(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027377
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】室圧制御システムおよび一斉シャットオフ制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
F24F7/007 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-205760(P2012-205760)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-59125(P2014-59125A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大沢 信雄
(72)【発明者】
【氏名】大村 林太郎
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−019871(JP,A)
【文献】
特開平02−044135(JP,A)
【文献】
米国特許第05435779(US,A)
【文献】
特開平08−138702(JP,A)
【文献】
特開平10−154017(JP,A)
【文献】
特開平04−257635(JP,A)
【文献】
米国特許第05205783(US,A)
【文献】
特開平04−350434(JP,A)
【文献】
特開昭62−223546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象部屋へ吹き出す給気の風量を調節する給気バルブと、
前記対象部屋から吸い出す排気の風量を調節する一般排気バルブと、
前記給気バルブと前記一般排気バルブとを一斉に閉める一斉シャットオフ制御動作を始めるときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブとを制御して、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記一般排気バルブによって調節される排気風量との差の風量を常に一定値に維持しつつ、前記給気風量と前記排気風量とを減らす風量制御手段と、
前記給気風量と前記排気風量とがそれぞれシャットオフ位置に安全に移行させることが可能な所定の最小風量以下となったときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブとを一斉にシャットオフ位置まで閉めるシャットオフ制御手段とを備え、
前記シャットオフ位置に安全に移行させることが可能な、給気風量と排気風量のそれぞれの最小風量は、この給気風量と排気風量との差の風量が前記一定値になるように予め設定されることを特徴とする室圧制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の室圧制御システムにおいて、
さらに、前記対象部屋に設置された局所排気装置と、
この局所排気装置の排気風量を調節する局所排気バルブとを備え、
前記風量制御手段は、前記給気バルブと前記一般排気バルブと前記局所排気バルブとを一斉に閉める一斉シャットオフ制御動作を始めるときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブと前記局所排気バルブとを制御して、前記排気風量と前記局所排気バルブによって調節される局所排気風量との和を前記給気風量から引いた差の風量を、常に一定値に維持しつつ、前記給気風量と前記排気風量と前記局所排気風量とを減らし、
前記シャットオフ制御手段は、前記給気風量と前記排気風量と前記局所排気風量とがそれぞれシャットオフ位置に安全に移行させることが可能な所定の最小風量以下となったときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブと前記局所排気バルブとを一斉にシャットオフ位置まで閉めるものであり、
前記シャットオフ位置に安全に移行させることが可能な、給気風量と排気風量と局所排気風量のそれぞれの最小風量は、この排気風量と局所排気風量との和を給気風量から引いた差の風量が前記一定値になるように予め設定されることを特徴とする室圧制御システム。
【請求項3】
対象部屋へ吹き出す給気の風量を調節する給気バルブと前記対象部屋から吸い出す排気の風量を調節する一般排気バルブとを一斉に閉める一斉シャットオフ制御動作を始めるときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブとを制御して、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記一般排気バルブによって調節される排気風量との差の風量を常に一定値に維持しつつ、前記給気風量と前記排気風量とを減らす風量制御ステップと、
前記給気風量と前記排気風量とがそれぞれシャットオフ位置に安全に移行させることが可能な所定の最小風量以下となったときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブとを一斉にシャットオフ位置まで閉めるシャットオフ制御ステップとを含み、
前記シャットオフ位置に安全に移行させることが可能な、給気風量と排気風量のそれぞれの最小風量は、この給気風量と排気風量との差の風量が前記一定値になるように予め設定されることを特徴とする一斉シャットオフ制御方法。
【請求項4】
請求項3記載の一斉シャットオフ制御方法において、
前記風量制御ステップは、前記給気バルブと前記一般排気バルブと前記対象部屋に設置された局所排気装置の排気風量を調節する局所排気バルブとを一斉に閉める一斉シャットオフ制御動作を始めるときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブと前記局所排気バルブとを制御して、前記排気風量と前記局所排気バルブによって調節される局所排気風量との和を前記給気風量から引いた差の風量を、常に一定値に維持しつつ、前記給気風量と前記排気風量と前記局所排気風量とを減らし、
前記シャットオフ制御ステップは、前記給気風量と前記排気風量と前記局所排気風量とがそれぞれシャットオフ位置に安全に移行させることが可能な所定の最小風量以下となったときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブと前記局所排気バルブとを一斉にシャットオフ位置まで閉めるステップを含み、
前記シャットオフ位置に安全に移行させることが可能な、給気風量と排気風量と局所排気風量のそれぞれの最小風量は、この排気風量と局所排気風量との和を給気風量から引いた差の風量が前記一定値になるように予め設定されることを特徴とする一斉シャットオフ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内への給気風量や排気風量の制御により室圧を一定に保つ室圧制御システムに係り、特に風量制御に用いるバルブを一斉にシャットオフ位置まで閉める技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学実験では、実験作業過程において、人体に有害なガスや粉塵等が発生する場合が多い。これら有害物質の室内への拡散を防止し、人体への汚染を防ぐ装置の1つにヒュームフードがある。一般に、ヒュームフードは、上下または左右に開閉可能なサッシドア付きの囲い(エンクロージャ)を備えており、実験室の作業者はこのサッシドアからエンクロージャ内にアクセスすることができる。ヒュームフードで作業中の作業者が有害なガスや粉塵等に曝されないようにするために、エンクロージャは有害物質を除去する局所排気ダクトに接続されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
室圧制御システムは、ヒュームフード内で有害物質を扱う実験をする場合に、有害物質が部屋内に逆流しないようにサッシ面の面風速を所定の速度に維持するよう局所排気ダクトの風量を調整すると共に、有害物質が部屋の外に漏れ出したり外からの不純物等が部屋内に流入したりしないように部屋の圧力を一定に保つシステムである(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
図1は本発明の実施の形態に係る室圧制御システムの構成を示す図であるが、従来においてもシステムの概要は
図1と同様であるので、
図1を用いて従来の室圧制御システムについて説明する。室圧制御システムは、部屋100内に設置されたヒュームフード101と、ヒュームフード101に接続された局所排気ダクト102と、部屋100に給気を供給する給気ダクト103と、部屋100の空気を排気する一般排気ダクト104と、局所排気ダクト102の風量を調整する局所排気バルブEXVと、給気ダクト103の風量を調整する給気バルブMAVと、一般排気ダクト104の風量を調整する一般排気バルブGEXとから構成される。ヒュームフード101は、開閉可能なサッシ111と、サッシ111の開度を検出するサッシセンサ112と、検知範囲に人がいるかどうかを検出する人検知センサ113と、ヒュームフード101を使用する作業者に情報を通知するためと緊急時に強制的にフード内の空気を排気できるようにするためのヒュームフードモニタ114とを備えている。
【0005】
このような室圧制御システムでは、部屋100の圧力を設定値に維持するため、給気ダクト103の給気風量と一般排気ダクト104の排気風量と局所排気ダクト102の局所排気風量とが、「給気風量=一般排気風量+局所排気風量+オフセット風量」の関係を満たすように、給気バルブMAVと一般排気バルブGEXと局所排気バルブEXVの開度を制御している。また、サッシ111の開度に応じて局所排気バルブEXVを調節して局所排気風量を変化させて、省エネルギーを図っている。あるいは、人検知センサ113で人がいるかどうかを検出し、ヒュームフード101の前に人がいるときには局所排気バルブEXVを調節して局所排気風量を増やし、人がいないときには安全な待機レベルまで局所排気風量を低下させるようにして、省エネルギーを図っている(特許文献1参照)。また、更なる省エネルギーを実現するために、部屋100を使用しないときには、給気バルブMAVと一般排気バルブGEXと局所排気バルブEXVを一斉にシャットオフ位置まで閉めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−122939号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】松村 昭男,「研究施設環境管理支援システムの開発」,Savemation Review 2004年2月号,株式会社山武,2004年
【非特許文献2】石原正也,斉藤英弥,「室圧・風量制御の最新技術−クリティカル環境システム−」,Savemation Review 2004年2月号,株式会社山武,2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の室圧制御システムでは、全てのバルブを一斉にシャットオフ位置まで閉めてしまうと、バルブの制御速度の違い(閉めるまでの時間の違い)、バルブのサイズ(容量)の違い、給気バルブと排気バルブの設置数の違い等により、給気と排気のバランスが崩れてしまう場合があり、室内外の圧の変化により、機器やドアなどに破損が生じてしまう可能性があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、風量制御に用いるバルブを一斉にシャットオフ位置まで閉める際に、部屋に破損を生じさせることなくバルブを安全に閉めることができる室圧制御システムおよび一斉シャットオフ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の室圧制御システムは、対象部屋へ吹き出す給気の風量を調節する給気バルブと、前記対象部屋から吸い出す排気の風量を調節する一般排気バルブと、前記給気バルブと前記一般排気バルブとを一斉に閉める一斉シャットオフ制御動作を始めるときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブとを制御して、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記一般排気バルブによって調節される排気風量との差の風量を常に一定
値に維持しつつ、前記給気風量と前記排気風量とを減らす風量制御手段と、前記給気風量と前記排気風量とがそれぞれ
シャットオフ位置に安全に移行させることが可能な所定の最小風量以下となったときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブとを一斉にシャットオフ位置まで閉めるシャットオフ制御手段とを備え
、前記シャットオフ位置に安全に移行させることが可能な、給気風量と排気風量のそれぞれの最小風量は、この給気風量と排気風量との差の風量が前記一定値になるように予め設定されることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の室圧制御システムの1構成例は、さらに、前記対象部屋に設置された局所排気装置と、この局所排気装置の排気風量を調節する局所排気バルブとを備え、前記風量制御手段は、前記給気バルブと前記一般排気バルブと前記局所排気バルブとを一斉に閉める一斉シャットオフ制御動作を始めるときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブと前記局所排気バルブとを制御して、前記排気風量と前記局所排気バルブによって調節される局所排気風量との和を前記給気風量から引いた差の風量を、常に一定
値に維持しつつ、前記給気風量と前記排気風量と前記局所排気風量とを減らし、前記シャットオフ制御手段は、前記給気風量と前記排気風量と前記局所排気風量とがそれぞれ
シャットオフ位置に安全に移行させることが可能な所定の最小風量以下となったときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブと前記局所排気バルブとを一斉にシャットオフ位置まで閉める
ものであり、前記シャットオフ位置に安全に移行させることが可能な、給気風量と排気風量と局所排気風量のそれぞれの最小風量は、この排気風量と局所排気風量との和を給気風量から引いた差の風量が前記一定値になるように予め設定されることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の一斉シャットオフ制御方法は、対象部屋へ吹き出す給気の風量を調節する給気バルブと前記対象部屋から吸い出す排気の風量を調節する一般排気バルブとを一斉に閉める一斉シャットオフ制御動作を始めるときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブとを制御して、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記一般排気バルブによって調節される排気風量との差の風量を常に一定
値に維持しつつ、前記給気風量と前記排気風量とを減らす風量制御ステップと、前記給気風量と前記排気風量とがそれぞれ
シャットオフ位置に安全に移行させることが可能な所定の最小風量以下となったときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブとを一斉にシャットオフ位置まで閉めるシャットオフ制御ステップとを
含み、前記シャットオフ位置に安全に移行させることが可能な、給気風量と排気風量のそれぞれの最小風量は、この給気風量と排気風量との差の風量が前記一定値になるように予め設定されることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の一斉シャットオフ制御方法の1構成例において、前記風量制御ステップは、前記給気バルブと前記一般排気バルブと前記対象部屋に設置された局所排気装置の排気風量を調節する局所排気バルブとを一斉に閉める一斉シャットオフ制御動作を始めるときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブと前記局所排気バルブとを制御して、前記排気風量と前記局所排気バルブによって調節される局所排気風量との和を前記給気風量から引いた差の風量を、常に一定
値に維持しつつ、前記給気風量と前記排気風量と前記局所排気風量とを減らし、前記シャットオフ制御ステップは、前記給気風量と前記排気風量と前記局所排気風量とがそれぞれ
シャットオフ位置に安全に移行させることが可能な所定の最小風量以下となったときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブと前記局所排気バルブとを一斉にシャットオフ位置まで閉める
ステップを含み、前記シャットオフ位置に安全に移行させることが可能な、給気風量と排気風量と局所排気風量のそれぞれの最小風量は、この排気風量と局所排気風量との和を給気風量から引いた差の風量が前記一定値になるように予め設定されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、給気と排気の風量のバランスを維持しながら給気風量と排気風量を減らし、給気風量と排気風量が所定の最小風量以下となってから全バルブをシャットオフ位置まで閉めるようにしたので、部屋に破損を生じさせることなくバルブを安全に閉めることができ、省エネルギーおよび省コストを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る室圧制御システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る室圧制御システムのコントローラの構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態の一斉シャットオフ制御動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る室圧制御システムの構成を示す図である。本実施の形態の室圧制御システムは、部屋100内に設置されたヒュームフード101と、局所排気ダクト102と、給気ダクト103と、一般排気ダクト104と、局所排気バルブEXVと、給気バルブMAVと、一般排気バルブGEXとから構成される。
【0017】
図2は局所排気バルブEXV、給気バルブMAV、および一般排気バルブGEXを制御する本実施の形態のコントローラの構成を示すブロック図である。
コントローラ1は、局所排気バルブEXVを制御する局所排気風量制御部2と、給気バルブMAVを制御する給気風量制御部3と、一般排気バルブGEXを制御する排気風量制御部4と、部屋100に破損を生じさせることなく局所排気バルブEXVをシャットオフ位置に安全に移行させることが可能な局所排気風量の最小値を予め記憶する局所排気最小風量記憶部5と、部屋100に破損を生じさせることなく給気バルブMAVをシャットオフ位置に安全に移行させることが可能な給気風量の最小値を予め記憶する給気最小風量記憶部6と、部屋100に破損を生じさせることなく一般排気バルブGEXをシャットオフ位置に安全に移行させることが可能な排気風量の最小値を予め記憶する排気最小風量記憶部7と、局所排気バルブEXVをシャットオフ位置まで閉めるシャットオフ制御部8と、給気バルブMAVをシャットオフ位置まで閉めるシャットオフ制御部9と、一般排気バルブGEXをシャットオフ位置まで閉めるシャットオフ制御部10とを備えている。
【0018】
次に、本実施の形態の室圧制御システムの通常時の風量バランス制御動作について説明する。ここでは、給気ダクト103から吹き出す給気の風量をVmav、一般排気ダクト104で吸い出す排気の風量をVgex、局所排気ダクト102で吸い出す排気の風量をVexvとする。
【0019】
コントローラ1の局所排気風量制御部2は、ヒュームフード101のサッシ開口面積に基づいて、サッシ面の面風速が規定値(通常0.5m/s)となるように風量Vexvを定め、局所排気ダクト102の排気風量がVexvとなるように局所排気バルブEXVの開度を制御する。なお、ヒュームフード101のサッシ開口面積は、サッシセンサ112が検出するサッシ開度から求めることができるサッシ111の開口部高さと、既知のサッシ幅との乗算により決定することができる。
【0020】
コントローラ1の排気風量制御部4は、総排気風量(Vgex+Vexv)が一定となるように、サッシ開閉による排気風量Vexvの変動分だけ、風量Vgexを増減させ、一般排気ダクト104の排気風量がVgexとなるように制御出力値を出して一般排気バルブGEXの開度を制御する。
【0021】
コントローラ1の給気風量制御部3は、部屋100の使用時の最低換気風量を満足させるよう、少なくとも最低風量を常に吹き出すように風量Vmavを決定し、給気ダクト103の給気風量がVmavとなるように制御出力値を出して給気バルブMAVの開度を制御する。部屋100の最低換気風量を確保するため、Vmavは最低換気風量以上に設定される。
【0022】
以上のような風量の設定の仕方により、ヒュームフード101が使用されていないとき(すなわち、サッシ111が全閉のとき)、式(1)が成立する。
Vmav=Vgex+α ・・・(1)
【0023】
定数αは、部屋100から漏れていく風量を決定すると共に、部屋100を正圧にするか負圧にするかを決定するためのオフセット風量である。
次に、ヒュームフード101が使用されているときには、式(2)が成立する。
Vmav=Vgex+Vexv+α ・・・(2)
【0024】
以上の風量バランス制御動作によれば、ヒュームフード101のサッシ111の開閉に伴って局所排気風量Vexvが変更されたときに、この変更に伴って給気風量Vmavと排気風量Vgexが変更されることになる。
【0025】
次に、一時的に不使用になった部屋100を省コストで運用するため、あるいは部屋100を減菌・消毒するために、給気バルブMAVと一般排気バルブGEXと局所排気バルブEXVとを一斉にシャットオフ位置まで閉める一斉シャットオフ制御動作について説明する。
図3は一斉シャットオフ制御動作を説明するフローチャートである。
【0026】
室圧制御システムは、一斉シャットオフ制御動作開始信号が発生したときに(
図3ステップS1においてYES)、一斉シャットオフ制御動作を始める。上記のとおり、一斉シャットオフ制御動作が開示されるのは、一時的に不使用になった部屋100を省コストで運用しようとするときや、部屋100を減菌・消毒しようとするときである。一斉シャットオフ制御動作開始信号は、例えばヒュームフード101のサッシ111が一定時間以上全閉の状態のときに、図示しない生成手段によって生成されるようにしてもよいし、ヒュームフード101の人検知センサ113が一定時間以上人の存在を検知しないときに、生成手段によって生成されるようにしてもよいし、部屋100内に人が存在するか否かを示す在室情報を入退室管理システムから取得して、部屋100の在室人数が一定時間以上0のときに、生成手段によって生成されるようにしてもよいし、部屋100を減菌・消毒する作業者が作業開始を示す所定の操作を行ったときに、生成手段によって生成されるようにしてもよい。入退室管理システムは、人が所持している無線タグ等を利用して人の入退室を管理するものである。このような入退室管理システムは周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0027】
コントローラ1の局所排気風量制御部2は、一斉シャットオフ制御動作を始める場合、局所排気バルブEXVの開度を制御して、局所排気風量Vexvが局所排気最小風量記憶部5に記憶されている局所排気最小風量になるように局所排気風量Vexvを徐々に減らす(ステップS2)。
【0028】
コントローラ1の給気風量制御部3は、一斉シャットオフ制御動作を始める場合、給気バルブMAVの開度を制御して、給気風量Vmavが給気最小風量記憶部6に記憶されている給気最小風量になるように給気風量Vmavを徐々に減らす(ステップS3)。
【0029】
コントローラ1の排気風量制御部4は、一斉シャットオフ制御動作を始める場合、一般排気バルブGEXの開度を制御して、排気風量Vgexが排気最小風量記憶部7に記憶されている排気最小風量になるように排気風量Vgexを徐々に減らす(ステップS4)。このとき、排気風量制御部4は、排気風量Vgexが式(2)を満たすようにする。このように、排気風量Vgexが式(2)を満たすように制御することにより、給気と排気の風量のバランスを維持したまま可能な限り部屋全体の風量を絞ることができる。
【0030】
ステップS2〜S4の処理を実行するうちに、局所排気風量Vexvが局所排気最小風量以下となり、給気風量Vmavが給気最小風量以下となり、排気風量Vgexが排気最小風量以下となったときに(ステップS5においてYES)、給気バルブMAVと一般排気バルブGEXと局所排気バルブEXVとを一斉にシャットオフ位置(全閉位置)まで閉める(ステップS6)。すなわち、シャットオフ制御部8は、局所排気バルブEXVをシャットオフ位置まで閉め、シャットオフ制御部9は、給気バルブMAVをシャットオフ位置まで閉め、シャットオフ制御部10は、一般排気バルブGEXをシャットオフ位置まで閉める。なお、局所排気最小風量、給気最小風量、および排気最小風量は、予め式(2)を満たすように設定されていることが望ましい。
【0031】
以上のように、本実施の形態では、給気と排気の風量のバランスを維持しながら、給気風量と排気風量を減らし、給気風量と排気風量が所定の最小風量以下となってから全バルブをシャットオフ位置まで閉めるようにしたので、部屋に破損を生じさせることなくバルブを安全に閉めることができる。
【0032】
なお、一斉シャットオフ制御動作を開始しようとする時点で、ヒュームフード101を使用しておらず、局所排気バルブEXVが既に全閉状態となっている場合、排気風量制御部4は、ステップS4において排気風量Vgexが式(1)を満たすようにすればよい。そして、給気風量Vmavが給気最小風量以下となり、排気風量Vgexが排気最小風量以下となったときに(ステップS5においてYES)、シャットオフ制御部9は、給気バルブMAVをシャットオフ位置まで閉め、シャットオフ制御部10は、一般排気バルブGEXをシャットオフ位置まで閉めるようにすればよい。
【0033】
本実施の形態で説明したコントローラ1は、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
本実施の形態では、局所排気装置の1つとしてフュームフードを示したが、安全キャビネットなど、フュームフードと同様の役割を果たす装置にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、室圧制御システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…コントローラ、2…局所排気風量制御部、3…給気風量制御部、4…排気風量制御部、5…局所排気最小風量記憶部、6…給気最小風量記憶部、7…排気最小風量記憶部、8,9,10…シャットオフ制御部、100…部屋、101…ヒュームフード、102…局所排気ダクト、103…給気ダクト、104…一般排気ダクト、EXV…局所排気バルブ、MAV…給気バルブ、GEX…一般排気バルブ。