特許第6027142号(P6027142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027142
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0443 20140101AFI20161107BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20161107BHJP
【FI】
   H01L31/04 522
   H01L31/04 560
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-554389(P2014-554389)
(86)(22)【出願日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】JP2013084139
(87)【国際公開番号】WO2014103889
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年3月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-285573(P2012-285573)
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】元永 一志
(72)【発明者】
【氏名】高村 聡
(72)【発明者】
【氏名】柳田 好一
(72)【発明者】
【氏名】三宅 隆文
【審査官】 吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0080078(US,A1)
【文献】 特開2001−298134(JP,A)
【文献】 特開2000−164910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池素子をそれぞれ電気的に接続してなる第1太陽電池素子群および第2太陽電池素子群と、
前記第1太陽電池素子群および前記第2太陽電池素子群に電気的に接続されたバイパス素子と、
前記第1太陽電池素子群、前記第2太陽電池素子群および前記バイパス素子を被覆している被覆部材と、
該被覆部材上に配置された保護シートとを備える太陽電池モジュールであって、
前記保護シートは、前記バイパス素子に対向するように配置された開口部を有しており、前記バイパス素子の一部および前記被覆部材の一部が前記開口部から外部に突出している、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記保護シート上に前記開口部を覆う補助部材をさらに備える、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記バイパス素子は、ダイオードおよび該ダイオードを封止する封止部材を備え、
該封止部材は、前記保護シート側に位置する上面と、該上面の反対側に位置する下面と、前記上面および前記下面をつなぐとともに該下面側から前記上面に向かって傾斜している傾斜部を有する側面とを具備する、請求項1または請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記バイパス素子は、前記ダイオードのカソード電極に接続された第1導電板および前記ダイオードのアノード電極に接続された第2導電板を備え、
前記第1導電板の厚みは、前記第2導電板の厚みよりも大きい、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記第1太陽電池素子群、前記第2太陽電池素子群、前記バイパス素子および前記保護シートが配置された太陽電池パネルの外周部に嵌合する嵌合部と、該嵌合部に連結されており、前記バイパス素子に対向する位置に張り出した張り出し部とを有するフレーム部材をさらに備えた請求項1乃至請求項のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記張り出し部および前記バイパス素子の間に、前記保護シートよりも熱伝導率の高い充填材をさらに備えた請求項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記充填材は、樹脂および該樹脂よりも熱伝導率の高い粒子を含む、請求項に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、太陽電池素子の受光面側にゴミ等が堆積すると、太陽電池素子の発電量が低下する。このとき、太陽電池素子内の抵抗が高まって発熱することがある。そのため、太陽電池モジュールには、抵抗が高くなった太陽電池素子に流れる電流を迂回させるためのバイパス素子が端子ボックス内に設けられている。この端子ボックスは、太陽電池モジュールの裏面に配置された保護シート上に配されている。また、特開平5−291602号公報には、バイパス素子を透光性基板と保護シートとの間に位置する被覆部材内に配置された太陽電池モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−291602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開平5−291602号公報の太陽電池モジュールでは、バイパス素子を封止した部分を覆った保護シートの部位が突出する。このとき、厚みが小さい被覆部材を用いた場合には、バイパス素子を封止した部分の保護シートに大きな凸部が生じやすくなる。この凸部は、保護シートに放射状の皺を生じさせる場合があった。凸部および皺が発生した部分は、他の部分に比べて強度が弱まっているため、破れやすい。また、この皺が保護シートの外周端部まで延在した場合には、保護シートと被覆部材との間に上記皺から構成される空隙に外部から水が浸入する。これにより、太陽電池モジュールの信頼性が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明の目的の1つは、信頼性を高めた太陽電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールは、複数の太陽電池素子をそれぞれ電気的に接続してなる第1太陽電池素子群および第2太陽電池素子群と、前記第1太陽電池素子群および前記第2太陽電池素子群に電気的に接続されたバイパス素子と、前記第1太陽電池素子群、前記第2太陽電池素子群および前記バイパス素子を被覆している被覆部材と、該被覆部材上に配置された保護シートとを備える太陽電池モジュールであって、前記保護シートは、前記バイパス素子に対向するように配置された開口部を有しており、前記バイパス素子の一部および前記被覆部材の一部が前記開口部から外部に突出している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールによれば、バイパス素子に対向するように保護シートに開口部を設けているため、保護シートに皺が発生しにくくなる。その結果、太陽電池モジュールの信頼性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールを示すものであり、(a)は受光面側から見た平面図、(b)は裏面側から見た平面図であり、(c)は図1(a)をA−A’断面で見た断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールに用いるバイパス素子の一例を示すものであり、(a)はバイパス素子の分解斜視図であり、(b)は組み立て後の様子を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールを示すものであり、(a)は太陽電池モジュールから1つの太陽電池素子群を抜き出して示す平面図であり、(b)は第1素子群と第2素子群を接続配線とバイパス素子で接続した様子を示す平面図であり、(c)は第1素子群と第2素子群を接続した様子を示す電気回路図である。
図4】本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールを示すものであり、(a)は図1(b)のB部を拡大して示す分解斜視図であり、(b)は図1(b)をC−C’断面で見た断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールに用いるバイパス素子の他の一例を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールに用いるバイパス素子の他の一例を示す斜視図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る太陽電池モジュールを示す図であり、(a)は図1(b)に相当する平面図であり、(b)は図7(a)をD−D’断面で見た断面図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る太陽電池モジュールを示す図であり、(a)は図1(a)に相当する平面図であり、(b)は図1(b)に相当する平面図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る太陽電池モジュールの電気回路図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る太陽電池モジュールについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュール1は、図1に示すように、主として光を受光する受光面1a(透光性基板2の一主面にも相当する)と受光面1aの裏面に相当する裏面1b(保護シート7の一主面にも相当する)とを有している。太陽電池モジュール1は、受光面1a側から順に、透光性基板2と、被覆部材3と、接続配線4およびバイパス素子5で互いに接続された6つの太陽電池素子群6(以下、素子群6とする)と、裏面1bを保護する保護シート7と、端子ボックス8とを備えている。また、素子群6は、複数の太陽電池素子9および隣り合う太陽電池素子9の間を接続するインナーリード10を有している。また、透光性基板2、被覆部材3、接続配線4、バイパス素子5、素子群6および保護シート7で構成されたものを太陽電池パネル1Aともいう。なお、以下の説明では、裏面1bから受光面1aに向かう方向を受光面方向、受光面1aから裏面1bに向かう方向を裏面方向とする。
【0011】
透光性基板2は、太陽電池モジュール1の基板としての役割を有する。このような透光性基板2としては、例えば、強化ガラスまたは白板ガラス等が挙げられる。
【0012】
被覆部材3は、接続配線4、バイパス素子5および素子群6を被覆して保護する機能を有している。また、被覆部材3は、透光性基板2と保護シート7との間で、接続配線4、バイパス素子5および素子群6を封止する。このような被覆部材3としては、0.3mm以上で且つ0.8mm以下の厚みのエチレンビニルアセチレートの共重合体、またはポリエチレン、ポリビニルブチラールなどの熱硬化性樹脂が挙げられる。以下の説明では、素子群6よりも受光面1a側に位置する被覆部材3を第1被覆部材3a、素子群6よりも裏面1b側に位置する被覆部材3を第2被覆部材3bとする。被覆部材3は、第1被覆部材3aおよび第2被覆部材3bによる一対の部材で構成されている。
【0013】
接続配線4は、隣接する素子群6同士を電気的に接続する。このような接続配線4としては、例えば半田が被覆された銅箔などが挙げられる。
【0014】
太陽電池素子9は、受光面側に堆積したゴミ等によって発電量が低下すると、電気抵抗が高くなる。バイパス素子5は、電気抵抗が高くなった太陽電池素子9を有する素子群6に流れる電流を他の素子群6にバイパスする機能を有している。
【0015】
バイパス素子5は、図2に示すようにダイオード5aを第1導電板5bおよび第2導電板5cで挟み込むように構成されている。また、ダイオード5aと、第1導電板5bおよび第2導電板5とはそれぞれ半田で接着されている。第1導電板5bは、ダイオード5aのカソード電極に接続される。第2導電板5cは、ダイオード5aのアノード電極に接続される。また、バイパス素子5は、第1導電板5bが裏面1b側に位置し、第2導電板5cが受光面1a側に位置するように配置される。
【0016】
ダイオード5aとしては、例えばPNダイオードまたはショットキーバリアダイオード等を用いることができる。ショットキーバリアダイオードは、PNダイオードよりも電流を流した時の発熱が小さい。それゆえ、ショットキーバリアダイオードを用いれば、被覆部材3または保護シート7等がダイオード5aからの熱で劣化しにくくなる。
【0017】
第1導電板5bおよび第2導電板5cは、素子群6およびダイオード5aを電気的に接続する部材である。具体的に、第1導電板5bおよび第2導電板5cと素子群6とは、図4に示すように、接続配線4で接続されている。また、第1導電板5bおよび第2導電板5cと接続配線4とは、半田で接続されている。このとき、この接続部に介在する半田が、接続配線4側から第1導電板5bおよび第2導電板5c側に向かって裾広がりに広がるフィレット部を形成するとよい。このフィレット部を設ければ、第1導電板5bおよび第2導電板5cと半田との接触角が小さくなる。これにより、接続配線4と第1導電板5bおよび第2導電板5cとの接着強度が高まる。
【0018】
第1導電板5bおよび第2導電板5cには、例えば、導電性を有する金属板を用いることができる。金属板の材質としては、例えば、銅、りん青銅、黄銅、鉄またはステンレス鋼などが挙げられる。第1導電板5bおよび第2導電板5cの形状は、例えば、長方形状の平板であればよい。また、第1導電板5bおよび第2導電板5cの厚みは、接続配線4よりも厚くしてもよい。これにより、電流がダイオード5aに流れたときに生じる熱を第1導電板5bおよび第2導電板5cで吸収しやすくなる。その結果、バイパス素子5の放熱性が向上する。
【0019】
また、第1導電板5bは、図4(b)に示すように、板材を略クランク状に曲げられていてもよい。第1導電板5bは、この曲げられた部分でバイパス素子5に接続できる。そのため、第1導電板5bおよび第2導電板5cは、第1被覆部材3aの同一面上に位置することとなる。これにより、バイパス素子5と素子群6との接続作業が容易になる。なお、バイパス素子5のダイオード5aの近傍には、図4(b)に示すように、凸部5dが形成される。
【0020】
また、第1導電板5bは、図2に示すように、ダイオード5aとの接続部の近傍に、他の部分よりも幅が小さい狭隘部5b1を設けてもよい。これにより、ダイオード5aが発熱した際に生じる熱応力が緩和される。その結果、バイパス素子5中の半田付け部またはバイパス素子5と素子群6との半田付け部の剥離を低減できる。
【0021】
なお、ダイオード5aにショットキーバリアダイオードを用いた場合に、バイパス素子5の大きさとしては、例えば、ダイオード5aが縦4mm、横4mm、高さ1mmであり、第1導電板5bおよび第2導電板5cが長さ40mm、厚み0.5mm、凸部5dの厚みが約2mm程度であればよい。
【0022】
インナーリード10は、隣り合う太陽電池素子9同士を電気的に接続する。このようなインナーリード10としては、例えば、太陽電池素子9と接続させるための半田が被覆された銅箔などが挙げられる。
【0023】
太陽電池素子9は、入射された光を電気に変換する。このような太陽電池素子9は、例えば、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等からなる基板と、該基板の表面(上面)および裏面(下面)に設けられた電極とを有している。単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板を有する太陽電池素子9は、例えば、四角形状を成している。このとき、太陽電池素子9の一辺の大きさは、例えば、100mm以上で且つ200mm以下であればよい。
【0024】
なお、太陽電池素子9の種類は、特に制限されない。例えば、アモルファスシリコン、CIGSまたはCdTeなどの材料より成る薄膜系の太陽電池素子が採用されてもよい。上述した薄膜系の太陽電池素子は、例えば、ガラス基板上に、アモルファスシリコン層、CIGS層またはCdTe層などの光電変換層および透明電極などを適宜積層させたものが利用できる。このような薄膜系の太陽電池素子は、ガラス基板上で光電変換層および透明電極にパターニングを施して集積化することによって得られる。そのため、薄膜系の太陽電池素子では、インナーリード10を用いない。なお、薄膜系の太陽電池素子は、帯状を成している。さらに、太陽電池素子9は、単結晶または多結晶シリコン基板上にアモルファスシリコンの薄膜を形成したタイプであってもよい。
【0025】
保護シート7は、太陽電池モジュール1の裏面1bを保護する機能を有している。このような保護シート7は、太陽電池モジュール1の裏面1b側に位置する被覆部材3と接着している。換言すれば、保護シート7は、各素子群6(例えば、第1素子群6aおよび第2素子群6b)とともに被覆部材3を挟み込みように配置されている。このような保護シート7には、例えば、厚みが0.3mm以上で且つ0.5mm以下のポリビニルフルオライド(PVF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、あるいは、これらを2種以上積層した樹脂を用いることができる。保護シート7は、加熱してもシート状を維持して、被覆部材3よりも伸縮や変形を生じにくい性質を有する。なお、PVFの熱伝導率は、0.14以上で且つ0.17W/m・K以下である。また、PETの熱伝導率は、0.20以上で且つ0.33W/m・K以下である。また、PENの熱伝導率は、約0.1W/m・Kである。そして、保護シート7は、開口部7aを有している。この開口部7aは、バイパス素子5の凸部5dを裏面1b側から平面視した大きさと略同じ大きさを有している。よって、この開口部7aの幅は、少なくとも第1導電板5bの幅と同等であればよい。
【0026】
端子ボックス8は、太陽電池素子9で得られた出力を外部に取り出すものである。端子ボックス8は、箱体と、該箱体内に配置されるターミナル板と、箱体の外部へ電力を導出する出力ケーブルとを有している。箱体の材料としては、例えば、変性ポリフェニレンエーテル樹脂またはポリフェニレンオキサイド樹脂が挙げられる。
【0027】
次に、太陽電池モジュール1の詳細な構造について説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図3(a)に示すように素子群6は、直線状に配列された太陽電池素子9のうち、隣接する一方の太陽電池素子9の表面に位置する3本の電極と、他方の太陽電池素子9の裏面に位置する3本の電極とがインナーリード10で電気的に接続されている。これにより、複数の太陽電池素子9が直列接続されることによって、素子群6が構成されている。なお、このような素子群6の一端が、正極を出力する正極側出力端となり、他端が負極を出力する負極側出力端となる。
【0029】
太陽電池モジュール1は、複数の素子群6を有する。具体的に、太陽電池モジュール1は、図1(a)に示すように、第1素子群6a、第2素子群6b、第3素子群6c、第4素子群6d、第5素子群6eおよび第6素子群6fを有する。また、第1素子群6aは、第1正極側出力端6a1および第1負極側出力端6a2を有する。また、第2素子群6bは、第2正極側出力端6b1および第1負極側出力端6b2を有する。
【0030】
次に、第1素子群6aおよび第2素子群6bの間の接続形態について説明する。図3(b)および図3(c)に示すように、第1素子群6aおよび第2素子群6bは、第1正極側出力端6a1および第2負極側出力端6b2が同じ側に位置する。そのため、第1正極側出力端6a1および第2負極側出力端6b2が略同軸上に配置される。また、第1素子群6aおよび第2素子群6bは、第1負極側出力端6a2および第2正極側出力端6b1が同じ側に位置している。そのため、第1負極側出力端6a2および第2正極側出力端6b1が略同軸上に配置される。そして、第1負極側出力端6a2と第2正極側出力端6b1とは、接続配線4で直列に電気的に接続されている。また、第1正極側出力端6a1と第2負極側出力端6b2とは、バイパス素子5を介して電気的に接続される。ここで、バイパス素子5は、第1素子群6aおよび第2素子群6bに対して並列に接続される。
【0031】
本実施形態においては、図3(b)に示すように、第1正極側出力端6a1を1つにまとめるために、第1正極側出力端6a1の3本のインナーリード10が接続配線4で接続されている。さらに、本実施形態では、第2負極側出力端6b2を1つにまとめるために、第2負極側出力端6b2の3本のインナーリード10が接続配線4で接続されている。なお、図1(a)に示すように、他の太陽電池素子群についても、同様の方法で接続配線4およびバイパス素子5が配されている。また、第2素子群6bと第3素子群6cとの間、および第4素子群6dと第5素子群6eとの間も接続配線4で接続されている。
【0032】
このように、本実施形態では、所望の位置にバイパス素子5が設けられているため、任意の素子群6(太陽電池素子9)の受光面に影が生じても、太陽電池素子9の温度上昇による破損が低減される。
【0033】
また、本実施形態では、図4に示すように、保護シート7の開口部7aが、バイパス素子5の凸部5dに対向するように配置されている。すなわち、保護シート7は、平面視において、バイパス素子5と重なる部分に開口部7aを有している。この開口部7aは、保護シート7を厚み方向に貫通した孔部である。これにより、バイパス素子5の凸部5dは、保護シート7の開口部7aから露出するようになる。そして、凸部5dの高さが保護シート7の厚みよりも大きい場合は、凸部5dが開口部7aから突出するようになる。また、バイパス素子5の凸部5dは、第2被覆部材3bに覆われている。これにより、バイパス素子5が保護される。このとき、第2被覆部材3bも、開口部7aから露出する。
【0034】
このように、本実施形態では、開口部7aの部位にバイパス素子5が位置するように保護シート7が被覆部材3上に配置されているため、バイパス素子5の凸部5dによる保護シート7の皺の発生が低減される。これにより、保護シート7の強度低下が低減されるため、太陽電池モジュール1の信頼性が向上する。また、被覆部材3が、上述した材料で構成されていれば、架橋前の加熱によって大きく伸びやすいため、バイパス素子5を封止しやすくなる。その結果、バイパス素子5の耐湿性が高まる。
【0035】
また、バイパス素子5の一部(例えば、凸部5d)および凸部5dを覆う第2被覆部材3bの一部が、図4(b)に示すように、開口部7aから外部に突出していてもよい。これにより、開口部7aから外部へ突出した部分の外気との接触面積が大きくなる。その結果、パイバス素子5が発熱しても、この外気によって被覆部材3を介してバイパス素子5を冷却しやすくなる。
【0036】
さらに、本実施形態では、図4(b)に示すように、開口部7a、開口部7aから突出したバイパス素子5の凸部5dおよび第2被覆部材3bは、補助部材11で覆ってもよい。補助部材11は、第2被覆部材3bおよびバイパス素子5を保護する。このような補助部材11には、例えば、耐熱性、耐湿性および絶縁性に優れたシリコーンシーラント、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴムなどの材料を用いることができる。これらの材料であれば、太陽電池モジュール1を比較的長期間使用しても、補助部材11の物性および形状の変化が生じにくい。また、補助部材11は、硬化後に弾性体となる材料を用いれば、ダイオード5aが高温になった場合であっても、補助部材1の溶融による接着力が低下しにくい。
【0037】
さらに、補助部材11には、例えば、熱伝導率の高い金属粒子またはセラミック粒子を上記したゴム等の材料に含有させたものを用いてもよい。これにより、補助部材11の熱伝導率が高まる。その結果、補助部材11の放熱性が向上する。このような金属粒子としては、例えば、アルミニウム(熱伝導率:236W/m・K)、銅(熱伝導率:398W/m・K)または銀(熱伝導率:420W/m・K)が挙げられる。また、セラミック粒子としては、例えば、アルミナ(熱伝導率:32W/m・K)、ジルコニア(熱伝導率:3W/m・K)等が挙げられる。また、セラミック粒子では、補助部材11の絶縁性を確保できる。金属粒子およびセラミック粒子の大きさは、例えば、直径が0.1mm以上で且つ1.2mm以下であればよい。また、金属粒子またはセラミック粒子の上記したゴム等の主材料に対する含有率は、該主材料に対して質量比換算で5%以上で且つ40%以下であればよい。これにより、補助部材11の熱伝導率を向上させるとともに、主材料の成形性および接着性を維持できる。
【0038】
また、補助部材11は、予めシート状に加工されたものを用いてもよい。具体的には、例えば、硬化後に弾性を有するゴムまたは合成樹脂のバインダに熱伝導性フィラーを混ぜて、シート状に加工したものが挙げられる。このとき、バインダとしては、例えば、シリコーンゴム、アクリルゴムまたはポリエチレンゴム等を用いることができる。また、熱伝導性フィラーとしては、黒鉛、雲母またはアルミナ等を用いることができる。
【0039】
(第2実施形態)
本実施形態に係る太陽電池モジュール1は、図5に示すように、ダイオード5aを封止する封止部材5eを有するバイパス素子5を用いている点で第1実施形態と相違する。この封止部材5eは、第1導電板5bおよび第2導電板5cのダイオード5aとの接続部近傍も封止している。封止部材5eの材質としては、例えば、エポキシ樹脂を用いることができる。これにより、上記接続部における第1導電板5bおよび第2導電板5cからのダイオード5aの剥離の発生が低減される。また、この封止部材5eは、保護シート7側に位置する上面5e1と、上面5e1の裏面に相当する下面5e2と、上面5e1および下面5e2をつなぐとともに下面5e2側から上面5e1に向かって傾斜している傾斜部を有する側面5e3とを具備している。これにより、保護シート7からの封止部材5eの突出部分の角部を滑らかにすることができる。その結果、施工者が上記突出部分の角部に工具等を当てたとしても、保護シート7の破損を低減できる。さらに、本実施形態では、太陽電池モジュール1を裏面1b側から見た意匠性を高めることができる。
【0040】
(第3実施形態)
本実施形態に係る太陽電池モジュール1は、図6に示すように、ダイオード5aのカソード電極に接続された第1導電板5bの厚みが、ダイオード5aのアノード電極に接続された第2導電板5cの厚みよりも大きいバイパス素子5を具備する点で前述の実施形態と相違する。バイパス素子5で所望の素子群6に電流をバイパスした際のダイオード5aの発熱量は、アノード電極よりもカソード電極の方が大きい。それゆえ、本実施形態では、カソード電極に接続される第1導電板5bの厚みを大きくすることによって、第1導電板5bの放熱性を高めている。これにより、ダイオード5aで発熱した熱を効率良く放熱できる。
【0041】
また、図6に示したバイパス素子5のように、第1導電板5bの形状と第2導電板5cの形状とを異なるようにすれば、ダイオード5aに対する第1導電板5bの取り付けミスが発生しにくくなる。また、図6に示したバイパス素子5であれば、第1導電板5bおよび第2導電板5cの外周の長さが図5に示したバイパス素子5の第1導電板5bおよび第2導電板5cの外周の長さよりも大きくなる。これにより、第1導電板5bおよび第2導電板5cと接続配線4とを半田で接着した際に生じ得るフィレット部が形成される長さが大きくなるため、接着強度が高まる。
【0042】
(第4実施形態)
本実施形態に係る太陽電池モジュール1は、図7に示すように、端子ボックス8を設けていない点で前述の実施形態と相違する。
【0043】
本実施形態において、2つの出力ケーブル12のうち、一方の出力ケーブル12は、保護シート7に設けられた孔部7bを通って第1正極側出力端6a1に電気的に接続されている。また、他方の出力ケーブル12は、保護シート7に設けられた孔部7bを通って第6負極側出力端6f2と電気的に接続されている。出力ケーブル12は、孔部7bの周囲に充填されたエポキシ樹脂等のポッティング13によって裏面1bに固定される。
【0044】
本実施形態では、端子ボックス8を削減することによって、部材点数を減らして生産性高めることができる。
【0045】
(第5実施形態)
本実施形態に係る太陽電池モジュール1は、図8および図9に示すように、図1(a)等で示された太陽電池素子9の半分の大きさの太陽電池素子9aを用いている点で前述の実施形態と相違する。また、本実施形態では、バイパス素子5を素子群6の一端側と他端側に交互に取り付けている点でも前述の実施形態と相違する。
【0046】
本実施形態の太陽電池素子9aの形状は、前述の実施形態に係る太陽電池素子9をインナーリード10の長手に沿って略中央で分割した長方形である。このような太陽電池素子9は、太陽電池素子9をレーザー等により加工することで形成することができる。なお、本実施形態では、太陽電池素子9aにインナーリード10を2本配置した様子を示したが、2本に限られるものではなくインナーリード10が1本または3本以上配置されていてもよい。
【0047】
本実施形態では、太陽電池素子9aを用いることで、12個の素子群6を直列接続した構造となる。一方で、本実施形態の太陽電池モジュールの受光面積は、前述の実施形態と同等の受光面積を有する。これにより、本実施形態では、前述の実施形態と同じ大きさの太陽電池モジュールとした場合に、太陽電池モジュールの電圧は前述の実施形態の約2倍になり、電流は約半分となる。このように、電力を同じにしつつ電圧を高めて電流を小さくすることによって、接続配線4等における損失を小さくすることができる。
【0048】
さらに、太陽電池モジュール1は、一端側(図8の右側)において、第1素子群6aと第2素子群6bとの間、第3素子群6cと第4素子群6dとの間、第5素子群6eと第6素子群6fとの間、第7素子群6gと第8素子群6hとの間、第9素子群6iと第10素子群6jとの間および第11素子群6kと第12素子群6lとの間にバイパス素子5を有する。また、太陽電池モジュール1は、他端側(図8の左側)において、第2素子群6bと第3素子群6cとの間、第4素子群6dと第5素子群6eとの間、第6素子群6fと第7素子群6gとの間、第8素子群6hと第9素子群6iとの間、第10素子群6jと第11素子群6kとの間にバイパス素子5を有する。
【0049】
このように、本実施形態では、太陽電池モジュール1の一端側と他端側とに交互にバイパス素子5を配置することで、ある素子群6にホットスポット等が発生しても、他の素子群に電流をバイパスしやすくなる。これにより、太陽電池モジュール1の発熱を低減できる。
【0050】
(第6実施形態)
本実施形態に係る太陽電池モジュール1は、図10に示すように、太陽電池モジュール1の外周を保護するとともに、バイパス素子5を覆うフレーム部材14を有する点で前述の実施形態と相違する。
【0051】
フレーム部材14は、図10(a)に示すように、太陽電池パネルAの外周部における受光面1aおよび裏面1bの一部を挟持する嵌合部14aを有している。さらに、フレーム部材14は、嵌合部14aから透光性基板2とは反対の方向に向かって延びる外壁面14bと、該外壁面14bの端部から太陽電池モジュール1の中央に向かって張り出した底面14cと、底面14cの太陽電池モジュール1の中央側の端部から外壁面14bと略平行に配置された内壁面14dと、底面14cよりも保護シート7に近い位置で内壁面14dと外壁面14bとをつなぐ張り出し部14eとを有する。また、フレーム部材14は、外壁面14b、底面14c、内壁面14dおよび張り出し部14eで囲まれた中空部14fを形成している。
【0052】
そして、本実施形態において、張り出し部14eは、バイパス素子5に対向する位置まで張り出すように配置されている。換言すれば、張り出し部14eは、平面視において、バイパス素子5と重なる部分に位置している。そのため、本実施形態では、太陽電池モジュール1の裏面側からバイパス素子5を張り出し部14eで保護することができる。これにより、太陽電池モジュール1を設置する際に作業者が使用する工具等または他の部材がバイパス素子5に接触することによるバイパス素子5の破損が低減される。その結果、太陽電池モジュール1の信頼性が向上する。
【0053】
このようなフレーム部材14は、例えば。アルミニウム合金を押し出し成形することなどにより形成することができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、バイパス素子5と張り出し部14eとの間に隙間が生じていた場合に、この隙間に充填材15を設けてもよい。これにより、風または積雪等によって張り出し部14aがバイパス素子5に接触することによって生じ得る破損を低減できる。
【0055】
また、充填材15は、保護シート7のよりも高い熱伝導率を有していてもよい。これにより、バイパス素子5で発生した熱をフレーム部材14に伝えることができるため、太陽電池モジュール1の放熱性が高まる。このような充填材15としては、例えば、熱伝導率を高めたシリコーンゴム等(熱伝導率:1.3W/m・K)の樹脂を用いることができる。さらに、充填材15は、補助部材11と同様に、シリコーンシーラントやシリコーンゴム等の樹脂に該樹脂よりも熱伝導率の高い金属粒子やセラミック粒子を含有させてもよい。これにより、前述の放熱性がより高まる。なお、樹脂に含有させる粒子は、補助部材11と同様の材料および配合で調整すればよい。
【0056】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1:太陽電池モジュール
1A:太陽電池パネル
1a:受光面
1b:裏面
2:透光性基板
3:被覆部材
3a:第1被覆部材
3b:第2被覆部材
4:接続配線
5:バイパス素子
5a:ダイオード
5b:第1導電板
5b1:狭隘部
5c:第2導電板
5d:凸部
5e:封止部材
5e1:上面
5e2:下面
5e3:側面
6:太陽電池素子群(素子群)
6a〜6l:第1素子群〜第12素子群
6a1:第1正極側出力端
6a2:第1負極側出力端
6b1:第2正極側出力端
6b2:第2負極側出力端
6f2:第6負極側出力端
7:保護シート
7a:開口部
7b:孔部
8:端子ボックス
9、9a:太陽電池素子
10:インナーリード
11:補助部材
12:出力ケーブル
13:ポッティング
14:フレーム部材
14a:嵌合部
14b:外壁面
14c:底面
14d:内壁面
14e:張り出し部
14f:中空部
15:充填材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10