特許第6027110号(P6027110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6027110ノッチ経路シグナリングインヒビター化合物
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  • 特許6027110-ノッチ経路シグナリングインヒビター化合物 図000031
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027110
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ノッチ経路シグナリングインヒビター化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20161107BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20161107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161107BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20161107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161107BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20161107BHJP
【FI】
   C07D471/04 121
   C07D471/04CSP
   A61K31/55
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P43/00 105
   !C07K14/47ZNA
【請求項の数】8
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2014-522877(P2014-522877)
(86)(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公表番号】特表2014-527042(P2014-527042A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】US2012047100
(87)【国際公開番号】WO2013016081
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2015年6月29日
(31)【優先権主張番号】61/512,016
(32)【優先日】2011年7月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/560,486
(32)【優先日】2011年11月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・アーサー・ヒップスカインド
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・アラン・スティーブンソン
【審査官】 榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−518483(JP,A)
【文献】 特表2000−511932(JP,A)
【文献】 特表2010−517954(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/060051(WO,A1)
【文献】 Luistro L. et al.,Preclinical Profile of a Potent γ-Secretase Inhibitor Targeting Notch Signaling with In vivo Efficacy and Pharmacodynamic Properties,Cancer Res,2009年,Vol.69,No.19,pp.7672-7680
【文献】 Wong G. T. et al.,Chronic Treatment with the γ-Secretase Inhibitor LY-411,575 Inhibits β-Amyloid Peptide Production and Alters Lymphopoiesis and Intestinal Cell Differentiation,The Journal of Biological Chemistry,2004年,Vol.279,No.13,pp.12876-12882
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造の化合物:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物。
【請求項2】
請求項1に記載の以下の構造の化合物:
【化2】
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を、薬学的に許容される担体と共同して含む、医薬組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を有効成分とする、T細胞急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、乳癌、卵巣癌、メラノーマ、肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、前立腺癌、肝臓癌、扁平上皮癌(口腔)、皮膚癌または髄芽細胞腫である癌の治療剤。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を有効成分とする、T細胞急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、乳癌、卵巣癌、メラノーマ、膵臓癌、神経膠芽腫または結腸直腸癌である癌の治療剤。
【請求項6】
T細胞急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、乳癌、卵巣癌、メラノーマ、肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、前立腺癌、肝臓癌、扁平上皮癌(口腔)、皮膚癌または髄芽細胞腫である癌の治療のための医薬品の製造のための、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の使用。
【請求項7】
T細胞急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、乳癌、卵巣癌、メラノーマ、膵臓癌、神経膠芽腫または結腸直腸癌である癌の治療のための医薬品の製造のための、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の使用。
【請求項8】
CuKα放射線を用いたX線粉末回折パターンによって特徴づけられ、周囲温度および20〜60%の相対湿度にて11.96±0.2、18.81±0.2、20.78±0.2または21.07の±0.2度2θにおける1つまたは複数のピークとともに22.97±0.2度2θにおいてピークを有する、請求項1に記載の水和物結晶
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はノッチ経路シグナリングインヒビター化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ノッチシグナリングは哺乳動物における発生および組織ホメオスタシスで不可欠な役割を果たす進化的に保存された経路である。ノッチ受容体およびリガンドは単一通過の膜貫通ドメインを含有し、細胞表面上で発現され、その理由のために、ノッチシグナリングは受容体を発現する隣接する細胞とリガンドとの間のコミュニケーションの媒介において特に重要である。ノッチ1〜ノッチ4と称される、げっ歯類およびヒトにおいて見出される4つの公知のノッチ受容体がある。ノッチ受容体は、単一のポリペプチドとして最初に合成される、細胞外ドメインおよび細胞内ドメインからなるヘテロダイマー性タンパク質である。受容体リガンド相互作用はノッチ受容体ポリペプチドの一連のタンパク質分解による切断を引き起こし、その中にはγ−セクレターゼ活性が含まれる。γ−セクレターゼ活性は細胞表面からノッチ細胞内ドメインを切断し、それは核へ移動して転写因子複合体を形成する。ノッチ細胞内ドメイン(NICD)はタンパク質の活性形態である。様々なノッチシグナリング機能は、増殖、分化、アポトーシス、血管新生、遊走および自己更新を含む。正常組織の発生および維持の間のノッチシグナリングのこれらの多様な役割は癌の異なる形態において異常に活性化される。ノッチシグナリングの発癌機能はアポトーシスの阻害および細胞増殖の促進を含む。
【0003】
γ−セクレターゼはノッチ活性化カスケードにおいて極めて重要な役割を果たす。その結果、γ−セクレターゼのインヒビターはノッチ受容体活性化をブロックする能力について活発に調べられてきた。特許文献1中で例示された化合物(7C−203等)はかかるγ−セクレターゼ阻害剤を代表する。このような見込みにもかかわらず、市販のノッチインヒビター化学療法剤は出現していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第98/28268号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ノッチ経路シグナリング阻害活性を有する化合物を見出す必要性がある。γ−セクレターゼ阻害活性を有する化合物を見出すさらなる必要性がある。ノッチ経路シグナリング阻害活性に寄与し得る別の構造上の特色を保持する化合物を見出す必要性もある。ノッチ経路シグナリング阻害活性、ならびに所望されるin vivo分布、代謝および排泄の特性を実証する化合物を見出すさらなる必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、以下の構造のノッチシグナリングインヒビター化合物:
【化1】

またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を提供する。
【0007】
本発明の第2の態様は、4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を含む医薬組成物を、薬学的に許容される担体と共同して提供する。特定の実施形態において、医薬組成物は、4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンゾアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を、薬学的に許容される担体および任意で他の治療法上の成分と共に含む。
【0008】
本発明の第3の態様は、治療上有効な量の4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を、その必要性のある癌患者へ投与することを含む、該患者においてノッチシグナリングを阻害する方法を提供する。
【0009】
本発明の第4の態様は、治療上有効な量の4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を、その必要性のある患者へ投与することを含む、患者におけるT細胞急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、乳癌、卵巣癌、黒色腫、肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、前立腺癌、肝臓癌、扁平上皮癌(口腔)、皮膚癌または髄芽細胞腫である癌を治療する方法を提供する。
【0010】
本発明の第5の態様は、治療上有効な量の4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を、その必要性のある患者へ投与することを含む、患者におけるT細胞急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、乳癌、卵巣癌、黒色腫、膵臓癌、神経膠芽腫または結腸直腸癌である癌を治療する方法を提供する。
【0011】
本発明の第6の態様は、治療法における使用ための、化合物4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を提供する。
【0012】
本発明の第7の態様は、T細胞急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、乳癌、卵巣癌、黒色腫、肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、前立腺癌、肝臓癌、扁平上皮癌(口腔)、皮膚癌または髄芽細胞腫である癌の治療における使用ための、化合物4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を提供する。
【0013】
本発明の第8の態様は、T細胞急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病または乳癌、卵巣癌、黒色腫、膵臓癌、神経膠芽腫または結腸直腸癌である癌の治療における使用ための、化合物4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を提供する。
【0014】
本発明の第9の態様は、T細胞急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病、乳癌、卵巣癌、黒色腫、肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、前立腺癌、肝臓癌、扁平上皮癌(口腔)、皮膚癌または髄芽細胞腫である癌の治療のための医薬品の製造のための化合物4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の使用を提供する。
【0015】
本発明の第10の態様は、T細胞急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、赤白血病または乳癌、卵巣癌、黒色腫、膵臓癌、神経膠芽腫または結腸直腸癌である癌の治療のための医薬品の製造のための化合物4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は実施例2の化合物についての代表的なX線粉末回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「患者」という用語は哺乳動物を意味し、「哺乳動物」はヒトを含むが、これらに限定されない。
【0018】
「治療上有効な量」または「有効量」は、癌患者におけるノッチシグナリングを阻害し、標的癌細胞を破壊することまたは患者における癌の進行を遅らせるかもしくは停止させることのいずれかに必要な化合物または薬学的に許容される塩もしくはその水和物、または化合物または薬学的に許容される塩もしくはその水和物を含有する医薬組成物の投薬量を意味する。化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の予想される投薬量は0.1〜200mg/患者/日の範囲中である。好ましい投薬量は1〜175mg/患者/日の範囲中であると予想される。最も好ましい投薬量は5〜150mg/患者/日の範囲中であると予想される。患者の治療に要求される正確な投薬量および治療時間の長さは、個別の患者の特異的な必要性および反応に加えて疾患のステージおよび重症度を考慮して医師によって決定されるだろう。1日あたりに基づく投薬量として表現されるが、投薬レジメンを調整して、より至適な治療法上の利益を患者へ提供し、粘液性腸症(胃腸管中の粘液の分泌過多および蓄積)を管理および寛解することができる。毎日の投薬に加えて、1日おきの投薬(Q2D);5日の期間にわたり1日おきの投薬続いて2日間投薬なし(T.I.W.);または3日ごとの投薬(Q3D)が、適切であろう。1日おき、T.I.W.または3日ごとの投薬レジメンは、粘液性腸症を管理または寛解するデキサメタゾンの投与(化合物1の前投与、同時投与、または後投与)と共に行なうのが好ましい。
【0019】
「治療」、「治療する」、および「治療すること」という用語は、患者が罹患している癌のためのインターベンションの全領域(1つまたは複数の症状を遅らせるかまたは回復させ、癌が実際に取り除かれなくても癌の進行を遅延させる、緩和する活性化合物の投与等)を含むことを意味する。治療される患者は哺乳動物、特にヒトである。
【0020】
本発明の化合物は、薬学的に許容される担体を使用し、多様な経路によって投与されて、好ましくは医薬組成物として処方される。好ましくは、かかる組成物は経口投与のためのものである。それらの調製のためのかかる医薬組成物およびプロセスは当該技術分野において周知である。例えばREMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(A.Gennaro,et al.編、第19版、Mack Publishing Co.,1995)を参照されたい。特定の実施形態において、医薬組成物は、4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンゾアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を、薬学的に許容される担体、および任意で特に一般的な癌または特異的な癌型の治療のための他の治療法上の成分と共に含む。
【0021】
本発明の化合物は多数の無機酸および有機酸と反応させて、薬学的に許容される酸付加塩を形成することが可能である。それらの調製のためのかかる薬学的に許容される塩および一般的な方法論は当該技術分野において周知である。例えばP.Stahl,et al.,HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE,(VCHA/Wiley−VCH,2002);S.M.Berge,et al.,“Pharmaceutical Salts,“Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol.66,No.1,January 1977を参照されたい
【0022】
化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物は、以下に記載されたものに加えて当該技術分野において公知の多様な手順によって調製することができる。特異的な合成工程は、化合物1またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を調製する異なる方法において組み合わせることができる。
【0023】
化合物1は4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミドと命名され;N−[(1S)−2−[[(7S)−6,7−ジヒドロ−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−5H−ピリド[3,2−a][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソエチル]−4,4,4−トリフルオロブタンアミドとも命名することができ;他の名称を使用して明確に化合物1を同定することができる。
【0024】
化合物1が単一の立体異性体として図示されることが理解されるだろう。4つの立体異性体を生じさせる2つの不斉中心がある。本明細書において使用される時、化合物1への参照は化合物1を含むラセミ混合物も含むことを意味する。本明細書において、(R)−および(S)−のCahn−Ingold−Prelog指定は特異的な異性体を指すために使用される。特異的な立体異性体は鏡像異性的に純粋であるかまたは濃縮された出発物質を使用して立体特異的な合成によって調製することができる。化合物1を含む出発物質、中間体またはラセミ混合物のいずれかのうちの特異的な立体異性体は、キラル固定相上でのクロマトグラフィー、酵素的分割、またはその目的のために形成されたジアステレオマー(ジアステレオマー塩等)の分別結晶もしくはクロマトグラフィーを含む、当該技術分野において周知の技法(Stereochemistry of Organic Compounds,E.I.Eliel and S.H.Wilen(Wiley 1994)およびEnantiomers,Racemates,and Resolutions,J.,Jacques,A.Collet,and S.H.Wilen(Wiley 1991)中で見出されるもの等)によって分割することができる。本発明の化合物を含有するすべての混合物は本発明内で意図されるが、好ましい実施形態は化合物1である。
【0025】
化合物1がアトロプ異性体または特異的な配座異性体として存在することも見出された。水溶液中で、8〜9%のアトロプ異性体2(マイナーなアトロプ異性体)は、24時間後に周囲温度でアトロプ異性体1(主要なアトロプ異性体)との平衡においてH NMRおよびLC−MSによって検出される。有機溶媒中で、およそ1〜2%のアトロプ異性体2は、24時間後に周囲温度でアトロプ異性体1との平衡においてH NMRおよびLC−MSによって検出される。H NMRおよびLC−MS分析によって検出可能であるが、アトロプ異性体2は分離可能ではない。
【0026】
本発明の化合物の合成における最初の出発物質として用いられる化合物は周知であり、商業的に入手可能でない程度まで、当該技術分野において当業者によって一般に用いられるかまたは一般的な参考テキストにおいて見出される標準的な手順によって、提供された具体的な参照を使用して容易に合成される。
【0027】
公知の手順および方法の例は、一般な参考テキスト(Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers Inc,1989;Compendium of Organic Synthetic Methods,Volumes 1−10,1974−2002,Wiley Interscience;Advanced Organic Chemistry,Reactions MechanismsおよびStructure、第5版、Michael B.Smith and Jerry March,Wiley Interscience,2001;Advanced Organic Chemistry、第4版、Part B,Reactions and Synthesis,Francis A.Carey and Richard J.Sundberg,Kluwer Academic/Plenum Publishers,2000等など)およびその中に引用される参照中で記載されたものを含む。
【0028】
中間体および化合物1は、SymaxDrawバージョン3.2ドローイングプログラムを使用して、一貫して適用されるIUPAC名として構造から命名される。
【実施例】
【0029】
調製1
ベンジル(2S)−2−(4,4,4−トリフルオロブタノイルアミノ)プロパノアート
【化2】

L−アラニンベンジルエステル塩酸塩(7.00g、32.5mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(28.30mL、162.3mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(7.46g、48.7mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(9.33g、48.7mmol)を、ジクロロメタン(162mL)中の4,4,4−トリフルオロ酪酸(7.131g、48.7mmol)の溶液へ窒素下の周囲温度で連続的に添加し、20時間撹拌した。クエン酸(150mL、162mmol)の20%水溶液を添加し、混合物を5分間撹拌し、層を分離した。ジクロロメタン(100mL)により水層から抽出する。合わせた有機層を重炭酸ナトリウムの飽和水溶液(150mL)により洗浄し、硫酸マグネシウムの上で乾燥し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによって残渣を精製し、ヘキサン:酢酸エチル(4:1〜2:1)により溶出して、白色固形物(9.22g、30.4mmol、94%)として表題化合物を得た。MS(m/z):304(M+1);[α]Na25=−44.6°(c=5.0、メタノール)。
【0030】
調製2
(2S)−2−(4,4,4−トリフルオロブタノイルアミノ)プロパン酸
【化3】

パラジウム/炭素(5%、1.76g、0.8mmol)を1つの小分けで、メタノール(88mL)中のベンジル(2S)−2−(4,4,4−トリフルオロブタノイルアミノ)プロパノアート(8.80g、29mmol)の溶液へ周囲温度で添加した。混合物を脱気(真空/窒素)し、水素(1気圧)により充填し、水素(29mmol)下で5時間撹拌した。Celite(登録商標)を通して濾過し、濾過ケーキをメタノールによりリンスし、濾液を濃縮して、白色固形物(6.11g、28.7mmol、99%)として表題化合物を得た。MS(m/z):214(M+1);[α]Na25=−24.7°(c=5.0、メタノール)。
【0031】
調製3
メチル2−(2−ブロモフェニル)アセテート
【化4】

ジメチルホルムアミド(2.1mL、27.3mmol)続いて塩化チオニル(52.3mL、717.8mmol)を、ジクロロメタン(1.50L)中の2−ブロモフェニル酢酸(150.0g、683.6mmol)の溶液へ7分間にわたって添加し、周囲温度のウォーターバスにより冷却した。混合物を5時間撹拌し、メタノール(41.5mL、1.0mol)を5分間にわたって添加した。溶液を通して窒素を一晩バブリングした。濃縮して、定量的収率(166.0g、724.7mmol)で無色油として表題化合物を得た。H NMR(300MHz,CDCl):7.57(d,J=7.9Hz,1H),7.30−7.26(m,2H),7.19−7.12(m,1H),3.80(s,2H),3.72(s,3H).
【0032】
調製4
メチル2−[2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]アセテート
【化5】

N−メチルピロリドン(940mL)中のメチル2−(2−ブロモフェニル)アセテート(156.6g、684mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(194.9g、752mmol)および酢酸カリウム(135.6g、1.4mol)の懸濁物を、3つの真空/窒素サイクルにより脱気した。(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)クロライド(11.4g、13.7mmol)を添加し、80℃で加熱する。15時間後に、(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)クロライド(11.4g、13.7mmol)を添加し、90℃で24時間撹拌した。周囲温度まで冷却し、氷および水の混合物(3L)の上に注ぎ、メチル第三ブチルエーテル(1L)を添加した。混合物を撹拌し、Celite(登録商標)のパッドを通して濾過し、層を分離した。メチル第三ブチルエーテル(2×500mL)により水層から抽出した。合わせた有機層を水(2×500mL)、ブライン(500mL)により洗浄し、硫酸ナトリウムの上で乾燥し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによって残渣を精製し、ヘキサン:酢酸エチル(9:1)により溶出して、白色固形物(160.6g、581.6mmol、85%)として表題化合物を得た。MS(m/z):277(M+1).
【0033】
調製5
5,7−ジヒドロピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン
【化6】

炭酸カリウム(235.7g、1.71mol)を、1,4−ジオキサン(550mL)および水(550mL)中の2−アミノ−3−ブロモピリジン(88.5g、511.7mmol)の溶液へ添加した。真空/窒素の3つのサイクルにより混合物を脱気し、パラジウム(II)アセテート(6.4g、28.4mmol)およびトリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(16.5g、56.9mmol)を添加し、窒素下の88℃で撹拌した。1,4−ジオキサン(550mL)中のメチル2−[2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]アセテート(157.0g、568.5mmol)の溶液を3分間にわたって1滴ずつ添加し、混合物を88℃で20分間撹拌した。混合物を50℃まで冷却し、水(100mL)を添加し、層を分離した。酢酸エチル(2×100mL)により水層から抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムの上で乾燥し、濃縮した。濃縮物質をN−メチルピロリドン(314mL)中で溶解し、アイスバス中で冷却し、硫酸(314mL、5.9mol)を1滴ずつ添加して、およそ45℃の温度を維持する。混合物を140℃で90分間撹拌した。周囲温度まで冷却し、氷(4kg)を添加し、50%NaOH水溶液の小分けの添加により溶液がpH7〜8になるまで塩基性化する。懸濁物を10〜15℃まで冷却し、固形物を濾過により除き、水(2L)、ヘキサン(1L)およびメチル第三ブチルエーテル(1L)により洗浄した。真空下の40℃で乾燥した。10%メタノール/ジクロロメタン溶液の還流混合物により物質を処理して、熱い状態で濾過した(×4)。合わせた濾液を濃縮して、薄茶色固形物(85g、404.3mmol、71%)として表題化合物を得た。MS(m/z):211(M+1).
【0034】
調製6
5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン
【化7】

ジメチルホルムアミド(860mL)中の炭酸セシウム(186.6g、572.7mmol)、(2−ブロモエトキシ)−tert−ブチルジメチルシラン(88.0mL、409.1mmol))およびヨウ化ナトリウム(6.1g、40.9mmol)を、5,7−ジヒドロピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン(86.0g、409.1mmol)の懸濁物へ添加し、70℃で20時間撹拌した。混合物を周囲温度まで冷却して、氷および水(100mL)の上に注いで、酢酸エチル(200mL)を添加した。混合物をCelite(登録商標)を介して濾過し、次いで酢酸エチル(100mL)により洗浄した。濾液の層を分離し、酢酸エチル(2×50mL)により水層から抽出した。合わせた有機層を水(2×100mL)、ブライン(100mL)により洗浄し、硫酸ナトリウムの上で乾燥し、濃縮した。物質をテトラヒドロフラン(1.28L)中で溶解し、Silia(登録商標)結合パラジウム除去剤(16.7g)を添加し、周囲温度で20時間撹拌した。シリカのパッドを通して濾過し、テトラヒドロフラン(200mL)により洗浄し、濃縮して、結晶した薄茶色油として表題化合物(155g、420.6mmol)を定量的収率で得た。MS(m/z):369(M+1).
【0035】
方法2:
混合物5,7−ジヒドロピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン(22.5g、106.9mmol)およびジメチルホルムアミド(500mL)を100℃まで5分間加熱した。40℃まで冷却し、炭酸セシウム(104.3g、320.1mmol)および(2−ブロモエトキシ)−tert−ブチルジメチルシラン(29.9mL、138.9mmol)を添加し、周囲温度で一晩撹拌した。およそ60℃まで2時間加熱し、次いで周囲温度まで冷却した。残渣を酢酸エチル(1L)と水(3L)との間で分配し、酢酸エチル(2×500mL)により水層から再度抽出し、合わせた有機層をブライン(2×500mL)により洗浄した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムの上で乾燥し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによって残渣を精製し、酢酸エチル:ヘキサン(0:100〜100:0)により溶出して、油(39.4g、106.9mmol、89%)として表題化合物を得た。MS(m/z):369(M+1).
【0036】
調製7
5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7−ヒドロキシイミノ−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン
【化8】

カリウム2−メチルプロパン−2−オラート(66.1g、588.8mmol)を、テトラヒドロフラン(1.6L)中の5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン(155.0g、420.6mmol)の溶液へ−5℃で添加し、10分間撹拌した。亜硝酸イソアミル(61.9mL、462.6mmol)を−5℃で1滴ずつ添加し、混合物を10分間撹拌した。氷/水(2L)の上に注ぎ、および酢酸エチル(3×200mL)により抽出した。合わせた有機層をブライン(200mL)により洗浄し、硫酸ナトリウムの上で乾燥した。トルエン(1L)を添加し、濃縮して(3×)、濃厚な茶色油(160.0g、402.5mmol、96%)として表題化合物を得た。MS(m/z):398(M+1).
【0037】
調製8
(7S)−7−アミノ−5−(2−ヒドロキシエチル)−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン
【化9】

トリフルオロ酢酸(124.0mL、1.64mol)を複数の小分けで、ジクロロメタン(620mL)およびメタノール(310mL))の混合物中の5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7−ヒドロキシイミノ−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン(155.0g、389.9mmol)の溶液へ、周囲温度のウォーターバス中で添加した。内部温度が33〜38℃で維持されるように、亜鉛(76.5g、1.2mol)を複数の小分けで添加した。周囲温度で15時間撹拌した。Celite(登録商標)を介して混合物を濾過し、10%メタノール/ジクロロメタン(100mL)により洗浄し、濾液を濃縮した。ジクロロメタン(0.5L)および氷(500g)を添加し、撹拌し、50%NaOH水溶液により塩基性化した。固形物を濾過により除いて、濾液層を分離した。ジクロロメタン(2×100mL)により水層から抽出し、合わせた有機層を濃縮した。ヘキサン中で固形物をスラリー化し、次いで濾過し、高真空下で乾燥し、明黄色固形物(74.0g、274.8mmol、71%)として表題化合物のラセミ化合物を得た。Chiralpak(登録商標)ADカラム上で物質を精製し、エタノール(0.2%ジメチルアミン(dimethethylamine)):アセトニトリル(0:100〜100:0)により溶出して、白色固形物として表題化合物(35.0g、130mmol、33.3%)を得た。MS(m/z):270(M+1);[α]Na25=+187.83°(c=6.9、メタノール)。
【0038】
調製9
7−アジド−5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン
【化10】

水素化カリウム(およそ2杯、鉱物油中で35重量%)をヘキサンにより洗浄し、デカントして油を除去し、テトラヒドロフラン(60mL)を添加し、−78℃まで冷却した。テトラヒドロフラン(60mL)中の2,4,6−トリス(1−メチルエチル)−ベンゼンスルホニルアジド(37.6g、121.6mmol)の溶液を硫酸ナトリウムの上で45分間乾燥させた。アジド溶液を15分間にわたって水素化カリウム懸濁物の中へデカントした。コールドバスを除去し、周囲温度まで45分間放置して暖め;無水溶液を取っておいた。ジイソプロピルアミン(17.0 L、121.0mmol)およびテトラヒドロフラン(50mL)の溶液を−78℃まで冷却し、n−ブチルリチウム(52.1mL、130.3mmol)を5分間にわたって添加した。コールドバスを除去し、15分間放置して暖め、次いで−78℃まで再度冷却した。テトラヒドロフラン(400mL)中の5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン(34.3g、93.1mmol)の−78℃溶液の中へ5〜10分間にわたってニューレにより挿入した。次いで−78℃で1時間撹拌し、コールドバスを除去し、15分間放置して(およそ−45℃まで)暖めた。−78℃まで冷却し、無水2,4,6−トリス(1−メチルエチル)−ベンゼンスルホニルアジド溶液を5〜10分間にわたってカニューレを介して添加した。バスを除去し、1時間にわたって放置して−5〜0℃へ暖めた。アイス/ウォーターバス中で冷却し、酢酸(26.7mL、465.3mmol))を13分間にわたって添加した。65分間にわたって放置して周囲温度まで暖め、飽和重炭酸ナトリウム溶液(1L)によりクエンチした。酢酸エチル(600mL)および水(2L)により反応を希釈し、層を分離し、酢酸エチル(2×400mL)により水層から再度抽出した。合わせた有機層を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(500mL)およびブライン(500mL)により洗浄し、硫酸ナトリウムの上で乾燥し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによって残渣を精製し、酢酸エチル:ヘキサン(0:100〜100:0)により溶出して、油(39.8g、92.3mmol、99%)として表題化合物を得た。MS(m/z):410(M+1).
【0039】
調製10
7−アミノ−5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン
【化11】

パラジウム/炭素(2.2g、1.0mmol、炭素に対して5%)を、エタノール(923mL)中の7−アジド−5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7H−pyrido[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン(39.8g、92.3mmol)の窒素パージした溶液へ添加した。水素により3回排出/充填し、水素(1気圧)下の周囲温度で一晩撹拌した。Celite(登録商標)の上を濾過し、エタノールおよび酢酸エチルによりリンスし、濃縮して、透明油(36.6g、89.9mmol、97%)として表題化合物を得た。MS(m/z):384(M+1).
【0040】
調製11
tert−ブチルN−[(1S)−2−[[5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]カルバメート
【化12】

7−アミノ−5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7H−pyrido[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン(36.3g、89.9mmol)、ジクロロメタン(360mL)、トリエチルアミン(16.3mL、116.9mmol)、3−ヒドロキシトリアゾロ[4,5−b]ピリジン(15.9g、116.9mmol)および(2S)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)プロパン酸(22.5g、116.9mmol)の混合物を0℃まで冷却した。1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(22.4g、116.9mmol)を添加し、5分後に一晩放置して周囲温度まで暖めた。水(500mL×2)、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(2×300mL)、ブライン(300mL)により洗浄し、次いで硫酸ナトリウムの上で乾燥し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによって残渣を精製し、イソプロピルアルコール:ヘキサン(5:95〜10:90)により溶出して、白色泡(43.14g、77.77mmol、86.50%)として表題化合物を得た。MS(m/z):555(M+1).
【0041】
調製12
(2S)−2−アミノ−N−[5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]プロパンアミド
【化13】

トリフルオロ酢酸(30mL、396.76mmol)を、tert−ブチルN−[(1S)−2−[[5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]カルバメート(5.56g、10.0mmol)およびジクロロメタン(30mL)の0℃の溶液へ5分間にわたって添加し、放置して暖め、周囲温度で5時間撹拌した。SCX(登録商標)カラム(Isolute SCX2 x6)によるフラッシュクロマトグラフィーによって残渣を精製し、メタノール続いて酢酸エチル:メタノール(2Nアンモニア)(1:1)により溶出して、定量的収率で白色固形物(3.48g、10.2mmol)として表題化合物を得た。MS(m/z):341(M+1).
【0042】
実施例1
4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミド
【化14】

(2S)−2−(4,4,4−トリフルオロブタノイルアミノ)プロパン酸(28.9g、135.7mmol;調製2中で実質的に上で記載されるように調製した)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(29.7g、155.1mmol)を、ジクロロメタン(696mL)中の(7S)−7−アミノ−5−(2−ヒドロキシエチル)−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン(34.8g、129.2mmol)の懸濁物へ0℃で連続して添加し、5分間で撹拌した。1−ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(24.7g、155.1mmol)を添加し、1時間撹拌したままにし、次いで周囲温度まで暖めた。(2S)−2−(4,4,4−トリフルオロブタノイルアミノ)プロパン酸(0.6g、2.6mmol)を添加し、周囲温度で15分間で撹拌した。水(600ml)を添加し、白色固形物を濾過により除き、濾液の層を分離した。水(3×200mL)により有機層を洗浄し、硫酸ナトリウムの上で乾燥し、濃縮して、薄茶色泡を得た。50%メチル第三ブチルエーテルヘキサン(500mL)中で物質をスラリー化し、固形物を濾過により除き、高真空下で乾燥して、65gの固形物を得た。
【0043】
水(195mL)および重炭酸カリウム(14.0g、140.0mmol)を、メタノール(195mL)中の先に得られた固形物(65.0g、140.0mmol)の10℃溶液へ添加し、周囲温度で29時間撹拌した。ジクロロメタン(3×50mL)により濃縮および抽出した。合わせた有機層を水(3×20mL)により洗浄し、硫酸ナトリウムの上で乾燥し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィーによって残渣を精製し、メタノール:ジクロロメタン(98:2、アンモニア中で7N)により溶出した。物質を50%メチル第三ブチルエーテル/ヘキサンから粉砕し、次いでメチル第三ブチルエーテル(500ml)から粉砕した。固形物をメチル第三ブチルエーテル(200mL)およびヘキサン(200mL)により洗浄し、高真空下で固形物を乾燥して、灰白色固形物(42.0g、90.4mmol、65%)として表題化合物を得た。MS(m/z):270(M+1);[α]Na25=−153.40°(c=5.0、メタノール)。
【0044】
方法2:
1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(2.50g、13.0mmol)を、(2S)−2−アミノ−N−[5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]プロパンアミド(3.4g、10.0mmol)、ジクロロメタン(40mL)、3−ヒドロキシトリアゾロ[4,5−b]ピリジン(1.8g、13.0mmol)、4,4,4−トリフルオロブタン酸(1.9g、13.0mmol)、およびトリエチルアミン(1.8mL、13.0mmol)の0℃混合物へ添加した。撹拌したままにして、周囲温度まで一晩暖めた。水(40mL)を添加し、ジクロロメタン(100mL)と水(50mL)との間で分配した。層を分離し、ジクロロメタンにより水層から再度抽出し、合わせた有機層を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(2×100mL)により洗浄した。ジクロロメタン(25mL)により重炭酸塩層から再度抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムの上で乾燥し、濃縮する。フラッシュクロマトグラフィーによって残渣を精製し、メタノール(2Nアンモニア):ジクロロメタン(0:100〜5:95)により溶出して、3.77gのジアステレオマーの混合物を得た。物質をChiralpak(登録商標)ADカラム上で物質を精製し、エタノール(0.2%ジメチルアミン(dimethethylamine)):アセトニトリル(0:100〜100:0)により溶出して、白色固形物として表題化合物(1.7g、3.7mmol、37%)を得た。MS(m/z):465(M+1).
【0045】
調製13
メチル2−(2−ブロモフェニル)アセテート
【化15】

窒素雰囲気下でメタノール(5.0L)と2−ブロモフェニル酢酸(500.0g、2.33mol)を合わせた。20〜35℃で濃縮硫酸(185.8mL)を1滴ずつ添加し、次いで60〜65℃まで3〜4時間撹拌しながら暖めた。反応混合物を45℃まで冷却し、45℃より下の減圧下でおよそ750mLの体積まで濃縮した。反応混合物を10〜30℃まで冷却し、ジクロロメタン(2.5L)を添加した。水酸化ナトリウム(7%、380.0mL)によりpHを7〜8に調整して、層を分離した。45℃より下の減圧下で有機相を濃縮乾固し、黄色油として表題化合物(516.5g、97.0%)を得た。
【0046】
調製14
5,7−ジヒドロピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン
【化16】

メチル2−(2−ブロモフェニル)アセテート(1.0kg、4.36mol)、ジオキサン(11.0L)およびN−メチル−2−ピロリドン(7.0L)を、室温で撹拌しながら合わせた。ビス(ピナコラト)ジボロン(1.2kg、4.58mol)および酢酸カリウム(855.9g、8.72mol)を混合物へ添加し、次いで溶液を通して窒素ガスを2〜3時間通過させることによって溶液を脱気した。[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロライドジクロロメタン添加物(71.2g、97.2mmol)を窒素雰囲気下でチャージし、次いで反応混合物を80〜90℃まで18〜20時間加熱して、単離なしに使用される溶液としてメチル2−[2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]アセテートを得た。反応混合物を15〜25℃まで冷却し、水(3.0L)中の2−アミノ−3−ブロモピリジン(675.0g、3.90mol)および三塩基性リン酸カリウム(2.41kg、11.3mol)の溶液を添加した。溶液を通して窒素ガスを2〜3時間通過させることによって溶液を脱気し、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロライドジクロロメタン添加物(106.8g、130.8mmol)を添加し、次いで反応混合物を80〜90℃まで18〜40時間加熱した。反応混合物を50〜60℃まで冷却し、飽和重炭酸ナトリウム(13.0L)、飽和塩化ナトリウム(13.0L)および水(13.0L)からなる溶液を徐々に添加した。50〜60℃で2〜3時間混合物を撹拌し、15〜25℃まで冷却し、追加の18〜20時間撹拌した。生じた固形物を濾過し、濾過ケーキを水(2×2.0L)により洗浄した。固形物を清浄な反応容器へ移し、酢酸エチル(5.0L)を添加し、混合物を60〜70℃まで2〜3時間加熱した。15〜25℃まで溶液を冷却し、1〜2時間撹拌し、生じた固形物を濾過した。濾過ケーキを酢酸エチル(2×750mL)により洗浄し、生じた固形物を真空下で乾燥して、灰白色固形物として表題化合物(644.0g、68.1%)を得た。
【0047】
調製15
5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン
【化17】

アセトニトリル(340.0mL)中の5,7−ジヒドロピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン(33.8g、0.16mol)を添加し、20〜30℃で0.5〜1時間撹拌した。炭酸セシウム(104.6g、0.32mol)および(2−ブロモエトキシ)−tert−ブチルジメチルシラン(42.2g、0.18mol)を添加し、反応混合物を70〜80℃まで18〜20時間加熱した。反応混合物を20〜25℃まで冷却し、珪藻土(50.6g)を通して濾過した。濾過ケーキをアセトニトリル(2×50.6mL)により洗浄し、濾液を減圧下で濃縮して、およそ67.5mLの全体積に達した。トルエン(152mL)、活性炭(2.53g)を添加し、混合物を60〜70℃まで1〜2時間加熱した。混合物を25〜35℃まで冷却し、反応混合物を珪藻土(50.6g)の上で濾過した。濾過ケーキをトルエン(17.0mL)によりリンスし、減圧下で濃縮して、放置すると結晶する薄茶色油(56.8g、92.2%)として表題化合物を得た。
【0048】
調製16
5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7−ヒドロキシイミノ−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン
【化18】

5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン30.0g、0.08mol)およびトルエン(300.0mL)を合わせ、反応混合物を−10〜0℃まで冷却した。カリウムtert−ブトキシド(18.2g、0.16mol)、亜硝酸イソアミル(13.34g、0.11mol)を添加し、次いで3〜5時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(210mL)および水(510mL)の低温の(0〜5℃)二相性溶液へ移し、15〜30分間撹拌した。反応混合物を15〜25℃まで暖め、層を分離した。水層を追加の酢酸エチル(120mL)およびメチルtert−ブチルエーテル(120mL)により抽出し、有機層を合わせた。有機層をおよそ60〜90mLの溶液体積まで減圧下で濃縮し、次いでトルエン(240mL)および酢酸エチル(75mL)を添加した。溶液をシリカゲル(45.0g)を介して濾過し、シリカゲルをトルエン(210mL)および酢酸エチル(60mL)の混合物によりリンスし、濾液をおよそ75mLの体積まで減圧下で濃縮した。ヘプタン(120mL)を添加し、混合物をおよそ60mLの体積まで濃縮し、生じた固形物を濾過した。濾過ケーキをヘプタン(25mL)により洗浄し、真空下で乾燥して、黄色固形物として表題化合物(28.3g、72.5%)を得た。
【0049】
調製17
7−アミノ−5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン
【化19】

5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7−ヒドロキシイミノ−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン(206.0g、0.52mol)およびテトラヒドロフラン(2.3L)をオートクレーブの中で窒素雰囲気下で合わせた。Raneyニッケル(232.0g、1.13重量/重量当量)を反応混合物へ添加し、水素雰囲気(87psi)を導入した。反応混合物を60〜65℃で24時間撹拌した。混合物を珪藻土の上で濾過し、濾過助剤をテトラヒドロフラン(500mL)により洗浄した。濾液を濃縮して、茶色油として表題化合物(196.0g、93.2%)を得た。MS(m/z):384(M+1).
【0050】
調製18
tert−ブチルN−[(1S)−2−[[5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]カルバメート
【化20】

7−アミノ−5−[2−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシエチル]−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−6−オン(166.0g、0.43mol)、ジクロロメタン(2.2L)およびL−Boc−アラニン(106.4g、0.56mol)を窒素雰囲気下で合わせた。ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.46g、10.8mmol)およびトリエチルアミン(102.5mL、0.74mol)を、30℃未満の内部温度を維持して添加した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(128.2g、0.67mol)を小分けで添加し、20〜30℃で16〜18時間撹拌した。シリカゲルクロマトグラフィー(300gシリカゲル)によって反応混合物を精製し、ジクロロメタン(498mL×2)により溶出した。ジクロロメタン溶液を合わせ、水(2×3.3L)により洗浄した。有機相を300mL〜400mLの体積まで減圧下で濃縮し、酢酸エチル(664.0mL)を添加した。混合物を300〜400mLの体積まで減圧下で濃縮し、酢酸エチル(664mL)を添加した。混合物を300〜400mLの体積まで減圧下で濃縮し、酢酸エチル(1.3mL)を添加した。テトラ−n−ブチルフッ化アンモニウム三水和物(149.4g、0.47mol)を添加し、20〜30℃で16〜18時間撹拌した。塩化ナトリウムの水溶液(20%、1.6L)を添加し、層を分離し、有機相を塩化ナトリウム水溶液(20%、1.6L)により再び洗浄した。有機層をおよそ800〜900mLの体積まで濃縮し、混合物を20〜30℃で12〜16時間撹拌した。生じた固形物を濾過し、濾過ケーキを酢酸エチル(91.3mL)により洗浄した。シリカゲルクロマトグラフィー(300gシリカゲル)によって濾液を精製し、酢酸エチル(2×500mL)により溶出して、黄色油として表題化合物(82.6g、85.2%de、100%ee、51.2%収率)を得た。MS(m/z):441(M+1).
【0051】
調製19
(2S)−2−アミノ−N−[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]プロパンアミド
【化21】

tert−ブチルN−[(1S)−2−[[5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]カルバメート(54.0g、0.12mol)およびアセトニトリル(212.7mL)を窒素雰囲気下で合わせた。塩酸(317.5mL、4N、1.27mol)を1滴ずつ添加して30℃未満の内部温度を維持し、反応混合物を20〜30℃で16〜18時間撹拌した。水(324.0mL)およびジクロロメタン(430mL)を添加し、層を分離した。有機層を廃棄し、ジクロロメタン(645mL)を水相へ添加し、水酸化ナトリウム水溶液(20%、252mL)を使用してpHをおよそ10へ調整した。層を分離し、水層を追加のジクロロメタン(2×430mL)により抽出し、有機相を合わせた。有機層をおよそ130〜150mLの体積まで45℃より下の減圧下で濃縮し、テトラヒドロフラン(322mL)を添加した。溶液をおよそ200〜220mLの体積まで45℃より下の減圧下で濃縮し、追加のテトラヒドロフラン(213mL)を添加した。反応混合物をおよそ250〜270mLの体積まで減圧下で濃縮し、60〜65℃まで2〜3時間加熱した。反応混合物を5〜15℃まで徐々に冷却し、5〜8時間撹拌した。生じた固形物を濾過し、濾過ケーキを酢酸エチル(56mL)により洗浄した。固形物を清浄な反応容器へ移し、酢酸エチル(150mL)を添加し、混合物を60〜65℃まで2〜3時間加熱し、次いで5〜15℃まで溶液を徐々に冷却した。この温度で2〜3時間撹拌し、生じた固形物を濾過によって回収した。濾過ケーキを酢酸エチル(45mL)により洗浄し、固形物を65℃より下の減圧下でオーブン中で乾燥して、灰白色固形物として表題化合物(21.0g、99.2%de、100%ee、51.0%収率)を得た。MS(m/z):341(M+1).
【0052】
実施例2
4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミド水和物
【化22】

(2S)−2−アミノ−N−[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]プロパンアミド(45.0g、132.2mmol)およびジメチルホルムアミド(452.9mL)を窒素雰囲気下で合わせた。0〜5℃まで冷却し、N−エチルジイソプロピルアミン(77.4mL、444.0mmol)、4,4,4−トリフルオロ酪酸(19.9g、139.3mmol)およびヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(22.3g、153.1mmol)を添加した。5〜10分間溶液を撹拌し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(30.6g、159.6mmol)を1つの小分けで添加した。20〜25℃まで反応混合物を暖め、1〜2時間撹拌した。酢酸エチル(1.4L)および水(1.8L)を添加し、0.5〜1時間撹拌した。相を分離し、有機層を重炭酸ナトリウム水溶液(5%、1.0L)により洗浄し、溶液を減圧下で濃縮して、200〜300mLの体積を得た。エタノール(522mL)を添加し、溶液を減圧下で濃縮して、200〜300mLの体積を得た。3回反復した。エタノール(180mL)および炭酸カリウムの5%溶液(34.6mL)を添加し、20〜25℃で0.5〜1時間撹拌した。水(667mL)および4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−2−[[(7S)−5−(2−ヒドロキシエチル)−6−オキソ−7H−ピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]−1−メチル−2−オキソ−エチル]ブタンアミド水和物(0.4g、0.86mmol)のシード結晶(シード結晶は、以前の生成物のロットから得られた固形物から生成することができるか、または一般的に既知であり当業者によって使用される他の方法(小さなアリコートの再結晶等)を使用して得ることができる)を添加し、20〜25℃で2〜3時間撹拌した。濾過し、濾過ケーキをエタノール(63mL)および水(42mL)の混合物により2回洗浄した。生じた固形物を40℃より下の減圧下でオーブン中で乾燥して、白色〜灰白色の固形物として表題化合物(41.9g、99.6%de、100%ee、65.3%収率)を提供した。MS(m/z):465(M−HO+1).
【0053】
実施例2のXRPD
結晶性固体のXRPDパターンは、35kVおよび50mAで操作するCuKα源(λ=1.54060Å)およびVantec検知器を装備したBruker D4 EndeavorX線粉末回折計で得られる。サンプルは、2θにおいて0.0087°のステップサイズおよび0.5秒/ステップのスキャン速度により、ならびに0.6mmの発散スリット、5.28mmの固定した散乱防止スリット、および9.5mmの検出スリットにより、2θにおいて4〜40°の間でスキャンされる。乾燥粉末は石英サンプルホルダー上に充填され、平滑表面はスライドグラスを使用して得られる。任意の与えられた結晶形については、結晶形および晶癖等の要因から生じる好ましい配向に起因して、回析ピークの相対的強度が変動し得ることは結晶学の技術分野において周知である。好ましい配向の効果が存在する場合、ピーク強度は変化するが、多形体の特徴的なピーク位置は不変である(例えば、以下のものを参照されたい:米国薬局方33−国民医薬品集28章<941>Characterization of Crystalline Solids by X−ray Powder Diffraction(XRPD)、公定書2010年10月1日〜2011年2月1日)。さらに、任意の与えられた結晶形については、ピーク位置の角度がわずかに変動し得ることも結晶学の技術分野において周知である。例えば、ピーク位置は、サンプルが解析される温度または湿度における変動、サンプル変位、または内部スタンダードの存在もしくは非存在に起因してシフトし得る。本事例において、2θにおける±0.2のピーク位置変動は、示された結晶形の明確な同定を妨害せずに、これらの可能性のある変動を考慮へ入れるだろう。結晶形の確認は、際立ったピーク(°2θの単位で)、典型的にはより顕著なピークの任意のユニークな組み合わせに基づいて行なわれ得る。結晶形回折像は周囲温度(19〜25℃)および相対湿度(20〜60%)で採取される。
【0054】
したがって、実施例2の化合物の調製されたサンプルは、表1中で以下に記載されるような回析ピーク(2θ値)を有しているとして、CuKα放射線を用いたXRPDパターンによって特徴づけられる。形態は結晶性であり、0.2度の回折角についての公差により、11.96、18.81、20.78および21.07度2θからなる群から選択された1つまたは複数のピークと組み合わせて22.97度でピークを含有する。
【表1-1】
【表1-2】
【0055】
実施例2の固体NMR
13C交差分極/マジック角回転(CP/MAS)NMR(固体NMRまたはSSNMR)スペクトルは、100.622MHzの炭素周波数で操作され、Bruker 4mmの三重共鳴プローブ(K299551)を装備したBruker Avance II 400MHz NMRスペクトロメーター(LillyタグK299547)を使用して得られる。TOSS側波帯抑圧は、SPINAL64デカップリング(70.8ワット)およびRAMP100形状H核CPパルスを用いる交差分極と共に使用される。捕捉パラメータは以下のとおりである。2.5μsの90°プロトンr.f.パルス幅、接触時間は3.5msであり、5sのパルス繰り返し時間、10kHzのMASの周波数、30kHzのスペクトル幅、捕捉時間は34msであり、スキャン数は10,587であった。化学シフトは別の実験においてアダマンタン(δ=29.5ppm)を参照する。13C NMR(固体):δ(ppm)18.65,27.52,28.76,47.66,49.96,55.02,58.88,122.87,126.49,129.73,131.37,132.31,137.28,145.01,149.17,168.53,170.30,175.55.
【0056】
実施例2のKarl Fischer滴定
Karl Fischer滴定はBrinkmann Methrohm 756 KF電量計を使用して得られる。対照スタンダードは二重で水スタンダードとしてHydranol(登録商標)を使用して決定される。三重でサンプルを実行して、サンプル中の水の量を決定するために水の平均パーセンテージを記録する。実施例2のKarl Fischerの滴定の平均の結果は3.9%水である。実施例2における水の1モル当量の理論的なパーセンテージは3.7%である。
【0057】
癌は、細胞および組織の微小環境における、DNA修復、ゲノム安定性、細胞増殖、細胞死、接着、血管新生、浸潤および転移を調節する、1つまたは複数の遺伝子の異常機能によって、その開始および進行が誘導される疾患の不均一なコレクションとしてますます認識されている。「癌」遺伝子のバリアントまたは異常機能は、天然に存在するDNA多型、ゲノムコピー数の変化(増幅、欠失、染色体消失または重複を介して)、遺伝子および染色体の構造の変化(脱調節された遺伝子発現を引き起こす染色体転座、逆位または他の再配置を介して)、ならびに点突発変異に由来し得る。癌性新生物は1つの異常な遺伝子機能によって誘導され、同じ異常な遺伝子機能によって維持されるか、または追加の異常な遺伝子機能によって維持および悪化した進行が起こり得る。
【0058】
上で言及された遺伝的染色体異常以外に、各々の癌は、DNAメチル化、ゲノムインプリンティング、およびアセチル化、メチル化またはリン酸化によるヒストン修飾を含むゲノムの後成的修飾も含み得る。後成的修飾は悪性腫瘍の誘導および/または維持において役割を果たすことができる。
【0059】
ヒト癌における細胞遺伝学の異常の大規模なカタログはオンラインで編集され、維持され、定期的に更新される(米国National Cancer Institute(NCI)癌ゲノム解剖プロジェクト(Cancer Genome Anatomy Project)(CGAP)ウェブサイトでの癌における染色体異常のMitelmanデータベース(Mitelman Database of Chromosome Aberrations in Cancer):http://cgap.nci.nih.govを参照されたい)。データベースは本発明の少なくともいくつかの悪性腫瘍についての染色体異常を含む。Wellcome Trust Sanger Instituteの癌ゲノムプロジェクト(Cancer Genome Project)は、腫瘍形成の原因として結びつけられるすべてのヒト遺伝子の詳細なオンライン「腫瘍遺伝子センサス(Cancer Gene Census)」(http://www.sanger.ac.uk/genetics/CGP/Censusを参照されたい)に加えて、ヒト癌における体細胞変異のCOSMIC(癌における体細胞変異のカタログ(Catalogue of Somatic Mutations in Cancer))データベース(http://www.sanger.ac.uk/genetics/CGP/cosmicを参照されたい)を維持している。様々な癌の原因として結びつけられる細胞遺伝学的変化に対する豊富な情報を含有するさらなるソースは、腫瘍学および血液学における遺伝学および細胞遺伝学のアトラス(Atlas of Genetics and Cytogenetics in Oncology and Haematology)(http://atlasgeneticsoncology.org//Anomalies/Anomliste.html#MDS)である。これらのデータベースは、本発明の少なくともいくつかの悪性腫瘍についての染色体異常も含む。
【0060】
生検による癌性悪性腫瘍の診断、免疫表現型分析および他の試験は公知でありルーチンに使用される。高解像度染色体分染法および高度な染色体イメージング技術に加えて、癌の疑いのある症例における染色体異常は、細胞遺伝学的解析(蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、核型分析、スペクトル核型分析(SKY)、マルチプレックスFISH(M−FISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、一塩基変異多型アレイ(SNPチップ)および他の診断等)および当業者に公知であり使用される分析試験を介して決定することができる。
【0061】
ノッチの発癌役割は、ノッチ1細胞内ドメインがT細胞レセプターのβプロモーター領域へ転座し、ノッチ1細胞内ドメインの過剰発現をもたらすことを含むヒトT細胞白血病において最初に報告された(Grabher et al.Nature Review Cancer,2006(6):347−359;Weng et al.Science,2004(306):269−271)。マウスの造血系前駆細胞におけるノッチ1細胞内ドメインの過剰発現により、ヒトに類似するT細胞急性リンパ性白血病がマウスにおいて示された。T細胞急性リンパ性白血病に加えて、ノッチシグナルは、受容体増幅ならびにリガンドおよび/または受容体の過剰発現を含む複数の機構を介して、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病および赤白血病を含む他の癌において発癌性を持つという証拠が増加している。リガンドおよび/または受容体の突然変異または過剰発現に起因する異常な構成的ノッチシグナリングは、乳癌、卵巣癌(Park et al.Cancer Research,2006(66):6312−6318)、メラノーマ(Gast et al.Genes,Chromosomes & Cancer,2010(49):733−745)、肺癌、非小細胞肺癌(Westhoff et al.PNAS,2009(106):22293−22298)、膵臓癌、神経膠芽腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、子宮頸癌、前立腺癌、肝臓癌、扁平上皮癌(口腔)、皮膚癌および髄芽細胞腫(Ranganathan et al.,Nature Review Cancer,2011(11):338−351および補遺S1(表))を含む多数の悪性固形腫瘍にも関与する。ノッチシグナリングの阻害は、疾患が構成的ノッチシグナリング経路の異常な活性化によって誘導された癌患者に対して治療法上の利益を提供する魅力的な標的である。Shih et al.Cancer Research,2007(67)1879−1882.
【0062】
以下のin vitroおよびin vivoの研究は、様々な特異的な癌細胞株に対する化合物1のノッチ経路シグナリング阻害の活性および有効性を実証する。一般的にこれらのアッセイはヒト臨床における化学療法活性を表すものとして当業者によって認められている。γ−セクレターゼによるノッチ細胞内ドメイン切断の阻害は各々のノッチ1、ノッチ2、ノッチ3およびノッチ4受容体に対して効果的であると考えられる。ノッチ経路シグナリング阻害の活性および有効性を証明するアッセイは実質的に以下のように、または類似のデータを提供する類似のアッセイによって実行することができる。
【0063】
ノッチ1のN1ICD核内蓄積の細胞イメージングアッセイ
HEK293ΔE12細胞(HEK293細胞は、23アミノ酸シグナルペプチド配列のMPRLLTPLLCLTLLPALAARGLR(配列番号:1)をそのN末端で持ち、アミノ酸1703〜2183(NP_032740.3)をコードするマウスノッチ1 cDNAを安定的に発現するように操作された)を、96ウェルプレート中に5000細胞/ウェルでプレーティングし、5%ウシ胎仔血清を含有するDulbecco改変Eagle培地−高グルコース中で、5%COで37℃で24時間インキュベーションする。細胞は、試験化合物(1000nM〜0.05nMの範囲にわたる10点の1:3希釈で、0.2%の最終ジメチルスルホキシド(DMSO)濃度による用量)により処理される。24時間の処理後に、細胞プレートを以下のステップを介して連続して加工する。細胞を100μl/ウェルのPREFER(商標)固定剤により室温(RT)で30分間固定し;細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の100μl/ウェルの0.1%TRITON(登録商標)X100によりRTで20分間透過性にし;各々100μl/ウェルのPBSにより3回洗浄し;1%ウシ血清アルブミンを含有するPBS中で1:2000で50μl/ウェルのウサギ抗N1ICD(ノッチ1細胞内ドメイン)抗体を添加し、37℃で1.5時間インキュベーションし;各々100μl/ウェルのPBSにより3回洗浄し;1%ウシ血清アルブミンを含有するPBS中で1:1000希釈で50μl/ウェルのヤギ抗ウサギIgG Alexa 488によりインキュベーションし、37℃で1時間インキュベーションし;各々100μl/ウェルのPBSにより3回洗浄し、100μl/ウェルの50μg/mlのRNAseを含有する15μMヨウ化プロピディウムを染色核へ30分間添加する。ACUMEN EXPLORER(商標)レーザースキャニング蛍光マイクロプレートサイトメーター(TTP LABTECH LTD)によりプレートをスキャンして、全細胞核カウント/ウェル、および655nm〜705nm(DNAに結合されたヨウ化プロピディウムの放射)での蛍光による全核面積/ウェル、および505nm〜530nmでの核領域中のN1ICDへの抗体結合の蛍光を測定する。アッセイの主なアウトプットは、全核面積に対する核N1ICDの全蛍光の比率(正規化された核N1ICDシグナル)である。相対的細胞毒性プロファイリングは0.2%DMSO対照細胞に対する%細胞の数として採取された。切断されたノッチ1またはN1ICDを認識する抗体は、Val1744でのヒトノッチ1のアミノ末端切断部位へ対応するヒトペプチドに対して作製される。無処理対照細胞において、ノッチ1から生成されたN1ICDは、核内に移動し蓄積するだろう。細胞がノッチ1切断阻害化合物によって処理される場合、核N1ICDのシグナルは減少するだろう。濃度反応およびIC50は核N1ICDシグナルについての4パラメータロジスティックへの曲線フィッティングによって決定され、一方で%細胞数は細胞毒性プロファイリングについての同じグラフ中にプロットされる。アッセイを本質的に上記のように実行した結果、化合物1についての平均のIC50は0.41nM(n=7)である。化合物は1000nM濃度まで細胞数に影響を与えない。
【0064】
これらのデータは、化合物1がノッチ1への親和性を有しており、ノッチ1細胞内ドメイン細胞シグナリングペプチドの細胞内蓄積を阻害することを証明する。
【0065】
ヒト腫瘍細胞株におけるN1ICD切断の阻害
N1ICD切断を阻害する能力における化合物1の有効性を評価するために、複数のヒト腫瘍細胞株を利用する。A2780はヒト卵巣細胞株(Sigma−Aldrich、番号93112519)であり;MIA PaCa−2はヒト膵臓細胞株(ATCC番号CRL−1420)であり;BxPC−3はヒト膵臓細胞株(ATCC番号CRL−1687)であり;SW480はヒト結腸直腸細胞株(ATCC番号CCL−228)であり;HCT 116はヒト結腸直腸細胞株(ATCC番号CCL−247)であり;DLD−1はヒト結腸直腸細胞株(ATCC番号CCL−221)であり;MDA−MB−231はヒト乳腺細胞株(ATCC番号HTB−26)であり;U−87 MGはヒト神経膠芽腫細胞株(ATCC番号HTB−14)であり;A375はヒト悪性メラノーマ細胞株(ATCC番号CRL−1619)であり;CCRF−CEMはヒト急性リンパ性白血病(ALL)細胞株(ATCC番号CCL−119)であり;SUP−T1はヒトT細胞リンパ芽球性白血病細胞株(ATCC番号CRL−1942)であり;K−562はBcr遺伝子およびAbl1の遺伝子からなる融合転写物の存在によって特徴づけられるヒト慢性骨髄性白血病(CML)細胞株(ATCC番号CCL−243)であり;Jurkat(クローンE6−1)はヒト急性T細胞白血病細胞株(ATCC番号TIB−152)であり;MOLT−3はヒト急性リンパ性白血病(ALL)細胞株(ATCC番号CRL−1552)であり;MOLT−4はヒト急性リンパ性白血病(ALL)細胞株(ATCC番号CRL−1582)であり;HEL 92.1.7はヒト赤白血病細胞株(ATCC番号TIB−180)である。各々の細胞株は、明示されたカタログ番号でのSigma−Aldrichから得られるA2780細胞株以外は、明示されたATCC番号でAmerican Type Culture Collection(ATCC)から得られる。細胞は、湿潤雰囲気において5%CO中の37℃でそれぞれの培養培地中で増殖される。A2780ヒト卵巣癌についての細胞培養培地は、2.05mM L−グルタミン含有RPMI−1640(フェノールレッド不含有)に2mM L−グルタミン、0.01mg/mlインスリンおよび10%ウシ胎仔血清(FBS)を添加したものであり;HCT 116ヒト結腸直腸癌については、1.5mM L−グルタミン、0.075%重炭酸ナトリウムおよび10%FBSを含有するMcCoy5Aであり;SW480ヒト結腸直腸癌については、2.05mM L−グルタミン、20mM HEPESおよび10%FBSを含有するRPMI−1640であり;U−87 MGヒト神経膠芽腫については、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸(NEAA)、1mMピルビン酸ナトリウムおよび10%FBSを含有する最小必須培地/Earl平衡塩類溶液であり;MIA PaCa−2ヒト膵臓癌については、高グルコース(4500mg/ml)、4mM L−グルタミン、2.5%ウマ血清および10%FBSを含有するピルビン酸ナトリウム不含有Dulbecco改変Eagle培地(DMEM)であり;K−562ヒトCMLについては、高グルコース(4500mg/ml)、4mM L−グルタミン、10mM HEPES、0.1mM NEAA、1mMピルビン酸ナトリウムおよび10%FBSを含有するDMEMであり;Jurkat(クローンE6−1)ヒト急性T細胞白血病については、2.05mM L−グルタミン、2.5g/Lグルコース、10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、0.075%重炭酸ナトリウムおよび10%FBSを含有するRPMI−1640であり;A−375ヒト悪性メラノーマおよびMDA−MB−231ヒト乳腺腺癌については、高グルコース(4500mg/ml)、4mM L−グルタミンおよび10%FBSを含有するDMEMであり;BxPC−3ヒト膵臓腺癌、DLD−1ヒト結腸直腸腺癌、SUP−T1ヒトリンパ芽球性白血病、MOLT−3ヒトALL、Molt−4ヒトALL、CCRF−CEMヒトALL、およびHEL 92.1.7ヒト赤白血病については、2.05mM L−グルタミン、2.5g/Lグルコース、20mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウムおよび10%FBSを含有するRPMI−1640である。80〜90%コンフルエントの時に、細胞を、化合物(50nM〜0.0025nMの範囲にわたる10点の1:3希釈で、0.01%の最終ジメチルスルホキシド(DMSO)濃度による用量)により処理する。24時間の処理後に、細胞プレートを本質的に以下のステップを介して連続して加工する。細胞をトリプシン処理後に回収し、氷冷PBSにより1回洗浄し、1×Complete錠剤(Roche Complete(商標)番号11 697 498 001)および1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma Aldrich P8340)を含有する、100μlの氷冷XY溶解バッファー(25mMトリスpH7.5、10μg/mlトリプシン/キモトリプシン阻害剤、10μg/mlアプロチニン、60mM β−グリセリンリン酸、1%Triton(登録商標)X−100、10mM NaF、2.5mMピロリン酸、150mM NaCl、15mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)pH8.0、5mMエチレングリコール−ビス(2−アミノエーテル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(EGTA)pH8.0、1mMバナジウム酸ナトリウム、10μg/mlロイペプチン、1mMジチオスレイトール、1μMミクロシスチンLR、10μg/ml N−p−トシル−L−フェニルアラニンクロロメチルケトン(TPCK)、2mM Nα−p−トシル−エルアルギニンメチルエステル塩酸塩(TAME)、15mM 4−ニトロフェニルホスフェートジ(トリス)塩(PNPP)、0.1mM 4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフッ化物塩酸塩(AEBSF)、5mMベンズアミジン、1μMオカダ酸)中で溶解する。溶解物を5分ごとの短いボルテックスでの撹拌により15分間氷上でインキュベーションし、1分間氷上で超音波で処理する。サンプルをeppendorf遠心分離機中で30000rpmで4℃で30分間遠心し、80μlの上清を分析のために回収する。全タンパク質濃度は、Thermomax(商標)プレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用するPierce BCAタンパク質分析キット(商標)(Thermo Scientific、Rockford、IL)を使用して決定される。N1ICDレベルはカスタムN1ICD酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して決定される。切断されたノッチ1(Val1744)特異的カスタムウサギモノクローナル抗体により検体を捕捉し、C末端ノッチ1 SULFO−TAG(登録商標)(Meso Scale Diagnostics、Gaithersburg、Maryland)ポリクローナルヒツジ抗体(R&D Systems、Minneapolis、MN)により検出する。溶解物を、1×Complete錠剤(Roche Complete(商標)ミニ番号11 836 153 001)および1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma Aldrich P8340)を含有する氷冷ELISAトリス溶解バッファーR60TX(Meso Scale Diagnostics、Gaithersburg、Maryland)中で1μg/μlへ希釈し、25μlをELISAプレートへ添加する。25μgのタンパク質溶解物のインキュベーションを、検体の捕捉および検出抗体のために、各々RTで1時間行なう。Sector Imager 6000(商標)(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、Maryland)上でプレートを読み取る。バックグラウンドを引いたN1ICDを全タンパク質に対して正規化し、ベヒクル処理群と比較して%阻害として示す。IC50値は、GraphPad Prism(登録商標)4ソフトウェアを使用して、「4パラメータシグモイド用量反応(可変勾配)」モデルに対して濃度応答データをフィッティングさせることによって決定される。様々な腫瘍細胞株における化合物1についてのIC50値を表1中に示す。
【表2】
【0066】
表1中のデータは、特異的なヒト腫瘍細胞株におけるγ−セクレターゼ活性および結果としてのN1ICDシグナリングペプチド蓄積を阻害することによって、N1ICDシグナリングペプチド生成を阻害する能力における化合物1の有効性を証明する。
【0067】
in vivo有効性および標的阻害の研究
動物研究
ノッチプロセッシング薬力学(PD)の阻害に対する化合物1のin vivo有効性および効果を評価するために、複数の細胞株および患者由来の異種移植モデルを使用する。1:1マトリゲル混合物(0.2mL体積)中のA2780(2×10)、SW480(6×10)、HCT 116(6×10)、U−87 MG(6×10)およびA−375(10×10)細胞を、皮下注射によって6〜8週齢のメスの無胸腺ヌードマウス(Harlan Laboratories)の後脚中に移植する。1:1マトリゲル混合物(0.2mL体積)中のK−562(6×10)細胞を皮下注射によって6〜8週齢のメスのCD1 nμ/nμマウス(Charles River Laboratories)の後脚中に移植する。1:1マトリゲル混合物(0.2mL体積)中のHEL 92.1.7(7×10)細胞を皮下注射によって6〜8週齢のメスのCB17重度複合免疫不全マウス(Taconic Farms)の後脚中に移植する。患者由来の腫瘍を1〜2mm片へとミンスし、体積0.2mlでマトリゲル(1:1)と混合し、皮下注射によって6〜8の週齢のメスの無胸腺ヌードマウス(Harlan Laboratories)の後脚中に移植する。患者由来の腫瘍モデルは以下のものを含む。患者の同意および病院の承認後に、IU Health,Methodist Hospital(Indianapolis、Indiana、米国46206)から得られたサンプルによる、ヒト神経膠芽腫(EL2144)、ヒトトリプルネガティブ浸潤性乳管癌(EL1997)およびヒト結腸癌(EL1989、EL 1986およびEL 2056)。合計7〜10匹のマウスを各群について使用する。A2780、SW480、HEL 92.1.7、A−375、K−562、患者由来の腫瘍モデルの移植直前に動物に照射する(450全身照射)。マウスは通常の餌を自由摂食させる。腫瘍サイズが150±50mmに達した時に、0.2mL体積で化合物またはベヒクル(0.25%ツイーン80中の1%Na−CMC)の経口投与(強制投与)により、処理を開始する。処理後の表記された時間点で、動物をCO窒息および頸椎脱臼によって屠殺する。腫瘍を取り出し、PD応答解析のために使用する。腫瘍増殖および体重を有効性および毒性徴候を評価する時間にわたってモニタリングする。腫瘍の二次元の測定を週に2回実行し、腫瘍体積を以下の式に基づいて計算する。(腫瘍体積)=[(L)×(W2)×(Π/6)]、式中、Lは中央軸の長さであり、Wは中央軸の幅である。腫瘍体積データは、時間および処理群にわたる変化を等しくするように、logスケールに転換される。log体積データは、SAS(商標)ソフトウェア(バージョン8.2)中のMIXED(商標)手順を使用する、時間および処理による二元配置反復測定分散分析により解析される。反復測定についての相関モデルは空間的な検出力である。処理群を各時間点で対照群に比較する。MIXED(商標)手順を各処理群についても個別に使用して、各時間点での調整された平均および標準誤差を計算する。両方の分析は各動物内の自己相関を説明し、大きな腫瘍を持つ動物が研究から早期に除去される場合データの損失が起こる。調整された平均および標準誤差を、各処理群vs時間についてプロットする。抗腫瘍活性を腫瘍増殖阻害パーセンテージ(TGI%)として表現し、処理群中の腫瘍体積をベヒクル処理群と比較することによって計算する。化合物1のパーセンテージ腫瘍増殖阻害(%TGI)および統計的有意性値(p値)を本質的に上記のように測定し、表2中に要約する。
【0068】
N1ICD分析
腫瘍中のN1ICDレベルを評価するために、およそ75mgを凍結した腫瘍からカットし、ホモジナイゼーション前にミンスする(実際の質量を記録する)。凍結した腫瘍サンプルをLysing Matrix−D(商標)チューブへ移し、1×Complete錠剤(Roche Complete(商標)番号11697 498 001)および1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma Aldrich P8340)を含有する、氷冷XY溶解バッファー(25mMトリスpH7.5、10μg/mlトリプシン/キモトリプシン阻害剤、10μg/mlアプロチニン、60mM β−グリセリンリン酸、1%Triton(登録商標)X−100、10mM NaF、2.5mMピロリン酸、150mM NaCl、15mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)pH8.0、5mMエチレングリコール−ビス(2−アミノエーテル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(EGTA)pH8.0、1mMバナジウム酸ナトリウム、10μg/mlロイペプチン、1mMジチオスレイトール、1μMミクロシスチンLR、10μg/ml N−p−トシル−L−フェニルアラニンクロロメチルケトン(TPCK)、2mM Nα−p−トシル−エルアルギニンメチルエステル塩酸塩(TAME)、15mM 4−ニトロフェニルホスフェートジ(トリス)塩(PNPP)、0.1mM 4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニルフッ化物塩酸塩(AEBSF)、5mMベンズアミジン、1μMオカダ酸)中で、75mg/mlのバッファーの質量:体積の比率で再懸濁する。組織を4℃で30秒間6.0のスピードでFast Prep FP120ホモジナイザー(Thermo Scientific、Rockford、IL)中でホモジナイズし、続いて氷上で15分間インキュベーションする。ホモジナイゼーションが完全になるまで、これを合計2〜3サイクルで反復する。溶解物を30000rpmで4℃で15分間eppendorf遠心分離機中で遠心して、残屑を除去する。400μlの上清を取り出し、新しいエッペンドルフチューブへ移し、凍結/解凍サイクルを行なう。サンプルを30000rpmで4℃で30分間eppendorf遠心分離機中で再び遠心し、120μlの上清を分析のために回収する。全タンパク質濃度は、Thermomax(商標)プレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用するPierce BCAタンパク質分析キット(商標)(Thermo Scientific、Rockford、IL)を使用して決定される。N1ICDレベルはカスタムN1ICD ELISAを使用して決定される。検体を、切断されたノッチ1(Val1744)特異的カスタムウサギモノクローナル抗体により検体を捕捉し、C末端ノッチ1 SULFO−TAG(登録商標)(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、Maryland)ポリクローナルヒツジ抗体(R&D Systems、Minneapolis、MN)により検出する。溶解物を、1×Complete錠剤(Roche Complete(商標)ミニ番号11 836 153 001)および1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma−Aldrich P8340)を含有する氷冷ELISAトリス溶解バッファー(R6OTX)(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、Maryland)中で1μg/μlへ希釈し、25μlをELISAプレートへ添加する。50μgのタンパク質溶解物のインキュベーションを、検体の捕捉および検出抗体のために、各々RTで1時間行なう。Sector Imager 6000(商標)(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、Maryland)上でプレートを読み取る。バックグラウンドを引いたN1ICDを全タンパク質に対して正規化し、ベヒクル処理群と比較して%阻害として示す。化合物1の最後の用量の4時間後に採取した腫瘍において、Dunettの方法によって測定されるようなN1ICD%阻害および統計的有意性(p値)を、本質的に上記のように解析し、表2中で要約する。
【表3-1】
【表3-2】
【0069】
表2中のデータは、ヒト腫瘍の様々な異種移植モデルにおける化合物1による腫瘍増殖阻害およびN1ICD切断の阻害を証明する。表2中のデータは、表1中で記載される機能的活性の細胞データに対するin vivo相関性をさらに提供する。
【0070】
代謝および排泄
シトクロムP450(CYP450)代謝および修飾が低いかまたは無い化合物は、患者が服用している他の医薬物との有害な相互作用(用量の変化または医薬物をすべて停止する必要性をもたらし得る)の可能性は減少する。CYP450代謝により患者の活性代謝物質への大きな曝露が引き起こされる場合、複数の活性種の寄与に関連するより大きな変動性から、有効性および安全性の問題が生じ得る。したがって、一般的に活性代謝物質を欠く薬物が好ましい。CYP450代謝および修飾が低いかまたは無い治療法剤が所望され、患者中でそしてその患者についての優れた安全性プロフィールを有することができる。Lynch et al.,Am.Fam.Physician,76,391(2007).CYP450酵素相互作用の可能性は単に活性医薬剤の構造に基づいて予測することができない。
【0071】
化合物1は主要なCYP450酵素のインヒビターまたはインデューサーでなく、酸化CYP450代謝に至適化された肝臓ミクロソームによって大きな程度には代謝されなかった。ラットおよびイヌのin vivoにおいて、主要な酸化代謝物質は血中循環または排泄物中で観察されなかった。したがって、化合物1は、癌の治療を受けている患者における用量調整または追加の医薬物を限定もしくは停止する必要性をもたらし得る他の医薬物とのCYP450に基づく相互作用についての可能性が低い。
【0072】
全身的な薬物動態(PK)、排泄および代謝を研究するために、化合物1はカニューレが胆管に挿入されたラットにおいてin vivoで評価された。in vivoでIV用量の51%は変化せず主に尿中で排泄され、活性N−脱アルキル化代謝物質(4,4,4−トリフルオロ−N−[(1S)−1−メチル−2−オキソ−2−[[(7S)−6−オキソ−5,7−ジヒドロピリド[2,3−d][3]ベンズアゼピン−7−イル]アミノ]エチル]ブタンアミド)への低い(親化合物の2%)全身暴露であった。代謝物質についてのラット血漿のプロファイリングは、追加の血中代謝物の非存在を示した。胆管に手を加えていないイヌにおけるさらなる研究も、親化合物の排泄に加えて主要な血中循環活性代謝物質の非存在による大きなクリアランスを支持した。
【0073】
化合物1についての全体的な代謝および排泄データは、所望されるクリアランス機構(親化合物の尿中排泄、および不活性かつ非血中循環断片へのアミド加水分解(それはCYP450代謝に至適化された肝臓ミクロソームによるインキュベーションにおいて形成されない))に加えて、主要な活性血中代謝物の非存在を示した。
【0074】
臨床設定において、前臨床的に観察される化合物1のクリアランス特性が所望される。主として酸化代謝によって取り除かれる化合物は、併用医薬物および特定のフルーツジュース/ハーブとの薬物相互作用、肝臓病、ならびに酵素活性の患者間差異に起因する可変的な曝露を示すことが公知である。複数のクリアランス機構は1つの任意の排出経路で起こる薬物相互作用のインパクトを減らすので、好ましい。したがって、排泄(51%)および代謝(アミド加水分解)の両方による化合物1のクリアランスは、主要な活性血中代謝物の産生なしに、患者に有利である。全体として、これらのクリアランス特性は、臨床用量調整の可能性を低下させ、加えて主要な活性血中代謝物、併用医薬物の投与、およびCYP450活性における患者間差異と関連する安全性および有効性の懸念を最小限にする。
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]