特許第6027424号(P6027424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6027424-固形筆記体 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027424
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】固形筆記体
(51)【国際特許分類】
   C09D 13/00 20060101AFI20161107BHJP
   B43K 19/00 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   C09D13/00
   B43K19/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-272209(P2012-272209)
(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2014-118422(P2014-118422A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 太郎
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−006248(JP,U)
【文献】 特開2009−166310(JP,A)
【文献】 特開昭57−090085(JP,A)
【文献】 特開昭49−062230(JP,A)
【文献】 特開平11−268409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
B43K 7/04、 8/20−19/18、23/08、
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる感温変色性色彩記憶組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と賦形材を含む固形筆記体において、前記賦形材としてスチレン変性ポリオレフィンワックスを用いたことを特徴とする固形筆記体。
【請求項2】
前記賦形材としてさらにポリオレフィンワックスを用いたことを特徴とする請求項1に記載の固形筆記体。
【請求項3】
前記賦形材としてさらにショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルを用いたことを特徴とする請求項1または2に記載の固形筆記体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形筆記体に関する。さらに詳しくは、可逆熱変色性を有する筆跡を形成することが可能な固形筆記体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、常温域など一定の温度域において、変色前後の状態を互変的に記憶保持できる可逆熱変色性組成物を用いた固形筆記体が提案されている(例えば特許文献1〜3)。
【0003】
前記固形筆記体は、賦形材であるワックス中に添加する着色剤として可逆熱変色性組成物単独又はそのマイクロカプセル封入物を用いることで、温度変化により変色する筆跡を形成するものである。特に、加熱消色タイプの可逆熱変色性組成物を封入するマイクロカプセル顔料を用いた場合、摩擦熱によって筆跡を容易に消去できるため、誤記などの修正などが可能な利便性の高い筆記体となり、例えば、ノートや手帳への筆記や、描画等に利用可能である。しかしながら、前記固形筆記体では、賦形材などに用いる材料によっては、可逆熱変色性組成物が本来持つ変色温度領域が変わってしまったり、変色自体に影響するなど、変色特性に影響するなどの問題があった。また、筆記体として十分な強度を有する場合においては、固形筆記体の筆跡濃度が薄くなったり、筆跡濃度が十分な場合においては、固形筆記体の強度が低下するなど、固形筆記体として問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−6248号公報
【特許文献2】特開2008−291048号公報
【特許文献3】特開2009−166310号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】近藤保、小石真純共著 「マイクロカプセル−その製法・性質・応用−」三共出版(株) 1977年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、筆跡の変色特性に影響を及ぼすことがなく、筆跡濃度が高く、十分な強度が得られる固形筆記体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる感温変色性色彩記憶組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(以下、マイクロカプセル顔料ということがある)と賦形材を含む固形筆記体の、賦形材に特定のワックスを用いることなどにより、上記課題が解決され、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
「1.少なくとも(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる感温変色性色彩記憶組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と賦形材を含む固形筆記体において、前記賦形材としてスチレン変性ポリオレフィンワックスを用いたことを特徴とする固形筆記体。
2.前記賦形材としてさらにポリオレフィンワックスを用いたことを特徴とする第1項に記載の固形筆記体。
3.前記賦形材としてさらにショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルを用いたことを特徴とする第1項または第2項に記載の固形筆記体。」に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固形筆記体の賦形材としてスチレン変性ポリオレフィンワックスを用いたことにより、固形筆記体を用いて被筆記面に筆記した際の変色特性に影響を及ぼすことなく、筆跡濃度が向上する。さらに固形筆記体の強度が向上し、輸送時や落下に対する耐衝撃性や筆記する際の筆圧に対する折れなどに対する耐性が向上するなど優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の固形筆記体の筆跡の、変色挙動示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の固形筆記体は、少なくとも(イ)、(ロ)、(ハ)成分からなる感温変色性色彩記憶組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と賦形材を含むが、賦形材としてスチレン変性ポリオレフィンワックスを用いたことが特徴的である。
【0011】
本発明の固形筆記体は、第1の発色状態と第2の発色状態を互変的に呈することができる。本発明で言う、第1の発色状態と第2の発色状態を互変的に呈するとは、有色(1)と有色(2)の二つの発色した状態、発色状態と消色状態または消色状態と発色状態を互変的に呈することを意味する。即ち、第1の発色状態から温度が上昇して第2の発色状態へ変化する場合、有色(1)から有色(2)への変化、発色状態から消色状態への変化、即ち、加熱消色型の変化を含んでいる。
【0012】
本発明の固形筆記体で筆記した際の筆跡の変色挙動について、加熱消色型を例に、図1と共に説明する。図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t(以下、完全消色温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t(以下、消色開始温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t(以下、発色開始温度と言うことがある)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t(以下、完全発色温度ということがある)における濃度を示す点である。変色温度域は前記tとt間の温度域であり、発色状態と消色状態の両状態が共存でき、tとtの間の温度域において完全発色状態と完全消色状態を選択的に呈することができる温度域となる。また、線分EFの長さが変色の割合を示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅( 以下、ΔHと言うことがある)である。本発明において、このΔH値を有することで、一定の温度域で第1の発色状態と第2の発色状態が選択的に保持されるヒステリシス特性を示すこととなる。
【0013】
本発明の固形筆記体において、変色特性に影響を及ぼすことがなく、強度が高くなるのは、以下のメカニズムによると推察している。即ち、変色特性は可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に内包した感温変色性色彩記憶組成物に基づく。前記のマイクロカプセル顔料は固形筆記体中で各種配合材と相互作用を生じ難いようにマイクロカプセル壁膜により隔離性を付与しているが、固形筆記体に配合する材料として極性物質が多く含まれていると、マイクロカプセル壁膜の隔離性を低下させ、内包している感温変色性色彩記憶組成物や固形筆記体中に配合した材料がマイクロカプセルの内外へ浸透するなどにより、組成物のバランスが崩れたり、電子供与性呈色性有機化合物が各種配合材中の電子受容性化合物と呈色反応を生じるなどの相互作用が強くなりすぎ、結果として、筆跡の消去跡が自然に再発色するなど、いわゆる変色性能が劣化する傾向にある。具体的にはアルコール、ケトン、エステルなどの極性物質であるが、スチレン変性ポリオレフィンワックスが含まれていると、マイクロカプセルと極性物質との前記相互作用を緩和し、感温変色性色彩記憶組成物の変色性能に影響を及ぼすことがないと考えられる。さらに、スチレン変性ポリオレフィンワックスを用いると、変性によって導入された芳香環同士のπ−π相互作用などにより、賦形材が強固なネットワークを形成することから結合力が増し、固形筆記体の強度も同時に向上すると考えられる。
【0014】
本発明の固形筆記体は、賦形材を用いるが、前記賦形材としては、スチレン変性ポリオレフィンワックスを用いる。スチレン変性ポリオレフィンワックスとしては、具体的には、星光PMC(株)製のSPWシリーズなどが挙げられる。
【0015】
さらに賦形材としては、例えばワックス、ゲル化剤、粘土などを併用することが出来る。ワックスとしては、従来公知のものであればいずれを用いてもよく、具体的にはカルナバワックス、木ろう、蜜ろう、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、キャンデリラワックス、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。ゲル化剤としては従来公知のものを用いることができ、例えば12ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール類、トリベンジリデンソルビトール類、アミノ酸系油、高級脂肪酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイトなどが挙げられる。スチレン変性ポリオレフィンワックスに他の賦形材を併用する際には、ポリオレフィンワックスを用いることが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、αオレフィン重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のワックスなどが挙げられる。
【0016】
特に、前記ポリオレフィンワックスの軟化点が100℃〜130℃の範囲にあるとともに、針入度が10以下であるものは、筆記感が高いために、好ましく用いられる。針入度が10を越えると、固形筆記体が柔らかすぎて筆記し難くなる傾向が見られ、しかも、擦過消去時に筆跡が紙面上で伸びてしまう(ワックスが薄層化される)ために筆記面の空白部分を汚染したり、他の紙への色移りや汚れを生じる。
【0017】
尚、前記ポリオレフィンワックスの軟化点、針入度の測定方法は、JIS K2207に規格化されており、針入度の値は、0.1mmを針入度1と表す。従って、数字が小さいほど硬く、大きいほど柔らかい固形筆記体である。
【0018】
具体的には、ネオワックスシリーズ(ヤスハラケミカル(株)製 ポリエチレン)、サンワックスシリーズ(三洋化成工業(株)製 ポリエチレン)、ハイワックスシリーズ(三井化学(株)製 ポリオレフィン)、A−Cポリエチレン(Honeywell社製 ポリエチレン)等が挙げられる。
【0019】
本発明の固形筆記体には、さらにショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルの少なくとも一種を含有しても良い。これらを併用することで、固形筆記体の強度を十分に保ちながら、筆跡濃度の向上を図ることが出来る。
【0020】
極性の低いスチレン変性ポリオレフィンワックスと極性の高いショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルなどを併用すると混合されたワックスの親和性に起因するミクロ的な相分離が生じると考えられる。スチレン変性ポリオレフィンワックスの強度向上効果が得られるとともに、ミクロ相分離による崩壊性も付与されることから、固形筆記体としての磨耗量が増加する傾向となり、結果として筆跡濃度が向上すると推察される。
【0021】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、特にC12〜C22の脂肪酸を構成脂肪酸とするエステルが好ましく、より好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸が有用である。具体的には、三菱化学フーズ(株)製:リョートーシュガーエステルシリーズ、第一工業製薬(株)製:シュガーワックスシリーズ等が挙げられる。
【0022】
また、本発明の固形筆記体に用いるデキストリン脂肪酸エステルとしては、特にC14〜C18の脂肪酸を構成脂肪酸とするエステルが好適であり、より好ましくは、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸が有用である。具体的には、千葉製粉(株)製:レオパールシリーズ等が挙げられる。
【0023】
前記ショ糖脂肪酸エステルまたはデキストリン脂肪酸エステルの配合割合としては、スチレン変性ポリオレフィンワックスに対して、30〜300質量%が好ましい。この範囲より小さいと発色濃度が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと前述したような固形筆記体の変色性能が劣化する傾向が見られる。好ましくは、50〜250質量%であり、この範囲にあると、固形筆記体の変色性能と筆跡濃度を両立することができる。
【0024】
本発明の固形筆記体に用いる賦形材の配合割合としては、固形筆記体全質量に対し0.2〜70質量%、が好ましい。この範囲より小さいと固形筆記体としての形状を得られ難くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと十分な筆記濃度が得られにくくなる傾向が見られる。好ましくは、0.5〜40質量%であり、この範囲にあると、固形筆記体の形状と筆跡濃度を両立することができる。
【0025】
本発明の固形筆記体に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(イ)成分としては、通常、感熱紙などの感熱材料に用いられる、所謂ロイコ染料を用いることができる。具体的には、ジフェニルメタンフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類などが挙げられる。
【0026】
より具体的には、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3´,6´−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、3´,6´−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、3´,6´−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン等を挙げることができる。
【0027】
更には、蛍光性の黄色乃至赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
【0028】
本発明の固形筆記体に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群などがある。活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂などが挙げられる。また、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩を用いることもできる。
【0029】
より具体的には、フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナンなどが挙げられる。
【0030】
また、前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物なども用いることができる。
【0031】
さらに、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物(特開平11−129623号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステル(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル(特開2003−253149号公報)等を用いた加熱発色型の可逆熱変色性組成物を適用することもできる
【0032】
本発明の固形筆記体に用いるマイクロカプセル顔料に内包する前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分としては、固形筆記体中での結晶化度が16〜100の範囲となることが必要である。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
【0033】
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリンなどを用いることができる。
【0034】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10〜16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17〜23の脂肪酸エステル化合物を用いてもよい。
【0035】
具体的には、エステル類としては、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシルなどが挙げられる。
【0036】
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナデカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2−ドコサノン、ラウロン、ステアロンなどが挙げられる。
【0037】
さらに、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類としては、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトンなどが挙げられる。
【0038】
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0039】
さらに、前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
【化1】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X1、X2のいずれか一方は−(CH2)nOCOR2又は−(CH2)nCOOR2、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、R2は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y1及びY2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。)
【0040】
前記(化1)で示される化合物のうち、R1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、さらにR1が水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
【0041】
なお、(化1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(化2)で示される化合物が用いられる。
【化2】
(式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。)
【0042】
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルなどを例示できる。
【0043】
さらに、前記(ハ)成分として、下記一般式(化3)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
【0044】
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルなどを例示できる。
【0045】
さらに、前記(ハ)成分として下記一般式(化4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
【0046】
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルなどを例示できる。
【0047】
さらに、前記(ハ)成分として下記一般式(化5)で示される化合物を用いることもできる。
【化5】
(式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
【0048】
前記化合物としては、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルなどを例示できる。
【0049】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
【化6】
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
【0050】
前記化合物としては、こはく酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステルなどが挙げられる。
【0051】
本発明の固形筆記体に用いるマイクロカプセル顔料に内包する(イ)、(ロ)、(ハ)の3成分の配合比としては、濃度、変色温度変色形態や各成分の種類により決まるが、一般的に所望の特性が得られる配合比は、質量比で、(イ)成分:(ロ)成分:(ハ)成分=1:0.1〜50:1〜800であり、好ましくは、(イ)成分:(ロ)成分:(ハ)成分=1:0.5〜20:5〜200である。これらの各成分は、各々二種類以上を混合して用いてもよい。
【0052】
本発明の固形筆記体に用いるマイクロカプセル顔料には、その機能に影響を及ぼさない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤、防腐・防黴剤などの各種添加剤を添加することができる。
本発明の固形筆記体は、第1の発色状態と第2の発色状態が、有色(1)と有色(2)の変化をする場合、染料や顔料などの非熱変色性の着色剤を配合することで達成できる。
【0053】
本発明に用いるマイクロカプセル顔料は、内包物と壁膜の質量比が、内包物:壁膜=1:1〜7:1であることが好ましい。この範囲より内包物の比率が大きくなると、壁膜の厚みが薄くなり、圧力や熱に対して弱くなりマイクロカプセルが破壊される傾向があり、この範囲より小さいと、発色状態での濃度や視認性が低下する傾向がある。より好ましくは、内包物:壁膜=1:1〜6:1であり、この範囲にあると、発色状態での濃度や視認性が高く、マイクロカプセルが破壊されることがない。
【0054】
本発明の固形筆記体に用いるマイクロカプセル顔料は、特に限定されないが平均粒子径が0.1〜50μmであることが好ましい。この範囲より小さいと、発色濃度が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと固形筆記体に用いる際に、分散安定性や加工性が劣る傾向が見られる。より好ましくは、0.3〜30μmである。この範囲にあると、発色状態も良好で、分散安定性や加工性がよくなる。
【0055】
本発明でいうマイクロカプセル顔料の平均粒子径とは、粒子の外径を測定したときの体積基準で表わしたD50の値で表されるが、ここでは、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置((株)堀場製作所製;LA−300)を用いて測定してその数値を基に平均粒子径(メジアン径)を算出した値を用いる。
【0056】
本発明の固形筆記体に用いるマイクロカプセル顔料の配合割合としては、前記固形筆記体全質量に対し、1〜70質量%が好ましい。この範囲より小さいと発色濃度が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと固形筆記体の強度が低下する傾向が見られる。好ましくは、5〜50質量%、さらに好ましくは、10〜40質量%であり、この範囲にあると、固形筆記体の強度と筆跡濃度を両立することができる。
【0057】
前記マイクロカプセル顔料は、製造方法としては、例えば、非特許文献1(近藤保、小石真純共著、「マイクロカプセル−その製法・性質・応用−」三共出版(株)、1977年)に記載されているような一般的に知られている方法を用いることができる。具体的には、コアセルベート法、界面重合法、界面重縮合法、in−situ重合法、液中乾燥法、液中硬化法、懸濁重合法、乳化重合法、気中懸濁被覆法、スプレードライ法などが挙げられ、適宜選択される。
【0058】
本発明の固形筆記体は、必要に応じて、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、体質材、粘度調整剤、防かび剤、防腐剤、抗菌剤、紫外線防止剤、光安定材、香料などが挙げられる。前記体質材としては、例えばタルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、窒化硼素、チタン酸カリウム、ガラスフレークなどが挙げられ、特に成形性の点からタルク、炭酸カルシウムがこのましい。体質材は、本発明の固形筆記体の強度の向上や書き味を調整する目的で配合される。
【0059】
本発明の固形筆記体は、第1の発色状態と第2の発色状態が、有色(1)と有色(2)の変化をする場合、染料や顔料などの非熱変色性の着色剤を配合することで達成できる。
【0060】
本発明の固形筆記体は、各種被筆記面に対して、筆記することが可能である。さらに、その筆跡は、指による擦過や加熱具又は冷熱具の適用により変色させることができる。
【0061】
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な手段として摩擦部材が用いられる。
【0062】
前記摩擦部材は、弾性感に富み、摩擦時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好ましく用いられる。前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂などを用いることができる。前記摩擦部材は固形筆記体と別体の任意形状の部材である摩擦体とを組み合わせて固形筆記体セットを得ることもできるが、固形筆記体または、固形筆記体を外装収容物に収容した固形筆記具の外装に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れたものとなる。具体的には、外装が木や紙などの鉛筆や、クレヨンなどの形状に、摩擦部材を設けた形態などが挙げられる。
【0063】
前記冷熱具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片などの冷媒を充填した冷熱変色具や保冷剤、冷蔵庫や冷凍庫の適用などが挙げられる。
【実施例】
【0064】
(マイクロカプセル顔料Aの製造)
(イ)成分として2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン1.0部、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール3.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0質量部からなる感温変色性色彩記憶組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0質量部、助溶剤40.0質量部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5質量部を加え、更に攪拌を続けて熱変色マイクロカプセル懸濁液を得た。前記懸濁液を遠心分離して熱変色マイクロカプセルを単離した。なお、前記マイクロカプセルの平均粒子径は2.3μmであり、t:−20℃、t:−10℃、t:48℃、t:58℃、ΔH:68℃、感温変色性色彩記憶組成物:壁膜=2.6:1.0のヒステリシス特性を有する挙動を示し、ピンク色から無色、無色からピンク色へ可逆的に色変化した。
【0065】
(マイクロカプセル顔料Bの製造)
(イ)成分として1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン1.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン5.0部、(ハ)成分としてカプリン酸トリデシル50.0質量部からなる感温変色性色彩記憶組成物を加温溶解し、エポン828(油化シェルエポキシ(株)製、エポキシ樹脂)10部とメチルエチルケトン10部の混合溶液に混合したのち、これを10%ゼラチン水溶液100部中に滴下し、微小滴になるよう攪拌する。別に用意した5部の硬化剤U(油化シェルエポキシ(株)製、エポキシ樹脂のアミン付加物)を45部の水に溶解させた溶液を前記攪拌中の溶液中に徐々に添加し、液温を80℃に保って約5時間攪拌を続け、熱変色マイクロカプセル懸濁液を得た。前記懸濁液を遠心分離して熱変色マイクロカプセルを単離した。なお、前記マイクロカプセルの平均粒子径は2.6μmであり、t:8℃、t:13℃、t:23℃、t:28℃、ΔH:15℃のヒステリシス特性を有する挙動を示し、ピンク色から無色、無色からピンク色へ可逆的に色変化した。
【0066】
(実施例1)
(固形筆記体の製造)
マイクロカプセル顔料A 40質量部
スチレン変性ポリオレフィンワックス 20質量部
(星光PMC(株)製 SPW−7176 )
ポリビニルアルコール 2質量部
ヒンダードアミン(BASF社製 TINUVIN765) 1質量部
タルク(体質材) 37質量部
上記配合物をニーダーにて混練し、得られた混練物をプレスにて圧縮成形を行い、外径φ3mm、長さ60mmに成形し固形筆記体を得た。
【0067】
実施例2〜7、比較例1〜4
(表1)に示した配合で、実施例1と同じ方法で、固形筆記体を得た。
【表1】
【0068】
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた固形筆記体を用いて、下記方法により固形筆記体の曲げ強度、変色性能、磨耗量、筆跡濃度について評価を行った。その結果を(表1)に示した。
曲げ強度の測定:JIS−S6005により測定した。

変色性能:固形筆記体によって得られた筆跡を摩擦消去具にて消去して消去跡を作成した。得られた消去跡を5℃にて24h放置し、24h後の消去跡を目視により評価した。
◎:消去跡の再発色は見られず、良好な変色性能が得られた。
○:消去跡の再発色はほとんどなく、良好な変色性能を維持していた。
△:消去跡に一部再発色があり、変色性能に劣化が見られるが、実用上問題のない
レベルであった。
×:消去跡の再発色が確認され、消去性能が劣化していた。

磨耗量:固形筆記体を用いて、中性紙に画線機を用いて荷重100gにて筆記し、その時の磨耗量を測定した。
筆跡濃度:固形筆記体を用いて、中性紙に筆記し、その時の筆跡濃度を目視により評価した。
◎:筆跡を視認することができ、その濃度は十分に高い。
○:筆跡を視認することができ、その濃度は高い。
△:筆跡を視認することができるが、その濃度はかなり低い。
×:筆跡を視認することができない。
【0069】
(表1)に示した結果からも明らかなように、本発明の固形筆記体は、その曲げ強度が、比較例の固形筆記体よりも大きい値となっていた。さらに、変色特性につても問題がなく、その筆跡濃度も向上しており、固形筆記体として優れていた。一方、比較例1〜3に示した固形筆記体は、本発明の固形筆記体と比較して、曲げ強度、変色特性、発色濃度共に劣っていた。また、比較例4の固形筆記体は、発色濃度は高くなるが、変色特性に問題があり、曲げ強度が小さい値なっていた。前記の通り、比較例の固形筆記体は、本発明の固形筆記体よりも劣っていた。
【0070】
前記の評価結果からも明らかなように、本発明の固形筆記体は、従来と比較して、強度、変色性能、発色濃度など、固形筆記体としての機能が優れていることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の固形筆記体は、マーキングペン用、鉛筆用、色鉛筆用など各種筆記具の他、塗り絵や描画等の描画材、温度インジケーターなどの示温材料などに利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
本発明の加熱消色型の固形筆記体の筆跡の完全発色温度
本発明の加熱消色型の固形筆記体の筆跡の発色開始温度
本発明の加熱消色型の固形筆記体の筆跡の消色開始温度
本発明の加熱消色型の固形筆記体の筆跡の完全消色温度
ΔH ヒステリシスの程度を示す温度幅
図1