(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、様々な手法により積層体に加工を施して、装飾性の向上や多様化が検討されている。積層体は、内装材、包装紙、包装袋等の用途で適用されている。
例えば、特許文献1には、光輝性ホログラム装飾シートが記載されている。この光輝性ホログラム装飾シートは、ベースシートと、ポリエステル層と、光反射層と、絵柄層と、ホログラムエンボス層とが、順次、積層された積層体である。特許文献1によれば、絵柄層に透明な常温硬化型樹脂を塗布した後、ホログラムエンボス版を用いて賦形し、乾燥および硬化を経ることで、ホログラムエンボス層の凹凸面をシャープに仕上げることが可能であると記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、チューブ容器に用いる積層体が記載されている。この積層体は、内面樹脂層と、表面印刷投影層と、立体装飾樹脂層と、表面印刷とが、この順に積層されて構成される。表面印刷は、立体装飾樹脂層上に、文字や絵柄などを印刷して形成する。特許文献2によれば、表面印刷の文字や絵柄等の影が表面印刷投影層中の金属箔層面に投影され、文字や絵柄等が、その投影された影と多少のずれを生じて重なって、表面に印刷された文字や絵柄を立体的に表現できると記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る積層体1の断面図である。
積層体1は、基材2と、基材2に一方の面に形成された下地層3と、下地層3の上に形成された表面図柄層4と、基材2の他方の面に形成された粘着剤層5と、を備える。このように、積層体1は、表面図柄層4による装飾性と、粘着剤層5による粘着性とを有する装飾性粘着シートである。
【0013】
基材2としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂などの合成樹脂フィルムや、上質紙、含浸紙、グラシン紙、コート紙などの紙材や、不織布、木材等のシート材料や板状材料を用いることができる。
基材2は、透明であってもよく、顔料や染料等の着色剤を使用して着色された着色基材であってもよい。また、空隙を有するような発泡状態として、基材2に不透明性を付与してもよい。
【0014】
基材2の厚さ寸法は、特に限定されるものではなく、例えば、3μm以上10mm以下が好ましく、特に5μm以上1mm以下が好ましい。厚みが3μm未満だと厚みが薄いために基材2のコシが弱く、下地層3、表面図柄層4、および粘着剤層5の形成工程における基材2の硬さが不足し、支持体としての機能を果たせないために各種加工工程で支障をきたす場合がある。厚みが10mmを超えると、厚みが増してコシが強すぎて、長尺のロール状に巻くことが困難となったり、重量が増したりする場合がある。
基材2の形状は特に限定されることはないが、正方形や長方形などの矩形状や三角形、五角形、六角形などの多角形状、円形状、楕円形状、不定形状、長尺のロール形状など最終製品の用途により様々選択されればよく、本実施形態においては長方形状に形成されている。
【0015】
下地層3は、基材2と表面図柄層4との間に設けられた一色以上の色で着色されている層であり、図柄が印刷されていてもよい。図柄は、絵画、イラスト、写真、模様などを含む。
下地層3は、例えば、印刷、印字、塗料の塗布、転写シートからの転写、蒸着、スパッタリング等の方法によって形成することができる。基材2の一方の面には、下地層3を形成するための易接着コート、あるいはグロス調整用コート等のアンダーコート層が形成されていてもよい。また、下地層3は、基材2の全面に形成されていてもよいし、部分的に形成されていてもよい。下地層3の印刷方法としては、後述する透明インクの印刷方法で例示するものから適宜選択して用いることができる。
【0016】
表面図柄層4は、下地層3の上に透明インクを用いて図柄を印刷することで形成された層である。図柄は、絵画、イラスト、写真、模様などを含み、いわゆるベタ状に印刷されたものとは異なり、部分的に印刷されたものである。
表面図柄層4は、
図1に示すように、複数の凸部41と凹部42とで構成される凹凸形状を有することが好ましい。凸部41の高さ寸法は、1μm以上5mm以下が好ましく、5μm以上3mm以下がより好ましく、8μm以上2mm以下がさらに好ましく、13μm以上1mm以下が特に好ましい。凸部41の高さ寸法が1μm以上であれば、図柄を認識でき、さらに、5μm以上であれば、積層体1を視認する角度によっては、図柄をはっきり認識できるようになり、見る角度を変化させることで、図柄が見えたり見えにくくなったりするような外観の変化が生じ、従来にない新規な装飾性が積層体1に付与される。さらに、凸部41の高さ寸法が8μm以上であれば、上述の図柄による装飾性に加えて、鮮やかな光沢感が得られ、13μm以上であれば、さらに、光が当たった時の陰影等による立体感が得られる。また、凸部41の高さ寸法が5mmを超えると、突起部が高くなり、指で触ったり、物がぶつかったりした時に凸部41が欠けてしまう場合がある。
【0017】
透明インクとしては、光透過性に加え、良好な接着性、耐湿性、及び耐熱性等を備えているのが好ましい。
また、透明インクは、硬化後に適度の硬度を発揮するのが好ましい。例えば、透明インクは、透明なポリマーやワックス等の膜形成性成分の1種又は2種以上を溶剤等に溶解させたものなどを、適宜、用いることができる。
また、透明インクは、溶媒として水系溶媒を用いたインクや、有機溶剤を用いたインク等であってもよい。
また、透明インクは、紫外線で硬化する紫外線硬化型インク、常温で硬化する常温硬化型インク、湿気で硬化する湿気硬化型インク、加熱によって硬化する加熱硬化型インク等であってもよい。これらの中でも、紫外線硬化型インクは、印字層を多数積層させることができる点や迅速に表面図柄層4の形成を行うことができる点、さらに、溶媒を含まない点において好ましい。紫外線硬化型インクとしては、反応性モノマー、樹脂、顔料、分散剤、添加剤(安定化剤、界面活性剤)、重合開始剤等を含んで構成される。反応性モノマーとしては、カチオン系モノマーやラジカル系モノマーを挙げることができ、特にアクリレート、ビニルエーテル等のラジカル系モノマーが好ましい。樹脂としては、ポリオールアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、又はエポキシアクリレート樹脂といったアクリレート樹脂、メタクリレート樹脂やポリオール(メタ)アクリレート樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂などから1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系の化合物を挙げることができる。
また、透明インクは、無色透明でも有色透明でもよい。
【0018】
透明インクを印刷する方法としては、インクジェット印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法、凸版印刷法などが挙げられる。これらの印刷法の中では、少ないロットに対応可能な点や、精度良く積層印刷が可能な点で、インクジェット印刷法が好ましい。絵画、イラスト、写真、模様など図柄を、画像データやベクトルデータ等のデジタルデータとして予め作成し、このデジタルデータを用いて、例えば、インクジェット印刷法にて透明インクを印刷して表面図柄層4を形成して装飾性を積層体に付与することが好ましい。
【0019】
表面図柄層4の図柄は、下地層3の図柄の一部もしくは全体と対応した位置に形成されていてもよい。下地層3の図柄の上に、透明インクで表面図柄層4が形成されていることで、下地層3の図柄を立体的に視認させたり、下地層3の図柄に光沢感を付与させたりすることができ、積層体1の付加価値を高めることができる。
【0020】
粘着剤層5は、積層体1を被着体に貼り合わせるものである。粘着剤層5は、基材2の下地層3が設けられた面とは反対側の面に設けられている。粘着剤層5は、積層体1を被着体に接着することができる充分な接着力があれば、その材質は特に限定されず広く適用でき、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ポリエステル系の粘着剤を用いることができる。中でも、アクリル系粘着剤は接着力及び耐久性の面でバランスがとれているので、好ましい。粘着剤層5の厚さ寸法は特に限定されないが、例えば、1μm以上300μm以下が好ましく、5μm以上150μm以下が更に好ましい。粘着剤層5の厚さ寸法を300μm以下とすることで、搬送中の積層体1全体の厚さ寸法が過剰に大きくなることが防止されるので、軽量かつコンパクトになって搬送や被着体への貼付作業が容易になる。粘着剤層5の厚さ寸法を1μm以上とすることで、被着体に対する十分な接着力を付与することができる。
【0021】
積層体1は、装飾性と、粘着性とを有する粘着シートであることが好ましく、その用途としては、壁、窓、天井、柱などの内装に用いたり、ガラスや透明プラスチック等の透明素材の装飾に用いたり、看板に用いたり、車両や自動車のマーキングに用いたり、小物類に用いたりすることができる。
【0022】
次に、本実施形態に係る積層体1の製造方法および装飾性付与方法について説明する。
基材2の一方の面に、インクジェットプリンターにて下地層3を印刷する。
次に、下地層3の上に、透明インクを用いて図柄を印刷し表面図柄層4を形成する。表面図柄層4の形成も、インクジェットプリンターにて行う。透明インクは、紫外線硬化型のインクを用いることが好ましい。紫外線硬化型の透明インクを用いることで、表面図柄層4の硬化による製膜化が瞬時に行われるため凸部41の高さ寸法を大きくし、表面図柄層4の厚膜化が可能になる。
基材2の他方の面には、粘着剤を塗布して粘着剤層5を形成する。粘着剤層5の表面には積層体1を使用するまでの保護部材として剥離シートを貼り合わせておくことが好ましい。剥離シートとしては、特に限定されるものではなく、例えば、上述の基材2で説明したシート材料や板状材料を用いることができる。剥離シートは、構成材料自体の剥離性を利用してもよいし、剥離処理層を形成して剥離性を付与してもよい。当該剥離処理層は、特に限定されるものではないが、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、テトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、長鎖アルキル樹脂、長鎖アルキル基含有カルバメート樹脂、アルキド樹脂、或いは、これらの混合物等から成る剥離剤を剥離シートの表面に塗工することで形成される。
【0023】
本実施形態に係る積層体1によれば、次のような効果を奏する。
積層体1の透明インクで形成された表面図柄層4によって、積層体1を目視する角度や、積層体1に当たる光の角度によって、表面図柄層4に当たった光の反射の仕方が変化し、表面図柄層4や下地層3の図柄や積層体1の印象が大きく変化する。例えば、当該積層体1を目視する角度によって、図柄の見え方が、ほのかに認識できたり、くっきり認識できたりするなど、様々に変化する。このように、積層体1によれば、光の陰影を使った立体的デザインと下地層3の色や柄を活かした装飾が可能になる。
ゆえに、積層体1によれば、従来に無い、新規な装飾性を有する積層体を提供することができる。
また、本実施形態に係る装飾性付与方法は、基材2の上に下地層3を形成し、下地層3のさらに上に透明インクを用いて図柄を印刷して表面図柄層4を形成するので、当該図柄の見え方が、目視する角度等によってさまざまに変化する。ゆえに、積層体1への装飾性付与方法によれば、上述と同様、従来に無い、新規な装飾性を積層体へ付与することができる。
【0024】
<変形例>
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0025】
積層体は、粘着剤層が設けられていない印刷物であってもよい。例えば、当該印刷物を、両面テープ等による貼り付け媒体、あるいは接着剤等を用いて被着体に貼り付けて使用してもよい。
また、基材の両面に表面図柄層が形成された積層体であってもよい。
【0026】
また、前記実施形態では、基材と表面図柄層との間に下地層が設けられた積層体を例に挙げて説明したが、下地層が無い積層体であってもよい。
例えば、基材が着色されている着色基材であって、当該基材に直接、透明インクで図柄を印刷して表面図柄層を形成してある態様でもよい。
また、例えば、透明な基材の上に透明インクで図柄、例えば、木目調を印刷して表面図柄層を形成した積層体を作製し、この積層体を木板の上に載せることで、立体的な木目調の表現が可能になる。ここでは、木目調を例に挙げたが、その他の図柄であってもよい。
したがって、装飾性を有する積層体の製造方法としては、基材の上に、透明インクを用いて図柄を印刷する工程を備えればよい。
【実施例】
【0027】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。
本実施例では、予め着色された基材上に、種々の印刷条件で図柄を印刷して表面図柄層を形成し、積層体の装飾性を確認した。
【0028】
<実施例1>
基材は、リンテックサインシステム株式会社製の黒色の装飾用粘着シート(製品名:パロア PMO−022)であって、1220mm幅で、30m巻きのロール形状のものを用いた。当該シートの黒色面に、紫外線硬化型の透明インクを用いて図柄をA4サイズ(縦297mm×横210mm)で印刷した。図柄としては、蝶、花、及び市松模様が配されたデザインを用いた。なお、市松模様の格子を構成するそれぞれの四角形状(縦10mm×横10mm)には、ストライプ状に線を設けたデザインとした。透明インクは、富士フイルム株式会社製のインクジェットプリンタ用UV硬化型インク(製品名:UV−IJ INK LL391 CLEAR 600ML)を用いた。透明インクの印刷には、富士フイルムグラフィックシステムズ株式会社製のインクジェットプリンター(製品名:Acuity LED 1600)を用いた。インクジェットプリンターによる印刷条件は、表1に示す通り設定した。
【0029】
【表1】
【0030】
形成した表面図柄層の凸部の高さ寸法を測定した。その寸法測定結果を表1に示す。
【0031】
<実施例2〜13>
実施例2〜9の積層体は、表1に示すように印刷条件を変更した以外は、実施例1の積層体と同様にして作製した。
実施例10〜13の積層体は、表1に示すように、基材としてシルバー色の基材を用い、表1に示すように印刷条件を変更した以外は、実施例1の積層体と同様にして作製した。シルバー色の基材は、リンテックサインシステム株式会社製のシルバー色の装飾用粘着シート(製品名:パロア PME−335)であって、1220mm幅で、30m巻きのロール形状のものを用いた。
【0032】
<積層体の評価>
実施例1〜13の積層体を見る角度を変えながら観察し、装飾性を評価した。評価は、次に示す基準に基づいて行った。
A:鮮やかな光沢感および立体感が有る。
B:鮮やかな光沢感が有る。
C:見る角度によっては、図柄をはっきり認識できる。
D:ほのかに図柄を認識できる。
表1に、評価結果を示す。
【0033】
表1に示すように、2μm以上の凸部の高さ寸法であれば、少なくとも図柄を認識でき、さらに、5μm以上の凸部の高さ寸法であれば、見る角度によっては、図柄をはっきり認識できるようになった。このように、見る角度を変化させることで、図柄が見えたり見えにくくなったりするような外観の変化が生じ、従来に無い新規な装飾性が積層体に付与されたことを確認できた。
さらに、8μm以上の凸部の高さ寸法であれば、上述の図柄による装飾性に加えて、鮮やかな光沢感が得られることを認識でき、13μm以上の凸部の高さ寸法であれば、光が凸凹に当たることで生じる陰影によって立体感を認識でき、従来に無い新規な装飾性が積層体に付与されたことを確認できた。