特許第6027233号(P6027233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6027233
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   F01P 5/04 20060101AFI20161107BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   F01P5/04 D
   E02F9/20 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-516358(P2015-516358)
(86)(22)【出願日】2014年12月4日
(86)【国際出願番号】JP2014082117
【審査請求日】2016年5月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竃門 光彦
(72)【発明者】
【氏名】宮武 浩一
(72)【発明者】
【氏名】上田 純平
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−202073(JP,A)
【文献】 特開2002−187435(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/001633(WO,A1)
【文献】 特開2011−020637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 5/04
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のハイブリッド機器と、
前記複数のハイブリッド機器に連通され、前記複数のハイブリッド機器を冷却するための冷媒を前記ハイブリッド機器に循環させる冷媒回路と、
前記冷媒回路と接続されたラジエータと、
作業機の駆動に用いられる作動油を冷却するためのオイルクーラと、
前記ラジエータおよび前記オイルクーラを冷却するための冷却風を生成するファンと、
前記ファンの回転数を変更可能な可変機構と、
前記複数のハイブリッド機器にそれぞれ対応して設けられ、各々が対応する前記ハイブリッド機器の温度を検出する複数のセンサと、
前記オイルクーラに設けられ、前記作動油の温度を検出する作動油温度センサと、
前記複数のセンサによって検出された前記ハイブリッド機器の温度および前記作動油の温度に基づいて、前記可変機構を制御して前記ファンの回転数を制御するファン制御部と
ハイブリッド機器の温度と前記ファンの回転数との関係を規定する関係データを、前記複数のハイブリッド機器に応じて複数記憶する記憶部とを備え、
前記ファン制御部は、前記複数のセンサによって検出されたそれぞれの温度に基づいて、前記記憶部に記憶された複数の関係データに従って設定されるファンの回転数のうち、最も高い回転数となるように前記ファンの回転数を制御し、
前記記憶部は、前記作動油を冷却するために作動油の温度に従って異なるファンの回転数に設定するための作動油関係データをさらに記憶し、
前記作動油関係データにおける作動油の温度変化に対する最小回転数から最大回転数へのファンの回転数の変化率よりも、各前記ハイブリッド機器の温度変化に対する最小回転数から最大回転数へのファンの回転数の変化率の方が大きい、作業車両。
【請求項2】
前記複数の関係データは、それぞれ対応するハイブリッド機器の温度変化に対するファンの回転数の変化率が小さい第1領域と、前記第1領域の後に前記第1領域よりも前記変化率が大きい第2領域とを有する、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記ファンに回転のための駆動力を与えるエンジンをさらに備え、
前記可変機構は、前記エンジンと前記ファンとの間に設けられる、請求項1あるいは2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記複数のハイブリッド機器は、旋回体の減速時に発生する電気エネルギーを回収可能な電気モータと、電気エネルギーを蓄電するキャパシタと、前記電気モータで回収した電気エネルギーを前記キャパシタに蓄電制御するインバータとを少なくとも含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両のエンジンには、一般に、冷却用のファンが連結されている。例えば、特許文献1には、エンジンの出力軸にクラッチ(ファンクラッチ)を介して連結されたファンが開示されている。ファンクラッチは、ファンの回転数を調節可能である。
【0003】
特許文献1には、ファンの回転数の制御に関して、例えばエンジン冷却水等が所定の温度範囲にあるか否かを判断する閾値を設けて、当該閾値を超えたか否かによって、ファンクラッチの接続/切断を制御する方式が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ファンクラッチの制御に関して、車両の運転状態を推定して、推定した運転状態に対応するファンの回転数を調整する制御マップによりファンクラッチを制御する方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−3131号公報
【特許文献2】特開2013−47470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、近年、油圧ショベルにおいて動力源にエンジンと電気モータとの双方を用いるハイブリッド化が進められている。このハイブリッド油圧ショベルでは、従来の冷却対象に加えて、インバータ等の電気機器(ハイブリッド機器とも称する)を有する電動機システムを冷却する必要がある。しかしながら、上記特許文献1および2には、当該ハイブリッド機器を冷却するために効率的にファンの回転数を調整する点については開示されていない。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ハイブリッド機器の状態に基づいて効率的にファンの回転数を制御することが可能な作業車両を提供することを目的とする。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある局面に従う作業車両は、複数のハイブリッド機器と、冷媒回路と、ラジエータと、ファンと、可変機構と、複数のセンサと、ファン制御部とを備える。冷媒回路は、複数のハイブリッド機器に連通され、複数のハイブリッド機器を冷却するための冷媒をハイブリッド機器に循環させる。ラジエータは、冷媒回路と接続される。ファンは、ラジエータを冷却するための冷却風を生成する。可変機構は、ファンの回転数を変更可能である。
複数のセンサは、複数のハイブリッド機器にそれぞれ対応して設けられ、各々が対応するハイブリッド機器の温度を検出する。ファン制御部は、複数のセンサによって検出されたハイブリッド機器の温度に基づいて、可変機構を制御してファンの回転数を制御する。
【0010】
本発明の作業車両によれば、ファン制御部は、複数のセンサによって検出された温度に基づいて可変機構を制御してファンの回転数を制御するため、各ハイブリッド機器の状態に基づいて効率的にファンの回転数を制御することが可能である。
【0011】
好ましくは、作業車両は、記憶部をさらに備える。記憶部は、ハイブリッド機器の温度とファンの回転数との関係を規定する関係データを、複数のハイブリッド機器に応じて複数記憶する。ファン制御部は、複数のセンサによって検出されたそれぞれの温度に基づいて、記憶部に記憶された複数の関係データに従って設定されるファンの回転数のうち、最も高い回転数となるようにファンの回転数を制御する。
【0012】
上記によれば、ファン制御部は、複数のセンサによって検出された温度に基づいて記憶部に記憶された複数の関係データに従って設定するファンの回転数が最も高い回転数となるようにファンの回転数を制御するため、効率的にファンの回転数を制御することが可能である。
【0013】
好ましくは、ファン制御部は、作業車両で用いられる作動油の温度および複数のセンサによって検出された温度に基づいて可変機構を制御してファンの回転数を制御する。記憶部は、作動油を冷却するために作動油の温度に従って異なるファンの回転数に設定するための作動油関係データをさらに記憶する。作動油関係データにおける作動油の温度変化に対する最小回転数から最大回転数へのファンの回転数の変化率よりも、各ハイブリッド機器の温度変化に対する最小回転数から最大回転数へのファンの回転数の変化率の方が大きい。
【0014】
上記によれば、作動油関係データにおける作動油の温度変化に対する最小回転数から最大回転数へのファンの回転数の変化率よりも、各ハイブリッド機器の温度変化に対する最小回転数から最大回転数へのファンの回転数の変化率の方が大きい。したがって、急峻に変化する電子部品の温度に対して適切なファンの回転数を設定することが可能である。
【0015】
好ましくは、複数の関係データは、それぞれ対応するハイブリッド機器の温度変化に対するファンの回転数の変化率が小さい第1領域と、第1領域の後に第1領域よりも変化率が大きい第2領域とを有する。
【0016】
上記によれば、ファンの回転数の変化率が小さい領域、大きい領域の順番にファンの回転数が設定されるため不必要に回転数を上昇させることなく効率的にファンの回転数を設定することが可能である。
【0017】
好ましくは、作業車両は、エンジンをさらに備える。エンジンは、ファンに回転のための駆動力を与える。可変機構は、エンジンとファンとの間に設けられる。
【0018】
上記によれば、エンジンの回転数に対してファンの回転数を変更可能であるためファンの回転数を適切に調整することによりエンジンの燃費改善を図ることが可能である。
【発明の効果】
【0019】
ハイブリッド機器の状態に基づいて効率的にファンの回転数を制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に基づく作業車両101の外観を説明する図である。
図2】実施形態に基づく冷却ユニットの構成を示す斜視図である。
図3】実施形態に基づく冷却ユニットの背面側の構成を示す斜視図である。
図4】本実施形態に基づくファン200の外観図である。
図5】本実施形態に基づくファン駆動部210の構成を説明する図である。
図6】実施形態に基づく冷却システム300について説明する図である。
図7】実施形態に基づく冷却システム300の循環経路Lを説明する図である。
図8】実施形態に基づくファン200を制御する機能ブロック図である。
図9】実施形態に基づく複数の制御マップの構成を説明する図である。
図10】複数の制御マップを利用してファン200を制御する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。
<全体構成>
図1は、実施形態に基づく作業車両101の外観を説明する図である。
【0022】
図1に示されるように、実施形態に基づく作業車両101として、本例においては、主にハイブリッド型の油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0023】
ハイブリッド型の油圧ショベルは、旋回電気モータ、発電機モータ、変換器としてインバータ、畜電器としてのキャパシタ、およびエンジン等を備えている。そして、ハイブリッド型の油圧ショベルでは、車体旋回の減速時に旋回電気モータで発生する電気エネルギーと、エンジンと直結された発電機モータで発生される電気エネルギーとがキャパシタに蓄えられる。キャパシタに蓄えられた電気エネルギーは、発電機モータを通じてエンジン加速時の補助エネルギーとして利用される。
【0024】
なお、以下の説明において、「前」「後」「左」「右」とは、運転席に着座したオペレータを基準として決められる方向である。
【0025】
作業車両101は、走行体1と、旋回体3と、作業機4とを主に有している。作業車両本体は、走行体1と旋回体3とにより構成される。走行体1は、左右一対の履帯を有している。旋回体3は、走行体1の上部の旋回機構(旋回電気モータ)を介して旋回可能に装着される。
【0026】
作業機4は、旋回体3において、上下方向に作動可能に軸支されており、土砂の掘削などの作業を行う。作業機4は、ブーム5と、アーム6と、バケット7とを含む。ブーム5は、基部において旋回体3に可動可能に連結されている。アーム6は、ブーム5の先端に可動可能に連結されている。バケット7は、アーム6の先端に可動可能に連結されている。また、旋回体3は、運転室8等を含む。旋回体3の後部には、エンジンが配置されるとともに、後述する冷却ユニットが配置されている。
【0027】
<冷却ユニットの構成>
図2は、実施形態に基づく冷却ユニットの構成を示す斜視図である。
【0028】
図3は、実施形態に基づく冷却ユニットの背面側の構成を示す斜視図である。
図2に示されるように、冷却ユニットは、冷却対象物として、作業機4の駆動に用いられる作動油を冷却するオイルクーラ22と、エンジンを冷却するエンジン冷却水を冷却するエンジンラジエータ24と、電動機システムを冷却する冷却水(ハイブリッド冷却水とも称する)を冷却するラジエータ(ハイブリッドラジエータとも称する)29とを含む。なお、本例においては、水を冷媒として用いる構成について説明するが特に水に限られず、冷却効率の高い他の冷媒を用いる構成とすることも可能である。
【0029】
オイルクーラ22は、図示しないオイルクーラ入口から作動油の供給を受けて、オイルクーラ出口から冷却された作動油が排出される。
【0030】
エンジンラジエータ24は、図示しないラジエータ入口ホースからエンジン冷却水の供給を受けて、ラジエータ出口ホースから冷却されたエンジン冷却水が排出される。
【0031】
ハイブリッドラジエータ29は、図示しないラジエータ入口ホースからハイブリッド冷却水の供給を受けて、ラジエータ出口ホースから冷却されたハイブリッド冷却水が排出される。
【0032】
図3に示されるように、冷却ユニットの背面側にファン200が設けられ、ファンの冷却風により冷却ユニットを冷却する構成となっている。また、ファン200は、エンジン10の出力軸と連結されて回転する。また、ファン200を覆うようにファンカバー17が設けられる。
【0033】
<ファンの構成>
図4は、本実施形態に基づくファン200の外観図である。
【0034】
図4を参照して、ファン200は、11枚羽で構成される。ファン駆動部210は、エンジン10の出力軸202と連結され、流体クラッチによりファン200の回転を制御する。
【0035】
図5は、本実施形態に基づくファン駆動部210の構成を説明する図である。
図5を参照して、ファン駆動部210は、ケース240と、クラッチ部230と、バネ221と、ソレノイド可動子216と、ソレノイドコイル214と、調整部材220と、ホール素子215とを含む。
【0036】
ケース240内のオイルたまり241にはシリコンオイルが充填されており、クラッチ部230へのシリコンオイル量を調整することによりファン200の回転制御が行なわれる。
【0037】
ソレノイド可動子216は、調整部材220と連結される。ソレノイドコイル214に供給する電流量を増加させることによりソレノイド可動子216は、バネ221を縮めて調整部材220を下方向に押し下げる。一方、ソレノイドコイル214に供給する電流量を減少させることによりソレノイド可動子216を下方向に押し下げる力が弱くなり、バネ221の反発力により調整部材220は上方向に押し上げられる。
【0038】
調整部材220の位置に従ってオイルたまり241からクラッチ部230に流れ込むシリコンオイル量が調節される。調整部材220を下方向に押し下げることによりクラッチ部230に流れ込むシリコンオイル量が減少する。一方、調整部材220を上方向に押し上げることによりクラッチ部230に流れ込むシリコンオイル量が増加する。
【0039】
シリコンオイル量が変化することによりせん断抵抗が変化し、ファン200の回転数が変化する。クラッチ部230に流れ込むシリコンオイル量が増加することによりせん断抵抗が増加してファン200の回転数が増加する。一方で、クラッチ部230に流れ込むシリコンオイル量が減少することによりせん断抵抗が低下してファン200の回転数が減少する。
【0040】
ホール素子215は、ファン200の回転数を検出して、検出結果を後述するファンコントローラに出力する。ファンコントローラは、ホール素子215で検出されたファン200の回転数が所望の回転数となるようにソレノイドコイル214に供給する電流量を制御する。
【0041】
なお、上記のファン駆動部210は、シリコンオイルを用いた流体クラッチによりファン200の回転数を調整する方式について説明しているが、特にこれに限られず、電磁クラッチ等の方式を用いてファン200の回転数を調整するようにしても良い。
【0042】
<電動機システムの冷却構成>
図6は、実施形態に基づく冷却システム300について説明する図である。
【0043】
図6に示されるように、作業車両101の冷却システム(冷媒回路)300は、ハイブリッド機器で構成される電動機システムを冷却する。
【0044】
本例においては、ハイブリッド機器として、一例として、旋回電気モータ302、インバータ308、キャパシタ306等を冷却する。本例におけるハイブリッド機器は、電気エネルギーに基づいて駆動する電気機器である。旋回電気モータ302は、作業機4が連結された旋回体の減速時に発生する電気エネルギーを回収可能に設けられている。キャパシタ306は、電気エネルギーを蓄電可能に設けられている。インバータ308は、旋回電気モータ302とキャパシタ306との間に設けられ、旋回電気モータ302で回収した電気エネルギーをキャパシタ306に蓄電制御する。また、インバータ308は、キャパシタ306に蓄電された電気エネルギーを用いて旋回電気モータ302への電力の供給動作を制御する。なお、ハイブリッド機器は、上記以外の電気機器も含まれる。
【0045】
冷却システム300は、複数のハイブリッド機器(旋回電気モータ302、インバータ308、キャパシタ306)と、複数のハイブリッド機器に連通された循環経路Lと、ハイブリッドラジエータ29と、冷却水ポンプ304とを含む。なお、本例においては、キャパシタ306、インバータ308、旋回電気モータ302に対して直列に循環経路Lが連通する構成について説明するが、特に直列に循環経路Lが連通する構成に限られず、並列に連通する構成および両方組み合わせた構成としても良い。
【0046】
複数のハイブリッド機器で共通の冷媒回路を設けることにより、独立してそれぞれの冷媒回路を設けるよりもレイアウト効率を高めることが可能である。
【0047】
冷却水ポンプ304は、循環経路Lにハイブリッド冷却水を循環させる。
ハイブリッドラジエータ29は、ハイブリッド冷却水を冷却するためのラジエータである。そして、ファン200により生成された冷却風によりラジエータ内のハイブリッド冷却水が冷却される。
【0048】
また、本例においては、ファン200により冷却される冷却ユニットを構成するエンジンラジエータ24およびオイルクーラ22も示されている。
【0049】
また、エンジン10と直結された発電機モータ11およびメインポンプ12も示されている。メインポンプ12は、エンジン10の駆動により作業機4を駆動する作動油を供給するポンプであり、作動油を冷却する冷却システムの詳細については図示しないがメインポンプ12から作業機4に供給された作動油は、オイルクーラ22で冷却されて再びメインポンプ12から作業機4に供給される。
【0050】
また、冷却システム300は、複数の温度センサをさらに含む。複数の温度センサは、複数のハイブリッド機器(旋回電気モータ302、インバータ308、キャパシタ306)にそれぞれ対応して設けられ、各々が対応するハイブリッド機器の温度を検出する。
【0051】
本例においては、冷却システム300は、旋回電気モータ302の温度を検出する旋回電気モータ温度センサ123と、キャパシタ306のセルの温度を検出するキャパシタ温度センサ122と、インバータ308のインダクタの温度を検出するインバータ温度センサ121,124とを有している。
【0052】
インバータ温度センサ121は、インバター308内に含まれる電子部品のうちの昇圧器インダクタの温度を検出するセンサである。
【0053】
インバータ温度センサ124は、インバータ308内に含まれる電子部品のうちの昇圧器IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の温度を検出するセンサである。
【0054】
なお、本例においては、各ハイブリッド機器の電子部品の温度を検出する温度センサについて説明したが、特に当該電子部品に限られず他の電子部品の温度を検出する構成とすることも可能である。なお、本例においては、一例として各ハイブリッド機器に対して少なくとも1つの温度センサを設ける構成について説明しているが、さらに複数の温度センサを設けてハイブリッド機器の電子部品の状態を検出する構成とすることも可能である。
【0055】
ハイブリッド機器は電子部品であるため負荷の変動に従って温度が急上昇する可能性がある。機器の安定した動作を保障するためにはその温度を適正に調整することが重要である。
【0056】
本実施形態においては、複数のハイブリッド機器に対して共通の冷媒回路を設けた構成であるため、冷媒の温度を検出するだけでは、いずれのハイブリッド機器の温度を適正に制御するべきか特定することはできない。したがって、複数のハイブリッド機器の電子部品の状態として、それぞれに設けられた温度センサにより検出された温度に基づいてファン200の回転数を制御する。
【0057】
また、本例においては、オイルクーラ22には、作動油の温度を検出する作動油温度センサ130が設けられており、後述のように当該作動油温度センサ130により検出された作動油の温度も考慮してファン200の回転数を制御することが可能である。
【0058】
図7は、実施形態に基づく冷却システム300の循環経路Lを説明する図である。
図7に示されるように、ハイブリッド機器である旋回電気モータ302、冷却水ポンプ304およびキャパシタ306は、車体フレーム95に支持されている。インバータ308は、キャパシタ306の上部に配置されている。
【0059】
インバータ308およびキャパシタ306は、車体フレーム95の長手方向(X方向)の前方端部(図中手前側)に配置されている。旋回電気モータ302は、車体フレーム95の中央部に配置されている。
【0060】
ハイブリッドラジエータ29は、車体フレーム95の長手方向(X方向)の後方端部に配置されている。
【0061】
本例においては、冷却水ポンプ304から供給されるハイブリッド冷却水が、キャパシタ306、インバータ308、旋回電気モータ302、ハイブリッドラジエータ29の順に循環経路Lを介して供給され、再び冷却水ポンプ304に戻る状態が示されている。
【0062】
冷却システム300では、循環経路L内を流れるハイブリッド冷却水と各ハイブリッド機器の電子部品との間で熱交換が行われる。
【0063】
<ファン制御システム>
図8は、実施形態に基づくファン200を制御する機能ブロック図である。
【0064】
図8を参照して、ファン制御システムは、インバータ温度センサ(昇圧器IGBT)121、キャパシタ温度センサ122、旋回電気モータ温度センサ123、インバータ温度センサ(昇圧器インダクタ)124、メモリ125、ファンコントローラ126、エンジンコントローラ127、エンジン回転センサ129、作動油温度センサ130、ファン駆動部210、ファン200とを含む。
【0065】
ファンコントローラ126は、エンジン回転センサ129で検出されたエンジン回転数をエンジンコントローラ127を介して取得する。
【0066】
ファンコントローラ126は、インバータ温度センサ(昇圧器IGBT)121およびインバータ温度センサ(昇圧器インダクタ)124で検出されたインバータ308の温度をそれぞれ取得する。
【0067】
ファンコントローラ126は、キャパシタ温度センサ122で検出されたキャパシタ306の温度を取得する。
【0068】
ファンコントローラ126は、旋回電気モータ温度センサ123で検出された旋回電気モータ302の温度を取得する。
【0069】
ファンコントローラ126は、作動油温度センサ130で検出された作動油の温度を取得する。
【0070】
ファンコントローラ126は、各温度センサから取得したハイブリッド機器の状態を検出する検出部126Aと、ファン駆動部210を制御してファン200の回転数を調整する調整部126Bとを含む。
【0071】
調整部126Bは、メモリ125に格納されている各種情報に基づいてファン200の目標回転数を設定し、設定された目標回転数で当該ファン200を回転させるためにファン駆動部210を制御する。
【0072】
メモリ125は、ファンコントローラ126がファン200の目標回転数に設定するための複数の制御マップ(関係データ)を格納する。
【0073】
<制御マップ>
図9は、実施形態に基づく複数の制御マップの構成を説明する図である。
【0074】
図9に示されるように、本例においては、各ハイブリッド機器に対応して設けられた制御マップが示されている。
【0075】
本例においては、一例として、メモリ125に格納されるインバータ(昇圧器IGBT)制御マップ、キャパシタ制御マップ、旋回電気モータ制御マップ、インバータ(昇圧器インダクタ)制御マップ、作動油制御マップ(作動油関係データ)が示されている。
【0076】
各制御マップと、各温度センサで検出された温度とに基づいてファン200の目標回転数が設定される。
【0077】
制御マップでは、所望の冷却風量を確保することが可能なファン200の目標回転数が、ハイブリッドラジエータ29の性能に基づき設定されている。当該制御マップに従えば、ハイブリッド冷却水を循環経路Lに循環させて各ハイブリッド機器で熱交換を行った場合に、ヒートバランスを成立させることが可能になる。
【0078】
ここで、各ハイブリッド機器に対応して設けられる制御マップの温度変化に対するファンの回転数の変化率は、作動油制御マップにおける作動油の温度変化に対するファンの回転数の変化率よりも、大きく設定される。
【0079】
ハイブリッド機器は、電子部品で構成されており、電子部品の温度変化は作動油の温度変化よりも急峻である。このため電子部品の安定した動作を保障するためにハイブリッド機器の温度変化に対するファンの回転数の変化率は、作動油の温度変化に対するファンの回転数の変化率よりも大きく設定されている。
【0080】
また、ハイブリッド機器に対応する各制御マップは、対応するハイブリッド機器の温度変化に対するファンの回転数の変化率が小さい第1領域と、第1領域の後に第1領域よりも変化率が大きい第2領域と、第2領域の後に第2領域よりも変化率が小さい第3領域と、第3領域の後に第3領域よりも変化率が大きい第4領域とを有する。
【0081】
図9においては、キャパシタ制御マップについて、第1〜第4の領域が一例として示されている。キャパシタ温度センサ122で検出された温度に従ってファン200の目標回転数を調整する。
【0082】
第1の領域は、温度T1となるまでファン200の目標回転数をF0に設定する。
第2の領域は、温度T1からT2に変化する場合にファン200の目標回転数をF0〜FAに設定する。
【0083】
第3の領域は、温度T2からT3に変化する場合にファン200の目標回転数をFA〜FBに設定する。
【0084】
第4の領域は、温度T3からT4に変化する場合にファン200の目標回転数をFB〜FCに設定する。
【0085】
本例においては、目標回転数がFAに設定されるまでに、温度変化に対して目標回転数の変化率が0の第1領域と、目標回転数の変化率が大きい第2領域とが設けられている。
【0086】
また、目標回転数がFCに設定されるまでに、温度変化に対して目標回転数の変化率が小さい第3領域と、目標回転数の変化率が大きい第4領域とが設けられている。
【0087】
このように、ファン200の回転数を調整する必要が生じるまで、温度変化に対して目標回転数の変化率が小さい領域を設けることにより不必要にファンの回転数を上昇させることを抑制できる。無駄なファン回転を減らすことで、エンジンの出力を効率良く利用することが可能になり、燃費の向上を図ることができる。
【0088】
作動油制御マップは、温度変化に対して線形にファンの回転数が上昇する構成である。一方、ハイブリッド機器に対応する制御マップは、温度変化に対して目標回転数の変化率が小さい領域から大きい領域へと移行する仕様であるため、ファン200の回転数を上げる必要が生じるまでファンの回転を抑えることができ、より効率的なファンの制御が可能となる。
【0089】
なお、本例においては、ハイブリッド機器の温度と、ファンの回転数との関係を規定する関係データとして制御マップの構成について説明したが、特に当該構成に限られず両者の関係が規定できるデータであればどのようなものでも良い。一例として両者の関係を規定するデータテーブルの形式の関係データであっても良いし、両者の関係を規定する数式の形式の関係データであっても良い。
【0090】
図10は、複数の制御マップを利用してファン200を制御する概念図である。
当該処理は、ファンコントローラ126における検出部126Aおよび調整部126Bにおける処理である。
【0091】
図10に示されるように、調整部126Bは、エンジン回転センサ129で検知されたエンジン回転数に従ってメモリ125に格納されているエンジン回転数制御マップを参照してファン回転数を設定する。エンジン回転数制御マップは、エンジン10の回転数に従ってファン駆動部210を介してファン200の回転数を設定するための制御マップである。
【0092】
調整部126Bは、インバータ温度センサ121で検出された温度に従ってメモリ125に格納されているインバータ(昇圧器IGBT)制御マップを参照してファンの回転数を設定する。
【0093】
調整部126Bは、キャパシタ温度センサ122で検出された温度に従ってメモリ125に格納されているキャパシタ制御マップを参照してファンの回転数を設定する。
【0094】
調整部126Bは、旋回電気モータ温度センサ123で検出された温度に従ってメモリ125に格納されている旋回電気モータ制御マップを参照してファンの回転数を設定する。
【0095】
調整部126Bは、インバータ温度センサ124で検出された温度に従ってメモリ125に格納されているインバータ(昇圧器インダクタ)制御マップを参照してファンの回転数を設定する。
【0096】
調整部126Bは、作動油温度センサ130で検出された温度に従ってメモリ125に格納されている作動油制御マップを参照してファンの回転数を設定する。
【0097】
上記したように調整部126Bは、複数の温度センサで検知された温度に従ってメモリ125に格納されている制御マップを参照してファン回転数を設定する。
【0098】
そして、調整部126Bは、制御マップを参照して設定されたファン回転数を参照して設定されたファン回転数のうちの最も高い回転数を選択する。
【0099】
本例においては、複数のハイブリッド機器の状態に基づいて冷却に必要な最も高いファン回転数を選択(高回転選択)する。
【0100】
また、上記したように冷却ユニットには、ハイブリッドラジエータ29とともに、オイルクーラ22も含まれるため調整部126Bは、複数のハイブリッド機器の状態に基づくファン回転数と、作動油の温度に従って作動油制御マップを参照して設定するファン回転数とを比較して最も高い回転数を選択(高回転選択)する。
【0101】
そして、調整部126Bは、エンジン回転数制御マップを参照して設定されたファン回転数と、上記の最も高いファン回転数のうちの低い方のファン回転数を選択(低回転選択)する。
【0102】
ファン200は、ファン駆動部210を介してエンジン10の出力軸と連結され、エンジン10の駆動力により回転する。したがって、エンジン回転数制御マップに従って設定されるファン回転数は、エンジンの駆動により回転可能な最大のファン回転数である。したがって、選択された最も高いファン回転数(高回転選択)が、エンジン回転数制御マップに従って設定されるファン回転数よりも大きい場合には、エンジン回転数制御マップに従って設定される最大のファン回転数に制限される。
【0103】
一方で、選択された最も高いファン回転数(高回転選択)が、エンジン回転数制御マップに従って設定されるファン回転数以下である場合には、選択された最も高いファン回転数(高回転選択)に設定される。過剰なファン回転数でファン200を回転させることなく効率的にファン200を回転させることが可能である。
【0104】
上記方式により、他の冷却対象物の状態も考慮して複数の制御マップに基づいてファンの回転数を適切に調整することが可能である。
【0105】
<その他>
なお、本例においては、作業車両として、油圧ショベルを例に挙げて説明したが、ブルドーザ、ホイールローダ等の作業車両にも適用可能である。
【0106】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
1 走行体、3 旋回体、4 作業機、5 ブーム、6 アーム、7 バケット、10 エンジン、11 発電機モータ、12 メインポンプ、17 ファンカバー、22 オイルクーラ、24 エンジンラジエータ、29 ハイブリッドラジエータ、95 車体フレーム、101 作業車両、121,124 インバータ温度センサ、122 キャパシタ温度センサ、123 旋回電気モータ温度センサ、125 メモリ、126 ファンコントローラ、126A 検出部、126B 調整部、127 エンジンコントローラ、129 エンジン回転センサ、130 作動油温度センサ、200 ファン、202 出力軸、210 ファン駆動部、214 ソレノイドコイル、215 ホール素子、216 ソレノイド可動子、220 調整部材、221 バネ、230 クラッチ部、240 ケース、300 冷却システム、302 旋回電気モータ、304 冷却水ポンプ、306 キャパシタ、308 インバータ。
【要約】
本発明のある局面に従う作業車両は、複数のハイブリッド機器と、冷媒回路と、ラジエータと、ファンと、可変機構と、複数のセンサと、ファン制御部とを備える。冷媒回路は、複数のハイブリッド機器に連通され、複数のハイブリッド機器を冷却するための冷媒をハイブリッド機器に循環させる。ラジエータは、冷媒回路と接続される。ファンは、ラジエータを冷却するための冷却風を生成する。可変機構は、ファンの回転数を変更可能である。複数のセンサは、複数のハイブリッド機器にそれぞれ対応して設けられ、各々が対応するハイブリッド機器の温度を検出する。ファン制御部は、複数のセンサによって検出されたハイブリッド機器の温度に基づいて、可変機構を制御してファンの回転数を制御する。
図1
図2
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