特許第6027372号(P6027372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027372
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】両面プリント配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/11 20060101AFI20161107BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   H05K1/11 N
   H05K3/40 K
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-189195(P2012-189195)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-49503(P2014-49503A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年2月25日
【審判番号】不服2015-21721(P2015-21721/J1)
【審判請求日】2015年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】内田 淑文
(72)【発明者】
【氏名】岡 良雄
(72)【発明者】
【氏名】春日 隆
【合議体】
【審判長】 森川 元嗣
【審判官】 中川 隆司
【審判官】 内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−97120(JP,A)
【文献】 特開2002−261413(JP,A)
【文献】 特開2008−211152(JP,A)
【文献】 特開2007−129180(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/105050(WO,A1)
【文献】 特開2011−66293(JP,A)
【文献】 特開2012−134313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/11,H05K3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性及び可撓性を有する基板、
この基板の一方の面に積層され、第1ランド部を有する第1導電パターン、
基板の他方の面に積層され、上記第1ランド部に対向する第2ランド部を有する第2導電パターン、及び
第1ランド部と基板とを貫通するブラインドビアホール
を備える両面プリント配線板であって、
複数の上記ブラインドビアホールが、100μm以上500μm以下のピッチで平面視格子状に配設され、
上記ブラインドビアホールが、導電粒子及びそのバインダ樹脂を含み、
上記ブラインドビアホール、第1ランド部及び第2ランド部の外形が、略同心状の略円形に形成され、
上記第2ランド部の外形の平均径が、第1ランド部の外形の平均径よりも小さく、第1ランド部の外形の平均径の5/6倍以下であり、
上記第1ランド部の外形の平均径が、上記ブラインドビアホールの外形の平均径の2倍以上であり、
上記第2ランド部の外形の平均径が、上記ブラインドビアホールの外形の平均径の4倍以下であることを特徴とする両面プリント配線板。
【請求項2】
上記ブラインドビアホールが、扁平球状の導電粒子の結合体を有する請求項1に記載の両面プリント配線板。
【請求項3】
上記第1ランド部の外形の平均径が100μm以上400μm以下である請求項1又は請求項2に記載の両面プリント配線板。
【請求項4】
上記第2ランド部の外形の平均径が50μm以上300μm以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の両面プリント配線板。
【請求項5】
上記第1ランド部の一部をブラインドビアホールの一部が覆っている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の両面プリント配線板。
【請求項6】
絶縁性及び可撓性を有する基板の一方の面に、第1ランド部を有する第1導電パターンを形成する工程、
上記基板の他方の面に、第1ランド部に対向する第2ランド部を有する第2導電パターンを形成する工程、
上記第1ランド部と基板とを貫通するブラインドビアホール用孔を形成する工程、及び
上記ブラインドビアホール用孔に導電粒子を含む導電性ペーストを印刷する工程
を有する両面プリント配線板の製造方法であって、
複数の上記ブラインドビアホールが、100μm以上500μm以下のピッチで平面視格子状に配設され、
上記ブラインドビアホール、第1ランド部及び第2ランド部の外形が、略同心状の略円形に形成され、
上記第2ランド部の外形の平均径が、第1ランド部の外形の平均径よりも小さく、第1ランド部の外形の平均径の5/6倍以下であり、
上記第1ランド部の外形の平均径が、上記ブラインドビアホールの外形の平均径の2倍以上であり、
上記第2ランド部の外形の平均径が、上記ブラインドビアホールの外形の平均径の4倍以下であることを特徴とする両面プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面プリント配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
両面プリント配線板としては、可撓性基板の表裏面に導電パターンを配設したフレキシブルプリント配線板や、硬質基板を用いたリジッドプリント配線板や、硬質基板と可撓性基板とを積層したリジッドフレキシブルプリント配線板等が公知である。上記フレキシブルプリント配線板101は、図3に示すように、基板102の表裏面に導電パターン103,104が積層され、この導電パターン103,104が同径の円形のランド部105を対向位置に有している。この基板102及び表面側のランド部105にブラインドビアホール用孔108が形成されている。そして、このブラインドビアホール用孔108に導電性ペーストを印刷によって満たし、この導電性ペーストを硬化することで、ブラインドビアホール107が形成され、表裏面のランド部105を導通させている(特開昭62−120096号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−120096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のフレキシブルプリント配線板101等の両面プリント配線板にあっては、例えばフリップチップのように実装部品のランドが狭ピッチである場合、ランド部105が配置できないおそれがある。かかる観点から実装部品の狭ピッチのランドに対応するようにフレキシブルプリント配線板のランド部105を小さく設けることも考えられるが、ランド部105を小さくした場合には、ブラインドビアホール107を形成する際に導電性ペーストをブラインドビアホール用孔に的確に印刷して満たすことができず、印刷歩留りが低下するおそれがある。
【0005】
また、ランド部105は通常回路パターンの他の部分よりも幅が広く、ランド部105のコンデンサ容量が大きいため、ランド部105によってインピーダンスの不整合が生ずるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のような不都合に鑑みてなされたものであり、ブラインドビアホールの形成が容易且つ確実に行われ、しかも実装部品の狭ピッチのランドにも的確に対応することができ、さらにインピーダンスの不整合を効果的に抑制できる両面プリント配線板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る両面プリント配線板は、
絶縁性を有する基板、
この基板の一方の面に積層され、第1ランド部を有する第1導電パターン、
基板の他方の面に積層され、上記第1ランド部に対向する第2ランド部を有する第2導電パターン、及び
第1ランド部と基板とを貫通するブラインドビアホール
を備える両面プリント配線板であって、
上記第1ランド部の外形の平均径が第2ランド部の外形の平均径よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
当該両面プリント配線板は、第1ランド部の外形の平均径が第2ランド部の外形の平均径よりも大きいので、ブラインドビアホールを容易且つ確実に形成することができる。つまり、例えば印刷によって導電性ペーストをブラインドビアホール用孔に印刷し、この導電性ペーストを硬化することでブラインドビアホールを形成する場合にあっては、比較的広い第1ランド部によって導電性ペーストの印刷位置の誤差を的確に吸収し、ブラインドビアホール用孔に容易且つ確実に導電性ペーストを満たすことができ、このため導電体が容易且つ確実に形成される。
【0009】
また、第1ランド部の外形の平均径よりも第2ランド部の外形の平均径が小さいので、第2ランド部を狭ピッチに設けやすく、このため例えばフリップチップのようにランドが狭ピッチで配設される場合にも対応でき、かつその場合でも上述のブラインドビアホール形成容易性の低下を効果的に抑制できる。また、第2ランド部の外形を小さくしているため、この第2ランド部のコンデンサ容量が従来のものに比べて小さく、インピーダンスの不整合を効果的に抑制することができる。
【0010】
当該両面プリント配線板は、ブラインドビアホール、第1ランド部及び第2ランド部の外形が略円形に形成されている構成を採用可能である。これにより、小さなブラインドビアホール等であっても確実に形成しやすい。
【0011】
上記ブラインドビアホールと略同心状に第1ランド部が配設されていることが好ましい。これによりブラインドビアホールと略同心状に配設された第1ランド部によって導電体形成時の平面方向の誤差を確実に吸収することができ、より的確に導電体を形成することができる。また、ブラインドビアホールと略同心状に第2ランド部が配設されていることが好ましい。これにより第2ランド部と基板とが周方向に均等な強度で接合されることになる。
【0012】
第2ランド部の外形の平均径は、第1ランド部の外形の平均径の5/6倍以下であることが好ましい。これにより、第2ランド部を狭ピッチに配設することが容易であり、また第1ランド部によってブラインドビアホール形成時の平面方向の誤差を確実に吸収することができる。
【0013】
第1ランド部の外形の平均径が、上記ブラインドビアホールの外形の平均径の2倍以上であることが好ましい。これにより、第1ランド部によって導電体形成時の平面方向の誤差を確実に吸収することができる。
【0014】
第2ランド部の外形の平均径は、ブラインドビアホールの外形の平均径の4倍以下であることが好ましい。これにより、第2ランド部を狭ピッチに配設することが容易となる。
【0015】
当該両面プリント配線板は、基板が可撓性を有することが好ましい。これにより当該両面プリント配線板をフレキシブルプリント配線板として利用することができる。
【0016】
ブラインドビアホールは、導電粒子を含む導電性ペーストを硬化することで形成されているとよい。これにより導電性ペーストを印刷によってブラインドビアホール用孔に満たし、この導電性ペーストを硬化することで、ブラインドビアホールを構成する導電体を容易且つ確実に形成することができる。
【0017】
ブラインドビアホールは、扁平球状の導電粒子の結合体を有することが好ましい。これにより第2ランド部と第1ランド部との電気的導通状態が導電粒子の結合体によって確実に維持される。
【0018】
また、上記課題を解決すべくなされた本発明に係る両面プリント配線板の製造方法は、
絶縁性を有する基板の一方の面に、第1ランド部を有する第1導電パターンを形成する工程、
上記基板の他方の面に、第1ランド部に対向する第2ランド部を有する第2導電パターンを形成する工程、
上記第1ランド部と基板とを貫通するブラインドビアホール用孔を形成する工程、及び
上記ブラインドビアホール用孔に導電粒子を含む導電性ペーストを印刷する工程
を有する両面プリント配線板の製造方法であって、
上記第1ランド部の外形の平均径が第2ランド部の外形の平均径よりも大きいことを特徴とする。
【0019】
当該両面プリント配線板の製造方法は、上述の構成からなる当該両面プリント配線板を形成することができるので、既述の利点を奏する。つまり、当該両面プリント配線板の製造方法によれば、第2ランド部の外形の平均径よりも第1ランド部の外形の平均径が大きいので、第1ランド部によって導電性ペーストの印刷位置の誤差を的確に吸収し、ブラインドビアホールを容易且つ確実に形成することができる。また、当該両面プリント配線板の製造方法は、第1ランド部の外形の平均径よりも第2ランド部の外形の平均径が小さいので、第2ランド部を狭ピッチに設けることができ、このため例えばフリップチップのようにランドが狭ピッチで配設されている両面プリント配線板を製造することができる。さらに、当該両面プリント配線板の製造方法によれば、第2ランド部が小さく設けることができるので、第2ランド部のコンデンサ容量が小さく、インピーダンスの不整合を効果的に抑制することができる。
【0020】
なお、「外形」とは、基板と平行な平面投影形状で最大の外形を意味する。「平均径」とは、外形の最大幅と、その最大幅方向に直交方向の外形の幅との平均値を意味する。「ブラインドビアホールの外形」とは、第1ランド部及び基板を貫通するブラインドビアホール用孔内にある導電体の外形を意味し、このブラインドビアホール用孔から溢れ第1ランド部の表面に積層される導電体の形状は含まない。「略円形」とは、外縁の85%以上が円弧であり、その円弧の中心からの平均距離(平均半径)と、円弧状の各点における半径との比が85%以上115%以内であることを意味する。さらに、「略同心状」であるとは、円の中心同士の距離が大きい方の円の直径の1/10以下の距離にあることを意味する。
【発明の効果】
【0021】
当該両面プリント配線板及びその製造方法は、ブラインドビアホールの形成が容易且つ確実に行われ、しかも狭ピッチのランドにも的確に対応することかでき、さらにはインピーダンスの不整合を効果的に抑制することができる両面プリント配線板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態の両面プリント配線板の説明図であって、基板と垂直方向の概略的端面図である。
図2図2は、図1の両面プリント配線板の製造方法を説明するための模式的端面図であって、(a)は第1導電パターン及び第2導電パターン形成前の状態、(b)は第1導電パターン及び第2導電パターン形成後の状態、(c)は基板にブラインドビアホール用孔が形成された状態、(d)はブラインドビアホールが形成された状態をそれぞれ示す。
図3図3は、従来の両面プリント配線板の説明図であって、基板と垂直方向の概略的端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明するが、まず本発明に係る両面プリント配線板の一実施の形態としてフレキシブルプリント配線板について図1を参酌しつつ説明する。
【0024】
[フレキシブルプリント配線板]
図1のフレキシブルプリント配線板1は、絶縁性を有する基板2、この基板2の一方の面(以下、「印刷面」ということがある)に積層される第1導電パターン3、及び基板2の他方の面(以下、「実装面」ということがある)に積層される第2導電パターン4を備えている。第1導電パターン3は複数の第1ランド部5を有し、第2導電パターン4は第1ランド部5に対向する複数の第2ランド部6を有している。また、フレキシブルプリント配線板1は、第1ランド部5及び基板2を貫通する複数のブラインドビアホール7を備えている。
【0025】
(基板)
基板2は、可撓性を有するシート状部材から構成されており、基板2としては具体的には樹脂フィルムを採用可能である。この樹脂フィルムの材料としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどが好適に採用可能である。
【0026】
基板2の平均厚みは、特に限定されるものではないが、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。基板2の平均厚みが上記下限未満であると基板2の強度が不十分となるおそれがあり、また上記上限を超えると薄型化の要請に反するおそれがある。
【0027】
(第1導電パターン)
第1導電パターン3は、基板2の印刷面に積層された金属層をエッチングすることによって所望の平面形状(パターン)に形成されている。第1導電パターン3は、導電性を有する材料で形成可能であるが、一般的には例えば銅によって形成される。この第1導電パターン3の平均厚みは、特に限定されるものではないが、2μm以上30μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることがより好ましい。第1導電パターン3の平均厚みが上記下限未満であると導通性が不十分となるおそれがあり、また上記上限を超えるとフレキシブル性を損なうおそれがある。
【0028】
第1導電パターン3の第1ランド部5は、外形(外周縁)が略円形に設けられている。また第1ランド部5は、中央に平面視円形のブラインドビアホール用孔8を有しており、全体として平面視円環状に設けられている。第1ランド部5の外周縁及び内周縁は同心状に形成されている。なお、上記基板2にも、この第1ランド部5のブラインドビアホール用孔8に対応する位置にブラインドビアホール用孔が形成される。
【0029】
なお、第1ランド部5の外径W2(外形の平均径)及びブラインドビアホール用孔8の外径W1(ブラインドビアホール7の外形の平均径)については後述する。
【0030】
(第2導電パターン)
上記第2導電パターン4は、第1導電パターン3と同様に、基板2の裏面に積層された金属層をエッチングすることによって所望の平面形状(パターン)に形成されている。第2導電パターン4は上記第1導電パターン3と同様に例えば銅によって形成される。この第2導電パターン4の平均厚みは、特に限定されるものではないが、2μm以上30μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることがより好ましい。第2導電パターン4の平均厚みが上記下限未満であると導通性が不十分となるおそれがあり、また上記上限を超えるとフレキシブル性を損なうおそれがある。
【0031】
第2導電パターン4の第2ランド部6は、ブラインドビアホール用孔8よりも外径が大きくブラインドビアホール用孔8の実装面側の開口を閉塞するよう配設されている。第2ランド部6は、外形が略円形に設けられ、具体的には第1ランド部5及びブラインドビアホール用孔8と同心状に配設されている。
【0032】
なお、第2ランド部6の外径W3(外形の平均径)については後述する。
【0033】
(ブラインドビアホール)
ブラインドビアホール7は、第1ランド部5及び第2ランド部6の電気的導通を図るものであり、ブラインドビアホール用孔8に充填された導電体を有している。このブラインドビアホール7は、導電粒子を含む導電性ペーストがブラインドビアホール用孔8内に供給された後に硬化することで形成されている。具体的には、導電性ペーストは印刷面側から印刷によってブラインドビアホール用孔8内に供給される。このため、ブラインドビアホール7の底部が第2ランド部6と接している。また、導電性ペーストは、ブラインドビアホール用孔8から溢れ、第1ランド部5の一部を覆っている。
【0034】
また、ブラインドビアホール7は、導電性ペーストが供給された後一定時間経過後に硬化することで形成されている。供給後硬化するまでの間に導電性ペーストが流動するので、ブラインドビアホール7には、中心付近に凹み7aが形成されている。
【0035】
上記導電性ペーストは、導電粒子とそのバインダ樹脂とを含んでいる。この導電粒子としては金属粒子が好適に用いられ、金属粒子の材料としては銀、銅、ニッケル等が好適に用いられる。
【0036】
この導電性ペーストは、扁平球状(球を扁平させた形状)の導電粒子を含むことが好ましく、これによって導電粒子同士及び導電粒子と第2ランド部6又は第1ランド部5とが接触しやすく導電性に優れている。なお、扁平球状の形状は、短軸及び長軸を含む断面において短軸の長さが長軸の長さの0.2倍以上1倍未満であることが好ましく、0.4倍以上0.8倍未満であることがより好ましい。短軸と長軸との長さの比が上記範囲にあることによって導電性の優れた導電体を得ることができる。なお、この扁平形状の導電粒子は、平均粒子径(長軸の長さの平均値)が0.5μm以上3μm以下のものが好適に用いられる。平均粒子径が上記範囲にあることによって導電性の優れた導電体を得ることができる。なお、導電性ペーストは、平均粒子径の異なる複数種類の導電粒子を含むことも可能である。
【0037】
また、ブラインドビアホール7の形成に際して、導電性ペーストを加熱して硬化している。ここで、導電性ペーストは、導電粒子同士が結合する程度の温度で加熱される。このため、導電粒子同士は接触部分で結合(溶融結合又は焼結結合)している。つまり、導電体は、導電粒子の結合体を有している。なお、上述のような結合していない導電粒子が一部に存在する場合もある。
【0038】
上記バインダ樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノシキ樹脂等を用いることができる。なお、バインダ樹脂としては、熱硬化性樹脂が好適に用いられる。
【0039】
エポキシ樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールAD等を原料とするビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることができる。また、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等を用いることができる。また、一液性のエポキシ樹脂及び二液性のエポキシ樹脂の何れも用いることが可能である。また、樹脂バインダとしては、マイクロカプセル型の硬化剤をエポキシ樹脂に分散した一液性エポキシ樹脂を用いることも可能である。なお、導電性ペーストは、マイクロカプセル型の硬化剤を均一に分散させるために溶媒としてブチルカルビトールアセテートやエチルカルビトールアセテートを用いることが可能である。
【0040】
(各部材の径等について)
ブラインドビアホール7の外形の平均径(外径W1)は、特に限定されるものではないが、20μm以上150μm以下であることが好ましく、30μm以上120μm以下であることがより好ましく、40μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。ブラインドビアホール7の外径W1が上記下限未満であると、導電体を充填することが困難となるおそれがある。逆に、上記ブラインドビアホール7の外径W1が上記上限を超えると、ブラインドビアホール7が大きくなることで後述する第2ランド部6が大きくなり過ぎるおそれがある。なお、ブラインドビアホール7の外形とは、ブラインドビアホール用孔8から溢れて第1ランド部5を覆う導電性ペーストを含まず、ブラインドビアホール用孔8内で硬化した導電性ペーストの外形を意味する。
【0041】
複数のブラインドビアホール7は、平面視一定配列で配置されており、例えば平面視一方向及び他方向に一定ピッチで格子状に配置されている。ここで、ブラインドビアホール7の配設ピッチは特に限定されるものではないが、100μm以上500μm以下とすることができる。
【0042】
第1ランド部5は、内径がブラインドビアホール用孔8の外径と略同一であり、外径W2(外形の平均径)が第2ランド部6の外径W3よりも大きい。また、第1ランド部5の外径W2は、ブラインドビアホール7の外径W1と以下の関係を有することが好ましい。つまり、第1ランド部5の外径W2は、ブラインドビアホール7の外径W1の2倍以上であることが好ましく、2.3倍以上であることがより好ましく、2.5倍以上であることがさらに好ましい。これにより、導電性ペーストの印刷歩留りの向上を図ることができる。一方、第1ランド部5の外径W2は、ブラインドビアホール7の外径W1の6倍以下であることが好ましく、5.5倍以下であることがより好ましく、5倍以下であることがさらに好ましい。第1ランド部5の外径W2が上記上限を超えると不必要に第1ランド部5が大きくなり過ぎ、第1導電パターン3の設計が困難となるおそれがある。
【0043】
また、第1ランド部5の径方向の幅(内周縁と外周縁との幅((W2−W1)/2))は、40μm以上150μm以下であることが好ましく、45μm以上125μm以下であることがより好ましい。第1ランド部5の径方向の幅が上記下限未満であると、導電性ペーストの印刷歩留りの向上が図れないおそれがある。また第1ランド部5の径方向の幅が上記上限を超えると、第1導電パターン3の設計が困難となるおそれがある。
【0044】
なお、第1ランド部5の外径W2は、具体的には、100μm以上400μm以下であることが好ましく、130μm以上380μm以下であることがより好ましく、150μm以上350μm以下であることがさらに好ましい。第1ランド部5の外径W2が上記下限未満であると、導電性ペーストの印刷歩留りが低下するおそれがある。また第1ランド部5の外径W2が上記上限を超えると、第1導電パターン3の設計が困難となるおそれがある。
【0045】
第2ランド部6の外径W3(外形の平均径)は、ブラインドビアホール7の外径W1の4倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましい。第2ランド部6の外径W3が上記上限を超えると、第2ランド部6を狭ピッチに配設することが困難となるおそれがあり、またインピーダンスの不整合を効果的に抑制することができないおそれがある。一方、第2ランド部6の外径W3は、ブラインドビアホール7の外径W1の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。第2ランド部6の外径W3が上記下限未満であると、第2ランド部6における第2導電パターン4と基板2との接着力ひいては第2ランド部9とブラインドビアホール7との導通性が不十分となるおそれがある。
【0046】
また、第2ランド部6の外径W3は、第1ランド部5の外径W2の5/6以下であることが好ましく、5/7以下であることがより好ましい。一方、第2ランド部6の外径W3は、第1ランド部5の外径W2の1/6以上であることが好ましく、1/3以上であることがより好ましい。第2ランド部6の外径W3と第1ランド部5の外径W2との比を上記範囲とすることによって、導電性ペーストの印刷歩留りの向上及び第2ランド部6の狭ピッチ化を図ることができ、さらにインピーダンスの不整合を効果的に抑制することができる。
【0047】
なお、第2ランド部6の外径W3は、具体的には、50μm以上300μm以下であることが好ましく、70μm以上280μm以下であることがより好ましく、90μm以上250μm以下であることがさらに好ましい。第2ランド部6の外径W3が上記下限未満であると、第2ランド部6における第2導電パターン4と基板2との接着力が不十分となるおそれがあり、また第2ランド部6の外径W3が上記上限を超えると、第2ランド部6を狭ピッチに配設することが困難となり、またインピーダンスの不整合を効果的に抑制できなくなるおそれがある。
【0048】
また、第1ランド部5の面積(ブラインドビアホール用孔8の開口面積を除いた円環状の平面視の面積)はブラインドビアホール7の面積(ブラインドビアホール用孔8の開口面積)の4倍以上50倍以下であることが好ましく、5倍以上25倍以下であることがより好ましい。これにより、導電性ペーストの印刷歩留りの向上が図れるとともに第1導電パターン3の設計が容易となる。
【0049】
また、第1ランド部5の面積(ブラインドビアホール用孔8の開口面積を除いた円環状の平面視の面積)は、第2ランド部6の面積の1.3倍以上5倍以下であることが好ましく、1.8倍以上4倍以下であることがより好ましい。これにより、導電性ペーストの印刷歩留りの向上と第2ランド部6の狭ピッチ化を両立することが可能となり、さらにはインピーダンスの不整合を効果的に抑制することができる。
【0050】
また、第2ランド部6の面積(平面視の面積)は、ブラインドビアホール7の面積(ブラインドビアホール用孔8の開口面積)の2.5倍以上20倍以下であることが好ましく、2.7倍以上7倍以下であることがより好ましい。第2ランド部6の面積が上記下限未満であると、第2ランド部6における第2導電パターン4と基板2との接着力が不十分となるおそれがあり、また第2ランド部6の面積が上記上限を超えると、第2ランド部6を狭ピッチに配設することが困難となり、またインピーダンスの不整合を効果的に抑制できなくなるおそれがある。
【0051】
[フレキシブルプリント配線板の製造方法]
次に、上記フレキシブルプリント配線板1を製造する方法について図2を参酌しつつ説明する。当該フレキシブルプリント配線板1の製造方法は、基板2の印刷面に第1ランド部5を有する第1導電パターン3を形成する第1導電パターン形成工程と、基板2の実装面に第1ランド部5に対向する第2ランド部6を有する第2導電パターン4を形成する第2導電パターン形成工程と、上記第1ランド部5及び基板2を貫通するブラインドビアホール用孔8を図2(c)のように形成するブランイドビアホール用孔形成工程と、上記ブラインドビアホール用孔8にブラインドビアホール7を図2(d)のように形成するブラインドビアホール形成工程を有する。
【0052】
(第1導電パターン形成工程及び第2導電パターン形成工程)
第1導電パターン形成工程及び第2導電パターン形成工程においては、基板2の各面に第1導電パターン3及び第2導電パターン4を形成する(図2(b)参照)。ここで、第2導電パターン4の第2ランド部6と第1導電パターン3の第1ランド部5とは対向する位置に形成される。なお、第2ランド部6及び第1ランド部5の形状等は上述のフレキシブルプリント配線板1で説明した通りであるのでここでの説明を省略する。なお、第2導電パターン4及び第1導電パターン3は従来公知の方法で形成することができ、例えば図2(a)のように基板2の各面に積層された金属層の所望箇所をエッチングすることによって図2(b)のように形成することができる。また、第1導電パターン形成工程と第2導電パターン形成工程とは、同時に行うことも可能であり、また別々に行うことも可能である。
【0053】
(ブラインドビアホール用孔形成工程)
ブラインドビアホール用孔形成工程においては、円環状の第1ランド部5の中央にレーザ光を照射することで基板2にブラインドビアホール用孔8を穿設している。また、レーザ光照射の後にデスミアすることによって残渣の除去を行う。
【0054】
(ブラインドビアホール形成工程)
ブラインドビアホール形成工程は、導電粒子を含む導電性ペーストを調製する工程と、ブラインドビアホール用孔8に導電性ペーストを印刷する工程と、印刷された導電性ペーストを流動させるべく一定時間放置する工程と、流動後の導電性ペーストを加熱して硬化させる工程とを有する。
【0055】
導電性ペーストを調製する工程においては、導電性ペーストのチクソトロピー指数が好ましくは0.40以下、より好ましくは0.25以下となるよう調製するとよい。なお、チクソトロピー指数は、以下の式(1)で算出される値である。
チクソトロピー指数=log(η1/η2)/log(D2/D1)・・・式(1)
D1及びD2はせん断速度を意味し、D1=2s−1、D2=20s−1である。
η1は、せん断速度D1のときの導電性ペーストの粘度を意味し、η2は、せん断速度D2のときの導電性ペーストの粘度を意味する。
【0056】
また、η1は、20Pa・s以上300Pa・s以下であることが好ましく、40Pa・s以上150Pa・s以下であることがより好ましい。このη1が上記範囲にあることで、容易かつ確実に導電性ペーストをブラインドビアホール用孔8に印刷し、好適なブラインドビアホール7を形成することができる。
【0057】
導電性ペーストを印刷する工程の具体的な印刷法としては、従来公知の手法を採用することができ、例えばスクリーン印刷方式やインクジェット印刷方式を採用することができる。
【0058】
[利点]
当該フレキシブルプリント配線板1は、実装面の第2ランド部6の外径よりも印刷面の第1ランド部5の外径が大きいので、導電性ペーストをブラインドビアホール用孔8に満たす際に、比較的広い第1ランド部5によって導電性ペーストの印刷位置の誤差を的確に吸収し、ブラインドビアホール用孔8に容易且つ確実に導電性ペーストを満たすことができ、このためブラインドビアホール7が容易且つ確実に形成でき、印刷歩留りの向上を図ることができる。
【0059】
特に、ブラインドビアホール7の外形と第1ランド部5の外形とが平面視同心の略円形に形成されているので、ブラインドビアホール用孔8の開口の外周に均等に第1ランド部5が配設され、これにより何れの方向に印刷ズレを起こしても、この第1ランド部5によって印刷位置の誤差を吸収し、印刷歩留りの向上をより図ることができる。
【0060】
また、当該フレキシブルプリント配線板1は、第1ランド部5の外径よりも第2ランド部6の外径が小さいので、第2ランド部6を狭ピッチに設けることができ、このためフリップチップのようにランドが狭ピッチで配設されているものも好適に対応できる。
【0061】
さらに、上述のように第2ランド部6が小さいので、第2ランド部6のコンデンサ容量が従来のものに比べて小さく、このためインピーダンスの不整合を効果的に抑制することができる。
【0062】
上述のように第2ランド部6が小さいので、従来のように各面のランド部が同径のものに比べて第1ランド部5及び第2ランド部6付近における当該フレキシブルプリント配線板1のフレキシブル性に富む。
【0063】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0064】
つまり、上記実施形態においては、両面プリント配線板の一実施例としてフレキシブルプリント配線板を例にとり説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。当該両面プリント配線板としては、リジッドプリント配線板を採用することも可能である。また、当該両面プリント配線板は、フレキシブルプリント配線板とリジッドプリント配線板とを一体化したリジッドフレキシブルプリント配線板や、多層構造のビルドアップ基板等に採用することも可能である。
【0065】
また、第1ランド部5の外径と第2ランド部6の外径との関係は、上記実施形態で示した数値範囲にあるものに必ずしも限定されるものではなく、第2ランド部6の外形の平均径が第1ランド部5の外形の平均径よりも小さいものであれば、本発明の範囲内である。
【0066】
さらに、上記実施形態においては、ブラインドビアホール7、第2ランド部6及び第1ランド部5の外形が何れも略円形のものについて説明したが、ブラインドビアホール7、第2ランド部6及び第1ランド部5の外形の形状は特に限定されるものではない。例えば、第1ランド部5を平面視四角形状として、隣接する他の第1ランド部5に接触せずに互いに近接して配設することができるよう設けることも設計変更可能な事項である。なお、この場合に第1ランド部5同士の間に絶縁壁を設けることも可能である。
【0067】
また、上記実施形態においては、ブラインドビアホール7の外形と第1ランド部5の外形とが相似形をなすものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。但し、上記実施形態のようにブラインドビアホール7の外形と第1ランド部5の外形とが相似形をなすことで、第1ランド部5の幅(円形の場合には径方向の幅)が一定となるので、精度良くブラインドビアホール7を形成することができる利点を有する。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、例えばフレキシブルプリント配線板等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 フレキシブルプリント配線板
2 基板
3 第1導電パターン
4 第2導電パターン
5 第1ランド部
6 第2ランド部
7 ブラインドビアホール
8 ブラインドビアホール用孔
図1
図2
図3