(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027103
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】生産ラインおよび包装ライン用の金属探知機
(51)【国際特許分類】
G01V 3/10 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
G01V3/10 F
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-517824(P2014-517824)
(86)(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公表番号】特表2014-522969(P2014-522969A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2012063283
(87)【国際公開番号】WO2013007646
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年4月16日
(31)【優先権主張番号】11173277.2
(32)【優先日】2011年7月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511241516
【氏名又は名称】メトラー−トレド・セーフライン・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】バターワース,ダレン
【審査官】
田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05572121(US,A)
【文献】
米国特許第06204667(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属探知機(20)であって、
入口開口(30)と出口開口(31)とを備えた金属製エンクロージャ(21)を備え、前記エンクロージャ(21)の内部に、検出ゾーン(28)を囲む少なくとも1つの送信コイル(23)と少なくとも1つの第1の受信コイルと少なくとも1つの第2の受信コイル(24、25)とを備えたコイルシステムをさらに備え、前記検出ゾーン(28)が前記入口開口と前記出口開口(30、31)の間に延び、検査中の物体(2)が前記検出ゾーン(28)を通って動き、前記入口開口(30)を通って前記金属探知機(20)に入り、前記出口開口(31)を通って前記金属探知機(20)を出て、前記少なくとも1つの送信コイル(23)が、交流電流によって通電されると、一次電磁場を生成し、前記一次電磁場が、前記少なくとも1つの第1の受信コイル(24)内で第1の電圧を、前記少なくとも1つの第2の受信コイル(25)内で第2の電圧を誘導し、前記金属探知機(20)が、第1の打ち消し手段(26)および第2の打ち消し手段(27)のうちの1つをさらに備え、前記第1の打ち消し手段(26)が、前記コイルシステムから第1の距離(d)を越えた前記一次場を打ち消すように前記入口開口(30)に配置され、または前記第2の打ち消し手段(27)が、前記コイルシステムから第2の距離(e)を越えた前記一次場を打ち消すように前記出口開口(31)に配置される金属探知機(20)において、
前記第1の打ち消し手段(26)が前記入口開口(30)に存在し、または、前記第2の打ち消し手段(26、27)が、前記出口開口(31)に存在し、前記第1又は第2の打ち消し手段(26、27)が存在する一方の開口の方向に前記コイルシステムからある距離を越えた前記一次電磁場を打ち消し、前記一次電磁場が、前記他方の開口の側では本質的に減弱されず、
前記送信コイル(23)が、前記入口開口と前記出口開口(30、31)の中間位置に設置され、打ち消し手段を持たない前記開口の隣の前記受信コイルが、前記検査中の物体(2)内の金属混入物に対する前記コイルシステムの感度が最適化される第1の位置に設置され、前記打ち消し手段を持つ前記開口の隣の前記受信コイルが、前記検査中の物体内に存在する金属がないときに前記第1の電圧と前記第2の電圧が互いに打ち消し合う第2の位置に設置される、
金属探知機(20)。
【請求項2】
請求項1に記載の金属探知機(20)において、前記第1の受信コイルおよび前記第2の受信コイル(24、25)が前記送信コイル(23)に対して非対称の位置に配置され、移動方向(13)に対して、前記第1の受信コイル(24)が前記送信コイル(23)の前の第1のコイル距離(a)に位置決めされ、前記第2の受信コイル(25)が前記送信コイル(23)の後ろの第2の、異なるコイル距離(b)に位置決めされることを特徴とする、金属探知機(20)。
【請求項3】
金属探知機(20)であって、
入口開口(30)と出口開口(31)とを備えた金属製エンクロージャ(21)を備え、前記エンクロージャ(21)の内部に、検出ゾーン(28)を囲む少なくとも1つの送信コイル(23)と少なくとも1つの第1の受信コイルと少なくとも1つの第2の受信コイル(24、25)とを備えたコイルシステムをさらに備え、前記検出ゾーン(28)が前記入口開口と前記出口開口(30、31)の間に延び、検査中の物体(2)が前記検出ゾーン(28)を通って動き、前記入口開口(30)を通って前記金属探知機(20)に入り、前記出口開口(31)を通って前記金属探知機(20)を出て、前記少なくとも1つの送信コイル(23)が、交流電流によって通電されると、一次電磁場を生成し、前記一次電磁場が、前記少なくとも1つの第1の受信コイル(24)内で第1の電圧を、前記少なくとも1つの第2の受信コイル(25)内で第2の電圧を誘導し、前記金属探知機(20)が、第1の打ち消し手段(26)および第2の打ち消し手段(27)をさらに備え、前記第1の打ち消し手段(26)が、前記コイルシステムから第1の距離(d)を越えた前記一次場を打ち消すように前記入口開口(30)に配置され、および前記第2の打ち消し手段(27)が、前記コイルシステムから第2の距離(e)を越えた前記一次場を打ち消すように前記出口開口(31)に配置される金属探知機(20)において、
前記第1の打ち消し手段と第2の打ち消し手段(26、27)が互いと異なり、前記第1の距離(d)と前記第2の距離(e)も同様に互いと異なり、
前記検査中の物体(2)内に存在する金属がないとき、前記第1の電圧と前記第2の電圧が互いと平衡状態にあるように、前記第1の受信コイルおよび前記第2の受信コイル(24、25)が前記送信コイル(23)に対して非対称の位置に配置され、移動方向(13)に対して、前記第1の受信コイル(24)が前記送信コイル(23)の前の第1のコイル距離(a)に位置決めされ、前記第2の受信コイル(25)が前記送信コイル(23)の後ろの第2の、異なるコイル距離(b)に位置決めされることを特徴とする、金属探知機(20)。
【請求項4】
請求項1または2に記載の金属探知機(20)において、前記第1の受信コイルと前記第2の受信コイル(24、25)が互いと直列に接続されるが、巻線は互いに対して反対の回転方向に配線されることを特徴とする、金属探知機(20)。
【請求項5】
請求項2に記載の金属探知機(20)において、前記送信コイル(23)が、前記入口開口(30)と前記出口開口(31)の間の中心面内に位置決めされることを特徴とする、金属探知機(20)。
【請求項6】
請求項2に記載の金属探知機(20)において、前記送信コイル(23)が、前記入口開口(30)と前記出口開口(31)の中心からずれて位置決めされることを特徴とする、金属探知機(20)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の金属探知機(20)において、前記第1の距離(d)が、前記検査中の物体(2)の移動方向(13)に対して前記金属探知機(20)の上流で第1の無金属ゾーンの境界を定め、前記第2の距離(e)が、前記金属探知機(20)の下流で第2の無金属ゾーンの境界を定める、金属探知機(20)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の金属探知機(20)において、前記第1の打ち消し手段および前記第2の打ち消し手段(26、27)のそれぞれが、前記エンクロージャ開口(30、31)の一方の縁部に接続されたまたはこれと一体となった金属製フランジまたはカラーを備え、前記フランジまたはカラーが、前記送信コイル(23)の前記一次電磁場によって電流が誘導される短絡コイルとして作用し、前記誘導電流が、前記第1の距離および前記第2の距離(d、e)を越えた前記送信コイルの前記一次場をゼロにする二次電磁場を生成することを特徴とする、金属探知機(20)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の金属探知機(20)において、前記検出ゾーン(28)が、その長さ(z)にわたって前記入口開口(30)から前記出口開口(31)まで一定の断面プロファイルを備えたトンネルの形を有し、前記検出ゾーン(28)の前記断面プロファイルが方形、矩形、円形、または楕円形の形状である、金属探知機(20)。
【請求項10】
請求項9に記載の金属探知機(20)において、前記第1の受信コイルおよび前記第2の受信コイル(24、25)ならびに前記送信コイル(23)が、電気絶縁性非金属材料から作製されてその内部は前記検出ゾーン(28)の前記断面プロファイルと一致する中空管の形状をした共通巻き型(22)に巻き付けられることを特徴とする、金属探知機(20)。
【請求項11】
請求項1から10の少なくとも一項に記載の金属探知機(20)を備える包装ラインまたは生産ライン。
【請求項12】
請求項1、2、4乃至6のいずれか一項に記載の金属探知機(20)を備え、金属部品を含む包装装置ユニットまたは生産装置ユニット(11)が、前記金属探知機(20)と同一線上に配置され、前記入口開口と前記出口開口(30、31)の一方に隣接し、金属部品が、前記開口の他方の外側に延びる無金属ゾーン内に存在せず、前記1つの打ち消し手段(27)が、前記金属部品を含む前記装置ユニット(11)に最も近い前記開口に配置されることを特徴とする、包装ラインまたは生産ライン。
【請求項13】
請求項11または12に記載の包装ラインまたは生産ラインにおいて、前記金属探知機(20)が、前記検査中の物体の移動経路が前記金属探知機(20)を水平方向に通過するように配設され、前記移動経路が、好ましくは、コンベヤベルト(3)を備える、包装ラインまたは生産ライン。
【請求項14】
請求項11または12に記載の包装ラインまたは生産ラインにおいて、前記金属探知機(20)が、前記検査中の物体の移動経路が前記金属探知機(20)を垂直方向に通過するように配設される、包装ラインまたは生産ライン。
【請求項15】
請求項14に記載の包装ラインまたは生産ラインにおいて、前記移動経路がシュートを備え、前記シュートを通って前記検査中の物体が自由落下で動く、包装ラインまたは生産ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品業界、飲料業界、医薬品業界、プラスチック業界、化学業界、包装業界、およびその他の業界向けの工業用金属探知機に関する。本明細書において説明する種類の金属探知機の主な目的は、物品、バルク材料、または一般的には、調べる任意の物体中の金属の存在を検出することである。このような金属探知機は、たとえば製造プロセス中の破損した加工機械からの金属粒子または金属部品による食物の汚染を検出するために、生産ラインおよび包装ラインに広く使用され、組み込まれる。金属粒子または金属部品による食物の汚染は、食品業界における安全上の大きな問題である。本発明が関連し、巻き(encircling)コイル配置を備えた平衡型3コイルシステムとして知られる汎用的なタイプの金属探知機は、検査中の物品および材料が通り抜ける門として説明することができ、たとえば水平方向のコンベヤベルト上に載せられた個々の包装は垂直方向の門を通過し、または垂直方向のダクトまたは漏斗を通って自由落下するバルク材料のストリームは水平方向に並べられた門を通過する。
【背景技術】
【0002】
この門は、一般に、入口開口と出口開口とを備えた箱形の金属製エンクロージャとして構成される。金属探知機の機能部分は、金属製エンクロージャの内部に配置された、非金属材料から作製された共通の中空キャリア(carrier)すなわち巻き型に巻き付けられた3つの電気コイルからなるシステムである。巻き型の開口の断面は、入口開口および出口開口の大きさおよび形状に合致し、入口開口および出口開口とぴったりと合う。したがって、巻き型と入口開口と出口開口は、検出ゾーンを画定するトンネルを形成し、コンベヤベルトまたは他の輸送手段は、検査中の物品または材料にこの検出ゾーンを通り抜けさせる。この検出ゾーントンネルの断面は略方形または略円形であるが、他の任意の形状を有することもできる。
【0003】
このタイプの最先端の金属探知機では、コイルは互いとぴったり平行であり、したがって、コイルの平行な面は、共通の中心軸に対して直角である。中心コイルは、送信コイル、エミッタコイル、または励磁コイルともさまざまに呼ばれるが、高周波発振器に接続され、したがって一次交流電磁場を生成し、一次交流電磁場は、中心コイルの両側にある2つのコイル内に第1の交流電圧および第2の交流電圧をそれぞれ誘導する。この2つのコイルは、第1の受信コイルおよび第2の受信コイルとも呼ばれる。第1の受信コイルと第2の受信コイルは互いと直列に接続されるが、これらのコイルの巻線は互いと反対に配線される。言い換えれば、コイルワイヤは、連続的に第1の出力端子から第1の受信コイルの巻線を通り、次に逆の回転方向で第2の受信コイルの巻線を通って第2の出力端子に至る。さらに、第1の受信コイルおよび第2の受信コイルは、送信コイルから等距離に位置する。したがって、第1の受信コイルおよび第2の受信コイルは、送信コイルの中心面に対してあらゆる点で互いの鏡像であり、したがって、一次交流電磁場によって第1の受信コイルおよび第2の受信コイル内に誘導される第1の交流電圧と第2の交流電圧は互いに打ち消し合う。言い換えれば、この最先端の金属探知機の鏡像対称性から、第1の出力端子と第2の出力端子の間で捕捉される電圧はゼロになるという結果がもたらされる。
【0004】
対称な平衡コイル配置はまた、いわゆるゼロ平衡状態を達成するように並べられた複数の送信コイルおよび/または複数の受信コイルからなることができる。したがって、第1の受信コイルは1つまたは複数の入口側受信コイルを形成することができ、第2の受信コイルは1つまたは複数の出口側受信コイルを形成することができる。同様に、送信コイルは、1つまたは複数の送信コイルとして設計することができる。
【0005】
しかし、一片の金属がコイル配置を通過する場合、電磁場が乱され、直列に接続された受信コイルの出力端子の両端に動的電圧信号を生じさせる。
前述の概念は、「平衡型コイルシステム」、「誘導平衡型金属探知機」、および類似の用語で呼ばれることが多く、工業用金属探知機の分野で一般に知られている。一般的な原理は、たとえばUS4,563,645(列1、行11〜32、および
図1)ならびにUS7,061,236B2(列1、行20〜41、ならびに
図1および2a)に記載および図示されている。
【0006】
コイル配置を取り囲む金属製エンクロージャは、空気中を伝わる電気信号または近くの金属製物品および機械が、金属探知機が正常に機能するのを妨げないようにする働きをする。さらに、金属製エンクロージャは、アセンブリに強度および剛性を追加する。これは、互いに対して、およびエンクロージャに対してコイルが微小に転位することによって、ナノボルト範囲の信号に対する感度を有する検出システムを妨害することができるときですら、絶対に不可欠である。
【0007】
前述の説明の金属探知機における懸案の問題は、検出ゾーン外の区域、特に金属探知機のエンクロージャ外のさらに遠い区域にある、静止した金属に対する感度であり、動く金属に対する感度はなおさらである。これは、送信コイルによって生成される電磁場が、入口開口および出口開口の外部で、検出ゾーンの長さの2倍または3倍までの距離まで延びることによるものである。この範囲内に静止した金属部材または動く金属部材、たとえばコンベヤの支持フレームまたは他の構成要素がある場合、電磁場の到達範囲における電磁場と金属製部材の相互作用によって、受信コイルの望ましくない出力信号が生じ、これが、金属探知機を通って移動する検査中の材料内の金属混入物から生じる実際の検出信号に干渉する。したがって、設計上の特別な方策を講じない限り、金属探知機の入口開口の前および出口開口の後ろの広い空間に、あらゆる金属がないようにしなければならない。平衡型コイル金属探知機の適切な動作を確保するために金属がないようにしなければならない区域は、一般に「無金属ゾーン」すなわちMFZと呼ばれる。
【0008】
無金属ゾーン、具体的には輸送経路の方向におけるその長さは、通常、静止した金属の場合、および動く金属の場合、開口高さ(または直径)hの倍数として指定される。EP0536288B1(列2、行6〜8、および
図1)によれば、MFZは、静止した金属の場合は約1.5×hまで、動く金属の場合は約2×hまで延びる。任意の所与の用途では、MFZは、金属探知機システム設計、具体的には挿入空間、すなわち金属探知機およびそのMFZを収容するために包装ラインまたはプロセスラインにおいて見込まなければならない空間の量を規定する。
【0009】
金属探知機に利用可能な空間が限られており、そのため前述のガイドラインを満たすことができない用途では、周囲近傍内の金属製物体による干渉は、スプリアス信号が示されなくなる点に対する金属探知機の感度を低下させることによって、抑制することができる。もちろん、これによって、検出ゾーン内部の金属混入物に対する有用な検出感度が同時に減少し、すなわち金属探知機は、明らかに望ましくない方法で不利益を被る。
【0010】
先に説明した金属探知機のタイプにおける無金属ゾーンを減少または除去すらする解決策がEP0536288B1に示されており、EP0536288B1を本開示において参照により本明細書に組み込む。EP0536288B1に記載されているMFZを減少または除去するための考えられ得る手段の1つは、金属探知機のエンクロージャの入口開口および出口開口の縁部と一体とすることができる金属製フランジまたはカラーの形を有する。これらのフランジまたはカラーは、送信コイルの交流電磁場によって電流が誘導される短絡コイルとして作用する。誘導電流は二次電磁場を生成させ、二次電磁場は、特定の条件下で、入口コイルの前および出口コイルの後ろの特定の距離を越えた送信コイルの一次場をゼロにすることができ、これは、エンクロージャの開口の外の一次場が完全に抑制され、入口開口の前および出口開口の後ろの無金属ゾーンが効果的にゼロに減少され、いわゆる「ゼロ無金属ゾーン」(ZMFZ)を提供する範囲にも及ぶ。
【0011】
EP0536288B1によるZMFZ概念を使用する最先端の金属探知機は、その開口の一方または両方に金属構造または機械が隣接する場合ですら、設計された最大検出感度で動作することができるので、以前の最先端の金属探知機で必要とされるであろう無金属ゾーンを見込むのに利用可能な十分な空間がない設備にとって有利である。それにもかかわらず、ZMFZ概念による開口フランジを装備する金属探知機の最大感度は、必要とされる無金属ゾーンと共に動作する従来の金属探知機の最大感度より低い。したがって、現在の最先端技術は、依然として妥協を示す。すなわち、ZMFZ金属探知機は、加工ライン内の上流および/または下流における無金属ゾーンの必要性を大きく減少させる、または除去しさえするが、その代償として、無金属ゾーンを見込んだ、ZMFZ金属探知機より長い挿入空間内に据え付けられた従来の金属探知機と比較して、検出感度がやや低くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、ZMFZ概念を用いながら、標準的な無金属ゾーンを備えた従来の金属探知機の検出感度に近づけるまたは匹敵する、改善された金属探知機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この要件は、特許の独立請求項に挙げられる特徴を有する金属探知機によって満たされる。本発明の種々の実施形態および改良は従属請求項に示す。本発明による金属探知機を組み込んだ一般的な生産ラインまたは包装ラインは、さらなる請求項に示す。
【0014】
本発明による金属探知機は、入口開口と出口開口とを備え金属製エンクロージャと、この金属製エンクロージャの内部に配置されている、少なくとも1つの送信コイルと少なくとも1つの第1の受信コイルと少なくとも1つの第2の受信コイルとを備えたコイルシステムとを有する。この入口開口および出口開口ならびに第1の受信コイルおよび第2の受信コイルはトンネルのような検出ゾーンを形成し、検査中の物体は、この検出ゾーンを通って移動経路に沿って動き、この移動経路は、入口開口を通って金属探知機に入り、出口開口を通って金属探知機を出る。
【0015】
好ましくは、この移動経路に対して、1つまたは複数の第1の受信コイルが送信コイルの前に配置され、1つまたは複数の第2の受信コイルが1つまたは複数の送信コイルの後ろに配置される。第1の受信コイルおよび第2の受信コイルは、互いと直列に配線され、等しい少数の巻線の巻き(一般的には、1巻き)を有し、互いに対して反対の回転方向に巻かれる。
【0016】
本発明の金属探知機は、コイルシステムから特定の距離を越えた一次場を打ち消すための手段を備える。一次場を打ち消すためのこの手段は、好ましくは、金属探知機の金属製エンクロージャの入口開口および出口開口の縁部に接続されたまたはこれと一体化された金属製フランジまたはカラーの形で構成される。このフランジまたはカラーは、送信コイルの一次電磁場によって交流が誘導される短絡コイルの機能を実行する。この誘導電流は、コイルシステムから特定の距離を越えた送信コイルの一次場をゼロにする二次電磁場を生成する。
【0017】
本発明の金属探知機は、入口開口の側の一次場を打ち消すための手段および出口開口の側の一次場を打ち消すための手段が最早互いと等しくなく、かつ金属探知機の中心面に対して対称でないことによって、従来技術と区別される。言い換えれば、本発明の金属探知機は、入口開口に配置された第1の打ち消し手段と、出口開口に配置された異なる第2の打ち消し手段とを有する。この第1の打ち消し手段と第2の打ち消し手段は、構成においてだけでなく、一次電磁場を打ち消す能力においても、互いと異なる。したがって、一次場は、入口開口から第1の距離を越えて、および出口開口から異なる第2の距離を越えて打ち消される。したがって、本発明による金属探知機は、前記検査中の物体の移動経路に対して入口開口から上流に第1の距離延びる第1の無金属ゾーンと、出口開口から下流に第2の距離延びる異なる第2の無金属ゾーンとを有する。
【0018】
打ち消し手段とコイルシステムの間に生じる誘導相互作用により、非対称な打ち消し手段は、対称なコイルシステムの受信コイルにおいて誘導される電圧間に大きな不平衡を生じさせる。したがって、非対称な打ち消し手段の概念は、第一に、それにより他の点で電気信号回路を乱すことなく受信コイル間のこの電圧不平衡を補償する解決策を必要とする。本発明のプロセスでは、この問題は、第1の受信コイルおよび第2の受信コイルが1つまたは複数の送信コイルに対して、金属製筐体に対して、ならびに第1の打ち消し手段および第2の打ち消し手段に対して非対称な位置に設置される場合に解決可能であり、この非対称な位置は、前記検査中の物体内に存在する金属がないとき第1の電圧と第2の電圧が互いに打ち消し合うように決定されることが判明している。言い換えれば、コイルシステムは、依然として平衡型コイルシステムであるが、従来技術による金属探知機におけるコイルシステムの幾何学的対称性がない。
【0019】
興味深いことに、本発明による金属探知機は、EP0536288B1によるZMFZ概念を使用する最先端の金属探知機と比較して、改善された感度を示した。
対称な平衡コイル配置はまた、いわゆるゼロ平衡状態を達成するように並べられた複数の送信コイルおよび/または複数の受信コイルからなることができるので、本発明の概念の以下の説明および特許請求の範囲では、「送信コイル」および/または「受信コイル」という用語は「少なくとも1つの送信コイル」および/または「少なくとも1つの受信コイル」を表すことがある。
【0020】
例示的な一実施形態では、1つまたは複数の送信コイルが入口開口と出口開口の間の中心面内に位置決めされ、受信コイルがそれぞれ、送信コイルから異なる距離に、すなわち前記中心面からの位置に関して非対称に、配置される。あるいは、送信コイルは、入口開口と出口開口の中心から離れて位置決めされ、受信コイルはそれぞれ、送信コイルから異なる距離に配置されるが、必ずしも前記中心面から異なる距離に配置されるとは限らない。
【0021】
特に興味深いのは、前述の概念の一実施形態である。この実施形態では、打ち消し手段が開口の一方にのみに存在し、したがって、一次電磁場は、金属探知機の一方の開口の側でのみ打ち消されるが、他方の開口の側では依然として本質的に減弱されない。片側ZMFZ設計と呼ぶことができる実際の一実施形態では、送信コイルは、基本的に入口開口と出口開口の中間に設置され、打ち消し手段を持たない開口の隣の受信コイルは、検査中の物体内の金属混入物に対するコイルシステムの感度を最適化するように位置決めされ、打ち消し手段を持つ開口の隣の受信コイルは、コンピュータモデリングまたは実験によって決定され、したがって、コイルシステムは電気的に平衡する。
【0022】
前述の説明による非対称構成を備えた金属探知機の選定はそれ自体、具体的には、金属部品を含む包装装置ユニットまたは生産装置ユニットが金属探知機と同一線上に配置され、入口開口または出口開口のどちらかに直接隣接し、他方の開口の外側に延びる無金属ゾーン内に存在する金属部品がほとんどまたはまったくない設備を示唆する。このような状況は極めて一般的であるが、こうした状況では、非対称にすなわち完全に片側の打ち消し手段を備えた本発明による金属探知機は、非常に有利に使用することができる。その理由は、一次場の抑制、したがって無金属ゾーンの減少または除去を、金属探知機の、これが必要とされる側に集中させることができ、金属探知機の反対側は、金属探知機の総合感度を最適化することを目的として設計することができるからである。
【0023】
本発明による金属探知機では、検出ゾーンは、通常、その長さにわたって入口開口から出口開口まで一定の断面プロファイルを備えたトンネルの形を有する。検出ゾーンのこの断面プロファイルは、一般的には、方形、矩形、円形、または楕円形の形状であるが、実際の用途で必要とされ得る他の任意の形状も有することができる。
【0024】
一般的には、本発明による金属探知機では、第1の受信コイルおよび第2の受信コイルならびに送信コイルは、電気絶縁性非金属材料から作製されてその内部は検出ゾーンの断面プロファイルと一致する中空管の形状をした共通巻き型に巻き付けられる。
【0025】
巻き型とエンクロージャの間の空間は、高感度の電子回路部品を含むことができ、一般的には埋め込み用樹脂で満たされる。この埋め込み用樹脂は、湿気の浸入を防ぐ機能、ならびにコイルシステムおよび電子部品を筐体に対してある位置に固定させる機能を有する。
【0026】
本発明による金属探知機は、一般的には、包装ラインまたは生産ラインにおいて使用される。したがって、本発明の範囲は、本明細書において特許請求され、説明され、および/または図示される金属探知機が組み込まれるいかなる包装ラインまたは生産ラインをも包含する。
【0027】
特に有利であるのは、金属部品を含む包装装置ユニットまたは生産装置ユニットが入口開口のすぐ上流または出口開口のすぐ下流に配置され金属部品が他方の開口の外側に延びる無金属ゾーン内に存在しない加工ラインにおける、先に説明した片側打ち消し手段を備えた金属探知機の設備である。このような場合、片側打ち消し手段は、金属部品を含む装置ユニットに最も近い開口に配置される。
【0028】
本発明の金属探知機を組み込んだ一般的な包装ラインまたは生産ラインでは、本発明の金属探知機は、トンネルのような検出ゾーンおよび検査中の物体の移動経路が水平方向に配向されるように配置される。移動経路は、最先端のコンベヤベルトから構成することができる。
【0029】
本発明の金属探知機を組み込んだ別の一般的な包装ラインまたは生産ラインでは、本発明の金属探知機は、トンネルのような検出ゾーンおよび検査中の物体の移動経路が垂直方向に配向されるように配置される。移動経路はシュートから構成することができ、このシュートを通って、検査中の物体が自由落下で動く。
【0030】
本発明による金属探知機について、例によって、および概略的に簡略化した図面を参照して、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】A.は、従来技術による金属探知機とこの金属探知機の下流に配置された不合格パンチ(reject punch)とを組み込んだ加工ラインの側面図である。B.は、同じ加工ラインの上面図である。
【
図2】本発明による金属探知機の好ましい一実施形態を断面図で概略的に示す図である。
【
図3】
図3Aは、1つの開口フランジのみを備えた、
図2の金属探知機の特殊なケースを示す図である。
図3Bは、
図3Aの金属探知機を一次電磁場の力線と共に示す図である。
【
図4】本発明による金属探知機とこの金属探知機の下流に配置された不合格パンチとを組み込んだ加工ラインの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、EP0536288B1より以前の最新技術による従来の金属探知機1を組み込んだ加工ラインの側面図(A.)および上面図(B.)を示し、金属探知機1は、コンベヤベルト3上を移動して検出ゾーン4を通る物品2内の金属混入を検出する働きをし、検出ゾーン4は、金属製エンクロージャ7の入口開口5から出口開口6まで延びる。金属探知機1の構成は、対称面SPに対して対称である。実質的に等しい無金属ゾーン8および9は、入口開口5から上流に、および出口開口6から下流に延びる。加工ラインの金属部材は、無金属ゾーン8および9の周囲の外に設置される。図示の例では、これは、具体的にはベルトローラ10および不合格パンチ機構11に関し、不合格パンチ機構11は、不合格にされた(すなわち金属を含有する)物品をコンベヤベルト3から押し出す働きをし、押し出された物品は不合格ビン(reject bin)12に入る。
【0033】
図1Aおよび1Bの無金属ゾーン8および9の実質的に等しい長さdおよびeは、実際には、開口高さhに、および金属探知機エンクロージャの長さzに比例する。これは、EP0536288B1によるZMFZ解決策を選ばない限り無金属ゾーン8および9のために作らなければならない相当の空間のゆとりを示し、EP0536288B1によるZMFZ解決策では、金属探知機の両側の無金属ゾーンは等しく抑制される。しかし、本明細書において先に説明したように、この代償として、検出ゾーン4内部の金属混入物の検出感度がやや低くなる。
【0034】
図2は、中心軸29に沿った垂直断面における本発明による金属探知機20の第1の実施形態を表す。わかりやすくし、一貫性を保つため、金属探知機20は、
図1の金属探知機1と同じ方向で示されており、すなわち、その入口開口30は
図2の左側を向き、その出口開口31は右側を向く。金属探知機20の主要部材は、エンクロージャ21、送信コイル23と受信コイル24、25とを備えた巻き型22、ならびにそれぞれ入口開口および出口開口30、31における開口フランジ26、27である。コイル23、24、25は巻き型22に埋め込まれ、コイル巻線の回転方向は第1の受信コイル24と第2の受信コイル25で逆になる。出口開口フランジ27が入口開口フランジ26より実質的に大きいので、
図2の実施形態における金属探知機20は、本明細書において先に説明した非対称ZMFZ概念の例となる。エンクロージャ21および開口フランジ26、27は、送信コイル23によって生成される一次磁場を限定する機能を実行するために、金属から作製されなければならない。一方、巻き型22は、たとえば繊維強化プラスチックなどの、非導電性であるが機械的に安定した材料から作製されなければならない。巻き型22、開口フランジ26、27、ならびに入口開口および出口開口30、31は、トンネルのような検出ゾーン28を形成し、検査中の製品(図示されない)は、これを通って、たとえばコンベヤベルト上で動き、入口開口30を通って金属探知機20に入り、出口開口31を通って金属探知機20を出る。エンクロージャ21と巻き型22と開口フランジ26、27の間にある内部空間は埋め込み用樹脂33で満たされ、埋め込み用樹脂33は、湿気の浸入を防ぎ、巻き型22、開口フランジ26、27、およびエンクロージャ21を互いに対して所定の位置にしっかりと保持する働きをする。金属探知機20の中心軸29が水平方向に配向された、コンベヤベルトを備えた設備では、検出ゾーン28の断面プロファイルは好ましくは方形であり、この場合、寸法hは開口高さを示す。しかし、検出ゾーンの他の方向および他のプロファイル形状、たとえば検査中の製品がシュートを通って自由落下で動く、丸い、垂直方向に配向された検出ゾーンが同様に可能である。この場合、寸法hは開口の直径を示す。
【0035】
開口フランジ26、27は、送信コイル23の交流または脈動する一次電磁場によって電流が誘導される短絡コイルとして作用する。レンツの法則に従って、誘導電流は常に、それを発生させる場の変化を妨げるような方向に流れる。したがって、開口フランジ26、27内で誘導電流によって生成される二次電磁場は、一次場を妨害する。これは特に、
図2では水平方向に位置合わせされた開口フランジ26、27の部材に当てはまる。開口フランジ26、27の設計および寸法に応じて、二次電磁場は、入口開口および出口開口30、31の外側に対して送信コイルの一次場を減少させる、または完全に打ち消すことすら可能である。
【0036】
送信コイル23は、好ましくは、検出ゾーン28の長さzの中心に位置決めされる。第1の受信コイルおよび第2の受信コイル24、25は、非対称に、すなわち送信コイル23から異なるそれぞれの距離aおよびbに設置される。距離aおよびbは、検出感度を最適化することと受信コイルにおける誘導電圧を互いに対して平衡させることを同時目的として、たとえば実験に基づいて、またはコンピュータモデリングによって、決定される。
【0037】
あるいは、送信コイル23は、入口開口30と出口開口31の中心からずれて位置決めすることができ、第1の受信コイル24および第2の受信コイル25はそれぞれ、送信コイル23から異なる距離a、bに配置されるが、必ずしも検出ゾーン28の長さzの前記中心から異なる距離に配置されるとは限らない。
【0038】
しかし、いくつかの用途では、開口フランジ26、27の一方または両方は、金属製エンクロージャ21(図示されない)の外部に延び、エンクロージャ開口30、31の一方の縁部に接続されたまたはこれと一体となったカラーを形成することができる。
【0039】
図3Aおよび3Bは、
図2の金属探知機の特殊なケースを示す。開口フランジの一方、この場合は入口開口30におけるフランジ26は、完全に省略されている。この場合、検出感度を最適化するという問題と受信コイル内の誘導電圧を平衡させるという問題を同時に解決するのではなく、検出感度を最大にするように選択された距離a’に第1の受信コイル24を設置することによって開始することができる。次に、第2の受信コイル25、すなわち開口フランジ27を有する側のコイルを、送信コイル23に対して距離b’に位置決めする。距離b’では、検出ゾーン内で検出される金属がないとき、一次場によって受信コイル24、25内で誘導されるそれぞれの電圧が互いに打ち消し合う。距離b’は、一般にa’より短く、フランジ長fおよび開口高さhによって決まる。
【0040】
送信コイル23の一次電磁場に対する開口フランジ27の二次場の影響が、
図3Aに示されるものと同じ金属探知機20に関して、
図3Bに示されている。出口開口31の外側へは、送信コイル23によって生成される一次場は、開口フランジ27の二次場によって実質的に打ち消される。これは、力線35によって図式的に示されている。わかりやすいように、エンクロージャ21の埋め込み部33に入る力線は図示しない。
【0041】
出口開口31の側の力線は、偏向されて検出ゾーン28に戻る。対照的に、検出ゾーン28の反対側では、一次場は二次場によって妨害されない。したがって、出口側では偏向されて戻る同じ力線35が、偏向されずに入口開口30を通って金属探知機20の外側に延びる。その結果、金属探知機20は本質的に、出口開口31における無金属ゾーンを必要としないが、開口高さhの約1.5〜2.5倍延びる標準的な無金属ゾーンが入口開口30の外側で必要とされる。
【0042】
図4は、
図3Aおよび3Bの非対称な金属探知機20を組み込んだ加工ラインの上面図を示す。容易に比較できるようにするため、
図4は
図1と同じページに置かれ、
図1と同じ縮尺で描かれている。金属探知機20の入口側の無金属ゾーン48は、
図1の金属探知機1の対称な無金属ゾーン8および9と同じ第1の距離dまで延びるが、出口側の無金属ゾーン49は、ここでは、かなり短く、図示の例では、d/4とほぼ等しい第2の距離eまで延びる。これによって、不合格パンチ機構11を事実上、出口開口31の隣に配置することが可能となり、その結果、本発明による金属探知機20は、従来の金属探知機1より著しく短い挿入空間内に据え付けることができる。同時に、金属探知機20は一方の側のみでZMFZ概念を用いるので、金属探知機20の有用な検出感度は、従来の金属探知機1と比較して感知できるほど低下しない。
【0043】
本発明について、具体的な例の提示により説明してきたが、本開示によって提供される知識に基づけば、本発明は、場を打ち消す非対称な手段を備えた多数の他の変形形態で実施することができ、金属探知機の可能な最高水準の有用な感度を保ちながら所与の設備に必要とされるそれぞれの無金属ゾーンの縮小を達成するために、金属探知機の入口側の場を打ち消す手段は、出口側の場を打ち消す手段とは異なることは明らかである。そのうえ、一次場を打ち消すための手段は、誘導電流の受動的キャリアである金属製フランジまたはカラーとは対照的に電子回路によって能動的に通電されるコイルとすることもできる。
【0044】
非対称ZMFZ構成内でゼロ平衡状態および最適化された感度を達成するように非対称に配置された複数の送信コイルおよび/または複数の受信コイルからなる最新技術による他の対称な平衡コイル配置を使用する本発明のさらなる実施形態が考えられる。
【0045】
このようなあらゆる変形形態および組み合わせは本発明の範囲内に含まれると見なされることを理解されたい。
[形態1]
金属探知機(20)であって、
入口開口(30)と出口開口(31)とを備えた金属製エンクロージャ(21)を備え、前記エンクロージャ(21)の内部に、検出ゾーン(28)を囲む少なくとも1つの送信コイル(23)と少なくとも1つの第1の受信コイルと少なくとも1つの第2の受信コイル(24、25)とを備えたコイルシステムをさらに備え、前記検出ゾーン(28)が前記入口開口と前記出口開口(30、31)の間に延び、検査中の物体(2)が前記検出ゾーン(28)を通って動き、前記入口開口(30)を通って前記金属探知機(20)に入り、前記出口開口(31)を通って前記金属探知機(20)を出て、前記少なくとも1つの送信コイル(23)が、交流電流によって通電されると、一次電磁場を生成し、前記一次電磁場が、前記少なくとも1つの第1の受信コイル(24)内で第1の電圧を、前記少なくとも1つの第2の受信コイル(25)内で第2の電圧を誘導し、前記金属探知機(20)が、第1の打ち消し手段(26)および第2の打ち消し手段(27)のうちの少なくとも1つをさらに備え、前記第1の打ち消し手段(26)が、前記コイルシステムから第1の距離(d)を越えた前記一次場を打ち消すように前記入口開口(30)に配置され、および/または前記第2の打ち消し手段(27)が、前記コイルシステムから第2の距離(e)を越えた前記一次場を打ち消すように前記出口開口(31)に配置される金属探知機(20)において、第1の打ち消し手段(26)および第2の打ち消し手段(27)が存在する場合、前記第1の打ち消し手段と第2の打ち消し手段(26、27)が互いと異なり、前記第1の距離(d)と前記第2の距離(e)も同様に互いと異なること、ならびに、前記検査中の物体(2)内に存在する金属がないとき、前記第1の電圧と前記第2の電圧が互いと平衡状態にあることを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態2]
形態1に記載の金属探知機(20)において、前記第1の受信コイルおよび前記第2の受信コイル(24、25)が前記送信コイル(23)に対して非対称の位置に配置され、移動方向(13)に対して、前記第1の受信コイル(24)が前記送信コイル(23)の前の第1のコイル距離(a)に位置決めされ、前記第2の受信コイル(25)が前記送信コイル(23)の後ろの第2の、異なるコイル距離(b)に位置決めされることを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態3]
形態1または2に記載の金属探知機(20)において、前記第1の受信コイルと前記第2の受信コイル(24、25)が互いと直列に接続されるが、巻線は互いに対して反対の回転方向に配線されることを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態4]
形態2に記載の金属探知機(20)において、前記送信コイル(23)が、前記入口開口(30)と前記出口開口(31)の間の中心面内に位置決めされることを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態5]
形態2に記載の金属探知機(20)において、前記送信コイル(23)が、前記入口開口(30)と前記出口開口(31)の中心からずれて位置決めされることを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態6]
形態1から5のいずれか一項に記載の金属探知機(20)において、前記第1の打ち消し手段および前記第2の打ち消し手段(26、27)の一方または他方のみがそれぞれ、前記入口開口(30)に、または前記出口開口(31)に存在し、前記一方の開口の方向に前記コイルシステムからある距離を越えた前記一次電磁場を打ち消し、前記一次電磁場が、前記他方の開口の側では本質的に減弱されない、金属探知機(20)。
[形態7]
形態1から6のいずれか一項に記載の金属探知機(20)において、前記第1の距離(d)が、前記検査中の物体(2)の移動方向(13)に対して前記金属探知機(20)の上流で第1の無金属ゾーンの境界を定め、前記第2の距離(e)が、前記金属探知機(20)の下流で第2の無金属ゾーンの境界を定める、金属探知機(20)。
[形態8]
形態1から7のいずれか一項に記載の金属探知機(20)において、前記第1の打ち消し手段および前記第2の打ち消し手段(26、27)のそれぞれが、前記エンクロージャ開口(30、31)の一方の縁部に接続されたまたはこれと一体となった金属製フランジまたはカラーを備え、前記フランジまたはカラーが、前記送信コイル(23)の前記一次電磁場によって電流が誘導される短絡コイルとして作用し、前記誘導電流が、前記第1の距離および前記第2の距離(d、e)を越えた前記送信コイルの前記一次場をゼロにする二次電磁場を生成することを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態9]
形態6から8のいずれか一項に記載の金属探知機(20)において、前記送信コイル(23)が、前記入口開口と前記出口開口(30、31)の中間位置に設置され、打ち消し手段を持たない前記開口の隣の前記受信コイルが、前記検査中の物体(2)内の金属混入物に対する前記コイルシステムの感度が最適化される第1の位置に設置され、前記打ち消し手段を持つ前記開口の隣の前記受信コイルが、前記検査中の物体内に存在する金属がないときに前記第1の電圧と前記第2の電圧が互いに打ち消し合う第2の位置に設置される、金属探知機(20)。
[形態10]
形態1から9のいずれか一項に記載の金属探知機(20)において、前記検出ゾーン(28)が、その長さ(z)にわたって前記入口開口(30)から前記出口開口(31)まで一定の断面プロファイルを備えたトンネルの形を有し、前記検出ゾーン(28)の前記断面プロファイルが方形、矩形、円形、または楕円形の形状である、金属探知機(20)。
[形態11]
形態10に記載の金属探知機(20)において、前記第1の受信コイルおよび前記第2の受信コイル(24、25)ならびに前記送信コイル(23)が、電気絶縁性非金属材料から作製されてその内部は前記検出ゾーン(28)の前記断面プロファイルと一致する中空管の形状をした共通巻き型(22)に巻き付けられることを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態12]
金属探知機(20)であって、
入口開口(30)と出口開口(31)とを備えた金属製エンクロージャ(21)を備え、前記エンクロージャ(21)の内部に、検出ゾーン(28)を囲む少なくとも1つの送信コイル(23)と少なくとも1つの第1の受信コイルと少なくとも1つの第2の受信コイル(24、25)とを備えたコイルシステムをさらに備え、前記検出ゾーン(28)が前記入口開口と前記出口開口(30、31)の間に延び、検査中の物体(2)が前記検出ゾーン(28)を通って動き、前記入口開口(30)を通って前記金属探知機(20)に入り、前記出口開口(31)を通って前記金属探知機(20)を出て、前記少なくとも1つの送信コイル(23)が、交流電流によって通電されると、一次電磁場を生成し、前記一次電磁場が、前記少なくとも1つの第1の受信コイル(24)内で第1の電圧を、前記少なくとも1つの第2の受信コイル(25)内で第2の電圧を誘導し、前記金属探知機(20)が、第1の打ち消し手段(26)および第2の打ち消し手段(27)のうちの少なくとも1つをさらに備え、前記第1の打ち消し手段(26)が、前記コイルシステムから第1の距離(d)を越えた前記一次場を打ち消すように前記入口開口(30)に配置され、および/または前記第2の打ち消し手段(27)が、前記コイルシステムから第2の距離(e)を越えた前記一次場を打ち消すように前記出口開口(31)に配置され、前記第1の距離(d)が、検査中の前記物体(2)の移動方向(13)に対して前記金属探知機(20)の上流で第1の無金属ゾーンの境界を定め、前記第2の距離(e)が、前記金属探知機(20)の下流で第2の無金属ゾーンの境界を定める金属探知機(20)において、第前記第1の無金属ゾーンと第2の無金属ゾーンが互いと異なり、検査中の前記物体(2)内に存在する金属がないとき、前記少なくとも1つの第1の受信コイル(24)内の前記第1の電圧と前記少なくとも1つの第2の受信コイル(25)内の前記第2の電圧が互いと平衡状態にあることを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態13]
形態12に記載の金属探知機(20)において、前記第1の受信コイルおよび前記第2の受信コイル(24、25)が前記送信コイル(23)に対して非対称の位置に配置され、移動方向(13)に対して、前記第1の受信コイル(24)が前記送信コイル(23)の前の第1のコイル距離(a)に位置決めされ、前記第2の受信コイル(25)が前記送信コイル(23)の後ろの第2の、異なるコイル距離(b)に位置決めされることを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態14]
形態12または13に記載の金属探知機(20)において、前記第1の受信コイルと前記第2の受信コイル(24、25)が互いと直列に接続されるが、巻線は互いに対して反対の回転方向に配線されることを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態15]
形態13に記載の金属探知機(20)において、前記送信コイル(23)が、前記入口開口(30)と前記出口開口(31)の間の中心面内に位置決めされることを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態16]
形態13に記載の金属探知機(20)において、前記送信コイル(23)が、前記入口開口(30)と前記出口開口(31)の中心からずれて位置決めされることを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態17]
形態12から16のいずれか一項に記載の金属探知機(20)において、前記第1の打ち消し手段および前記第2の打ち消し手段(26、27)の一方または他方のみがそれぞれ、前記入口開口(30)に、または前記出口開口(31)に存在し、前記一方の開口の方向に前記コイルシステムからある距離を越えた前記一次電磁場を打ち消し、前記一次電磁場が、前記他方の開口の側では本質的に減弱されない、金属探知機(20)。
[形態18]
形態12から17のいずれか一項に記載の金属探知機(20)において、前記第1の打ち消し手段および前記第2の打ち消し手段(26、27)のそれぞれが、前記エンクロージャ開口(30、31)の一方の縁部に接続されたまたはこれと一体となった金属製フランジまたはカラーを備え、前記フランジまたはカラーが、前記送信コイル(23)の前記一次電磁場によって電流が誘導される短絡コイルとして作用し、前記誘導電流が、前記第1の距離および前記第2の距離(d、e)を越えた前記送信コイルの前記一次場をゼロにする二次電磁場を生成することを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態19]
形態17または18のいずれか一項に記載の金属探知機(20)において、前記送信コイル(23)が、前記入口開口と前記出口開口(30、31)の中間位置に設置され、打ち消し手段を持たない前記開口の隣の前記受信コイルが、前記検査中の物体(2)内の金属混入物に対する前記コイルシステムの感度が最適化される第1の位置に設置され、前記打ち消し手段を持つ前記開口の隣の前記受信コイルが、前記検査中の物体内に存在する金属がないときに前記第1の電圧と前記第2の電圧が互いに打ち消し合う第2の位置に設置される、金属探知機(20)。
[形態20]
形態12から19のいずれか一項に記載の金属探知機(20)において、前記検出ゾーン(28)が、その長さ(z)にわたって前記入口開口(30)から前記出口開口(31)まで一定の断面プロファイルを備えたトンネルの形を有し、前記検出ゾーン(28)の前記断面プロファイルが方形、矩形、円形、または楕円形の形状である、金属探知機(20)。
[形態21]
形態20に記載の金属探知機(20)において、前記第1の受信コイルおよび前記第2の受信コイル(24、25)ならびに前記送信コイル(23)が、電気絶縁性非金属材料から作製されてその内部は前記検出ゾーン(28)の前記断面プロファイルと一致する中空管の形状をした共通巻き型(22)に巻き付けられることを特徴とする、金属探知機(20)。
[形態22]
形態1から21の少なくとも一項に記載の金属探知機(20)を備える包装ラインまたは生産ライン。
[形態23]
形態6から11または17から21のいずれか一項に記載の金属探知機(20)を備え、金属部品を含む包装装置ユニットまたは生産装置ユニット(11)が、前記金属探知機(20)と同一線上に配置され、前記入口開口と前記出口開口(30、31)の一方に隣接し、金属部品が、前記開口の他方の外側に延びる無金属ゾーン内に存在せず、前記1つの打ち消し手段(27)が、前記金属部品を含む前記装置ユニット(11)に最も近い前記開口に配置されることを特徴とする、包装ラインまたは生産ライン。
[形態24]
形態22または23に記載の包装ラインまたは生産ラインにおいて、前記金属探知機(20)が、前記検査中の物体の移動経路が前記金属探知機(20)を水平方向に通過するように配設され、前記移動経路が、好ましくは、コンベヤベルト(3)を備える、包装ラインまたは生産ライン。
[形態25]
形態22または23に記載の包装ラインまたは生産ラインにおいて、前記金属探知機(20)が、前記検査中の物体の移動経路が前記金属探知機(20)を垂直方向に通過するように配設される、包装ラインまたは生産ライン。
[形態26]
形態25に記載の包装ラインまたは生産ラインにおいて、前記移動経路がシュートを備え、前記シュートを通って前記検査中の物体が自由落下で動く、包装ラインまたは生産ライン。