(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動回路により駆動されてインクを吐出する複数のノズルを配列したノズル列から、該ノズル列の各ノズルに供給されたインクの残余分をインク排出経路により前記ノズル列から排出するユニットを、少なくとも第1及び第2の2ユニット以上設け、
前記第1ユニットの前記インク排出経路を前記第2ユニットの前記駆動回路と熱的に接触させると共に、前記第2ユニットの前記インク排出経路を前記第1ユニットの前記駆動回路と熱的に接触させ、
前記各ユニットは、前記ノズル列から排出した残余分のインクを該ノズル列の各ノズルに再供給するインク循環経路をそれぞれ有しており、該インク循環経路の一部を前記インク排出経路が構成している、
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、印刷速度の高速度化が進むに連れて、インクの循環で得られる冷却効果だけでは不足するようになり、その結果、インクの循環経路上に温度調整器を設けてインクの冷却を図る必要が生じて、装置の大型化やコストアップを招く要因となっている。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、インクによる冷却効率を高めて装置の大型化やコストアップを抑制することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載した本発明のインクジェット記録装置は、
駆動回路により駆動されてインクを吐出する複数のノズルを配列したノズル列から、該ノズル列の各ノズルに供給されたインクの残余分をインク排出経路により前記ノズル列から排出するユニットを、少なくとも第1及び第2の2ユニット以上設け、
前記第1ユニットの前記インク排出経路を前記第2ユニットの前記駆動回路と熱的に接触させると共に、前記第2ユニットの前記インク排出経路を前記第1ユニットの前記駆動回路と熱的に接触させた、
ことを特徴とする。
【0008】
また、
請求項1に記載した本発明のインクジェット記録装置
は、前記各ユニットが、前記ノズル列から排出した残余分のインクを該ノズル列の各ノズルに再供給するインク循環経路をそれぞれ有しており、該インク循環経路の一部を前記インク排出経路が構成していることを特徴とする。
【0009】
さらに、
請求項2に記載した本発明のインクジェット記録装置は、
請求項1に記載した本発明のインクジェット記録装置において、前記第1ユニット及び前記第2ユニットの一方が、使用可とするインク色を全色とする通常モード及び使用可とするインク色を一部に制限する制限モードの双方において、前記各ノズルからのインクの吐出を行うユニットであり、前記第1ユニット及び前記第2ユニットの他方が、前記通常モードにおいて前記各ノズルからのインクの吐出を行い、前記制限モードにおいて前記各ノズルからのインクの吐出を停止するユニットであることを特徴とする。
【0010】
また、
請求項3に記載した本発明のインクジェット記録装置は、
請求項1又は2に記載した本発明のインクジェット記録装置において、少なくとも前記第1ユニットと前記第2ユニットの各ノズル列を設けたインクジェットヘッドを、第1及び第2の2列備えており、前記各列のインクジェットヘッドの前記第1ユニット及び前記第2ユニットが、非フルカラー印刷時における使用頻度が互いに異なるインクをそれぞれの各ノズルに供給排出するユニットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1ユニット及び第2ユニットのそれぞれにおいて、ノズルのアクチュエータに熱的に接触するインクと駆動回路に熱的に接触するインクとが、一方は第1ユニットのインク、他方は第2ユニットのインクとなる。したがって、各ユニットでそれぞれ発生するアクチュエータや駆動回路の熱が、異なるユニットのインクで分担して冷却されることになる。よって、インクによる冷却効率を高めて装置の大型化やコストアップを抑制することができる。
【0012】
即ち、請求項1に記載した本発明のインクジェット記録装置によれば、第1ユニットのノズル列に対して供給排出されるインクが第1ユニットのノズルのアクチュエータと熱的に接触し、第2ユニットのノズル列に対して供給排出されるインクが第1ユニットの駆動回路に熱的に接触する。同様に、第2ユニットのノズル列に対して供給排出されるインクが第2ユニットのノズルのアクチュエータと熱的に接触し、第1ユニットのノズル列に対して供給排出されるインクが第2ユニットの駆動回路に熱的に接触する。
【0013】
したがって、第1ユニットでは、ノズルのアクチュエータが第1ユニットのインクによって冷却され、駆動回路が第2ユニットのインクによって冷却される。一方、第2ユニットでは、ノズルのアクチュエータが第2ユニットのインクによって冷却され、駆動回路が第1ユニットのインクによって冷却される。
【0014】
このため、各ユニットでそれぞれ発熱するアクチュエータと駆動回路が、互いに異なるユニットのインクで分担して冷却されることになる。よって、インクによる冷却効率を高めて装置の大型化やコストアップを抑制することができる。
【0015】
また、
請求項1に記載した本発明のインクジェット記録装置によれ
ば、各ユニットがノズル列から排出したインクを還流させてノズル列に供給するインク循環経路を有している場合、各ユニットのインク循環経路のうちノズル列からインクを排出するインク排出経路を構成する部分を、別のユニットの駆動回路に熱的に接触させることで、アクチュエータと駆動回路が、互いに異なるユニットのインクで分担して冷却される構成を、容易に実現することができる。
【0016】
さらに、
請求項2に記載した本発明のインクジェット記録装置によれば、
請求項1に記載した本発明のインクジェット記録装置において、全インク色を使用可とする通常モードにおいては、各ノズルからのインクの吐出を、第1ユニット及び第2ユニットの双方が行う。一方、使用可とするインク色を一部に制限する制限モードにおいては、各ノズルからのインクの吐出を、第1ユニット及び第2ユニットの一方が行い他方が停止する。
【0017】
したがって、制限モードにおいては、第1ユニット及び第2ユニットの一方で、ノズルのアクチュエータが自ユニットのインクによって冷却され、駆動回路が、インクの吐出停止によりノズルのアクチュエータ及び駆動回路に発熱が発生していない他ユニットのインクによって冷却される。
【0018】
このように、第1ユニットと第2ユニットを、制限モードにおいてインクの吐出を行うユニットと停止するユニットの組み合わせとすることで、特に制限モードにおけるインクの吐出を行うユニットにおけるアクチュエータ及び駆動回路のインクによる冷却を、効率よく行うことができる。
【0019】
また、
請求項3に記載した本発明のインクジェット記録装置によれば、
請求項1又は2に記載した本発明のインクジェット記録装置において、第1ユニット及び第2ユニットの各ノズル列をそれぞれ設けた第1列の各インクジェットヘッドと第2列の各インクジェットヘッドでは、それぞれの第1ユニット及び第2ユニットにおいて、非フルカラー印刷時における使用頻度が互いに異なるインクがノズル列に供給排出される。
【0020】
したがって、非フルカラー印刷時においては、各列のインクジェットヘッドにおいて第1ユニットのノズル列だけからインクが吐出されるケースが生じやすくなる。その場合、各列のインクジェットヘッドにおいて、第1ユニット及び第2ユニットの一方で、ノズルのアクチュエータが自ユニットのインクによって冷却され、駆動回路が、インクの吐出が停止しているノズルのアクチュエータ及び駆動回路に発熱が発生していない他ユニットのインクによって冷却される。
【0021】
このように、第1ユニットと第2ユニットを、非フルカラー印刷時における使用頻度が互いに異なるインクを各ノズルにそれぞれ供給排出するユニットの組み合わせとすることで、特に非フルカラー印刷時におけるインクの吐出を行うユニットにおけるアクチュエータ及び駆動回路のインクによる冷却を、効率よく行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を示す説明図である。
図1に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ1(請求項中のインクジェット記録装置に相当)は、給紙部Aと、プリンタ部Bと、搬送部Cと、排紙部Dと、反転部Eと、これらの動作を制御する制御ユニット29とを備えている。
【0024】
給紙部Aは、記録紙PA(請求項中の印刷用紙に相当)を給紙するものである。給紙部Aは、記録紙PAの搬送経路の最も上流側に配置されている。給紙部Aは、給紙台A1から記録紙PAをプリンタ部Bへと給紙する。
【0025】
プリンタ部Bは、記録紙PAを搬送部Cに搬送しつつ、記録紙PAに画像を印刷する。プリンタ部Bは、給紙部Aの下流側に配置されている。プリンタ部Bは、記録紙PAの搬送経路上方に配置されたヘッドユニットB1を有しており、ヘッドユニットB1には、4列のインクジェットヘッド5と4個のインク循環式印刷ユニットB3(B3a〜B3d)とを備えている。
【0026】
図2は
図1の各列のインクジェットヘッド5の配置を上方から見て示す説明図である。
図2に示すように、各列は、記録紙PAの搬送方向と直交する方向に間隔をおいた3つずつのインクジェットヘッド5をそれぞ有しており、4列の12個のインクジェットヘッド5が全体で千鳥状に配置されている。
【0027】
搬送方向の上流側に千鳥状に配置された6つのインクジェットヘッド5は、第1列のインクジェットヘッド5Aを構成しており、各インクジェットヘッド5は、C(シアン)のインクを吐出するノズル列と、K(ブラック)のインクを吐出するノズル列とをそれぞれ有している。
【0028】
また、搬送方向の下流側に千鳥状に配置された6つのインクジェットヘッド5は、第2列のインクジェットヘッド5Bを構成しており、各インクジェットヘッド5は、M(マゼンタ)のインクを吐出するノズル列と、Y(イエロー)のインクを吐出するノズル列とをそれぞれ有している。
【0029】
図1に示すように、各インク循環式印刷ユニットB3(B3a〜B3d)は、各列の3つのインクジェットヘッドに対応しており、そのインク循環経路中に、対応する列のインクジェットヘッド5をそれぞれ有している。
【0030】
搬送部Cは、記録紙PAの搬送経路のうち、排紙部Cと反転部Eの分岐部分に記録紙PAを搬送する経路を構成しており、印刷済みの記録紙PAを搬送する。搬送部Cは、プリンタ部Bの下流側に配置されている。排紙部Dには、印刷済みの記録紙PAが排紙されて積層される。排紙部Dは、搬送部Cの下流側に配置されている。
【0031】
反転部Eには、排紙部Dと切り替えて、両面印刷の片面印刷済の記録紙PAが送り込まれる。反転部Eは、片面が印刷された記録紙PAを反転させてプリンタ部Bへと搬送する。
【0032】
図3は
図1の各インク循環式印刷ユニットの全体構成を示す説明図である。
図3に示す各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3dは、それぞれ、C(シアン)、K(ブラック)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色のインクを用いて記録紙PAに画像を印刷するものである。
【0033】
図3の各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3dは、インク循環経路15を有している。インク循環経路15は、上タンク3から第1列又は第2列のインクジェットヘッド5A,5Bを構成する6つのインクジェットヘッド5を経て、下タンク7に至るインク流路9と、下タンク7から循環ポンプ11を経て上タンク3に至るインク流路13とにより構成される。
【0034】
上タンク3は、大気開放弁31を介して大気と連通する空気層33を内部に有している。この空気層33は、循環ポンプ11の作動によりインク循環経路15を循環するインクの圧力に生じる脈動に対する緩衝や、6つの各インクジェットヘッド5に設けられるインクの供給、排出先のノズル5a,5a,…のインクメニスカスの圧力を安定させるためのバッファとして設けられる。また、上タンク3には、内部のインク液面の上限値とその上の限界値とをそれぞれ検出する2つの液面センサ35,37が設けられている。
【0035】
インク流路9の途中には、インク流路9を通過するインクの温度を検出する温度センサ91が設けられている。6つのインクジェットヘッド5は、上タンク3よりも下方に配置されている。
【0036】
各インクジェットヘッド5は、第1及び第2の2つのブロック51,53を一体化させて構成されており、そのうち一方の第1ブロック51(又は第2ブロック53)に多数形成した各ノズル5aには、上タンク3のインク液面とノズルのインクメニスカスとの水頭差に応じた圧力で、インク流路9を介して上タンク3からインクが供給される。
【0037】
下タンク7は、インクジェットヘッド5の下方に配置されており、ノズル5aからの吐出後に残った余剰のインクがインクジェットヘッド5から自重により回収される。この下タンク7は、大気開放弁71を介して大気と連通する空気層73を内部に有している。この空気層73は、インク循環経路15におけるインクの循環停止中に、大気圧によりノズル5aのインクメニスカスの圧力を安定させるために設けられている。
【0038】
また、下タンク7には、内部のインク液面の下限値を検出する液面センサ77が設けられている。さらに、下タンク7には補給用インク流路19と開閉弁21とを介してインクカートリッジ23が接続されている。
【0039】
各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3dのインクカートリッジ23には、プロセスカラーであるC(シアン)、K(ブラック)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のインクがそれぞれ充填されている。
【0040】
液面センサ77により下タンク7のインク液面が下限値まで減ったことが検出されると、開閉弁21が適宜開放され、インクカートリッジ23内のインクが、補給用インク流路19を介して下タンク7に適量供給される。
【0041】
循環ポンプ11は、下タンク7のインクをインク流路13を介して上タンク3に還流させる。このインク流路13の途中には温度調整器25が設けられている。この温度調整器25は、循環ポンプ11により下タンク7から上タンク3に還流されるインクの温度を、インクジェットヘッド5においてインクが適切な吐出速度でノズル5aから吐出される適温に調節するものである。そのために温度調整器25は、加熱用のヒータ251と冷却用のファン253及びヒートシンクを有している。
【0042】
図4(a)はインクジェットヘッド5の下面図、(b)は内部のインク流路構成を示す模式図、(c)は縦断面図である。
図4(a)に示すように、インクジェットヘッド5を構成する第1及び第2の2つのブロック51,53は、それぞれの下面に、内部のインク室(図示せず)と連通するノズル5aを多数列設した第1及び第2の各ノズル板51a,53aを有している。
【0043】
なお、以下に示す本実施形態では、第1ブロック51のノズル5aから吐出されるインクと第2ブロック53のノズル5aから吐出されるインクとが異なる色である場合について説明する。しかし、本発明は、各ブロック51,53のノズル5aから吐出されるインクが同じ色である場合にも適用可能である。
【0044】
インクジェットヘッド5がシェアモード型である場合、各ノズル5aに連通するインク室同士の隔壁(図示せず)を、隔壁を構成する圧電部材(図示せず)への電圧印加に伴いせん断変形させると、ノズル5aからインクが吐出される。
【0045】
図4(b)に示すように、第1及び第2の各ノズル板51a,53aには第1及び第2の各インク流路部材51b,53bが積層されている。第1及び第2の各インク流路部材51b,53bには、第1及び第2の各ノズル板51a,53aの多数のノズル5aにインクを供給する第1及び第2の各インク供給通路51c,53cと、第1及び第2の各ノズル板51a,53aの多数のノズル5aからインクを排出する第1及び第2の各インク排出通路51d,53dが、ノズル5aの列とそれぞれ平行に設けられている。
【0046】
第1のインク供給通路51cには第1のインク供給口51eが接続され、第1のインク排出通路51dには、連絡通路51g,51hを介して第1のインク排出口51fが接続されている。同様に、第2のインク供給通路53cには第2のインク供給口53eが接続され、第2のインク排出通路53dには、連絡通路53g,53hを介して第2のインク排出口53fが接続されている。
【0047】
図5(a)は
図2のインクジェットヘッドの上方から見た斜視図、(b)は下方から見た斜視図である。
図5(a)に示すように、第1及び第2の各インク供給口51e,53eは、インクジェットヘッド5の第1ブロック51と第2ブロック53の境界部分に配置されている。また、第1及び第2の各インク排出口51f,53fは、インクジェットヘッド5の長手方向(ノズル5aの列設方向)と直交する幅方向の両端に配置されている。
【0048】
第1及び第2の各インク排出口51f,53fは、
図4(b)に示す第1及び第2の各インク排出通路51d,53dの全体から排出するインクを集めるために、
図5(a)に示すように、台形状を呈する中空の第1及び第2の各インク集約部51i,53iを介して、第1及び第2の各インク排出通路51d,53dに連通している。
【0049】
第1インク集約部51iの外面には、第2ブロック53の圧電部材に電圧を印加してインク室の隔壁を変形させる第2駆動回路の基板53jが取り付けられている。同様に、第2インク集約部53iの外面には、第1ブロック51の圧電部材に電圧を印加してインク室の隔壁を変形させる第1駆動回路の基板51jが取り付けられている。
【0050】
図4(c)に示すように、第1駆動回路及び第2駆動回路の各基板51j,53jは、熱伝導性のよい金属又は樹脂による接合材51k,53kを介して、対象の第2及び第1の各インク集約部53i,51iにそれぞれ取り付けられている。これにより、第1駆動回路及び第2駆動回路の各基板51j,53jは、第2及び第1の各インク集約部53i,51iに対して熱的に接触されている。
【0051】
図6は第1列及び第2列のインクジェットヘッド5A,5Bの各インクジェットヘッド5に対するインク循環経路15を示す斜視図である。
【0052】
本実施形態では、第1列のインクジェットヘッド5Aの各インクジェットヘッド5の第1ブロック51には、K(ブラック)のインクバス51mが引き回しされており、第2ブロック53には、C(シアン)のインクバス53mが引き回しされている。
【0053】
K(ブラック)のインクは、フルカラー印刷時(請求項中の通常モードに相当)と非フルカラー印刷時(請求項中の制限モードに相当)の双方でノズル5aから吐出される。一方、C(シアン)のインクは、フルカラー印刷時(請求項中の通常モードに相当)にノズル5aから吐出されるが、非フルカラー印刷時(請求項中の制限モードに相当)には、ノズル5aから吐出されない場合がある。即ち、K(ブラック)のインクはC(シアン)のインクよりも、使用頻度が高いインクである。
【0054】
また、本実施形態では、第2列のインクジェットヘッド5Bの各インクジェットヘッド5の第1ブロック51には、M(マゼンタ)のインクバス51nが引き回しされており、第2ブロック53には、Y(イエロー)のインクバス53nが引き回しされている。
【0055】
Y(イエロー)のインクは、フルカラー印刷時(請求項中の通常モードに相当)と非フルカラー印刷時(請求項中の制限モードに相当)の双方でノズル5aから吐出される。一方、M(マゼンタ)のインクは、フルカラー印刷時(請求項中の通常モードに相当)にノズル5aから吐出されるが、非フルカラー印刷時(請求項中の制限モードに相当)には、ノズル5aから吐出されない場合がある。即ち、Y(イエロー)のインクはM(マゼンタ)のインクよりも、使用頻度が高いインクである。
【0056】
第1列及び第2列の各インクジェットヘッド5A,5Bのインクバス51m,51nは、
図4(b)や
図5(a)に示す第1ブロック51の第1のインク供給口51eに接続される供給用配管51o,53oの一部と、第1のインク排出口51fに接続される排出用配管51p,53pの一部とを収容している。
【0057】
また、第1列及び第2列の各インクジェットヘッド5A,5Bのインクバス53m,53nは、
図4(b)や
図5(a)に示す第2ブロック53の第2のインク供給口53eに接続される供給用配管51q,53qの一部と、第2のインク排出口53fに接続された排出用配管51r,53rの一部とを収容している。
【0058】
第1列及び第2列の各インクジェットヘッド5A,5Bの供給用配管51o,53o,51q,53qは、それぞれ、熱交換器4を介して、各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3dの上タンク3に接続されている。
【0059】
また、第1列及び第2列の各インクジェットヘッド5A,5Bの排出用配管51p,53p,51r,53rは、それぞれ、熱交換器4を介して、各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3dの循環ポンプ11乃至下タンク7に接続されている。
【0060】
上述した構成を有する本実施形態のインクジェットプリンタ1によれば、第1列及び第2列の各インクジェットヘッド5A,5Bにおいて、第1ユニット51のノズル5a列に対して供給排出されるインクが、第1ユニット51のノズル5aに連通するインク室の圧電素子(図示せず)と熱的に接触し、第2ユニット53のノズル5a列に対して供給排出されるインクが第1ユニット51の駆動回路の基板51jに熱的に接触する。
【0061】
同様に、第2ユニット53のノズル5a列に対して供給排出されるインクが第2ユニット53のノズル5aに連通するインク室の圧電素子(図示せず)と熱的に接触し、第1ユニット51のノズル5a列に対して供給排出されるインクが第2ユニット53の駆動回路の基板53jに熱的に接触する。
【0062】
したがって、第1ユニット51では、インク室の圧電素子が第1ユニット51のインクによって冷却され、駆動回路の基板51jが第2ユニット53のインクによって冷却される。一方、第2ユニット53では、インク室の圧電素子が第2ユニット53のインクによって冷却され、駆動回路の基板53jが第1ユニット51のインクによって冷却される。
【0063】
このため、各ユニット51,53でそれぞれ発熱するインク室の圧電素子と駆動回路の基板51j,53jが、それぞれ2つのユニット51,53のインクで分担して冷却されることになる。よって、インクによる冷却効率を高めて、各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3dの温度調整器25の負担を減らし、温度調整器25乃至インクジェットプリンタ1全体の大型化やコストアップを抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1によれば、各ユニット51,53の第1及び第2の各インク排出口51f,53fの第1及び第2の各インク集約部51i,53iに、別のユニット53,51の駆動回路の基板53j,51jを取り付けて、両者をに熱的に接触させた。これにより、圧電素子と駆動回路の基板51j,53jが、それぞれ2つのユニット51,53のインクで分担して冷却される構成を、容易に実現することができる。
【0065】
なお、本実施形態のインクジェットプリンタ1においては、各ユニット51,53のノズル5a列から排出されたインクが、インク室の圧電素子又は駆動回路の基板51j,53jとの熱的接触による冷却の際に、それらから吸熱する。一方、各ユニット51,53のノズル5a列に供給するインクは、適切な吐出特性が得られる粘度となるような温度に温度調整器25を用いて調整される。
【0066】
そして、本実施形態のインクジェットプリンタ1においては、第1列及び第2列の各インクジェットヘッド5A,5Bにおいて、第1及び第2の各ユニット51,53の供給用配管51o,53o,51q,53qと排出用配管51p,53p,51r,53rが熱交換器4を通過し、その際に、相互のインク間で熱交換される。
【0067】
このため、各ユニット51,53のインク循環経路15のインク間で熱交換器4により熱交換することで、各ユニット51,53のインク5a列に供給されるインクを適切な温度に調整する際の熱源として利用し、熱利用効率を高めることができる。
【0068】
これに加えて、異なるユニット51,53のインクで分担して冷却したインク室の圧電素子と駆動回路の基板51j,53jのそれぞれからインクが受け取った熱量にばらつきがあっても、それらのインクの熱が熱交換器4において他のインク循環経路15のインクとの間で熱交換されることで、各ユニット51,53のインクによる冷却のための負担が平準化される。よって、インクによるインク室の圧電素子と駆動回路の基板51j,53jの冷却効率を、各ユニット51,53においてそれぞれ高めることができる。
【0069】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1によれば、C(シアン)、K(ブラック)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のうち一部の色のインクだけを使用する非フルカラー印刷時には、第1列及び第2列の各インクジェットヘッド5A,5Bにおいて、各ノズル5aからのインクの吐出を、第1ユニット51で行い第2ユニット53では停止するケースが生じる。
【0070】
したがって、そのような非フルカラー印刷時には、第1ユニット51において、インク室の圧電素子が第1ユニット51のインクによって冷却され、駆動回路の基板51jが、インクの吐出停止によりインク室の圧電素子及び駆動回路の基板53jに発熱が発生していない第2ユニット53のインクによって冷却される。
【0071】
このように、第1ユニット51と第2ユニット53を、非フルカラー印刷時においてインクの吐出を行うユニットと停止する場合があるユニットの組み合わせとすることで、特に非フルカラー印刷時にインクの吐出を行う第1ユニット51におけるインク室の圧電素子及び駆動回路の基板51jのインクによる冷却を、効率よく行うことができる。
【0072】
なお、本実施形態では、第1列及び第2列の各インクジェットヘッド5A,5Bの各インクジェットヘッド5同士を、
図2や
図6に示すように、互いに離間して配置するものとした。しかし、例えば、
図7の斜視図に示すように、第1列及び第2列の各インクジェットヘッド5A,5Bの各インクジェットヘッド5同士を一体化させてもよい。このように構成すれば、1つのブロックでC(シアン)、K(ブラック)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のインクをノズル5aから吐出するインクジェットヘッド5を構成することができる。
【0073】
また、本実施形態では、1つのインクジェットヘッド5に2つのユニット51,53のノズル5a列を設けたが、第1及び第2の各ユニット51,53のノズル5a列を別々のインクジェットヘッド5に設ける構成としてもよい。
【0074】
図8は第1列のインクジェットヘッド5Aの各インクジェットヘッド5に第1ユニット51のノズル5a列を設け、第2列のインクジェットヘッド5Bの各インクジェットヘッド5に第2ユニット53のノズル5a列を設ける場合の、各ユニット51,53の供給用配管51o,53oと排出用配管51p,53pの配置を示す説明図である。
【0075】
この場合、各インクジェットヘッド5には、ノズル5aと連通するインク室の圧電素子の駆動回路の基板(図示せず)がそれぞれ設けられる。そこで、第1列のインクジェットヘッド5Aの各インクジェットヘッド5の基板が接触するように、第2列のインクジェットヘッド5Bの排出用配管53pを配置する。また、第2列のインクジェットヘッド5Bの各インクジェットヘッド5の基板が接触するように、第1列のインクジェットヘッド5Aの排出用配管51pを配置する。
【0076】
上述した構成とすれば、第1列のインクジェットヘッド5Aにおいて、ノズル5a列に対して供給排出されるインクがインク室の圧電素子(図示せず)と熱的に接触し、第2列のインクジェットヘッド5Bのノズル5a列に対して供給排出されるインクが駆動回路の基板に熱的に接触する。
【0077】
同様に、第2列のインクジェットヘッド5Bにおいて、ノズル5a列に対して供給排出されるインクがインク室の圧電素子(図示せず)と熱的に接触し、第1列のインクジェットヘッド5Aのノズル5a列に対して供給排出されるインクが駆動回路の基板に熱的に接触する。
【0078】
したがって、第1列のインクジェットヘッド5Aでは、インク室の圧電素子が第1列のインクジェットヘッド5Aの各インクジェットヘッド5を流れるインクによって冷却され、駆動回路の基板が第2列のインクジェットヘッド5Bのインクジェットヘッド5を流れるインクによって冷却される。
【0079】
一方、第2列のインクジェットヘッド5Bでは、インク室の圧電素子が第2列のインクジェットヘッド5Bの各インクジェットヘッド5を流れるインクによって冷却され、駆動回路の基板が第1列のインクジェットヘッド5Aのインクジェットヘッド5を流れるインクによって冷却される。
【0080】
このような構成によっても、上述した実施形態の場合と同様に、第1列及び第2列の各インクジェットヘッド5A,5Bでそれぞれ発熱するインク室の圧電素子と駆動回路の基板が、各列のインクジェットヘッド5A,5Bのインクジェットヘッド5をそれぞれ流れるインクで分担して冷却されることになる。よって、インクによる冷却効率を高めて、各インク循環式印刷ユニットB3a〜B3dの温度調整器25の負担を減らし、温度調整器25乃至インクジェットプリンタ1全体の大型化やコストアップを抑制することができる。
【0081】
なお、以上に説明した実施形態では、ライン型のインクジェットヘッド5を有するインクジェットプリンタ1を例にとって説明したが、本発明は、インクジェットヘッドが主走査方向に往復動させながら記録紙PAを副走査方向に搬送させることで印刷を行うシリアルタイプのインクジェットプリンタにも適用可能である。