れるだけで、本願発明の衛生マスクを生産することが可能である。
【0029】
図3は、プリーツ加工した部分を広げた状態を示す図である。
図3(a)、(b)、(c)及び(d)は、それぞれ、プリーツ加工した部分を広げた状態で、正面、背面、右側面及び平面から順番に撮影したものである。形状支持部材が存在することにより、プリーツ加工した部分を広げて机上に置いた状態で、継続して撮影できる程度に、形状が支持されている。
【0030】
図4は、マスク本体の断面を示す図である。
図4(a)は、マスク本体の切断した断面の部位を示すために撮影したものである。
図4(b)は、マスク本体の断面を示すために撮影したものである。
図4(c)は、マスク本体の多層構造を示すための概略図である。
図4(c)にあるように、マスク本体は、正面から背面にかけて、層31、層33、層35及び層37の4層からなる。層31、層33及び層37は不織布である。層35が樹脂部材である。層35の樹脂部材は、樹脂が存在する部分41と樹脂が存在する部分43の間に、空気が通り抜ける通気部45(本願請求項の「通気部」の一例)が形成されている。
【0031】
図5は、溶着の状態を示すために撮影したものである。
図5(a)は、正面から撮影したものである。
図5(b)は、背面から撮影したものである。
図5(a)にあるように、正面から2層の不織布の下に、樹脂部材が存在する。
図5(b)にあるように、背面から1層の不織布の下に、樹脂部材が存在する。
図5(c)では、不織布を引っ張りながら撮影している。そのため、この試作衛生マスクでは、不織布の溶着により形状支持部材を固定していることが分かる。よって、実際に、形状支持部材が存在しても、溶着することが可能であることを示している。そのため、本願発明でも、例えば、特許文献1及び2に記載された立体形状を維持するための立体形状維持機能用溶着処理が有効であったり、不織布の溶着により形状支持部材を固定したりすることができることが分かる。
図5にあるように、この試作マスクでは、三角形を組み合わせた形状の樹脂部材を用いている。このような樹脂部材は、きわめて軽量であり、かつ、
図3に示すように形状を継続して支持することが可能なものである。樹脂部材がこのような強度を持つことは、出願人らが、保冷容器の製作過程において実験により知得したものである。マスク生産に関する当業者は、通常、このような樹脂部材等の不織布以外の材料に関する知見がなく、かつ、マスクの機能として不織布のみで実現することから、不織布以外の材料を用いてマスク本体を構成しようとする動機づけに欠けるものと考えられる。
【0032】
なお、本願発明は、本実施例に限定されるものではなく、例えば、特許文献1及び2の従来の技術に記載されているように、第1溶着部13がなく、立体形状を維持するための立体形状維持機能用溶着処理がなされないマスク生産装置において、樹脂部材を含めて生産させることにより得られた衛生マスクであってもよい。
【0033】
また、樹脂部材は、例えば、抗菌や消臭等の機能性を有するものであってもよい。このような機能性樹脂を用いることにより、単に形状を支持するだけでなく、より多くの効果を期待することができる。また、本願発明の形状支持部材は、樹脂以外であっても、同様の機能を実現するものであってもよい。