(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、凹凸の表面に空気層を介在させる構成では、その凹凸表面に導光とは別の機能を奏する機能層を積層させた場合に、凹部が塞がれて空気層が消滅し光の反射が不十分な拡散部になりやすかった。即ち、凹部を埋めずに機能層を積層することが困難で、また、空気層を維持したとしても、繰り返し利用で凹部が埋まってしまうことがあった。特に加飾層を設けた導光シートとすると、加飾層が導光シートを埋めてしまい、効果的な拡散部を形成することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、非照光時には見えにくい拡散部を有する導光シートを得ることを目的とする。また、拡散部に空気層を貯留し易い導光シートを得ることを目的とする。そして、加飾層を備える導光シートにあっては、その加飾層の見栄えが良い導光シートを提供することを目的とする。
さらには、こうした導光シートを有する加飾成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく以下のような構成を提供する。
【0007】
導光部材の端面から受光した光を所定の反射領域で反射することで外側に出光して照光する導光シートについて、反射領域を、導光部材の表面に設けた複数の凹部からなる微小反射部で形成し、その凹部に空気を密封する封止部材を前記表面に密着して積層することを特徴とする導光シートである。
反射領域を複数の凹部からなる微小反射部で形成したため、導光部材へ光を照射する第1光源をONにしたときには、導光部材内を光が導光し、微小反射部で光を反射させることができる。そして、第1光源をOFFにしているときは、微小反射部はほとんど視認させないことができる。
【0008】
その凹部に空気を密封する封止部材を、導光部材の表面に密着して積層したため、微小反射部の反射機能を損なうことがなく、微小反射部以外では導光部材と封止部材との界面から空気層を排除することができる。そのため、反射領域を非照光時には見え難くくすることができ、また加飾層を設ければ加飾層の見栄えの良い導光シートとすることができる。
【0009】
微小反射部の大きさが、前記凹部の深さ(T):1μm〜10μm、前記凹部の最大幅(W):5μm〜70μmであって、この凹部の深さと最大幅との関係が、T≦W×2/3を満たす導光シートとすることができる。
微小反射部の大きさが、前記凹部の深さ(T):1μm〜10μm、前記凹部の最大幅(W):5μm〜70μmであって、この凹部の深さと最大幅との関係が、T≦W×2/3を満たすため、照光時には微小反射部を視認させる一方で、非照光時には、この微小反射部を見え難くすることができる。
【0010】
封止部材の屈折率が導光部材の屈折率よりも低屈折率とすることができる。
封止部材の屈折率が導光部材の屈折率よりも低屈折率であるため、導光部材内を導光する光が封止部材から出光して光漏れを起こすことを防止することができる。そのため、封止部材に加飾層を積層しても導光部材内の光を加飾層に入射しにくくすることができる。
【0011】
導光部材の下面側に加飾層を設ける導光シートとすることができる。
導光部材の下面側に加飾層を設けたため、反射領域で形成する表示要素以外にも、加飾層で形成する表示要素や背景、模様等を視認することができる。また、導光部材と重ねて設けられた加飾層は、前記第1光源をONにしたときには、前記反射領域の背景として視認され、前記第1光源をOFFにしたときには、前記反射領域がほとんど視認されないため、加飾層のみを視認させることができる。なお、導光部材の下面側とは、導光部材の下面に直接加飾層を積層させる構成の他に、封止部材を介して設ける構成や、透明樹脂層を介して設ける構成を含むものである。
【0012】
導光部材と対向する側とは反対側の封止部材の表面に導光部材よりも低屈折率の透明樹脂層を設ける導光シートとすることができる。
導光部材と対向する側とは反対側の封止部材の表面に導光部材よりも低屈折率の透明樹脂層を設けたため、導光部材と封止部材との界面で光を反射させずに、導光部材から封止部材への入射を許容しても透明樹脂層との界面で光を反射させることができる。そのため、封止部材として利用できる材料の選択の幅を広げることができる。
【0013】
照光する側の最表面に導光部材よりも低屈折率の上面被覆層を設けた導光シートとすることができる。
照光する側の最表面に導光部材よりも低屈折率の上面被覆層を設けたため、導光部材を導光する光が照光する側、即ち導光シートの上面からの意図せぬ光漏れを回避することができる。即ち、反射領域で反射して導光シートの上面から照光させる光以外の光の導光シート上面からの出光を抑制することができる。
【0014】
封止部材が基材と、前記凹部の深さよりも薄厚で導光部材に密着する粘着剤との積層体である導光シートとすることができる。
封止部材が基材と前記凹部の深さよりも薄厚で導光部材に密着する粘着剤との積層体としたため、封止部材が圧力で変形しても凹部を完全に埋めることがなく導光部材に密着させることができる。また、粘着剤の非定形性を基材で補完することができる。
【0015】
封止部材が半硬化状体を導光部材に密着して硬化した硬化体である導光シートとすることができる。
封止部材を半硬化状体を導光部材に密着して硬化した硬化体としたため、導光部材に固着する際には半硬化状で導光部材に密着させる柔らかさを有し、導光部材に固着した後は安定的に硬化した封止部材とすることができる。
【0016】
半硬化状体が未反応基を残しつつ部分的に硬化したUV硬化型樹脂である導光シートとすることができる。
半硬化状体が未反応基を残しつつ部分的に硬化したUV硬化型樹脂であるため、導光部材に固着する際には紫外線照射量の少ない状体で導光部材に密着させる柔らかさを有し、導光部材に固着した後は十分な紫外線を照射して安定的に硬化した封止部材とすることができる。
【0017】
半硬化状体がホットメルト接着剤である導光シートとすることができる。
半硬化状体がホットメルト接着剤であるため、導光部材に固着する際には加熱することがで導光部材に密着させる柔らかさを有し、導光部材に固着した後は安定的に硬化した封止部材とすることができる。
【0018】
封止部材がブロッキング性樹脂シートである導光シートとすることができる。
封止部材がブロッキング性樹脂シートであるため、導光部材に固着する際には表面に微粘着性を有して導光部材に密着させることができ、導光部材に固着した後は安定的に硬化した封止部材とすることができる。
【0019】
そして、本発明は、上記何れかの本発明の導光シートを含む加飾成形体とすることができる。
上記導光シートを構成要素に含む加飾成形体としたため、非照光時には拡散部が見えにくい加飾成形体とすることができる。また、加飾層の見栄えが良い加飾成形体とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の導光シートによれば、導光時(照光時)には光を微小反射部で反射して反射領域を明るく照光させることができ、非導光時(非照光時)には外部から微小反射部が見えにくくすることができる。したがって、携帯情報端末、各種電子機器の外装部品(パネル、筐体等)、入力部品(キーシート等)に照光機能を付加するとともに非照光時にはそれらの外観の見栄えを損ねることが無い導光シートとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明について実施形態に基づきさらに詳細に説明する。以下の各実施形態で共通する構成については、同一の符号を付して重複説明を省略する。また、共通する材質、製造方法、作用、効果等についても重複説明を省略する。なお、明細書、特許請求の範囲において、“上面”は導光シートから光が出光する側(照光する側)の面をいい、“下面”は上面とは反対側の面をいうものとする。また“表面”はこれら何れかまたは双方の面をいうものとする。
【0023】
第1実施形態〔図1、図2〕:
図1に第1実施形態としての導光シート11の平面図、
図2にはその断面図を示す。
この導光シート11は、下面に文字や記号等の表示要素となる反射領域12を有する導光部材13と、反射領域12内に空気層を封入する封止部材14と、封止部材14の下面にあって地模様等を表示する加飾層15とを積層して構成している。
この導光シート11は、導光部材13に入射した光を導光させて反射領域12で反射させる機能を奏するものである。この導光シート11を構成する部分についてさらに詳細に説明する。
【0024】
導光部材13: 導光部材13は、透明な樹脂フィルムで形成され、端部から入射した光を平滑な上面と下面との間で反射させつつ面方向に伝える部材である。
図2で示す導光シート11では、図面上側が上面、図面下側が下面となる。
導光部材13の材質には、透明性の高い熱可塑性樹脂でなる樹脂フィルムを用いることが好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂などが挙げられる。なかでも透明性の見地から、可視光領域に波長の吸収領域がなく透明性の高いポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂がより好ましい。
【0025】
導光部材13の硬さは、荷重により変形し難い硬さであることが好ましい。荷重を受けて後述する微小反射部16が変形し空気層が埋まってしまうと光を反射する機能が低下するからである。より具体的にはJIS K6253のゴム硬さがA60以上であることが好ましく、硬質樹脂とされる樹脂がさらに好ましい。硬質樹脂の具体例としてはポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0026】
導光シート11を照光式キーシートの一部(ベースシート)として用いる場合には、押圧操作性を良好とするために、導光部材13が一定の柔軟性を有することが好ましい。良好な押圧操作性とは、押圧荷重が必要以上に大きく無く、且つ良好なクリック率を有することをいう。こうしたクリック率を有するためには、導光部材13はJIS K6253のゴム硬さがA50〜A90のゴム状弾性を有することが好ましいが、変形のし難くさの観点を考慮すると、A60〜A90とすることがより好ましい。ゴム硬度がA90より大きいと導光シート11の剛性が高くなり、荷重が上昇してクリック率も低下する。ゴム硬度がA50より低いと、導光部材13が変形して微小反射部16が埋まってしまい、導光性能が低下するおそれがある。こうした硬度を有する導光部材13の材質としては、ウレタン系樹脂が好ましい。
【0027】
導光部材13の厚みは、30μm〜300μmが好ましく、50μm〜200μmがより好ましい。30μm未満では導光部材13の内部に伝わる光量が小さく照光輝度が低くなる。300μmを超えると、剛性が高くなり照光式キーシートとした場合に押圧操作時の押圧荷重が増加して操作性が悪くなる。50μm〜200μmであると、導光部材13の内部に伝わる光量が多く剛性が適度な導光シート11とすることができる。
【0028】
導光部材13は、複数の層の積層体とすることができる。例えば、ウレタンシートと透明樹脂層の積層体とすることができる。こうした積層体とする場合には、各層を構成するそれぞれの層の屈折率の値の差が、0.06未満であることが好ましく、実質的に0であることがより好ましい。
【0029】
反射領域12: 導光部材13の下面には、
図1で文字や記号等の表示要素として表れる反射領域12を設けている。導光シート11では、反射領域12で導光部材13内を導光する光を反射させて上面から出光させる。
反射領域12は、
図1の領域R1拡大図や、
図2の領域R2拡大図で示すように、導光部材13の平滑な表面に凹部形状に設けた複数の微小反射部16を分散配置したものである。仮に、微小反射部16に代えて、凹凸の大きさや形状、密度がランダムに構成される拡散部や白色印刷として反射領域を形成すると、導光させない消灯時にも拡散部や白色印刷が視認されるという不都合を有するが、微小反射部16を設けたため、こうした不都合を回避することができる。
【0030】
微小反射部16の形状は、
図1、
図2に示す部分球面状(レンズ状)の他、台形や矩形、プリズム状等の種々の形状とすることができるが、反射特性の観点から部分球面状が好ましい。
微小反射部16の大きさは、その外形の最大幅(W)を5μm〜70μmとすることが好ましい。5μmより小さいと金型からの転写性等の悪さに起因して金型形状に沿った形状の再現が難しく、規則正しい形状になりにくい。70μmより大きいと非照光時に視認されやすくなる。
【0031】
微小反射部16の深さ(T)は1μm〜10μmとすることが好ましい。微小反射部16の深さが10μmよりも大きいと、導光部材13の下面からの高さが大きくなり、特に非照光時に斜めから見たときに視認されやすくなる。深さが1μmより浅いと、反射面の傾斜角度が浅くなり反射効率を高めることができない。
さらに、微小反射部16の外形の最大幅(W)と深さ(T)との関係は次式(1)を満たすことが好ましい。
T≦W×2/3・・・・(1)
微小反射部16の深さ(T)が最大幅(W)の3分の2より大きい場合には、反射面の傾斜角が大きくなりすぎて、外光(導光部材13内を導光する光以外の光)が散乱されやすく、非照光時に微小反射部16が視認されやすくなる。
【0032】
平面視において反射領域12内に占める微小反射部16の面積の割合(複数の微小反射部16の集合の外枠で囲まれた面積に対するその面積内の平滑な部分を除いた部分の占有面積をいい、例えば
図1では、領域R3として示される三角形の面積に対する微小反射部16の占有面積の合計をいう。)は、1%〜50%とすることが好ましく、2%〜20%とすることがより好ましい。占有面積が1%よりも小さい場合には、反射領域12の透明性は向上するものの、微小反射部16の数が少ないことから反射効率が下がり、照光輝度が低下してしまう。
一方、占有面積が50%よりも大きい場合には、平滑な表面13bに対して凹状の部分が増えることで、反射領域12の透明性が低下し、非照光時に反射領域12が視認されやすくなる。そして、占有面積を2%〜20%とすることで、照光輝度と透明性の両方を良くすることができる。
【0033】
封止部材14: 封止部材14は、導光部材13に形成した微小反射部16に空気を閉じ込めるとともに、微小反射部16以外の導光部材13の表面に密着させる層である。
封止部材14は、液体の噴霧や塗布によって形成するものではなく、固体または半固体(半硬化状体)からなるシート状物の貼付によって形成する。仮に液状樹脂を導光部材13に塗布して硬化させる工程で封止部材14を形成しようとすると、液状樹脂が微小反射部16内に浸入し、微小反射部16を埋めてしまうため、微小反射部16内に空気を閉じ込めて封止することができないからである。一方、シート状物であれば導光部材13に貼り合わせて一体化することで微小反射部16内に空気を閉じ込めることができる。
【0034】
封止部材14の屈折率は、導光部材13よりも低屈折率であることが好ましい。封止部材14は、導光部材13内を伝わる光を導光部材13と封止部材14との界面で、導光部材13側に反射させれば、封止部材14への光漏れがないからであり、両者の屈折率の差は0.06以上あることが好ましい。屈折率の差が0.06以上であれば、全反射させるための臨界角を大きくすることができ、導光部材13から封止部材14への光漏れを防止し、効率よく導光部材13内を導光させることができるからである。
封止部材14が後述する積層体である場合には、そのうちの一の層が低屈折率であれば良い。
【0035】
封止部材14の材質は導光部材13との貼り合わせ工程で変形し難い材質が好ましい。貼り合わせ圧力で微小反射部16内に侵入するほど変形すると、微小反射部16内に空気を閉じ込めることができないからである。
また、封止部材14は、粘着性を有していることが好ましい。微小反射部16に空気を閉じ込める一方で、それ以外の導光部材13の表面に密着して、導光部材13と封止部材14との界面に余分な空気が入り難くすることができるためである。導光部材13と封止部材14との界面に空気が入ると、そこで光が反射して外観上の不具合が生じるからである。
【0036】
封止部材14は、表面に粘着性がありながら微小反射部16を埋めずに導電部材13に貼り合わせることができる程度の定形性を備えることから、より具体的には以下の態様をとることができる。
【0037】
(1).粘着剤からなる接着層と基材の積層体
粘着剤は比較的柔軟で変形しやすい材料であるため、粘着剤からなる接着層の厚みは微小反射部16の深さよりも薄くし、好ましくは微小反射部16の深さの半分以下とする。微小反射部16の深さの半分以下とすることで、接着層が圧力で変形しても、微小反射部16内に侵入するように変形できる部分が少ないため、微小反射部16に空気を残すことができる。また、粘着剤は導光部材13への貼着後に硬化できる材質であることが好ましい。導光シート11に繰り返し荷重がかかる場合でも耐久性が高まるからである。基材は定形性のある硬質の樹脂フィルム等である。
【0038】
(2).半硬化状体の接着層
封止部材14は、製品化後は固化状体にあっても、製造時である導光部材13との貼り合わせ時には、導光部材13に密着可能な半硬化状体にある接着層とすることができる。
こうした半硬化状体には、液状樹脂を少なくとも流動性が無くなるまで部分的に硬化し未反応基を残したUV硬化型樹脂や、加熱して柔らかくしたホットメルト接着剤(ホットメルト樹脂)が例示できる。UV硬化型樹脂は3次元的に架橋された部分を有し導光部材13との貼り合わせ時に圧力で変形し難いため、その厚みについての限定は不要である。しかし、ホットメルト接着剤では、導光部材13との貼り合わせ時の温度によってはホットメルト樹脂が流動して微小反射部16を埋めるおそれがあるため、その厚みを微小反射部16の深さよりも薄くし、好ましくは微小反射部16の深さの半分以下とすることが好ましい。
【0039】
(3).ブロッキング性樹脂シート
ブロッキング性樹脂シートは、見た目には普通の樹脂フィルムであるが、一定時間ブロッキング性樹脂シートどうしを重ねておくと、経時で徐々に固化して接着力が増す性質を有するシートである。具体的には、軟質アクリルシートやウレタンシートがあり、特に最終的な接着強さを大きくできるウレタンシートが好ましい。このようなブロッキングは、加圧したり、加熱することで、固着する時間を早めることができる。また、ブロッキング性樹脂シートは、微粘着性を有することが好ましい。微粘着性を有することで、余分な空気を入りこませないように貼り合わせることが容易となり、また圧力をかけ続けなくても容易にブロッキングさせることができる。ブロッキング性樹脂シートの硬さは、JIS K6253のゴム硬さがA60以上であることが好ましい。A60未満であると、導光部材13との貼り合わせの作業時に大きく変形し、微小反射部16を埋めるおそれがある。
【0040】
加飾層15: 導光シート11には、文字や数字、記号等の表示要素や、地模様等の外観要素、あるいは外部からの光が入射するのを防ぐ遮光要素などとなる加飾層15を設けることができる。
加飾層15は、
図2で示すように、封止部材14の下面のほぼ全面を覆って形成したり、文字や数字、記号等の表示要素の形状に部分的に形成したりすることができる。よって、ベタ印刷された単色であるような場合であっても良い。また、透光性の材料で形成しても良い。透光性の材料で形成すると、下方からのバックライトを用いて照光させることができる。さらに、透光性の材料と不透明の材料で形成すると、導光部材13からの光では加飾層15全体を照光させ、バックライトからの光では透光性の部分のみを照光させることができる。このように、導光部材13内の導光に基づく照光とバックライトからの照光を併せて多様な照光パターンを実現することができる。
【0041】
製造方法: 導光シート11の製造方法の一例を示す。まず、透明な樹脂フィルムを加熱した金型やロールでプレスして反射領域12としての凹状の微小反射部16を設けた導光部材13を準備する。一方、前記樹脂フィルムよりは低屈折率の樹脂フィルム(基材)に粘着剤を塗布して、微小反射部16の深さよりも薄厚の接着層を設けた封止部材14を準備する。
そして、導光部材13の微小反射部16を設けた面と、封止部材14の粘着剤を設けた面とを加圧ロールで貼り合わせる。次に、封止部材14の下面に加飾層15を印刷形成する。こうして導光シート11が得られる。
【0042】
樹脂フィルムへの微小反射部16の形成では、樹脂フィルムを加熱プレスして凹部を形成する他に、金型成形した微小反射部16を樹脂フィルムに転写して形成したり、薄膜に予め微小反射部16を設けておいた薄膜シートを樹脂フィルムに積層したり、透明樹脂液を用い、金型内で樹脂フィルムと一体にして硬化して形成したりすることもできる。
【0043】
微小反射部16を有する薄膜シートの積層は、加熱プレスなどで樹脂フィルムの表面に直接微小反射部を形成する場合よりも、個々の微小反射部16の形状の均質性が得られやすい。そのため、特に微小反射部16が比較的小さい場合には、金型の形状を正確に転写した微小反射部16を形成できるため、意図しない反射や光拡散の発生を抑えることができる。
透明樹脂液で微小反射部16を形成する場合には、導光部材13としての樹脂フィルムの下面または上面に、前記透明樹脂液の硬化体でなる微小反射部16を含む薄膜層が形成される。また、低粘度の透明樹脂液を用いることで金型形状を正確に転写することができる。そして、透明樹脂液で微小反射部16を形成する方法では、加熱や高い圧力でプレスする必要がないため、比較的小さな金型で簡易に製造することができる。
【0044】
導光シート11では、点灯時には導光部材13内をその平面方向に進行する光が下面に形成された反射領域12で反射して、その反射領域12の形状が照光する。一方、消灯時には、反射領域12が視認されずに、日中などの明るい環境下(明所)にあっては加飾層15が視認され、夜間などの暗い環境下(暗所)にあっては加飾層15も視認されない。
【0045】
即ち、導光シート11は、反射領域12を記号を表す表示要素の形状に形成したため表示要素の形状で照光することができる。また、反射領域12は微小反射部16で形成したため、導光部材13内をその平面に沿って導光させなければ(消灯時)、表示要素の形状を視認させずに、明所であれば加飾層15を反射領域12で遮ることなく視認させることができる。
【0046】
本実施形態では加飾層15を有する構成で説明したが、加飾層15の無い導光シートとすることもできる。
【0047】
第2実施形態[図3]:
図3で示す実施形態の導光シート21は、導光部材13の上面に反射領域12を形成し、その上面に封止部材14を設けている。また、導光部材13の下面に加飾層15を形成している。
【0048】
導光シート21では、点灯時には導光部材13内をその平面方向に進行する光が上面に形成された反射領域12で下側に反射して加飾層15を照らして照光する。また、反射領域12は視認されない。一方、消灯時には、反射領域12は視認されずに、日中などの明るい環境下(明所)にあっては加飾層15が視認され、夜間などの暗い環境下(暗所)にあっては加飾層15は視認されない。
このように反射領域12で反射した光が加飾層15を照らすため、バックライトを用いずに加飾層15を照光することができる。したがって、バックライトで加飾層15を照光する場合と異なり、電子ペーパー等の非透光性材料で加飾層15を形成することができる。
【0049】
反射領域12を導光部材13の下面に設けているため、導光シート21をキーシートととして利用すれば、キーシートが押圧操作を受けても微小反射部16の摩耗は起きない。そのため反射効率の悪化を防止しキーシートの耐久性を高めることができる。
【0050】
第3実施形態[図4]:
図4で示す実施形態の導光シート31は、導光部材13の上面と下面の両面に反射領域12(12a、12b)を設けるとともに、封止部材14(14a、14b)もその両面に設けている。加飾層15は、導光部材13の下面に設けた封止部材14aの下面に形成している。
【0051】
導光シート31では、点灯時には導光部材13内をその平面方向に進行する光が下面に形成された反射領域12aで反射して、その反射領域12aの形状が照光する。また、導光部材13内をその平面方向に進行する光は上面に形成された反射領域12bで下側に反射して、加飾層15を照らして照光する。即ち、加飾層15が視認されるとともに反射領域12aの形状が視認される。
一方、消灯時には、反射領域12a,12bが視認されずに、日中などの明るい環境下(明所)にあっては加飾層15が視認され、夜間などの暗い環境下(暗所)にあっては加飾層15も視認されない。
【0052】
変形例[図5〜図7]:
(1)上面被覆層17[
図5]
第1実施形態から第3実施形態の導光シート11,21,31には、導光部材13の上面に保護層や加飾成形体の外観形状となる外装部材等の上面被覆層17を設けることができる。
図5には、導光シート11の上面に導光シート11を保護する保護層として上面被覆層17を設けた導光シート41を示す。
上面被覆層17は、導光部材13の上面が傷つき難いハードコート材料であることが好ましく、例えば、鉛筆硬度が2H以上は好ましい態様である。
上面被覆層17を設けた態様では、電気機器のパネル用途に好適に用いることができる。
【0053】
上面被覆層17はまた、導光部材13よりも低屈折率の材質を用いることが好ましい。上面被覆層17に傷がつくと、傷が拡散部となってそこから照光してしまうおそれがあるが、導光部材13よりも低屈折率の材質を用いれば、導光部材13を伝わる光の大部分は、導光部材13と上面被覆層17の界面で導光部材13側に反射するので、上面被覆層17への入光を妨げ、傷からの出光を抑えることができるからである。さらに、導光部材13を伝わる光は上面被覆層17内にほとんど入射しないため、上面被覆層17の上面からの出光を考慮する必要がなくなるので、上面被覆層17の上面を粗面とすることができるからである。したがって、上面被覆層17を立体形状の外装部材として形成することができる。立体形状も粗面と同様にその表面から出光するおそれがあるが、そもそも上面被覆層17への入射が少ないため、その立体形状を拡散部として出光することもないからである。そのため、電子機器の外観形状と導光シートが一体となった加飾成形体を好適に得ることができる。
【0054】
上面被覆層17の材質が導光部材13よりも低屈折率でない場合には、上面被覆層17の上面は平滑面であることが好ましい。導光部材13よりも低屈折率ではないと、導光部材13を伝わる光は上面被覆層17に入射するが、上面被覆層17の上面が平滑面であれば、光がその平滑面から外部に出光せず、上面被覆層17内に反射されることで光漏れを起こさないからである。
【0055】
(2)透明樹脂層18[
図6、
図7]
導光シート11,21,31,41には、導光部材13よりも低屈折率の樹脂からなる透明樹脂層18を適宜設けることができる。
一例として、導光部材13よりも低屈折率ではない材料で上面被覆層17を形成する際は、
図6で示す導光シート51のように、上面被覆層17と導光部材13の間に、導光部材13よりも低屈折率の樹脂からなる透明樹脂層18を設けることが好ましい。この場合には、導光部材13の内部を伝わる光の大部分は、導光部材13と透明樹脂層18の界面で導光部材13側に反射するので、上面被覆層17へ光が入射することを抑制することができる。こうした透明樹脂層18を設けると上面被覆層17の材質の選択の幅が広がるため、耐久性などの他の特性を高めやすい。
【0056】
また、別の例としては、例えば
図7で示す導光シート61のように、
図2で示す導光シート11の封止部材14と加飾層15との間に透明樹脂層18を設けたような構成とすることができる。
こうした構成とすれば、封止部材14に導光部材13よりも高屈折率の材料を用いることもでき、封止部材14を屈折率の観点から制限されずに選択することができる。即ち、封止部材14に導光部材13よりも高屈折率の材料を用いると、導光部材13内を導光する光は封止部材14に入射してしまう。しかしながら、透明樹脂層18に導光部材13よりも低屈折率の材質を用いることで、導光部材13から封止部材14に入射した光も封止部材14と透明樹脂層18との界面で、封止部材14側に反射させることができるからである。
【0057】
透明樹脂層18は、被着体に対する非浸食性のインキや塗料などの非浸食性塗液を塗布して形成することが好ましい。ここで、被着体とは、封止部材14の基材に塗布する場合には基材であり、導光部材13に塗布する場合には導光部材13である。透明樹脂層18の材質は具体的には、無溶剤型の架橋または硬化型の樹脂が用いられ、無溶剤型の紫外線硬化型やEB硬化型などの活性エネルギー線硬化型インキを用いることが好ましい。また、水系やアルコール系など非浸食性の溶剤を含む2液硬化型インキ、熱硬化型インキも用いることができる。こうした樹脂インキには、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系インキや、熱硬化型のウレタン系インキが挙げられる。
透明樹脂層18を架橋又は硬化型のインキで形成することで、透明樹脂層18の下面に加飾層15を形成するときに、透明樹脂層18が加飾層15を形成する塗液によって浸食され難くすることができる。
【0058】
透明樹脂層18には、非浸食性塗液を塗布して形成する以外にも、導光部材13よりも低屈折率の樹脂層が積層したフィルムや低屈折率の樹脂からなる粘着剤を用いることもできる。例えば、ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂の積層フィルムでは、屈折率が1.59のポリカーボネート樹脂層と、屈折率が1.49のアクリル樹脂層の界面で光を反射することができる。こうした積層フィルムは共押出しなどにより形成することができる。
【0059】
透明樹脂層18の厚みは5μm〜200μmが好ましく、5μm〜30μmがより好ましい。5μmより薄いと加飾層15を積層する場合に透明樹脂層18が浸食され、さらに封止部材14や導光部材13も浸食されて導光効率が低下するおそれがある。200μmより厚いと、導光部材13からの光漏れ防止効果が向上しないにも関わらず導光シート全体の厚みが不必要に厚くなる。
【0060】
各実施形態で説明した導光シートは、押釦スイッチ用の照光式キーシートなどの加飾成形体として利用することができる。
【実施例】
【0061】
導光シート(11,61)について、実施例に基づきさらに詳細に説明する。
上面側から、下面に1つの反射領域(12)を設けた導光部材(13)、封止部材(14)、黒色印刷による加飾層(15)を積層した試料1〜試料9を作製した(但し、試料7は、封止部材(14)と加飾層(15)との間に透明樹脂層(18)を設けている)。反射領域(12)は複数の微小反射部(16)の集合体で
図1に示すオーディオ操作の機能を示す形状となる表示要素を形成した。個々の微小反射部(16)は、深さ(T)5μm、最大幅(W:上面視における微小反射部(16)の直径)30μmの球面を3分の1に割った部分球面状で全て同一の大きさ、形状である。この表示要素の面積に対する微小反射部(16)全体の面積の割合は20%とした。
表1には、試料1〜試料9の詳細を示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表中に示した各項目は以下の通りである。
「導光部材」は導光部材(13)として用いた樹脂を表わす。ポリカーボネート樹脂は、厚さ100μm、屈折率(n)1.59であり、熱可塑性ウレタンシートは、厚さ50μm、屈折率(n)1.51、A硬度70であった。
「封止部材」は封止部材(14)として用いた樹脂を表わす。熱可塑性ウレタンシートは、厚さ50μm、屈折率(n)1.51、A硬度70であり、アクリル系粘着剤は、屈折率(n)1.49であり、PETは、屈折率(n)1.55であり、ホットメルト接着剤は、屈折率(n)1.50であった。また、UV硬化型樹脂は、硬化後の屈折率(n)1.52であった。
【0064】
「積層条件」は、導光部材(13)と封止部材(14)とを固着したときの条件を表し、試料1及び試料7では、導光部材(13)と封止部材(14)をハンドロールで貼り合わせた後に、110℃で10分間加熱した。加熱後の試料1は、熱可塑性ウレタンシートと導光部材(13)がブロッキングして一体に固着していた。
試料2〜4では、片面にアクリル粘着剤を積層したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルムを、ハンドロールを用いて導光部材(13)に貼り合わせた。
試料5および試料6では、片面に約105℃で軟化するホットメルト接着剤を積層したポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルムを、熱圧着機を用いて温度110℃、圧力0.5MPaで20秒間加圧することで導光部材(13)と貼り合わせた。
試料8では、封止部材(14)の基材としてのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)樹脂フィルムの一方の面に、液状のUV硬化型樹脂層をスクリーン印刷で設け、積算光量200mJ/cm
2の紫外線を照射することで、未反応の官能基を残した半硬化の状態(半硬化状体)を形成した。前記半硬化状体はタックを有していた。その後に、ハンドロールを用いて半硬化状体と導光部材(13)とを貼り合わせてから、積算光量1500mJ/cm
2の紫外線を照射して未反応の官能基を硬化することで、封止部材(14)と導光部材(13)を固着した。
試料9では、試料8と異なり、導光部材(13)の表面に液状のUV硬化型樹脂層をスクリーン印刷で塗布した後に、積算光量1500mJ/cm
2の紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化することで、封止部材を積層した。
【0065】
「微小反射部」は、微小反射部(16)の凹部内の状態を示し、凹部が封止部材で埋まらずに空気を有している場合を「○」、凹部が部分的に埋まっているが空気が残っている場合を「△」、凹部が埋まって空気層が消失している場合を「×」とした。
「明るさ」は、導光部材(13)の端部から導光部材(13)内に光りを導入し、導光させた場合に、反射領域(12)の明るさの程度を最も明るい場合を「10」とし、最も暗い場合を「1」として、明るさの程度を10段階に分けて評価した。
【0066】
試料1は、封止部材(14)にブロッキング性樹脂シートとして熱可塑性ウレタンシートを用いた導光シート(11)である。導光部材(13)と封止部材(14)との積層を封止部材(13)の軟化点よりも低い温度で圧着することで、空気の貯まった微小反射部(16)を形成するとともに、導光部材(13)と封止部材(14)との境界を密閉し微小反射部(16)以外には空気の混入を排除した。こうして得られた試料1は明るさが「10」と照光性に非常に優れた導光シート(11)となった。
【0067】
試料2〜試料4は、封止部材(14)にアクリル系粘着剤とPETの積層体を用いた。試料2では粘着剤の厚みが20μmと、微小反射部(16)の深さ5μmより大きく、その凹部の一部が埋まり明るさも「4」であった。
しかし、試料2と同じ構成でも粘着剤の厚みが4μmと微小反射部(16)の深さより薄くした試料3では、凹部の空気層も十分で明るさは「8」であった。さらに粘着剤の厚みが2μmと薄い試料4では明るさが「10」であった。
【0068】
試料5、試料6は、封止部材(14)にホットメルト接着剤とPETの積層体を用いた。試料5ではホットメルト接着剤の厚みが15μmと、微小反射部(16)の深さ5μmより大きく、溶融または軟化したホットメルト接着剤が微小反射部(16)の凹部に入り込み、空気層が不十分となった。明るさも「3」であった。しかしながら、ホットメルト接着剤の厚みが4μmと微小反射部(16)の深さより薄い試料6は、凹部に空気層もあり明るさは「7」であった。
【0069】
試料7は、封止部材(14)と加飾層(15)との間にアクリル樹脂からなる透明樹脂層(18)を設けた。試料7では導光部材(13)と封止部材(14)が同じ材質であるが、これらの材質よりは低屈折率の透明樹脂層(18)を設けているため、明るさも「10」となり、導光シート(61)外への余分な光漏れを起こしていないことがわかる。
【0070】
試料8は、封止部材(14)に紫外線を少量照射(紫外線露光量は200mJ/cm
2)して部分的に架橋した半硬化状体であるUV硬化型樹脂を用いたため、微小反射部(16)に空気がたまり、明るさも「9」と明るかった。これに対し、試料8と同じUV硬化型樹脂を硬化前の液体の状態で導電部材(13)の表面にスクリーン印刷した試料9では、微小反射部(16)の凹部が埋まってしまい、ほとんど光の反射が確認できなかったため明るさを「1」とした。
【0071】
上記各実施形態及び実施例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の実施形態及び実施例の構成要素を適宜変更し、組合せて適用可能である。そして、こうした変更、組合せも本発明の技術的思想の範囲に含まれるものである。