(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027248
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】ダンプトラック
(51)【国際特許分類】
B60P 1/04 20060101AFI20161107BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
B60P1/04 G
B60R16/02 640K
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-532604(P2015-532604)
(86)(22)【出願日】2013年8月20日
(86)【国際出願番号】JP2013072193
(87)【国際公開番号】WO2015025362
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2015年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澁江 佑介
【審査官】
林 政道
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/065415(WO,A1)
【文献】
特開2000−111394(JP,A)
【文献】
国際公開第97/008521(WO,A1)
【文献】
特開昭61−239730(JP,A)
【文献】
特許第5160468(JP,B2)
【文献】
特開2005−061984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/00− 1/64
G01G 19/00−19/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬対象物を積載する荷台と、この荷台を起伏可能に支持する車体と、前記荷台の積載重量を検出する重量検出装置と、この重量検出装置からの検知信号を入力として前記荷台の積載重量に関する処理を行う制御処理部と、前記荷台の積載重量を表示するモニタと、前記荷台の積載重量の履歴を記録する記録装置と、を備えたダンプトラックにおいて、
前記制御処理部は、前記ダンプトラックの積込作業中における前記重量検出装置からの検出信号に基づいて前記荷台の積載重量を前記モニタに表示し、前記ダンプトラックの積込作業が完了した状態であると判断した場合には、前記モニタに現在表示されている積載重量の値を確定させ、それ以降の前記積載重量の表示の更新を停止させるよう制御する一方、前記ダンプトラックの走行中に前記重量検出装置が検出した積載重量の計測値を内部に一時的に保持し、前記荷台に積載された運搬対象物が放土されたと判断したときに前記計測値を前記記録装置に出力して、前記記録装置に前記ダンプトラックの走行中の前記荷台の積載重量を記録させるようにしたことを特徴とするダンプトラック。
【請求項2】
請求項1において、
前記ダンプトラックは、走行速度を検出する速度検出器と、この速度検出器で検出された走行速度が所定速度以上を保持している時間を計測するタイマとをさらに備え、前記制御処理部は、前記荷台の積載重量が所定量以上であること、前記速度検出器から入力された走行速度が所定速度以上であること、及び前記タイマの計測時間が所定時間を経過していること、の各条件が成立したときに、前記積込作業の完了状態であると判断するようにしたことを特徴とするダンプトラック。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御処理部は、前記ダンプトラックが最も安定して走行していたときの前記計測値を前記記録装置に記録させることを特徴とするダンプトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラックに関し、特に、積載重量を計測する装置を備えたダンプトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラックの運搬作業は、最適な積載重量で行う必要があるため、積載重量を計測するための装置が搭載されている。しかし、走行状態や路面の凹凸、車体各部の摩擦の影響により積荷量の計測精度が変化してしまう。この対策として、積込完了時、走行中、放土前の特定の作業時に計測を行なう手法(特許文献1)や、走行状態や地面の状態の影響が少ないタイミングで計測を行なう手法(特許文献2)が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−227270号公報
【特許文献2】特開2005−043267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転者は積載重量が定格値を超えないようにするために、積込完了後できるたけ早く積載重量を知る必要がある。また、鉱山の管理者はコストの計算などを行なうために、出来るだけ正確な積載重量を知る必要がある。しかし、特許文献1の計測手法では、走行開始後に積込が追加された場合に値が更新されないため、計測精度が低下するという課題がある。また、特許文献2の計測手法では積荷走行中に値が変動してしまうため、運転者にとっては必ずしも使い勝手の良いものとは言えず、改良して欲しいとの要請もある。
【0005】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転者及び管理者のそれぞれの目的に適した積載重量の計算と表示を行うことのできるダンプトラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、運搬対象物を積載する荷台(3)と、この荷台を起伏可能に支持する車体(1)と、前記荷台(3)の積載重量を検出する重量検出装置(10)と、この重量検出装置(10)からの検知信号を入力として前記荷台(3)の積載重量に関する処理を行う制御処理部(11)と、前記荷台(3)の積載重量を表示するモニタ(19)と、
前記荷台(3)の積載重量の履歴を記録する記録装置(18)と、を備えたダンプトラックにおいて、前記制御処理部(11)は、前記ダンプトラックの積込作業中における前記重量検出装置(10)からの検出信号に基づいて前記荷台(3)の積載重量を前記モニタ(19)に表示し、前記ダンプトラックの積込作業が完了した状態であると判断した場合には、前記モニタ(19)に現在表示されている積載重量の値を確定させ
、それ以降の前記積載重量の表示の更新を停止させるよう制御する
一方、前記ダンプトラックの走行中に前記重量検出装置(10)が検出した積載重量の計測値を内部に一時的に保持し、前記荷台(3)に積載された運搬対象物が放土されたと判断したときに前記計測値を前記記録装置(18)に出力して、前記記録装置(18)に前記ダンプトラックの走行中の前記荷台(3)の積載重量を記録させるようにしたことを特徴とするダンプトラック。
【0007】
本発明によれば、積込が完了した後すぐに積載重量が確定し、その後はモニタに表示される積載重量が変化しないため、運転者にとって分かりやすい積載重量表示が行える。また、ダンプトラックが最大積載重量を超えた場合に走行を制限する機能を有するような場合は、積荷運搬中に当該制限が作動して運搬作業が滞ることを防ぐことができる。
【0008】
また、上記構成において、前記ダンプトラックは、走行速度を検出する速度検出器(8)と、この速度検出器(8)で検出された走行速度が所定速度以上を保持している時間を計測するタイマ(13)とをさらに備え、前記制御処理部(11)は、前記荷台(3)の積載重量が所定量以上であること、前記速度検出器(8)から入力された走行速度が所定速度以上であること、及び前記タイマ(13)の計測時間が所定時間を経過していること、の各条件が成立したときに、前記積込作業完了状態であると判断するようにしても良い。
【0009】
この発明によれば、積込完了状態を正確に判定することができるので、積載重量を精度良く確定することができる。
【0010】
また、上記構成において
、前記制御処理部(11)は、前記ダンプトラック
が最も安定して走行していたときの前記計測値を前記記録装置(18)に記録させる構成としても良い。
【0011】
この発明によれば、運転者を紛らわせることがなく、しかも、より高精度の積載重量を管理者に知らせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るダンプトラックは、上記した構成を備えているので、運転者及び管理者のそれぞれの目的に適した積載重量の計算と表示を行うことができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るダンプトラックの側面図である。
【
図2】
図1に示すダンプトラックの制御処理部の電気的構成を示すブロックである。
【
図3】
図2に示す制御処理部が行う積載重量の計測手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るダンプトラックを、図を用いて説明する。本実施形態に係るダンプトラックは、
図1に示すように、運転室2を有する車体1と、この車体1に起伏可能に支持され、積荷(運搬対象物)が積み込まれる荷台3と、この荷台3を一点鎖線で示すように上方向、下方向に回動させる荷台操作シリンダ4と、車体1の運転室2に近づく側である前側位置に配置され、車体1、荷台3、及び荷台3に積み込まれた積荷を含む重量物を支持する前側サスペンションシリンダ5aと、車体1の運転室2から離れる側である後側位置に配置され、車体1、荷台3、及び荷台3に積み込まれた積荷を含む重量物を支持する後側サスペンションシリンダ5bと、車体の走行速度を計測するために後輪軸に取り付けられた速度検出器8と、を備えている。
【0015】
積載重量を計測する制御処理部11は、
図2に示すように、演算を行うCPU12と、特定の条件が継続している時間を計測するタイマ13と、各種処理(プログラム)を保存するROM15と、変数値や荷重計測の結果である荷重データを保存するRAM16と、センサ入力や通信を行う入力インターフェース14と、CPU12の演算結果をモニタ表示装置19や記録装置19へ出力する出力インターフェース17と、を有する。
【0016】
4本のサスペンションシリンダ5a、5bに取り付けられた圧力センサ6a、6b、車体1の傾斜を検出する傾斜センサ7、及び速度検出器8は制御処理部11の入力インターフェース14と接続され、記録装置18及びモニタ表示装置19は制御処理部11の出力インターフェース17と接続されている。この構成により、各種センサからの検出信号やセンサデータは入力インターフェース14を介して制御処理部11に取り込まれ、各種演算等が行われた後に、出力インターフェース17を介して記録装置18及びモニタ表示装置19に出力される。そして、モニタ表示装置19に計測値が表示されたり、記録装置18に各種データが記録されたりする。
【0017】
なお、本実施形態では、圧力センサ6a、6b及び傾斜センサ7の検出信号に基づいて荷台3の積載重量を演算している。よって、この圧力センサ6a、6b及び傾斜センサ7とが本発明の「重量検出装置」に相当する。
【0018】
次に、制御処理部11の処理内容について
図3を用いて説明する。制御処理部11は、圧力センサ6a、6b及び傾斜センサ7で検出された値に基づいてCPU12で積載重量を演算して積載重量を計測する。制御処理部11は、計測された積載重量が閾値未満であれば空荷状態と判定し、閾値以上であれば積荷状態と判定する(ステップS1)。空荷状態と判定された場合(ステップS1でYes)において、計測された積載重量が変化して閾値以上になると、制御処理部11は積込開始と判定し(ステップS2でYes)、モニタ表示装置19に表示するための積載重量を計算し(ステップS3)、その計算結果に基づいて積載重量をモニタ表示装置19に表示する(ステップS4)。
【0019】
積込開始と判定された場合(ステップS2でYes)において、(a)積載重量が閾値以上であること、(b)走行速度が数km/h以上(例えば、0.5km/h)の状態であること、(c)走行速度が数km/h以上の状態が数秒以上経過していること、の3つの条件を満たす場合には、制御処理部11は積込完了と判定する(ステップS5)。なお、(a)〜(c)の条件を全て満たすということは、積込完了後のダンプトラックが発車直後の状態であるということと同じである。なお、積込途中で走行を開始した場合、積載重量が閾値以上になっていないため条件(a)を満たさないことになるが、この積込完了判定に走行の継続時間(条件(c))を含めることにより、条件(a)を満たさない場合であっても条件(c)を満たす場合には積載重量の表示を確定させることができる。
【0020】
積込完了と判定されると、制御処理部11は積載重量の表示の更新を停止する(ステップS6)。即ち、積載重量の表示が確定する。モニタ表示装置19に表示する積載重量は、積込作業によって積載された量を運転者が把握するためのものであるから、一旦積載重量の表示を確定させた後は、積荷を放土するまで更新しないようにしている。このステップS6によって、積荷走行中に走行状態や地面の状態の影響を受けて積載重量の表示が変化してしまうことを防ぎ、運転者にとって使いやすい積載重量の表示を実現できる。また、積載重量が最大積載重量を超えた場合に走行を制限する機能がダンプトラックに備えられている場合には、積荷運搬中に制限が作動して運搬作業が滞ってしまうことを防止できる。
【0021】
積込が完了し走行を開始すると、管理者用の積載重量計算が開始され、走行状態がより安定する度に計測した積載重量に基づいて管理者用の積載重量を更新して制御処理部11のRAM16にその計測値が保持される(ステップS7)。即ち、最も走行が安定しているときの計測値がRAM16に一時的に記憶されることになるため、最も精度の良い値を知ることができる。
【0022】
計測した積載重量が閾値以下になると放土と判定し(ステップS8でYes)、放土されたことを運転者に伝えるため表示用の積載重量を更新する(ステップS9)。制御処理部11は、RAM16に記憶されている積載重量の計測値データを管理者用の積載重量として出力し、記録装置18にその出力した計測値データを記録させる(ステップS10)。管理者は記録装置18の積載重量履歴を確認することで、精度の良い積載重量を知ることができる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態に係るダンプトラックによれば、積込完了と判定された時点でモニタ表示装置19に表示される積載重量が確定するため、積載重量の表示が分かり易くなり、使い勝手の良いものとなる。また、管理者に対しては放土する時点での積載重量が正確に記録装置18に記録されているから、積載重量の管理精度を高めることができる。
【0024】
なお、上記した実施形態例は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態例にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 車体
3 荷台
6a,6b 圧力センサ(重量検出装置)
7 傾斜センサ(重量検出装置)
8 速度検出器
10 重量検出装置
11 制御処理部
13 タイマ
18 記録装置
19 モニタ表示装置(モニタ)