(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
計画対象のリソースによる所定環境下での稼働特性を推定する複数種類のモデルと、前記リソースの稼働環境を示す環境データとを格納した記憶装置を備えた情報処理装置が、
前記記憶装置の複数種類のモデル中より、所定アルゴリズムにてモデルを選択し、当該選択モデルに対し、前記記憶装置の環境データを適用して前記リソースの稼働特性を推定する処理と、
前記推定した稼働特性にて稼働する各リソースの間で、稼働結果が全体最適となる各リソースの稼働計画を所定の計画作成アルゴリズムにより生成し、当該生成した各リソースの稼働計画の情報を、出力装置ないし通信装置を介して該当リソースに対して伝達する処理と、
各リソースでの前記稼働計画の実行結果を、入力装置ないし通信装置を介して受け付けて、前記実行結果と前記稼働計画との乖離に応じて前記選択モデルに評価値を付与する処理と、
を実行することを特徴とする計画作成方法。
計画対象のリソースによる所定環境下での稼働特性を推定する複数種類のモデルと、前記リソースの稼働環境を示す環境データとを格納した記憶装置を備えた情報処理装置に、
前記記憶装置の複数種類のモデル中より、所定アルゴリズムにてモデルを選択し、当該選択モデルに対し、前記記憶装置の環境データを適用して前記リソースの稼働特性を推定する処理と、
前記推定した稼働特性にて稼働する各リソースの間で、稼働結果が全体最適となる各リソースの稼働計画を所定の計画作成アルゴリズムにより生成し、当該生成した各リソースの稼働計画の情報を、出力装置ないし通信装置を介して該当リソースに対して伝達する処理と、
各リソースでの前記稼働計画の実行結果を、入力装置ないし通信装置を介して受け付けて、前記実行結果と前記稼働計画との乖離に応じて前記選択モデルに評価値を付与する処理と、
を実行させることを特徴とする計画作成プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は第1実施形態の計画作成システムの機能ブロックを示す図であり、
図2は、第1実施形態の計画作成システム100のハードウェア構成を含むネットワーク構成図である。
図1、2に示す計画作成システム100は、所定結果を見込むリソースの稼働計画を幅広い観点から作成し、作成した計画を客観的に評価し、継続的な改良を可能とするコンピュータシステムである。
【0014】
第1実施形態においては、都市の自動車交通における渋滞抑制、移動効率向上を目的として計画作成を行う状況を想定し、道路網300を現在地から目的地まで走行する自動車200を計画対象のリソースとする。
【0015】
この場合、計画作成システム100は、無線通信によって自動車200の車載端末250との間で情報交換を適宜に行い、各自動車200の目的地と現在位置の情報を所定タイミングごとに取得し、道路網300に所在する各自動車200が目的地まで走行する際の所要時間が、計画対象の自動車200の間で全体最適の観点で短くなるような計画を作成する。
【0016】
続いて計画作成システム100のハードウェア構成について説明する。計画作成システム100は、ハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶装置で構成される記憶装置101、RAMなど揮発性記憶装置で構成されるメモリ103、記憶装置101に保持されるプログラム102をメモリ103に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPU104(演算装置)、ユーザからの入力を受け付ける処理や処理データを表示する入出力装置105、および無線通信装置106を備える。無線通信装置106は、ネットワーク120と接続し、リソースたる自動車200の車載端末250との間でアンテナ107を介した無線通信処理を担う。これら各装置101〜106は内部バス108でデータ授受可能に結ばれている。
【0017】
なお、記憶装置101内には、本実施形態の計画作成システム100として必要な機能を実装する為のプログラム102の他、各種処理に必要なデータ類として、モデルリスト110、環境データ111、関数リスト112、環境データ項目113が少なくとも記憶されている。これらデータ類の詳細については後述する。
【0018】
なお、自動車200の車載端末250も上述した計画作成システム100と同様に、コンピュータとして一般的なハードウェア構成を備えており、ネットワーク120を介して計画作成システム100と通信可能に結ばれている。具体的には、無線通信機能を備えるカーナビゲーション装置が車載端末250となる。
【0019】
続いて、第1実施形態の計画作成システム100が備える機能について説明する。上述したように、以下に説明する機能は、例えば計画作成システム100が備えるプログラム102を実行することで実装される機能と言える。
【0020】
計画作成システム100は、記憶装置101のモデルリスト110より、所定アルゴリズムにてモデルを選択し、当該選択モデルに対し、記憶装置101の環境データ111を適用して自動車200の稼働特性を推定する機能を有する。第1実施形態の場合、道路網300の各道路を自動車200が所定速度で走行した際の所要移動時間が、稼働特性となる。つまり、自動車200が所定環境(すなわち道路)で稼働(すなわち走行)する際の特性値となる。
【0021】
また、計画作成システム100は、上述で推定した稼働特性たる所要時間にて道路網300の各道路を目的地まで走行する各自動車200の間で、稼働結果たる全所要時間が全体最適となる各自動車200の稼働計画すなわち経路計画を所定の計画作成アルゴリズムにより生成し、当該生成した各自動車200の経路計画の情報を、無線通信装置106を介して該当自動車200の車載端末250に対して伝達する機能を有する。
【0022】
また、計画作成システム100は、各自動車200での経路計画の実行結果を、無線通信装置106を介して受け付けて、この実行結果と該当自動車200に提示してある経路計画との乖離に応じて選択モデルに評価値を付与する機能を有する。
【0023】
また、計画作成システム100は、経路計画を受けて走行中の各自動車200から経路計画の消化度を、無線通信装置106を介して所定タイミングで受け付け、その消化度に応じて走行中自動車200に適用する特性値を変化させて計画作成アルゴリズムに与え、走行中自動車200の間で、全所要時間が全体最適となる各走行中自動車200の経路計画を生成し、当該生成した経路計画の情報を、無線通信装置106を介して該当各走行中自動車200に対して伝達する機能を有する。
【0024】
また、計画作成システム100は、選択モデル毎に選択回数をカウントして記憶装置101に格納し、モデルリスト110中よりモデルを選択する際に、選択回数の少ないモデルほど高確率で選択するアルゴリズムで選択モデルを選定する機能を有する。
【0025】
また、計画作成システム100は、モデルリスト110中よりモデルを選択する際に、評価値の大きいモデルほど高確率で選択するアルゴリズムで選択モデルを選定する機能を有する。
【0026】
また、計画作成システム100は、記憶装置101の関数リスト112より関数をランダムに複数選択し、当該選択した複数の関数を所定規則で組み合わせることで新規モデルを生成し、当該新規モデルを記憶装置101のモデルリスト110に追加する機能を有する。
【0027】
また、計画作成システム100は、記憶装置101のモデルリスト110よりランダムにモデルを選択し、当該選択したモデルに含まれるパラメータの値を所定アルゴリズムにより変更することでモデルの変更を行う機能を有する。
【0028】
また、計画作成システム100は、記憶装置101のモデルリスト110中より、評価値が所定基準より小さいモデルを消去する機能を有する。
【0029】
以下、第1実施形態における計画作成方法の実際手順について図に基づき説明する。以下で説明する計画作成方法に対応する各種動作は計画作成システム100がメモリ103等に読み出して実行するプログラム102によって実現される。そして、このプログラム102は、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0030】
図3は、第1実施形態における計画作成方法の処理手順例1を示すフロー図である。ここでまず、計画作成システム100が実行する基本処理の流れを説明する。計画作成システム100は、記憶装置101のモデルリスト110よりモデルを選択する(s100)。
図1に示したように、計画作成システム100は記憶装置101におけるモデルリスト110として複数のモデルを予め保持している。モデルとは、計画対象の特性を表す計算式である。また、計画対象の特性とは、例えば「自動車が所定速度で走行した際に、ある交差点から隣の交差点まで到達するのにかかる時間」、すなわち所定区間の道路の所要時間である。
【0031】
図4に、道路網300とこの道路網300に含まれる各道路をグラフで表現したものを示す。
図4で示す道路網300は、9つの交差点301〜309と、各交差点間を結ぶ道路310〜320とで構成されている。ここで、自動車200が、ある交差点iから交差点jに到達するのに要する時間を、T(i,j)と定義する。なお、i、j、すなわち交差点の区間を固定して考えても、T(i,j)は常に一定とは限らない。夜や悪天候で視界が悪い時、交通量が多い時などは自動車200の速度が低下しやすく、T(i,j)は大きくなることが推定される。つまり、T(i,j)は、該当道路を取り巻く様々な環境要因の関数となる。つまりモデルとは、こうした関数により記述されたものとなる。本実施形態では、以下のような形の関数を用いる。
【0032】
[数1] T(i,j)=F(要因1,要因2,‥‥)
=a0+a1×f1(要因1)+a2×f2(要因2)+‥‥
1つの要因kについて、1つの関数fk(要因k)が存在し、それらの重み付き和が全体の関数F(要因1,要因2)となる。また、それぞれの要因に対する関数は、さらに以下のように放射基底関数(Radial Basis Function)Φの重み付き和とする。
【0033】
[数2]
fi(x)=Σ{wj×Φ(rj×(x−cj))}
上述の式において、wjは重み、rj、cjは放射基底関数の広がりと中心を表すパラメータである。このように、関数Fは複数の重みやパラメータを含む。
図1に示した複数のモデルとは、これら重みやパラメータの値が異なる複数のモデルである。これらの重みやパラメータの値は、記憶装置101において環境データ111として保持している。
【0034】
図5は第1実施形態におけるモデルリスト110のデータ構成例を示す図であり、
図6は第1実施形態における環境データ111の構成例を示す図である。図に示すとおり、モデルリスト110は、モデルの識別子をキーとして、各モデルすなわち上述の関数Fのデータと、該当モデルが今まで計画作成システム100により選択された選択回数と、該当モデルに関して付与されているスコア(評価値)のデータが対応付けされたレコードの集合体となっている。各レコードが1つのモデルに対応している。なお、選択回数の値は、計画作成システム100が該当モデルを選択するごとにカウントアップして更新した値である。また、スコアの値は、計画作成システム100が、各自動車200での経路計画の実行結果を、各自動車200の車載端末250より無線通信装置06を介して受け付けて、実行結果(実際に走行にかかった所要時間)と経路計画(計画上の所要時間)との乖離、すなわち所要時間の差分の小ささに応じて、該当経路計画の作成に用いたモデルに付与した評価値である。
【0035】
また、環境データ111は、計画作成システム100が入出力装置105ないし無線通信装置106を介して外部(各地の気象予報データを提供するサーバ装置等)から得た、上述の道路網300における環境要因に関するデータである。
図6の例では、気温、天候、時刻、曜日といった各データ項目と、これに対応する要因の識別子、および実データの組み合わせで環境データ111が構成されている。この環境データ111に含まれる要因の識別子をキーに実データが抽出され、計画作成システム100が選択したモデルの関数における該当要因に代入されることになる。
【0036】
上述のステップs100では、計画作成システム100が、モデルリスト110に含まれる、これら複数のモデルからランダムに1つのモデルを選択する。なお、モデルリスト110よりモデルを選択するアルゴリズムとしては、上述のように完全にランダムに選ぶものの他、上述の選択回数の値の少ないモデルほど高確率で選択するもの、或いは、上述の評価値の大きいモデルほど高確率で選択するものなどが想定できる。
【0037】
続いて計画作成システム100は、ステップs101において、記憶装置101より環境データ111を取得する。この環境データ111とは、自動車200が走行する道路網300を取りまく様々な要因に関するデータであり、本実施形態の場合であれば、現在の時刻、天候、気温、曜日、交通量などのデータとなる。これらのデータは、道路網300を管理する組織のサーバ、気象予報サービスを提供する組織のサーバなどの外部装置から計画作成システム100に提供される。
【0038】
計画作成システム100は、ステップs102において、上述のステップs101で得た環境データ111を、ステップs100で選択したモデルに適用し、特性値(上記の例では、交差点間の所要時間)を算定する。すなわち、計画作成システム100は、ステップs100で選択したモデルの関数F(要因1,要因2,‥‥)の各要因に対応する項目を、環境データ111の対応要因の値を参照して特定し、その実データを読み取り、当該実データを関数Fの該当要因に適用して関数Fを演算し、その結果(特性値)を、記憶装置101ないしメモリ103に格納する。
【0039】
次に計画作成システム100は、ステップs103において、各自動車200の目的地と現在位置の情報を、該当自動車200の車載端末250より取得する。各自動車200における車載端末250、すなわちカーナビゲーション装置では、ユーザにより目的地が入力されていることが前提である。また、車載端末250たるカーナビゲーション装置は全地球測位システム(GPS)によって自車の現在位置を保持している。よって、車載端末250は、これらの情報を無線通信によって計画作成システム100に対し、一定時間毎あるいはユーザによる所定動作に応じて送信している。一方、計画作成システム100は、車載端末250から該当自動車200に関する現在位置および目的地の情報を受信したならば、経路計画の対象とする自動車200のリストを作成し、各自動車200の目的地、現在位置の情報を対応付けて記憶装置101ないしメモリ103に格納する。
【0040】
続いて計画作成システム100は、ステップs104において、上述のステップs102で算出した特性値、ステップs103で取得した各自動車200の目的地、現在位置の情報を記憶装置101ないしメモリ103から読み出し、各自動車200の経路を計画する。この計画の手順の詳細は後述する。当該ステップs104の処理結果としては、各自動車200について、現在位置から目的地に至るまでに経由すべき交差点の順列が得られることになる。計画作成システム100はこの処理結果である経路計画の情報を記憶装置101ないしメモリ103に格納する。
【0041】
次にステップs105において、計画作成システム100は、各自動車200について作成した経路計画の情報、すなわち、該当自動車200が目的地までに経由すべき交差点の順列を記憶装置101ないしメモリ103から読み出し、無線通信装置106およびネットワーク120を介して、該当自動車200の車載端末250たるカーナビゲーション装置へ送信する。以上で各自動車200への経路計画の提供は一旦終了する。
【0042】
ここで、
図3のステップs104(経路計画の手順)の詳細を説明する。
図7は第1実施形態の計画作成方法の処理手順例2を示すフロー図である。この場合、ステップs120において、計画作成システム100は、各道路310〜320(
図4の道路網300における、交差点と交差点をつなぐ道路の一つ一つ)の所要時間の初期値をメモリ103の所定領域に設定する。この初期値は、
図3に示したフローにおけるステップs102で算出した特性値である。
【0043】
続いてステップs121において、計画作成システム100は、記憶装置101ないしメモリ103に格納されている、計画対象の自動車200のリスト(ステップs103で生成済み)を記憶装置101ないしメモリ103から読み出す。計画作成システム100は、ステップs122にて、上述の自動車200のリストに入っている自動車200の全てにおいて、経路計画済みのマークが付いているか否かを確認する。なお、ステップs121で上述のリストを読み出した段階では、どの自動車200に関しても、計画済みのマークは付いていない。
【0044】
ステップs122の判定の結果、全ての自動車200に関して計画済みのマークが付いていれば(s122:YES)、本フローは終了する。他方、いずれかの自動車200に関して計画済みのマークが付いていなければ(s122:NO)、計画作成システム100は処理をステップs123に進める。
【0045】
ステップs123において、計画作成システム100は、リストにおいて計画済みのマークが付いていない自動車200をランダムに選び出す。ここでは、選び出した自動車200を「車i」と呼ぶことにする。
【0046】
続いてステップs124において、計画作成システム100は、上述の車iの現在位置から目的地までの所要時間が最も短い経路を、例えばダイクストラ法によって決定する。ダイクストラ法は、最短路問題を解くための基本的なアルゴリズムである。本実施形態の計画作成システム100は、こうしたダイクストラ法を実現するプログラムを記憶装置101にて予め保持し、必要に応じて呼び出して実行できるものとする。
【0047】
道路網300における各道路には、ステップs120において特性値として所要時間の情報が付与されており、計画作成システム100は、車iが現在位置から目的地までに通過する道路の所要時間の和が最も小さくなる経路を求めることになる。このステップs124の結果、計画作成システム100は、車iが目的地に至るまでの所要時間が最短となる経路において、通過する交差点の順列を得ることになり、この順列の情報を記憶装置101ないしメモリ103に保持する(s125)。また、ステップs126において、計画作成システム100は、上述の自動車200のリスト中の車iに関する情報に、経路計画済みのマークを付与する。
【0048】
続いてステップs127において、計画作成システム100は、上述のように車iについて作成した経路計画が示す道路のそれぞれの所要時間、すなわち特性値の値を増加させる。このように特性値の値を増加させる場合、あらかじめ定めておいた所定数を加算するか、あらかじめ定めておいた所定数を乗算するなどといった算定を行えばよい。計画作成システム100は、こうして増加させた特性値の値を記憶装置101ないしメモリ103に格納する。
【0049】
上述したように、ある道路が自動車200の経路として経路計画に設定されるにつれて、該当道路を走行する自動車200の数は増大することになるため、その道路の通過に要する所要時間も増加していくことが推定される。従って、その道路を自動車が走行する場合、経路計画に設定されていない他の道路を走行する場合と比べて、所要時間が増大することにつながる。そのため、車iの後に他の自動車について経路計画作成を実行する際には、該当道路が計画に選ばれにくくなる。結果として、特定の道路に自動車200が集中することを避けうる効果が得られる。
【0050】
上記で説明した経路計画作成の手順を、
図1の機能ブロック図に当てはめると、次のような流れになる。計画作成システム100は、選択したモデル10に環境データ111を適用し、その結果たる特性値11(各道路の所要時間)をメモリ103等に格納し、経路計画作成に備える。また、計画対象である自動車200からも情報12(各自動車200の目的地と現在位置)が計画作成システム100に伝えられ、これもメモリ103等に格納される。計画作成システム100は、メモリ103等に格納した各情報11、12(特性値たる所要時間の情報、現在地、目的地の情報)に基づいて経路計画13(各自動車の経路)を作成し、それを自動車200の車載端末250へ伝達する。
【0051】
計画作成システム100から伝達された経路計画13は、自動車200の車載端末250たるカーナビゲーション装置に入力され、経路計画13に沿った経路案内が実行されることになる。移動中の各自動車200のGPS座標および時刻の情報14は、カーナビゲーション装置たる車載端末250によって、計画作成システム100に伝達される。計画作成システム100では、この情報14を記憶装置101ないしメモリ103に記録し、当該情報14に基づいて経路計画の実行結果を評価する。
【0052】
ここで、上述のように既に経路計画済みで、現在走行中の自動車200が存在する状況での経路計画の処理について説明する。
図8は第1実施形態の計画作成方法の処理手順例3を示すフロー図である。この場合、ステップs130において、計画作成システム100は、経路計画済みで現在走行中の自動車200のリストを読み出す。これは、
図7のフローにおいて経路計画の対象となった自動車200のリスト(計画作成システム100が記憶装置101ないしメモリ103に保持)である。
【0053】
そして、ステップs131において、上記のステップs130で得たリスト中の自動車200の全てに対して、ステップs132以降を実行する。そこでステップs132において計画作成システム100は、上述のリスト中から、更新処理(s133〜s134)の済んでいない自動車を1つ取り出し、車iとする。
【0054】
続いて計画作成システム100は、ステップs133において、車iの現在位置を、該当自動車200の車載端末250たるカーナビゲーション装置と無線通信を行って取得する。勿論、計画作成システム100が一定時間毎に車載端末250から得ている現在位置の情報を記憶装置101ないしメモリ103から読み出して取得するとしてもよい。
【0055】
また、ステップs134において計画作成システム100は、
図7のフローで車iに対して作成した経路計画と、当該車iの現在位置の情報から、経路計画上の道路のうち車iが既に通過した道路を特定し、その道路の所要時間すなわち特性値を減少させる(
図7のフローにおけるステップs127とは逆の、特性値の減算処理)。
【0056】
続いてステップs135において、計画作成システム100は、車iが既に目的地に到着済みか否かを、当該車iに関する経路計画時に既に得てある目的地情報と、上述のステップs133で得た現在位置情報とから判定し、車iの現在位置情報が目的地情報と合致ないし所定の近隣範囲に含まれていた場合、車iは目的地に到着済みであると判定し(s135:YES)、処理をステップs136へ進める。一方、車iがまだ目的地に到着していなければ(s135:NO)、計画作成システム100は処理をステップs131に戻す。
【0057】
ステップs136において、計画作成システム100は、目的地に到着済みである車iを、経路計画済みで走行中の自動車のリストから削除する。こうした処理を上述のステップs130で得た走行中の自動車200のリストに含まれる各車に関して繰り返し実行し(s131:NO〜s136)、道路網300における各道路(走行中の自動車200についての経路計画に含まれていたもの)の所要時間の値を更新する。道路の所要時間の値、すなわち特性値が変化したことになるから、計画作成システム100は、この変化した特性値を初期値として、
図7に示すフローにおけるステップs121以降の処理を実行し、他の自動車に関する経路計画を行うこととなる。
【0058】
計画作成システム100から自動車200の車載端末250に伝達された経路計画は、自動車200において実行されることになる。該当自動車200の車載端末250たるカーナビゲーション装置は、経路計画に応じて経路指示を行い、ドライバーはそれに沿って自動車200の進行方向を判断し移動する。移動中の各自動車200のGPS座標とその測位時刻の情報は、カーナビゲーション装置から計画作成システム100に伝達され、この情報は経路計画に対する実行結果として計画作成システム100の記憶装置101ないしメモリ103に格納される。
【0059】
この経路計画の実行結果の例を
図9に示す。計画作成システム100は、車載端末250たるカーナビゲーション装置から得た上述の実行結果を、該当自動車200に関する経路計画時に用いたモデルとそのパラメータの値と対応付けて、記憶装置101(ないしメモリ103)に格納する。
図9に示す例において、リスト700は、経路計画毎に選択(
図3のステップs100)したモデルおよびその選択日時と、その時点での該当モデルの関数が含むパラメータの値(要因に設定した環境データ111の実データ)のセットからなる情報701〜704・・・が、モデル選択の履歴として含まれている。
【0060】
このリスト700に含まれる各モデルの情報701〜704・・・は、そのモデルを用いて作成された経路計画が自動車200にて実行された結果721〜724・・・(車載端末250たるカーナビゲーション装置から得たデータ)に対応付けされている。自動車200にて経路計画を実行した結果721〜724・・・とは、自動車200の移動履歴であり、図示するように各自動車200の識別情報(例:CarNo.00001)と、該当自動車200の所在した緯度と経度の時系列情報となる。時系列の時間間隔は、10秒、30秒などである。こうした実行結果の情報は、経路計画の対象となった全ての自動車200から計画作成システム100に一定時間毎に送信されており、計画作成システム100はこれらを記憶装置101に、対応するモデルと対応付けて格納している。
【0061】
こうして経路計画に対する実行結果を得た計画作成システム100は、得られた実行結果に基づいて、経路計画に用いたモデルの評価を行う。この評価処理は、自動車200にて経路計画が実行されるたび、または1ヶ月毎など一定の期間毎に実行するとしてもよいが、好ましくは、1つのモデルに対する実行結果がある程度以上蓄積された時点で実施する。
【0062】
ここで、上述のモデルの評価処理について説明する。
図10は第1実施形態の計画作成方法の処理手順例4を示すフロー図である。この場合、ステップs140において、計画作成システム100は、例えば、記憶装置101での上述の実行結果の格納数をモデル毎にカウントし、当該カウント値が所定基準以上となったことを検知し、該当実行結果の由来となった経路計画に用いたモデルを、評価対象として特定する(s140)。
【0063】
続いて計画作成システム100は、上述のステップs140で特定した評価対象のモデルの全てについて、以降のステップs142〜s147で行うスコア更新の処理を繰り返す(s141:NO〜s147)。
【0064】
次にステップs142において計画作成システム100は、上述のステップs140で特定したモデルのうちスコア更新が済んでいないモデルを1つ、更新対象のモデルとして選択する。次にステップs143において計画作成システム100は、ステップs142で選択したモデルを用いた経路計画に対する実行結果として、該当経路計画に基づいた走行を行った各自動車200より得ている、走行時における時刻とGPS座標の時系列情報とを記憶装置101から読み出し、メモリ103等に格納する。なお、自動車200における実際の走行経路すなわち実行結果は、経路計画が示す経路のとおりとなっているとは限らない。
【0065】
続いてステップs144において計画作成システム100は、該当モデルに由来する経路計画を利用した各自動車200が、その経路計画の内容と齟齬無く走行したと仮定した場合の、経路計画上の平均所要時間を算出する。これは、
図7のステップs124において経路をダイクストラ法で決定した際に用いた、各自動車200の目的地までの所要時間を自動車200間で平均すれば得られる。
【0066】
次にステップs145において計画作成システム100は、該当モデルに由来する経路計画を利用した各自動車200が、その経路計画に基づいて実際に道路網300を走行した場合の平均所要時間を、実行結果に基づいて算出する。この場合、計画作成システム100は、ステップs143で読み出している実行結果の情報を用い、経路計画を各自動車200に伝達してから目的地に到着するまでに要した時間を算定し、各自動車200間で平均すれば良い。
【0067】
続いてステップs146において計画作成システム100は、上記で算出した、2つの平均所要時間、すなわち、あくまでも経路計画上の平均所要時間と、実際の走行に応じた実行結果に由来する平均所要時間とに基づいて、以下の算出式を用いて、まずは実行結果の良否係数を算出する。この実行結果の良否係数は大きいほど望ましいとし、実際の所要時間が経路計画上の所要時間より大きいほど、良否係数は小さくなる。
【0068】
良否係数=(計画に基づいた平均所要時間)/(実行結果に基づいた平均所要時間)
次にステップs147において計画作成システム100は、上述のステップs146で算出した良否係数に基づき、ステップs142で選択した該当モデルのスコアを更新する。計画作成システム100は、以下の式にしたがってスコアを更新する。
【0069】
更新後スコア = 更新前スコア×良否係数
計画作成システム100は、記憶装置101のモデルリスト110において、上述の該当モデルのスコアを読み出し、このスコアの値に、上述の良否係数を乗算して更新する。従って、大きな良否係数を得たモデルのスコアは増加することとなる。
【0070】
ここまで、計画作成システム100において、モデルに基づいて経路計画を作成してこれを自動車200に宛てて提供し、自動車200での経路計画の実行結果を取得して評価し、当該評価に基づいて該当モデルのスコアを更新する、一連の処理の流れを説明した。続いて、計画作成システム100における、モデルの作成、改変、消去の手順について説明する。
【0071】
図11は第2実施形態の計画作成システムの機能ブロックを示す図であり、
図12は第2実施形態の環境データ項目の例を示す図であり、
図13は第2実施形態の関数リストの例を示す図である。計画作成システム100がモデルの作成処理に用いる情報として、
図12に示す環境データ項目113がある。この環境データ項目113は、モデルを構成する関数Fにおける「要因」となることのできる環境データの項目情報である。なお、何らかの理由により、取得できる環境データ111の種類に増減があった場合(例えば、新たなセンサが道路に設置された場合など)、これに合わせて環境データ項目113の内容も更新されるが、この更新作業は、計画作成システム100の外部で行われることとする。
【0072】
また、計画作成システム100は、記憶装置101において関数リスト112も保持している。この関数リスト112は、モデルを構成するための、環境データ毎の関数を複数含んだものである。計画作成システム100は、この関数リスト112から適宜選択した関数を組み合わせることで新規モデルを生成できる。
【0073】
また、既に述べたが計画作成システム100は、複数のモデルを管理するために、モデルリスト110(
図5)を記憶装置101にて保持している。モデルリスト110の初期状態としてはユーザが登録した1つ以上のモデルが登録された状態となっている。計画作成システム100がモデル作成処理を行った際には、このモデルリスト110に新たなモデルが追加されることになる。また、計画作成システム100がモデル変更処理を行った際には、モデルリスト110に格納されている1個またはそれ以上のモデルの内容が変更されることになる。また、計画作成システム100がモデル消去処理を行った際には、モデルリスト110から1個またはそれ以上のモデルが削除されることになる。こうした、モデル作成、モデル変更、モデル消去の各処理は、計画作成システム100においてそれぞれ定期的に実行されるように適宜なカレンダー機能等にてスケジュール設定されているものとする。ただし、これら各処理は同期して実行される必要はなく、その実行頻度も異なっていて良い。
【0074】
次に、計画作成システム100におけるモデル作成処理について説明する。
図14は第2実施形態の計画作成方法の処理手順例1を示すフロー図である。この場合、ステップs160において、計画作成システム100は、環境データ項目113に格納されているデータ項目から所定数の項目をランダムに選択して読み出す。選択するデータ項目の数もランダムである。
【0075】
続いてs161において計画作成システム100は、上述のステップs160で読み出したデータ項目を用いて、関数リスト112から該当項目に対応する関数を特定し、ここで特定した関数を互いに合算する形で組み合わせるなど、上述した[数1]や[数2]に対応した一定の規則で組み合わせて関数Fを作成する。[数2]では、1つのデータ項目についての関数fi(x)は1個以上の放射基底関数で構成されるが、その数は、1から5程度の間でランダムに決める。
【0076】
次に、ステップs162において計画作成システム100は、ステップs161で作成した関数Fを構成する各項(f1、f2・・・)の重み係数や、切片値などのパラメータの初期値を乱数で決定する。
【0077】
また、ステップs163において計画作成システム100は、上記のようにして生成した関数を1つのモデルとして、記憶装置101のモデルリスト110に追加する。以上でモデル作成処理が終了する。
【0078】
続いて、モデル変更処理の手順について説明する。
図15は第2実施形態の計画作成方法の処理手順例2を示すフロー図である。この場合、ステップs180において計画作成システム100は、記憶装置101のモデルリスト110の中から、変更処理の対象とするモデルをランダムに1つ選ぶ。
【0079】
また、ステップs181において計画作成システム100は、上述のステップ180で選択したモデルに含まれるパラメータ(重み付き和に用いる重みも含む)の中から、変更処理の対象とするものを1個以上選択する。
【0080】
また、ステップs182において計画作成システム100は、上述のステップ180で選択したモデルの、ステップs181で選択したパラメータの値を変更する。変更の手法としては、例えば、現在の値に対し、該当値と比して十分小さな値を加算して、上述の現在の値に近い値に変更する手法や、現在の値とは無関係に乱数由来の新たな値に変更する手法などを採用できる。計画作成システム100は、モデルリスト110中の、変更対象のモデルのレコードにおいて、変更後のパラメータ値を格納する。
【0081】
なお、上述のステップs182の変形例として、計画作成システム100が、パラメータ変更前のモデルの複製を作成して記憶装置101ないしメモリ103に格納しておき、パラメータ変更前のモデルと、パラメータ変更後のモデルの両方をモデルリスト110に格納するとしてもよい。以上でモデル変更処理が終了する。
【0082】
次に、モデル消去処理について説明する。
図16は第2実施形態の計画作成方法の処理手順例3を示すフロー図である。この場合、ステップs200において計画作成システム100は、記憶装置101のモデルリスト110に格納されているモデルの数が、あらかじめ定めた消去基準を上回るか否か判定する。この判定の結果、格納モデル数が消去基準を上回っている場合(s200:YES)、計画作成システム100は処理をステップs201に進める。他方、格納モデル数が消去基準を上回っていなかった場合(s200:NO)、計画作成システム100は処理を終了する。
【0083】
ステップs201において計画作成システム100は、消去するモデルの数を決定する。消去するモデルの数は、モデルリスト110に格納されているモデル数と消去基準との差を上限として、0を下限として乱数で決定する。
【0084】
続いて、ステップs202において計画作成システム100は、記憶装置101のモデルリスト110から、スコアの小さい順に、ステップs201で決定した数だけモデルを削除する。以上でモデル消去が終了する。
【0085】
なお、上述してきた計画作成システム100に、更なる機能を追加した構成も想定できる。
図17は第3実施形態の計画作成システム100の機能ブロックを示す図である。
図1にて示した計画作成システム100との差異は、作成した経路計画を自動車200の車載端末250に伝達する前に、その経路計画の妥当性についてチェックする機能を備えている点である。このチェック処理について
図18のフロー図に基づいて説明する。なお、
図18に示すフローは、ステップs220〜s224までは、上述の
図3で示したステップs100〜s104と同様であるので説明は省略する。
【0086】
ステップs225において計画作成システム100は、ステップs224までで作成された経路計画が、所定の許容基準を満たしているか判定する。この許容基準は、計画作成システム100の外部で作成された値であり、記憶装置101ないしメモリ103に格納されている。許容基準の例としては、「現在位置から目的地までの、(所要時間ではなく)距離のみに基づいて算出した最短経路長に対し、移動距離がその10倍を超える経路計画は無効」などが想定できる。
【0087】
上述のステップs225の判定の結果、該当経路計画に関して許容基準を満たさない部分の存在が判明した場合(s225:NO)、計画作成システム100は、該当経路計画を自動車200の車載端末250に伝達せずに破棄し、該当経路計画に用いたモデルに対してモデルリスト110にて小さい評価値(例えば、0.1)を与える。したがって、この計画作成に用いられたモデルのスコアは減少する。その後、計画作成システム100は処理をステップs220に戻し、新たな経路計画をあらためて作成する。
【0088】
続いて、計画対象が自動車200や道路網300ではなく、人間の業務である例について計画作成システム100とその処理について説明する。具体的には、人間が携わる業務の計画立案への適用例として、病院における医療業務の計画作成システムを想定する。
図19は第4実施形態の計画作成システム100を含むネットワーク構成例を示す図である。
【0089】
この場合の計画作成システム100は病院情報システムとなる。この病院情報システム100は1つ以上の業務端末400と無線LANなど適宜な通信回線により通信可能に結ばれている。病院情報システム100が管理する医療施設における従事者は、上述の業務端末400を携行し、病院情報システム100から業務端末400に宛てて伝達された計画に沿って業務を行うものとする。
【0090】
こうした病院情報システム100は、記憶装置101において業務予定DB140、および従事者DB141を格納している。
図20は第4実施形態の業務予定DB140のデータ構成例を示す図である。この業務予定DB140は、該当医療施設にて実施しなければならない業務の情報を格納したデータベースであり、
図20に示すように、業務名をキーとして、対象患者、該当業務を実行する場所、該当業務を実行すべき時刻といったデータが対応付けされたレコードの集合体となっている。
【0091】
また、従事者DB141は、業務に携わることのできる従事者の情報が格納されたデータベースであり、
図21に示すように、従事者名をキーとして、該当従事者の勤務日、勤務時間、スキルレベル、現在担当中の業務実行エリア、といったデータが対応付けされたレコードの集合体となっている。
【0092】
また、特に図示はしていないが、病院情報システム100の記憶装置101には、上述の計画作成システム100と同様に、モデルリスト110、環境データ111、関数リスト112、環境データ項目113などのデータが格納されている。
【0093】
但し、病院情報システム100のモデルリスト110におけるモデルとは、医療施設にて各業務を完了するのに要する時間となる。同じ業務であっても、様々な要因によって、要する時間は変わる。例えば、業務を実施した従事者のスキルによって所要時間は変動する。すなわち、スキルの高い従事者であれば短時間で該当業務を完了させることができるが、スキルの低い従事者であれば同じ業務であってもより長い時間が必要となる。また、従事者がその業務の直前に実施していた業務によっても所要時間は変わりうる。例えば、直前の業務の場所が離れていれば、該当業務の実施場所まで移動するに要する時間だけ、所要時間が余分にかかることになる。上述してきた第1実施形態等と同様に、モデルは様々な要因の関数であり、[数1]、[数2]の形式で定義する。
【0094】
以上の前提にて処理を実行する病院情報システム100は、医療施設での全体の業務を各従事者が完了するのに要する時間が全体として短くなるような業務計画を作成することを目的とする。但し、業務を行うのは人間であり、人間特有の制約を考慮する必要がある。その1つは疲労である。従事者は1日の中で適宜な休憩時間を取る必要があり、また1日の労働時間が所定基準を超えてはならない。一方、従事者における疲労発生を回避するためにその労働時間を短縮することと、効率的に業務を行って業務完了に要する時間を短縮することは互いに対立する事項となる。そのため、病院情報システム100が業務計画を作成する際には、多目的最適化の手法を用いて、パレート最適となる業務計画を作成する。 従って病院情報システム100は、従事者における実際の業務実行結果が、パレート最適にどれくらい近いかを算出し、これを業務計画の評価すなわち上述の良否係数とする。また、病院情報システム100は、その良否係数に基づいて、業務計画作成時に用いたモデルのスコアを上述の第1実施形態等と同様に更新する。また、病院情報システム100は上述の第1実施形態等と同様に、モデルの作成、改変、消去の各処理を実行する。
【0095】
こうした構成において、計画作成システムたる病院情報システム100が実行する、計画作成方法の手順について説明する。
図22は第4実施形態の計画作成方法の処理手順例を示すフロー図である。
【0096】
この場合、病院情報システム100は、上述の業務予定DB140から1日分の業務を読み出し、従事者DB141から、該当日が勤務日である従事者の情報としてスキルレベル、および現在担当中の業務実行中のエリアの各値を読み出す(s250)。この従事者の情報は環境データ111の一部となる。また、業務予定DB140から読み出した業務に関する情報、例えば、業務対象となる患者の疾患とその程度、実行時刻といった様々なデータも環境データ111の一部となる。
【0097】
続いて病院情報システム100は、記憶装置101のモデルリスト110よりモデルを選択する(s251)。この場合のモデルは、計画対象の特性として、「従事者がある業務を実行した際に、業務完了までに要する時間とその際の疲労度」、すなわち所定業務の所要時間とその際の疲労度である。
【0098】
次に病院情報システム100は、ステップs252において、すでに上述のステップs250で得ている環境データ111を、ステップs251で選択したモデルに適用し、特性値(本例では、業務完了までの所要時間と疲労度)を算定する。すなわち、病院情報システム100は、ステップs251で選択したモデルの関数F(要因1,要因2,‥‥)の各要因に対応する項目を、環境データ111の対応要因の値を参照して特定し、その実データを読み取り、当該実データを関数Fの該当要因に適用して関数Fを演算し、その結果(特性値)を、記憶装置101ないしメモリ103に格納する。
【0099】
なお、この場合の環境データ111は、病院情報システム100が予め管理者等から入出力装置105を介して得ている、該当医療施設における所定業務に関する環境要因のデータとなる。環境データ111は、従事者のスキルレベル、直前業務の実行エリア、業務対象となる患者の疾患とその程度、実行すべき時刻といった様々なデータ項目と、これに対応する要因の識別子、および実データの組み合わせで構成されている。こうした環境データ111に含まれる要因の識別子をキーに実データが抽出され、病院情報システム100が選択したモデルの関数における該当要因に代入されることになる。
【0100】
次に病院情報システム100は、ステップs253において、上述のステップs252で算出した特性値を記憶装置101ないしメモリ103から読み出し、該当日に該当業務に従事可能な各従事者の間で、疲労度が一定基準以下となる状態を維持しつつ、所定業務を割り当てた場合の業務完了までの所要時間が最短となる、全体最適のパターンを、パレート最適の概念を踏まえた多目的最適化の手法を用いて特定し、
図23にて例示する業務計画500として作成する。病院情報システム100は、ここで作成した業務計画500を記憶装置101ないしメモリ103に格納する。
【0101】
次にステップs254において、病院情報システム100は、各従事者について作成した業務計画の情報、すなわち、該当従事者が、「何時に」「どの業務を」実施すべきかの業務スケジュールの情報を記憶装置101ないしメモリ103から読み出し、無線通信装置106およびネットワーク120を介して、該当従事者の業務端末400へ送信する。以上で各従事者への業務計画の提供は終了する。
【0102】
一方、業務計画500を自身の業務端末400で受け取った従事者は、業務計画500に従って担当した業務の実施記録を業務端末400に入力する。例えば、検温業務を実施した場合、従事者は、患者の体温を業務端末400に入力する。このとき、該当業務を実施した時刻も業務端末400にて記録される。こうした従事者における実行結果、すなわち該当業務とその実施時刻の各情報は、業務端末400から病院情報システム100に伝達され、記憶装置101にて保存される。病院情報システム100は、記憶装置101に保存された業務の実行結果の情報を用いて、業務計画の実行結果に対する評価、すなわち良否係数を第1実施形態等と同様に算出し、
図10、16等で示した処理を同様に実行する。
【0103】
以上、本発明を実施するための最良の形態などについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0104】
こうした本実施形態によれば、所定結果を見込むリソースの稼働計画を幅広い観点から作成し、作成した計画を客観的に評価し、継続的な改良が可能となる。
【0105】
本明細書の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。すなわち、本実施形態の計画作成システムにおいて、演算装置は、前記稼働計画の生成、伝達を行う処理において、前記稼働計画を受けて稼働中の各リソースから前記稼働計画の消化度を、入力装置ないし通信装置を介して所定タイミングで受け付け、前記消化度に応じて稼働中リソースの稼働特性を変化させて前記計画作成アルゴリズムに与え、稼働中リソース間で、稼働結果が全体最適となる各稼働中リソースの稼働計画を生成し、当該生成した稼働計画の情報を、出力装置ないし通信装置を介して該当各稼働中リソースに対して伝達するものであるとしてもよい。
【0106】
これによれば、リソースでの実際の稼働状況による、リソース間で及ぼしあう稼働結果の影響を踏まえた稼働計画を作成し、稼働中の各リソースに提供することが可能となる。つまり、稼働計画を実情に合わせて継続的に改変し、リソース全体での適宜な稼働結果を得る効果を奏することになる。
【0107】
また、本実施形態の計画作成システムにおいて、演算装置は、前記モデルの選択、稼働特性の推定を行う処理において、前記選択モデル毎に選択回数をカウントして記憶装置に格納しており、複数種類のモデル中よりモデルを選択する際に、選択回数の少ないモデルほど高確率で選択するアルゴリズムで選択モデルを選定するものであるとしてもよい。
【0108】
これによれば、多数あるモデルをそれぞれ偏り無く用いることにつながり、実情に沿った好適なモデルを選択できる可能性を拡大できる。
【0109】
また、本実施形態の計画作成システムにおいて、演算装置は、前記モデルの選択、稼働特性の推定を行う処理において、複数種類のモデル中よりモデルを選択する際に、前記評価値の大きいモデルほど高確率で選択するアルゴリズムで選択モデルを選定するものであるとしてもよい。
【0110】
これによれば、評価値の大きい、すなわちそれまでのリソースでの実行状況ではよくマッチしていたモデルを選択しやすい一方で、それ以外のモデルの選択も排除せず、現状での最適なモデルを多く利用しつつも、幅広いモデルの利用も行うことができる。
【0111】
また、本実施形態の計画作成システムにおいて、記憶装置は、前記モデルを構成するための、環境データ毎の関数を複数、更に格納したものであり、前記演算装置は、前記記憶装置より前記関数をランダムに複数選択し、当該選択した複数の関数を所定規則で組み合わせることで新規モデルを生成し、当該新規モデルを記憶装置に格納する処理を更に実行するものであるとしてもよい。
【0112】
これによれば、選択肢の限られたモデル中のみからモデルを選択し続けるのではなく、計画作成に用いるモデルの選択肢を拡大し続けて、より実情に沿った好適なモデルを選択できる可能性を拡大できる。
【0113】
また、本実施形態の計画作成システムにおいて、演算装置は、前記記憶装置よりランダムにモデルを選択し、当該選択したモデルに含まれるパラメータの値を所定アルゴリズムにより変更することでモデルの変更を行う処理を更に実行するものであるとしてもよい。
【0114】
これによれば、パラメータの固定化されたモデル中のみからモデルを選択し続けるのではなく、計画作成に用いるモデルの選択肢を拡大し続けて、より実情に沿った好適なモデルを選択できる可能性を拡大できる。
【0115】
また、本実施形態の計画作成システムにおいて、演算装置は、前記記憶装置のモデル中より、評価値が所定基準より小さいモデルを消去する処理を更に実行するものであるとしてもよい。これによれば、リソースの稼働環境にマッチしない傾向にあるモデルを排除し、より好適な計画の作成を効率的に行うことを可能とする。