(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027433
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】クローズドブリーザシステム
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20161107BHJP
F01M 13/04 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
F01M13/00 G
F01M13/00 H
F01M13/00 E
F01M13/04 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-280792(P2012-280792)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-125893(P2014-125893A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英之
【審査官】
稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−122431(JP,A)
【文献】
特開平11−107735(JP,A)
【文献】
特開2008−215214(JP,A)
【文献】
実開昭49−136933(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/00
F01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアクリーナから吸い込んだ空気をエンジンへ導く吸気管と、
前記エンジンからブローバイガスが放出されるガス放出管と、
前記ガス放出管から放出されたブローバイガスに含まれるオイルミストを分離回収するベンチレータと、
前記ベンチレータを通過したガスを前記吸気管へ導くガス戻し管と、を備えたクローズドブリーザシステムであって、
前記ガス戻し管を構成するブローバイ流路管は、前記ベンチレータを通過したガスに含まれるオイルを一箇所に集めるよう、中途位置の屈曲部が入側よりも下方になるように傾けて配置されると共に、前記屈曲部より下流のストレート部が上方へ立ち上がるように配置され、
前記ガス戻し管を構成するブローバイ流路管の最低部に、前記ベンチレータを通過したガスに含まれるオイルを前記エンジンのクランクケースの内部へ導くオイル戻し管が接続されていることを特徴とするクローズドブリーザシステム。
【請求項2】
前記ブローバイ流路管の最低部には、オイルを受けるオイル受け凹部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のクローズドブリーザシステム。
【請求項3】
前記ベンチレータは、回収したオイルをクランクケースへと導くオイル回収管を有し、
前記オイル回収管は、前記クランクケースの内部から前記ベンチレータへオイルの逆流を防止する逆止弁が配設され、
前記オイル戻し管は、前記オイル回収管のうち前記逆止弁が配設される箇所よりも上流側に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクローズドブリーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローズドブリーザシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの圧縮行程と爆発行程においてピストンリングの間隙よりクランクケースへ漏れ出るブローバイガスは、クランクケース内及び該クランクケースと連通しているシリンダヘッドカバー内に充満してくるため、これらの内部から外部に抜き出す必要があるが、クランクケース内ではクランク軸及びコネクティングロッド等が高速で動いており、クランクケースと連通するシリンダヘッドカバー内においてもロッカアーム及びバルブ等が作動しているため、クランクケースやシリンダヘッドカバーの内部はオイルミストが充満した状態にある。
【0003】
このため、ブローバイガスをそのまま大気放出してしまうと、該ブローバイガスに混合しているオイルミストも外部へ排出されてしまう虞があるため、
図2、
図3に示す如く、ブローバイガス1中のオイルミストを分離回収するための濾網又はラビリンス構造を内蔵したベンチレータ2(CCV:Closed Crankcase Ventilator)を設け、エンジン3のシリンダヘッドカバー4からガス放出管5を介して放出したブローバイガス1を、前記ベンチレータ2を通すことによりオイルミストを分離回収してからガス戻し管6を介して吸気管7に戻し、前記ベンチレータ2で回収したオイル8を、オイル回収管9を介しクランクケース15からオイルパン16へと戻すようにしている。
【0004】
なお、
図2、
図3中における10はエアクリーナ、11はターボチャージャ、11aはタービン、11bはコンプレッサ、12はインタークーラ、13は吸気、14は排気ガスを夫々示している。
【0005】
一般的に、前述の如きブローバイガス1をクローズドサーキットで処理するシステムはクローズドブリーザシステムと称されているが、この種のクローズドブリーザシステムに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−278523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ブローバイガスに混合しているオイルミストは、ベンチレータ2で完全に濾し切ることが好ましいがミスト状である為、完全に濾し切ることできずその一部がベンチレータ2を通過し、ガス戻し管6に行ってしまう場合がある。車両が高速走行を行い、吸気13が勢いよくターボチャージャ11に吸い込まれている場合、このオイルミストはエンジンに行き不具合を生じない。
【0008】
しかしながら、例えば、渋滞中の走行時は、ターボチャージャ11が吸気13を勢いよく吸わない為、オイルミストがエンジン3まで行かずガス戻し管6にオイル8が溜まってしまう虞があった。このオイル8は、エンジン3の運転状態によっては吸気時にターボチャージャ11ではなくエアクリーナ10へ行き外部に放出され大気汚染の原因となる虞があった。
【0009】
本発明は、上述の実情に鑑みてなしたもので、ガス戻し管に溜まるオイルがエアクリーナへ行き外部へ放出されるのを防止するクローズドブリーザシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エアクリーナから吸い込んだ空気をエンジンへ導く吸気管と、前記エンジンからブローバイガスが放出されるガス放出管と、前記ガス放出管から放出されたブローバイガスに含まれるオイルミストを分離回収するベンチレータと、前記ベンチレータを通過したガスを前記吸気管へ導くガス戻し管と、を備えたクローズドブリーザシステムに関する。前記ガス戻し管
を構成するブローバイ流路管は、前記ベンチレータを通過したガスに含まれるオイルを一箇所に集めるよう、中途位置の屈曲部が入側よりも下方になるように傾けて配置されると共に、前記屈曲部より下流のストレート部が上方へ立ち上がるように配置され、前記ガス戻し管
を構成するブローバイ流路管の最低部に、前記ベンチレータを通過したガスに含まれるオイルを前記エンジンのクランクケースの内部へ導くオイル戻し管
が接続されていることを特徴としている。
【0012】
前記
ブローバイ流路管の最低部には、オイルを受けるオイル受け凹部が形成されることが好ましい。
【0013】
前記ベンチレータは、回収したオイルをクランクケースへと導くオイル回収管を有している。そして、前記オイル回収管は、前記クランクケースの内部から前記ベンチレータへオイルの逆流を防止する逆止弁が配設されている。そして、前記オイル戻し管は、前記オイル回収管のうち前記逆止弁が配設される箇所よりも上流側に接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のクローズドブリーザシステムによれば、ガス戻し管に溜まるオイルが外部へ放出されるのを防止することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のクローズドブリーザシステムの要部を示した概略図である。
【
図2】従来のクローズドブリーザシステムの概略図である。
【
図3】従来のクローズドブリーザシステムの要部を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
図1は、本発明のクローズドブリーザシステムの要部を示した概略図である。図中、
図2、
図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成が
図2、
図3に示す従来のものと同様である。本図示例の特徴とするところは、
図1に示すようにガス戻し管6の途中にオイル戻し管17を更に有した点にある。
【0017】
ガス戻し管6は、ブローバイ流路管18と、ブリーザーホース19と、を有している。ブローバイ流路管18は、中途位置でブローバイガス1の向きを略直角に曲げて導く屈曲部を有している。このブローバイ流路管18は、屈曲部以外、ストレートな管で内周が滑らかな曲面となっている。そして、ブローバイ流路管18は、一端である入側がベンチレータ2に接続され、他端である出側がブリーザーホース19に接続される。
【0018】
また、ブローバイ流路管18は、屈曲部に擂鉢状のオイル受け凹部(一箇所)18aが形成されている。ブローバイ流路管18は、入側よりもオイル受け凹部18aが下方となるように傾けて配置されるとともに、屈曲部より下流側のストレート部が上方へ立ち上がるように配置される。このとき、オイル受け凹部18aは、開口が上を向くとともにブローバイ流路管18のうち最も低い位置にくるようにブローバイ流路管18が配される。
【0019】
オイル戻し管17は、一端がオイル受け凹部18aの最低部に接続され、他端がオイル回収管9の途中に接続される。オイル回収管9は、クランクケース15の内部からベンチレータ2又はオイル受け凹部18aへオイル8が逆流するのを防止する逆止弁20が配設されている。そして、オイル戻し管17は、オイル回収管9のうち逆止弁20が配設される箇所よりも上流側に接続される。ここで、オイル戻し管17は、クランクケース15へ直接接続し、管の途中に逆止弁20を配設する構成にしても良い。
【0020】
ブリーザーホース19は、ブローバイ流路管18と吸気管7とを流路がU字形となるように屈曲して接続する。
【0021】
(本発明の作動)
ブローバイガス1に混合しているオイルミストのうち、ベンチレータ2を通過しブローバイ流路管18に行ったオイルミストは、例えば、ブローバイ流路管18の内周面に衝突することによって、状態が液体のオイル8へ変化する。
【0022】
先に述べたとおり、ブローバイ流路管18は、ベンチレータ2を通過したオイル8をオイル受け凹部18aに導くように傾斜している。従って、オイル8は、ブローバイ流路管18の内周面を伝ってオイル受け凹部18aに導かれる。ここで、ブローバイ流路管18の入側から屈曲部までにオイル8を流すための溝を形成しても良い。オイル8は、溝を流れるため、吸気の際一緒に吸気管7に導かれることを少なくすることができる。
【0023】
また、ブローバイ流路管18は、略水平方向からきたブローバイガス1を略直角に曲げて上方へ導くように屈曲している。このため、ブローバイガス1は、ブローバイ流路管18における屈曲部の内周面に積極的に衝突し、ブローバイガス1に含まれるオイルミストがオイル8へ変化する。このオイル8も、ブローバイ流路管18の内周面を伝って真下に位置するオイル受け凹部18aに導かれる。
【0024】
オイル受け凹部18aへ導かれたオイル8は、オイル戻し管17を通って、オイル回収管9を介しクランクケース15の内部に導かれオイルパン16に戻される。
【0025】
(本発明の効果)
本発明によれば、ブローバイガス1に混合しているオイルミストのうち、ベンチレータ2を通過しブローバイ流路管18にいったオイル8は、オイル受け凹部18aに導かれる。そして、そのオイル8は、オイル戻し管17を通って最終的にオイルパン16へ戻される。このため、オイル8が外部へ放出され大気汚染の原因となることを防ぐことができる。
【0026】
また、オイル8は、オイルパン16に戻される流路の途中に逆止弁20が配置されている。このため、オイル8は、オイルパン16からブローバイ流路管18やベンチレータ2に逆流することがない。
【0027】
なお、本発明のクローズドブリーザシステムは、上述の実施例にのみ限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは、勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 ブローバイガス
2 ベンチレータ
3 エンジン
5 ガス放出管
6 ガス戻し管
7 吸気管
8 オイル
9 オイル回収管
10 エアクリーナ
13 吸気
15 クランクケース
16 オイルパン
17 オイル戻し管
18 ブローバイ流路管
18a オイル受け凹部
19 ブリーザーホース
20 逆止弁