(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027413
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】鉄道車両用折り戸
(51)【国際特許分類】
B61D 19/00 20060101AFI20161107BHJP
E06B 3/48 20060101ALI20161107BHJP
E05F 13/02 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
B61D19/00 B
E06B3/48
E05F13/02
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-253077(P2012-253077)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2014-100970(P2014-100970A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 充弘
(72)【発明者】
【氏名】千葉 淳
【審査官】
畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−269615(JP,A)
【文献】
特開平09−096158(JP,A)
【文献】
実開平04−103985(JP,U)
【文献】
特開平10−131551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 19/00
E05F 13/02
E06B 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の内部のユニット室の壁に形成され、上端または下端に案内部材を有する開口部を開閉するための折り戸であって、
前記開口部の周縁の一側に回動可能に一端部が接続される第1パネルと、
前記第1パネルの他側に配置され、上端または下端に前記案内部材により案内される被案内部材を有し、前記被案内部材を中心に回動可能な第2パネルと、
前記第1パネルの他端部に前記第2パネルの一端部を回動可能に連結する折り畳み用ヒンジと、
前記第2パネルの室内面のうち前記被案内部材の軸線よりも他端部寄りであって前記第2パネルの室内面の戸先側に設けられ、室内の使用者が前記折り戸を押して開くための押し部と、を備え、
前記押し部のうち前記戸先側の部分が、前記押し部のうち前記第1パネル側の部分よりも前記第2パネルの室内面から離れるように突出し、前記第2パネルの室内面に対して前記第1パネル側に向けて傾斜した傾斜面を有している、鉄道車両用折り戸。
【請求項2】
前記傾斜面は、一定角度で傾斜したテーパ面である、請求項1に記載の鉄道車両用折り戸。
【請求項3】
前記テーパ面に直交する仮想線は、前記第2パネルの動作軌跡のうち全閉状態から開き始めるときの軌跡方向に向いている、請求項2に記載の鉄道車両用折り戸。
【請求項4】
前記傾斜面は、水平断面視において室内面側に突出した円弧状である、請求項1に記載の鉄道車両用折り戸。
【請求項5】
前記押し部は、別体の押し部材を前記第2パネルの室内面に取り付けて形成されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鉄道車両用折り戸。
【請求項6】
前記押し部は、幅方向寸法よりも上下方向寸法が長い形状を有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の鉄道車両用折り戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の内部のユニット室の壁に形成された開口部を開閉するための折り戸に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、その内部に小便所用のトイレユニット室が設けられたものがある。室内空間が限られるため、このトイレユニット室のために十分なスペースを確保するのが難しくなり、特に車両サイズが小さい場合には、トイレユニット室は狭小になることが多い。そのため、小便所用のトイレユニット室のドアには、開閉動作時の使用スペースが少なくて済む折り戸が用いられることがある。例えば、特許文献1の折り戸には、室外側から折り戸を開けるための室外用引き手と、室内側から折り戸を開けるための室内用引き手とが設けられている。この折り戸では、室内用引き手が室内空間に向けて突出するため、鉄道車両に適用するとトイレユニット室の室内空間が狭くなるとともに、車両走行中の揺れにより室内の使用者の体が室内用引き手に当たるなどの不便があった。
【0003】
そこで、鉄道車両の内部の小便器用のトイレユニット室に設けた折り戸には、室内用引き手を設けずに、折り戸の室内面の所定箇所に平坦な押し板を目印として取り付け、室内の使用者が押し板を手で室外側に向けて押すことで折り戸を開けるようにしたものがある。これによれば、押し板が引き手のように室内空間に突出しないため、室内空間が狭くならないとともに、車両走行中の揺れにより室内の使用者の体が動いても使用者の邪魔にもならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−356062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、室内面に押し板を設けた折り戸では、室内の使用者が折り戸を押し開く際に、その押す箇所によっては容易に開かない場合がある。また、押し開く際に、意外と力が要り、非力な使用者とっては開けにくい場合があった。
【0006】
そこで本発明は、使用者が室内側から容易に押し開くことのできる鉄道車両用折り戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る鉄道車両用折り戸は、鉄道車両の内部のユニット室の壁に形成され、上端または下端に案内部材を有する開口部を開閉するための折り戸であって、前記開口部の周縁の一側に回動可能に一端部が接続される第1パネルと、前記第1パネルの他側に配置され、上端または下端に前記案内部材により案内される被案内部材を有し、前記被案内部材を中心に回動可能な第2パネルと、前記第1パネルの他端部に前記第2パネルの一端部を回動可能に連結する折り畳み用ヒンジと、前記第2パネルのうち前記被案内部材の軸線よりも他端部寄りの室内面に設けられ、室内の使用者が前記折り戸を押し開くための押し部と、を備え、前記押し部は、前記第2パネルの室内面に対して前記第1パネル側に向けて傾斜した傾斜面を有している。
【0008】
前記構成によれば、第2パネルが全閉状態から開き始めるときの第2パネルの厚み方向中心の軌跡の方向は、第2パネルに直交する方向となるが、第2パネルが全閉状態から開き始めるときの第2パネルの室内面の軌跡の方向は、第2パネルに直交する方向から角度をもつことになる。そして、使用者がユニット室の室内側から押し部の傾斜面を押した力は、その傾斜面に直交する方向に作用し、その傾斜面に直交する方向は、第2パネルの室内面に直交する方向から同様に角度をもつこととなる。それゆえ、押し部の傾斜面を押した力は、第2パネルが全閉状態から開き始めるときの押し部の軌跡の方向に作用しやすくなる。したがって、室内側から押して開くタイプの鉄道車両用折り戸において、使用者は室内側から折り戸を容易に開くことができる。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、使用者が室内側から容易に押し開くことのできる鉄道車両用折り戸を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る鉄道車両の折り戸及びその近傍を示す水平断面図である。
【
図2】
図1に示す折り戸の室内側から見た図面である。
【
図3】
図1に示す折り戸の要部の水平断面図である。
【
図4】
図3に示す折り戸の力学的原理を説明する概念図である。
【
図5】実施例の押し部材を押して折り戸を開けることが可能な力を測定した実験結果を示す図面である。
【
図6】比較例の押し部材を押して折り戸を開けることが可能な力を測定した実験結果を示す図面である。
【
図7】第2実施形態に係る鉄道車両の折り戸の要部の水平断面図である。
【
図8】第3実施形態に係る鉄道車両の折り戸の要部の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る鉄道車両1の折り戸5及びその近傍を示す水平断面図である。
図2は、
図1に示す折り戸5の室内側から見た図面である。
図1及び2に示すように、鉄道車両1の内部には、小便所用のトイレユニット室2が設けられている。そのトイレユニット室2の壁3に形成された開口部4(出入口)には、開口部4を開閉するための折り戸5が取り付けられている。トイレユニット室2の室内には、折り戸5と反対側にて小便器6及び手洗器7が設けられている。
【0013】
折り戸5は、第1パネル11と、窓部13aを有する第2パネル13と、第1パネル11に対して第2パネル13を回転自在に連結する折り畳み用ヒンジ12とを備えている。第2パネル13の幅W2は、第1パネル11の幅W1よりも大きい。第1パネル11の一端部11aは、開口部4の周縁の一側部8にオートヒンジ14を介して回動可能にされている。オートヒンジ14は、折り戸5を全閉状態とする方向に付勢する付勢部材(図示せず)を内蔵した公知のヒンジである。折り畳み用ヒンジ12は、第1パネル11の他端部11bと第2パネル13の一端部13eとを回動自在に連結しており、折り戸5が全閉状態のときに第1パネル11と第2パネル13とが同一平面上に並ぶようになっている。
【0014】
第2パネル13の他端部13b(戸先部)には、その先端に鉛直方向に延びる戸先ゴム15が取り付けられており、開口部4の周縁の他側部9には、折り戸5の全閉時に戸先ゴム15に接触する相手ゴム10が取り付けられている。また、第2パネル13の上端の幅方向中心には、ガイド用のピン18(被案内部材)が上方に突出しており、開口部4の上側にはピン18を案内するガイドレール19(案内部材)が設けられている。これにより、第2パネル13が室外方向に押されると、第2パネル13がピン18の軸線CLを中心として回転するとともに、ピン18がガイドレール19に案内されて、折り戸5が開放されることになる。なお、本実施の形態では、第2パネル13を案内するための部材として、ピン18とガイドレール19を用いているが、これらに限られるものではない。また、ピン18は、第2パネル13の上端に設けても良いし、下端あるいは双方に設けても良い。
【0015】
第2パネル13の室外面13cの他端部13b寄りには、室外の使用者が折り戸5を引いて開くための引き手16が取り付けられている。第2パネル13の室内面13dの他端部13b寄りには、室内の使用者が折り戸5を押して開くための押し部として、第2パネル13とは別体の押し部材17が取り付けられている。
【0016】
図3は、
図1に示す折り戸5の要部の水平断面図である。
図3に示すように、押し部材17は、金属板を曲げ加工して形成されたものである。押し部材17は、一端部21aから他端部21bにいくにつれて第2パネル13の室内面13dから離れるように鉛直線周りに傾斜して配置された傾斜壁部21と、その傾斜壁部21の他端部21bから第2パネル13に向けて延びる垂直壁部22とを有している。傾斜壁部21の室内側の面は、第2パネル13の室内面13dに対して第1パネル11側、即ちピン18の軸線CL側に向けて傾斜した傾斜面21cである。傾斜面21cは、傾斜壁部21の一端部21aから他端部21bに向けて一定角度で傾斜したテーパ面であり、押し部材17の上端から下端まで形成されている。本実施形態では、傾斜面21cは、室内側から見た押し部材17において幅方向の一端部から他端部まで全体的に設けられている。押し部材17は、例えば、傾斜壁部21を第2パネル13内の芯材23に締結具24(ネジ等)で固定されている。
【0017】
図4は、
図3に示す折り戸5の力学的原理を説明する概念図である。
図4に示すように、第2パネル13が全閉状態から開き始めるときの第2パネル13の厚み方向中心Cの軌跡方向D1は、第2パネル13に直交する方向となる。しかし、第2パネル13が全閉状態から開き始めるときの第2パネル13の室内面13dの軌跡方向は、第2パネル13に直交する方向から角度をもつことになる。本実施形態では、テーパ面である傾斜面21cに直交する仮想線Lは、第2パネル13の動作軌跡のうち全閉状態から開き始めるときの傾斜面21cの軌跡方向D2に向いている。本実施形態では、傾斜面21cに直交する仮想線Lは、第2パネル13の動作軌跡のうち全閉状態から開き始めるときの傾斜面21cの軌跡方向D2に一致している。
【0018】
そして、使用者がトイレユニット室2の室内側から押し部材17の傾斜面21cを押した力は、その傾斜面21cに直交する方向(仮想線L)に作用し、その傾斜面21cに作用する力は、第2パネル13の動作軌跡のうち全閉状態から開き始めるときの傾斜面21cの軌跡方向D2に一致することとなる。それゆえ、押し部材17の傾斜面21cを押した力は、第2パネル13が全閉状態から開き始めるときの押し部材17の軌跡方向に十分に作用することとなる。したがって、室内側から押して開くタイプの鉄道車両用折り戸5において、少ない力でも室内側から開けやすくすることが可能となる。
【0019】
また、第2パネル13を押して折り戸5を開くにあたっては、第2パネル13の回動中心であるピン18の軸線CLから離れたところを押した方が、テコの原理により必要な力が小さくて済む。特に、本実施の形態の折り戸において、ピン18は第2パネル13の上端に設けられており、使用者が視覚的に認識することが困難であり、第2パネル13の回動中心が折り畳み用ヒンジ12と誤認することがある。かかる場合、使用者がピン18の軸線CLの近傍を押した場合、押した力は第2パネル13の回転にほとんど寄与せず、折り戸5を開きにくい状況となる。
【0020】
そこで、本実施の形態では、押し部材17を設けることにより、第2パネル13の回動中心からの距離が大きい箇所を使用者が押すように誘導することができる。
【0021】
押し部材17は、戸先側(戸先ゴム15側)にいくにつれて第2パネル13の室内面13dからの突出量が大きくなるので、その視覚的効果から、使用者は押し部材17の傾斜面21cのうち戸先側を押すように促されることとなる。よって、その観点からも、押し部材17は、使用者が小さい力で折り戸5を開けることができることに貢献することが可能となる。特に、押し部材17を第2パネル13の他端部寄りに設けることにより、使用者が第2パネル13の回動中心から離れた位置を押すように視覚的に促すことができる。
【0022】
図5は、実施例の押し部材17を押して折り戸を開けることが可能な力を測定した実験結果を示す図面である。
図6は、比較例の押し部材99を押して折り戸を開けることが可能な力を測定した実験結果を示す図面である。
図5及び6に示した実施例及び比較例は、同構造の折り戸のうち押し部材17,99のみを取り換えて比較実験したものである。実施例の押し部材17は、上述した実施形態の構造である。比較例の押し部材99は、平坦な板であり、第2パネルと平行である。
【0023】
本実験では、携帯型のプッシュプルゲージを用いて、押し部材17,99の所定の押圧箇所を押して、折り戸が開けることができる押し力を測定した。プッシュプルゲージで押し部材17,99を押す箇所は、3列5行の計15箇所とした。その実験の結果、
図5及び6に示すように、押し部材17,99を押して折り戸を開けることが可能な力は、実施例の押し部材17の方が、比較例の押し部材99に比べて70%ほどに小さくできることが分かった(
図5及び6に記載の各数字の単位はN)。また、押し部材17,99を押して折り戸を開けることが可能な力は、押圧箇所が戸先側にいくにつれて小さくなることも確認された。
【0024】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る鉄道車両の折り戸105の要部の水平断面図である。
図7に示すように、第2パネル13の室内面13dの他端部13b寄りには、室内の使用者が折り戸105を押して開くための押し部として、第2パネル13とは別体の押し部材117が取り付けられている。押し部材117は、第2パネル13の室内面13dと平行な平行壁部120と、平行壁部120から他端部21bにいくにつれて第2パネル13の室内面13dから離れるように鉛直線周りに傾斜して配置された傾斜壁部121と、その傾斜壁部121の他端部から第2パネル13に向けて延びる垂直壁部122とを有している。押し部材117は、例えば、平行壁部120を第2パネル13内の芯材23に締結具24で固定されている。傾斜壁部121の室内側の面は、第2パネル13の室内面13dに対してピン18の軸線CL(
図2参照)側に向けて傾斜した傾斜面121cである。傾斜面121cは、傾斜壁部121の一端部から他端部に向けて一定角度で傾斜したテーパ面であり、押し部材117の上端から下端まで形成されている。本実施形態では、傾斜面121cは、室内側から見た押し部材117において幅方向の中央部分から他端部までに設けられている。
【0025】
使用者が室内側から押し部材117の傾斜面121cを押した力は、その傾斜面121cに直交する方向に作用し、その傾斜面121cに作用する力は、第2パネル13の動作軌跡のうち全閉状態から開き始めるときの傾斜面121cの軌跡方向に一致することとなる。それゆえ、押し部材117の傾斜面121cを押した力は、第2パネル13が全閉状態から開き始めるときの押し部材117の軌跡方向に作用しやすくなる。したがって、室内側から押して開くタイプの鉄道車両用折り戸105において、少ない力でも室内側から開けやすくすることが可能となる。また、第2パネル13を押して折り戸105を開くにあたっては、第2パネル13の回動中心であるピン18の軸線CL(
図2参照)から離れたところを押した方が、テコの原理により必要な力が小さくて済む。本実施形態の押し部材117は、戸先側に傾斜壁部121が設けられているので、その視覚的効果から、使用者は押し部材117のうち戸先側を押すように促されることとなる。よって、その観点からも、押し部材117は、使用者が小さい力で折り戸105を開けることができることに貢献することが可能となる。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0026】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る鉄道車両の折り戸205の要部の水平断面図である。
図8に示すように、第2パネル13の室内面13dの他端部13b寄りには、室内の使用者が折り戸205を押して開くための押し部として、第2パネル13とは別体の押し部材217が取り付けられている。押し部材217は、第2パネル13の室内面13dと平行な平行壁部220と、平行壁部220の他端部21b側に連続して室内面13dから離れるように突出した円弧壁部221とを有している。押し部材217は、例えば、平行壁部220を第2パネル13内の芯材23に締結具24で固定されている。円弧壁部221の室内側の面のうち平行壁部220側の面は、第2パネル13の室内面13dに対してピン18の軸線CL側(
図2参照)側に向けて傾斜した傾斜面221cである。傾斜面221cは、円弧壁部221の一端部から中央部に向けて円弧状に傾斜した面であり、押し部材217の上端から下端まで形成されている。本実施形態では、円弧壁部221は、室内側から見た押し部材217において幅方向の中央部分から他端部までに設けられている。
【0027】
使用者が室内側から押し部材217の傾斜面221cを押した力は、その傾斜面221cに直交する方向に作用し、その傾斜面221cに作用する力は、第2パネル13の動作軌跡のうち全閉状態から開き始めるときの傾斜面221cの軌跡方向に一致することとなる。それゆえ、押し部材217の傾斜面221cを押した力は、第2パネル13が全閉状態から開き始めるときの押し部材217の軌跡方向に作用しやすくなる。したがって、室内側から押して開くタイプの鉄道車両用折り戸205において、少ない力でも室内側から開けやすくすることが可能となる。また、第2パネル13を押して折り戸205を開くにあたっては、第2パネル13の回動中心であるピン18の軸線CL(
図2参照)から離れたところを押した方が、テコの原理により必要な力が小さくて済む。本実施形態の押し部材217は、戸先側に円弧壁部221が設けられているので、その視覚的効果から、使用者は押し部材217のうち戸先側を押すように促されることとなる。よって、その観点からも、押し部材217は、使用者が小さい力で折り戸205を開けることができることに貢献することが可能となる。なお、第1実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0028】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。前記各実施形態は互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明に係る鉄道車両用折り戸は、室内側から押して開くようにした鉄道車両用折り戸において、少ない力でも室内側から開けやすくすることが可能となる優れた効果を有し、この効果の意義を発揮できる鉄道車両用折り戸に広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0030】
1 鉄道車両
2 トイレユニット室
3 壁
4 開口部
5,105,205 折り戸
11 第1パネル
12 折り畳み用ヒンジ
13 第2パネル
17,117,217 押し部材(押し部)
21c,121c,221c 傾斜面(テーパ面)
221 円弧壁部
CL 軸線
D1,D2 軌跡方向
L 仮想線