(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象となる標的生体分子ならびに複数の細胞残屑および/またはコロイド状微粒子を含有する、化学的に軟凝集された供給材料の、深層ろ過による清澄化のための方法であって、
a)多孔質デプスフィルター媒体を有する深層ろ過装置を提供するステップであって、
前記多孔質デプスフィルター媒体は、第1不織繊維層、第2不織繊維層、第3不織繊維層、第4不織繊維層、第5不織繊維層および第6不織繊維層を有し、前記第1不織繊維層および第2不織繊維層は細孔径100ミクロンを有し、前記第3不織繊維層および第4不織繊維層は細孔径50ミクロンを有し、ならびに第5不織繊維層および第6不織繊維層は細孔径25ミクロンを有する、前記ステップ、
b)対象となる標的生体分子ならびに複数の細胞残屑および/またはコロイド状微粒子を含有する、化学的に軟凝集された供給材料を提供するステップ、
c)多孔質デプスフィルター媒体と化学的に軟凝集された供給材料とを接触させるステップ、ならびに
d)対象となる標的生体分子を、化学的に軟凝集された供給材料中の細胞残屑およびコロイド状微粒子から分離するステップ、
を含む方法。
供給材料が、バイオリアクター中に配置された細胞培養物供給材料であり、ポリマー又は酸の添加後、バイオリアクターから深層ろ過装置に、一次清澄化処理のために直接添加される、請求項1に記載の方法。
供給材料が、トランスジェニック哺乳動物培養物、細菌細胞培養物、非トランスジェニック哺乳動物培養物、組織培養物、微生物発酵バッチ、植物抽出物、生物燃料、海水培養物、淡水培養物、排水培養物、下水処理水、下水未処理水、ミルク培養物、血液培養物およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
細胞培養物供給材料が、バイオリアクター中に配置されており、バイオリアクターから深層ろ過装置に、一次清澄化処理のために直接添加される、請求項14に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
モノクローナル抗体(mAb)などのタンパク質を含む医薬品グレードの生体分子の製造は、患者のための高品質製品を生産するために設計された、多層ろ過、遠心分離およびクロマトグラフィーの技術を備えた複合製造方法である。細胞培養回収物および高固形分供給原料の清澄化は、近代化生産のバッチ式バイオリアクター(≦25,000L)による回収物の大容量、および多くの場合クロマトグラフィー操作の前に一次および二次清澄化を必要とする高細胞密度により、骨の折れる仕事となり得る。従って、哺乳動物細胞およびmAbなどの細胞培養回収物および高固形分供給原料の生産方法に関する回収および清澄化スキームは、この20年あまりにわたって実施された大きな進化および評価の産物である。
【0004】
哺乳動物細胞培養物およびmAbの回収技術は、高収率(>95%)および最小の細胞破壊での操作が現在日常的に期待される。生成物分子の力価が増加する場合、細胞集団が多く、生成物の量が多くなるほど、下流の精製ステップに対する課題が生じる。細胞密度が高くなると、清澄化および除菌ろ過に困難をもたらす。生成物濃度が高くなると、一般に不純物負荷の増加およびより大きなクロマトグラフィー設備の必要をもたらす。従って、効率および処理能力の増加の形での改良が、大いに求められている。
【0005】
治療用mAbの要求および成長の増加により、工業的治療用モノクローナル抗体の生産に関する製品の生産増加、品質、方法効率および費用対効果に対する取り組みが刺激されてきた。過去十年に、生産、上流の細胞培養生成物の力価ならびに不純物および混入物質の特徴付けの技術的発展における著しい成長が目撃されてきた。
【0006】
mAbおよび哺乳動物細胞培養物の供給原料を含有するような高固形分供給材料を含む、供給材料、供給流、供給原料、細胞培養ブロスなどの一次清澄化により、大量のバイオマス、特に細胞全体および他のより大きな細胞残屑が除去され、次いで、より小さなコロイド状微粒子および下流のフィルターの能力を損なう他の粒子を除去する二次清澄化が続く。遠心分離は、通常mAbおよび哺乳動物細胞培養ブロスおよび供給原料の生産方法における通常の一次清澄化ステップである。
【0007】
mAbの製造業者は、多大な時間および尽力を費やし、供給原料の生成物力価を増加させる。しかし、高力価は細胞培養物の生産性を増加する一方で、大量のバイオマスおよび細胞残屑含有量を含む供給原料もまた生産する。このような大量のバイオマスおよび細胞残屑を含有する供給材料は、遠心分離後に高濁度の遠心分離液を生産する可能性がある。高濁度の遠心分離液は、多くの場合、遠心分離の下流で使用される二次清澄化デプスフィルターおよびこの後の除菌フィルターの処理能力を低下させる。処理能力の低下は、フィルターの目詰まりおよび長い方法遅延による、方法費用の増加から方法手順の逸脱にまで及ぶ幅広い問題を引き起こす。最終的に、遠心分離を使用する一次清澄化の必要性は、バッチと治療用分子種との間の相互汚染の危険性を低下させるために試みる、大がかりな、工程間の検証された洗浄手順を要求する。
【0008】
これは、比較的短時間に複数製品を処理することが望ましい、パイロット規模または臨床規模のバイオ治療薬の生産において特に問題がある。遠心分離洗浄手順は、異なる生体分子の生産に転換するパイロットプラントの能力を減速させ、生産工程の間の相互汚染の危険性を大いに増加させる。加えて、遠心分離は、これらの供給原料からすべての微粒子および細胞残屑を一次清澄化ステップにおいて有効に除去することができず、従って、深層ろ過を利用する二次清澄化ステップが、遠心分離ステップの後と、後続のクロマトグラフィーステップの前との間に必要である。
【0009】
代替的には、多段階ろ過工程は、供給原料から異なるサイズの細胞および細胞残屑を除去することに有用であることが証明されているが、通常、フィルター設備が妥当なサイズを有する場合、体積的処理能力がより小さい体積(<1000L)への適用を限定する。ろ過の使用は、相互汚染の危険性を大きく低下させ、ろ過装置の使い捨て特性により、工程間の洗浄および洗浄バリデーションの必要を取り除く。残念ながら、処理能力が低いと多数のフィルターユニットが必要となり、各段階的ステップにおいて、フィルター装置および設備のホールドアップ体積のため供給材料溶液の一部分が喪失されるので、ろ過の収率が低下し得る。
【0010】
清澄化性能、処理能力および下流のろ過操作をさらに強化するために、細胞培養回収物の軟凝集が使用されてきた。凝集剤は、溶液から微細粒子を凝結および凝集させ、液相からこれらの沈降をもたらし、溶液の濁度を低下させることができる、ある種の材料である。
【0011】
軟凝集は、ポリマー処理、化学的処理(pH変化)または界面活性剤の添加を含むさまざまな方法で達成することができる。凝集剤を使用する沈殿は、溶液中のタンパク質産物を残しながら不純物を選択的に除去するために使用することができる。しかし、凝集剤は、mAb、哺乳動物細胞および対象となる供給原料の他の二分子細胞材料の清澄化にはあまり使用されていない。
【0012】
化学薬品による細胞培養回収物の軟凝集は、酢酸などの酸またはキトサン、多糖類、ポリアミンもしくはポリアクリルアミドなどのポリマーのいずれかの使用が必要である。軟凝集は、代替の分離技術として使用され、遠心分離の清澄化処理能力および遠心分離液の品質を強化し、これによって下流のろ過操作を改良する。一方、化学的軟凝集は、細胞残屑および細胞混入物質(宿主細胞のタンパク質およびDNA)の凝集に極めて有効であり、得られた軟凝集懸濁液は、一般に、ろ過前に遠心分離を使用しなければ、普通のろ過方法では容易に分離することができない。
【0013】
凝集剤は、タンパク質の電荷とポリマー(例えばポリマー電解質)の電荷との相互作用のため、細胞、細胞残屑およびタンパク質を沈殿させ、不溶性複合体を作り出し、続いて残留電荷の相互作用によるか、または複合体の疎水性パッチを介するかのいずれかにより不溶性複合体を架橋し、より大きなクラスタを形成する。これらの大型のクラスタを除去するために、遠心分離ステップまたはタンジェンシャルフロー精密ろ過が、清澄化の一次モードであり、この後に、捕捉クロマトグラフィーステップの前の細胞培養ブロスの清澄化に広く使用される二次清澄化ステップが続く。遠心分離は無粒子遠心分離液を供給できないので、デプスフィルター(二次深層ろ過)および除菌フィルターが、さらに下流に組み込まれていることが必要である。
【0014】
タンジェンシャルフロー精密ろ過(クロスフロー精密ろ過とも呼ばれる)は、哺乳動物細胞培養由来のmAbおよび治療用生成物の回収および清澄化に関して、遠心分離と競合する。この技術の提供の1つの有利性は、追加のろ過の必要性が最小である、無粒子回収流を作り出すことである。しかし、細胞培養回収物に使用するタンジェンシャルフロー精密ろ過膜は、多くの場合、膜ファウリングの問題(即ち、膜透過流束の回復不能な低落)に悩まされ、通常、厳密な複合運転条件およびこの後の使用毎の(遠心分離の場合と同様)膜の徹底的な洗浄計画を必要とする。最適化された膜化学およびより親水性のタンジェンシャルフロー精密ろ過膜の使用により、一般に著しいファウリングの発生が幾分少なくなり、この問題に対処することになる。
【0015】
伝統的に、軟凝集は、変形不能な固体粒子を凝集するために一般に使用される。例えば、これらの粒径の小ささのためろ過が非常に困難である、サブミクロンサイズの粘土または二酸化チタン粒子の希釈懸濁液は、化学的に軟凝集され、これらのサブミクロン粒径のサイズが、凝集されたフロックの形成により大幅に増大し、より迅速に沈降し、この結果ケーキ内の流路が大きくなるためろ過が早くなることにより、容易に分離することができる。
【0016】
しかし、化学的軟凝集を、mAb供給原料または他の生体分子/細胞性供給原料に適用した場合、得られた凝集体は独特であり、これらの二分子材料の生物学的特性の性質のため、土質材料および金属酸化物の変形不能な固体粒子とはかけ離れている。土質材料または金属酸化物などの大部分の固体変形不能粒子は水よりはるかに大きな密度を有する。従って、これらの小粒子がひとたび軟凝集すると、これらの粒径は大幅に増大し、得られたフロックは重力により迅速に(即ち数分で)沈降する。対照的に、細胞、mAbおよび他の生体分子種は、アミノ酸と水とで作られており、水の密度に非常に近い密度を有する。従って、軟凝集された細胞および他の生体分子は容易には沈降せず、多くの場合沈降が起こる前に数時間はかかる。
【0017】
別の問題は、軟凝集された細胞集団の比較的小さい密度であり、これは通常供給材料体積のかなりの部分を占める綿毛状の集団を形成し、圧縮されたケーキは形成しない。さらに、粒子の生物学的起源のため、フロックは壊れやすく、圧力下で容易に破壊される傾向がある。
【0018】
このような理由で、既存の固体−液体分離法の大部分は、固体粒子系では有用であっても、mAb供給原料などの軟凝集された細胞集団においては有用とは言えない。
【0019】
粒子保持は、サイズ排除および疎水性、イオン性および他の相互作用を介する吸着の両方を伴うと考えられる。ファウリングの機序は、細孔の閉塞、ケーキ形成および/または細孔の収縮を含むと思われる。デプスフィルターは混入物質の除去において非常に有効であり、使い捨てフォーマットとして供給されているので、これによって、再使用可能なハードウェア設備に関する検証および混入問題、例えば遠心分離を使用する場合に遭遇する検証および混入問題を排除するため、有利である。しかし、デプスフィルターは現在、高力価mAbの処理に特有である高固形分供給流に対処することができず、従ってデプスフィルターは遠心分離後に使用されている。非清澄化細胞培養物上清中に存在する微粒子高負荷および高濁度が、深層ろ過単独による一次清澄化に課題を与えている。
【0020】
しかし、デプスフィルターは現在、高固形分供給流の一次清澄化に対処することができず、多くの場合、遠心分離またはタンジェンシャルフロー精密ろ過の後に使用しなければならない。非清澄化細胞培養物上清中に存在する微粒子高負荷および高濁度が、深層ろ過単独による一次清澄化に課題を与えている。現在、限定された処理能力が、一次清澄化用デプスフィルターの大型設備をもたらし、この大型設備は、上記のように、大量のホールドアップ体積およびスケールアップ問題により収率の低下をもたらす。
【0021】
加えて、mAb供給原料は、高いバイオマス含有量の存在のため清澄化およびろ過に難易度の高い供給流であり、遠心分離後に高濁度の遠心分離液をもたらす。大量のバイオマスの除去が必要なため、高濁度の遠心分離液が清澄化の下流のデプスフィルターの寿命を短縮する。mAbの清澄化を改良し、これによって処理能力の向上をもたらす必要性が存在する。
【0022】
一次清澄化の遠心分離ステップまたは一次清澄化精密ろ過ステップ、この後の大粒子を除去する深層ろ過媒体に依存する二次清澄化ステップの使用に依存する上記の一次清澄化工程を考慮すると、使い捨てで、合理的信頼性があり、実施が過度に高価でない、一次清澄化の遠心分離または精密ろ過ステップおよびこの後の追加の二次清澄化ステップを使用しない、一次清澄化方法の必要性が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書に引用されたすべての公報、特許および特許出願は、上記のものも下記のものも、個々の公報、特許および特許出願が具体的および個別に参照により本発明に組み込まれることが示された場合と同じ程度で、参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0043】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的に関して、特に明記しない限り、原料の量、材料の百分率および割合、反応条件を表すすべての数字ならびに本明細書および特許請求の範囲に使用される他の数値は、明白に示してあろうとなかろうと、「約」という用語により、すべての事例において修飾されていると解釈すべきである。「約」という用語は、概して、列挙された値と同等(即ち、同じ機能または結果を有する)と考えられる数値範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字を四捨五入した数字を含んでよい。
【0044】
従って、逆のことが示されていない限り、以下の明細書および付属の特許請求の範囲において説明される数値パラメーターは、本発明により得られることが探求されている所望の特性に依存して変動し得る近似値である。最低限でも、特許請求の範囲と同等の教義の適用を限定する試みはなく、個々の数値パラメーターは、報告された有効数字の数を考慮し、普通の四捨五入技術を用いることにより、少なくとも解釈されるべきである。
【0045】
本発明の広い範囲を説明する数値範囲およびパラメーターが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において説明された数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、任意の数値は、これら各自の測定試験において見出される標準偏差から必然的にもたらされる、特定の誤差を本質的に含有する。さらに、本明細書に開示されるすべての範囲は、この中に包摂されるすべての部分範囲を包含すると解釈されるべきである。例えば、「1から10」という範囲は、最小値の1および最大値の10の間の(およびこれらを含む)任意およびすべての部分範囲、即ち、1と同等またはこれを超える最小値および10と同等またはこれより小さい最大値を有する、任意およびすべての部分範囲、例えば5.5から10を含む。
【0046】
本発明をさらに詳細に説明する前に、幾つかの用語を定義する。これらの用語の使用は本発明の範囲を限定するものではなく、単に、本発明の説明を容易にするために機能するものである。
【0047】
特に定義されない限り、本明細書において使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が関係する分野の当業者により普通に理解されるものと同じ意味を有する。下記の用語を、本明細書に記載の本発明の目的のために定義する。
【0048】
本明細書において使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他のことを示していない限り、複数の指示対象を含む。
【0049】
「バイオリアクター」という用語は、本明細書において使用する場合、生物学的活性環境を支持する、製造もしくは設計された任意の装置または系を指す。ある場合には、バイオリアクターは、生物またはこのような生物に由来する生物学的活性物質を伴う、細胞培養工程を実施する槽である。このような方法は、好気的または嫌気的のいずれであってもよい。一般的に使用されるバイオリアクターは、通常円筒形であり、数リットルから数立方メートルのサイズであり、多くの場合ステンレス鋼で作られている。本明細書に記載の幾つかの実施形態において、バイオリアクターは鋼鉄以外の材料で作られており、使い捨てまたは単回使用である。バイオリアクターの総体積は、個々の方法に依存して、100mlから最大10,000リットル以上の範囲の任意の体積であってよいことが企図される。本明細書に記載の工程および系に従った幾つかの実施形態において、バイオリアクターは、デプスフィルターなどの単位操作に連結される。本明細書に記載の幾つかの実施形態において、バイオリアクターは、細胞培養および沈殿両方のために使用され、沈殿剤は、直接バイオリアクターに加えることができ、これによって1種または複数種の不純物が沈殿される。
【0050】
「細胞培養物」という用語は、懸濁液、ローラーボトル、フラスコなどにおいて成長した細胞、ならびに限定するものではないが、細胞、細胞残屑、細胞性混入物、コロイド粒子、生体分子、HCP、宿主細胞タンパク質(HCP)およびDNA、mAb、凝集剤を含む、懸濁液これ自体の成分を指す。撹拌発酵装置中のマイクロキャリアに結合して増殖する付着細胞を含むバイオリアクターなどの大規模な取り組みもまた、「細胞培養物」という用語に包含される。さらに、接触依存性細胞の培養だけでなく、特許請求する発明の方法の懸濁液培養技術の使用も可能である。例示的マイクロキャリアは、例えば、デキストラン、コラーゲン、プラスチック、ゼラチンおよびセルロースならびにButler,Spier&Griffiths,Animal cell Biotechnology 3:283−303(1988)に記載の他の物を含む。多孔質キャリア、例えば、Cytoline.RTM.またはCytopore.RTM.ならびにデキストラン系キャリア、例えばDEAE−デキストラン(Cytodex1.RTM.)、第4級アミンコーティングデキストラン(Cytodex2.RTM.)またはゼラチン系キャリア、例えば、ゼラチンコーティングデキストラン(Cytodex3.RTM.)もまた使用可能である。タンパク質の大規模生産および小規模生産の両方に関する細胞培養手順は、本発明に包含される。限定するものではないが、流動床バイオリアクター、中空糸バイオリアクター、ローラーボトル培養または撹拌タンクバイオリアクター系を含む手順が、マイクロキャリアを有しても、または有さなくても使用でき、バッチ、フェドバッチまたは潅流モードで代替的に操作可能である。
【0051】
「細胞培養培地」および「培養培地」という用語は、動物細胞、例えば哺乳動物細胞の成長に使用される栄養溶液を指す。このような栄養溶液は一般に、細胞の接着、成長および細胞環境の維持に必要なさまざまな要素を含む。例えば、典型的な栄養溶液は、基礎培地製剤、細胞タイプに依存したさまざまな栄養補助剤および時として抗生物質を含んでよい。幾つかの実施形態において、栄養溶液は、以下のカテゴリーのうちの1または複数から少なくとも1種の成分を含むことができる:1)エネルギー源、普通はグルコースなどの炭水化物の形態、2)全必須アミノ酸および普通は20種のアミノ酸の基本セット+システイン、3)ビタミンおよび/または低濃度で必要とされる他の有機化合物、4)遊離脂肪酸、および5)微量元素、微量元素は通常非常に低濃度、普通はマイクロモル範囲で必要とされる無機化合物または天然元素として定義される。該栄養溶液は多くの場合、以下のカテゴリーのうちのいずれかから1種または複数種を添加されてもよい:1)ホルモンおよび他の成長因子、例えば、インスリン、トランスフェリンおよび表皮成長因子、2)塩およびバッファー、例えば、カルシウム、マグネシウムおよびホスフェート、3)ヌクレオシドおよび塩基、例えば、アデノシンおよびチミジン、ヒポキサンチン、ならびに4)タンパク質および組織加水分解物。概して、任意の適切な細胞培養培地が使用可能である。培地は、血清、例えばウシ胎児血清、仔牛血清などを含んでもよい。代替的には、培地は無血清、無動物質または無タンパク質であってもよい。
【0052】
「細胞培養添加物」という用語は、本明細書において使用する場合、細胞培養または発酵の方法を容易にする、または改良するために細胞培養方法に加えられる分子(例えば非タンパク質添加物)を指す。本発明に従った幾つかの実施形態において、本明細書に記載の刺激応答性ポリマーは、1種または複数種の細胞培養添加物と結合し、沈殿させる。例示的細胞培養添加物は、消泡剤、抗生物質、染料および栄養を含む。
【0053】
「チャイニーズハムスター卵巣細胞タンパク質」および「CHOP」という用語は、本明細書において互換的に使用され、チャイニーズハムスターの卵巣(「CHO」)細胞培養物由来の宿主細胞タンパク質(「HCP」)の混合物を指す。HCPまたはCHOPは一般に、細胞培養培地または溶解物(例えば、対象となるタンパク質およびポリペプチド(例えば、CHO細胞において発現された抗体またはイムノアドヘシン)を含有する、回収された細胞培養液)中の不純物として存在する。概して、対象となるタンパク質を含む混合物中に存在するCHOPの量は、対象となるタンパク質の純度の尺度を提供する。通常、タンパク質混合物中のCHOPの量は、混合物中の対象となるタンパク質の量に対して百万分率で表される。宿主細胞が別の哺乳動物細胞型、E.coli、酵母細胞、昆虫細胞または植物細胞である場合、HCPは、宿主細胞の溶解物中に見出される、標的タンパク質以外のタンパク質を指すと理解されるべきである。
【0054】
「混入物質」、「不純物」および「残屑」という用語は、本明細書において互換的に使用され、任意の外来性または不都合な材料を指し、これらは、DNA、RNAなどの生物学的巨大分子、1種または複数種の宿主細胞タンパク質(HCPまたはCHOP)、エンドトキシン、ウイルス、脂質および1種または複数種の添加物を含み、対象となるタンパク質もしくはポリペプチド(例えば抗体)を含有する試料中に存在する可能性があり、該対象となるタンパク質もしくはポリペプチド(例えば抗体)は、本発明に従った刺激応答性ポリマーを使用して、1種または複数種の外来性もしくは不都合な分子から分離される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載の刺激応答性ポリマーは、対象となるタンパク質またはポリペプチドおよび1種または複数種の不純物を含有する試料から、対象となるタンパク質またはポリペプチドと結合しこれを沈殿させる。他の実施形態において、本明細書に記載の刺激応答性ポリマーは、1種または複数種の不純物を結合し、これを沈殿させ、これによって、対象となるポリペプチドまたはタンパク質を1種または複数種の不純物から分離する。
【0055】
「サージタンク」という用語は、本明細書において使用する場合、任意の容器または槽またはバッグを指し、これは、方法ステップの間または方法ステップ内(例えば、単一の方法が複数のステップを含む場合)で使用され、1つのステップの流出が、サージタンクを介して次のステップに流入する。従って、サージタンクは、ステップからの流出の全量を保持または収集する意図のものではないという点でプールタンクとは異なり、代わりに、1つのステップの流出から次への連続流入を可能にする。幾つかの実施形態において、本明細書に記載の方法または系において、2つの方法ステップの間または1つの方法ステップ内で使用されるサージタンクの体積は、方法ステップから流出する全体積の25%以下である。別の実施形態において、サージタンクの体積は、方法ステップから流出する全体積の10%以下である。幾つかの他の実施形態において、サージタンクの体積は、バイオリアクター中の細胞培養物の全体積の35%未満、または30%未満、または25%未満、または20%未満、または15%未満、または10%未満であり、これらは、標的分子が精製される出発材料を構成する。
【0056】
「静的ミキサー」という用語は、2種の流体材料、通常液体を混合する装置を指す。該装置は一般に、円筒形(管)のハウジングに含有されたミキサー要素からなる。系全体の設計は、流体の2つの流れを静的ミキサーに送達する方法を組み込んでいる。流れはミキサーの中を移動するので、非移動要素が材料を連続してブレンドする。完全な混合は、流体特性、管の内径、ミキサー要素の数およびこれらの設計などを含む、多数の変数に依存する。
【0057】
本明細書において使用する場合、「デプスフィルター」(例えば、勾配−密度デプスフィルター)という用語は、フィルター材料の深層の内部でろ過を達成する。このようなフィルターの一般的なクラスは、流路の複雑な蛇行迷路を形成するように結合された(または固定された)繊維のランダムなマトリックスを含むフィルターである。これらのフィルターにおける粒子の分離は、一般的に、繊維マトリックスによる取り込みまたは繊維マトリックスへの吸着からもたらされる。細胞培養ブロスおよび他の供給原料の生物学的処理に最も頻繁に使用されるデプスフィルター媒体は、セルロース繊維、DEなどのろ過助剤および正に帯電した樹脂粘結剤からなる。アブソリュートフィルターとは異なり、デプスフィルター媒体は、多孔質媒体の間に粒子を保持し、細孔径より大きい粒子および小さい粒子の両方を保持することができる。粒子保持は、サイズ排除および疎水性、イオン性または他の相互作用を介した吸着の両方を伴うと考えられている。ファウリングの機序は、細孔の閉塞、ケーキ形成および/または細孔の収縮を含むと思われる。デプスフィルターは混入物質を除去し、さらに使い捨てフォーマットとして供給され、これによって、検証の問題を排除するため、有利である。
【0058】
「アフィニティクロマトグラフィーマトリックス」という用語は、本明細書において使用する場合、アフィニティクロマトグラフィーに適切なリガンドを担持するクロマトグラフィーマトリックスを指す。通常このリガンド(例えば、プロテインAまたはこれらの機能性の変異体もしくは断片)は、クロマトグラフィーマトリックス材料に共有結合しており、溶液はクロマトグラフィーマトリックスと接触しているので、溶液中の標的分子に到達可能である。アフィニティクロマトグラフィーマトリックスの一例は、プロテインAマトリックスである。アフィニティクロマトグラフィーマトリックスは通常、鍵/鍵穴機構、例えば、抗原/抗体または酵素/受容体の結合に基づく高い特異性で標的分子と結合する。アフィニティマトリックスの例は、プロテインAリガンドを担持するマトリックス、例えば、PROTEIN A SEPHAROSE(商標)またはPROSEP(登録商標)−Aである。本明細書に記載の方法および系において、アフィニティクロマトグラフィーステップは、精製方法全体において、結合および溶出のクロマトグラフィーステップとして使用することができる。
【0059】
「イオン交換」または「イオン交換クロマトグラフィー」という用語は、本明細書において使用する場合、混合物中の対象となる溶質または分析物(例えば、精製される標的分子)が、固相イオン交換材料に(例えば共有結合により)連結された帯電化合物と相互作用し、対象となる溶質または分析物が、混合物中の溶質不純物または混入物質より多くまたは少なく、帯電化合物と非特異的に相互作用する、クロマトグラフィー方法を指す。混合物中の混入溶質は、対象となる溶質より速くもしくは遅く、イオン交換材料のカラムから溶出され、または対象となる溶質に対する樹脂に結合され、もしくは樹脂から排除される。
【0060】
「イオン交換クロマトグラフィー」は、陽イオン交換、陰イオン交換および混合モードのイオン交換クロマトグラフィーを特に含む。例えば、陽イオン交換クロマトグラフィーは、標的分子(例えば、標的タンパク質を含有するFc領域)と結合し、この後(例えば陽イオン交換結合および溶出クロマトグラフィーまたは「CIEX」を使用して)溶出することができ、または標的分子がカラム(陽イオン交換フロースルークロマトグラフィーFT−CIEX)を「フロースルー」しながら、不純物を優勢に結合できる。陰イオン交換クロマトグラフィーは、標的分子(例えば、標的タンパク質を含有するFc領域)を結合し、この後溶出することができ、または標的分子がカラムを「フロースルー」しながら、不純物を優勢に結合でき、ネガティブクロマトグラフィーとも称される。幾つかの実施形態において、および本明細書に説明した実施例に明示したように、陰イオン交換クロマトグラフィーステップは、フロースルーモードで実施する。
【0061】
「イオン交換マトリックス」という用語は、負に帯電した(即ち、陽イオン交換媒体)または正に帯電した(即ち、陰イオン交換媒体)マトリックスを指す。電荷は、1または複数の帯電リガンドがマトリックスに、例えば共有結合により結合することによって提供され得る。代替的もしくは付加的には、電荷は、マトリックスの固有の性質(例えば、シリカの場合のように、全体が負の電荷を有する)であってもよい。
【0062】
「陰イオン交換マトリックス」という用語は、正に帯電したマトリックス、例えば、第4級アミノ基などの1または複数の正に帯電したリガンドを有するマトリックスを指すように使用される。市販の陰イオン交換樹脂は、DEAEセルロース、QAE SEPHADEX(商標)およびFAST Q SEPHAROSE(商標)(GE Healthcare)を含む。本明細書に記載の方法および系に使用可能な他の例示的材料は、Fractogel(登録商標)EMD TMAE、Fractogel(登録商標)EMD TMAE highcap、Eshmuno(登録商標)QおよびFractogel(登録商標)EMD DEAE(EMD Millipore)である。
【0063】
「陽イオン交換マトリックス」という用語は、負に帯電し、マトリックスの固相に接触した水溶液中の陽イオンと交換するための遊離の陽イオンを有するマトリックスを指す。陽イオン交換マトリックスまたは樹脂を形成するために固相と結合した、負に帯電したリガンドは、カルボキシレートまたはスルホネートであってよい。一般に利用可能な陽イオン交換マトリックスは、カルボキシメチルセルロース、スルホプロピル(SP)固定アガロース(例えば、SP−SEPHAROSE FAST FLOW(商標)またはSP−SEPHAROSE HIGH PERFORMANCE(商標)、GE Healthcare製)およびスルホニル固定アガロース(例えば、S−SEPHAROSE FAST FLOW(商標)、GE Healthcare製)を含む。Fractogel(登録商標)EMD SO
3、Fractogel(登録商標)EMD SE Highcap、Eshmuno(登録商標)SおよびFractogel(登録商標)EMD COO(EMD Millipore)が好ましい。
【0064】
「不純物」または「混入物質」という用語は、本明細書において使用する場合、任意の外来性または不都合な分子を指し、これらは、DNA、RNAなどの生物学的巨大分子、1種または複数種の宿主細胞タンパク質、エンドトキシン、脂質および1種または複数種の添加物を含み、標的分子を含有する試料中に存在する可能性があり、該標的分子は本発明の方法を使用して、外来性または不都合な分子の1種または複数種から分離される。さらに、このような不純物は、本発明の方法の前に起こり得るステップに使用される任意の試薬も含み得る。不純物は、本質的に可溶性であっても、または不溶性であってもよい。
【0065】
「不溶性不純物」という用語は、本明細書において使用する場合、標的分子を含有する試料中に存在する、任意の望ましくない、または不都合な実体を指し、この場合この実態は、懸濁粒子または固形分である。例示的不溶性不純物は、細胞全体、細胞断片および細胞残屑を含む。
【0066】
「可溶性不純物」という用語は、本明細書において使用する場合、標的分子を含有する試料中に存在する、任意の望ましくない、または不都合な実体を指し、この場合この実態は、不溶性不純物ではない。例示的可溶性不純物は、宿主細胞タンパク質(HCP)、DNA、RNA、ウイルス、エンドトキシン、細胞培養培地成分、脂質などを含む。
【0067】
「連続法」という用語は、本明細書において使用する場合、方法中の1つの方法ステップからの流出が、中断することなく次の方法ステップに直接流入し、2以上の方法ステップが、これらの継続期間の少なくとも一部分に関して同時に実施できるような2以上のステップ(または単位操作)を含む、標的分子の精製方法を指す。言い換えれば、本明細書に記載の連続法の場合、1つの方法ステップが、次の方法ステップが開始される前に完了している必要はなく、試料の一部分は常に方法ステップの間で移動している。「連続法」という用語はまた、方法ステップ内のステップにも適用され、この場合、複数ステップを含む方法ステップの実施中、試料は、方法ステップの実施が必要とされる複数のステップを介して連続して流入している。本明細書に記載のこのような方法ステップの一例は、フロースルー精製ステップであり、これは、連続様式(例えばフロースルー活性炭、続いてフロースルーAEX媒体、続いてフロースルーCEX媒体、続いてウイルスろ過)で実施される、複数ステップを含む。
【0068】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載のデプスフィルターは清澄化に使用され、この後、清澄化細胞培養物は、精製方法の次のステップ、例えば結合および溶出クロマトグラフィーステップ(例えばプロテインAアフィニティクロマトグラフィー)に、連続して流入することができる。
【0069】
「半連続法」という用語は、本明細書において使用する場合、任意の単一方法ステップにおける流体材料の投入または流出が、不連続または断続的である、標的分子精製のための一般的連続方法を指す。例えば、本発明に従った幾つかの実施形態において、方法ステップ(例えば結合および溶出クロマトグラフィーステップ)における投入は、連続して添加されてよいが、流出は断続的に収集されてよく、精製方法の他の方法ステップは連続している。従って、幾つかの実施形態において、本明細書に記載の方法および系は、断続的様式で操作される少なくとも1つの単位操作を含み、一方で該方法または系の他の操作単位は連続様式で操作されてもよいという点で、本質的に「半連続」である。
【0070】
「連結された方法」という用語は、2以上の方法ステップ(または単位操作)を含み、流体材料が、該方法の方法ステップを介して連続して流入するように、相互に直接流体連通にあり、該方法の正常な操作の間に2以上の方法ステップが同時に連絡する、標的分子の精製方法を指す。時として、該方法の少なくとも1つの方法ステップが、閉位置のバルブなどの障壁により、他の方法ステップから一時的に孤立してもよいことは理解されるべきである。個々の方法ステップのこの一時的孤立は、例えば該方法の始動もしくは停止の間または個々の単位操作の除去/取り換えの間に必要となることがある。「連結された方法」という用語は、例えば、方法ステップが、該方法ステップの意図した結果を達成するために実施すべき幾つかのステップを必要とする場合、方法ステップ内のステップにも適用される。このような一例は、本明細書に記載のフロースルー精製方法ステップであり、これは、フロースルーモードで実施される幾つかのステップ、例えば、活性炭、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーおよびウイルスろ過を含むことができる。
【0071】
「流体連通」という用語は、本明細書において使用する場合、方法ステップが、任意の適切な手段(例えば、連結ラインまたはサージタンク)により連結され、これによって1つの方法ステップから別の方法ステップへの流体の流入が可能になる、2つの方法ステップの間の流体材料の流入、または方法ステップ中のステップの間の流体材料の流入を指す。幾つかの実施形態において、2つの単位操作の間の連結ラインは、1または複数のバルブにより中断され、連結ラインの間の流体の流入を制御することができる。
【0072】
「精製すること(purifying)」、「精製(purification)」、「分離する(separate)」、「分離すること(separating)」、「分離する(separation)」、「単離する(isolate)」、「単離すること(isolating)」、「単離(isolation)」という用語は、本明細書において使用する場合、標的分子および1種または複数種の不純物を含む試料から標的分子の純度を増加させることを指す。通常、標的分子の純度は、少なくとも1種の不純物を試料から(完全にまたは部分的に)除去することによって増加させる。
【0073】
「沈殿させる(precipitate)」、「沈殿させること(precipitating)」または「沈殿(precipitation)」という用語は、本明細書において使用する場合、望ましくない不純物の特性を、可溶性標的分子からより容易に分離可能なように改良する、清澄化に使用される方法を指す。これは通常、望ましくない不純物の大型の凝結粒子および/または不溶性複合体を形成するステップを伴う。これらの粒子は、可溶性標的分子を含有する液相から、例えばろ過または遠心分離により、より容易に分離可能な特性(例えば密度またはサイズ)を有する。幾つかの場合において、望ましくない不純物が可溶性標的分子からより容易に分離可能なように、相変化が生じる。相変化による沈殿は、ポリマーまたは小分子などの沈殿剤の添加によりもたらすことができる。特定の実施形態において、沈殿は刺激応答性ポリマーであり、スマートポリマーとも称される。本明細書に記載の幾つかの実施形態において、沈殿剤(precipitantまたはprecipitating agent)は、凝集剤である。軟凝集は、本明細書において使用する場合、沈殿を実施する1つの方法であり、性能は通所使用する凝集剤の濃度に依存する(「用量依存性」)。通常、凝集剤は、反対に帯電した不純物と複合体を形成する、ポリ陽イオンなどのポリマー電解質である。
【0074】
本明細書に記載の幾つかの実施形態において、清澄化は、標的分子および1種または複数種の不純物を含有する試料への沈殿剤の添加ならびにこの後の深層ろ過を用いる。刺激応答性ポリマーの場合などの幾つかの場合において、溶液条件(温度、pH、塩度など)の変化が、沈殿を開始するために使用できる。1種または複数種の不純物および沈殿剤を含有する沈殿材料を除去し、これによって、液相中の標的分子を回収し、通常液体をこの後、標的分子をさらに精製するためにさらなる方法ステップに供する。
【0075】
沈殿は、精製される標的分子を発現する細胞培養物を含有するバイオリアクターにおいて直接実施することが可能であり、沈殿剤を直接バイオリアクターに添加する。代替的には、沈殿剤を、通常標的分子を含有する細胞培養物に、別の槽において加える。
【0076】
沈殿材料を除去する、当業者に公知の多数の方法、例えばろ過または沈降またはこれらの任意の組み合わせが存在する。
【0077】
「沈降させること(settling)」という用語は、本明細書において使用する場合、沈殿材料が、重力の影響下で槽の底に移動する、沈降方法を指す。沈降は、この後、液相または上清のデカントまたはろ過することができる。
【0078】
本明細書において使用する場合、「スマートポリマー」(SmP)(刺激応答性ポリマーまたはインテリジェントポリマーまたはAffinity Macro Ligands(AML)とも称される)という用語は、本明細書において使用する場合、外的刺激、例えば、pH,温度、光、イオン強度、放射線、電圧、外圧、溶媒組成または他の刺激のような環境条件における変化に対して、生物学的、化学的または物理的に応答性である、ポリマーの群を意味する。スマートポリマーは、わずかな物理的または化学的刺激に応答して特性が大きく変化し、これらの物理的または化学的特性を、これらの環境的刺激に対して、可逆的に変化させることができる(Roy and Gupta,2003;Kopecek,2007)。スマートポリマーは、多くの形態をとることができ、水溶液に溶解することができ、水−固体界面に吸着またはグラフトでき、または架橋してヒドロゲルを形成することもできる[Hoffman J Controlled Release(1987)6:297−305;Hoffman Intelligent polymers.In:Park K,ed.Controlled drug delivery.Washington:ACS Publications,(1997)485−98;Hoffman Intelligent polymers in medicine and biotechnology.Artif Organs(1995)19:458−467]。通常、ポリマーの限界応答が刺激された場合、溶液中のスマートポリマーは、相分離したような濁度の突然の発生を示し、表面に吸着またはグラフトされたスマートポリマーは崩壊し、界面は親水性から疎水性に変換し、(ヒドロゲルの形態で架橋された)スマートポリマーは急な崩壊を示し、膨張溶液の大部分が放出される。スマートポリマーは、生体分子と物理的に混合または化学的にコンジュゲートされ、生物学的刺激ならびに物理的および化学的刺激に応答可能な、ポリマー−生体分子系の大型のファミリーを得ることができる。ポリマーとコンジュゲート可能な生体分子は、タンパク質およびオリゴペプチド、糖および多糖類、一本鎖および二本鎖のオリゴヌクレオチドおよびDNAプラスミド、単純脂質およびリン脂質ならびに広範囲の認識リガンドおよび合成薬物分子を含む。多数の構造パラメーターが、対象となるタンパク質を特異的に沈殿させるスマートポリマーの能力を制御し、スマートポリマーは、リガンドのカップリングのための反応基を含有しなければならず、不純物と強く相互作用してはならず、リガンドを標的タンパク質との相互作用に利用可能にし、密な沈殿を形成しなければならない。
【0079】
本明細書において使用する場合、「高固形分」含有供給材料という語句は、およそ>7%の固形分を有する供給材料を意味し、一方「低固形分」含有供給材料という語句は、およそ0.1%から7%の固形分である。
【0080】
「刺激(stimulusまたはstimuli)」という用語は、本明細書において互換的に使用され、本発明に従った刺激応答性ポリマーによりもたらされる、環境の物理的変化または化学的変化を指すことを意味する。従って、本発明は、刺激に応答し、この刺激がポリマーの溶解度に変化をもたらす新規なポリマーを提供する。本明細書に記載の1種または複数種のポリマーが応答する刺激の例は、限定するものではないが、例えば、温度変化、伝導率の変化および/またはpHの変化を含む。幾つかの実施形態において、刺激は、錯化剤または錯体形成塩の試料への添加を含む。さまざまな実施形態において、刺激は、概してポリマーを試料に添加後に加えられる。しかし、刺激は、ポリマーを試料に添加する間またはこの前に加えられてもよい。
【0081】
「ポリマー」(polymer)という用語は、本明細書において使用する場合、2以上の単量体分子単位の共有結合により形成される分子を指す。これらの単量体単位は合成であっても、または天然であってもよい。反復単位により形成されるポリマーは、線形であっても分枝型であってもよい。ポリマーの例は、限定するものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール、ポリスチレンおよびコポリマー(例えば、ポリスチレン−コ−ポリピリジン、ポリアクリル酸−コ−メチルメタクリレート、プルロニック、PF68など)を含む。本発明に従った幾つかの実施形態において、ポリマーは、ポリマー電解質骨格を含む。
【0082】
「プロテインA」および「Prot A」という用語は、本明細書において互換的に使用され、プロテインAの天然供給源から回収されたプロテインA、合成的に(例えば、ペプチド合成または組換え技術により)生成されたプロテインA、およびCH
2/CH
3領域、例えばFc領域を有するタンパク質と結合する能力を保有しているこれらの変異体を包含する。プロテインAは、Repligen、GEまたはFermatechから市販品として購入可能である。プロテインAは一般に、クロマトグラフィーマトリックスに固定されている。本発明に従った方法および系に使用されるプロテインAの機能性誘導体、断片または変異体は、マウスIgG2aまたはヒトIgG1のFcに対して、少なくともK=10
8M、好ましくはK=10
9Mの結合定数を特徴とすることができる。結合定数のこのような値に適合する相互作用は、本文脈において「高親和性結合」と呼ばれる。幾つかの実施形態において、プロテインAのこのような機能性誘導体または変異体は、天然ドメインE、D、A、B、CまたはIgG結合機能性を保有するこれらの遺伝子操作された突然変異体から選択される、野生型プロテインAの機能性IgG結合ドメインの少なくとも一部を含む。
【0083】
さらに、固体支持体への一点結合が可能なように遺伝子操作されたプロテインAの誘導体または変異体もまた、特許請求する方法においてアフィニティクロマトグラフィーステップに使用することができる。
【0084】
一点結合とは、概して、タンパク質部分が単一の共有結合を介してプロテインAアフィニティクロマトグラフィーのクロマトグラフィー支持材料に結合することを意味する。このような一点結合は、曝露されたアミノ酸位置、即ちループ、N末端もしくはC末端の近くまたはタンパク質フォールドの外周の他の場所に配置された適切な反応残基の使用によってもまた生じさせることができる。適切な反応基は、例えばスルフリドリル基またはアミノ基である。
【0085】
幾つかの実施形態において、変異体のプロテインA誘導体は、複数点結合を介して適切なクロマトグラフィーマトリックスに結合する。
【0086】
「アフィニティクロマトグラフィーマトリックス」という用語は、本明細書において使用する場合、アフィニティクロマトグラフィーに適切なリガンドを担持するクロマトグラフィーマトリックスを指す。通常このリガンド(例えば、プロテインAまたはこれらの機能性の変異体もしくは断片)は、クロマトグラフィーマトリックス材料に共有結合しており、溶液はクロマトグラフィーマトリックスと接触しているので、溶液中の標的分子に到達可能である。アフィニティクロマトグラフィーマトリックスの一例は、プロテインAマトリックスである。アフィニティクロマトグラフィーマトリックスは通常、鍵/鍵穴機構、例えば、抗原/抗体または酵素/受容体の結合に基づく高い特異性で標的分子と結合する。アフィニティマトリックスの例は、プロテインAリガンドを担持するマトリックス、例えば、PROTEIN A SEPHAROSE(商標)またはPROSEP(登録商標)−Aである。本明細書に記載の方法および系において、アフィニティクロマトグラフィーステップは、精製方法全体において、結合および溶出のクロマトグラフィーステップとして使用することができる。
【0087】
「刺激応答性ポリマー」という用語は、本明細書において使用する場合、刺激の添加後に物理的および/または化学的特性に変化を示すポリマーである。通常の刺激応答は、ポリマーの溶解度の変化である。例えば、ポリマーのポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)は、約35℃未満の温度において水溶性であるが約35℃の温度において水に不溶性になる。
【0088】
「軟凝集」という用語は、本明細書において使用する場合、1種または複数種の、懸濁された不溶性または可溶性不純物を除去するために、凝集剤、例えば、本明細書に記載のポリマーまたは化学的処理(例えば酸処理)の溶液への添加を指す。該ポリマーは、通常の固体−液体分離法を介して溶液から除去可能な不溶性凝結体を、自発的に形成させる濃度で加えなければならない。
【0089】
「組成物」、「溶液」または「試料」という用語は、本明細書において使用する場合、本明細書に記載の1種または複数種の刺激応答性ポリマーまたは化学的処理(例えば酸処理)を使用して精製される標的分子または所望の生成物と、1種または複数種の望ましくない実体または不純物との混合物を指す。幾つかの実施形態において、該試料は、標的分子または所望の生成物が分泌される供給原料または細胞培養培地を含む。幾つかの実施形態において、該試料は、標的分子(例えば治療用タンパク質または抗体)と、1種または複数種の不純物(例えば、宿主細胞タンパク質、DNA、RNA、脂質、細胞培養添加物細胞および細胞残屑)を含む。幾つかの実施形態において、該試料は、細胞培養培地に分泌される対象となる標的分を含む。
【0090】
幾つかの実施形態において、標的分子が、本明細書に記載の1種または複数種の刺激応答性ポリマーまたは化学的処理(例えば酸処理)を使用して精製される試料は、試料と刺激応答性ポリマーとが接触する前に「部分精製」される。部分精製は、例えば、試料を、1種または複数種の精製ステップ、例えば、1種または複数種の非アフィニティクロマトグラフィーステップに供することにより達成することができる。標的分子は、1種または複数種の望ましくない実体または不純物から、1種または複数種の不純物を沈殿させるか、または標的分子を沈殿させるかのいずれかによって分離することができる。
【0091】
「沈殿させる(precipitate)」、「沈殿させること(precipitating)」または「沈殿(precipitation)」という用語は、本明細書において使用する場合、(例えば、対象となる生体分子との複合体として)結合したポリマーまたは非結合のポリマーまたは他の可溶性種の、水性および/または可溶性状態から非水性および/または不溶性状態への変更を指す。
【0092】
「対象となる生体分子」という用語は、本明細書において使用する場合、所望の標的分子、例えば、対象となる所望の生成物またはポリペプチド(例えば抗体)などであってよく、または所望の標的分子を含有する試料から除去されることが必要とされる、望ましくない実体であってもよい。このような望ましくない実体は、限定するものではないが、例えば、宿主細胞タンパク質、DNA、RNA、タンパク質凝結体、細胞培養添加物、ウイルス、エンドトキシン、細胞全体および細胞残屑から選択される1種または複数種の不純物を含む。さらに、対象となる生体分子は、本明細書に記載の刺激応答性ポリマーまたは化学的に処理(例えば酸処理)により、結合および沈殿させることもできる。
【0093】
「標的分子」、「標的生体分子」、「所望の標的分子」および「所望の標的生体分子」という用語は、本明細書において互換的に使用され、概して、対象となるポリペプチドまたは生成物を指し、この対象となるポリペプチドまたは生成物は、これを含有する試料中に存在し得る1種または複数種の望ましくない実体、例えば1種または複数種の不純物から精製または分離されることが望ましい。
【0094】
「対象となるタンパク質」、「標的ポリペプチド」、「対象となるポリペプチおよび「標的タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に使用され、概して、治療用タンパク質またはポリペプチドを指し、限定するものではないが、本発明に従った刺激応答性ポリマーを使用して精製される抗体を含む。
【0095】
本明細書において互換的に使用される場合、「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、概して、約10を超えるアミノ酸を有するペプチドおよびタンパク質を指す。幾つかの実施形態において、本明細書に記載の刺激応答性ポリマーは、タンパク質またはポリペプチドを、これと一緒に試料中に存在する1種または複数種の望ましくない実体から分離するために使用される。幾つかの実施形態において、1種または複数種の実態は、精製されるべきタンパク質またはポリペプチドと一緒に試料中に存在し得る1種または複数種の不純物である。上述のように、幾つかの実施形態において、本明細書に記載の刺激応答性ポリマーは、刺激が試料に加えられると、対象となるタンパク質またはポリペプチドと特異的に結合する。他の実施形態において、本明細書に記載の刺激応答性ポリマーは、刺激が試料に加えられると、対象となるタンパク質またはポリペプチド以外の実態、例えば、宿主細胞タンパク質、DNA、ウイルス、細胞全体、細胞残屑および細胞培養添加物と結合し、これを沈殿させる。
【0096】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の刺激応答性ポリマーを使用して精製されるタンパク質またはポリペプチドは、哺乳動物タンパク質、例えば、治療用タンパク質または療法に使用されるタンパク質である。例示的タンパク質は、限定するものではないが、例えば、レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ−1−抗トリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子;抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;プラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子−アルファおよび−ベータ;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−アルファ);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー管抑制物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えばベータ−ラクタマーゼ;Dnase;IgE;細胞障害性Tリンパ球抗原(CTLA)、例えばCTLA−4;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモンまたは成長因子の受容体;プロテインAまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子、ニューロトロフィン−3、−4、−5または−6(NT−3、NT−4、NT−5またはNT−6)または神経成長因子、例えばNGF−β;血小板由来成長因子(PDGF);線維芽細胞成長因子;上皮成長因子(EGF);形質転換成長因子(TGF);インスリン様成長因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP);CDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン;インターロイキン(Il)、例えばIL−1からIL−10;スーパオキシドジムスターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例えばAIDSエンベロープの一部など;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン;腫瘍関連抗原、例えばHER2、HER3またはHER4受容体;ならびに上記のポリペプチドのいずれかの断片および/または変異体を含む。
【0097】
さらに、幾つかの実施形態において、本発明に従ったスマートポリマーを使用して精製されるタンパク質またはポリペプチドは、抗体、これらの機能性断片または変異体である。幾つかの実施形態において、対象となるタンパク質は、免疫グロブリンのFc領域を含有する組換えタンパク質である。
【0098】
「免疫グロブリン」、「Ig」または「抗体」という用語は(本明細書において互換的に使用され)、2つの重鎖および2つの軽鎖からなる塩基性の4つのポリペプチド鎖を有し、前記鎖が例えば、鎖間のジスルフィド結合により安定化され、抗原と特異的に結合する能力を有するタンパク質を指す。「一本鎖免疫グロブリン」または「一本鎖抗体」という用語は(本明細書において互換的に使用され)、重鎖および軽鎖からなる2つのポリペプチド鎖構造を有し、前記鎖が、例えば、鎖間のペプチドリンカーにより安定化され、抗原と特異的に結合する能力を有するタンパク質を指す。「ドメイン」という用語は、例えば、βプリーツシートおよび/または鎖間ジスルフィド結合により安定化されたペプチドループを含む(例えば3から4のペプチドループを含む)、重鎖または軽鎖ポリペプチドの球状領域を指す。ドメインは、本明細書においてさらに「定常」または「可変」と称され、「定常」ドメインの場合さまざまなクラスメンバーのドメイン内の配列変動の相対的欠如に基づき、または「可変」ドメインの場合、さまざまなクラスメンバーのドメイン内の有意な変動に基づく。抗体またはポリペプチドの「ドメイン」は、多くの場合、抗体またはポリペプチドの「領域」と、当分野において互換的に称される。抗体軽鎖の「定常」ドメインは、「軽鎖定常領域」、「軽鎖定常ドメイン」、「CL」領域または「CL」ドメインと、互換的に称される。抗体重鎖の「定常」ドメインは、「重鎖定常領域」、「重鎖定常ドメイン」、「CH」領域または「CH」ドメインと、互換的に称される。抗体軽鎖の「可変」ドメインは、「軽鎖可変領域」、「軽鎖可変ドメイン」、「VL」領域または「VL」ドメインと、互換的に称される。抗体重鎖の「可変」ドメインは、「重鎖可変領域」、「重鎖可変ドメイン」、「VH」領域または「VH」ドメインと、互換的に称される。
【0099】
免疫グロブリンまたは抗体は、モノクローナルであっても、またはポリクローナルであってもよく、単量体型または重合型、例えば、五量体型で存在するIgM抗体および/または単量体、二量体または多量体型で存在するIgA抗体で存在してよい。免疫グロブリンまたは抗体は、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)および抗体断片を、リガンド特異的結合断片を保有しているか、またはリガンド特異的結合断片を含むように改変されている限り、さらに含み得る。「断片」という用語は、無傷または完全な抗体または抗体鎖より少ないアミノ酸残基を含む抗体または抗体鎖の一部または部分を指す。断片は、無傷または完全な抗体または抗体鎖の化学的または酵素的処理を介して得ることができる。断片は、組換え手段によっても得ることができる。組換え的に生成された場合、断片は、単独または融合タンパク質と呼ばれる大型タンパク質の一部として発現されてもよい。例示的断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fcおよび/またはFv断片を含む。例示的融合タンパク質は、Fc融合タンパク質を含む。
【0100】
概して、免疫グロブリンまたは抗体は、対象となる「抗原」に対する。好ましくは、抗原は生物学的に重要なポリペプチドであり、疾患または障害を患う哺乳動物に対する抗体の投与は、この哺乳動物に治療的利益をもたらすことができる。しかし、非ポリペプチド抗原(例えば、腫瘍関連糖脂質抗原、米国特許第5,091,178号を参照されたい。)に対する抗体もまた企図される。抗原がポリペプチドである場合、抗原は膜貫通分子(例えば受容体)または成長因子などのリガンドであってよい。
【0101】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書において使用する場合、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指し、即ち、少量存在し得る天然の突然変異の可能性を除いて、集団を含む個別の抗体が同一であることを指す。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含む、従来の(ポリクローナル)抗体調製品とは対照的に、個々のモノクローナル抗体が抗原の単一の決定基に対する。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生成を要求とすると解釈するべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature256:495(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ方法により作製することができ、または組換えDNA法により作製することができる(米国特許第4,816,567号を参照されたい。)。「モノクローナル抗体」は、例えば、ファージ抗体ライブラリから、Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991)およびMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1991)に記載の技術を使用して単離することもできる。
【0102】
モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体、または特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか、もしくは相同であり、一方、鎖(複数可)の残りは、別の種に由来する抗体、または別の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体ならびにこのような抗体の断片の対応する配列と同一であるか、もしくは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を、これらが所望の生物学的活性を示す限り、さらに含み得る(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984))。
【0103】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書において定義した超可変領域以外の可変ドメイン残基である。
【0104】
非ヒト(例えばネズミ)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分に関して、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する、非ヒト種、例えばマウス、ウサギまたは非ヒト霊長類由来の超可変領域残基(ドナー抗体)で置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの場合、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)は、対応する非ヒト残基で置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において見出されない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体の性能をさらに洗練するために実施される。概して、ヒト化抗体は、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FR領域のすべてもしくは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のFR領域である、少なくとも1つ、通常2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むと思われる。
【0105】
該ヒト化抗体は場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)、通常ヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部分をさらに含む。さらに詳細には、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323−329(988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。
【0106】
幾つかの実施形態において、本発明に従った刺激応答ポリマーを使用して分離または精製される抗体は、治療用抗体である。例示的治療用抗体は、例えば、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標)、Genentech,Inc.,Carter et al(1992),Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285−4289;米国特許第5,725,856号);抗CD20抗体、例えばキメラ抗CD20「C2B8」 米国特許第5,736,137号;抗−IgE(Presta et al(1993)J.Immunol.151:2623−2632;WO95/19181);抗CD18(米国特許第5,622,700号;WO97/26912);E25、E26およびE27を含む抗IgE(米国特許第5,714,338号;米国特許第5,091,313号;WO93/04173;米国特許第5,714,338号);抗Apo−2受容体抗体(WO98/51793);cA2(REMICADE(商標))、CDP571およびMAK−195を含む抗TNF−アルファ抗体(米国特許第5,672,347号;Lorenz et al(1996)J.Immunol.156(4):1646−1653;Dhainaut et al(1995) Crit.Care Med.23(9):1461−1469);抗組織因子(TF)(EP0420937B1);抗CD4抗体、例えばcM−7412抗体(Choy et al(1996)Arthritis Rheum 39(1):52−56);抗Fc受容体抗体、例えばFcガンマRlに対するM22抗体、Graziano et al(1995)J.Immunol.155(10):4996−5002;抗Gpllb/llla抗体;抗RSV抗体、例えばMEDI−493(SYNAGIS(商標));抗CMV抗体、例えば、PROTOVIR(商標));抗HIV抗体、例えばPRO542;抗肝炎抗体、例えば高Hep B抗体OSTAVIR(商標));抗CA125抗体OvaRex;抗イディオタイプGD3エピトープ抗体BEC2;抗アルファvベータ3抗体VITAXIN(商標);抗ヒト腎細胞癌抗体、例えばch−G250;ING−1;抗ヒト17−1A抗体(3622W94);ならびに抗ヒト白血球抗原(HLA)抗体、例えばSmart ID10および抗HLA DR抗体Oncolym(Lym−1)を含む。
【0107】
「単離すること」、「精製すること」および「分離すること」という用語は、標的分子(例えば、対象となるポリペプチドまたはタンパク質)を、標的分子および1種または複数種の不純物を含む組成物または試料から、本明細書に記載の刺激応答性ポリマーを使用して精製する関連において、本明細書において互換的に使用される。幾つかの実施形態において、試料中の標的分子の純度は、1種または複数種の不純物を、本明細書に記載の刺激応答性ポリマーを使用することによって(完全または部分的に)除去することによって増加させる。別の実施形態において、試料中の標的分子の純度は、標的分子を、試料中の1種または複数種の不純物から離れて沈殿させることによって増加させる。
【0108】
幾つかの実施形態において、精製方法は、1または複数の「クロマトグラフィーステップ」を追加で用いる。通常、これらのステップは、標的分子を、1または複数の所望でない実体から本発明に従った刺激応答ポリマーを使用して分離した後に、必要に応じて実施することができる。
【0109】
幾つかの実施形態において、対象となるポリペプチドまたはタンパク質を、本明細書に記載の刺激応答性ポリマーを使用して単離、分離または精製するための「精製ステップ」は、「均一」または「純粋な」組成物または試料をもたらす全精製方法の一部であってよく、この用語は、本明細書において、対象となるタンパク質を含む組成物中に100ppm未満のHCP、代替的には、90ppm未満、80ppm未満、70ppm未満、60ppm未満、50ppm未満、40ppm未満、30ppm未満、20ppm未満、10ppm未満、5ppm未満または3ppm未満のHCPを含む組成物または試料を指すように使用される。本明細書において使用する場合、「一次清澄化」は凝結された細胞バイオマスの除去を含み、該凝結された細胞バイオマスは、軟凝集された細胞残屑および約10ミクロン(μm)より大きい径を有するコロイド状微粒子または凝集剤を使用したより小型の粒子を含む。
【0110】
「清澄化する」、「清澄化」、「清澄化ステップ」という用語は、概して、本明細書において使用する場合、生体分子の精製において最初に使用される1または複数のステップを指す。清澄化ステップは、一般的に、例えば、清澄化深層ろ過、沈殿、軟凝集および沈降のいずれかの単独またはさまざまな組み合わせを含む1または複数のステップを使用する、細胞および/または細胞残屑の除去を含む。幾つかの実施形態において、本発明は、さまざまな精製スキームに一般に使用される従来の清澄化ステップにわたる改良を提供する。清澄化ステップは、1種または複数種の望ましくない実体の除去を一般に伴い、通常、所望の標的分子の捕捉を伴うステップの前に実施される。清澄化の別の鍵となる態様は、精製方法において後に除菌フィルターのファウリングをもたらし得る試料中の可溶性および不溶性成分の除去であり、これによって、精製方法全体をより経済的にする。さらに、清澄化効率を強化する方法、例えば沈殿を使用することができる。不純物の沈殿は、さまざまな手段、例えば、軟凝集、pH調整(酸沈殿)、温度シフト、刺激応答性ポリマーもしくは小分子による相変化またはこれらの方法の任意の組み合わせにより実施することができる。
【0111】
「クロマトグラフィー」という用語は、本明細書において使用する場合、対象となる分析物(例えば標的分子)を混合物中に存在する他の分子から分離する、あらゆる種類の技術を指す。普通、対象となる分析物は、混合物の個別の分子が、移動相の影響下で静止媒体の間を移動する速さの差の結果として、または結合および溶出方法において、他の分子から分離される。
【0112】
「クロマトグラフィー樹脂」または「クロマトグラフィー媒体」という用語は、本明細書において互換的に使用され、対象となる分析物(例えば標的分子)を混合物中に存在する他の分子から分離する、あらゆる種類の相(例えば固相)を指す。普通、対象となる分析物は、混合物の個別の分子が、移動相の影響下で静止固相の間を移動する速さの差の結果として、または結合および溶出方法において、他の分子から分離される。クロマトグラフィー媒体のさまざまなタイプの例は、例えば、陽イオン交換樹脂、アフィニティ樹脂、陰イオン交換樹脂、陰イオン交換膜、疎水性相互作用樹脂およびイオン交換モノリスを含む。
【0113】
「捕捉ステップ」という用語は、本明細書において使用する場合、標的分子を刺激応答性ポリマーまたはクロマトグラフィー樹脂に結合するために使用される方法を一般に指し、標的分子と、ポリマーまたは樹脂との沈殿を含有する固相をもたらす。通常、標的分子は、この後溶出ステップを使用して回収され、溶出ステップは、標的分子を固相から取り外し、これによって、1種または複数種の不純物から標的分子の分離をもたらす。さまざまな実施形態において、捕捉ステップは、樹脂、膜もしくはモノリスなどのクロマトグラフィー媒体、または刺激応答性ポリマー、ポリマー電解質もしくは標的分子と結合するポリマーなどのポリマーを使用して実施することができる。
【0114】
「塩」という用語は、本明細書において使用する場合、酸および塩基の相互作用により形成される化合物を指す。本明細書に記載の方法に用いられるさまざまなバッファーに使用することができるさまざまな塩は、限定するものではないが、アセテート(例えばナトリウムアセテート)、シトレート(例えば、ナトリウムシトレート)、クロライド(例えば、ナトリウムクロライド)、サルフェート(例えばナトリウムサルフェート)またはカリウム塩を含む。
【0115】
「溶媒」という用語は、本明細書において使用する場合、1種または複数種の他の物質を溶解または分散して、溶液を提供できる液体物質を一般に指す。溶媒は、水性溶媒および/または有機溶媒を含み、有用な有機溶媒は、非極性溶媒、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ヘキシレングリコール、プロピレングリコールおよび2,2−チオジグリコールを含む。
【0116】
本明細書において互換的に使用される「百万分率」または「ppm」という用語は、本明細書に記載の刺激応答性ポリマーを使用して精製された所望の標的分子(例えば標的タンパク質または抗体)の純度の尺度を指す。従って、この尺度は、精製方法後に存在する標的分子の量を計測するため、または所望でない実体を計測するためのどちらにも使用することができる。幾つかの実施形態において、単位「ppm」は、溶液中の不純物、例えばHCPまたはCHOPナノグラム/ミリリットル/対象となるタンパク質ミリグラム/ミリリットルの量(即ち、CHOP ppm=(CHOP ng/ml)/(対象となるタンパク質mg/ml)を指すように、本明細書において使用される。タンパク質が(例えば凍結乾燥により)乾燥している場合、ppmは、(CHOPのng)/(対象となるタンパク質のmg))を指す。
【0117】
ポリペプチドの「pI」または「等電点」という用語は、本明細書において互換的に使用され、ポリペプチドの正電荷がこの負電荷と釣合うpHを指す。pIは、ポリペプチドの結合炭水化物のアミノ酸残基またはシアル酸残基の実効電荷から計算することができ、または等電点分画法により決定することができる。
【0118】
「結合および溶出モード」および「結合および溶出方法」という用語は、本明細書において使用する場合、試料中に含有される少なくとも1種の標的分子(例えば、Fc領域含有タンパク質)が適切な樹脂または媒体(例えばアフィニティクロマトグラフィー媒体または陽イオン交換クロマトグラフィー媒体)と結合し、この後溶出される、分離技術を指す。
【0119】
本明細書において互換的に使用される「フロースルー方法」、「フロースルーモード」および「フロースルー操作」という用語は、生物医薬調製品に含有される少なくとも1種の標的分子(例えば、Fc領域含有タンパク質または抗体)が1種または複数種の不純物と一緒に、材料の中に流入し、通常は、1種または複数種の不純物が結合し、標的分子が通常は結合しない(即ちフロースルー)ことが意図される分離技術を指す。
【0120】
本明細書において互換的に使用される「方法ステップ」または「単位操作」という用語は、精製方法において特定の結果を得るための、1または複数の方法または装置の使用を指す。本明細書に記載の方法および系に用いることができる方法ステップまたは単位操作の例は、限定するものではないが、清澄化、結合および溶出クロマトグラフィー、ウイルス不活性化、フロースルー精製および製剤化を含む。個々の方法ステップまたは単位操作は、この方法ステップまたは単位操作の意図される結果を達成するための1以上のステップまたは方法または装置を用いることができると理解するべきである。例えば、幾つかの実施形態において、本明細書に記載の清澄化ステップおよび/またはフロースルー精製ステップは、この方法ステップまたは単位操作を達成するための1以上のステップまたは方法または装置を用いることができる。幾つかの実施形態において、方法ステップまたは単位操作を実施するために使用される1以上の装置は、単回使用装置であり、方法中の任意の他の装置を置き換えるかまたは方法工程を停止することなく、除去および/または置き換えることができる。
【0121】
本明細書において使用する場合、「細孔径」および「公称細孔径」という用語は、微粒子の大多数を、細孔径等級の60から98%で保有する細孔径を指す。
【0122】
本明細書において使用する場合、「処理能力」という用語は、フィルターを通してろ過される体積を意味する。
【0123】
本明細書において使用する場合、「系」という用語は、全精製方法の物理的形態を一般に指し、本明細書に記載の2以上の方法ステップまたは単位操作を含む。幾つかの実施形態において、該系は、無菌環境に封入されている。
【0124】
本発明において、開放段階層の使用は、より大型粒子の侵入を可能にし、表面に収集されるのではなく、フィルターの深層内に捕捉される(実施例2Aおよび2Bを参照されたい。)。
【0125】
この有利性は、より高い処理能力および大型固形分(0.5ミクロンから約200ミクロン)の保持と同時に、ケーキ形成の問題の排除である。一次清澄化フィルターにおける開放細孔の使用は、これらのデプスフィルターに固形分の保持による圧力の線形増加を提供し、圧力の著しい増加が無く、従って高い処理能力をもたらす。層の最適化(細孔径および厚み)と組み合わせたフィルターの構造寸法は、大量の固形分を保有することができる並外れたろ過特性をもたらす。
【0126】
本発明において、開放段階層の使用は、供給流中のより大きな軟凝集された粒子をフィルターの深層に侵入可能にし、表面に収集するのではなく、フィルターの細孔内に捕捉する(実施例9(AからE)および11(AからJ)を参照されたい。)。本明細書において提供する一次清澄化デプスフィルターは、「開放」最上層が、軟凝集された粒子を捕捉するためにデプスフィルターの前置フィルターゾーンを構成し、一方底層は、より小型の残存する凝結された軟凝集粒子を捕捉する研磨ゾーンを構成するように配置される。このタイプの配置を有する一次清澄化デプスフィルターの1つの有利性は、より高い処理能力およびより大型の軟凝集された固形分の保持であり、同時に、ケーキ形成の問題の排除でもある。本明細書において教示する一次清澄化フィルターにおけるこのような開放細孔の使用は、固形分の保持による圧力の線形増加を提供し、圧力の著しい増加が無く、従って、より高い、より望ましい処理能力をもたらす。
【0127】
本発明に従った一次清澄化デプスフィルターの例を、
図1A、1B、1C、1D、1Eおよび1Fに示す。
【0128】
図1Cは、少なくとも7層を有する一次清澄化デプスフィルターを表し、これは、細胞培養供給材料がポリマー凝集剤(例えば、スマートポリマーまたは伝統的な凝集剤)を用いて処理された場合に使用される。
【0129】
図1Aおよび1Eは、少なくとも8層を有する一次清澄化デプスフィルターを表し、これらはそれぞれ、細胞培養供給材料がポリマー凝集剤(例えば、スマートポリマーまたは伝統的な凝集剤)を用いて処理された場合に使用される。
【0130】
図1B、1Dおよび1Fは、少なくとも8層を有する一次清澄化デプスフィルターを表し、これらはそれぞれ、細胞培養供給材料が化学的処理(例えば酸処理)された場合に使用される。
【0131】
図1Aに表した一次清澄化デプスフィルターは、細胞培養供給材料がポリマー凝集剤(例えばスマートポリマー)により処理された場合に使用され、公称細孔径が約100ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンの2つの(上)層を有し、公称細孔径が約50ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンのさらに2つの層を有し、公称細孔径が約25ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンの2つのさらなる層を有し、この後に、約0.35cmの厚みの材料、例えばセルロース(CE25)の単層および例えば、約0.35cmの厚みの材料、例えば珪藻土(DE40)の単層を有する一次清澄化デプスフィルターを示す。
【0132】
図1Bに表した一次清澄化デプスフィルターは、細胞培養供給材料が化学的処理(例えば酸処理)された場合に使用され、公称細孔径が約25ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンの2つの(上)層を有し、公称細孔径が約10ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンのさらに2つの層を有し、公称細孔径が約5ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンの2つのさらなる層を有し、この後に、約0.35cmの厚みの材料、例えばセルロース(CE25)などの単層を有し、この後に約0.35cmの厚みの材料、例えば珪藻土(DE40)などの別の単層を有する、一次清澄化デプスフィルターを示す。セルロースまたは珪藻土の層のいずれが最下(底)層として選択されてもよい。
【0133】
図1Cに表した一次清澄化デプスフィルターは、細胞培養供給材料がポリマー凝集剤(例えばスマートポリマー)により処理された場合に使用され、公称細孔径が約100ミクロンで、不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンを含む2つの(上)層を有し、公称細孔径が約100ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンのさらに2つの層を有し、公称細孔径が約100ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンを含む、2つのさらなる層を有し、この後に約8ミクロンの厚みの不織布、例えば約0.2cmの厚みのポリプロピレンの単層(底層)を有する、一次清澄化デプスフィルターを示す。
【0134】
図1Dに表した一次清澄化デプスフィルターは、細胞培養供給材料が化学的処理(例えば酸処理)された場合に使用され、公称細孔径が約50ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンを含む2つの(上)層を有し、公称細孔径が約25ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンの2つのさらなる層を有し、公称細孔径が約10ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンのさらに2つの層を有し、この後に、約0.35cmの厚みの材料、例えばセルロース(CE25)などの単層を有し、この後に約0.35cmの厚みの材料、例えば珪藻土(DE40)などの別の単層を有する、一次清澄化デプスフィルターを示す。セルロースまたは珪藻土の層のいずれが最下(底)層として選択されてもよい。
【0135】
図1Eに表した一次清澄化デプスフィルターは、細胞培養供給材料がポリマー凝集剤(例えばスマートポリマー)により処理された場合に使用され、一次清澄化デプスフィルター公称細孔径が約100ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンを含む2つの(上)層を有し、公称細孔径が約50ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンのさらに2つの層を有し、公称細孔径が約25ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンを含む2つのさらなる層を有し、この後に、約0.35cmの厚みの材料、例えばセルロース(CE25)などの単層を有し、この後に約0.35cmの厚みの材料、例えば珪藻土(DE40)などの別の単層を有する、一次清澄化デプスフィルターを示す。
【0136】
図1Fに表した一次清澄化デプスフィルターは、細胞培養供給材料が化学的処理(例えば酸処理)された場合に使用され、公称細孔径が約35ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンを含む2つの(上)層を有し、公称細孔径が約15ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンのさらに2つの層を有し、公称細孔径が約10ミクロンの不織布、例えば0.4cmの厚みのポリプロピレンを含む2つのさらなる層を有し、この後に、約0.35cmの厚みの材料、例えばセルロース(CE25)などの単層を有し、この後に約0.35cmの厚みの材料、例えば珪藻土(DE40)などの別の単層を有する、一次清澄化デプスフィルターを示す。セルロースまたは珪藻土の層のいずれが最下(底)層として選択されてもよい。
【0137】
一次清澄化デプスフィルターの細孔径および/または層の厚みの最適化と組み合わせた、本明細書において提供する一次清澄化デプスフィルターの構造寸法は、大量の固形分を保有する、非常に有利なろ過特性をもたらす。このようなデプスフィルターは、さまざまな機序の組み合わせを介して媒体の深層を通るろ過を達成し、供給材料のカラム体積(V
f)対媒体のカラム体積(V
m)が、さまざまなフィルターの有効性を示す。
【0138】
加えて、さまざまな供給材料は、異なる量の固形分を有し、非常に変動しやすい性能のデプスフィルターをもたらし、従って、(V
f)対(V
m)値は、フィルターの実際の「効率」のより優れた評価をもたらす。
【0139】
別の重要なパラメーターKは、フィルター効率を表すと同時に、供給原料の固形分を正規化するために使用される。パラメーターKは、異なる固形分を含む供給材料のろ過を、有効に比較することができる。
【0140】
パラメーターKは、方程式1に示すように、実際は3つの測定可能なパラメーター、体積処理能力(TP)、収集効率(η)および固形分の初期濃度(C
i)の関数である。
【0141】
K=[TP]×[η]×[C
i]×100
【0143】
方程式2に示すように、体積処理能力(TP)は、ろ過された供給材料体積(V
f)を媒体体積(V
m)で割ることにより得られ、収集効率(η)は、捕捉された固形分の体積(V
sc)を供給材料中の固形分体積(V
s)で割ることによって得られ、固形分の初期濃度(C
i)は、供給材料中の固形分体積(V
s)をろ過された供給材料の体積(V
f)で割ることによって得られる。
【0146】
下記の実施例は、特定の供給原料に使用した場合、粒子デプスフィルターの効率の決定および比較における方程式(1)および(2)およびパラメーターKの有用性を明示するものである。
【0147】
下記の実施例は、当業者に、本発明の組成物の作製方法および本発明の方法の実践方法の完全な開示および説明を当業者に提供するように提供するものであり、本発明者が自身の発明であるとみなす範囲を限定する意図のものではない。使用した数字(例えば、量、温度など)に関する正確さを確実にする努力はなされているが、いくらかの実験誤差および偏差は考慮するべきである。特に明示しない限り、温度は摂氏温度であり、化学反応は、大気圧または膜間圧において実施し、示したように「周囲温度」という用語はおよそ25℃を指し、「周囲圧力」は大気圧を指す。
【0148】
[比較実施例]
沈降は、沈降時間の長さ(時)のため多くの場合失敗する。大量の未固結細胞フロック集団が配置されることにより、mAbの有効分画が細胞集団中に捕捉されるので、mAbの低収率が引き起こされる。(実施例5を参照されたい。)
ケーキろ過は、細胞集団が圧力下で破壊されるので失敗する。言い換えれば、細胞残屑がストレス下でポリマーから分裂し、高濁度としてろ液に流入する(実施例6を参照されたい。)。
【0149】
深層ろ過は、フロック、特にポリマー系由来のフロックが非常に大型で、ほぼ100ミクロン程度であるため失敗する。深層ろ過に必要な媒体への侵入に代わって、大型のフロックがデプスフィルター媒体の表面最上部に間もなく積み重なり、デプスフィルター媒体を非効率的なケーキフィルターに陥らせる。(実施例7を参照されたい。)
動的ろ過、例えばタンジェンシャルろ過または振動フィルター媒体が試みられたが、ケーキ形成を低減するために必要なせん断応力が、フロックを個別の粒子に再度崩してしまい、凝集の利益を無効にするのであまり成功してこなかった。(実施例8を参照されたい。)
本発明を、下記の実施例によりさらに明らかにするが、これらは本発明の例示意図するものである。
【実施例】
【0150】
[実施例1]
非清澄化、非発現細胞培養液(CCF)の調製
代表的実験において、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)発現細胞系由来の細胞を、10Lのバイオリアクター(New Brunswick Scientific,Edison,NJ)において10×10
6細胞/mLの密度まで増殖させ、80%生存において回収した。モノクローナル抗体(mAb)力価が0.8g/Lであることを決定した。宿主細胞タンパク質(HCP)のレベルが200,000ng/mLであることを、ELISAアッセイ(Cygnus Technologies,Southport,NC,#3G ELISA)を使用して見出した。非清澄化細胞培養物のpHは、pH6.9であった。
【0151】
[実施例2]
多価イオン刺激応答性ポリマーの調製
10gのポリアリルアミン(PAA)(Nittobo Medical Co.,Ltd.,Tokyo,Japan 150kD;40%wt/wt)を100mLの丸底フラスコに入れ、25mLのH
2O中3.34gの水酸化ナトリウム(1.2Eq./単量体)の溶液を、室温において、撹拌しながら少量ずつ加える。ベンジルクロライド(2.30g、2.09mL)をこの後加え、数分間、室温において撹拌し、この後60℃に一晩、17時間加熱した。この後、反応物を室温に冷却し、溶媒を除去し、ポリマーの沈殿を得る。沈殿したポリマーを水で洗浄し、1MのAcOH水溶液(40ml)中で完全な可溶化に達するまで撹拌する。該溶液をこの後、H
2Oで、最終体積400ml(1%ポリマー溶液)に希釈し、リン酸二水素カリウム(K
2HPO
4)(3.48g)を撹拌しながら加え、pHをH6.8に調整し、変性されたポリマーを沈殿させる。ポリマーをフリットガラスの漏斗を通してろ過により収集し、最終的に真空オーブンにおいて一晩、50℃から60℃で脱水させる。この後、該ポリマーを1Mの酢酸に再溶解し、10%wtのポリマー濃縮溶液を生成した。
【0152】
[実施例3]
CHO−S供給材料のスマートポリマー(SmP)処理
細胞培養物をSmPで軟凝集させるために、実施例1による細胞培養ブロスの500mlの試料を、1000mlの媒体のボトルに加えた。撹拌しながら、実施例2によるポリマー濃縮液の試料を、所望のポリマー添加量(wt%)、通常0.2%で加えた。該溶液を15分間混合した。
【0153】
[実施例4]
CHO−S供給材料の酸処理
酸を添加してpHを低下させることにより、細胞培養物を軟凝集させるために、実施例1による細胞培養ブロスの500mlの試料を、1000mlの媒体ボトルに加えた。撹拌しながら、濃縮酢酸を、所望のpHに達するまで滴下した。標的pHは、特に明記しない限りpH4.8から5.0であった。該溶液を15分間混合した。
【0154】
[実施例5]
スマートポリマー(SmP)処理CHO−S供給材料の沈降研究
沈降実験を異なる沈降時間で実施し、密度差を使用するSmP処理供給材料の固体液体分離の有効性を決定した。500mlの細胞培養ブロスを、実施例3に従って調製した。
【0155】
SmP処理供給材料を、約0.5から6時間沈降させ、試料上清を取り、濁度および固形分体積を測定した。濁度はHACH Model #2100P濁度計(turbiditimeter)を使用して測定した。表1は、0.5から6時間の間で変動する時間に関する、SmP処理CHO−S供給材料の沈降研究を示す。
【0156】
平衡濁度が<約20NTUに達するまでの、SmP処理CHO−S供給材料の沈降時間は>約180分であり、平衡濁度が<約20NTUに達するまでの、SmP処理CHO−DH44供給材料の沈降時間は約120分であったことが観察された。
【0157】
最も少量のポリマー添加量(0.05%)を使用した場合、不完全な軟凝集により、SmP処理CHO−S供給材料に関しては、12時間の沈降時間の後でさえ、濁度の増加(>約350NTU)につながった。加えて、3時間の沈降時間では、SmP処理CHO−S供給材料は大量の未固結細胞集団(約30%から40%)を有し、SmP処理CHO−DH44供給材料は20%を有し、相当量のmAbが未固結集団に捕捉されるので、このことから、明らかに低いmAb収率(約60%から80%)がもたらされると思われる。
【0158】
【表1】
【0159】
[実施例6]
スマートポリマー(SmP)処理されたDG44およびCHO−S供給材料に関するケーキろ過
珪藻土(Diamatoceous earth)(DE)媒体を使用して、ケーキろ過の有効性を決定した。第1に、DEを、Buchner漏斗中に少なくとも約4cmの深さに詰め、この後本発明者らは、実施例3によるSmP処理供給材料を、吸引を用いて通過させた。珪藻土媒体を通るろ過の間、CHO−S細胞は、20μmの篩上にフィルターケーキのフィルムを形成した。フィルターケーキがろ液の流出を妨げ、処理能力<約10L/m
2をもたらしたことが観察された。加えて、ストレス下でポリマーから分裂した細胞集団が、高濁度のろ液(約200NTUから300NTU)をもたらし、これが、二次ろ過操作に有意な影響を与え得ることが観察された。
【0160】
[実施例7]
市販の一次清澄化フィルター(D0HCおよびF0HC)を使用した、スマートポリマー(SmP)処理CHO−S供給材料の深層ろ過
実施例3によるスマートポリマー(SmP)処理CHO−S供給材料および実施例4による酸処理供給材料を用いてろ過実験を実施し、市販のMilliStak(登録商標)D0HCデプスフィルターの処理能力を決定した。D0HCフィルターを、ユーザー取扱い説明書に従って、水で洗い流した。供給材料をデプスフィルターに、ぜん動ポンプを流量約100L/m
2/時で使用して、添加した。しかし、デプスフィルターは、高固形分供給流を処理できなかった。凝結細胞がより大型であり、深層ろ過に必要な媒体への侵入に代わって、大型の微粒子がデプスフィルター媒体の表面最上部に蓄積され、デプスフィルター媒体を非効率的なケーキフィルターに陥らせるので、深層ろ過は最初に失敗したと考えられる。D0HCは、SmP処理供給材料に対して約20L/m
2の処理能力を有し、F0HCは、酸処理供給材料に対して約5L/m
2の処理能力を有した。より大型のフロック粒子によるフィルターケーキ形成は、フィルターの気密度に大いに起因するものであり、これがフィルターの処理能力を有意に低下させた。
【0161】
[実施例8]
スマートポリマー(SmP)処理供給材料の動的ろ過
タンジェンシャルフローPellicon(登録商標)3(0.11m
2)ろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)を使用した動的ろ過実験を実施し、SmP処理供給材料の固体液体分離の有効性を決定した。該ろ過装置は、ポリビニルジフロライド(PVDF)膜で構成された精密ろ過膜(0.45μm)を含有した。SmP処理細胞培養回収物を、50L/m
2/時で、TMPが15psiになるまで添加した。Pellicon(登録商標)3装置の瞬間的な目詰まりが観察され、処理能力<5L/m
2をもたらした。急速な目詰まりならびに系および装置のホールドアップ体積により、材料の喪失が起こったため、観察された収率は非常に低かった。
【0162】
[実施例9A]
凝結された大型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター。
【0163】
深層ろ過装置10を、すべての層の合計の厚みが1.6cmである、7層の不織繊維(ポリプロピレン)を使用して組み立てた。該層は、最も大きい開放公称細孔径200Mm(2層)、この後に公称50μm(2層)、公称40μm(2層)から単層の公称8μmの層へと続く深層ろ過装置に配列されている(
図1を参照されたい。)。
【0164】
7層の(ニードルフェルト)不織繊維(Rosedale Products,Inc.,Ann Arbor,MI)の個々の特性を表3に示す(2層×200μm、2層×50μm、2層×40μmおよび1層×8μm)。積層の組立て後、ポリプロピレンのホースバーブのエンドキャップを天地に取り付け、組立て部品全体を、単一の、一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に、オーバーモールドした。該深層ろ過装置を透水性に関して試験し、0.45L/分の値を4psiにおいて得た。
【0165】
【表2】
【0166】
[実施例9B]
凝結された大型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター
実施例9Bの段階的デプスフィルターは、段階的不織繊維からなり、1.6cmの深層を有し、約0.5μmから約200μmの範囲の粒子を含む、酸により軟凝集された供給流をろ過可能である。該段階的デプスフィルターは、7層の、Rosedale Products,Inc.,Ann Arbor,MI製不織繊維(2層×200μm、2層×100μm、2層×50μmおよび1層の8μm)からなる。積層の組立て後、ポリプロピレンのホースバーブのエンドキャップを天地に取り付け、組立て部品全体を、単一の、一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に、オーバーモールドした。該装置を透水性に関して試験し、0.55L/分の値を4psiにおいて得た。
【0167】
[実施例9C]
凝結された大型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター
実施例9Cの段階的デプスフィルターは、段階的不織繊維からなり、1.6cmの深層を有し、約0.5μmから約200μmの範囲の粒子を含む、酸により軟凝集された供給流をろ過可能である。該段階的デプスフィルターは、7層の、Rosedale Products,Inc.,Ann Arbor,MI製不織繊維(3層×200μm、3層×100μm、および1層の8μm)からなる。本明細書において提供される段階的デプスフィルターは、23cm
2の一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に組み立てられ、透水性に関して試験し、0.55L/分の値を4psiにおいて得た。
【0168】
[実施例9D]
凝結された大型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター
実施例9Dの段階的デプスフィルターは、段階的不織繊維からなり、1.6cmの深層を有し、約0.5μmから約100μmの範囲の粒子を含む、酸により軟凝集された供給流をろ過可能である。該段階的デプスフィルターは、7層の、Rosedale Products,Inc.,Ann Arbor,MI製不織繊維(2層×100μm、2層×50μm、2層×40μmおよび1層の8μm)からなる。積層の組立て後、ポリプロピレンのホースバーブのエンドキャップを天地に取り付け、組立て部品全体を、単一の、一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に、オーバーモールドした。該装置を透水性に関して試験し、0.5L/分の値を4psiにおいて得た。
【0169】
[実施例9E]
凝結された大型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター
実施例9Eの段階的デプスフィルターは、段階的不織繊維からなり、1.6cmの深層を有し、約0.5μmから約200μmの範囲の粒子を含む、ポリマーにより軟凝集された供給流をろ過可能である。該段階的デプスフィルターは、7層の、Midwest Filtration Company,Cincinnati,Ohio製不織繊維(2層×UniPro(登録商標)760PP、2層×100μm、2層×50μmおよび1層×UniPro(登録商標)530MM)からなる。該段階的デプスフィルター供給材料は、7層の、Midwest Filtration Company,Cincinnati,Ohio製不織繊維(2層×UniPro(登録商標)760PP、2層×100μm、2層×50μmおよび1層×UniPro(登録商標)530MM)からなる。本明細書において提供される段階的デプスフィルターは、23cm
2の一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に組み立てられ、透水性に関して試験し、0.65L/分の値を4psiにおいて得た。
【0170】
[実施例10]
凝結された大型生体分子微粒子の除去用デプスフィルターのろ過性能
実施例9Aから9Eのフィルター装置を、ろ過性能に関して下記の方法を使用して試験した。該デプスフィルターをMilli−Q水で洗い流した後、各フィルターを越えるTMPを圧力トランスデューサ―によりモニターしながら、未処理およびSmP処理の非清澄化供給材料を流した。非清澄化細胞培養回収物を、0.2wt%のスマートポリマー(SmP)添加量(wt%)で処理し、15分間撹拌した。該デプスフィルターをまず、≧約50LのMilli−Q水で、フィルター面積1平方メートル当たり600L/m
2/時で洗い流しフィルター媒体を湿らせ、抽出可能物を流し出した。未処理およびSmP処理の非清澄化回収物を、100L/m
2/時で、どのフィルターを越えるTMPも20psigに達するまで添加した。
【0171】
表4は、2種のMillistak(登録商標)フィルター(X0HCおよびD0HC)と、一次清澄化デプスフィルターとのフィルター処理能力を、実施例3に記載の供給材料(0.2%(w/v)スマートポリマー(SmP)処理供給材料)のろ過に関して比較している。X0HCおよびD0HCは、10L/m
2および44L/m
2の処理能力を示し、一方、一次清澄化デプスフィルターの処理能力は325L/m
2であった。すべての事例のろ液濁度は、表4に示すように<約5NTUであった。ろ液のカラム体積対媒体のカラム体積に関して、X0HCおよびD0HCは、1.5V
f/V
mおよび6V
f/V
mの処理能力を示し、一方、一次清澄化デプスフィルターの処理能力は16.5CV
f/CV
mであった。実施例9Aは最もよく機能し、体積処理能力が16.5V
f/V
m(325L/m
2)およびK効率が84%であった。この比較から、本特許請求の範囲に記載の層で構成された実施例9Aのフィルターが、非清澄化細胞回収物の清澄化において大量の固形分を除去可能であることが明白である。
【0172】
【表3】
【0173】
本発明は、線形差圧成長に関して有意な有利性を有する。X0HCおよびD0HCの場合、流体圧力は、開始時において小さく一定であるが、突然指数関数的に増加し、この結果この限界に達する。観察された圧力応答と調和する1つの考えられる説明は、フィルター表面におけるケーキ層の急速な形成である。一次清澄化デプスフィルターの場合、圧力は線形に近い形で増加し、圧力の有意な突然の増加は無い。この結果は、微粒子がフィルターの深層中に捕捉され、ケーキ形成を回避したことと一致する。フィルターの体積処理能力の大きな増加もまた観察され、これもまた、市販のX0HCおよびD0HCフィルターにおいて観察されたケーキろ過ではなく深層ろ過に一致する。
【0174】
表5は、実施例9Bから9Eに記載の一次清澄化デプスフィルターのフィルター処理能力を、供給材料のカラム体積対媒体のカラム体積に関して比較している。
【0175】
実施例9Bに記載の段階的デプスフィルターは、体積処理能力32V
f/V
m(640L/m
2)およびK効率90%を、SmP処理CHO−DG44供給材料に関して示し、体積処理能力22V
f/V
m(430L/m
2)およびK効率90%を、SmP処理CHO−S供給材料に関して示した。
【0176】
別の実施例9Cにおいて、段階的デプスフィルターは、体積処理能力33V
f/V
m(660L/m
2)およびKman効率94%を、SmP処理CHO−DG44供給材料に関して示し、体積処理能力22V
f/V
m(435L/m
2)およびK効率90%をSmP処理CHO−S供給材料に関して示した。
【0177】
実施例9Dに記載の段階的デプスフィルターは、体積処理能力29V
f/V
m(580L/m
2)およびK効率81%をSmP処理CHO−DG44供給材料に関して示し、体積処理能力20V
f/V
m(390L/m
2)およびK効率81%をSmP処理CHO−S供給材料に関して示した。
【0178】
さらに別の実施例9Eにおいて、本特許請求の範囲に記載の段階的デプスフィルターは、体積処理能力33V
f/V
m(650L/m
2)およびK効率92%をSmP処理CHO−S供給材料に関して示した。
【0179】
この比較から、本特許請求の範囲に記載の層で構成された実施例9Aから9Eのフィルターが、非清澄化細胞回収物の清澄化において大量の固形分を除去可能であることが明白である。
【0180】
【表4】
【0181】
[実施例11A]
凝結された小型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター
化学的に処理された供給材料(例えば酸処理)は、平均粒径を<約5μmから、>約20μmに増大する能力を有する。加えて、酸処理された供給材料は、広範囲の粒径分布を示す。この広範囲の粒子を分離する必要性に応えて、開放段階的不織布層および緊密層(tighter)(CEおよびDE)の組み合わせは有効な深層ろ過を提供する。深層ろ過装置は、すべての層の合計の厚みが2.0cmである、8層の不織繊維(ポリプロピレン)を使用して組み立てた。これらの層は、
図1のろ過装置50中に配列され、開放公称細孔径200μm(2層)、この後に公称50μm(2層)、公称40μm(2層)、この後にセルロース(CE25)の層および珪藻土(DE40)の層を続けて有する。6層の(ニードルパンチ)不織繊維(Rosedale Products,Inc.,Ann Arbor,Ml)の個々の特性を表3に示す(2層×200μm、2層×50μm、2層×40μm)。積層の組立て後、ポリプロピレンのホースバーブのエンドキャップを天地に取り付け、組立て部品全体を、単一の、一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に、オーバーモールドした。該装置を透水性に関して試験し、0.40L/分の値を4psiにおいて得た。
【0182】
[実施例11B]
凝結された小型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター
実施例11Bの段階的デプスフィルターは、段階的不織繊維からなり、2cmの深層を有し、約0.5μmから約100μmの範囲の粒子を含む、酸により軟凝集された供給流をろ過可能である。該段階的デプスフィルターは、6層の、Rosedale Products,Inc.,Ann Arbor,MI製不織繊維(2層×30μm、2層×25μm、2層×20μm)、この後のセルロース(CE25)の層および珪藻土(DE40)の層からなる。積層の組立て後、ポリプロピレンのホースバーブのエンドキャップを天地に取り付け、組立て部品全体を、単一の、一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に、オーバーモールドした。該装置を透水性に関して試験し、0.15L/分の値を4psiにおいて得た。
【0183】
[実施例11C]
凝結された小型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター
実施例11Bの段階的デプスフィルターは、段階的不織繊維からなり、2cmの深層を有し、約0.5μmから約100μmの範囲の粒子を含む、酸により軟凝集された供給流をろ過可能である。該段階的デプスフィルター供給材料は、6層の、Rosedale Products,Inc.,Ann Arbor,MI製不織繊維(2層×25μm、2層×20μm、2層×10μm)、この後のセルロース(CE25)の層および珪藻土(DE40)の層を含む。積層の組立て後、ポリプロピレンのホースバーブのエンドキャップを天地に取り付け、組立て部品全体を、単一の、一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に、オーバーモールドした。該装置を透水性に関して試験し、0.15L/分の値を4psiにおいて得た。
【0184】
[実施例11D]
凝結された小型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター
実施例11Dの段階的デプスフィルターは、段階的不織繊維からなり、1.6cmの深層を有し、約0.5μmから約100μmの範囲の粒子を含む、酸により軟凝集された供給流をろ過可能である。該段階的デプスフィルター供給材料は、4層の、Rosedale Products,Inc.,Ann Arbor,MI製不織繊維(2×20μm、2×10μm)およびセルロース(CE25)/珪藻土(DE60)を含む。積層の組立て後、ポリプロピレンのホースバーブのエンドキャップを天地に取り付け、組立て部品全体を、単一の、一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に、オーバーモールドした。該装置を透水性に関して試験し、0.3L/分の値を4psiにおいて得た。
【0185】
[実施例11E]
凝結された小型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター
実施例11Eの段階的デプスフィルターは、段階的不織繊維からなり、2cmの深層を有し、約0.5μmから約100μmの範囲の粒子を含む、酸により軟凝集された供給流をろ過可能である。該段階的デプスフィルターは、6層の、Rosedale Products,Inc.,Ann Arbor,MI製不織繊維(2層×25μm、2層×20μm、2層×10μm)、この後のセルロース(CE25)の層および珪藻土(DE40)の層からなる。積層の組立て後、ポリプロピレンのホースバーブのエンドキャップを天地に取り付け、組立て部品全体を、単一の、一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に、オーバーモールドした。該装置を透水性に関して試験し、0.2L/分の値を4psiにおいて得た。
【0186】
[実施例11F]
凝結された小型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター
実施例11Fの段階的デプスフィルターは、段階的不織繊維からなり、1.6cmの深層を有し、約0.5μmから約100μmの範囲の粒子を含む、酸により軟凝集された供給流をろ過可能である。該段階的デプスフィルターは、4層の、Rosedale Products,Inc.,Ann Arbor,MI製不織繊維(2層×20μm、2層×10μm)、この後のセルロース(CE25)の層および珪藻土(DE40)の層からなる。積層の組立て後、ポリプロピレンのホースバーブのエンドキャップを天地に取り付け、組立て部品全体を、単一の、一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に、オーバーモールドした。該装置を透水性に関して試験し、0.3L/分の値を4psiにおいて得た。
【0187】
[実施例11G]
凝結された小型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター
実施例11Gの段階的デプスフィルターは、段階的不織繊維からなり、1.6cmの深層を有し、約0.5μmから約100μmの範囲の粒子を含む、酸により軟凝集された供給流をろ過可能である。該段階的デプスフィルターは、6層の、Midwest Filtration Company,Cincinnati,Ohio製不織繊維(2層×50μm、2層×25μm、2層×10μm)、この後のセルロース(CE25)の層および珪藻土(DE40)の層からなる。積層の組立て後、ポリプロピレンのホースバーブのエンドキャップを天地に取り付け、組立て部品全体を、単一の、一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に、オーバーモールドした。該装置を透水性に関して試験し、0.35L/分の値を4psiにおいて得た。
【0188】
[実施例11H]
凝結された小型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター
実施例11Hの段階的デプスフィルターは、段階的不織繊維からなり、2cmの深層を有し、約0.5μmから約100μmの範囲の粒子を含む、酸により軟凝集された供給流をろ過可能である。該段階的デプスフィルターは、6層の、Midwest Filtration Company,Cincinnati,Ohio製不織繊維(2層×25μm、2層×10μm、2層×5μm)、この後のセルロース(CE25)の層および珪藻土(DE40)の層からなる。積層の組立て後、ポリプロピレンのホースバーブのエンドキャップを天地に取り付け、組立て部品全体を、単一の、一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に、オーバーモールドした。該装置を透水性に関して試験し、0.4L/分の値を4psiにおいて得た。
【0189】
[実施例11I]
凝結された小型生体分子微粒子の除去用デプスフィルター 実施例11Iの段階的デプスフィルターは、段階的不織繊維からなり、2cmの深層を有し、約0.5μmから約100μmの範囲の粒子を含む、酸により軟凝集された供給流をろ過可能である。該段階的デプスフィルターは、6層の、Midwest Filtration Company,Cincinnati,Ohio製不織繊維(2層×10μm、2層×5μm、2層×1μm)、この後のセルロース(CE25)の層および珪藻土(DE40)の層からなる。積層の組立て後、ポリプロピレンのホースバーブのエンドキャップを天地に取り付け、組立て部品全体を、単一の、一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に、オーバーモールドした。該装置を透水性に関して試験し、0.4L/分の値を4psiにおいて得た。
【0190】
[実施例12]
凝結された小型生体分子微粒子の除去用デプスフィルターのろ過性能
実施例11Aから11Iのフィルター装置を、ろ過性能に関して下記の方法を使用して試験した。非清澄化細胞培養回収物を1Mの氷酢酸で処理し、pHを4.8に調整し、30分間撹拌した。デプスフィルターをMilli−Q水で洗い流した後、各フィルターを越えるTMPを圧力トランスデューサ―によりモニターしながら、未処理および酸処理の非清澄化供給材料を流した。該デプスフィルターを、まず≧約50LのMilli−Q水で、フィルター面積1平方メートル当たり600L/m
2/時で洗い流してフィルター媒体を湿らせ、抽出可能物を流し出した。未処理および酸処理の非清澄化回収物を、100L/m
2/時で、どのフィルターを越えるTMPも20psigに達するまで添加した。
【0191】
表6は、2種のMillistak(登録商標)フィルター(X0HCおよびD0HC)のフィルター処理能力を、酸処理供給材料用一次清澄化デプスフィルターと比較している。X0HCおよびD0HCは、5L/m
2および20L/m
2の処理能力を示し、一方、一次清澄化デプスフィルターの処理能力は210L/m
2であった。
【0192】
【表5】
【0193】
表2は、2種のMillistak(登録商標)フィルター(X0HCおよびD0HC)と、酸沈殿一次清澄化デプスフィルターとのフィルター処理能力を、酸処理供給材料に関して、ろ液のカラム体積対媒体のカラム体積で比較している。X0HCおよびD0HCは、1.5V
f/V
m(K=6)および4V
f/V
m(K=16)の処理能力を示し、一方、一次清澄化デプスフィルターの処理能力は9V
f/CV
m(K=36)であった。この比較から、本特許請求の範囲に記載の層で構成された実施例9Aのフィルターが、非清澄化細胞回収物の清澄化において大量の固形分を除去可能であることが明白である。
【0194】
【表6】
【0195】
表7は、実施例11B−11Iに記載の一次清澄化デプスフィルターのフィルター処理能力を、供給材料のカラム体積対媒体のカラム面積に関して比較している。この比較から、実施例11A−11Iにおいて、本明細書において提供された層で構成されたフィルターが、非清澄化細胞回収物の清澄化において大量の固形分を除去可能であることが明白である。
【0196】
【表7】
【0197】
[実施例13]
0.1μmから200μmの範囲の、凝結された小型コロイド状微粒子の除去用デプスフィルター
実施例13の段階的デプスフィルターは、段階的不織繊維からなり、2cmの深層を有し、約0.1μmから約200μmの範囲の粒子を含む、酸により軟凝集された供給流をろ過可能である。該段階的デプスフィルターは、6層の、Midwest Filtration Company,Cincinnati,Ohio製不織繊維(2層×25μm、2層×10μm、2層×5μm)、この後の市販のセルロース(CE25)/珪藻土(DE40)およびIM75からなる。本明細書において提供する段階的デプスフィルターは、23cm
2の一体型Mini Capろ過装置(Millipore Corporation,Billerica,MA USAから入手可能)に組み立てられ、透水性に関して試験し、0.25L/分の値を4psiにおいて得た。次に、酸沈殿された非清澄回収物を、100L/m
2/時で、どのフィルターを越えるTMPも20psigに達するまで添加した。ろ過性能を、6層の、Midwest Filtration Company,Cincinnati,Ohio製不織繊維(2層×25μm、2層×10μm、2層×5μm)、この後のセルロース(CE25)の層および珪藻土(DE40)の層からなる、対照の段階的フィルターに対して比較した。本実施例に記載のフィルターは、処理能力11V
f/V
m(K=66)を示し、一方、対照の段階的デプスフィルターは12V
f/CV
m(K=72)であった。しかし、本実施例に記載の段階的デプスフィルターは、対照の段階的フィルターの4NTUと比較して1NTUの濁度を示した。この比較から、本明細書において提供する層で構成された実施例13のフィルターが、清澄化において、細胞および細胞残屑に加えて小型コロイド状微粒子を除去可能であることが明白であり、このことは、本方法において二次清澄化フィルターの除去につながる可能性があると思われる。
【0198】
顧客にとっての別の主な利益は、高固形分供給原料の清澄化を経済的に改良したことである。先に述べたように、多くの高固形分供給原料に対する清澄化方法の適用において、遠心分離および/またはタンジェンシャルフロー精密ろ過が、一次清澄化ステップとして、通常デプスフィルターを含む二次清澄化の上流として使用されている。デプスフィルターを一次清澄化方法に、本明細書に記載の手段で組み込むことにより、遠心分離ステップおよび/またはタンジェンシャルフロー精密ろ過ステップの先行(上流の清澄化ステップ)および後続(下流の清澄化ステップ)の使用が排除される。さらに、遠心分離(複数可)および/またはタンジェンシャルフロー精密ろ過膜の洗浄、検査および置き換えに費やされる見込みの時間が少なく抑えられる。
【0199】
[実施例14]
標的分子の精製用清澄化深層ろ過装置および系
図5は、標的分子の精製用の系に組み込まれた、例示的清澄化深層ろ過装置の精製方法の概略図であり、連続または半連続様式で標的分子を生成する方法を実施するために、該系は、相互に流体連通で連結された2以上の単位操作を含む。個々の単位操作は、この単位操作の意図する目的を達成するために、1または複数の装置を用いることができる。従って、幾つかの実施形態において、本明細書に記載の系は、精製方法が、連続または半連続様式で動作可能なように連結された、幾つかの装置を含む。
【0200】
理論に縛られることを望むものではないが、系は、精製方法全体を無菌様式で実施されるように、密閉された無菌環境に封入可能なことが企図される。
【0201】
さまざまな実施形態において、このような系の最初の装置は、出発材料、例えば精製されるタンパク質を発現する培養細胞を含有するバイオリアクターである。該バイオリアクターは、バッチもしくはフェドバッチのバイオリアクターのような任意のタイプのバイオリアクターまたは連続かん流発酵バイオリアクターのような連続バイオリアクターであってよい。該バイオリアクターは、任意の適切な材料で作製されていてよく、任意のサイズであってよい。通常材料はステンレス鋼またはプラスチックである。特定の実施形態において、バイオリアクターは使い捨てバイオリアクター、例えば、単回使用のために設計された、柔軟性の折り畳み式バッグである。
【0202】
清澄化は、バイオリアクターにおいて直接実施されてもよく、代替的には、バイオリアクターは単に細胞を培養するために使用され、清澄化は異なる槽において実施されてもよい。さらに別の実施形態において、細胞培養物は、1種または複数種の不純物を除去するために、本明細書に教示の清澄化深層ろ過装置の中に単純に流入する。従って、幾つかの実施形態において、該バイオリアクターは、深層ろ過を実施する装置と流体連通している。
【0203】
本明細書に教示の清澄化深層ろ過装置は、結合および溶出クロマトグラフィー(例えば、連続マルチカラムクロマトグラフィー装置)を使用して捕捉を実施する装置と、流体連通している。幾つかの実施形態において、結合および溶出クロマトグラフィーのための装置は、フロースルー精製を実施するための単位操作と流体連通で連結され、この操作は1以上の装置/ステップを含むことができる。幾つかの実施形態において、インラインの静的ミキサーまたはサージタンクは、結合および溶出クロマトグラフィーのための装置と、フロースルー精製に使用される最初の装置との間に含まれる。
【0204】
幾つかの実施形態において、フロースルー精製方法は、1以上の装置、例えば、活性炭装置、続いてAEXクロマトグラフィー装置、続いてpH変化のためのインライン静的ミキサーおよび/またはサージタンク、続いてCEXクロマトグラフィー装置、続いてウイルスろ過装置を含む。該装置は、一般に、任意の適切なフォーマット、例えばカラムまたはカートリッジ内であってよい。
【0205】
系の最終単位操作は、製剤化を達成するための1または複数の装置を含むことができ、これは透析ろ過/濃縮および除菌ろ過を含む。
【0206】
通常、各装置は、少なくとも1つの入り口および少なくとも1つの出口を含み、これによって、1つの装置からの出口が、系の連続した装置の入り口と流体連通可能にする。
【0207】
今日工業において使用される大部分の方法および系において、精製方法に使用される個々の装置は、「スキッド」とも称される方法設備の単位を用い、これは、必要なポンプ、バルブ、センサーおよび装置のホルダーを通常含む。通常、少なくとも1つのスキッドは、各装置と関連している。本明細書に記載の実施形態の幾つかにおいて、精製方法を通して使用されるスキッドの数は減少する。例えば、幾つかの実施形態において、フロースルー精製方法全体の実施に使用されるスキッドは、わずか1つであり、このスキッドは、複数の装置、例えば、活性炭装置、陰イオン交換クロマトグラフィー装置、陽イオン交換クロマトグラフィー装置およびウイルスろ過装置を、溶液条件の変化に必要な任意の設備と一緒に含むことができる。従って、幾つかの実施形態において、1つのスキッドが、フロースルー精製方法の前述のステップすべてに使用できる。
【0208】
幾つかの実施形態において、流体が、中断されることなくすべての装置に直接流入するという点で、さまざまな装置の間の流体連通は連続している。他の実施形態において、1または複数のバルブ、センサー、検出器、サージタンクおよび溶液のpH変化のための任意のインラインの設備が、さまざまな装置の間に含まれてよく、これによって、必要に応じて、例えば、特定の単位操作を置き換え/または除去するために、系の中の流体の流れが一時的に中断される。
【0209】
幾つかの実施形態において、1または複数のサージタンクがさまざまな装置の間に含まれる。幾つかの実施形態において、多くて3、多くて2つのサージタンクが系全体に存在する。
【0210】
幾つかの実施形態において、系は、系内の1または複数の方法パラメーター、例えば、温度、圧力、pH、伝導率、溶存酸素(DO)、溶存二酸化炭素(DCO
2)、混合率、流量、製品パラメーターを制御および/またはモニターするために、1または複数のセンサーおよび/またはプローブをさらに含む。
【0211】
幾つかの実施形態において、方法制御は、系の無菌状態に支障をきたすことのない方法で達成することができる。
【0212】
幾つかの実施形態において、センサーおよび/またはプローブはセンサーエレクトロニクスモジュールと連結可能であり、この出力を、端子盤および/またはリレーボックスに送ることができる。感知操作の結果を、コンピュータにより実行されるコントロールシステム(例えばコンピュータ)に、さまざまなパラメーター(例えば、温度および重量/体積測定値、純度)の計算および制御ならびにディスプレイおよびユーザーインターフェイスのために、入力することができる。このようなコントロールシステムはまた、電子的、機械的および/または空気圧的システムの組み合わせを含み、方法パラメーターを制御することができる。該コントロールシステムは、他の機能を実行してもよく、本発明は、任意の特定の機能または機能のセットを有することに限定されないことを理解すべきである。
【0213】
上に説明した開示は、独立した有用性を有する、複数の異なる発明を包含できる。個々のこれらの発明はこの好ましい形態(複数可)で開示されているが、本明細書に開示および例示のこれらの特定の実施形態は、多数の変形が可能なので、限定的な意味で解釈されるべきではない。本発明の主題は、本明細書に開示のさまざまな要素、特色、機能および/または特性の、すべての新規および自明でない組み合わせおよび部分的組み合わせを含む。下記の特許請求の範囲は、新規および自明でないとみなされる特定の組み合わせおよび部分的組み合わせを個別に指摘している。特色、機能、要素および/または特性の他の組み合わせおよび部分的組み合わせで具体化された発明は、本出願または関連出願からの優先権を請求する出願において特許請求され得る。このような特許請求の範囲もまた、異なる発明を対象としていても、または同じ発明を対象としていても、元々の特許請求の範囲より広い、より狭い、等しいかまたは異なっていても、本明細書において教示される発明の主題内に含まれるとみなされる。