(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオレフィン(PO)が、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)とは異なる異相ポリプロピレン組成物(HECO2)である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の組成物。
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の、前記異相ポリプロピレン組成物(HECO1)に加えて、ポリオレフィン(PO)と、任意で無機充填剤(F)とを有する組成物における使用であって、前記組成物からなる射出成形品のフローマークを減少させるための使用、但しポリオレフィン(PO)は、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではないものとする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)
本発明に必須の構成要素は、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)である。
【0013】
本発明の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、プロピレンホモポリマー(H−PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有し、
(a) 前記プロピレンホモポリマー(H−PP)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり;
(b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり;
(c) 異相ポリプロピレン組成物(
HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量は、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり;
さらに、
(d) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、
【数3】
式中、
Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分中のコモノマー含有量(重量%)、
IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である。
【0014】
あるいは、本発明は、プロピレンホモポリマー(H−PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有する異相ポリプロピレン組成物(HECO1)であって、
(a) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン不溶成分(XCI)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり;
(b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり;
(c) 異相ポリプロピレン組成物(
HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり;
さらに、
(d) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、
【数4】
式中、
Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分中のコモノマー含有量(重量%)、
IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である、
異相ポリプロピレン組成物(HECO1)を対象とする。
【0015】
以下、双方の実施形態を併せて説明する。
【0016】
異相プロピレンコポリマーという用語は、当該技術分野において知られているように解される。したがって、異相プロピレンは、ポリマーマトリクス、例えば(半)結晶ポリプロピレンを有し、その中に非晶性材料、例えば弾性プロピレンコポリマーが分散している。
【0017】
よって、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、プロピレンホモポリマー(H−PP)であるマトリクス(M)と、その中に分散する弾性プロピレンコポリマー(E)とを有する。よって、マトリクス(M)は、マトリクス(M)とは別に(細かく)分散した内包物を含み、当該内包物には、弾性プロピレンコポリマー(E)が含まれている。本発明における用語「内包物」とは、好ましくは、マトリクスと内包物が、異相プロピレンコポリマー(HECO1)中で異なる相を形成しており、当該内包物を、例えば電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などの高解像度顕微鏡により、又は動的機械的熱分析(DMTA)により観察できることを指す。具体的にDMTAでは、ガラス転移温度が少なくとも2つ存在することによって、多相構造の存在を確認することができる。
【0018】
上記のように、異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、プロピレンホモポリマー(H−PP)を有する。当該プロピレンホモポリマー(H−PP)は、異相プロピレンコポリマー(HECO1)のマトリクス(M)を構成する。
【0019】
プロピレンホモポリマー(H−PP)は、ほぼ低温キシレンに不溶であり、弾性プロピレンコポリマー(E)は、その大部分が低温キシレンに可溶であることから、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン不溶成分(XCI)の特性と、プロピレンホモポリマー(H−PP)のそれは、ほぼ同じである。
【0020】
したがって、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)及びプロピレンホモポリマー(H−PP)の低温キシレン不溶成分(XCI)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内、好ましくは90g/10分より大きく300g/10分まで、より好ましくは95g/10分より大きく290g/10分までの範囲内である。
【0021】
プロピレンホモポリマー(H−PP)は、その分子量画分について、モノモーダルであっても、バイモーダル等のマルチモーダルであってもよい。
【0022】
プロピレンホモポリマー(H−PP)は、その分子量について例えばバイモーダル等のマルチモーダルであった場合、第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP1)及び第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP2)である少なくとも2つの部分を有し、好ましくはこれら2つの部分のみからなる。好ましくは、これらの2つの部分は、メルトフローレートMFR
2(230℃)が異なる。したがって、第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP1)は、第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP2)と、メルトフローレートMFR
2(230℃)が少なくとも10g/10分異なることが好ましく、より好ましくは少なくとも20g/10分、いっそうより好ましくは10g/10分から50g/10分の範囲内、さらに好ましくは20g/10分から40g/10分の範囲内で異なる。好ましくは、第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP1)のメルトフローレートMFR
2(230℃)が、第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP2)のメルトフローレートMFR
2(230℃)よりも高い。
【0023】
本発明において用いられるプロピレンホモポリマーという表現は、実質的にプロピレン単位のみからなる、即ちプロピレン単位が99.5重量%を超え、いっそうより好ましくは少なくとも99.7重量%、例えば少なくとも99.8重量%であるポリプロピレンに関する。好ましい実施形態によれば、プロピレンホモポリマー中にプロピレン単位のみが検出可能である。
【0024】
異相プロピレンコポリマー(HECO1)の弾性プロピレンコポリマー(E)は、主に、異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の特性及び量に影響を及ぼす。したがって、一次近似では、弾性プロピレンコポリマー(E)の特性を、異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の特性と同一視することができる。しかしながら、好ましい実施形態によれば、弾性プロピレンコポリマー(E)の量が、異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)の含有量よりも多い。
【0025】
したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO1)の弾性コポリマー(E)の量は、好ましくは40.0重量%未満、より好ましくは38.0重量%未満、いっそうより好ましくは15.0重量%から40.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは17.0重量%から38.0重量%未満の範囲内である。
【0026】
一方、異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の量は、好ましくは35.0重量%未満、より好ましくは32.0重量%未満、いっそうより好ましくは11.0重量%から35.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは15.0重量%から32.0重量%の範囲内である。
【0027】
弾性プロピレンコポリマー(E)は、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えばエチレン及び/又はC
4〜C
12α−オレフィン、特にエチレン及び/又はC
4〜C
10α−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセン等のコモノマーを有する。好ましくは、弾性プロピレンコポリマー(E)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを有し、特に当該モノマーのみからなる。より好ましくは、弾性プロピレンコポリマー(E)は、(プロピレン以外に)エチレン及び/又は1−ブテン由来の単位を有する。よって、特に好ましい実施形態によれば、弾性プロピレンコポリマー相(E)は、エチレン及びプロピレン由来の単位のみを有し、即ちプロピレン−エチレンゴム(EPR)である。
【0028】
弾性プロピレンコポリマー(E)の、弾性プロピレンコポリマー(E)の全重量に対するコモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量は、好ましくは65.0重量%以下、より好ましくは40.0重量%以下、いっそうより好ましくは10.0重量%から65.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは12.0重量%より大きく40.0重量%までの範囲内、さらにいっそうより好ましくは15.0重量%より大きく39.0重量%までの範囲内である。
【0029】
一方、異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量は、60.0重量%以下であることが好ましく、いっそうより好ましくは45.0重量%以下、いっそうより好ましくは38.0重量%以下、さらにより好ましくは20.0重量%から60.0重量%の範囲内、さらにいっそうより好ましくは20.0重量%から45.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは20.0重量%から38.0重量%の範囲内である。
【0030】
加えて、異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の分子量が、特定の範囲内であることを要する。したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度(IV)が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であることが好ましく、より好ましくは4.4dl/gから11.5dl/gの範囲内、いっそうより好ましくは4.8dl/gから11.0dl/gの範囲内である。
【0031】
本発明に必須の側面は、異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分画分の固有粘度(IV)とコモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量とが互いに調整されていることである。したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、不等式(I)、好ましくは不等式(Ia)、より好ましくは不等式(Ib)、いっそうより好ましくは不等式(Ic)、さらにより好ましくは不等式(Id)、さらにいっそうより好ましくは不等式(Id)を満たすことを要し、
【数5】
式中、
Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、
IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である。
【0032】
上記の不等式からわかるように、コモノマー含有量及び固有粘度の値は、それぞれの単位、即ち[重量%]及び[dl/g]により除算されており、単位を持たない値として用いられる。
【0033】
また、弾性プロピレンコポリマー(E)は、幾分広い分子量分布を持つことが好ましい。よって、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、分子量分布(Mw/Mn)が幾分高いことを特徴とする。好ましくは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、分子量分布(Mw/Mn)が、少なくとも3.5、より好ましくは少なくとも3.8、いっそうより好ましくは少なくとも4.0である。一方、分子量分布(Mw/Mn)は、広すぎるべきではない。したがって、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の分子量分布(Mw/Mn)は、10.0未満であることが好ましく、より好ましくは8.0未満である。例えば、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の分子量分布(Mw/Mn)は、3.5から10.0、より好ましくは3.8から8.0、いっそうより好ましくは4.0から7.0である。
【0034】
好ましくは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が、3g/10分より大きく55g/10分までの範囲内、好ましくは3g/10分より大きく51g/10分までの範囲内である。
【0035】
上記のように、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、プロピレンホモポリマー(H−PP1)及び弾性プロピレンコポリマー(E)を有する。したがって、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のコモノマーは、好ましくは弾性プロピレンコポリマー(E)のそれと同じである。よって、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、(プロピレン以外に)エチレン及び/又はC
4〜C
12α−オレフィン等のコモノマー、特にエチレン及び/又はC
4〜C
10α−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセンを有する。好ましくは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを有し、特に当該モノマーからなる。より具体的には、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、(プロピレン以外に)エチレン及び/又は1−ブテン由来の単位を有する。よって、特に好ましい実施形態によれば、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、エチレン及びプロピレン由来の単位のみを有する。
【0036】
異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のコモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量は、好ましくは20.0重量%未満、より好ましくは16.0重量%以下、いっそうより好ましくは3.5重量%から16.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは4.0重量%より大きく14.5重量%までの範囲内である。
【0037】
本発明において定義される異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、添加剤を最大で5.0重量%含んでいてもよく、当該添加剤は、例えばα−核形成剤や酸化防止剤、また、スリップ剤やブロッキング防止剤である。好ましくは、添加剤含有量は、3.0重量%未満、例えば1.0重量%未満である。
【0038】
好ましくは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、α−核形成剤を有する。さらにより好ましくは、本発明はβ−核形成剤を含まない。したがって、α−核形成剤は、好ましくは以下からなる群から選択される:
(i) モノカルボン酸及びポリカルボン酸の塩、例えばナトリウムベンゾエート又はアルミニウムtert−ブチルベンゾエート、及び
(ii) ジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)及びメチルジベンジリデンソルビトール、エチルジベンジリデンソルビトール又はジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4 ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)等のC
1〜C
8アルキル置換ジベンジリデンソルビトール誘導体、又は1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール等の置換ノニトール誘導体、及び
(iii) リン酸ジエステルの塩、例えば、ナトリウム2,2’−メチレンビス(4,6,−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファート又はアルミニウム−ヒドロキシ−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファート]、及び
(iv) ビニルシクロアルカンポリマー及びビニルアルカンポリマー(詳細は後述)、及び
(v) これらの混合物。
【0039】
このような添加剤は、一般に市販されており、例えば「Plastic Additives Handbook」(第5版、2001年、Hans Zweifel)の871頁〜873頁に記載されている。
【0040】
好ましくは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、α−核形成剤を最大で5重量%含む。好ましい実施形態によれば、異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、α−核形成剤を200ppm以下、より好ましくは1ppmから200ppm、より好ましくは5ppmから100ppm含有しており、特に、当該α−核形成剤は、ジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)、ジベンジリデンソルビトール誘導体、好ましくはジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4 ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)、又は1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール等の置換ノニトール誘導体、ビニルシクロアルカンポリマー、ビニルアルカンポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、ビニルシクロヘキサン(VCH)等のビニルシクロアルカンポリマー及び/又はビニルアルカンポリマーを含有することが特に好ましい。具体的な実施形態の一つによれば、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、ビニルシクロヘキサン(VCH)等のビニルシクロアルカンポリマー及び/又はビニルアルカンポリマーを含有する。好ましくは、ビニルシクロアルカンはビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーであり、BNTテクノロジーにより異相ポリプロピレン組成物(HECO1)へと導入される。
【0042】
本発明の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、好ましくは特定の方法により得られる。したがって、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、好ましくは連続重合法により得られる。第1反応器(1
stR)及び任意の第2反応器(2
ndR)においてプロピレンホモポリマー(H−PP)が生成される一方、第3反応器(3
rdR)において異相プロピレンコポリマー(HECO1)の弾性プロピレンコポリマー(E)が得られる。
【0043】
用語「連続重合法」は、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、直列に接続された少なくとも2つ、好ましくは3つの反応器で製造されることを指す。したがって、本方法は、少なくとも第1反応器(1
stR)、任意の第2反応器(2
ndR)及び第3反応器(3
rdR)を有する。用語「重合反応器」は、主重合反応が起こることを指すものとする。よって、本プロセスが3つの重合反応器からなるとする場合、この定義は、プロセス全体に、例えばプレ重合反応器におけるプレ重合工程が含まれる可能性を除外するものではない。用語「からなる」は、主たる重合反応器について限定する表現にすぎない。
【0044】
上記のように、最初の(1
stR)又は最初の2つ(1
stR及び2
ndR)の反応器において、マトリクス(M)、即ちプロピレンホモポリマー(H−PP)が生成される。プロピレンホモポリマー(H−PP)の製造に2つの反応器を用いる場合、各反応器においてプロピレンホモポリマー部分(H−PP1)及び(H−PP2)が生成され、これらは上記のようにメルトフローレートが異なっていてもよい。好ましくは、第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP1)が第1反応器(1
stR)にて生成され、第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP2)が第2反応器(2
ndR)にて生成される。
【0045】
好ましくは、第1プロピレンホモポリマー部分(H−PP1)と第2プロピレンホモポリマー部分(H−PP2)の重量比が、20/80から80/20、より好ましくは30/70から70/30、さらにより好ましくは40/60から60/40である。
【0046】
第1反応器(1
stR)又は任意の第2反応器(2
ndR)の後、異相プロピレンコポリマー(HECO1)のマトリクス(M)、即ちプロピレンホモポリマー(H−PP)が得られる。続いて、マトリクス(M)は、第3反応器(3
rdR)へと送られ、そこで弾性プロピレンコポリマー(E)が生成されることで、本発明の異相プロピレンコポリマー(HECO1)が得られる。
【0047】
好ましくは、マトリクス(M)、即ちプロピレンホモポリマー(H−PP)と弾性プロピレンコポリマー(E)の重量比[(M)/(E)]は、85/15から60/40、より好ましくは83/17以上62/38未満である。
【0048】
第1反応器(1
stR)は、好ましくはスラリー反応器(SR)であり、バルク又はスラリーにて運転される、いかなる連続式又は単純バッチ式の撹拌槽反応器又はループ反応器であってもよい。バルクとは、少なくともモノマーを60%(w/w)有する反応媒中での重合を意味する。本発明によれば、スラリー反応器(SR)は、好ましくは(バルク)ループ反応器(LR)である。
【0049】
第2反応器(2
ndR)及び第3反応器(3
rdR)は、好ましくはガス相反応器(GPR)である。このようなガス相反応器(GPR)は、いかなる機械混合式又は流動床式反応器であってもよい。好ましくは、ガス相反応器(GPR)は、ガス速度が少なくとも0.2m/秒の機械的に撹拌された流動床式反応器を有する。よって、ガス相反応器は、好ましくは機械式撹拌機を備えた、流動床式の反応器であることが好ましい。
【0050】
よって、好ましい実施形態によれば、第1反応器(1
stR)はスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)である一方、第2反応器(2
ndR)及び第3反応器(3
rdR)は、ガス相反応器(GPR)である。したがって、本方法には、直列に接続された少なくとも2つ、好ましくは2つ又は3つの重合反応器、即ちループ反応器(LR)等のスラリー反応器(SR)、第1ガス相反応器(GPR−1)及び任意の第2ガス相反応器(GPR−2)が用いられる。必要に応じて、スラリー反応器(SR)の前にプレ重合反応器が備えられる。
【0051】
好ましい多段法は、Borealis A/S(デンマーク)により開発された方法(Borstar(登録商標)テクノロジーとして知られる)などの「ループ−ガス相」法であり、例えばEP0887379、WO92/12182、WO2004/000899、WO2004/111095、WO99/24478、WO99/24479及びWO00/68315等の特許文献に記載されている。
【0052】
さらなる好適なスラリーガス相法は、BasellのSpheripol(登録商標)法である。
【0053】
好ましくは、上記に定義される本発明のプロピレンコポリマー、即ち異相プロピレンコポリマー(HECO1)の製造方法において、第1反応器(1
stR)、即ちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)の条件は、以下のとおりであってよい:
− 温度は、40℃から110℃の範囲内、好ましくは60℃から100℃の間、例えば68℃から95℃であり、
− 圧力は、20barから80barの範囲内、好ましくは40barから70barの間であり、
− モル質量を制御するために、周知の方法にて水素を添加することができる。
【0054】
次いで、第1反応器(1
stR)からの反応混合物を、第2反応器(2
ndR)、即ちガス相反応器(GPR−1)へと送る。条件は、好ましくは以下のとおりである:
− 温度は、50℃から130℃の範囲内、好ましくは60℃から100℃の間、であり、
− 圧力は、5barから50barの範囲内、好ましくは15barから35barの間であり、
− モル質量を制御するために、周知の方法にて水素を添加することができる。
【0055】
第3反応器(3
rdR)、好ましくは第2ガス相反応器(GPR−2)における条件は、第2反応器(2
ndR)と同様である。
【0056】
滞留時間は、これら3つの反応ゾーンによって様々である。
【0057】
プロピレンコポリマー、即ち異相プロピレンコポリマー(HECO1)の製造方法の実施形態の一つによれば、第1反応器(1
stR)、即ちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)での滞留時間は、0.2時間から4時間、例えば0.3時間から1.5時間の範囲内であり、ガス相反応器での滞留時間は、通常0.2時間から6.0時間、例えば0.5時間から4.0時間になるであろう。
【0058】
所望に応じて、重合は、第1反応器(1
stR)、即ちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)において、及び/又はガス相反応器(GPR)の凝縮モードとして、公知の方法により超臨界状態で行ってもよい。
【0059】
好ましくは、本方法は、チーグラー−ナッタプロ触媒、外部ドナー及び任意の助触媒を有する触媒系(詳細は後述)を用いたプレ重合も有する。
【0060】
好ましい実施形態によれば、プレ重合は液体プロピレン中におけるバルクスラリー重合として行われる。即ち、液相は、主にプロピレンと、そこに溶解した少量の他の反応物及び任意の不活性成分とを有する。
【0061】
プレ重合反応は、通常0℃から50℃、好ましくは10℃から45℃、より好ましくは15℃から40℃の温度にて行われる。
【0062】
プレ重合反応器内の圧力は、重要ではないが、反応混合物を液相に維持するのに十分な高さでなければならない。よって、圧力は、20barから100bar、例えば30barから70barであってよい。
【0063】
触媒の各成分は、好ましくはすべてプレ重合工程に導入される。しかし、固体触媒成分(i)と助触媒(ii)を別個に供給できる場合は、助触媒の一部のみをプレ重合段階に導入し、残りの部分を続く重合段階に導入することも可能である。この場合でも、プレ重合段階には、そこで十分な重合反応が起こる量の助触媒を導入する必要がある。
【0064】
プレ重合段階に、他の成分を添加することも可能である。よって、公知であるように、プレ重合段階に水素を添加して、プレポリマーの分子量を制御してもよい。また、帯電防止添加剤を用いて、粒子同士又は粒子が反応器の壁に付着するのを防止してもよい。
【0065】
プレ重合の条件及び反応パラメータの正確な制御は、当業者の技能の範疇である。
【0066】
本発明によれば、プロピレンコポリマー、即ち異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、上記のように、チーグラー−ナッタ触媒と任意の外部ドナーとを有する触媒系、好ましくは成分(i)としてチーグラー−ナッタプロ触媒と、任意の成分(ii)として有機金属助触媒と、成分(iii)として式(IIIa)又は式(IIIb)、好ましくは式(IIIa)により表される外部ドナーとの3成分を有する触媒系の存在下、連続重合法により得られる。
【0067】
以下、使用する触媒についてより詳細に定義する。
【0068】
好ましくは、成分(i)は、低級アルコールとフタル酸エステルのエステル交換反応生成物を含むチーグラー−ナッタプロ触媒である。
【0069】
本発明において使用されるプロ触媒は、
(a) MgCl
2とC
1〜C
2アルコールのスプレー結晶化又はエマルジョン固化付加物をTiCl
4と反応させ、
(b) 工程a)の生成物を、前記C
1〜C
2アルコールと式(I)のフタル酸ジアルキルのエステル交換が起こって内部ドナーが形成されるような条件下で、式(I)のフタル酸ジアルキルと反応させ、
【化1】
(式中、R
1’及びR
2’は、独立に少なくともC
5アルキルである。)
c) 工程b)の生成物を洗浄するか、又は
d) 任意で工程c)の生成物をさらなるTiCl
4と反応させる
ことにより製造される。
【0070】
プロ触媒は、例えば特許出願WO87/07620、WO92/19653、WO92/19658及びEP0491566に定められるようにして製造する。これらの文書の記載内容は、ここに本明細書の一部を構成するものとして援用される。
【0071】
まず、式MgCl
2*nROH(式中、Rはメチル又はエチルであり、nは1〜6である。)で表されるMgCl
2とC
1〜C
2アルコールの付加物を形成する。アルコールとしては、好ましくはエタノールが用いられる。
【0072】
当該付加物(まず溶融し、次いでスプレー結晶化又はエマルジョン固化したもの)を、触媒担体して用いる。
【0073】
次の工程では、式MgCl
2*nROH(式中、Rはメチル又はエチル、好ましくはエチルであり、nは1〜6である。)のスプレー結晶化又はエマルジョン固化した付加物を、TiCl
4と接触させてチタン化担体を形成し、その後、
− 前記チタン化担体に、
(i) R
1’及びR
2’が、独立に少なくともC
5アルキル、例えば少なくともC
8アルキルである式(I)のフタル酸ジアルキル、
又は好ましくは
(ii) R
1’及びR
2’が、同一の少なくともC
5アルキル、例えば少なくともC
8アルキルである式(I)のフタル酸ジアルキル、
又はより好ましくは
(iii) フタル酸プロピルヘキシル(PrHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)及びフタル酸ジトリデシル(DTDP)からなる群より選択される式(I)のフタル酸ジアルキル、さらにより好ましくは、フタル酸ジオクチル(DOP)、例えばフタル酸ジイソオクチル又はフタル酸ジエチルヘキシル、特にフタル酸ジエチルヘキシルである式(I)のフタル酸ジアルキル、
を添加して第1生成物を形成する工程と、
− 前記第1生成物を、好適なエステル交換反応条件、即ち100℃を超える温度、好ましくは100℃から150℃、より好ましくは130℃から150℃の間の温度に供して、前記メタノール又はエタノールを、式(I)の前記フタル酸ジアルキルのエステル基とエステル交換反応させて、内部ドナーである式(II)のフタル酸ジアルキルを好ましくは少なくとも80モル%、より好ましくは90モル%、最も好ましくは95モル%形成する工程と、
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、メチル又はエチル、好ましくはエチルである。)
− 前記エステル交換反応物を、プロ触媒組成物(成分(i))として回収する工程を行う。
【0074】
好ましい実施形態によれば、式MgCl
2*nROH(式中、Rはメチル又はエチルであり、nは1から6である。)の付加物は、例えばWO87/07620に記載されるように、これを溶融し、次いで溶融物を、好ましくは冷却された溶媒又は冷却されたガス中にガスによって注入することで、形態的に有利な形状に結晶化される。
【0075】
この結晶化した付加物は、好ましくは触媒担体として用いられ、WO92/19658及びWO92/19653に記載されるように、本発明に有用なプロ触媒へと反応する。
【0076】
触媒残渣を抽出により除去すると、エステルのアルコール由来の基が変換された、チタン化された担体と内部ドナーの付加物が得られる。
【0077】
チタンは、十分な量が担体上に残されていれば、プロ触媒の活性元素として作用する。
【0078】
そうでなければ、十分なチタン濃度及びそれによる活性を得るために、上記の処理の後にチタン化を繰返す。
【0079】
好ましくは、本発明に用いられるプロ触媒は、チタンを最大で2.5重量%、好ましくは最大で2.2重量%、より好ましくは最大で2.0重量%含む。また、そのドナー含有量は、好ましくは4重量%から12重量%の間、より好ましくは6重量%から10重量%の間である。
【0080】
より好ましくは、本発明に用いられるプロ触媒は、アルコールとしてエタノールを用い、また、式(I)のフタル酸ジアルキルとしてフタル酸ジオクチル(DOP)を用いて、内部ドナー化合物としてフタル酸ジエチル(DEP)を得ることにより生成されたものである。
【0081】
いっそうより好ましくは、本発明に用いられる触媒は、実施例に記載される触媒;特に式(I)のフタル酸ジアルキルとしてフタル酸ジオクチルを用いた触媒である。
【0082】
本発明に係る異相プロピレンコポリマー(HECO)の製造に用いられる触媒系は、特別なチーグラーナッタプロ触媒に加えて、好ましくは成分(ii)として有機金属助触媒を有する。
【0083】
したがって、助触媒は、トリエチルアルミニウム(TEA)等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロリド及びアルキルアルミニウムセスキクロリドからなる群から選択されることが好ましい。
【0084】
触媒系に用いる成分(iii)は、式(IIIa)又は(IIIb)により表される外部ドナーである。式(IIIa)は以下のように定義される。
Si(OCH
3)
2R
25 (IIIa)
式中、R
5は炭素原子数3〜12の分岐アルキル基、好ましくは炭素原子数3〜6の分岐アルキル基、又は炭素原子数4〜12のシクロアルキル、好ましくは炭素原子数5〜8のシクロアルキルを表す。
【0085】
R
5は、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、tert.−ブチル、tert.−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロヘプチルからなる群から選択されることが特に好ましい。
【0086】
式(IIIb)は、以下のように定義される。
Si(OCH
2CH
3)
3(NR
xR
y) (IIIb)
式中、R
x及びR
yは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。
【0087】
R
x及びR
yは、炭素原子数1〜12の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素原子数1〜12の分岐状脂肪族炭化水素基及び炭素原子数1〜12の環状脂肪族炭化水素基からなる群から独立に選択される。R
x及びR
yは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、オクチル、デカニル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、tert.−ブチル、tert.−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロヘプチルからなる群から独立に選択されることが特に好ましい。
【0088】
より好ましくは、R
x及びR
yは同一であり、さらにより好ましくは、R
x及びR
yはどちらもエチル基である。
【0089】
より好ましくは、式(IIIb)の外部ドナーは、ジエチルアミノトリエトシキシラン[Si(OCH
2CH
3)
3(N(CH
2CH
3)
2)]である。
【0090】
より好ましくは、外部ドナーは、ジエチルアミノトリエトキシシラン[Si(OCH
2CH
3)
3(N(CH
2CH
3)
2]、ジエチルアミノトリエトキシシラン[Si(OCH
2CH
3)
3(N(CH
2CH
3)
2)]、ジシクロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH
3)
2(シクロペンチル)
2]、ジイソプロピルジメトキシシラン[Si(OCH
3)
2(CH(CH
3)
2)
2]及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0091】
最も好ましくは、外部ドナーは、ジエチルアミノトリエトキシシラン[Si(OCH
2CH
3)
3(N(CH
2CH
3)
2]又はジシクロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH
3)
2(シクロペンチル)
2]である。
【0092】
所望に応じて、チーグラーナッタプロ触媒は、特別なチーグラーナッタプロ触媒(成分(i))、外部ドナー(成分(iii))及び任意の助触媒(成分(ii))を有する触媒系の存在下、ビニル化合物を重合することにより改質される。ここで、当該ビニル化合物は、以下の式により表される:
CH
2=CH−CHR
3R
4
式中、R
3及びR
4は、一緒に5又は6員の飽和、不飽和又は芳香族性の環を形成するか、又は独立に1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表す。このようにして改質された触媒は、本発明に係る異相プロピレンコポリマー(HECO1)の製造に用いられる(BNTテクノロジー)。
【0093】
上記の添加剤は、好ましくは押出しにより異相プロピレンコポリマー(HECO1)に添加される。混合/押出しには、従来の調合又はブレンド装置、例えばバンバリーミキサー、2ロールラバーミル、ブスコニーダー又は2軸押出機を用いることができる。通常、押出機からはペレット状のポリマー材料が回収される。
【0094】
組成物
本発明に係る異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、特に射出成形品、例えば自動車産業における射出成形品の製造に用いられる組成物に添加される成分として特に用いられる。よって、本発明は、異相プロピレンコポリマー(HECO1)を組成物に対して5重量%から30重量%有し、100重量%に至る残り部分が他のポリオレフィン及び添加剤で構成される組成物をも対象とする。
【0095】
よって、本発明は、ポリオレフィン(PO)と、本発明の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)、特に請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の異相プロピレンコポリマー(HECO1)と、任意の無機充填剤(F)とを有する組成物であって、ポリオレフィン(PO)と異相プロピレンコポリマー(HECO1)の重量比[PO/HECO1]が、2/1から8/1の範囲内、好ましくは3/1から7/1の範囲内、より好ましくは4/1から6.5/1の範囲内である組成物を特に対象とする。
【0096】
好ましくは、前記組成物は、ポリオレフィン(PO)、異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)及び無機充填剤(F)を合わせた全重量に対して、好ましくは全組成物に対して、
(a) ポリオレフィン(PO)を50重量%から90重量%、より好ましくは60重量%から85重量%、いっそうより好ましくは70重量%から80重量%と、
(b) 異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)を5重量%から30重量%、より好ましくは8重量%から25重量%、いっそうより好ましくは12重量%から20重量%と、
(c) 無機充填剤(F)を5重量%から30重量%、より好ましくは8重量%から25重量%、いっそうより好ましくは12重量%から20重量%と、
を有する。
【0097】
ポリオレフィン(PO)は、本発明に係る異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)とは異なる。したがって、ポリオレフィン(PO)は、本明細書に定義される異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)とはされない。ポリオレフィン(PO)は、好ましくはポリエチレン又はポリプロピレンである。さらにより好ましくは、ポリオレフィン(PO)は、ポリプロピレンであり、即ちプロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、異相プロピレンコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、ポリオレフィンは、異相ポリプロピレン組成物(HECO2)、即ち本発明に定義される異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)とは異なる異相ポリプロピレンコポリマーである。
【0098】
異相プロピレンコポリマーという用語は、当該技術分野において知られるように、また上記に定義されるように解される。したがって、異相プロピレンコポリマーは、ポリマーマトリクス、例えば(半)結晶性ポリプロピレンを有し、そこに非晶性材料、例えば弾性プロピレンコポリマーが、好ましくは内包物として分散している。また、用語「プロピレンコポリマー」は、異相系とはされない。換言すれば、本発明におけるプロピレンコポリマーは、単相性、即ち、例えば電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などの高解像度顕微鏡により、又は動的機械的熱分析(DMTA)により区別できるような2つ以上の相を含まない。
【0099】
上記のように、ポリオレフィン(PO)は、好ましくは異相プロピレンコポリマー(HECO2)である。本発明に係る異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、好ましくはISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が、3.0g/10分から120g/10分の範囲内、より好ましくは10.0g/10分から100g/10分の範囲内である。
【0100】
本発明に係る異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、好ましくは、
(a) ポリプロピレンマトリクス(M−PP2)と、
(b) 弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)であって、
− プロピレン並びに
− エチレン及び/又はC
4〜C
12α−オレフィン
由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)と、
を有する。
【0101】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、より好ましくは異相プロピレンコポリマー(HECO2)のポリマー成分の量に対して、さらにより好ましくはポリプロピレンマトリクス(M−PP2)及び弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)を合わせた量に対して70.0重量%から92.0重量%、より好ましくは75.0重量%から90.0重量%である。残る部分は、コモノマー、好ましくはエチレンにより構成される。
【0102】
本明細書に定義されるように、異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、ポリマー成分として、ポリプロピレンマトリクス(M−PP2)及び弾性コポリマー(E−PP2)のみを有する。換言すれば、異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、さらに添加剤を含有しうるが、他のポリマーを、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、より好ましくは異相プロピレンコポリマー(HECO2)中に存在するポリマーに対して5重量%より多く、より好ましくは3重量%より多く、例えば1重量%より多く含有しない。このような低量で存在しうる付加的なポリマーの一つが、異相プロピレンコポリマー(HECO2)の製造により得られる反応生成物であるポリエチレンである。したがって、本発明に定義される異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、ポリプロピレンマトリクス(M−PP2)と、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)と、この段落に記載される量の任意のポリエチレンのみを含有することが特に好ましい。また、本発明を通して、低温キシレン不溶成分(XCI)画分は、異相プロピレンコポリマー(HECO2)のポリプロピレンマトリクス(M−PP2)及び任意のポリエチレンを表し、低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、異相プロピレンコポリマー(HECO2)の弾性部分、即ち弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)を表す。
【0103】
したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のポリプロピレンマトリクス(M−PP2)含有量、即ち低温キシレン不溶成分(XCI)含有量は、好ましくは50.0重量%から80.0重量%の範囲内、より好ましくは55.0重量%から78.0重量%の範囲内である。異相プロピレンコポリマー(HECO2)中にポリエチレンが存在する場合、(低温キシレン不溶成分(XCI)含有量では無く)ポリプロピレンマトリクス(M−PP1)量の値は、若干減少しうる。
【0104】
一方、異相プロピレンコポリマー(HECO2)中の弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)含有量、即ち低温キシレン可溶成分(XCS)含有量は、好ましくは20.0重量%から50.0重量%の範囲内、より好ましくは22.0重量%から45.0重量%の範囲内である。
【0105】
ポリプロピレンマトリクス(M−PP2)は、好ましくはランダムプロピレンコポリマー(R−PP2)又はプロピレンホモポリマー(H−PP2)であり、後者が特に好ましい。
【0106】
したがって、ポリプロピレンマトリクス(M−PP2)のコモノマー含有量は、1.0重量%又はそれ未満、さらにより好ましくは0.8重量%以下、いっそうより好ましくは0.5重量%以下、例えば0.2重量%以下である。
【0107】
上記のように、ポリプロピレンマトリクス(M−PP2)は、好ましくはプロピレンホモポリマー(H−PP2)である。
【0108】
ポリプロピレンマトリクス(M−PP2)がランダムプロピレンコポリマー(R−PP2)であった場合、当該ランダムプロピレンコポリマー(R−PP2)は、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えばエチレン及び/又はC
4〜C
12α−オレフィン、特にエチレン及び/又はC
4〜C
8α−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセン等のコモノマーを有することが好ましい。好ましくは、本発明に係るランダムプロピレンコポリマー(R−PP2)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを有し、特に当該モノマーからなる。より好ましくは、本発明のランダムプロピレンコポリマー(R−PP2)は、(プロピレン以外に)エチレン及び/又は1−ブテン由来の単位を有する。好ましい実施形態によれば、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP2)は、エチレン及びプロピレン由来の単位のみを有する。
【0109】
加えて、ランダムプロピレンコポリマー(R−PP2)は、好ましくはコモノマー含有量が、0.3重量%より多く1.0重量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.3重量%より大きく0.8重量%までの範囲内、さらにより好ましくは0.3重量%より大きく0.7重量%までの範囲内である。
【0110】
用語「ランダム」は、ランダムポリプロピレンコポリマー(R−PP2)のコモノマーが、当該プロピレンコポリマー中にランダムに分散していることを指す。ランダムという用語は、IUPAC(ポリマー科学の基礎用語集、IUPAC recommendations、1996)に準じて解される。
【0111】
異相プロピレンコポリマー(HECO2)のポリプロピレンマトリクス(M−PP2)、好ましくはプロピレンホモポリマー(H−PP2)であるポリプロピレンマトリクス(M−PP2)は、分子量に関してマルチモーダル又はバイモーダルであってよい。
【0112】
本発明を通じて用いられる表現「マルチモーダル」又は「バイモーダル」とは、ポリマーのモダリティ、即ち:
− 分子量分布曲線、つまり分子量の関数としての分子量画分のグラフの形状
及び/又は
− コモノマー含有量曲線、つまりポリマー画分の分子量の関数としてのコモノマー含有量のグラフの形状
を言う。
【0113】
後述するが、異相プロピレンコポリマーや、その各成分(マトリクス及び弾性コポリマー)は、異なる種類のポリマー、即ち分子量及び/又はコモノマー含有量が異なるポリマーを混合することにより製造することができる。しかしながら、異相プロピレンコポリマーや、その各成分(マトリクス及び弾性コポリマー)は、直列に構成され、異なる反応条件で運転される反応器を用いた連続工程プロセスにおいて製造されることが好ましい。結果として、それぞれの反応器で製造された各画分は、固有の分子量分布及び/又はコモノマー含有量分布を持つこととなる。
【0114】
また、異相プロピレンコポリマー(HECO2)のポリプロピレンマトリクス(M−PP2)は、メルトフローレートMFR
2(230℃)が中程度であることが好ましい。上記のように、異相プロピレンコポリマー(HECO2)の低温キシレン不溶成分(XCI)画分は、基本的に当該異相プロピレンコポリマー(HECO2)のマトリクスと同一である。したがって、ポリプロピレンマトリクス(M−PP2)のメルトフローレートMFR
2(230℃)は、異相プロピレンコポリマー(HECO2)の低温キシレン不溶成分(XCI)画分のメルトフローレートMFR
2(230℃)と等しい。したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO2)の低温キシレン不溶成分(XCI)画分は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR
2(230℃)が、10.0g/10分から150g/10分であることが好ましく、より好ましくは15.0g/10分から100g/10分、さらにより好ましくは50.0g/10分から80.0g/10分である。
【0115】
異相プロピレンコポリマー(HECO2)の第2の成分は、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)である。
【0116】
弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)は、(i)プロピレン、並びに(ii)エチレン及び/又は少なくとも1種の他のC
4〜C
12α−オレフィン、例えばC
4〜C
10α−オレフィン由来の単位を有し、好ましくは当該単位からなり、より好ましくは、(i)プロピレン、並びに(ii)エチレン及び1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン及び1−オクテンからなる群から選択される少なくとも1種の他のα−オレフィン由来の単位を有し、好ましくは当該単位からなる。弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)は、ブタジエン等の共役ジエン又は非共役ジエン由来の単位を追加的に含有してもよいが、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)は、(i)プロピレン、並びに(ii)エチレン及び/又はC
4〜C
12α−オレフィン由来の単位のみからなることが好ましい。非共役ジエンが用いられる場合、好適なものとしては、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン等の直鎖状又は分岐鎖状の非環状ジエンや、ジヒドロミルセン及びジヒドロ−オシメンの異性体混合物や、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,5−シクロドデカジエン、4−ビニルシクロヘキセン、1−アリル−4−イソプロピルジエンシクロヘキサン、3−アリルシクロペンテン、4−シクロヘキセン及び1−イソプロペニル−4−(4−ブテニル)シクロヘキサン等の単環脂環式ジエンが挙げられる。多環脂環式の縮合及び架橋環状ジエンもまた好適であり、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ(2,2,1)ヘプタ−2,5−ジエン、2−メチルビシクロヘプタジエン並びに、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデンノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン及び5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン等のアルケニル、アルキルジエン、シクロアルケニル及びシクロアルキリデンノルボルネンが挙げられる。好ましい非共役ジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン及びジシクロペンタジエンである。
【0117】
したがって、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)は、少なくともプロピレン及びエチレン由来の単位を有し、さらに、前段落に定義されるα−オレフィン由来の他の単位を有していてもよい。しかしながら、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)は、プロピレン及びエチレン並びに任意でブタジエン等の共役ジエン又は1,4−ヘキサジエン等の前段落に定義される非共役ジエン由来の単位のみを有することが特に好ましい。よって、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)としては、エチレン−プロピレン−非共役ジエンモノマーのポリマー(EPDM2)及び/又はエチレン−プロピレンゴム(EPR2)が特に好ましく、後者が最も好ましい。
【0118】
ポリプロピレンマトリクス(M−PP2)と同様に、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)は、ユニモーダルであってもバイモーダル等のマルチモーダルであってもよく、後者が好ましい。ユニモーダル及びバイモーダル等のマルチモーダルの定義については、上記の定義が参照される。
【0119】
ポリプロピレンマトリクス(M−PP2)と同様に、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)は、ユニモーダルであってもバイモーダル等のマルチモーダルであってもよく、後者が好ましい。ユニモーダル及びバイモーダル等のマルチモーダルの定義については、上記の定義が参照される。
【0120】
本発明において、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)中のプロピレン由来の単位の含有量は、低温キシレン可溶成分(XCS)画分中の検出可能なプロピレンの含有量に等しい。したがって、低温キシレン可溶成分(XCS)画分中の検出可能なプロピレンは、40.0重量%から75.0重量%の範囲内、より好ましくは45.0重量%から70.0重量%の範囲内である。よって、具体的な実施形態によれば、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)、即ち低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、エチレン等のプロピレン以外のコモノマー由来の単位を25.0重量%から60.0重量%、より好ましくは30.0重量%から55.0重量%有する。好ましくは、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)は、プロピレン及び/又はエチレン含有量がこの段落に定義される量の、エチレン−プロピレン−非共役ジエンモノマーのポリマー(EPDM2)又はエチレン−プロピレンゴム(EPR2)であり、後者が特に好ましい。
【0121】
本発明のさらなる好ましい要件は、異相プロピレンコポリマー(HECO2)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(IV)が、幾分高いことである。固有粘度(IV)が幾分高いことにより、衝撃強度が改善される。したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO−1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度は、2.0dl/gより大きいことが好ましく、より好ましくは少なくとも2.2dl/gである。一方、固有粘度(IV)は、流動性が低下するので、高すぎないべきである。よって、異相プロピレンコポリマー(HECO2)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度は、好ましくは2.0dl/gから4.0dl/gの範囲内、より好ましくは2.2dl/gから3.5dl/g、例えば2.3dl/gから3.3dl/g未満の範囲内である。
【0122】
異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、好ましくは異相プロピレンコポリマー(HECO1)の不等式(1)を満たさない。したがって、異相ポリプロピレン組成物(HECO2)は、好ましくは不等式(II)、より好ましくは不等式(IIa)、さらにより好ましくは不等式(IIb)、いっそうより好ましくは不等式(IIb)、さらにいっそうより好ましくは不等式(IIc)を満たし、
【数6】
式中、
Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO2)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、
IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO2)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である。
【0123】
上記の不等式からわかるように、コモノマー含有量及び固有粘度の値は、それぞれの単位、即ち[重量%]及び[dl/g]により除算されており、単位を持たない値として用いられる。
【0124】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、α−核形成されている。より好ましくは、本発明は、β−核形成剤を含まない。異相プロピレンコポリマー(HECO2)に関し、好ましいα−核形成剤については、上記に記載の情報が参照される。
【0125】
したがって、異相ポリプロピレン組成物(HECO2)は、好ましくは最大で5重量%のα−核形成剤を含有する。好ましい実施形態によれば、異相ポリプロピレン組成物(HECO2)は、α−核形成剤を200ppm以下、より好ましくは1ppmから200ppm、より好ましくは5ppmから100ppm含有し、特に当該α−核形成剤は、ジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)、ジベンジリデンソルビトール誘導体、好ましくはジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば、1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)、又は1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール等の置換ノニトール誘導体、ビニルシクロアルカンポリマー、ビニルアルカンポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0126】
異相ポリプロピレン組成物(HECO2)は、ビニルシクロヘキサン(VCH)等のビニルシクロアルカンポリマー及び/又はビニルアルカンポリマーを含有することが特に好ましい。具体的な実施形態の一つによれば、異相ポリプロピレン組成物(HECO2)は、ビニルシクロヘキサン(VCH)等のビニルシクロアルカンポリマー及び/又はビニルアルカンポリマーを含有する。好ましくは、ビニルシクロアルカンは、ビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーであり、BNTテクノロジーにより異相ポリプロピレン組成物(HECO2)に導入される。
【0127】
異相ポリプロピレン組成物(HECO2)の製造については、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の製造についての詳細な説明が参照される。
【0128】
ポリマー成分に加えて、組成物は、任意で、好ましくは上記に示す量の無機充填剤(F)を有する。好ましくは、無機充填剤(F)は、フィロ珪酸塩、雲母又は硅灰石である。より好ましくは、無機充填剤(F)は、雲母、硅灰石、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト及びタルクからなる群から選択される。最も好ましい無機充填剤(F)は、タルクである。
【0129】
無機充填剤(F)は、好ましくはカットオフ粒子サイズd95[質量パーセント]が、20μm又はそれ未満、より好ましくは2.5μmから10μmの範囲内、例えば2.5μmから8.0μmの範囲内である。
【0130】
通常、無機充填剤(F)は、N
2ガスを分析吸着剤として用いた周知のBET法に準じて測定される表面積が、22m
2/g未満、より好ましくは20m
2/g未満、さらにより好ましくは18m
2/g未満である。これらの要件を満たす無機充填剤(F)は、好ましくは、タルク、雲母及び硅灰石等の異方性無機充填剤(F)である。
【0131】
射出成形品
本発明は、さらに、異相プロピレンコポリマー(HECO1)を有する射出成形品を対象とする。好ましくは、本発明は、異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)を、射出成形品の全重量に対して5重量%から30重量%、より好ましくは8重量%から25重量%、いっそうより好ましくは12重量%から20重量%有する射出成形品を対象とする。
【0132】
さらなる側面によれば、本発明は、本発明の組成物、即ちポリオレフィン(PO)と、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)と、任意の無機充填剤(F)とを有する組成物を有する射出成形品を対象とする。好ましくは、射出成形品は、本発明の組成物を、少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、いっそうより好ましくは少なくとも95重量%有し、さらにより好ましくは本発明の組成物からなる。
【0133】
異相ポリプロピレン組成物(HECO1)及び組成物の好ましい実施形態については、それぞれ上記の情報が参照される。
【0134】
好ましくは、射出成形品は、自動車の物品、より好ましくはバンパー、サイドトリム、補助ステップ、ボディパネル、スポイラー、ダッシュボード、内装のトリム等の射出成形された車の内装及び外装品、特にバンパーである。
【0135】
本発明に係る使用
本発明は、上記の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)又は組成物の、自動車用途、好ましくはバンパー等の射出成形された自動車用品の用途における使用にも関する。
【0136】
加えて、本発明は、本発明の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)、好ましくは請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の、当該異相ポリプロピレン組成物(HECO1)に加えてポリオレフィン(PO)と任意の無機充填剤(F)とを有する組成物における使用であって、当該組成物からなる射出成形品のフローマークを減少させるための使用を対象とする。異相ポリプロピレン組成物(HECO1)、組成物、ポリオレフィン(PO)、無機充填剤(F)等の各成分については、上記の情報が参照される。
【0137】
好ましくは、射出充填時間1.5秒で作成した大きさが210x148x3mm
3のプラークについて求めた平均二乗誤差が、7.4未満、好ましくは7.0未満、より好ましくは1.0以上7.4未満の範囲内、より好ましくは2.0以上7.0未満、例えば2.0から6.0の範囲内である場合に、フローマークの減少が達成されているものとする。
【0138】
ここで、本発明を、以下の本発明を限定しない実施例を参照しながら説明する。
【実施例】
【0139】
1.
定義/測定法
以下の用語の定義及び測定法は、別段の定義がない限り、上記の本発明の一般的な記載及び以下の実施例に適用される。
【0140】
GPR1において生成されるポリマーのメルトフローレートMFR
2(230℃)の算出:
【数7】
式中、
w(P1)は、ループ反応器にて生成されたポリマーの重量分率[重量%]、
w(P2)は、GPR1にて生成されたポリマーの重量分率[重量%]、
MFR(P1)は、ループ反応器にて生成されたポリマーのメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]、
MFR(P)は、GPR1後であってGPR2前の全メルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]、
MFR(P2)は、GPR1で生成されたポリマーの算出されるメルトフローレートMFR
2(230℃)[g/10分]である。
【0141】
MFR2(230℃)は、ISO1133(230℃、2.16kg荷重)に準じて測定する。
【0142】
コモノマー含有量、特にエチレン含有量は、
13C−NMRによって較正したフーリエ変換赤外線スペクトル法(FTIR)により測定する。ポリプロピレン中のエチレン含有量を測定する際は、薄膜試料(約250μm厚)をホットプレスにより作製した。プロピレン−エチレンコポリマーの720cm
−1及び733cm
−1における吸収ピーク面積を、Perkin Elmer FTIR1600分光計により測定した。プロピレン−1−ブテンコポリマーは、767cm
−1にて評価した。
【0143】
GPR1において生成されたポリマーのコモノマー含有量の算出:
【数8】
式中、
w(P1)は、ループ反応器における全ポリマーの重量分率[重量%]、
w(P2)は、GPR1にて生成されたポリマーの重量分率[重量%]、
C(P1)は、ループ反応器におけるコモノマー含有量[重量%]、
C(P)は、GPR1後の全コモノマー含有量[重量%]、
C(P2)は、GPR1で生成されたポリマーの算出されるコモノマー含有量[重量%]である。
【0144】
GPR2において生成されたポリマーのコモノマー含有量の算出:
【数9】
式中、
w(P1)は、GPR1における全ポリマーの重量分率[重量%]、
w(P2)は、GPR2にて生成されたポリマーの重量分率[重量%]、
C(P1)は、GPR1におけるコモノマー含有量[重量%]、
C(P)は、GPR2後の全コモノマー含有量[重量%]、
C(P2)は、GPR2で生成されたポリマーの算出されるコモノマー含有量[重量%]である。
【0145】
固有粘度は、DIN ISO1628/1、1999年10月(デカリン中、135℃)に準じて測定する。
【0146】
キシレン可溶成分(XCS、重量%):低温キシレン可溶成分(XCS)の含有量は、ISO16152;第1版;2005年7月1日に準じて25℃にて求める。残った不溶部分が低温キシレン不溶成分(XCI)画分である。
【0147】
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
は、以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求める:
重量平均分子量Mw及び分子量分布(Mw/Mn)(Mnは数平均分子量、Mwは重量平均分子量である。)は、ISO16014−1:2003及びISO16014−4:2003に基づく方法により測定する。屈折率検出器及びオンライン粘度計を備えたWaters Alliance GPCV2000装置を用いた。TosoHaasのTSKゲルカラム(GMHXL−HT)x3、及び溶媒として1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB、200mg/Lの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノールにより安定化)を用い、145℃にて1mL/分の定流速とした。各分析につき、216.5μLの試料溶液を注入した。カラムセットは、0.5kg/molから11500kg/molの範囲内の19種のMWDの狭いポリスチレン(PS)標準試料及び特徴のはっきりした1組の広いポリプロピレン標準試料を用い、相対キャリブレーションにより較正した。試料は全て、5〜10mgのポリマーを10mL(160℃)の安定化TCB(移動相と同一)に溶解し、GPC装置に供する前に3時間連続して振盪しつづけて調製した。
【0148】
曲げ弾性率は、ISO294−1:1996に準じて作製した80x10x4mmの射出成形試料について、ISO178に準じた3点曲げ試験により求めた。測定は、試料を96時間コンディショニングした後に行う。
【0149】
引張係数;破断時引張応力は、EN ISO1873−2に記載の射出成形試料(ドッグボーン型、4mm厚)を用いて、ISO527−2(クロスヘッド速度=1mm/分;23℃)に準じて測定した。測定は、試料を96時間コンディショニングした後に行う。
【0150】
シャルピー衝撃試験:ノッチ付きシャルピー衝撃強度(NIS)は、ISO294−1:1996に準じて作製した80x10x4mm
3の射出成形棒状試験片を用い、ISO179 1eAに準じて−20℃にて測定した。
【0151】
フローマーク
フローマークが現れる傾向は、下記の方法により試験した。この方法は、WO2010/149529に詳述されており、その全内容が、ここに本明細書の一部を構成するものとして援用される。
Sybille FrankらによるPPS25 Intern.Conf.Polym.Proc.Soc2009又はProceedings of the SPIE,6831巻,pp68130T−68130T−8(2008)に記載の光学測定システムを用いて、表面品質の特徴を決定した。
この方法は、2つの側面からなる:
【0152】
1.画像の記録
測定系の基本的な原理は、閉環境中においてプレートを所定の光源(LED)で照明し、CCDカメラシステムで画像を記録するというものである。
図1に、概略的な構成を示す。
【0153】
2.画像解析
試料を片側から照明し、上方へと反射した光を2枚のミラーでCCDセンサーへと偏向させる。このようにして作り出されたグレースケール値の画像をライン解析する。記録される濃淡値の偏差から、平均二乗誤差(MSE)を算出することで、表面品質を定量することができる。即ち、MSEが高いほど、表面欠陥が顕著である。
一般に、同一の単一材料であれば、射出速度が増加するとフローマークが出現する傾向も増加する。
【0154】
この評価では、VW K50粒子及び1.4mmのフィルムゲートによる210x148x3mm
3のプラークを用い、1.5秒(MSE1.5)の充填時間で作成した。
【0155】
その他の条件:
溶融温度:240℃
型温度 30℃
動圧:10bar、油圧
充填時間が一定の場合、MSEが小さいほど、フローマークが出現する傾向も小さくなる。
【0156】
カットオフ粒子サイズd95(沈降法)は、ISO13317−3に準じた液相遠心沈降法(Sedigraph)により求めた粒子サイズ分布[質量パーセント]から算出する。
【0157】
比表面積は、DIN66131/2(N
2)に準じてBET表面として求める。
【0158】
2.実施例
例IE1〜IE7及びCE1〜CE3の重合プロセスに用いる触媒は、以下のように製造した:まず、0.1モルのMgCl
2x3EtOHを、不活性条件下、大気圧の反応器内にて、250mlのデカンに懸濁させた。溶液を−15℃の温度に冷却し、同温度を維持しながら300mlの冷TiCl
4を添加した。次いで、スラリーの温度をゆっくりと20℃に上昇させた。この温度にて、スラリーに0.02モルのフタル酸ジオクチル(DOP)を添加した。フタレートの添加後、温度を90分かけて135℃に上昇させ、スラリーを60分間静置した。次いで、さらに300mlのTiCl
4を添加し、120分間温度を135℃に保った。その後、液相から触媒をろ別し、80℃のヘプタン300mlで6回洗浄した。次いで、固体触媒成分をろ過し、乾燥した。一般的な触媒及びその調製法は、特許公報EP491566、EP591224及びEP586390に記載されている。助触媒としてトリエチル−アルミニウム(TEAL)、ドナーとしてジシクロペンチルジメトキシシラン(Dドナー)及びジエチルアミノトリメトキシシラン[Si(OCH
2CH
3)
3(N(CH
2CH
3)
2](Uドナー)をそれぞれ用いた。表1に、アルミニウムのドナーに対する比を示す。
【0159】
重合に先立ち、触媒を、最終ポリマー中のポリ(ビニルシクロヘキサン)(PVCH)濃度を200ppmとすることができる量のビニルシクロヘキサンとプレ重合させた。各プロセスは、EP1028984及びEP1183307に記載されている。
【0160】
重合
実施例IE1〜IE7については、反応器にモノマー及び水素を供給及び排出するための制御バルブを備えた21.3L容オートクレーブにおいて行った。反応器へのモノマー及び水素の供給量は、流量コントローラーにより、また各リザーバの量を確認することにより確認した。反応器の温度は、反応器を囲む二重ジャケット中の水を加熱/冷却することにより、また、反応器の上端及び底部の双方のセンサーを用いて制御した。反応器内を効果的に撹拌するために、磁気カップリングによる螺旋状撹拌機を用いた。撹拌速度は、反応工程中に変化しうる。全プロセスは、事前にプログラムされ、反応器室の外部に置かれたワークステーションコンピュータにより実行及びモニターした。
【0161】
バルク:
反応器を、最初にプロピレンでパージし、次いでプレ重合として、5250gのプロピレンと6リットルの水素で充填した。上記に定義される触媒(鉱物油スラリー中に懸濁させた15.3重量%懸濁液)を、反応器に添加する前に、TEAL/ドナー比が6モル/モルのTEAL及びU又はDドナーの溶液と5分間混合した。次いで、触媒混合物の全量が確実に反応器へと添加されるように、触媒を入れた容器を250gのプロピレンでフラッシュした。次いで、反応器にて、350rpmで撹拌しながら23℃にて6分間、プレ重合を行った。
続いて、反応器を85℃に加熱して、バルク条件を開始した。移行の間は、流量コントローラーを通して所望の量の水素を添加する。水素は、バルクには常に添加されるが、反応中に連続的に添加するものではない。所望の反応器条件に達した後、プロピレンの供給により反応器を定圧に保持する。このバルク条件に達するまでの移行時間は、通常〜19分である。所定のバルク滞留時間の後、撹拌速度100rpmにて反応器を0.5barまでパージして、続けてガス相工程を行う。材料IE1、2、5〜7及びCE1では、直ちにGPR2へと進め、材料IE3、4及びCE2、3では、続けてGPR1へと進めた。
【0162】
GPR1(適用する場合)
0.5barのパージ圧に達した後、反応器の撹拌速度を350rpmに上げ、GPR1として、目的量のプロピレン及び水素を反応器に添加する。その際、圧力及び温度をそれぞれ34bar及び85℃へと増加させる。バルクからGPR1への移行時間は、通常〜19分であった。目的温度に達した後、プロピレンの供給により圧力を一定に保った。生成されたポリマーの量は、反応行程中に添加したプロピレンの量を測定することにより確認することができた。所望のスプリットに達した後、追加のガス相工程に備えて撹拌速度100rpmにて反応器を0.5barまでパージした。
【0163】
GPR2
所望のパージ圧(0.5bar)が得られた後、最終ガス相(GPR1)への移行を開始した。反応器の撹拌速度を350rpmまで上げ、反応器にプロピレン、エチレン及び水素を供給した。その際、温度及び圧力を所望の値にまで高めた(表1a及びbを参照。)。ループからGPR2への移行時間は、通常8分から10分の間である。所望のガス比が保たれるようにコモノマーを添加した。反応器が所望の温度に達した後、適当なガス比のエチレン/プロピレンの供給により圧力を所望の定圧に保った。生成されたポリマーの量は、反応工程中に添加したプロピレン及びエチレンの量を測定することにより確認することができた。所望のスプリットに達した後、反応器を以下に概説する終了手順へと進めた。
【0164】
反応の終了
反応が完了した後、撹拌速度を100rpmに下げ、ガス混合物を0barとなるまで反応器からパージした。反応器を数サイクルの真空で処理して、残留ガスを反応器(及びポリマー粒子)から除去した。このサイクルでは、反応器を真空下に数分置き、窒素を常圧まで満たし、このプロセスを数回繰り返す。次いで、生成物を反応器から安全に取り出す。
作製した試料の分析結果は、表1に示されている。
【0165】
反応器後の処理
まず、全てのポリマーの粉末を、TSE16TC押出機を用いて0.05重量%のステアリン酸カルシウム、0.05重量%のDHT、0.25重量%のIrganox B225及び0.5重量%のタルク4.5Jetfine3CAと調合し、次いで基本的な機械的試験に供した(表1a及びb)。
次いで、ポリマー粉末をHECO2、タルク及びCarbonblack Masterbatchと混合し、L/D比を30:1、スクリュー構成を2組の混練ブロックとしたPRISM TSE24二軸押出機を用い、200℃から240℃の溶融温度プロファイルを用いて押出した。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】
【0169】
【表4】
【0170】
【表5】