【実施例】
【0023】
モノ加水分解多官能性酸塩化物の調製:高純度モノ加水分解多官能性酸塩化物は、例えば、表Aに例として記載する量で、非極性溶媒100mL中で多官能性酸塩化物(その多くは市販されている(例えば、塩化トリメソイル(TMC)および塩化イソフタロイル(IPC))、リン酸トリアルキル(例えば、リン酸トリブチル(TBP)およびリン酸トリエチル(TEP))、および微量の水を合わせることによりスターター溶液を調製するステップを含む、種々の経路を介して得ることができる。スターター溶液を14〜20時間撹拌させ、その時間に追加の多官能性酸塩化物1gおよび水0.0076mLを添加する。溶液を1〜2時間撹拌させ、追加の水0.0076mLを添加する。水0.0076mLを合計4回スターター溶液に添加するまでこれを繰り返す。反応中、モノ加水分解多官能性酸塩化物が溶液の外に沈殿する。白色沈殿を、濾紙を使用して回収し、新鮮な溶媒で繰り返し洗浄して高純度モノ加水分解多官能性酸塩化物を得ることができる。
【表1】
【0024】
モノ加水分解多官能性酸塩化物のインサイチュ調製:2%w/wリン酸トリアルキルのIsopar L中溶液を水200ppmと合わせて、1時間激しく撹拌する。Isopar最上層を水からデカントし、多官能性酸塩化物を添加して0.2w/w%溶液を調製する。溶液を72〜96時間または多官能性酸塩化物の60〜80%加水分解がモノ加水分解されるまで(
1H NMRにより観察される)撹拌させる。この溶液を、未反応多官能性酸塩化物、モノ加水分解酸塩化物およびリン酸トリアルキルの混合物として使用し、以下の実施例に記載の処方を提供するように適宜処理することができる。
【0025】
カルボン酸基を有する芳香族酸塩化物(実施例1〜5):
特に明言しない限り、全ての試料膜をパイロット規模の膜製造ラインを使用して製造した。原材料は、純粋型でまたは上記のように濃縮溶液で、インサイチュで調製したモノ加水分解多官能性酸塩化物を除いて、いくつかの業者を通して市販されていた。ポリスルホン支持体を、ジメチルホルムアミド(DMF)中16.5重量%溶液から鋳造し、その後3.5重量%メタ−フェニレンジアミン(mPD)水溶液に浸漬した。次いで、得られた支持体を一定速度で反応テーブルを通して引きながら、非極性溶液の薄い均一層を塗布した。非極性溶液は、イソパラフィン系(ISOPAR L)、トリメソイル酸(acyl)塩化物(TMC)、少なくとも1個のカルボキシレート部分を有する酸塩化物(対照膜を除く)、および任意選択により以下に同定するリン酸添加剤を含んでいた。過剰な非極性溶液を除去し、得られた複合膜を水洗槽および乾燥オーブンに通した。次いで、試料膜のクーポンを、150psi、pH8および室温で塩水溶液(2000ppm NaCl)を使用して標準圧力試験に供した。試験結果を、各実施例を以下で提供する表に要約する。
【0026】
実施例:1−カルボキシ−3,5−ジクロロホルミルベンゼン(mhTMC)
非極性コーティング溶液は、イソパラフィン系溶媒(ISOPAR L)、変化する比のトリメソイル酸塩化物(TMC)および1−カルボキシ−3,5−ジクロロホルミルベンゼン(mhTMC)の組み合わせを含んでいたが、総酸塩化物含量を0.26重量%で、また任意選択によりリン酸トリブチル(TBP)をTMCとの1.1:1の一定の化学量論的モル比で維持した(TBPを含む−表1A;TBPを含まない−表1B)。
【表2】
【表3】
【0027】
実施例2:3−(クロロカルボニル)安息香酸
試料膜を調製するために使用した非極性溶液は、イソパラフィン溶媒(ISOPAR L)中にTMCおよび3−(クロロカルボニル)安息香酸(対象モノマーとして)を含んでいた。各試料を調製するために使用した非極性溶液の総塩化アシル含量を0.21%w/vで一定に維持した。対象モノマーの濃度を0から0.04%w/vまで変化させた一方で、残りの塩化アシル含量をTMCによってのみ与えた。非極性溶液も約0.27%w/vのリン酸トリブチル(TBP)を含有していた。
【表4】
【0028】
実施例3:3−(クロロカルボニル)安息香酸対1,3−ベンゼンジカルボニルジクロリド
試料膜を調製するために使用した非極性溶液は、イソパラフィン系溶媒(ISOPAR L)中にTMC、対象モノマーとしての3−(クロロカルボニル)安息香酸(試料3−3)または比較モノマーとしての1,3−ベンゼンジカルボニルジクロリド(試料3−2)を含んでいた。各試料を調製するために使用した非極性溶液の総塩化アシル含量を0.2%w/vで一定に維持した。非極性溶液も約0.27%w/vのTBPを含有していた。
【化3】
【表5】
【0029】
実施例4:3−(クロロカルボニル)−5−ニトロ安息香酸対5−ニトロイソフタロイルジクロリド
試料膜を調製するために使用した非極性溶液は、イソパラフィン系溶媒(ISOPAR L)中に対象モノマーとしての3−(クロロカルボニル)−5−ニトロ安息香酸(試料4−2)および比較モノマーとしての5−ニトロイソフタロイルジクロリド(試料4−1)を含んでいた。各試料を調製するために使用した非極性溶液の総塩化アシル含量を0.175%w/vで一定に維持した。非極性溶液も約0.195%w/vTBPを含有していた。
【化4】
【表6】
【0030】
実施例5:3−(クロロカルボニル)−5−ヒドロキシ安息香酸対5−ヒドロキシイソフタロイルジクロリド
試料膜を調製するために使用した非極性溶液は、TMC、対象モノマーとしての3−(クロロカルボニル)−5−ヒドロキシ安息香酸(試料5−2)および比較モノマーとしての5−ヒドロキシイソフタロイルジクロリド(試料5−1)を含んでいた。各試料を調製するために使用した非極性溶液の総塩化アシル含量を0.175%w/vで一定に維持した。非極性溶液も約0.195%w/vTBPを含有していた。
【化5】
【表7】
【0031】
実施例6:リン酸トリアルキルを含まない3−(クロロカルボニル)安息香酸の評価
手圧鋳造(hand cast)試料複合ポリアミド膜を、3.0重量%mPD水溶液ならびに、イソパラフィン系溶媒(ISOPAR L)中に塩化トリメソイル(TMC)および対象モノマーとしての3−(クロロカルボニル)安息香酸を含む非極性溶液を使用して調製した。各試料を調製するために使用した非極性溶液のTMC含量を0.13%w/vで一定に維持した。対象モノマーの濃度は、試料6−1中約0.01%w/vであり、対照中0%であった。非極性溶液はまた、Isopar Lとの共溶媒として8%メシチレンも含有していた。膜を225psi、2000ppm NaCl、pH8および室温で試験した。
【表8】
【0032】
示されるように、対象モノマーを用いて調製した膜は、類似の対照および比較膜と比べて改善した性能(例えば、高い流束、低い塩通過または両方)を示した。
【0033】
モノ加水分解脂肪族酸塩化物(実施例7〜13)
全ての試料膜をパイロット規模の膜製造ラインを使用して製造した。ポリスルホン支持体を、ジメチルホルムアミド(DMF)中16.5重量%溶液から鋳造し、その後3.5重量%メタ−フェニレンジアミン(mPD)水溶液に浸漬した。次いで、得られた支持体を一定速度で反応テーブルを通して引きながら、非極性溶液の薄い均一層を塗布した。非極性溶液は、イソパラフィン系(ISOPAR L)、トリメソイル酸塩化物(TMC)、および以下に同定する対象モノマーを含んでいた。非極性溶液はまたTMCに対して1:1.4の化学量論的比でTBP(リン酸トリブチル)を含有していた(比が1:1.1である実施例9を除く)。過剰な有機溶液を除去し、得られた複合膜を水洗槽および乾燥オーブンに通した。次いで、試料膜を、以下の条件:室温で150psi、2000ppm NaCl、pH8下で標準試験に供した。
【0034】
実施例7:
試料複合ポリアミド膜を、「対象モノマー」として4−(クロロカルボニル)ブタン酸を使用して調製した。各試料を調製するために使用した非極性溶液の総酸塩化物含量を0.24%w/vで一定に維持した。対象モノマーの濃度を0から0.03%w/vまで変化させた一方で、残りの酸塩化物含量をTMCによってのみ与えた。表7に示すように、塩通過は、4−(クロロカルボニル)ブタン酸の濃度が増加するとともに0.99%から0.52%まで減少した。
【表9】
【0035】
実施例8:
試料複合ポリアミド膜を、対象モノマーとして2−(クロロカルボニル)エタン酸を使用して調製した。各試料を調製するために使用した非極性溶液の総酸塩化物含量を0.24%w/vで一定に維持した。対象モノマーの濃度を0から0.03%w/vまで変化させた一方で、残りの酸塩化物含量をTMCによってのみ与えた。表8に示すように、塩通過は、2−(クロロカルボニル)エタン酸の濃度が増加するとともに1.46%から0.73%まで減少した。
【表10】
【0036】
実施例9:
試料複合ポリアミド膜を、対象モノマーとして5−クロロカルボニルペンタン酸(試料9−2および9−4)を使用して調製した。比較のために、膜を、1,4−ジクロロカルボニルブタンおよびTMC(比較試料9−1および9−3)を用いて同様に調製した。各試料を調製するために使用した非極性溶液の総酸塩化物含量を0.175%w/vで一定に維持した。対象モノマーの濃度を0から0.02%w/vまで変化させた一方で、残りの酸塩化物含量をTMCによってのみ与えた。表9に示すように、対象モノマー、5−クロロカルボニルペンタン酸(試料9−2および9−4)を用いて調製した膜は、構造上類似の1,4−ジクロロカルボニルブタン添加剤(試料9−1および9−3)を用いて調製した試料と比べて塩通過の30%の改善を示した。
【表11】
【0037】
実施例10:
試料複合ポリアミド膜を、対象モノマーとして9−クロロカルボニルノナン酸を使用して調製した。比較のために、対象モノマーを用いずに対照膜も調製した。各試料を調製するために使用した非極性溶液の総酸塩化物含量を0.21%w/vで一定に維持した。対象モノマーの濃度を0.011%w/vとした一方で、残りの酸塩化物含量をTMCによってのみ与えた。表10に示すように、9−クロロカルボニルノナン酸を用いて調製した膜は、対照膜に対して塩通過の26%を超える改善を示した。
【表12】
【0038】
実施例11:
試料複合ポリアミド膜を、対象モノマーとして2,4−ジオキソ−3−オキサビシクロ[3.3.1]ノナン−7−カルボン酸を使用して調製した。比較のために、対象モノマーを用いずに対照膜も調製した。各試料を調製するために使用した非極性溶液の総酸塩化物含量を0.24%w/vで一定に維持した。対象モノマーの濃度を0.03%w/vとした一方で、残りの酸塩化物含量をTMCによってのみ与えた。表11に示すように、対象モノマーは、TMCのみを用いて製造した膜と比べて塩通過の改善を示した。
【表13】
【0039】
実施例12:(比較)
試料複合ポリアミド膜を、非極性相中1,8−ジクロロカルボニルオクタンを使用して調製した。比較のために、1,8−ジクロロカルボニルオクタンを用いずに対照膜も調製した。各試料を調製するために使用した非極性溶液の総酸塩化物含量を0.21%w/vで一定に維持した。非加水分解試料モノマー、1,8−ジクロロカルボニルオクタンの濃度を0.011%w/vとした一方で、残りの酸塩化物含量をTMCによってのみ与えた。表12に示すように、試料多官能性酸塩化物を加水分解しない場合、塩通過の実質的な改善は認められなかった。
【表14】
【0040】
実施例13.
試料複合ポリアミド膜を、3.5重量%mPD水溶液ならびにイソパラフィン溶媒(ISOPAR L)中にTMCおよび対象モノマーとして4−(クロロカルボニル)ブタン酸を含む非極性溶液を使用して調製した。各試料を調製するために使用した非極性溶液のTMC含量を0.11%w/vで一定に維持した。どの試料もリン酸トリブチル(TBP)を含まなかった。対象モノマーの濃度は試料13−1中約0.01%w/vであり、対照中0%であった。非極性溶液はまた共溶媒として4%メシチレンも含有していた。塩通過は、4−(クロロカルボニル)ブタン酸をポリマーに組み込んだ結果として減少した。
【表15】
【0041】
mhTMCを用いた膜を製造するためのTBP代替物
全ての試料膜を、手圧鋳造法を用いて製造した。ポリスルホン支持体(ジメチルホルムアミド(DMF)中16.5重量%溶液から鋳造)を3.5重量%メタ−フェニレンジアミン(mPD)水溶液に浸漬した。次いで、得られた支持体を一定速度で反応テーブルを通して引きながら、非極性溶液の薄い均一層を塗布した。非極性溶液は、イソパラフィン系(ISOPAR L)、トリメソイル酸塩化物(TMC)および以下に同定する追加の添加剤を含んでいた。過剰な非極性溶液をヘキサンによる洗浄により除去し、得られた複合膜を水中に保持した。次いで、試料膜のクーポンを、225psi、pH8および室温で塩水溶液(2000ppm NaCl)を使用して標準試験に供した。試験結果を、以下で提供する表に要約する。
【0042】
実施例14:
試料複合ポリアミド膜を、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)(TEHP)を使用して調製した。各試料を調製するために使用した非極性溶液の総酸塩化物含量を0.13%w/vで一定に維持した。モノ加水分解塩化トリメソイル(mhTMCと呼ぶ)の濃度を0から0.03%w/vまで変化させた一方で、残りの酸塩化物含量をTMCによってのみ与えた。TEHPの濃度を0.235%w/vで一定に維持した。
【表16】
【0043】
実施例15:
試料複合ポリアミド膜を、リン酸トリエチル(TEP)を使用して調製した。各試料を調製するために使用した非極性溶液の総酸塩化物含量を0.13%w/vで一定に維持した。モノ加水分解塩化トリメソイル(mhTMCと呼ぶ)の濃度を0から0.01%w/vまで変化させた一方で、残りの酸塩化物含量をTMCによってのみ与えた。TEPの濃度を0.098%w/vで一定に維持した。
【表1】
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
多官能性アミンモノマーおよび多官能性酸ハロゲン化物モノマーを多孔質支持体の表面に塗布するステップと、前記モノマーを界面重合して薄膜ポリアミド層を形成するステップとを含む、多孔質支持体および薄膜ポリアミド層を含む複合ポリアミド膜を製造する方法であって、
i)単一のカルボン酸官能基および少なくとも1個のハロゲン化アシル官能基で置換された脂肪族または芳香族部分を含むカルボン酸モノマーと、
ii)式(I):
【化1】
(式中、R1、R2およびR3は独立に水素および1〜10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基から選択され、但し、R1、R2およびR3の1つ以下が水素である)
により表されるトリヒドロカルビル化合物と
の存在下で前記界面重合を行うことを特徴とする方法。
[態様2]
前記カルボン酸モノマーおよびトリヒドロカルビル化合物を炭化水素溶媒と合わせてコーティング溶液を形成し、該コーティング溶液を前記多孔質支持体の表面に塗布する、上記態様1記載の方法。
[態様3]
前記カルボン酸モノマーが前記炭化水素溶媒中のその溶解度限界より大きいが、前記コーティング溶液中のその溶解度限界未満の濃度で前記コーティング溶液中に存在する、上記態様2記載の方法。
[態様4]
前記カルボン酸モノマーが0.02重量%より大きい濃度で前記コーティング溶液中に存在する、上記態様3記載の方法。
[態様5]
前記コーティング溶液が多官能性ハロゲン化アシルモノマーをさらに含む、上記態様2記載の方法。
[態様6]
前記カルボン酸モノマーが多官能性モノマーのモノ加水分解類似体である、上記態様1記載の方法。
[態様7]
前記カルボン酸モノマーが、水を多官能性ハロゲン化アシルモノマー、トリヒドロカルビル化合物および炭化水素溶媒と合わせることにより調製されるコーティング溶液中インサイチュで形成される、上記態様1記載の方法。
[態様8]
前記コーティング溶液が
i)1重量%未満の濃度の水と、
ii)10重量%未満の濃度の多官能性ハロゲン化アシルモノマーと、
iii)10重量%未満の濃度のリン酸トリヒドロカルビル化合物と
を含む、上記態様7記載の方法。
[態様9]
前記コーティング溶液が
i)0.5重量%未満の濃度の水と、
ii)5重量%未満の濃度の多官能性ハロゲン化アシルモノマーと、
iii)5重量%未満の濃度のリン酸トリヒドロカルビル化合物と
を含む、上記態様7記載の方法。
[態様10]
前記コーティング溶液が1:2〜100:1の水とのモル比で前記多官能性ハロゲン化アシルモノマーを含む、上記態様7記載の方法。
[態様11]
前記コーティング溶液が100:1〜1:1000の前記多官能性ハロゲン化アシルモノマーとのモル比でリン酸トリヒドロカルビル化合物を含む、上記態様7記載の方法。
[態様12]
前記コーティング溶液が少なくとも80v/v%の前記炭化水素溶媒を含む、上記態様7記載の方法。
[態様13]
前記カルボン酸モノマーおよびリン酸トリヒドロカルビル化合物が1:1000〜2:1のモル比で前記コーティング溶液中に提供される、上記態様2記載の方法。
[態様14]
前記カルボン酸モノマーおよびリン酸トリヒドロカルビル化合物が1:100〜1:1のモル比で前記コーティング溶液中に提供される、上記態様2記載の方法。