特許第6027417号(P6027417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027417
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】樹脂成形品の成形方法と成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   B29C45/26
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-259244(P2012-259244)
(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公開番号】特開2014-104659(P2014-104659A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】表 征史
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−68910(JP,A)
【文献】 特開2010−272469(JP,A)
【文献】 特開2011−83986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結部によって先端が互いに連結された少なくとも第1と第2の成形部を含み、前記第1と第2の成形部の基端側から樹脂を注入して成形を行う樹脂成形品の製造方法であって、前記第1と第2の成形部にそれぞれ樹脂を注入する工程と、前記第1の成形部を流動しさらに前記連結部を流動して前記第2の成形部に流動しようとする樹脂を停留する工程と、前記第2の成形部に樹脂が充填された後に前記樹脂の停留を解除する工程とを含むことを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記樹脂の停留を解除する工程は、前記第2の成形部に充填された樹脂の圧力によって行うことを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
連結部によって先端が互いに連結された少なくとも第1と第2の成形部を含んで構成されるキャビティと、前記第1と第2の成形部の基端側から前記キャビティに樹脂を注入するゲートと、前記第1と第2の成形部のうち前記ゲートからの距離が長い第2の成形部と前記連結部との連結箇所に配設されて当該連結部を流動する樹脂を停留する樹脂ストッパ部とを備え、前記樹脂ストッパ部は前記第2の成形部を流動する樹脂によって前記樹脂の停留を解除するように構成されていることを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項4】
前記樹脂ストッパ部は、前記連結部の樹脂流路を閉塞可能なスライダと、前記スライダを当該閉塞する位置に保持する付勢手段とを備え、当該付勢手段は前記第2の成形部に充填される樹脂の圧力によって前記スライダが前記閉塞する位置から開放する位置に移動され得る付勢力に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形品の成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金型を用いた射出成形法により成形する樹脂成形品に関し、特に一部において連結された複数のライン状の部分を含む樹脂成形品およびその成形方法と成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車用ランプでは、従来の標識機能に加え、ランプの外観上の意匠効果を高めるために、ランプ内にデザインされたライトガイド(導光体)を配設することが行われている。この種のライトガイドの一つとして複数のライン状のライトガイドを端部において互いに連結したデザインのものが提案されている。例えば、図1に示すランプ100では、ランプハウジング110内に光源ユニット111と共に複数本(ここでは3本)のほぼL字状をした成形部11,12,13を連結部10において連結した格子状ないしは櫛状のライトガイド1を配設し、当該ライトガイド1の各成形部11,12,13の基端部11a,12a,13aの基端面にLED等の光源101を対向配置している。そして、各光源101から出射した光を各成形部11,12,13の細幅をした基端部11a,12a,13aから内部に導光し、かつ各成形部11,12,13の表面から光を出射させて発光状態とすることによってランプ100の意匠効果を高めている。このライトガイド1では、各成形部11,12,13は外部から観察される意匠部として構成され、各基端部11a,12a,13aの端面部位と前記光源101、および連結部10は疑似リフレクタ102等によって覆い隠されてランプ100の外部から観察されることがない非意匠部として構成されている。
【0003】
このライトガイド1は透光性のある樹脂を金型を用いた射出成形によって成形されるが、成形時に成形部11,12,13にウェルドラインが生じることがある。すなわち、具体例については後述するが、金型のキャビティ内に設けたゲートから樹脂を射出したときに、注入された樹脂は各成形部11,12,13を成形しながら流動される。このとき、長さ(距離)の短い側の成形部を成形した樹脂は連結部を通して長さ(距離)の長い側の成形部を逆方向に成形して行き、この成形部において両側からの樹脂が衝突状態に合流してウェルドラインを生成してしまう。そのため、成形部11,12,13ではライトガイドに導光された光を受けてウェルドラインが発光し、標識灯配光を阻害するグレア光となったり、ライトガイドないしはランプの外観の見栄え低下が生じることになる。
【0004】
このようなウェルドラインを回避するには、複数本の成形部ごとにゲートを独立して設けるとともに、各成形部を成形する樹脂が先端の連結部においてほぼ同じタイミングで合流するように各ゲートの樹脂射出量を調整することが考えられるが、このような樹脂射出量の調整を行うためには、例えば各ゲートの開口寸法を相違させる等の調整が必要であり、金型構造が複雑なものになり、コスト高をまねくことになる。また、成形部におけるウェルドラインの発生を確実に防止することは難しい。一方、特許文献1は樹脂成形後における樹脂成形品の表面への塗料充填における流動末端に生じる配向ムラ対策の技術であるが、金型のキャビティの一部に凸部や可動駒を配設し、この凸部や可動駒によってキャビティ内における樹脂の流れを遅延させ、塗料流動末端の位置を外観に影響を与えない部分に設定している。したがって、この技術を応用してライトガイドの樹脂成形における意匠部でのウェルドラインを回避することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−136536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術をライトガイドの樹脂成形に適用しようとしてキャビティの一部に凸部を配設した場合には、当該凸部において常に樹脂の流れが遅延されかつ樹脂の流れに乱れが生じるため、当該部分においてボイド(気泡)が生じる等の樹脂の充填性が悪くなり、成形品質が低下するという問題が生じる。一方、特許文献1に記載のようにキャビティの一部に可動駒を配設した場合にはこのような問題は生じないが、可動駒を移動させるための機構が必要であり、成形装置の構造が複雑になって金型のコスト高をまねくとともに、可動駒を移動させるタイミングをとることが難しく、成形作業が煩雑なものになる。
【0007】
本発明の目的はこのような成形品質の低下や金型構造の複雑化を生じることなく、ウェルドラインによる外観品質の低下を防止した樹脂成形品成形方法と成形装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の成形方法は、連結部によって先端が互いに連結された少なくとも第1と第2の成形部を含み、第1と第2の成形部の基端側から樹脂を注入して成形を行う樹脂成形品の製造方法であって、第1と第2の成形部にそれぞれ樹脂を注入する工程と、第1の成形部を流動しさらに連結部を流動して第2の成形部に流動しようとする樹脂を停留する工程と、第2の成形部に樹脂が充填された後に樹脂の停留を解除する工程とを含むことを特徴とする。特に、樹脂の停留を解除する工程は、第2の成形部に充填された樹脂の圧力によって行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様の成形装置は、連結部によって先端が互いに連結された少なくとも第1と第2の成形部を含んで構成されるキャビティと、第1と第2の成形部の基端側からキャビティに樹脂を注入するゲートと、第1と第2の成形部のうちゲートからの距離が長い第2の成形部と連結部との連結箇所に配設されて当該連結部を流動する樹脂を停留する樹脂ストッパ部とを備えており、樹脂ストッパは第2の成形部を流動する樹脂によって樹脂の停留を解除するように構成されていることを特徴とする。この樹脂ストッパ部は、連結部の樹脂流路を閉塞可能なスライダと、スライダを当該閉塞する位置に保持する付勢手段とを備えており、付勢手段は第2の成形部に充填される樹脂の圧力によってスライダが閉塞する位置から開放する位置に移動され得る付勢力に設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の成形方法及び成形装置により成形される樹脂成形品は、意匠部としての成形部に樹脂のウェルドラインが存在しないのでグレア光が発生せず、外観上の見栄えの良い樹脂成形品となる。特に、樹脂成形品をライトガイドとして構成したときには、意匠部を導光する光がウェルドラインによってエッジ光となることがなく、均一な明るさの発光部として構成することができる。
【0012】
本発明の樹脂成形品の成形方法および成形装置によれば、樹脂ストッパ部によって非意匠部としての連結部において樹脂の流動を停留するので、意匠部としての成形部において樹脂が衝突して合流することを未然に防止でき、意匠部に樹脂のウェルドラインが生じない樹脂成形品が製造できる。また、樹脂ストッパ部は樹脂圧力によって自動的に連結部を開閉するので、樹脂ストッパ部ないし金型の構成が簡略化でき、低コストに製造できるとともに、樹脂成形に際しての樹脂の充填性の低下を防止して成形品質の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態のライトガイドを内装したランプの一例の外観図。
図2】本発明の一実施形態のライトガイドの外観図。
図3】本発明の一実施形態のライトガイドを成形する金型のa−a線、b−b線に沿う鉛直断面図と水平断面図。
図4】樹脂ストッパ部の構成と動作を説明する拡大斜視図。
図5】樹脂成形動作(その1)を説明する金型の模式的な水平断面図。
図6】樹脂成形動作(その2)を説明する金型の模式的な水平断面図。
図7】樹脂成形動作(その3)を説明する金型の模式的な水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。この実施形態では本発明の樹脂成形品を、図1に示したような複数本の成形部の各先端部を連結部において連結した曲がり櫛状のライトガイド1として構成した例について説明する。すなわち、このライトガイド1は、図2に示すように、基端側領域が細幅で先端側領域が太幅に形成された3本のほぼL字型をした成形部11,12,13を有しており、これらの成形部は各先端部において連結部10によって連結されている。このライトガイド1は、図1に示したようにランプ100に配設したときに、基端部に対向配置された光源101から出射した光が成形部11,12,13ないし連結部10の内部に導光され、成形部11,12,13や連結部10において一部の光が外部に出射されて発光状態とされる。成形部11,12,13はランプ100の外部から観察することが可能な意匠部として構成されるが、連結部10はランプ100に配設されている疑似リフレクタ(エクステンション)102によって覆い隠されるため外部から観察されることがない非意匠部として構成される。したがって、以降は意匠部、非意匠部として説明する。なお、前記意匠部11,12,13の表面には出射する光を屈折、拡散して所要の配光とするための凹凸やステップ等の配光手段11b,12b,13bが形成されているが、ここでは詳細な説明は省略する。
【0015】
図3(a),(b)は前記ライトガイド1を樹脂成形するための金型の鉛直断面図と水平断面図であり、それぞれ同図のa−a線、b−b線に沿った箇所の断面図である。この金型2は下側の固定型2Dと、上側の可動型2Uを有しており、これら固定型2Dと可動型2Uとの間に前記ライトガイド1に対応する形状のキャビティ2Cが形成されている。すなわち、このキャビティ2Cは、基端側領域が細幅で先端側領域が太幅に形成された3本のほぼL字型をした意匠部21,22,23と、これらの意匠部21,22,23の先端部を互いに連結する非意匠部20からなるキャビティである。前記固定型2Dには、前記キャビティ2Cの3つの意匠部21,22,23の各基端部21a,22a,23aに対応する位置にそれぞれ1つ、合計で3つのゲート24が開口されており、前記ライトガイド1を成形するための透光性樹脂をこれらのゲート24からキャビティ2C内に射出するように構成される。ここで、前記意匠部21,22,23の基端から前記非意匠部20までの長さ(距離)は、意匠部21、意匠部22、意匠部23の順序で大きくされている。換言すれば、この順序で各意匠部21,22,23のキャビティ容積が大きくされている。
【0016】
前記固定型2Dと可動型2Uとの間には、前記意匠部22,23と前記非意匠部20の連結箇所に臨んでそれぞれ樹脂ストッパ部25A,25Bが配設されている。すなわち、これら樹脂ストッパ部25A,25Bは前記3本の意匠部21,22,23のうち、ゲート24からの距離が最も短い意匠部21を除く他の2つの意匠部22,23と非意匠部20が連結される箇所にそれぞれ配設されている。
【0017】
前記2つの樹脂ストッパ部25A,25Bは、図4に1つの樹脂ストッパ部25Aの概略斜視図を示すように、前記意匠部22と、先端側の非意匠部20とが連結された箇所において、当該非意匠部20の一部を意匠部22の反対側に向けて所要の幅寸法でかつ所要の長さ寸法で延設した凹状の溝部26を有している。この溝部26にはスライダ27が溝部26の長手方向に摺動可能に内装されている。このスライダ27は金型を構成している材料と同じ、または同様な材料で構成されており、樹脂成形時の加熱によっても形状が変形されることはない。また、前記スライダ27の後面と溝部26の内底面との間に所定のバネ力に設定された圧縮コイルスプリング28が弾装されており、スライダ27はこの圧縮コイルスプリング28のバネ力によって前面方向への移動習性が与えられている。前記溝部26の幅寸法は前記意匠部22の幅寸法よりも若干大きくされており、前記スライダ27の幅寸法もこの溝部26の幅寸法に等しくされているので、スライダ27が前記圧縮コイルスプリング28によって溝部26内において前面方向に移動されたときには、当該スライダ27の前面は前記意匠部22の先端面(意匠部22と非意匠部20との仮想の境界面)に当接した状態で保持されることになる。また、前記スライダ27の長さ寸法は前記非意匠部20の幅寸法よりも大きくされているので、スライダ27の前面が先端面に当接された状態のときには、非意匠部20はスライダ27によって塞がれている状態にある。樹脂ストッパ部25Bについても、前記意匠部22を意匠部23におきかえれば同じ構成である。なお、スライダ27の前面の少なくとも一部が意匠部22の先端面に当接されて非意匠部20を塞ぐ状態に保持されるのであれば、スライダ27の幅寸法は必ずしも意匠部22の幅寸法より大きくなくてもよい。
【0018】
この金型2を用いて前記ライトガイド1を製造する際には、これまでのライトガイドの製造と全く同様に、固定型2Dに可動型2Uを密接した上で、各ゲート24からそれぞれ透光性樹脂をキャビティ2Cに射出し、当該樹脂をキャビティ内に充填した上で冷却して硬化させた後に、可動型2Uを離型してキャビティ2Cから成形品を取り出すだけでよい。図5(a)はこの成形時におけるキャビティ内での樹脂の流動状態を示す図である。図5(a)のように、樹脂Rを各ゲート24からキャビティ2C内に注入すると、当該樹脂Rは3つの意匠部21,22,23のそれぞれに向けて流動される。各意匠部21,22,23の長さは相違しているのにかかわらずこれら意匠部21,22,23を流動される樹脂Rは同じ流速で流動されるため、ゲート24からの距離が短い側の意匠部(本発明の第1の成形部、以下同じ)21に樹脂が充填されても、距離が長い側の意匠部(本発明の第2の成形部、以下同じ)22およびさらに距離が長い側の意匠部23では未だ完全に樹脂Rが充填されない。そのため、距離が長い側の意匠部22に樹脂Rを完全に充填させようとしたときには、距離が短い側の意匠部21では樹脂Rは意匠部21を越えて先端側の非意匠部20にまで流動されることになる。
【0019】
このとき、仮に金型2に実施形態のような樹脂ストッパ部25A,25Bが存在していないとすると、図5(b)に示すように、距離が短い側の意匠部21から非意匠部20に流動された樹脂は、隣接する距離が長い側の意匠部22の先端側から当該意匠部22に向けて反対方向に流動されることになる。したがって、この距離が長い側の意匠部22ではゲート24から流動されてきた樹脂Rと、非意匠部20から当該意匠部22に反対方向から流動されてきた樹脂Rが衝突して合流し、これら樹脂Rの合流によって当該意匠部22においてウェルドラインWLが発生することになる。このウェルドラインWLによって、前記したように意匠部22が発光状態とされたときに、グレア光の発生及び当該意匠部22の外観を低下する要因になる。
【0020】
しかし、この実施形態では、図6(a)に示すように、非意匠部20には距離が長い側の意匠部22との連結箇所に樹脂ストッパ部25Aが設けられており、この樹脂ストッパ部25Aのスライダ27によって当該連結箇所において非意匠部20が塞がれているので、意匠部21から非意匠部20を流動されてきた樹脂Rはこの樹脂ストッパ部25Aによって流動が停留されることになる。したがって、距離の長い側の意匠部22に樹脂Rが充填されるまで非意匠部20を流動された樹脂Rが当該意匠部22の先端側から反対方向に流動されてくることはなく、前記したような意匠部22における樹脂Rの衝突によるウェルドラインWLの発生が防止できる。
【0021】
図6(b)に示すように、当該距離の長い側の意匠部22に樹脂Rが充填される状態になると、当該樹脂Rの流動圧力、すなわち樹脂Rの射出圧力がスライダ27の前面に加えられるため、スライダ27は圧縮コイルスプリング28のバネ力に抗して溝部26に押し込まれる。そのため、スライダ27による非意匠部20の閉塞状態が解除されることになり、停留されていた非意匠部20の樹脂Rと、距離の長い側の意匠部22を流動してきた樹脂Rが一体となって合流し、意匠部22よりもさらに距離の長い側の意匠部23に向けて非意匠部20を流動されることになる。
【0022】
この間、図7(a)に示すように、さらに距離の長い側の意匠部23にはゲート24から樹脂Rが流動されているが、この時点では当該意匠部23を充填するまでに至っていない。したがって、非意匠部20を流動されてきた樹脂Rは、今度はさらに距離の長い側の意匠部23に反対方向から流動されようとするが、この意匠部23と非意匠部20との連結箇所に配設されている樹脂ストッパ部25Bによって流動が停留されることになる。すなわち、この状況では、当該さらに距離の長い側の意匠部23は本発明における第2の成形部になり、これに隣接する前記意匠部22は本発明における第1の成形部になる。この停留はさらに距離の長い側の意匠部23に樹脂Rが充填されるまで継続され、図7(b)に示すように、当該意匠部23に樹脂Rが充填される状態になると、この意匠部23の樹脂圧力によって樹脂ストッパ部25Bのスライダ27が圧縮コイルスプリング28のバネ力に抗して溝部26に押し込まれ、スライダ27による非意匠部20の閉塞状態が解除される。これにより、非意匠部20で停留されていた樹脂Rと、意匠部23を流動してきた樹脂Rが合流され、結果として樹脂Rがキャビティ2C内に充填されることになる。したがって、意匠部23における樹脂Rの衝突による合流が防止されるので、当該意匠部23におけるウェルドラインWLの発生が防止できる。
【0023】
このように、金型2に樹脂ストッパ部25A,25Bを設けることにより、第1の成形部としての、相対的に距離の短い側の意匠部21または22を流動された樹脂Rが連結部としての非意匠部20を流動して、第2の成形部としての相対的に距離の長い側の意匠部22または23に反対方向から流動することを防止することができ、当該距離の長い側の意匠部22,23におけるウェルドラインWLの発生を防止することができる。この樹脂ストッパ部25A,25Bは圧縮コイルスプリング28によって付勢されたスライダ27を備え、当該樹脂ストッパ部25A,25Bまで流動されてきた樹脂Rの注入圧力によって移動されて非意匠部20を開放するので、開放時には樹脂Rの円滑な流動が確保されることになり、キャビティ2Cへの樹脂Rの充填性を高め、ボイド等の発生を防止して樹脂成形品質を高めることができる。また、これによりスライダ27を能動的に開閉動作するための構成は不要であり、あるいはスライダ27の動作タイミングを検知するためのセンサ等の構成も不要であるので、樹脂ストッパ部25A,25Bの構成が簡略化でき、金型2を低コストに構成することができる。
【0024】
ここで、樹脂ストッパ部は実施形態の構成に限られるものではない。すなわち、スライダを通常は連結部を塞ぐ位置に保持し、樹脂の圧力でスライダを移動させる構成とすればよいので、スライダを弾性保持している圧縮コイルスプリングを他の構成のバネ部材で構成してもよく、あるいはゴム等の弾性材や空気圧等を利用した構成としてもよい。また、樹脂ストッパ部として、回動動作されるヒンジ体を捩じりバネ部材で弾性支持し、このヒンジ体を樹脂の圧力によって回動動作することによって連結部を開閉する構成としてもよい。
【0025】
実施形態では3本の意匠部を備えるライトガイドの例を説明したが、意匠部の数や形状は任意である。意匠部、すなわち本発明の成形部は少なくとも2つあればよく、あるいは4つ以上であってもよい。この場合、樹脂ストッパはゲートからの距離が長い側の成形部と、連結部とを連結する箇所に設ければよいので、樹脂ストッパの数も成形部の数に対応した数を配設すればよい。また、実施形態では3本の意匠部に対してそれぞれ独立したゲートを配設しているが、各意匠部を基端部において連結部によって連結し、この連結部に共通する1つのゲートを配設した構成としてもよい。このようにすれば、ゲート数を削減することが可能になり金型のさらなる簡易化、低コスト化が実現できる。
【0026】
本発明を適用する樹脂成形品は実施形態に記載のライトガイドに限定されるものではなく、樹脂成形時にキャビティ内に射出された樹脂がキャビティ内において複数の流路を流動して成形が行われる形状の樹脂成形品であれば同様に適用できる。特に、本発明における第1の成形部と第2の成形部は、実施形態ではゲートからの距離が短い側の成形部を第1の成形部とし、距離が長い側の成形部を第2の成形部としているが、各成形部のキャビティ容積を比較し、キャビティ容積の小さい側を第1の成形部とし、キャビティ容積の大きい側を第2の成形部として構成すればよく、このような構成の金型でも第2の成形部における樹脂のウェルドラインの発生を防止することができる。実施形態のような自動車用ランプに適用する場合には、自動車のリアコンビネーションランプやヘッドランプに適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明はウェルドラインによる品質低下を防止することが要求される樹脂成形品と、その成形方法および成形装置に採用することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 ライトガイド
10 連結部(非意匠部)
11,12,13 成形部(意匠部)
2 金型
2C キャビティ
20 連結部(非意匠部)
21,22,23 成形部(意匠部)
24 ゲート
25A,25B 樹脂ストッパ部
26 溝部
27 スライダ
28 圧縮コイルスプリング
100 ランプ
101 光源(LED)
102 疑似リフレクタ
110 ランプハウジング
111 光源ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7