(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027178
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】無変圧器型太陽光インバータの漏れ電流監視装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20161107BHJP
G01R 31/02 20060101ALI20161107BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20161107BHJP
H02S 50/00 20140101ALI20161107BHJP
【FI】
H02M7/48 M
G01R31/02
H02J3/38 130
H02S50/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-90356(P2015-90356)
(22)【出願日】2015年4月27日
(65)【公開番号】特開2015-211637(P2015-211637A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2015年4月27日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0050554
(32)【優先日】2014年4月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】リ イル ヨン
【審査官】
服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−140123(JP,A)
【文献】
特開2014−039444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
G01R 31/02
H02J 3/38
H02S 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータと電力系統との間に設置される無変圧器型太陽光インバータの漏れ電流監視装置であって、
検出された漏れ電流信号の高周波ノイズを除去するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタの出力の平均値を算出する平均値算出部と、
前記ローパスフィルタの出力から前記平均値を引いてDC(直流)成分を除去するDC成分除去部と、
前記DC成分が除去された信号のピーク電流値及び位相を求めるPLL部と、
前記PLL部により求められたピーク電流値及び位相に基づいて漏れ電流の抵抗成分値を算出する抵抗成分漏れ電流算出部と、を含
み、
系統電圧の位相がθ_gridであるとき、前記PLL部により求められた位相はθ_zctであり、前記PLL部により求められたピーク電流値はIpeakであり、前記抵抗成分漏れ電流算出部は、下記数式
【数1】
により、漏れ電流のAC(交流)成分の実効値を求め、
ここで、Δθはθ_grid−θ_zctであり、
前記漏れ電流の抵抗成分値は、前記実効値に前記平均値算出部により算出された平均値の絶対値を加えて算出されることを特徴とする無変圧器型太陽光インバータの漏れ電流監視装置。
【請求項2】
前記Δθは、遅延補償用位相を加えた値である、請求項1に記載の無変圧器型太陽光インバータの漏れ電流監視装置。
【請求項3】
前記ローパスフィルタ、前記平均値算出部、前記DC成分除去部及び前記抵抗成分漏れ電流算出部の動作がマイクロプロセッサにより行われるように構成される、請求項1に記載の無変圧器型太陽光インバータの漏れ電流監視装置。
【請求項4】
漏れ電流を測定する零相変流器と、
前記零相変流器の出力信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部のアナログ出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、をさらに含む、請求項1に記載の無変圧器型太陽光インバータの漏れ電流監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏れ電流監視装置に関し、特に、系統と連系する無変圧器型(transformer-less)太陽光インバータの漏れ電流のうち人体に有害な抵抗成分の漏れ電流を監視する漏れ電流監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、光電池(Photo Voltaic; PV)モジュールのアレイを用いて電力を生産するが、PVモジュールのアレイから生産される電力はDC(直流)電力であるので、生産された電力を家庭や会社などの需要家に供給するためには、一般的に使用されるAC(交流)電力に変換する必要がある。
【0003】
図4は系統連系型太陽光発電システム10の構成の一例を示すブロック図である。
【0004】
系統連系型太陽光発電システム10は、PVモジュール11、インバータ12及び電力系統(グリッド)13を含んでもよい。PVモジュール11で太陽光を利用して生成された電力は、インバータ12により交流に変換されて電力系統13に送られる。
【0005】
一方、太陽光を利用して電力を生成する際には、効率性と共に安定性も考慮しなければならない。
【0006】
インバータ12は、大きく変圧器により電気的に絶縁されるインバータと、変圧器を備えない無変圧器型インバータに分けられるが、近年、効率、コスト、体積、重量などの面で利点を有する無変圧器型インバータが関心を集めている。しかし、無変圧器型インバータにおいては、漏れ電流が発生しやすい。
【0007】
図4にはPVモジュール11のPV+端及びPV−端の故障状態を示す。
【0008】
漏れ電流が発生すると、電線と大地間には抵抗成分Rと容量成分Cが存在することになる。ここで、容量成分Cの漏れ電流は、PVモジュール11の特性上常に存在する値であって人体に有害な成分とはいえないが、抵抗成分Rの漏れ電流は、人だけでなく周囲の木などにも影響を及ぼす有害な成分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、無変圧器型インバータの場合は、抵抗成分漏れ電流に対応できるようにする必要性がある。
【0010】
本発明は、このような必要性に基づいてなされたものであり、無変圧器型太陽光インバータにおいて検出された漏れ電流から抵抗成分漏れ電流を測定し、インバータの動作時に発生し得る系統事故(fault in grid)やユーザの人体傷害のリスクに対する安全性を向上させた無変圧器型太陽光インバータの漏れ電流監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明による無変圧器型太陽光インバータの漏れ電流監視装置は、検出された漏れ電流信号の高周波ノイズを除去するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタの出力の平均値を算出する平均値算出部と、前記ローパスフィルタの出力から前記平均値を引いてDC成分を除去するDC成分除去部と、前記DC成分が除去された信号のピーク電流値及び位相を求めるPLL(Phase-Locked-Loop)部と、前記PLL部により求められたピーク電流値及び位相に基づいて漏れ電流の抵抗成分値を算出する抵抗成分漏れ電流算出部とを含む。
【0012】
前記抵抗成分漏れ電流算出部は、下記数式1により漏れ電流のAC成分の実効値を求め、前記実効値に前記平均値算出部により算出された平均値の絶対値を加えて漏れ電流の抵抗成分値を算出する。
【数1】
【0013】
ここで、Δθはθ_grid−θ_zctであり、θ_gridは系統電圧の位相であり、θ_zctは前記PLL部により求められた位相であり、Ipeakは前記PLL部により求められたピーク電流値である。
【0014】
前記Δθは、必要に応じて遅延補償用位相を加えた値にしてもよい。
【0015】
前記ローパスフィルタ、前記平均値算出部、前記DC成分除去部及び前記抵抗成分漏れ電流算出部の動作がマイクロプロセッサにより行われるように構成されてもよい。
【0016】
本発明による無変圧器型太陽光インバータの漏れ電流監視装置は、漏れ電流を測定する零相変流器(Zero Current Transformer; ZCT)と、前記零相変流器の出力信号を増幅する増幅部と、前記増幅部のアナログ出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、太陽光インバータの動作時に発生する漏れ電流の抵抗成分のみを測定することができる。
【0018】
従って、危険状態でインバータの動作を停止させるなどの措置を講じることにより、系統事故やインバータを操作するユーザの人体傷害のリスクに対する安全性を向上させることができる。特に、インバータでその機能を実行するように構成した場合、さらなる漏れ電流測定装置を必要としないので、より簡単に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態による漏れ電流監視装置が適用された系統連系型太陽光発電システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態による漏れ電流監視装置の増幅部の構成の一例を示す回路図である。
【
図3】本発明の一実施形態による漏れ電流監視装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】系統連系型太陽光発電システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態による無変圧器型太陽光インバータの漏れ電流監視装置について詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施形態による漏れ電流監視装置23が適用された系統連系型太陽光発電システム20の構成の一例を示すブロック図である。
【0022】
系統連系型太陽光発電システム20は、インバータ12から電力系統(グリッド)13に電力を供給する電力線に零相変流器21を設け、インバータ12に流れる漏れ電流を測定する。
【0023】
零相変流器21としては、電力線が内部を貫通するリング状コアに漏電電流が流れる信号線を巻き付けた貫通形零相変流器を用いてもよい。零相変流器21の貫通穴に電源線Lと中性線Nの両方の巻線を貫通させて信号線の2つの線に流れる漏れ電流を測定する。ここで、信号線の2つの線は、同じ方向に巻回し、巻回数が多くなるほど漏れ電流が増幅される。
【0024】
実際に流れる漏れ電流は、大地の容量成分Cと系統事故による抵抗成分Rに分けられる。零相変流器21は、測定された漏れ電流を所定の範囲の電圧値を有する電圧信号として出力する。
【0025】
増幅部22は、零相変流器21の出力を増幅するが、その増幅の目的は、零相変流器21の出力電圧レベルを漏れ電流監視装置23に入力可能な電圧レベルにすることにある。
【0026】
増幅部22は、必要に応じて多様に構成することができ、
図2に増幅部22の一例を示す。
【0027】
零相変流器21から出力された電圧信号は、第1演算増幅器OP1で−R2/R1の比率で増幅され、また第2演算増幅器OP2で−R4/R3の比率で増幅される。
【0028】
このとき、第1演算増幅器OP1の帰還コンデンサC1と第2演算増幅器OP2の帰還コンデンサC2により、1/2πsR2sC1と1/2πsR4sC2の遮断周波数でフィルタリングが行われる。すなわち、増幅部22は、増幅機能に加え、フィルタ機能を実行することができる。
【0029】
漏れ電流監視装置23は、増幅部22により増幅された信号に基づいて漏れ電流の抵抗成分値を算出し、その構成要素の全部又は一部の機能がマイクロプロセッサにより行われるように構成されてもよい。
【0030】
マイクロプロセッサを用いて漏れ電流監視装置23を構成する実施形態の場合、増幅部22により増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換しなければならないが、そのためのA/D変換器23−1は、マイクロプロセッサの外部に備えられてもよく、マイクロプロセッサに内蔵されてもよい。
【0031】
具体的な例として、マイクロプロセッサに内蔵されたA/D変換器を使用する場合、A/D変換器23−1の入力電圧レベルが3Vであり、零相変流器21の出力電圧レベルが5Vであると仮定すると、増幅部22は、2/3の増幅度を有するように構成することができる。この場合、
図2のR1、R2、R3、R4の値は、例えば、それぞれ15KΩ、10KΩ、100KΩ、100KΩである。
【0032】
図3を参照すると、漏れ電流監視装置23は、ローパスフィルタ23−2、平均値算出部23−3、DC成分除去部23−4、PLL部23−5、抵抗成分漏れ電流算出部23−6を含み、増幅部22により増幅されたアナログ信号を入力してデジタル信号に変換して出力するA/D変換器23−1をさらに含んでもよい。
【0033】
ローパスフィルタ23−2は、入力された信号から所定の遮断周波数以上の高周波ノイズを除去する。
【0034】
増幅部22が
図2に示す例のように構成された場合、零相変流器21から出力された電圧信号は、2回にわたってフィルタリングされる。
【0035】
平均値算出部23−3は、ローパスフィルタ23−2の出力の平均値(DC値)を算出する。例えば、周期的に平均値を算出するようにしてもよい。
【0036】
DC成分除去部23−4は、ローパスフィルタ23−2の出力から平均値算出部23−3により算出されたローパスフィルタ23−2の出力の平均値を引いてDC成分を除去することにより、AC成分のみ残るように処理する。DC成分除去部23−4によりDC成分を除去するのは、PLL処理のためである。
【0037】
PLL部23−5は、DC成分が除去されたAC信号を同期座標(Synchronous Reference Frame)に変換して当該信号のピーク電流値及び位相を求める。
【0038】
抵抗成分漏れ電流算出部23−6は、PLL部23−5により求められたピーク電流値及び位相に基づいて漏れ電流の抵抗成分値を算出する。
【0039】
まず、抵抗成分漏れ電流算出部23−6は、下記数式1により漏れ電流のAC成分の実効値を求める。
【数2】
【0040】
ここで、Δθはθ_grid−θ_zctであり、θ_gridは系統電圧の位相であり、θ_zctはPLL部23−5により求められた位相であり、IpeakはPLL部23−5により求められたAC成分のピーク電流値である。
【0041】
ここで、「θ_grid−θ_zct」とは、漏れ電流の抵抗成分Rと容量成分Cとの位相差を意味する。
【0042】
また、抵抗成分漏れ電流算出部23−6は、実効値に平均値算出部23−3により算出された平均値の絶対値を加えて漏れ電流の抵抗成分値を算出する。実効値に平均値算出部23−3により算出された平均値の絶対値を加えるのは、DC成分も抵抗成分漏れ電流に含まれるが、PLL部23−5での処理のために除去されているからである。
【0043】
さらに、抵抗成分漏れ電流算出部23−6は、Δθを、θ_grid−θ_zctに所定の遅延補償用位相を加えた値として求めるようにしてもよい。すなわち、遅延補償用位相をθ_delayとすると、Δθは、「θ_grid+θ_delay−θ_zct」にしてもよい。
【0044】
遅延補償用位相は、マイクロプロセッサを用いてPLL部23−5などを構成する場合、ソフトウェア的な計算などによる時間遅延が生じることがあるのでそれを補償するためのものである。
【0045】
本発明による漏れ電流監視装置23は、インバータ12と一体に構成されてもよい。そうすることにより、さらなる漏れ電流測定装置が必要なくなるので、より簡単に系統連系型太陽光発電システム20を実現することができる。
【0046】
また、漏れ電流監視装置23により算出された漏れ電流の抵抗成分値に基づいて様々な措置を講じることができる。例えば、漏れ電流の抵抗成分値が所定の値より大きい場合、インバータ12の動作を停止させるようにしてもよい。
【0047】
前述した実施形態は、本発明の理解を助けるためのものであり、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で様々に変形して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
10、20 系統連系型太陽光発電システム
11 PVモジュール
12 インバータ
13 電力系統
21 零相変流器(ZCT)
22 増幅部
23 漏れ電流監視装置
23−1 A/D変換器
23−2 ローパスフィルタ
23−3 平均値算出部
23−4 DC成分除去部
23−5 PLL部
23−6 抵抗成分漏れ電流算出部
C1、C2 コンデンサ
OP1 第1演算増幅器
OP2 第2演算増幅器
R1〜R4 抵抗成分