(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電源(BT)と伝送路(7)との間に設置されたプルアップ回路(61,61a,62)および前記伝送路とグランドラインとを導通,遮断するスイッチ部(T2)を備えたドライバ回路(32a,32b)を有する複数のノード(3)によって構成され、論理値1が論理値0よりローレベルの幅が狭いパルス幅変調符号を伝送符号として使用し、前記ノードの一つをマスタノード(3a)、該マスタノード以外のノードをスレーブノード(3b)として、前記マスタノードが前記論理値1の伝送符号を常時送信し、論理値0の伝送符号を送信するノードが前記伝送路上の論理値1の伝送符号のローレベルの幅を延長するように前記ドライバ回路を駆動する通信システム(1)において、
前記マスタノードは、前記プルアップ回路を介して前記伝送路に流れる電流を、少なくとも前記伝送路の信号レベルに応じて制限する電流制限手段(4,4a)を備え、
前記電流制限手段(4a)は、前記伝送路の信号レベルがローレベルであり、且つ、前記マスタノードのドライバ回路の出力がハイレベルとなるように該ドライバ回路を駆動している場合に、前記プルアップ回路の抵抗値を増大させることを特徴とする通信システム。
前記マスタノードは、前記ドライバ回路(32a)の出力がローレベルからハイレベルに変化する際の信号レベルの変化速度を抑制する波形整形手段(9)を備えることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
前記スレーブノードは、前記ドライバ回路(32b)の出力がローレベルからハイレベルに変化する際の信号レベルの変化速度を抑制する波形整形手段(9)を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信システム。
前記電流制限手段において前記伝送路の信号レベルを判断する閾値はヒステリシスを有し、ハイレベルからローレベルへの変化を判断する閾値と、ローレベルからハイレベルへの変化を判断する閾値とが別の値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
前記スレーブノードは、前記ドライバ回路を構成するスイッチ部がオンしている時の前記伝送路の信号レベルを、前記マスタノードのドライバ回路を構成するスイッチ部だけがオンしている時の前記伝送路の信号レベルより高くするレベルシフト手段(D)を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[第1実施形態]
<全体構成>
本発明が適用された車載通信システム1は、
図1に示すように、車両に搭載された複数の電子制御装置(ECU)3が、バス状の伝送路7を介して相互に通信可能となるように接続されている。以下電子制御装置をノードと称する。
【0015】
<伝送路>
伝送路7は、異なるノード3からハイレベル(レセッシブ)の信号とローレベル(ドミナント)の信号とが同時に出力されると、伝送路7上の信号レベルがローレベルとなるように構成されており、この機能を利用してバス調停を実現する。
【0016】
伝送路7では、伝送符号として、
図2に示すように、ビットの境界で信号レベルがハイレベルからローレベルに変化すると共に、ビットの途中で信号レベルがローレベルからハイレベルに変化するパルス幅変調(PWM)符号が用いられ、二値(論理0/論理1)の信号をデューティ比の異なる二つの符号で表現する。以下では、ローレベルの比率(継続時間)がより長い方を論理0符号、より短い方を論理1符号と称する。
【0017】
具体的には、論理0符号では、1ビットの2/3の期間がローレベル、1/3の期間がハイレベルとなり、論理1符号では、1ビットの1/3の期間がローレベル、2/3の期間がハイレベルとなるように設定されている。従って、伝送路上で論理0符号と論理1符号とが衝突すると、論理0符号が調停勝ちすることになる。つまり、各ECU3が出力する信号の波形を重ね合わせたものが、伝送路7上での伝送符号の波形となる。
【0018】
<ノード>
ノード3は、その中の一つが、全体の通信を制御するマスタノード(以下単に「マスタ」という)3aとして機能し、それ以外の全てが、スレーブノード(以下単に「スレーブ」という)3bとして機能し、いわゆるポーリング方式のマスタスレーブ通信を少なくとも実現する。
【0019】
ノード3は、伝送路7を介した他ノードとの通信によって得られた情報等に基づき、自ノード3に割り当てられた各種処理を実行する信号処理部、信号処理部から供給される送信データを符号化して伝送路7に送出すると共に、伝送路7から信号を受信し復号化した受信データを信号処理部に供給するトランシーバ、車載バッテリ(バッテリ電圧BT)から給電を受けて信号処理部等を駆動するための制御電源(制御電圧Vc)を生成する電源回路等を備えている。
【0020】
このうち、
図1では、本発明に関わる部位である出力信号生成部31a,31bおよびドライバ回路32a,32bについて明示する。つまり、レシーバ回路や、レシーバ回路で受信された受信信号を処理する受信信号処理部については、図示を省略している。なお、ドライバ回路32a,32bは、トランシーバの一部を構成するものであり、出力信号生成部31a,31bから供給される送信信号TXに従って伝送路7の信号レベルを切り替える。出力信号生成部31a,31bは、信号処理部およびトランシーバの一部を構成するものであり、PWM符号に符号化された送信信号TXを生成する。
【0021】
また、マスタ3aおよびスレーブ3bは、ほぼ同様の構成を有しているため、
図1には、マスタ3aの構成を示し、スレーブ3bの構成については、マスタ3aとの相違点についてのみ説明する。
【0022】
<出力信号生成部>
出力信号生成部31a,31bは、ドライバ回路32a,32bに供給する符号化された送信信号TXを生成する。但し、マスタ3aの出力信号生成部31aとスレーブ3bの出力信号生成部31bとでは異なった送信信号TXを生成する。
【0023】
マスタ3aの出力信号生成部31aでは、符号化前の送信データが論理1であれば論理1符号、符号化前の送信データが論理0であれば論理0符号の送信信号TXを生成するだけでなく、データを送信しない時にも、各ノード3の動作を同期させるためのクロック信号となる論理1符号(以下「マスタ送出クロック」という)を常時出力する。
【0024】
一方、スレーブ3bの出力信号生成部31bでは、
図3に示すように、符号化前の送信データが論理1である場合、送信信号TXとして、符号の全期間に渡ってハイレベルの信号を生成し、符号化前の送信データが論理0である場合、送信信号TXとして、符号の開始タイミングより遅れたタイミングでローレベルに変化し、論理0符号の立ち上がりタイミングでハイレベルに変化する信号を生成する。このような波形を有するスレーブ側の送信信号TXは、伝送路7上でマスタ送出クロックに重畳されることによって論理1符号または論理0符号の波形となる。
【0025】
<ドライバ回路>
マスタ3aのドライバ回路32aは、
図1に示すように、トランジスタT1,T2と、抵抗R1と、電流制限部4を備え、バッテリ電圧BTを電源として動作する。このドライバ回路32aは、送信信号TXがハイレベルの時に、トランジスタT1がオン、トランジスタT2がオフすることにより、伝送路7に対してハイレベルを出力し、送信信号TXがローレベルの時に、トランジスタT1がオフ、トランジスタT2がオンすることにより、伝送路7に対してローレベルを出力する。
【0026】
一方、スレーブ3bのドライバ回路32bは、上述のドライバ回路32aとは、電流制限部4の代わりに抵抗R2を備える点、伝送路7とグランドとの間に、トランジスタT2と直列接続されたダイオードDを備える点が異なる。このダイオードDにより、スレーブ3bが出力するローレベルは、マスタ3aが出力するローレベルよりダイオードの電圧降下分だけ高くなる。以下では、マスタ3aが出力するローレベルをマスタローレベルVLm、スレーブ3bが出力するローレベルをスレーブローレベルVLsと称する。
【0027】
<電流制限部>
マスタ3aの電流制限部4は、
図4に示すように、制御信号生成回路5と抵抗切替回路6とを備え、バッテリ電圧BTを電源として動作する。
【0028】
制御信号生成回路5は、分圧回路51とコンパレータ52とを備える。分圧回路51は、直列接続された一対の抵抗R11,R12により構成され、バッテリ電圧BTを分圧した閾値電圧Vthを出力する。この閾値電圧Vthは、例えば、バッテリ電圧BTの1/2に設定される。コンパレータ52は、非反転入力に伝送路7の信号レベル(以下「バス電圧Vbus」と称する)、反転入力に閾値電圧Vthが印加された演算増幅器からなり、バス電圧Vbusが閾値電圧Vthより大きい場合にハイレベル、閾値電圧Vth以下の場合にローレベルとなる制御信号Cを出力する。
【0029】
抵抗切替回路6は、高抵抗付加回路61と低抵抗付加回路62とフィルタ回路63と反転回路64とを備える。なお、フィルタ回路63の入力端には制御信号Cのハイレベルをバッテリ電圧BTに引き上げるプルアップ用の抵抗R21が接続されている。また、フィルタ回路63の出力は、高抵抗付加回路61および反転回路64に、それぞれ抵抗R22,R23を介して入力され、反転回路64の出力が低抵抗付加回路62に入力されるように接続されている。
【0030】
高抵抗付加回路61は、プルアップ用の抵抗RHを備え、抵抗RHの一端が逆流防止用のダイオードD21を介して伝送路7に接続され、他端がトランジスタT21を介して電源(バッテリ電圧BT)に接続されている。このトランジスタT21のベースが高抵抗付加回路61の入力端となる。低抵抗付加回路62は、高抵抗付加回路61と同様に接続された抵抗RL、ダイオードD22、トランジスタT22を備える。但し、抵抗RLは、抵抗RHより低い抵抗値に設定されている。以下では、抵抗RHを高抵抗、抵抗RLを低抵抗と称する。
【0031】
フィルタ回路63は、抵抗R24,コンデンサC21で構成された周知のローパスフィルタであり、制御信号Cに含まれる高周波ノイズを除去する。
反転回路64は、分圧回路を構成する一対の抵抗R25,R26を備え、分圧回路の一端は電源(バッテリ電圧BT)に接続され、他端がトランジスタT23を介して接地されている。このトランジスタT23のベースが反転回路64の入力端となり、抵抗R25,R26の接続点が反転回路64の出力端となる。
【0032】
つまり、抵抗切替回路6では、制御信号生成回路5にて生成される制御信号Cがローレベル(即ち、バス電圧Vbusがローレベル)の時には、高抵抗付加回路61のトランジスタT21がオンすることによって、高抵抗RHが伝送路7のプルアップ抵抗として機能する。また、制御信号Cがハイレベル(即ち、バス電圧Vbusがハイレベル)の時には、低抵抗付加回路62のトランジスタT22がオンすることによって、低抵抗RLが伝送路7のプルアップ抵抗として機能する。
【0033】
<動作>
ここで、マスタ3aが論理1符号を出力し、いずれかのスレーブ3bが論理0符号を出力した場合の動作について説明する。
【0034】
図5に示すように、マスタ3aおよびスレーブ3bの出力がいずれもハイレベル(時刻t0〜t1)の間は、バス電圧VbusはハイレベルVHとなる。このときのバス電圧Vbusは閾値電圧Vthより大きいため、マスタ3aの電流制限部4のプルアップ抵抗は低抵抗RLに設定される。
【0035】
マスタ3aが論理1符号のローレベルの出力を開始すると(時刻t1)、マスタ3aの出力がローレベル、スレーブ3bの出力がハイレベルとなるため、バス電圧Vbusは、ハイレベルVHからマスタローレベルVLmに変化する。この時、バス電圧Vbusが閾値電圧Vth以下となるため、マスタ3aの電流制限部4のプルアップ抵抗は高抵抗RHに切り替わる。
【0036】
スレーブ3bが論理0符号のローレベルの出力を開始すると(時刻t2)、マスタ3aおおよびスレーブ3bの出力がいずれもローレベルとなるが、マスタローレベルVLmの方がスレーブローレベルVLsより電位が低いため、バス電圧VbusはマスタローレベルVLmのまま保持される。このため、マスタ3aの電流制限部4を介して供給される電流は、伝送路7に流出することなく、マスタ3aのトランジスタT2を流れる。このとき、電流制限部4のプルアップ抵抗は高抵抗RHであるため、トランジスタT2に流れる電流自体も抑制される。
【0037】
マスタ3aが論理1符号のハイレベルの出力を開始すると(時刻t3)、マスタ3aの出力がハイレベル、スレーブ3bの出力がローレベルとなる。これにより、バス電圧Vbusは、マスタローレベルVLmからスレーブローレベルVLsに上昇する。このとき、マスタ3aの電流制限部4を介して供給される電流が、伝送路7に流入することによってバス電流Ibusが流れる。但し、電流制限部4のプルアップ抵抗は高抵抗RHであるため、プルアップ抵抗の切替を行わない場合(対策前)と比較して、バス電流Ibusは抑制されたものとなる。
【0038】
スレーブ3bが論理0符号のハイレベルの出力を開始すると(時刻t4)、マスタ3aおよびスレーブ3bの出力がいずれもハイレベルとなる。これにより、バス電圧Vbusは、スレーブローレベルVLsからハイレベルVHに変化する。このとき、バス電圧Vbusが閾値電圧Vthより大きくなるため、マスタ3aの電流制限部4のプルアップ抵抗は低抵抗RLに切り替わる。
【0039】
なお、
図5では、バス電圧Vbusの立ち下がりエッジおよび立ち上がりエッジを、模式的に立ち下がり時間や立ち上がり時間がゼロとなるように示している。しかし、実際には、立ち下がりエッジの波形はプルアップ抵抗の大きさに応じた傾きを有する。具体的には、バス電圧Vbusが閾値電圧Vthより高い時(即ち、プルアップ抵抗が低抵抗RLの時)より、バス電圧Vbusが閾値電圧Vth以下の時(即ち、プルアップ抵抗が高抵抗RHの時)の方が、エッジの傾きは緩やかになる。
【0040】
<効果>
以上説明したように、車載通信システム1では、マスタ3aのドライバ回路32aのプルアップ抵抗を、伝送路7の信号レベルがローレベル/ドミナント(Vbus≦Vth)であれば高抵抗RH、伝送路7の信号レベルがハイレベル/レセッシブ(Vbus>Vth)であれば低抵抗RLに設定している。これにより、プルアップ抵抗の抵抗値の切替を行わない従来装置と比較して、スレーブ3bの出力がローレベルであり、且つ、マスタ3aの出力がハイレベルである時に、マスタ3aからスレーブ3bに流れるバス電流Ibusを抑制することができ、これに伴いバス電流Ibusの流れ始めや終了時に生じる電流変化も抑制することができる。その結果、バス電流Ibusの電流変化に基づくノイズの発生を抑制することができる。
【0041】
また、車載通信システム1では、スレーブ3bのドライバ回路32bにダイオードDを設けることによって、スレーブローレベルVLsがマスタローレベルVLmより高くなるように設定されているため、ダイオードDが省略されている場合と比較して、マスタ3aからスレーブ3bに流れるバス電流Ibusをより抑制することができる。
【0042】
[第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0043】
前述した第1実施形態では、制御信号生成回路5において、バス電圧Vbusとの比較に用いる閾値電圧Vthとして一定値を使用している。これに対し、第2実施形態では、バス電圧Vbusの波形の立ち下がりエッジと、立ち上がりエッジとで異なる閾値電圧を用いるようにしている点で第1実施形態とは相違する。
【0044】
<構成>
本実施形態では、上記相違点に関わる構成として、制御信号生成回路5の代わりに制御信号生成回路8を用いている。制御信号生成回路8は、
図6に示すように、可変分圧回路81、コンパレータ82、反転回路83を備えている。
【0045】
コンパレータ82は、反転入力にバス電圧Vbus、非反転入力に可変分圧回路81で生成された閾値電圧Vthが印加される演算増幅器からなる。なお、コンパレータ82の出力端は、反転回路83に入力端に接続されていると共に、抵抗R14によってバッテリ電圧BTにプルアップされている。
【0046】
反転回路83は、エミッタが接地されたトランジスタT11からなり、トランジスタT11のベースがコンパレータ82の出力を入力する入力端、コレクタが制御信号Cを出力する出力端となる。
【0047】
可変分圧回路81は、バッテリ電圧BTとグランドの間に直列接続され、共通の接続端が演算増幅器の非反転入力端に接続された一対の抵抗R11,R12と、演算増幅器の非反転入力端と出力端の間に接続された抵抗R13とで構成されている。
【0048】
このように構成された制御信号生成回路8では、バス電圧Vbusがハイレベルの時には、コンパレータ82の出力がローレベルとなるため、抵抗R13は抵抗R12と並列に接続された状態となる。一方、バス電圧Vbusがローレベルの時には、コンパレータ82の出力がハイレベルとなるため、抵抗R13は抵抗R11と並列に接続された状態となる。これにより、可変分圧回路81を構成する抵抗R11〜R13によって生成される閾値電圧Vthは、後者の方が前者より高くなる。つまり、立ち下がりエッジにて、バス電圧がハイレベルからローレベルに変化したか否かを判定する際に使用する閾値電圧Vth#Dより、立ち上がりエッジにてバス電圧がローレベルからハイレベルに変化したか否かを判定する際に使用する閾値電圧Vth#Uの方が高い値となる。ここでは、閾値電圧Vth#Dは、第1実施形態の場合と同様に、バッテリ電圧BTの1/2付近に設定し、閾値電圧Vth#Uは、例えばバッテリ電圧BTの4/5付近に設定する。
【0049】
<効果>
このような構成によれば、バス電圧Vbusとの比較に使用する閾値電圧Vthがヒステリシスを有し、マスタ3aのドライバ回路32aのプルアップ抵抗は、バス電圧Vbusが十分に大きな値になってから高抵抗RHから低抵抗RLに切り替わる。これにより、高抵抗RHから低抵抗RLへの切り替わり時に生じるバス電流Ibusの増大、ひいてはノイズの発生を抑制することができる。
【0050】
[第3実施形態]
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。
【0051】
第1実施形態では、電流制限部4は、プルアップ抵抗の抵抗値を、バス電圧Vbusに応じて切り替えている。これに対し、第3実施形態では、バス電圧Vbusと出力信号生成部31aが出力する送信信号TXとに応じて切り替えるようにしている点で大1実施形態とは相違する。また、全てのノード3が、トランジスタT2のゲートに供給する信号の波形を整形するための構成が追加されている点でも第1実施形態とは相違する。
【0052】
<構成>
図7に示すように、マスタ3aのドライバ回路32aは、トランジスタT1,T2、抵抗R1、電流制限部4a、波形整形回路9を備えている。
【0053】
<波形整形回路>
波形整形回路9は、ツェナーダイオードD3、抵抗R3、コンデンサC3によって構成され、トランジスタT1のドレインとトランジスタT2のベースの間に接続されている。なお、ツェナーダイオードD3と抵抗R3は、トランジスタT1,T2の間に並列接続され、コンデンサC3は、トランジスタT2のゲートとグランドの間に挿入されている。
【0054】
そして、送信信号TXがローレベルの場合、トランジスタT2がオフするため、コンデンサC3は、ツェナーダイオードD3を介してバッテリ電圧BTまで速やかに充電される。一方、送信信号TXがハイレベルの場合、トランジスタT2がオンするため、コンデンサC3に蓄積された電荷が、ツェナーダイオードD3のツェナー電圧と抵抗R3の抵抗値で決まる一定電流で放電される。これに伴い、トランジスタT2の導通状態は、オン状態からオフ状態に緩やかに変化する。つまり、送信信号TXがハイレベルからローレベルに変化する立ち下がりエッジでは速やかに変化し、送信信号TXがローレベルからハイレベルに変化する立ち上がりエッジでは、立ち下がりエッジと比較して緩やかに変化することになる。
【0055】
図7では、マスタ3aについてのみ示したが、スレーブ3bにも同様の波形整形回路9が追加されている。
<電流制限部>
電流制限部4aには、第1実施形態の電流制限部4とは異なり、送信信号TXが入力されている。なお、電流制限部4aは、制御信号生成回路10と抵抗切替回路6とで構成されている。抵抗切替回路6は、第1実施形態で説明したものと同様であるため、ここでは制御信号生成回路10についてのみ説明する。
【0056】
制御信号生成回路10は、
図8に示すように、トランジスタT12、抵抗R15,R16、否定論理積(NAND)回路53を備え、制御電源(電圧Vc)からの給電を受けて動作する。
【0057】
トランジスタT12のコレクタは抵抗R15を介して制御電源に接続され、エミッタはグランドに接続されている。また、ベースには、抵抗R16を介してバス電圧Vbusが印加されている。NAND回路53の一方の入力には送信信号TXが印加され、他方の入力にはトランジスタのコレクタ出力が印加されている。そして、NAND回路53の出力を制御信号Cとしている。つまり、制御信号Cは、送信信号TXがハイレベルであり且つバス電圧Vbusがローレベルの時にローレベル、それ以外の時にハイレベルとなる。
【0058】
<効果>
このような構成によれば、
図9に示すように、マスタ3aからスレーブ3bに電流が流れ込む時刻t3〜t4の期間だけ、マスタ3aのドライバ回路32aのプルアップ抵抗を、低抵抗RLから高抵抗RHに切り替えている。このため、高抵抗RHとする期間を、必要最小限の範囲に限定することができ、その結果、高抵抗RHの使用に伴う耐ノイズ性の低下を最小限に抑えることができる。
【0059】
また、マスタ3aの波形整形回路9が時刻t3の立ち上がりエッジ、スレーブ3bの波形整形回路9が時刻t4の立ち上がりエッジでのバス電圧波形の急激な変化を抑制するため、これらのエッジでのノイズの発生をより効果的に抑制することができる。
【0060】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0061】
(1)上記実施形態では、抵抗切替回路6は、制御信号Cに応じて、高抵抗RHまた低抵抗RLのいずれか一方を、伝送路7に接続するように構成したが、これに限定されるものではない。例えば、
図10に示す抵抗切替回路6aのように、
図4に示した抵抗切替回路6の高抵抗付加回路61を、トランジスタT21を省略して、高抵抗RHを常時伝送路7に接続ようにした高抵抗付加回路61aに置換すると共に、抵抗R22を省略した構成とし、低抵抗RLのみを、制御信号Cに応じて接続、切り離しを行うようにしてもよい。また、
図11に示す抵抗切替回路6bのように、抵抗切替回路6aから更に高抵抗付加回路61aを省略した構成としてもよい。この場合、低抵抗RLが切り離された場合、プルアップ抵抗はハイインピーダンスになる。また、この場合、トランジスタT22をオフする代わりに、トランジスタT22のオン抵抗が大きくなるように制御してもよい。
【0062】
(2)上記実施形態では、マスタ3aのドライバ回路32aのプルアップ抵抗の抵抗値を低抵抗RLと高抵抗RHの2段階で制御しているが、3段階以上で制御するように構成してもよい。
【0063】
(3)本発明の各構成要素は概念的なものであり、上記実施形態に限定されない。例えば、一つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分散させたり、複数の構成要素が有する機能を一つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。