特許第6027222号(P6027222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6027222硬化性樹脂組成物、硬化物、封止材、及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027222
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化物、封止材、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20161107BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20161107BHJP
   C08K 5/3477 20060101ALI20161107BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20161107BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20161107BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20161107BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20161107BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08L83/05
   C08K5/3477
   C08K5/54
   H01L23/30 R
   H01L33/56
【請求項の数】7
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-500198(P2015-500198)
(86)(22)【出願日】2014年2月4日
(86)【国際出願番号】JP2014052519
(87)【国際公開番号】WO2014125964
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2015年10月22日
(31)【優先権主張番号】特願2013-26947(P2013-26947)
(32)【優先日】2013年2月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100101362
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】禿 恵明
(72)【発明者】
【氏名】中川 泰伸
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/111667(WO,A1)
【文献】 特開2010−138380(JP,A)
【文献】 特開2012−052029(JP,A)
【文献】 特開2010−109034(JP,A)
【文献】 特開2005−343984(JP,A)
【文献】 特開2005−307015(JP,A)
【文献】 特開2010−285507(JP,A)
【文献】 特開2007−224095(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/176238(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/094625(WO,A1)
【文献】 特開平09−291214(JP,A)
【文献】 特開2005−068268(JP,A)
【文献】 特開2012−111875(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/109349(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00− 83/16
C08K 3/00− 13/08
C09K 3/10
H01L23/00−23/66
H01L33/00−33/64
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサン(A)、イソシアヌレート化合物(B)、及びシランカップリング剤(C)を含み、
ポリオルガノシロキサン(A)がアリール基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が500〜4000であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとしたときの分子量分散度(Mw/Mn)が1.00〜4.00であるポリオルガノシロキサンであり、
ポリオルガノシロキサン(A)として、脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリオルガノシロキサン(A1)及びSi−H結合を有するポリオルガノシロキサン(A2)を含み、
ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対して、Si−H結合を有するポリオルガノシロキサン(A2)を50重量%以上含有し、
イソシアヌレート化合物(B)として、式(1)
【化1】
[式(1)中、Rx、Ry、Rzは、同一又は異なって、式(2)で表される基、又は式(3)で表される基を示す。式(1)におけるRx、Ry、Rzのうち、いずれかひとつ以上が式(3)で表される基である。
【化2】
【化3】
[式(2)及び式(3)中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]]
で表されるイソシアヌレート化合物を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対するアリール基(フェニル基換算)の含有量が35重量%以上である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
ラダー型シルセスキオキサンを含まない、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量が500〜1500、分子量分散度(Mw/Mn)が1.00〜1.40であるラダー型シルセスキオキサン[A1]、及びヒドロシリル基を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量が500〜1500、分子量分散度(Mw/Mn)が1.00〜1.40であるラダー型シルセスキオキサン[A2]のいずれか一方又は両方を含まない、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を用いた封止材。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を用いた半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、並びにその硬化性樹脂組成物を用いて得られる硬化物、封止材、及び半導体装置に関する。本願は、2013年2月14日に日本に出願した特願2013−026947号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
高耐熱・高耐電圧が求められる半導体装置において、半導体素子を被覆する材料には一般に、150℃程度以上の耐熱性が求められている。特に、光半導体素子等の光学材料を被覆する材料(封止材)には、耐熱性に加えて、透明性、柔軟性等の物性に優れることが求められている。現在、例えば、液晶ディスプレイのバックライトユニットにおける封止材としては、エポキシ系樹脂材料やシリコーン系樹脂材料が使用されている。
【0003】
特許文献1には、耐熱性が高く熱放散性の良い材料として、シロキサン(Si−O−Si結合体)による橋かけ構造を有する少なくとも1種の第1の有機珪素ポリマーと、シロキサンによる線状連結構造を有する少なくとも1種の第2の有機珪素ポリマーとを、シロキサン結合により連結させた、分子量が2万から80万である第3の有機珪素ポリマーの1種以上を含有する合成高分子化合物が開示されている。しかしながら、これらの材料の物性は、未だ満足できるものではない。
【0004】
また、特許文献2には、透明性、耐UV性、耐熱着色性に優れた光素子封止用樹脂組成物として、脂肪族炭素−炭素不飽和結合を含有しH−Si結合を含有しない籠型構造体の液状のシルセスキオキサン、及び、H−Si結合を含有し脂肪族炭素−炭素不飽和結合を含有しない籠型構造体の液状のシルセスキオキサンからなる群から選択される少なくとも1種のシルセスキオキサンを樹脂成分として含有する光素子封止用樹脂組成物が開示されている。しかしながら、籠型のシルセスキオキサンを含む樹脂組成物の硬化物は比較的硬く、柔軟性に乏しいため、クラックや割れが生じやすいという問題がある。
【0005】
また、特許文献3には、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有するトリアリルイソシアヌレート等の有機化合物、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する、鎖状、及び/又は、環状ポリオルガノシロキサン等の化合物、ヒドロシリル化触媒を必須成分として含有する硬化性組成物が開示されている。しかしながら、これらの材料の耐クラック性等の物性は、未だ満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−206721号公報
【特許文献2】特開2007−031619号公報
【特許文献3】特開2002−314140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、光半導体素子の封止材には、上述の耐熱性、透明性、柔軟性に加え、光半導体装置の製造時のリフロー工程において高温の熱が加えられた場合にも劣化を生じないこと、具体的には、封止材にクラックが生じにくく、パッケージからの剥離等の不具合を生じない特性(「耐リフロー性」と総称する場合がある)が求められている。なお、本明細書においては、封止材にクラックが生じにくい特性を「耐クラック性」と称する場合がある。
【0008】
さらに、光半導体素子の封止材には、SOXガス等の腐食性ガスに対して高いバリア性を有することが求められている。これは、光半導体装置における電極等の金属材は、腐食性ガスにより容易に腐食され、このような腐食により経時で通電特性(例えば、高温環境における通電特性)が悪化する不具合が生じるためである。光半導体素子の封止材として広く使用されている従来のシリコーン系樹脂材料を用いた封止材は、上記腐食性ガスに対するバリア性が不十分であり、上述の特許文献1〜3に記載された材料についても同様に、腐食性ガスに対するバリア性が不十分であるという問題を有していた。
【0009】
従って、本発明の目的は、優れた耐熱性、透明性を有し、特に腐食性ガスに対するバリア性に優れた硬化物を形成することができる硬化性樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、優れた耐熱性、透明性を有し、特に腐食性ガスに対するバリア性に優れた硬化物及び封止材を提供することにある。
また、本発明の更に他の目的は、それらの硬化物及び/又は封止材(硬化物及び封止材のいずれか一方又は両方)を有する半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、アリール基を有するポリオルガノシロキサンに対して、イソシアヌレート化合物、及びシランカップリング剤を添加した硬化性樹脂組成物が、優れた耐熱性、透明性、柔軟性を有し、特に、耐リフロー性、腐食性ガスに対するバリア性に優れた硬化物を形成することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、ポリオルガノシロキサン(A)、イソシアヌレート化合物(B)、及びシランカップリング剤(C)を含み、ポリオルガノシロキサン(A)がアリール基を有するポリオルガノシロキサンであることを特徴とする硬化性樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、ポリオルガノシロキサン(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が500〜4000であるポリオルガノシロキサンであることを特徴とする上記の硬化性樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、ポリオルガノシロキサン(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとしたときの分子量分散度(Mw/Mn)が0.95〜4.00であるポリオルガノシロキサンであることを特徴とする上記の硬化性樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、ポリオルガノシロキサン(A)として、脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリオルガノシロキサン(A1)を含むことを特徴とする上記の硬化性樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、ポリオルガノシロキサン(A)として、Si−H結合を有するポリオルガノシロキサン(A2)を含むことを特徴とする上記の硬化性樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対して、Si−H結合を有するポリオルガノシロキサン(A2)を50重量%以上含有することを特徴とする上記の硬化性樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、イソシアヌレート化合物(B)として、式(1)
【化1】
[式(1)中、Rx、Ry、Rzは、同一又は異なって、式(2)で表される基、又は式(3)で表される基を示す。
【化2】
【化3】
[式(2)及び式(3)中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。]]
で表されるイソシアヌレート化合物を含むことを特徴とする上記の硬化性樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、式(1)におけるRx、Ry、Rzのうち、いずれかひとつ以上が式(3)で表される基であることを特徴とする上記の硬化性樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、上記の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物を提供する。
また、本発明は、上記の硬化性樹脂組成物を用いて得られる封止材を提供する。
また、本発明は、上記の硬化性樹脂組成物を用いて得られる半導体装置を提供する。
【0012】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]ポリオルガノシロキサン(A)、イソシアヌレート化合物(B)、及びシランカップリング剤(C)を含み、ポリオルガノシロキサン(A)がアリール基を有するポリオルガノシロキサンであることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
[2]ポリオルガノシロキサン(A)が、分岐鎖を有するポリオルガノシロキサンである[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
[3]ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対するアリール基(フェニル基換算)の含有量が、35重量%以上である[1]又は[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4]ポリオルガノシロキサン(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が500〜4000であるポリオルガノシロキサンである[1]〜[3]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[5]ポリオルガノシロキサン[A]が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が500〜1000であるポリオルガノシロキサンである[1]〜[4]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[6]ポリオルガノシロキサン(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnとしたときの分子量分散度(Mw/Mn)が0.95〜4.00であるポリオルガノシロキサンである[1]〜[5]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[7]ポリオルガノシロキサン(A)の含有量(配合量)が、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、55〜99.5重量%である[1]〜[6]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[8]ポリオルガノシロキサン(A)として、ポリオルガノシロキシシルアルキレンを含む[1]〜[7]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[9]前記ポリオルガノシロキシシルアルキレンが、下記式(I)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンである[8]に記載の硬化性樹脂組成物。
[10]ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対するポリオルガノシロキシシルアルキレンの割合が、60〜100重量%である[8]又は[9]に記載の硬化性樹脂組成物。
[11]ポリオルガノシロキサン(A)として、脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリオルガノシロキサン(A1)を含む[1]〜[10]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[12]ポリオルガノシロキサン(A1)として、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンを含む[11]に記載の硬化性樹脂組成物。
[13]分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンが、末端及び/又は側鎖に脂肪族炭素−炭素二重結合を含む基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンである[12]に記載の硬化性樹脂組成物。
[14]分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンが、末端及び/又は側鎖に脂肪族炭素−炭素二重結合を含む基を有し、なおかつ下記式(I)で表される構造を含むポリオルガノシロキシシルアルキレンである[13]に記載の硬化性樹脂組成物。
[15]ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対する脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量(ビニル基換算)が、1.5〜15.0重量%である[11]〜[14]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[16]ポリオルガノシロキサン(A1)として、脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量(ビニル基換算)が10.0重量%以上であるポリオルガノシロキサン(A1)を必須成分として含む[11]〜[15]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[17]脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量(ビニル基換算)が10.0重量%以上であるポリオルガノシロキサン(A1)の重量平均分子量が2000以下である[16]に記載の硬化性樹脂組成物。
[18]脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量(ビニル基換算)が10.0重量%以上であるポリオルガノシロキサン(A1)の数平均分子量が1000以下である[16]又は[17]に記載の硬化性樹脂組成物。
[19]脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量(ビニル基換算)が10.0重量%以上であるポリオルガノシロキサン(A1)の割合が、ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対して、1〜10重量%である[16]〜[18]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[20]ポリオルガノシロキサン(A)として、Si−H結合を有するポリオルガノシロキサン(A2)を含む[1]〜[19]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[21]ポリオルガノシロキサン(A2)として、分子内にSi−H結合を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンを含む[20]に記載の硬化性樹脂組成物。
[22]分子内にSi−H結合を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンが、末端及び/又は側鎖にケイ素原子に結合した水素原子(ヒドリド)を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンである[21]に記載の硬化性樹脂組成物。
[23]分子内にSi−H結合を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンが、末端及び/又は側鎖にケイ素原子に結合した水素原子を有し、なおかつ式(I)で表される構造を含むポリオルガノシロキシシルアルキレンである[21]又は[22]に記載の硬化性樹脂組成物。
[24]ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対するSi−H結合の含有量が、水素原子又はSi−H結合におけるH(ヒドリド)の重量換算(H換算)で、0.01〜0.50重量%である[20]〜[23]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[25]ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対して、Si−H結合を有するポリオルガノシロキサン(A2)を50重量%以上含有する[20]〜[24]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[26]イソシアヌレート化合物(B)として、前記式(1)[式(1)中、Rx、Ry、Rzは、同一又は異なって、前記式(2)で表される基、又は前記式(3)で表される基を示す。]で表されるイソシアヌレート化合物を含む[1]〜[25]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[27]前記式(1)におけるRx、Ry、Rzのうち、いずれかひとつ以上が式(3)で表される基である[26]に記載の硬化性樹脂組成物。
[28]前記式(1)におけるRx、Ry、及びRzのうち2つが式(2)で表される基であり、なおかつRx、Ry、及びRzのうち1つが式(3)で表される基である[26]又は[27]に記載の硬化性樹脂組成物。
[29]イソシアヌレート化合物(B)の含有量が、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、0.01〜10重量%である[1]〜[28]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[30]イソシアヌレート化合物(B)の含有量が、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、0.5重量%を超えて10重量%以下である[1]〜[29]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[31]シランカップリング剤(C)が、エポキシ基含有シランカップリング剤である[1]〜[30]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[32]シランカップリング剤(C)の含有量が、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、0.01〜15重量%である[1]〜[31]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[33]シランカップリング剤(C)の含有量が、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、2.0重量%を超えて15重量%以下である[1]〜[32]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[34]硬化性樹脂組成物中に存在するヒドロシリル基1モルに対して、脂肪族炭素−炭素二重結合が0.2〜4モルとなるような組成(配合組成)である[1]〜[33]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[35]23℃における粘度が300〜20000mPa・sである[1]〜[34]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
[36][1]〜[35]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
[37][1]〜[35]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物を用いて得られる封止材。
[38][1]〜[35]のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物を用いて得られる半導体装置。
[39]光半導体装置である[38]に記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物は上記構成を有するため、特に、SOXガス等の腐食性ガスに対するバリア性に優れる。また、上記硬化物は、シリコーン系の材料で構成されているため、耐熱性、透明性にも優れる。このため、本発明の硬化性樹脂組成物は、光半導体素子(例えば、LED素子、半導体レーザー素子、太陽光発電素子、CCD素子等)の封止材として好ましく使用することができ、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物により光半導体素子を封止して得られる光半導体装置は、優れた品質と耐久性を備える。特に、本発明の硬化性樹脂組成物は、これまでにない高温(例えば、180℃以上)に対する耐熱性が要求される次世代の光源用の封止材として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリオルガノシロキサン(A)、イソシアヌレート化合物(B)、及びシランカップリング剤(C)を必須成分として含む硬化性樹脂組成物であって、ポリオルガノシロキサン(A)がアリール基を有するポリオルガノシロキサンであることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0015】
[ポリオルガノシロキサン(A)]
本発明の硬化性樹脂組成物におけるポリオルガノシロキサン(A)は、シロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖を有するポリオルガノシロキサンであって、上記主鎖における置換基としてアリール基を有するポリオルガノシロキサンである。ポリオルガノシロキサン(A)としては、直鎖及び/又は分岐鎖を有するポリオルガノシロキサンであっても良い。中でも、ポリオルガノシロキサン(A)は、硬化物の強度の観点からは、分岐鎖を有するポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
【0016】
ポリオルガノシロキサン(A)におけるアリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基等のC6-14アリール基(特にC6-10アリール基)等が挙げられる。これらアリール基は、ポリオルガノシロキサン(A)におけるケイ素原子が有する置換基(ケイ素原子に直接結合する基)であっても良い。
【0017】
ポリオルガノシロキサン(A)におけるアリール基は、一以上の置換基を有していても良い。上記置換基としては、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、メルカプト基(チオール基)、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アミノ基又は置換アミノ基(モノ又はジアルキルアミノ基、アシルアミノ基等)、エポキシ基、シアノ基、イソシアナート基、カルバモイル基、イソチオシアナート基等が挙げられる。
【0018】
上記置換又は無置換の炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0019】
上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基等のC1-20アルキル基(好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基)等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等のC2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基)等が挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基等のC2-20アルキニル基(好ましくはC2-10アルキニル基、さらに好ましくはC2-4アルキニル基)等が挙げられる。
【0020】
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等のC3-12のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基等のC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基等のC4-15の架橋環式炭化水素基等が挙げられる。
【0021】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のC6-14アリール基(特に、C6-10アリール基)等が挙げられる。
【0022】
また、上記脂肪族炭化水素基と上記脂環式炭化水素基とが結合した基としては、例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。更に、上記脂肪族炭化水素基と上記芳香族炭化水素基とが結合した基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のC7-18アラルキル基(特に、C7-10アラルキル基)、シンナミル基等のC6-10アリール−C2-6アルケニル基、トリル基等のC1-4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基等が挙げられる。上記置換の炭化水素基(置換された炭化水素基)が有する置換基としては、例えば、上述のアリール基が有していても良い置換基と同様のものが挙げられる。
【0023】
また、ポリオルガノシロキサン(A)におけるアリール基が有する一以上の置換基としては、その他の例として、式(4)で表される基が挙げられる。
【化4】
【0024】
式(4)中の複数個のR′は、それぞれ同一でも良いし、異なっていても良い。式(4)中のR′は、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換の炭化水素基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、メルカプト基(チオール基)、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アミノ基又は置換アミノ基(モノ又はジアルキルアミノ基、アシルアミノ基等)、エポキシ基、シアノ基、イソシアナート基、カルバモイル基、イソチオシアナート基等が挙げられる。
【0025】
式(4)で表される基において、各R′としては、それぞれ、水素原子、C1-10アルキル基(特に、C1-4アルキル基)、C2-10アルケニル基(特に、C2-4アルケニル基)、C3-12シクロアルキル基、C3-12シクロアルケニル基、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していても良いC6-14アリール基、C7-18アラルキル基、C6-10アリール−C2-6アルケニル基、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、ハロゲン原子が好ましい。
【0026】
ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対するアリール基(フェニル基換算)の含有量は、特に限定されないが、35重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、45重量%以上(例えば、45〜70重量%)が更に好ましい。上記アリール基の含有量が35重量%を下回ると、得られる硬化物のSOX等の腐食性ガスに対するバリア性が低くなる場合がある。また、ポリオルガノシロキサン(A)のシロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖における置換基の全てがアリール基であっても良く、又は上記置換基の一部がアリール基であっても良い。なお、上記アリール基の含有量は、例えば、1H−NMR等によって測定することができる。
【0027】
ポリオルガノシロキサン(A)は、アリール基以外の置換基を有していても良く、上記アリール基以外の置換基は、ポリオルガノシロキサン(A)におけるケイ素原子が有する置換基であっても良い。上記アリール基以外の置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、Si−H結合を有する基、置換又は無置換の炭化水素基(好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、又はシクロアルケニル基)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、メルカプト基(チオール基)、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基又は置換アミノ基(モノ又はジアルキルアミノ基、アシルアミノ基等)、エポキシ基、シアノ基、イソシアナート基、カルバモイル基、イソチオシアナート基等が挙げられる。
【0028】
ポリオルガノシロキサン(A)における上記アリール基以外の置換基としては、水素原子、Si−H結合を有する基(ヒドロシリル基等)、置換又は無置換の炭化水素基(好ましくはアルキル基又はアルケニル基)から選ばれる少なくとも1以上の置換基が特に好ましい。
【0029】
ポリオルガノシロキサン(A)の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、500〜4000が好ましく、550〜2800がより好ましく、600〜1500が更に好ましく、1000以下が特に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、500〜20000が好ましく、600〜10000がより好ましく、700〜6500が更に好ましい。数平均分子量(Mn)及び/又は重量平均分子量(Mw)が500を下回ると、得られる硬化物の耐熱性が低下する場合がある。特に、数平均分子量を1000以下とすることにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がいっそう向上する傾向がある。一方、数平均分子量(Mn)が4000を超え、及び/又は、重量平均分子量(Mw)が20000を超えると、ポリオルガノシロキサン(A)と他成分との相溶性が低下したり、又、ポリオルガノシロキサン(A)を2種以上組合せて使用した場合にはポリオルガノシロキサン相互の相溶性が低下する場合がある。なお、ポリオルガノシロキサン(A)は、上記範囲の種々の数平均分子量(Mn)及び/又は重量平均分子量(Mw)を有するものの混合物であっても良い。なお、上記数平均分子量(Mn)及び/又は重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量として算出することができる。
【0030】
ポリオルガノシロキサン(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)より算出される分子量分散度(Mw/Mn)は、特に限定されないが、0.95〜4.00が好ましく、1.00〜3.80がより好ましく、1.20〜3.50が更に好ましい。上記分子量分散度(Mw/Mn)が4.00を超えると(特に、3.50を超えると)、得られる硬化物の耐熱性やSOX等の腐食性ガスに対するバリア性が低くなる場合がある。
【0031】
本発明の硬化性樹脂組成物においてポリオルガノシロキサン(A)は、1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0032】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるポリオルガノシロキサン(A)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、55〜99.5重量%が好ましく、70〜99.0重量%がより好ましく、85〜98.5重量%が更に好ましい。含有量が55重量%未満であると、得られる硬化物の耐クラック性が低下する場合がある。一方、含有量が99.5重量%を超えると、得られる硬化物のSOX等の腐食性ガスに対するバリア性が低くなる場合がある。
【0033】
ポリオルガノシロキサン(A)の中でも、特に、主鎖として−Si−O−基(シロキシ基)に加え、さらに−Si−A−基[シルアルキレン基;Aはアルキレン基を示す]を有するポリオルガノシロキサン(当該ポリオルガノシロキサンを「ポリオルガノシロキシシルアルキレン」と称する)を用いることが好ましい。上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンが有するシルアルキレン基におけるアルキレン基(上記A)としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられ、好ましくは炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基(特にエチレン基)である。上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンは、狭義のポリオルガノシロキサン(主鎖が−Si−O−基のみからなるポリオルガノシロキサン)に比べて、製造工程上、低分子量の環を生じ難く、また、加熱等により分解してシラノール基(−SiOH)を生じ難いため、ポリオルガノシロキシシルアルキレンを用いて得られる硬化物は、表面粘着性が低く、より黄変し難い傾向がある。上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンは、例えば、特開2012−140617号公報に記載の方法により製造できる。また、上記ポリオルガノシロキシシルアルキレン(アリール基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン)を含む製品としては、例えば、商品名「GD−1130A」、「GD−1130B」(いずれも長興化学工業製)等が入手可能である。
【0034】
上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンとしては、より具体的には、例えば、下記式(I)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンが挙げられる。
【化5】
【0035】
上記式(I)中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、及びRf(Ra〜Rf)は、それぞれ、水素原子、一価の炭化水素基、又は一価の複素環式基を示す。Ra〜Rfのうち1つ以上は、水素原子又は脂肪族炭素−炭素不飽和結合を含む一価の基であってもよい。上記式(I)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンは、分子内にアリール基を有するものであるため、例えば、Ra〜Rfの一部又は全部がアリール基(特にフェニル基)であることが好ましい。
【0036】
上記一価の炭化水素基としては、例えば、一価の脂肪族炭化水素基;一価の脂環式炭化水素基;一価の芳香族炭化水素基;脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基の2以上が結合した一価の基等が挙げられる。上記一価の複素環式基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。
【0037】
上記一価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基等の直鎖又は分岐鎖状のC1-20アルキル基(好ましくはC1-10アルキル基、より好ましくはC1-4アルキル基)等が挙げられる。上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等のC2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基)等が挙げられる。上記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基等のC2-20アルキニル基(好ましくはC2-10アルキニル基、さらに好ましくはC2-4アルキニル基)等が挙げられる。
【0038】
上記一価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等のC3-12のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基等のC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基等のC4-15の架橋環式炭化水素基等が挙げられる。
【0039】
上記一価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のC6-14アリール基(特に、C6-10アリール基)等が挙げられる。
【0040】
また、脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基として、例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基として、ベンジル基、フェネチル基等のC7-18アラルキル基(特に、C7-10アラルキル基)、シンナミル基等のC6-10アリール−C2-6アルケニル基、トリル基等のC1-4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基等が挙げられる。
【0041】
上記一価の炭化水素基は置換基を有していてもよい。即ち、上記一価の炭化水素基は、上記で例示した一価の炭化水素基の少なくとも1つの水素原子が置換基と置き換わった一価の炭化水素基であってもよい。上記置換基の炭素数は0〜20が好ましく、より好ましくは0〜10である。上記置換基としては、具体的には、例えば、ハロゲン原子;ヒドロキシル基;アルコキシ基;アルケニルオキシ基;アリールオキシ基;アラルキルオキシ基;アシルオキシ基;メルカプト基;アルキルチオ基;アルケニルチオ基;アリールチオ基;アラルキルチオ基;カルボキシル基;アルコキシカルボニル基;アリールオキシカルボニル基;アラルキルオキシカルボニル基;アミノ基;モノ又はジアルキルアミノ基;モノ又はジフェニルアミノ基;アシルアミノ基;エポキシ基含有基;オキセタニル基含有基;アシル基;オキソ基;イソシアネート基;これらの2以上が必要に応じてC1-6アルキレン基を介して結合した基等が挙げられる。
【0042】
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等のC1-6アルコキシ基(好ましくはC1-4アルコキシ基)等が挙げられる。上記アルケニルオキシ基としては、例えば、アリルオキシ基等のC2-6アルケニルオキシ基(好ましくはC2-4アルケニルオキシ基)等が挙げられる。上記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していても良いC6-14アリールオキシ基等が挙げられる。上記アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のC7-18アラルキルオキシ基等が挙げられる。上記アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のC1-12アシルオキシ基等が挙げられる。
【0043】
上記アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等のC1-6アルキルチオ基(好ましくはC1-4アルキルチオ基)等が挙げられる。上記アルケニルチオ基としては、例えば、アリルチオ基等のC2-6アルケニルチオ基(好ましくはC2-4アルケニルチオ基)等が挙げられる。上記アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基、ナフチルチオ基等の、芳香環にC1-4アルキル基、C2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基等の置換基を有していても良いC6-14アリールチオ基等が挙げられる。上記アラルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のC7-18アラルキルチオ基等が挙げられる。上記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシ−カルボニル基等が挙げられる。上記アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のC6-14アリールオキシ−カルボニル基等が挙げられる。上記アラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル基等のC7-18アラルキルオキシ−カルボニル基等が挙げられる。上記モノ又はジアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のモノ又はジ−C1-6アルキルアミノ基等が挙げられる。上記アシルアミノ基としては、例えば、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のC1-11アシルアミノ基等が挙げられる。上記エポキシ基含有基としては、例えば、グリシジル基、グリシジルオキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基等が挙げられる。上記オキセタニル基含有基としては、例えば、エチルオキセタニルオキシ基等が挙げられる。上記アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。上記ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0044】
上記一価の複素環式基は置換基を有していてもよい。上記置換基としては、上記一価の炭化水素基が有していてもよい置換基と同様のものが例示される。
【0045】
上記一価の炭化水素基、一価の複素環式基としては、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ベンジル基、フェネチル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、ビニル基、アリル基、スチリル基(例えば、p−スチリル基)、置換基を有する炭化水素基(例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−グリシジルプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基、3−アクリロキシプロピル基、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピル基、3−アミノプロピル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基等)等が挙げられる。
【0046】
上記式(I)におけるRa〜Rfは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
上記式(I)中、Rgは、二価の炭化水素基を示す。上記二価の炭化水素基としては、例えば、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基(例えば、−[CH2t−で表される基等:tは1以上の整数を示す)、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等の炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基等が挙げられる。二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の二価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。中でも、Rgとしては、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0048】
上記式(I)中、s1は、1以上の整数を示す。なお、s1が2以上の整数の場合、s1が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。s1が付された括弧内の構造として二種以上を有する場合には、各構造同士の付加形態は特に限定されず、ランダム型であってもよいし、ブロック型であってもよい。
【0049】
上記式(I)中、s2は、1以上の整数を示す。なお、s2が2以上の整数の場合、s2が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。s2が付された括弧内の構造として二種以上を有する場合には、各構造同士の付加形態は特に限定されず、ランダム型であってもよいし、ブロック型であってもよい。
【0050】
また、上記式(I)において、s1が付された括弧内の構造とs2が付された括弧内の構造の付加形態も特に限定されず、ランダム型であってもよいし、ブロック型であってもよい。
【0051】
上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンの末端構造は、特に限定されないが、例えば、シラノール基、アルコキシシリル基、トリアルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基)等が挙げられる。上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンの末端には、脂肪族炭素−炭素二重結合を含む基やヒドロシリル基等の各種の基が導入されていてもよい。
【0052】
なお、上記式(I)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンは、上述のように、直鎖、分岐鎖のいずれの鎖状構造を有するものであっても良い。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対するポリオルガノシロキシシルアルキレンの割合は、特に限定されないが、60重量%以上(例えば、60〜100重量%)が好ましく、より好ましくは80重量%以上(例えば、80〜99.5重量%)、さらに好ましくは90重量%以上である。ポリオルガノシロキシシルアルキレンの割合が60重量%未満であると、硬化物が黄変しやすくなったり、表面に粘着性を有しやすく取り扱い性が低下する傾向がある。
【0054】
[脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリオルガノシロキサン(A1)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリオルガノシロキサン(A)として、脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリオルガノシロキサン(A1)(以下、単に「ポリオルガノシロキサン(A1)」と称する場合がある)を含んでいても良い。上記脂肪族炭素−炭素二重結合は、ポリオルガノシロキサン(A1)における置換基(例えば、ケイ素原子が有する置換基)が有していても良い。また、上記脂肪族炭素−炭素二重結合は、ポリオルガノシロキサン(A1)のシロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖(直鎖及び/又は分岐鎖)の末端に存在していても良い。
【0055】
上記脂肪族炭素−炭素二重結合を含む基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等のC2-20アルケニル基(好ましくはC2-10アルケニル基、さらに好ましくはC2-4アルケニル基);シクロヘキセニル基等のC3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプテニル基等のC4-15架橋環式不飽和炭化水素基;スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基;シンナミル基等が挙げられる。なお、上記脂肪族炭素−炭素二重結合を含む基には、式(4)で表される基において、3つのR′のうち少なくとも1つが上記のC2-20アルケニル基、C3-12のシクロアルケニル基、C4-15の架橋環式不飽和炭化水素基、C2-4アルケニル置換アリール基、シンナミル基等である基も含まれる。中でも、アルケニル基が好ましく、より好ましくはC2-20アルケニル基、さらに好ましくはビニル基である。
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリオルガノシロキサン(A1)として、分子内に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンを含むことが好ましい。上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンとしては、例えば、末端及び/又は側鎖に脂肪族炭素−炭素二重結合を含む基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン、より詳しくは、末端及び/又は側鎖に脂肪族炭素−炭素二重結合を含む基を有し、なおかつ式(I)で表される構造を含むポリオルガノシロキシシルアルキレン;Ra〜Rfの1つ以上が脂肪族炭素−炭素二重結合を含む一価の基である、式(I)で表される構造を含むポリオルガノシロキシシルアルキレン等が挙げられる。
【0057】
ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対する上記脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量(ビニル基換算)は、特に限定されないが、1.5〜15.0重量%が好ましく、2.0〜13.0重量%がより好ましく、3.0〜12.0重量%が更に好ましい。上記の範囲で上記脂肪族炭素−炭素二重結合を有することにより、得られる硬化物の耐熱性等の各種物性、耐クラック性、腐食性ガスに対するバリア性に優れた硬化物が得られやすい傾向がある。なお、上記脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量は、例えば、1H−NMR等によって測定することができる。
【0058】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリオルガノシロキサン(A1)として、脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量(ビニル基換算)が10.0重量%以上(例えば、10.0〜20.0重量%)であるポリオルガノシロキサン(A1)を必須成分として含むことが好ましい。このようなポリオルガノシロキサン(A1)を必須成分として含むことにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が著しく向上し、このような優れたバリア性をより長期的に発揮することができる傾向がある。
【0059】
また、上述の脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量(ビニル基換算)が10.0重量%以上であるポリオルガノシロキサン(A1)の重量平均分子量は、2000以下(例えば、500〜2000)が好ましく、より好ましくは1600以下であり;その数平均分子量は、1000以下(例えば、400〜1000)が好ましく、より好ましくは900以下である。重量平均分子量が2000以下、及び/又は、数平均分子量が1000以下である脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量(ビニル基換算)が10.0重量%以上であるポリオルガノシロキサン(A1)を用いることにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が著しく向上し、このような優れたバリア性をいっそう長期的に発揮することができる傾向がある。
【0060】
さらに、上述の脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量(ビニル基換算)が10.0重量%以上であるポリオルガノシロキサン(A1)(特に、重量平均分子量が2000以下、及び/又は、数平均分子量が1000以下であるもの)の割合は、ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対して、1〜10重量%が好ましく、より好ましくは2〜8重量%である。割合を上記範囲に制御することにより、腐食性ガスに対するバリア性と強度とが両立された硬化物が得られやすい傾向がある。
【0061】
[Si−H結合を有するポリオルガノシロキサン(A2)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリオルガノシロキサン(A)として、Si−H結合を有するポリオルガノシロキサン(A2)(以下、単に「ポリオルガノシロキサン(A2)」と称する場合がある)を含んでいても良い。上記Si−H結合は、ポリオルガノシロキサン(A2)における置換基(例えば、ケイ素原子が有する置換基)が有していても良い。また、上記Si−H結合は、ポリオルガノシロキサン(A2)のシロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖(直鎖及び/又は分岐鎖)の末端に存在していても良い。
【0062】
上記Si−H結合を有する基としては、特に限定されないが、例えば、式(4)で表される基において、3つのR′のうち少なくとも1つが水素原子である基等が挙げられる。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリオルガノシロキサン(A2)として、分子内にヒドロシリル基(Si−H結合)を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンを含むことが好ましい。上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンとしては、例えば、末端及び/又は側鎖にケイ素原子に結合した水素原子(ヒドリド)を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン、より詳しくは、末端及び/又は側鎖にケイ素原子に結合した水素原子を有し、なおかつ式(I)で表される構造を含むポリオルガノシロキシシルアルキレン;Ra〜Rfの1つ以上が水素原子である、式(I)で表される構造を含むポリオルガノシロキシシルアルキレン等が挙げられる。
【0064】
ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対する上記Si−H結合の含有量は、特に限定されないが、水素原子又はSi−H結合におけるH(ヒドリド)の重量換算(H換算)で、0.01〜0.50重量%が好ましく、0.05〜0.30重量%がより好ましく、0.08〜0.20重量%が更に好ましい。上記の範囲で上記Si−H結合を有することにより、得られる硬化物の耐熱性等の各種物性、耐クラック性、腐食性ガスに対するバリア性に優れた硬化物が得られやすい傾向がある。なお、上記Si−H結合の含有量は、例えば、1H−NMR等によって測定することができる。
【0065】
ポリオルガノシロキサン(A)の全量(100重量%)に対するポリオルガノシロキサン(A2)の含有量は、特に限定されないが、50重量%以上(例えば、50〜98重量%)が好ましく、80重量%以上がより好ましく、95重量%以上が更に好ましい。上記の範囲でポリオルガノシロキサン(A2)を含有することにより、得られる硬化物の耐熱性等の各種物性、耐クラック性、腐食性ガスに対するバリア性に優れた硬化物が得られやすい傾向がある。
【0066】
なお、ポリオルガノシロキサン(A1)が同時にSi−H結合を有するポリオルガノシロキサン(A2)であっても良く、また、ポリオルガノシロキサン(A2)が同時に脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリオルガノシロキサン(A1)であっても良い。
【0067】
また、ポリオルガノシロキサン(A)はポリオルガノシロキサン(A1)又はポリオルガノシロキサン(A2)のいずれか一方のみで構成されていても良く、また、ポリオルガノシロキサン(A)は相互に異なる2種類以上のポリオルガノシロキサン(A1)及び/又はポリオルガノシロキサン(A2)で構成されていても良い。
【0068】
また、ポリオルガノシロキサン(A)が相互に異なる2種類以上のポリオルガノシロキサンで構成されている場合であって、上記2種類以上のポリオルガノシロキサンのうち、少なくとも1種類がポリオルガノシロキサン(A2)である場合、ポリオルガノシロキサン(A2)を除く残りのポリオルガノシロキサンは、Si−H結合を有しないポリオルガノシロキサン(A1)であることが好ましい。
【0069】
[イソシアヌレート化合物(B)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、イソシアヌレート化合物(B)を含む。本発明の硬化性樹脂組成物がイソシアヌレート化合物(B)を含むことにより、特に、硬化により形成される硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が向上し、さらに、被着体に対する密着性が向上する。特に、イソシアヌレート化合物(B)として、上記式(1)で表されるイソシアヌレート化合物を含むことが好ましい。
【0070】
式(1)中、Rx、Ry、Rzは、同一又は異なって、式(2)で表される基、又は式(3)で表される基を示す。中でも、式(1)におけるRx、Ry、Rzのうち、いずれかひとつ以上(好ましくは1つ又は2つ、より好ましくは1つ)が式(3)で表される基であることが好ましい。特に、式(1)で表されるイソシアヌレート化合物は、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の観点で、Rx、Ry、及びRzとして、式(2)で表される基及び式(3)で表される基の両方を有することが好ましく、Rx、Ry、及びRzのうち2つが式(2)で表される基であり、なおかつRx、Ry、及びRzのうち1つが式(3)で表される基である化合物であることが好ましい。
【0071】
式(2)及び式(3)中、R1、R2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。上記アルキル基の中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましい。式(2)及び式(3)におけるR1、R2は、それぞれ水素原子であることが特に好ましい。
【0072】
イソシアヌレート化合物(B)としては、特に限定されないが、例えば、モノアリルジメチルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、1−アリル−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ジアリル−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−グリシジルイソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−メチルプロペニル)イソシアヌレート等が挙げられる。なお、イソシアヌレート化合物(B)は、それぞれ、1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0073】
イソシアヌレート化合物(B)は、他の成分との相溶性を向上させる観点から、後述のように、シランカップリング剤(C)とあらかじめ混合してから他の成分と配合しても良い。
【0074】
イソシアヌレート化合物(B)の含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜5重量%がより好ましく、0.1〜3重量%が更に好ましく、0.5重量%を超えることが特に好ましい。イソシアヌレート化合物(B)の含有量が0.01重量%未満であると、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性、被着体に対する密着性が低下する場合がある。特に、イソシアヌレート化合物(B)の含有量が0.5重量%を超える場合(例えば、含有量が0.5重量%を超え、10重量%以下の場合)には、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が著しく向上し、このような優れたバリア性をより長期的に発揮することができる傾向がある。一方、イソシアヌレート化合物(B)の含有量が10重量%を超えると、硬化性樹脂組成物において固体が析出したり、硬化物が白濁する場合がある。
【0075】
[シランカップリング剤(C)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤(C)を含む。本発明の硬化性樹脂組成物がシランカップリング剤(C)を含むことにより、硬化により形成される硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が向上し、特に、被着体に対する密着性が向上する。
【0076】
シランカップリング剤(C)は、ポリオルガノシロキサン(A)及びイソシアヌレート化合物(B)等との相溶性が良好であるため、例えば、イソシアヌレート化合物(B)のその他成分に対する相溶性を向上させるために、あらかじめイソシアヌレート化合物(B)とシランカップリング剤(C)の組成物を形成した上で、その他成分と配合すると、均一な硬化性樹脂組成物が得られやすい。
【0077】
シランカップリング剤(C)としては、公知乃至慣用のシランカップリング剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシシラン)、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピレントリメトキシシラン、メルカプトプロピレントリエトキシシラン等が挙げられる。中でも、エポキシ基含有シランカップリング剤(特に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を好ましく使用できる。なお、シランカップリング剤(C)は1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0078】
シランカップリング剤(C)の含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、0.01〜15重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、0.5〜5重量%が更に好ましく、2.0重量%を超えることが特に好ましい。シランカップリング剤(C)の含有量が0.01重量%未満であると、被着体に対する密着性が低下し、特に、イソシアヌレート化合物(B)を相溶させて使用する際に、十分な効果(腐食性ガスに対するバリア性)が得られない場合がある。特に、シランカップリング剤(C)の含有量が2.0重量%を超える場合(例えば、含有量が2.0重量%を超え、15重量%以下の場合)には、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が著しく向上し、このような優れたバリア性をより長期的に発揮することができる傾向がある。一方、シランカップリング剤(C)の含有量が15重量%を超えると、硬化が不十分になり、硬化物の靭性、耐熱性、腐食性ガスに対するバリア性が低下する場合がある。
【0079】
[ヒドロシリル化触媒]
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、ヒドロシリル化触媒を含んでいても良い。本発明の硬化性樹脂組成物は、ヒドロシリル化触媒を含むことにより、硬化反応(ヒドロシリル化反応)を効率的に進行させることができる。上記ヒドロシリル化触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等の周知のヒドロシリル化反応用触媒が例示される。具体的には、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金のオレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体等の白金のカルボニル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体や白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体等の白金ビニルメチルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体等の白金系触媒、ならびに上記白金系触媒において白金原子の代わりにパラジウム原子又はロジウム原子を含有するパラジウム系触媒又はロジウム系触媒が挙げられる。なお、上記ヒドロシリル化触媒は1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0080】
本発明の硬化性樹脂組成物における上記ヒドロシリル化触媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、ヒドロシリル化触媒中の白金、パラジウム、又はロジウムが重量単位で、0.01〜1,000ppmの範囲内となる量が好ましく、0.1〜500ppmの範囲内となる量がさらに好ましい。ヒドロシリル化触媒の含有量がこのような範囲にあると、架橋速度が著しく遅くなることがなく、硬化物に着色等の問題を生じるおそれが少ないため好ましい。
【0081】
[ヒドロシリル化反応抑制剤]
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化反応(ヒドロシリル化反応)の速度を調整するために、ヒドロシリル化反応抑制剤を含んでいても良い。上記ヒドロシリル化反応抑制剤としては、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;チアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。上記ヒドロシリル化反応抑制剤は1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。上記ヒドロシリル化反応抑制剤の含有量としては、硬化性樹脂組成物の架橋条件により異なるが、実用上、硬化性樹脂組成物中の含有量として、0.00001〜5重量%の範囲内が好ましい。
【0082】
[シルセスキオキサン]
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、シルセスキオキサンを含んでいても良い。上記シルセスキオキサンは、特に限定されないが、ランダム構造、カゴ構造、ラダー構造を有するシルセスキオキサンが挙げられ、ラダー構造を有するシルセスキオキサンを主成分とするシルセスキオキサンであることが好ましい。
【0083】
シルセスキオキサンは、ポリシロキサンの一種である。ポリシロキサンは、一般に、シロキサン結合(Si−O−Si)で構成された主鎖を有する化合物であり、その基本構成単位としては、M単位(ケイ素原子が1個の酸素原子と結合した1価の基からなる単位)、D単位(ケイ素原子が2個の酸素原子と結合した2価の基からなる単位)、T単位(ケイ素原子が3個の酸素原子と結合した3価の基からなる単位)、Q単位(ケイ素原子が4個の酸素原子と結合した4価の基からなる単位)が挙げられる。シルセスキオキサンは、上記T単位を基本構成単位とするポリシロキサンであり、その実験式(基本構造式)はRSiO1.5で表される。シルセスキオキサンのSi−O−Si骨格の構造としては、ランダム構造、カゴ構造、ラダー構造が挙げられ、ラダー型シルセスキオキサンは、ラダー構造のSi−O−Si骨格の構造を有するシルセスキオキサンである。
【0084】
上記シルセスキオキサンは、分子内(一分子中)に2個以上の脂肪族炭素−炭素二重結合を有していても良い。また、上記シルセスキオキサンは、分子内(一分子中)に2個以上のSi−H結合を有する基を有していても良い。更に、上記シルセスキオキサンは、特に限定されないが、室温にて液状であることが好ましい。上記シルセスキオキサンは1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0085】
本発明の硬化性樹脂組成物がシルセスキオキサンを含む場合には、特に、硬化により形成される硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が向上し、さらに、強靭性(特に、耐クラック性)が向上する傾向がある。本発明の硬化性樹脂組成物におけるシルセスキオキサンの含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、0.01〜30重量%が好ましく、0.1〜20重量%がより好ましく、0.5〜10重量%が更に好ましい。
【0086】
[その他のシロキサン化合物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、その他のシロキサン化合物として、更に、分子内(一分子中)に2個以上の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する環状シロキサンを含んでいても良い。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、その他のシロキサン化合物として、更に、分子内(一分子中)に2個以上のSi−H結合を有する基を有する環状シロキサンを含んでいても良い。上記環状シロキサンは1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。本発明の硬化性樹脂組成物における環状シロキサンの含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、0.01〜30重量%が好ましく、0.1〜20重量%がより好ましく、0.5〜10重量%が更に好ましい。
【0087】
[その他のシラン化合物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、その他のシラン化合物(例えば、ヒドロシリル基を有する化合物)を含んでいても良い。上記その他のシラン化合物としては、例えば、メチル(トリスジメチルシロキシ)シラン、テトラキス(ジメチルシロキシ)シラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,5−へプタメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,7−ノナメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,9,9,9−ウンデカメチルペンタシロキサン等のSi−H基を有する直鎖又は分岐鎖状シロキサン等が挙げられる。なお、上記シラン化合物は1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。上記シラン化合物の含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、0〜5重量%以下が好ましく、0〜1.5重量%がより好ましい。
【0088】
[溶媒]
本発明の硬化性樹脂組成物は、溶媒を含んでいても良い。上記溶媒としては、例えば、トルエン、ヘキサン、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の従来公知の溶媒が挙げられる。上記溶媒は1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0089】
[添加剤]
本発明の硬化性樹脂組成物は、その他任意の成分として、沈降シリカ、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化チタン、アルミナ、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機質充填剤、これらの充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により処理した無機質充填剤;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末;銀、銅等の導電性金属粉末等の充填剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤等)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤等)、難燃助剤、補強材(他の充填剤等)、核剤、カップリング剤、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、着色剤(染料、顔料等)、分散剤、消泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤等の慣用の添加剤を含んでいても良い。これらの添加剤は単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0090】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物中に存在するヒドロシリル基1モルに対して、脂肪族炭素−炭素二重結合が0.2〜4モルとなるような組成(配合組成)であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5モル、さらに好ましくは0.8〜1.2モルである。ヒドロシリル基と脂肪族炭素−炭素二重結合との割合を上記範囲に制御することにより、硬化物の耐熱性、透明性、柔軟性、耐リフロー性、及び腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。
【0091】
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、上記の各成分を室温で攪拌・混合することにより調製することができる。なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、各成分があらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として使用することもできるし、例えば、別々に保管しておいた2以上の成分を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物として使用することもできる。
【0092】
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。より具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物は、23℃における粘度として、300〜20000mPa・sが好ましく、より好ましくは500〜10000mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。粘度が300mPa・s未満であると、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、粘度が20000mPa・sを超えると、硬化性樹脂組成物の調製や取り扱いが困難となり、硬化物に気泡が残存しやすくなる場合がある。なお、23℃における粘度は、例えば、レオーメーター(商品名「PhysicaUDS−200」、AntonPaar社製)とコーンプレート(円錐直径:16mm、テーパ角度=0°)を用いて、温度:23℃、回転数:20rpmの条件で測定することができる。
【0093】
[硬化物]
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化反応(ヒドロシリル化反応)により硬化させることにより、硬化物(以下、「本発明の硬化物」と称する場合がある)を得ることができる。硬化反応の際の条件は、特に限定されず、従来公知の条件より適宜選択することができるが、例えば、反応速度の点から、温度(硬化温度)は25〜180℃(より好ましくは60℃〜150℃)が好ましく、時間(硬化時間)は5〜720分が好ましい。本発明の硬化物は、耐熱性、透明性、柔軟性等の各種物性に優れ、さらに、リフロー工程における耐クラック性、パッケージに対する密着性等の耐リフロー性に優れ、SOXガス等の腐食性ガスに対するバリア性にも優れる。
【0094】
[封止剤、封止材]
本発明の封止剤は、本発明の硬化性樹脂組成物を必須成分として含む封止剤である。本発明の封止剤を硬化させることにより得られる本発明の封止材(硬化物)は、耐熱性、透明性、柔軟性等の各種物性に優れ、さらに、耐リフロー性、腐食性ガスに対するバリア性に優れる。このため、本発明の封止材は、半導体装置における半導体素子の封止材、特に、光半導体装置における光半導体素子(特に、高輝度、短波長の光半導体素子)の封止材等として好ましく使用できる。本発明の封止材を用いて半導体素子(特に、光半導体素子)を封止することによって、耐久性及び品質に優れた半導体装置(特に、光半導体装置)が得られる。
【実施例】
【0095】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0096】
製品の1H−NMR分析は、JEOL ECA500(500MHz)により行った。また、製品の数平均分子量及び重量平均分子量の測定は、Alliance HPLCシステム 2695(Waters製)、Refractive Index Detector 2414(Waters製)、カラム:Tskgel GMHHR−M×2(東ソー(株)製)、ガードカラム:Tskgel guard column HHRL(東ソー(株)製)、カラムオーブン:COLUMN HEATER U−620(Sugai製)、溶媒:THF、測定条件:40℃、により行った。
【0097】
[ポリオルガノシロキサン(A)]
ポリオルガノシロキサン(A)として、以下の製品を使用した。
OE−6665A:東レ・ダウコーニング(株)製、ビニル基含有量11.97重量%、フェニル基含有量21.39重量%、SiH基含有量(ヒドリド換算)0重量%、数平均分子量831、重量平均分子量1455
OE−6665B:東レ・ダウコーニング(株)製、ビニル基含有量3.76重量%、フェニル基含有量48.58重量%、SiH基含有量(ヒドリド換算)0.16重量%、数平均分子量744、重量平均分子量1274
GD−1130A:長興化学工業製、ビニル基含有量4.32重量%、フェニル基含有量44.18重量%、SiH基含有量(ヒドリド換算)0重量%、数平均分子量1107、重量平均分子量6099
GD−1130B:長興化学工業製、ビニル基含有量3.45重量%、フェニル基含有量50.96重量%、SiH基含有量(ヒドリド換算)0.17重量%、数平均分子量631、重量平均分子量1305
ASP−1120A:信越化学工業(株)製、ビニル基含有量5.94重量%、フェニル基含有量64.61重量%、SiH基含有量(ヒドリド換算)0重量%、数平均分子量590、重量平均分子量780
ASP−1120B:信越化学工業(株)製、ビニル基含有量3.31重量%、フェニル基含有量49.08重量%、SiH基含有量(ヒドリド換算)0.30重量%、数平均分子量680、重量平均分子量1320
OE−6630A:東レ・ダウコーニング(株)製、ビニル基含有量2.17重量%、フェニル基含有量51.94重量%、SiH基含有量(ヒドリド換算)0重量%、数平均分子量2532、重量平均分子量4490
OE−6630B:東レ・ダウコーニング(株)製、ビニル基含有量3.87重量%、フェニル基含有量50.11重量%、SiH基含有量(ヒドリド換算)0.17重量%、数平均分子量783、重量平均分子量1330
KER−2500A:信越化学工業(株)製、ビニル基含有量1.53重量%、フェニル基含有量0重量%、SiH基含有量(ヒドリド換算)0.03重量%、数平均分子量4453、重量平均分子量19355
KER−2500B:信越化学工業(株)製、ビニル基含有量1.08重量%、フェニル基含有量0重量%、SiH基含有量(ヒドリド換算)0.13重量%、数平均分子量4636、重量平均分子量18814
GD−1012A:長興化学工業製、ビニル基含有量1.33重量%、フェニル基含有量0重量%、SiH基含有量(ヒドリド換算)0重量%、数平均分子量5108、重量平均分子量23385
GD−1012B:長興化学工業製、ビニル基含有量1.65重量%、フェニル基含有量0重量%、SiH基含有量(ヒドリド換算)0.19重量%、数平均分子量4563、重量平均分子量21873
【0098】
<実施例及び比較例>
実施例1〜5及び比較例1〜10を、以下の手順に従って実施した。
表1及び表2に従って、イソシアヌレート化合物(B)及びシランカップリング剤(C)を所定重量比率(表1及び表2中の各成分の配合量の単位は、重量部である)で混合した後、ポリオルガノシロキサン(A)を混合し、室温で2時間攪拌したところ、透明な溶液が得られた。この溶液に、2.0%白金−シクロビニルシロキサン錯体ビニルシクロシロキサン溶液(和光純薬工業(株)製)1.3μlを仕込み、さらに30分間攪拌して、硬化性樹脂組成物を得た。
上記で得た硬化性樹脂組成物をガラスプレートに塗布し、表3及び表4に記載の硬化条件に従って所定温度で所定時間加熱したところ、いずれの実施例及び比較例においても無色透明な硬化物が得られた。
【0099】
なお、表1及び表2における「Mw/Mn」の欄には、各実施例及び比較例にて使用したポリオルガノシロキサン(A)における重量平均分子量(Mw)の平均値、数平均分子量(Mn)の平均値、及びそれらの比率(重量平均分子量(Mw)の平均値/数平均分子量(Mn)の平均値)を示した。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
[硫黄腐食性試験]
LEDパッケージ(TOP LED OP−3、35mm×28mm、素子なし)に、実施例1〜5、比較例1〜10で得られた硬化性樹脂組成物を注入し、表3及び表4に示す硬化条件に従って所定温度で所定時間加熱し、試料を作成した。
上記試料と硫黄粉末(キシダ化学(株)製)0.3gとを450mlのガラス瓶に入れ、さらに上記ガラス瓶をアルミ製の箱の中に入れた。続いて、上記アルミ製の箱をオーブン(ヤマト科学(株)製、型番「DN−64」)に入れ、オーブン温度を80℃に設定した後、24時間後、48時間後、72時間後に、上記試料のLEDパッケージにおける銀製電極の腐食状況を観察した。上記電極の色は、試験前は銀白色であるが、腐食が進むに従って、茶褐色、更に黒色へと変化する。
硫黄腐食性試験の評価基準については、銀製電極にほとんど変色が見られなかった場合を「A」、茶褐色又は黒色への変色が見られた場合を「B」、完全に茶褐色又は黒色に変色した場合を「C」とした。結果を表3及び表4に示す。
【0103】
[表面粘着性試験]
実施例1〜5、比較例1〜10で得られた硬化物の表面粘着性を評価した。当該表面粘着性試験の評価基準については、硬化物の表面に粘着性がほとんど認められなかった場合を「A」、粘着性が認められた場合を「B」とした。結果を表3及び表4に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
表3及び表4に示すように、実施例1〜5で得られた硬化物(封止材)は、比較例1〜10で得られたものよりも腐食性ガスに対するバリア性に優れるものであった。特に、ポリオルガノシロキサン(A)の組成が同一である実施例と比較例(実施例1と比較例1、実施例2〜3と比較例2〜4、実施例4と比較例5、及び実施例5と比較例6)を比較した場合、特に48時間後及び72時間後において、実施例が比較例よりも腐食性ガスに対するバリア性が顕著に優れるものであった。さらに、表3に示すように、ポリオルガノシロキサン(A)としてポリオルガノシロキシシルアルキレンを使用した場合(実施例2、3)には、表面粘着性がほとんど認められない、取り扱い性に優れた硬化物が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の硬化性樹脂組成物及び硬化物は、特に耐熱性、透明性、腐食性ガスに対するバリア性が求められる接着剤、コーティング剤、封止材等の用途に有用である。特に、本発明の硬化性樹脂組成物及び硬化物は、光半導体素子(例えば、LED素子、半導体レーザー素子、太陽光発電素子、CCD素子等)の封止材として好適である。