特許第6027195号(P6027195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027195
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】蒸しご飯およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/10 20160101AFI20161107BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20161107BHJP
【FI】
   A23L5/10 A
   A23L7/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-136025(P2015-136025)
(22)【出願日】2015年7月7日
(65)【公開番号】特開2016-19520(P2016-19520A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2015年7月28日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0087216
(32)【優先日】2014年7月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515185913
【氏名又は名称】シルー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SIROO CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】韓 相 吉
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−1290220(KR,B1)
【文献】 特開昭60−139214(JP,A)
【文献】 特開平03−175939(JP,A)
【文献】 特開昭59−224661(JP,A)
【文献】 特開昭61−074553(JP,A)
【文献】 特公平02−028964(JP,B2)
【文献】 特開平01−243952(JP,A)
【文献】 特開平11−075730(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/035343(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第2011−0136454(KR,A)
【文献】 特開2000−116346(JP,A)
【文献】 特開2003−304822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
A23L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米の異物および状態を確認してお米を選別する段階と、
前記選別した米を洗浄する段階と、
前記洗浄された米を水に浸漬した後、排水する段階と、
前記浸水した後、排水させた米を1次蒸熟してご飯を製造する段階と、
前記1次蒸熟して製造されたご飯に水および添加剤を混合する段階と、
前記水と添加剤が混合されたご飯を2次蒸熟する段階と、および
前記2次蒸熟されたご飯を包装する段階を含み、
前記洗浄された米を水に浸漬した後、排水する段階は、前記米を2時間ないし3時間水に浸漬した後、排水する段階であり、
前記浸水した後、排水させた米を1次蒸熟してご飯を製造する段階は、浸水や排水された米を140℃ないし160℃の温度で8分ないし12分間蒸熟してご飯を製造する段階であり、
前記1次蒸熟して製造されたご飯に水および添加剤を混合する段階は、
前記添加剤としてポリグリシトールシロップ、トレハロース、および酢を混合するが、
前記ポリグリシトールシロップの量は、1次蒸熟された米および混合された水総量100重量部を基準として、2ないし5重量部含まれており、前記トレハロースの量は1次蒸熟された米および混合された水総量100重量部を基準として2ないし4重量部含まれており、前記酢の量は1次蒸熟された米および混合された水総量100重量部を基準として、2ないし4重量部含まれることを特徴とする蒸しご飯の製造方法。
【請求項2】
前記水と添加剤が混合されたご飯を2次蒸熟する段階は、水、ポリグリシトールシロップ、トレハロース、および酢を混合した1次蒸熟されたご飯を140℃ないし160℃の温度で8分ないし12分間蒸熟することを特徴とする、請求項1に記載の蒸しご飯製造方法。
【請求項3】
前記酢は醸造酢である環萬酢を使用することを特徴とする、請求項1に記載の蒸しご飯製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸しご飯および製造方法に係り、炊き立てご飯の味と品質を長持ちすることができ、炊飯後も家庭での味以上の満足度を高めることができる蒸しご飯およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在一般に用いられている乾燥米の製品は、一定の規則により炊飯して得られたご飯を真空凍結乾燥して製造されたもので、その品質は、復元時間、食感、色などが重要な要素として作用し、長期間保存も可能でなければならない。
【0003】
一般に、加水復元性および食感を優れたものにするためには、最終製品の気孔が小さく、緻密、かつ均一でなければならず、気孔壁が厚くなってはならず、もし水分含有量が28%以下になれば、最終製品の気孔(air cell)が不均一で、気孔壁が厚くなってしまい食感が悪く、水分含有量が30%以上になれば、原料の水分含有量が多くなり、原料中の水分が十分に気化されないまま、吐出されるため、膨化程度が不良で、復元時間が長くなるなどのいくつかの問題点がある。
【0004】
また、韓国特許公告第10−1992−0013000号には、うるち米でガレトック(長く切ったお餅)の形を成形し、これを−50℃以下で10分以内に急速凍結させて調理冷凍トッポッキを製造用餅の製造方法が開示されているが、長期保存のための方法である急速凍結工程により調理時に復元が完全でないため、質感がよくなく、冷凍温度で保管しなければならないという不便さがある。
【0005】
一方、最近は、1人前ずつ包装された加工米飯を電子レンジで数分間加熱したり、お湯の中で十数分間加熱するだけで、米飯が完成される加工米飯が登場した。これは包装米飯(無菌パック米飯)と呼ばれる商品であって、独身者や共働き家庭に普及されている。
【0006】
従来のこの種の包装米飯は、次のように製造される。すなわち、耐熱性の合成樹脂性の容器に1人前の米と水を充填し、前記の米をマイクロ波や蒸気による熱によって炊飯し、炊飯後、容器内のガス置換を施し、密封することにより、商品とする。
【0007】
このようにして製造された包装米飯は、容器が密封された状態で流通されるため、微生物の汚染が防止され、また、ガス置換を施しているため、脱酸素剤が不要であるなどのメリットがある。
【0008】
前記包装米飯の製造方法のうち、短時間で製造することを目的としたものがある。それは、米および炊飯水を容器に充填し、その容器を加圧した雰囲気中でマイクロ波の照射により、100℃を超える温度まで加熱し、加熱後、大気圧まで減圧させる間に前記容器内の炊飯水を激しく沸騰(突沸)させてむらなく炊飯する、包装米飯の製造方法である。
【0009】
ところが、前記のような包装米飯の製造方法では、短時間で炊飯を行うことが可能ではあるが、前記減圧時、炊飯水の突沸現象によって、容器内の内容物が周囲に飛び散ってしまい、特に、穀精水(ご飯を炊くとき、吹きこぼれる水)などの粘着力の強いのが容器のフランジ部分に付着することにより、密封のためにフィルムをシールする際に、前記付着物を除去しなければならない。
【0010】
このため、浸水時間も含め、非常に短時間で炊飯を行うことが可能な包装米飯の製造方法において、炊飯時に容器のフランジ部分に穀精水などの汚染物が付着することのない製造方法が強く望まれている。
【0011】
また、一般的な炊飯器であるガス炊飯器や電気炊飯器のご飯は、水を沸騰させながらご飯をするため、米粒のふっくらさを保ちにくく、内釜の下部の面積当たりの熱源伝達力と高さ別に熱源伝達力の差があり、相対的にご飯の出来上がりにむらができ、炊飯時間が長くなり、炊飯後は、品質保持が難しく、時間の経過に応じてご飯の品質が急減する問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、炊き立てご飯の味と品質を長持ちでき、炊飯後も家庭での味以上の満足度を高めることができる蒸しご飯を提供することにある。
【0013】
また、本発明が解決しようとする課題は、ご飯の炊き時間を節約することができ(同じ量を基準として約40分かかる従来の普通のご飯の炊き時間を約15分に短縮する)、炊飯後の米の味が粘りが良く、腐敗開始時点が普通のご飯よりも長く(同じ量を基準として従来の普通のご飯は、30時間程経過した後、腐敗が始まるが、本発明に係る蒸しご飯は45時間程度経過した後、腐敗が始まる)、長時間経過しても米粒のつやが一定に保持され、ご飯の色が変色しない蒸しご飯を提供することにある。
【0014】
また、本発明が解決しようとするもう一つの課題は、熱源(蒸気)が米粒間をむらなく行き渡り炊飯することができ、米粒がそのまま生きていて、全体的に米粒がむらなく炊かれ、一定時間が経過した後でも、炊き立ての味に似た味を保持することができる蒸しご飯および製造装置を提供するものである。
【0015】
本発明が解決しようとする様々な課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないまた別の課題は、以下の記載から当業者が明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の技術的思想の一実施形態に係る蒸しご飯の製造方法は、米の異物および状態を確認し、お米を選別する段階と、前記選別された米を洗浄する段階と、前記洗浄された米を水に浸漬した後、排水する段階と、前記浸水した後、排水させた米を1次蒸熟し、ご飯を製造する段階と、前記1次蒸熟して製造されたご飯に水および添加剤を混合する段階と、前記水と添加剤が混合されたご飯を2次蒸熟する段階と、前記2次蒸熟されたご飯を包装する段階を含むが、前記洗浄された米を水に浸漬した後、排水する段階は、前記米を2時間ないし3時間水に吸水させた上、排水する段階であり、前記浸水した後、排水させた米を1次蒸熟してご飯を製造する段階は、浸水および排水された米を140℃ないし160℃の温度で8分ないし12分間蒸熟してご飯を製造する段階であり、前記1次蒸熟して製造されたご飯に水および添加剤を混合する段階は、前記添加剤としてポリグリシトールシロップ、トレハロースおよび酢を混合するが、前記のポリグリシトールシロップの量は、1次蒸熟された米および混合された水総量100重量部を基準として、
2ないし5重量部含まれており、前記トレハロースの量は1次蒸熟された米および混合された水総量100重量部を基準として、2ないし4重量部含まれており、前記酢の量は1次蒸熟された米および混合された水総量100重量部を基準として2ないし4重量部含まれる。
【0017】
前記水と添加剤が混合されたご飯を2次蒸熟する段階は、水、ポリグリシトールシロップ、トレハロース、および酢を混合した1次蒸熟されたご飯を140℃ないし160℃の温度で8分ないし12分間蒸熟することができる。
【0018】
前記酢は醸造酢である環萬酢を使用することができる。
【0019】
また、本発明は、前記した製造方法により製造された蒸しご飯を含むことができる。
【0020】
その他の実施例の具体的な事項は詳細な説明および図面に含まれている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の技術的思想の一実施例による蒸しご飯は、炊きたてご飯の味と品質を長持ちすることができ、炊飯後も家庭の味以上の満足度を高めることができる。
【0022】
また、本発明の技術的思想の一実施例による蒸しご飯は、香りにおいて芳ばしい風味(例えば、おこげやおこげスープの風味)を感じることができ、米粒が元の形や透明度およびツヤを保持することができる。
【0023】
また、本発明の技術的思想の一実施例による蒸しご飯は、米粒を噛むときの粘りを感じることができ、ご飯を口に入れたとき柔らさを保持することができる。
【0024】
また、本発明の技術的思想の一実施例による蒸しご飯は、ご飯の炊き時間を節約することができ(同じ量を基準として約40分かかる普通のご飯の炊き時間を約15分に短縮する)、炊飯後のご飯の味が粘りがあって美味しい、腐敗開始時点が普通のご飯よりも長く(同じ量を基準として普通のご飯は、30時間程度経過した後、腐敗が始まるが、本発明に係る蒸しご飯は45時間程度経過した後、腐敗が始まる)、長時間経過しても米粒のツヤが一定に保持され、ご飯の色が変色しない効果がある。
【0025】
また、本発明の技術的思想の一実施例による蒸しご飯の製造方法は、熱源(蒸気)が米粒間をむらなく行き渡り炊飯することができ、米粒がそのまま生きていて、全体的に米粒がむらなく炊かれ、一定時間経過した後でも、炊き立ての味に似た味を保持することができる
【0026】
本発明の技術的思想の多様な実施例は、具体的に言及されない多様な効果を提供することができるということが十分に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の技術的思想の一実施形態に係る蒸しご飯の製造方法を説明する過程を示す製造工程図である。
図2】本発明の技術的思想の一実施形態に係る蒸しご飯の製造方法で米を洗浄する段階を示す写真である。
図3】本発明の技術的思想の一実施形態に係る蒸しご飯の製造方法で洗浄した米を浸水する段階を示す写真である。
図4】本発明の技術的思想の一実施形態に係る蒸しご飯の製造方法でお米を浸水した後、排水する段階を示す写真である。
図5】本発明の技術的思想の一実施形態に係る蒸しご飯の製造方法で蒸熟する段階を示す写真である。
図6】本発明の技術的思想の一実施例に基づいて製造された蒸しご飯を示す写真である。
図7】本発明の技術的思想の一実施例に基づいて製造された蒸しご飯の1時間経過後の状態を示す写真である。
図8】本発明の技術的思想の一実施例に基づいて製造された蒸しご飯の3時間経過後の状態を示す写真である。
図9a】本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯の時間経過に伴う水分の変化を示す表である。
図9b】本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯の時間経過に伴う水分の変化を示すグラフである。
図10a】比較例に基づいて完成された普通のご飯の時間経過に伴う水分の変化を示した表である。
図10b】比較例に基づいて完成された普通のご飯の時間経過に伴う水分の変化を示すグラフである。
図11a】本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯の真菌数および水分含有量の検査成績書を示す写真である。
図11b】本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯の真菌数および水分含有量の検査成績書を示す写真である。
図11c】本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯の真菌数および水分含有量の検査成績書を示す写真である。
図11d】本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯の真菌数および水分含有量の検査成績書を示す写真である。
図11e】本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯の真菌数および水分含有量の検査成績書を示す写真である。
図11f】本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯の真菌数および水分含有量の検査成績書を示す写真である。
図12a】比較例に係る普通のご飯の真菌数および水分含有量の検査成績書を示す写真である。
図12b】比較例に係る普通のご飯の真菌数および水分含有量の検査成績書を示す写真である。
図12c】比較例に係る普通のご飯の真菌数および水分含有量の検査成績書を示す写真である。
図12d】比較例に係る普通のご飯の真菌数および水分含有量の検査成績書を示す写真である。
図12e】比較例に係る普通のご飯の真菌数および水分含有量の検査成績書を示す写真である。
図12f】比較例に係る普通のご飯の真菌数および水分含有量の検査成績書を示す写真である。
図13】本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯の有害菌の検査成績書を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は添付される図面と共に詳細に後述される実施例を参照すると明確になる。しかしながら、本発明は、以下で説明する実施例に限定されるものでなく、互いに異なる多様な形態に具体化することもできる。むしろ、ここに紹介されている実施例は、開示された内容が徹底して完全になるように、また、当業者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするために提供されるものである。
【0029】
本出願にて使用される用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図でない。単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を表さない限り、複数の表現を含む。本出願において「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品、またはこれらの組み合わせが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品、またはこれらの組み合わせの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解されるべきである。
【0030】
異に定義されない限り、技術的または科学的な用語を含み、ここで使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者により一般に理解されるものと同じ意味がある。一般に使用される辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味があると解釈されるべきであり、本出願で明白に定義しない限り、理想的な、または過度に形式的な意味に解釈されないものとする。
【0031】
以下、添付された図面を参照して、本発明の技術的思想に基づく蒸しご飯の製造方法の好ましい実施例を詳細に説明し、本発明の要旨を不要に曖昧にし得るような公知機能および構成に対する詳細な説明は、省略することにする。
【0032】
図1は、本発明の技術的思想の一実施形態に係る蒸しご飯の製造方法を説明するための製造工程図であり、図2ないし図8は、本発明の技術的思想の一実施形態に係る蒸しご飯の製造方法を段階別に説明するための写真である。
【0033】
図1ないし図8を参照すると、本発明の技術的思想の一実施形態に係る蒸しご飯は炊き立てご飯の味と品質を長持ちすることができ、炊飯後も家庭での味以上の満足度を向上させることができる。
【0034】
まず、図1を参照すると、本発明の技術的思想の一実施形態に係る蒸しご飯の製造方法は、米の異物および状態を確認して米を選別S1することから始まる。前記選別段階S1で使用されている主な材料としては、ご飯を作ることができるもち米、うるち米、玄米、白米、発芽玄米などすべての種類のお米が使用可能である。
【0035】
次に、図1および図2を参照すると、前記選別S1段階で選別された米をきれいに洗浄S2する。前記洗浄S2段階で米を洗浄する回数は特に制限されないが、好ましくは、5回以上きれいに洗浄する。
【0036】
次に、図3に示すように、前記洗浄S2した米を水に浸漬した後、図4に示すように、前記浸漬した水を排水S3する。前記浸水および排水S3段階で浸水する時間は、特に制限されないが、好ましくは2時間ないし3時間水に浸漬した後排水する。米を浸水したら、米澱粉を湖化するために必要な水の一部を加熱する前に、あらかじめ、米中に吸収させるため、ご飯を炊くとき湖化が迅速に、かつ完全に進むことによってご飯の味が良くなる。これに対し2時間未満で浸水させた場合には、米に添加される水が米中に少なく吸収されご飯を炊くとき、湖化の進みが悪くなり、味がやや低下し、3時間を超えた場合には、米が浸水し過ぎて炊飯した後、米粒の状態を保持することが困難な問題がある。
【0037】
続いて、図5に示すように、浸水および排水S3した米を1次蒸熟S4する。前記1次蒸熟S4は、前記浸水および排水S3した米を加熱してご飯の状態に製造する段階であるが、一定の温度および時間で米を炊くことが最もご飯の味と香りがうまく調和し、米粒の状態も崩れず、米の形をそのまま保持し、米が割れる現象と栄養の損失を防ぐことができるようになる。たとえば、前記1次蒸熟S4は、前記浸水および排水S3された米14kgを140℃ないし160℃の高温で8分ないし12分間蒸熟する。好ましくは、前記1次蒸熟S4は、前記浸水および排水された米14kgを150℃の高温で10分間蒸熟する。
【0038】
その後、前記1次蒸熟S4した後、前記1次蒸熟S4されたご飯にお湯を混合した後、各種の添加剤を混合S5することができる。たとえば、前記の混合S6する段階は、前記1次蒸熟S4されたご飯にお湯を混合した後、ポリグリシトールシロップ、トレハロース、および酢を混合する段階であることができる。
【0039】
前記お湯は前記1次蒸熟S4されたご飯に13kgないし15kg混合することができる。
【0040】
前記ポリグリシトールシロップは水飴、またはデキストリンを水素添加反応させて製造されており、「還元澱粉加水分解物」、「還元水飴」とも通称される。特に甘味度が通常の水飴より低く低甘味食品に有用であり、水分を保持する性質があり、水分の損失や吸収による変化が少ない。また、増粘効果があり、決着性および食感の改善に効果があり、結晶を生成しない、他の糖類の再結晶析出を抑制する効果がある。本発明では、前記ポリグリシトールシロップの量は、1次蒸熟S4された米および混合された水の総量100重量部を基準として、2ないし5重量部含むことができる。本発明では、前記ポリグリシトールシロップは、松谷化学工業(株)で生産された商品名エイチ・エル−ピーディエクスX(K)は(HL−PDX(K)という食品添加物を使用することができる。本発明では、前記ポリグリシトールシロップを添加することでご飯が冷めても味に変わりはなく、長時間美味しいご飯を保持することができ、天然の甘さを持ち、ツヤの良い蒸しご飯を製造することができる。
【0041】
前記トレハロース(trehalos)は、植物や自然界に広く存在する非還元性の天然二糖類で澱粉老化防止および保湿効果に優れ、澱粉を使用した製品に効果的である。本発明では、前記トレハロースの量は、1次蒸熟S4された米および混合された水総量100重量部を基準として、2ないし4重量部含むことができる。
【0042】
前記酢は環萬酢を使用することができるが、前記環萬酢は醸造酢(sprit
vineagar)にアルコールを主原料とし、これに硝酸菌の栄養源として少量の酒粕エキス、菊汁、麦芽汁や酵母エキスなどを加えて酸化させて作成された酢である。本発明において、前記酢の量は、1次蒸熟S4された米および混合された水総量100重量部を基準として、2ないし4重量部含むことができる。
【0043】
その後、前記混合S5段階を経たご飯を2次蒸熟S6する。前記2次蒸熟S6は、前記混合S4した米を加熱してご飯の状態に完全に製造する段階であるが、一定の温度と時間で米を炊くことが、ご飯の味と香りが最もうまく調和させ、米粒の状態も崩れず、米の形をそのまま保持し、米が割れる現象と栄養の損失を防ぐことができるようになる。前記2次蒸熟S6は、前記1次蒸熟S4と同じ工程条件で行うことができる。たとえば、前記2次蒸熟S6は、お湯を混合した後、ポリグリシトールシロップ、トレハロース、および酢を混合した1次蒸熟S4されたご飯を140℃ないし160℃の高温で8分ないし12分間蒸熟する。好ましくは、前記2次蒸熟S6は、お湯を混合した後、ポリグリシトールシロップ、トレハロース、および酢を混合した1次蒸熟S4されたご飯を150℃の高温で10分間蒸熟する。
【0044】
続いて、前記2次蒸熟S6の段階を経たご飯を包装S7する。前記包装S7は、使い捨て容器や包装容器に包装され、最終的な無菌消毒システムを経て保存性を高め、製品化される。前記使い捨て容器または包装容器に入れられ包装されたインスタント蒸しご飯の場合、短い時間と少ない熱エネルギーで、つまり、お湯を適量注いで使用したり、電子レンジなどの熱エネルギーを得ることができる装置によっても食味が生きているインスタント蒸しご飯を食することができる。
【0045】
以下、本発明に係る蒸しご飯の製造方法の好ましい実施例を詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明の技術的思想を例示するためのもので、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
米の異物および状態を確認して選別した後、選別された米を5回きれいに洗浄した。洗浄した米を2時間水に浸漬した後、排水し、排水された米14kgを150℃の高温で約10分間蒸熟してご飯を製造した。続いて、蒸熟されたご飯にお湯14kgを混合した後、ポリグリシトールシロップ、トレハロース、および酢を添加して混合した。前記ポリグリシトールシロップの量は、前記蒸熟された米および混合された水総量100重量部を基準として3重量部含む。本発明に係る実施例では、前記ポリグリシトールシロップは、松谷化学工業(株)で生産された商品名エイチ・エル−ピーディエクスX(K)は(HL−PDX)(K)と呼ばれる食品添加物を使用した。前記トレハロースの量は蒸熟された米および混合された水総量100重量部を基準として3重量部含まれており、前記酢は醸造酢である環萬酢を使用し、前記酢の量は蒸熟された米および混合された水総量100重量部を基準として3重量部含まれていた。続いて、2次に150℃の高温で15分間再度蒸熟して蒸しご飯を完成した。
【比較例】
【0047】
本発明に係る実施例と同じ量で蒸熟された普通のご飯を製造した。比較例に係る一般的なご飯では、本発明で添加されたポリグリシトールシロップ、トレハロース、および酢が含まれておらず、同じ量のご飯と水を利用して、普通のご飯を製造した。
【0048】
前記実施例に基づいて完成された蒸しご飯の時間経過に伴う状態の変化を図6ないし図8に示した。図6は、本発明に基づいて製造された蒸しご飯を示す写真であり、図7は、本発明に基づいて製造された蒸しご飯の1時間経過後の状態を示す写真であり、図8は、本発明に基づいて製造された蒸しご飯の3時間経過後の状態を示す写真である。図6ないし図8を参照すると、本発明に基づいて製造された蒸しご飯は時間の経過に応じて米粒のツヤに変化がなく、炊きたてご飯の味と品質を長持ちできることが分かる。
【0049】
図9aは、本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯の時間の経過に伴う水分の変化を示した表であり、図9bは、本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯の時間経過に伴う水分の変化を示したグラフであり、図10aは、比較例に基づいて完成された普通のご飯の時間経過に伴う水分の変化を示した表であり、図10bは、比較例に基づいて完成された普通のご飯の時間経過に伴う水分の変化を示すグラフである。
【0050】
図9aないし図10bを参照すると、本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯が普通のご飯に比べて水分含有量が多く、48時間が経過した後でも、水分含有量の変化なしに初期の水分含有量が一定に保持されることを知ることができる。
【0051】
図11aないし図11fは、本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯の真菌数および水分含有量の検査成績書を示す写真であり、図12aないし図12fは、比較例に係る普通のご飯の真菌数および水分含量の検査成績書を示す写真であり、図13は、本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯の有害菌の検査成績書を示す写真である。
【0052】
図11aないし図12fを参照すると、本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯が普通のご飯に比べて水分含有量が多く、48時間が経過した後でも、水分含有量の変化なしに初期の水分含有量が一定に保持されることを検査成績書を通して知ることができる。
【0053】
また、図13を参照すると、本発明の実施例に基づいて完成された蒸しご飯は時間が経過しても、人体に有害な有害菌は陰性と判定されたことを知ることができる。
【0054】
以上、添付された図面を参照して、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明は、その技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形で実施できることを理解できる。したがって、以上で記述した実施形態では、すべての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
図1
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図11c
図11d
図11e
図11f
図12a
図12b
図12c
図12d
図12e
図12f
図13
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8