【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、光学活性なコーティングを備えた微小板形状の透明な基材を含む多層真珠光沢顔料を提供することにより達成されたが、その光学活性なコーティングは、少なくとも、
a)n≧1.8の屈折率を有する吸収性高屈折率層A、
b)n<1.8の屈折率を有する低屈折率層B、
c)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率層C
ならびにさらに
d)任意の少なくとも1層の外側保護層D
を含み、
そしてその多層真珠光沢顔料は、スパンΔDを0.7〜1.4の範囲とする指数D
10、D
50、D
90を有する体積平均サイズ分布関数の累積度数分布を有しているが、そのスパンΔDは、式(I)に従って計算される。
ΔD=(D
90−D
10)/D
50 (I)
【0015】
好適な展開法は、従属請求項2〜10において明示されている。
【0016】
本発明の目的は、さらに、本発明の多層真珠光沢顔料を製造するための方法を提供することによっても達成されたが、その方法には以下の工程が含まれる:
(i)コーティングされる微小板形状の透明な基材をサイズ分級して、コーティングされる微小板形状の透明な基材が、スパンΔD(スパンΔDは式ΔD=(D
90−D
10)/D
50に従って定義される)を0.7〜1.4の範囲とする特性値D
10、D
50、D
90を有する体積平均サイズ分布関数を有するようにする工程、
(ii)微小板形状の透明な基材に対して、少なくとも層A〜C、さらには、場合によっては、少なくとも1層の層Dを適用する工程、
または
(iii)微小板形状の透明な基材に対して、少なくとも層A〜C、さらには、場合によっては、少なくとも1層の層Dを適用する工程、
(iv)コーティングされた微小板形状の透明な基材をサイズ分級して、コーティングされた微小板形状の透明な基材が、スパンΔD(スパンΔDは式ΔD=(D
90−D
10)/D
50に従って定義される)を0.7〜1.4の範囲とする特性値D
10、D
50、D
90を有する体積平均サイズ分布関数を有するようにする工程。
【0017】
本発明の一つの好ましい変法においては、コーティングされる微小板形状の透明な基材は、まず、工程(i)に従ってサイズ分級され、次いで、工程(ii)において、少なくとも層A〜C、および場合によっては少なくとも1層の層Dを、微小板形状の透明な基材に適用する。
【0018】
本発明によってさらに提供されるのは、化粧料配合物、プラスチック、フィルム、織物、セラミック材料、ガラス、ならびにコーティング組成物、たとえば、塗料、印刷インキ、ワニス、および粉体コーティングにおける、本発明の多層真珠光沢顔料の使用である。
【0019】
本発明がその上に基礎をおく目的は、さらに、物品を提供することによっても達成されるが、その物品は、請求項1〜10のいずれかの多層真珠光沢顔料を含むか、またはそれらを有している。
【0020】
したがって、本発明は同様にして、調製物、たとえば化粧料配合物、プラスチック、セラミック材料、ガラス、またはコーティング組成物、たとえば、塗料、印刷インキ、ワニス、および粉体コーティングも提供するが、それらには、本発明の多層真珠光沢顔料が含まれている。本発明はさらに、本発明の多層真珠光沢顔料を用いて、たとえばコーティングまたは印刷により提供される物品も目的としている。したがって、コーティングした物品、たとえば、車体構造物、表面仕上げ要素など、または印刷された物品、たとえば、紙、カード、フィルム、織物などは同様に、本発明の一部である。
【0021】
本発明の目的においては、改良された光沢を有する多層真珠光沢顔料は、透明な微小板形状の基材の上に少なくとも3層のコーティングを有する多層真珠光沢効果顔料と理解するべきであるが、これらの少なくとも3層のコーティングは、以下のものである:
a)n≧1.8の屈折率を有する吸収性高屈折率層A、
b)n<1.8の屈折率を有する低屈折率層B、
c)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率層C。
【0022】
コーティングされる適切な微小板形状の透明な基材は、非金属の、天然または合成の微小板形状の基材である。基材は、実質的に透明であるのが好ましく、透明であるのがより好ましいが、これは、それらが可視光線に対して少なくとも部分的に透過性であるということを意味している。
【0023】
本発明においては、層Aは、層の配列においては内側層であり、すなわち微小板形状の透明な基材に面しており、層Bは、層Aと層Cの間に位置しており、そして層Cは、微小板形状の透明な基材を基準にした層の配列において、外側層である。
【0024】
微小板形状の透明な基材と層Aの間には、1層または複数の、さらなる、好ましくは実質的に透明な層が配列されていてもよい。一つの好ましい展開においては、層Aが、透明な微小板形状の基材に直接適用される。
【0025】
層Aと層Bの間、さらには層Bと層Cの間には、相互に独立して、1層または複数の、さらなる、好ましくは実質的に透明な層が配列されていてもよい。一つの好ましい展開においては、層Bが層Aに直接適用される。また別な好ましい展開においては、層Cが層Bに直接適用される。
【0026】
層Aを微小板形状の透明な基材に直接適用し、層Bを層Aに直接適用し、層Cを層Bに直接適用し、そしてさらには任意の層Dを層Cに直接適用するのが特に好ましい。
【0027】
本発明者らは、驚くべきことには、本発明の多層真珠光沢顔料、すなわち、特定の層配列と、0.7〜1.4の範囲の式IによるスパンΔDを有する真珠光沢顔料が、極端に強い光沢を示すということを見出した。本発明の一つのさらなる変法においては、本発明の多層真珠光沢顔料は、さらに、反射角に近い観察角、好ましくは15度のところで高い彩度を有している。
【0028】
強い光輝と、同時に好ましくは高い彩度も有している多層真珠光沢顔料を得ることは、当業界においてはこれまで不可能であった。
【0029】
請求項1において定義されるスパンΔDが光輝に対して影響を及ぼす場合があるという事実は、公表されている従来技術の見地からは、予想もされない。したがって、本発明によって、極端に魅力のある光学的性質を有する多層真珠光沢顔料を提供することが可能となったのである。
【0030】
従来技術においては、これまで、スパンΔDが本質的な特性であるとは認識されていなかった。したがって、慣用されている多層真珠光沢顔料は、広いスパンを有している。
【0031】
多層真珠光沢顔料のサイズ分布は、本発明においては、ΔD=(D
90−D
10)/D
50(式I)として定義されるスパンΔDを使用して特性表記される。そのスパンが小さい程、サイズ分布が狭い。
【0032】
レーザー回折法によって得られた、体積平均サイズ分布関数の累積度数分布におけるD
10、D
50、またはD
90値は、多層真珠光沢顔料のそれぞれ10%、50%、および90%が、それぞれで表示される数値と同じかまたはそれより小さい直径を有していることを示している。この場合においては、そのサイズ分布曲線は、Malvern製の機器(機器名:Malvern Mastersizer 2000)を使用し、メーカーの取扱説明書に従って求める。
【0033】
この機器においては、Mieの理論に従って散乱光の信号を評価したが、それには、粒子の部分における屈折および吸収の挙動も含まれている(
図1)。
【0034】
本発明の多層真珠光沢顔料は、0.7〜1.4の範囲、好ましくは0.7〜1.3の範囲、より好ましくは0.8〜1.2の範囲、極めて好ましくは0.8〜1.1の範囲のスパンΔDを有している。さらに好ましい実施態様においては、そのスパンΔDは0.85〜1.05の範囲である。
【0035】
多層真珠光沢顔料が、1.4を超えるスパンΔDを有していると、得られた多層真珠光沢顔料は高光輝ではない。0.7未満のスパンΔDの多層真珠光沢顔料は、通常の方法で調製するには極めて手間がかかり、そのためにもはや経済的に製造することができない。
【0036】
コーティングされる微小板形状の透明な基材のスパンΔDは、実質的には、本発明の多層真珠光沢顔料のそれに相当していて、≦1.4、好ましくは≦1.3、より好ましくは≦1.2、極めて好ましくは≦1.1、特に好ましくは≦1.05である。
【0037】
本発明の多層真珠光沢顔料は、あらゆる所望の平均粒子サイズ(D
50)を持たせることができる。本発明の多層真珠光沢顔料のD
50値は、3〜350μmの範囲に設定するのが好ましい。本発明の多層真珠光沢顔料は、3〜15μmの範囲、または10〜35μmの範囲、または25〜45μmの範囲、または30〜65μmの範囲、または40〜140μmの範囲、または135〜250μmの範囲のD
50値を有するのが好ましい。
【0038】
本発明の多層真珠光沢顔料のD
10値は、1〜120μmの範囲に入るのが好ましい。本発明の多層真珠光沢顔料は、表1に示したD
10、D
50、およびD
90値の組合せを有しているのが好ましい。この文脈においては、表1のD
10、D
50、およびD
90値は、スパンΔDが0.7〜1.4の範囲、好ましくは0.7〜1.3の範囲、より好ましくは0.8〜1.2の範囲、極めて好ましくは0.8〜1.1の範囲、特に好ましくは0.85〜1.05の範囲となるようにのみ、組み合わされる。スパンΔDを、0.7〜1.4の範囲のスパンΔDとしないようなD
10、D
50、およびD
90値の組合せは、本発明の実施態様ではない。
【0039】
【表1】
【0040】
この文脈においては、驚くべきことには、D
50値を用いて特性表記される多層真珠光沢顔料のサイズはさほど重要ではなく、その代わりに、スパンΔD=(D
90−D
10)/D
50が0.7〜1.4の狭い範囲にあるのが重要であるということが見出された。多層真珠光沢顔料のD
50値は、たとえば、15、20、25または30μm、さらには50、80、100、150、200、250、300または350μmであってよい。
【0041】
本発明の一つの好ましい実施態様においては、その多層真珠光沢顔料が、ただ一つ(数:1)の干渉色を示す。したがって、本発明のこの変法では、二つ以上の干渉色の間での角度依存性のスイッチが実質的に存在しない。視野角を変化させた場合、干渉色の明度における変化、たとえば明から暗へ、またはその逆は存在するが、干渉色におけるスイッチはない。それ故に、この変法に従う本発明の多層真珠光沢顔料は、角度依存性の干渉色のスイッチは有していない。この変法に従う本発明の多層真珠光沢顔料に加えて、塗料またはインキの層にも他の着色顔料が含まれているのならば、認識される色は角度依存性の変化を示してもよいが、これは干渉色の間のスイッチではなく、代わりに、干渉色と付加的に存在している着色顔料の吸収色の間のスイッチである。
【0042】
本発明のまた別な好ましい実施態様においては、その多層真珠光沢顔料が、少なくとも二つの干渉色を有している。したがって、本発明のこの変法では、二つ以上の干渉色の間での角度依存性のスイッチが存在している。したがって、視野角を変化させた場合、たとえば、赤色から緑色への干渉色における変化が存在する。したがって、この変法に従った本発明の多層真珠光沢顔料は、角度依存性の干渉色のスイッチを有していて、ゴニオクロマチック多層真珠光沢顔料とみなすことができる。
【0043】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、本発明の多層真珠光沢顔料が銀色の干渉色を有していない。本発明の多層真珠光沢顔料の特徴は、それが、好ましくは反射角に近い視野角で着色するが、それは銀色ではないということである。したがって、本発明の多層真珠光沢顔料は、銀色の干渉顔料と顕著に異なっているだけではなく、メタリック効果顔料、特にたとえば、銀色のアルミニウム効果顔料とも顕著に異なっている。
【0044】
本発明の多層真珠光沢顔料は、黄色、紫色、青色、赤色、緑色、およびそれらのグラデーションからなる群より選択される少なくとも一つの干渉色を有しているが、銀色の干渉色が含まれていないのが好ましい。問題としている干渉色は、暗から明までの範囲であってよい。
【0045】
銀色の干渉色を有さない多層真珠光沢顔料は、本発明の目的においては、その彩度値C
*15が>20である多層真珠光沢顔料であると理解されたい。
【0046】
この場合における彩度値は、以下の適用から求める:6重量%の多層真珠光沢顔料を含むニトロセルロースワニス(Dr.Renger Erco Bronzemischlack 2615e;Morton)(重量%の数字はワニスの全重量を基準にしたものである)を、D
50値に応じて、表2に従った湿膜厚みで、Byk−Gardnerブラック/ホワイトドローダウンチャート(Byko−Chart2853)に適用し、次いで、室温で乾燥させる。次いで、BYK−MACを使用し、ドローダウンチャートの黒色バックグランド上で測定して、これらのドローダウンチャートについての測色評価を実施する。入射角は45度であり、採用した彩度値は、15度の観察角におけるものである。
【0047】
【表2】
【0048】
本発明の多層真珠光沢顔料は、強い光輝と、好ましくは同時に、高い彩度C
*15>20を有していることを特徴としている。
【0049】
本発明の一つの好ましい変法においては、本発明の多層真珠光沢顔料の彩度C
*15は、少なくとも22、好ましくは少なくとも24、より好ましくは少なくとも25である。24〜50の範囲の彩度が、極めて好適であることが見出された。
【0050】
コーティングされる適切な微小板形状の透明な基材は、非金属の、天然または合成の微小板形状の基材である。基材は、実質的に透明であるのが好ましく、透明であるのがより好ましいが、これは、それらが可視光線に対して少なくとも部分的に透過性であるということを意味している。
【0051】
本発明の一つの好ましい実施態様においては、その微小板形状の透明な基材を、天然マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、SiO
2微小板、Al
2O
3微小板、ポリマー微小板、微小板形状のオキシ塩化ビスマス、有機−無機層ハイブリッドを含む微小板形状の基材、およびそれらの混合物からなる群より選択してよい。微小板形状の透明な基材は、天然マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、SiO
2微小板、Al
2O
3微小板、およびそれらの混合物からなる群より選択されるのが好ましい。微小板形状の透明な基材は、天然マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、およびそれらの混合物からなる群より選択されるのが特に好ましい。特に好ましいのは、ガラスフレークおよび合成マイカ、ならびにそれらの混合物である。
【0052】
合成の微小板形状の透明な基材とは対照的に、天然マイカは、外来のイオンが組み込まれていることの結果としての汚染が色相を変化させる可能性があり、また、その表面が理想的な平滑ではなく、たとえば段差のような不規則性を有している可能性があるという欠点を有している。しかしながら、驚くべきことには、たとえ天然基材を使用した場合であっても、スパンΔDが0.7〜1.4の範囲にあると、多くの通常のスパンの広い多層真珠光沢顔料に比較して、多くの多層真珠光沢顔料は光輝が増大するということが見出された。
【0053】
合成の基材、たとえば、ガラスフレークまたは合成マイカは、それとは対照的に、滑らかな表面、個々の基材粒子の中での一様な厚み、およびシャープなエッジを有している。その結果として、その表面には入射光および反射光のための散乱中心がほんのわずかしかなく、したがって、コーティングの後では、基材として天然マイカを用いた場合よりも、より高光輝の多層真珠光沢顔料が得られる。本発明に従って、それらが高屈折率層および低屈折率層を用いてコーティングされるならば、これによって極めて均一な色が得られる。これらの効果すべてが、強い光沢を有する、高彩度の多層真珠光沢顔料を得るのに有利に働く。使用するガラスフレークは、好ましくは、EP 0 289 240 A1、WO 2004/056716 A1、WO 2005/063637 A1に記載された方法によって製造されたものである。使用可能なガラスフレーク基材は、たとえば、EP 1 980 594 B1の教示に従った組成を有していてもよい。
【0054】
コーティングされる微小板形状の透明な基材の平均幾何学的厚みは、50nm〜5000nmの範囲、好ましくは60nm〜3000nmの範囲、より好ましくは70nm〜2000nmの範囲である。一つの実施態様においては、コーティングされる基材としてのガラスフレークにおける平均幾何学的厚みが、750nm〜1500nmの範囲である。このタイプのガラスフレークは、広いレベルで商品として入手可能である。より薄いガラスフレークでは、さらなる利点が得られる。基材が薄い程、本発明の多層真珠光沢顔料の層全体の厚みが薄くなる。したがって、この場合も同様に、その平均幾何学的厚みが100nm〜700nmの範囲であるガラスフレークが好ましく、平均幾何学的厚みは、より好ましくは150nm〜600nmの範囲、極めて好ましくは170nm〜500nmの範囲、特に好ましくは200nm〜400nmの範囲である。また別な実施態様においては、コーティングされる基材としての天然または合成のマイカにおける平均幾何学的厚みは、好ましくは100nm〜700nmの範囲、より好ましくは150nm〜600nmの範囲、極めて好ましくは170nm〜500nmの範囲、特に好ましくは200nm〜400nmの範囲である。
【0055】
高屈折率の金属酸化物を用いて、平均幾何学的厚みが50nm未満の微小板形状の透明な基材をコーティングしたとすると、得られる多層真珠光沢顔料は、極端に破損しやすく、適用媒体の中に組み入れている間にも完全に破損される可能性があり、その結果、光輝が顕著に低下する。
【0056】
幾何学的な基材の厚みの平均が5000nmを超えると、その多層真珠光沢顔料は全体として厚くなりすぎる可能性がある。これに伴って、比不透明性、すなわち、本発明の多層真珠光沢顔料の単位重量あたりで隠される表面積が小さくなり、さらには、適用媒体中における面に平行な配向が低下する。配向性が低下する結果として、今度は光輝が低下する。
【0057】
微小板形状の透明な基材の平均幾何学的厚みは、硬化させたワニス膜に基づいて求めるが、その膜の中では、多層真珠光沢顔料が、基材に対して実質的に面に平行に配列している。この目的のためには、硬化させたワニス膜の研磨断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、100個の多層真珠光沢顔料の微小板形状の透明な基材の幾何学的厚みを求めて、統計的に平均する。
【0058】
本発明の多層顔料においては、その上で入射光が反射、干渉、吸収、光回折などのような物理的効果によって知覚可能な色彩効果を生み出す、層A〜Cを有する層構造によって、光学効果がもたらされる。
【0059】
光学活性な層またはコーティングとしては、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属水酸化物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属オキシハライド、金属カルコゲニド、金属窒化物、金属酸窒化物、金属硫化物、金属炭化物、またはそれらの混合物を含む層を適用するのが好ましい。一つの好ましい変法においては、光学活性な層またはコーティングが、上述の物質からなっている。
【0060】
特に断らない限り、本発明の目的においては、層またはコーティングという用語は、相互に置き換え可能に使用される。
【0061】
高屈折率層AおよびCの屈折率は、それぞれの場合において、n≧1.8、好ましくはn≧1.9、より好ましくはn≧2.0である。低屈折率層Bの屈折率は、n<1.8、好ましくはn<1.7、より好ましくはn<1.6である。
【0062】
本発明においては、層Aが吸収性高屈折率層である。この層Aは、選択的吸収性、すなわち狭い波長範囲で吸収性であってもよい。層Aはさらに、非選択的吸収性、すなわち可視光線の波長範囲全体にわたって吸収性であってもよい。
【0063】
本発明の多層真珠光沢顔料においては、層Cは、吸収性であっても、あるいは非吸収性であってもよい。層Cが吸収性の場合には、その層Cは、先に層Aについて述べたように、選択的吸収性であっても、あるいは非選択的吸収性であってもよい。層Cは、層Aと同一の化学的組成を有していてもよい。しかしながら、層Cが、層Aとは異なった化学的組成を有していてもよい。
【0064】
非吸収性の層Cは、透明な層とみなしてもよい。
【0065】
適切な高屈折率で、選択的吸収性の物質の例としては、以下のものが挙げられる:
・着色金属酸化物または金属酸化物水和物、たとえば、酸化鉄(III)(α−および/またはγ−Fe
2O
3、赤色)、FeO(OH)(黄色)、酸化クロム(III)(緑色)、酸化チタン(III)(Ti
2O
3、青色)、五酸化バナジウム(橙色)、
・着色窒化物、たとえば、チタンオキシナイトライドおよび窒化チタン(TiO
xN
y、TiN、青色)、通常、二酸化チタンとの混合物の形で存在している低級なチタンの酸化物および窒化物、
・金属硫化物、たとえば、硫化セリウム(赤色)、
・チタン酸鉄、たとえば、擬板チタン石(褐赤色)および/または擬ルチル(褐赤色)、
・スズ−アンチモン酸化物、Sn(Sb)O
2、
・選択的吸収性着色料を用いて着色した、非吸収性で無色の高屈折率物質、たとえば、金属酸化物、たとえば、二酸化チタンおよび二酸化ジルコニウム。この着色は、選択的吸収性金属カチオンもしくは着色金属酸化物たとえば酸化鉄(III)を用いて金属酸化物層をドーピングするか、または着色料を含む膜を用いて金属酸化物層をコーティングすることによって、金属酸化物層の中に着色料を組み入れることにより達成してもよい。
【0066】
高屈折率で、非選択的吸収性の物質の例としては、以下のものが挙げられる:
・金属、たとえば、モリブデン、鉄、タングステン、クロム、コバルト、ニッケル、銀、パラジウム、白金、それらの混合物またはそれらの合金、
・金属酸化物、たとえば、マグネタイトFe
3O
4、酸化コバルト(CoOおよび/またはCo
3O
4)、酸化バナジウム(VO
2および/またはV
2O
3)、およびこれらの酸化物と金属の混合物、より詳しくは、マグネタイトと(金属)鉄、
・チタン酸鉄、たとえばイルメナイト、
・金属硫化物、たとえば、硫化モリブデン、硫化鉄、硫化タングステン、硫化クロム、硫化コバルト、硫化ニッケル、硫化銀、硫化スズ、これらの硫化物の混合物、これらの硫化物とそれぞれの金属の混合物、たとえばMoS
2とMo、ならびに、それぞれの金属の酸化物との混合物、たとえばMoS
2と酸化モリブデン、
・その中に非選択的吸収性の物質(たとえば炭素)を組み込むか、またはそれを用いてコーティングした、非吸収性で無色の高屈折率層、たとえば、二酸化チタンまたは二酸化ジルコニウム。
【0067】
高屈折率で非吸収性の物質としては、たとえば以下のものが挙げられる:
・金属酸化物、たとえば、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、二酸化スズ、酸化アンチモン、およびそれらの混合物、
・
上記の金属酸化物を構成する金属の水酸化物、
・
上記の金属酸化物
の水和物、
・金属硫化物、たとえば硫化亜鉛、
・金属オキシハライド、たとえばオキシ塩化ビスマス。
【0068】
層Aおよび/またはCは、それぞれの場合において、各種の選択的および/または非選択的吸収性の成分、好ましくは金属酸化物の混合物であってよい。たとえば、各種の成分、好ましくは金属酸化物が、均質な混合物の形態で存在していてもよい。しかしながら、ドープの形態で、一つの成分を他の成分の中に存在させることもまた可能である。
【0069】
たとえば、層Aおよび/またはCの中で、非吸収性の成分、たとえば酸化チタン、好ましくはTiO
2を、選択的吸収性の成分、好ましくはFe
2O
3の中に、および/または非選択的吸収性の成分、たとえばFe
3O
4の中にドープとして存在させてもよい。別な方法として、選択的吸収性の成分、たとえばFe
2O
3、および/または非選択的吸収性の成分、たとえばFe
3O
4を、非吸収性の成分、たとえば酸化チタン、好ましくはTiO
2の中にドープとして存在させてもよい。
【0070】
さらに、言うまでもないことではあるが、層Aおよび/またはCの中に、上述のような成分を3種以上の混合物で存在させることもまた可能である。
【0071】
一つの好ましい実施態様においては、金属酸化物、金属水酸化物および/または金属酸化物水和物を、高屈折率層Aおよび/またはCとして使用する。金属酸化物を使用するのが特に好ましい。層Aが酸化鉄を、そして層Cが二酸化チタンおよび/または酸化鉄、さらにはそれらの混合物を含んでいるのが、極めて特に好ましい。一つの実施態様においては、層Aが酸化鉄からなっており、層Cが、二酸化チタンおよび/または酸化鉄、さらにはそれらの混合物からなっている。
【0072】
本発明の多層真珠光沢顔料が二酸化チタンを用いたコーティングを有する場合には、その二酸化チタンは、ルチル形またはアナターゼ形の結晶変態で存在していてよい。二酸化チタン層はルチル形であるのが好ましい。ルチル形は、たとえばコーティングされる微小板形状の透明な基材に対して二酸化スズの層を適用し、その後で二酸化チタン層を適用することによって得ることができる。この二酸化スズの層の上で、二酸化チタンがルチル変態の形で結晶化する。この二酸化スズは、別な層の形をとっていてもよく、その場合には、その層の厚みは、数ナノメートル、たとえば10nm未満、より好ましくは5nm未満、さらにより好ましくは3nm未満であってよい。
【0073】
低屈折率層Bとしては、非吸収性の物質が適切である。これらの物質としては、たとえば以下のものが挙げられる:
・金属酸化物、たとえば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、
・金属酸化物水和物、たとえば、酸化ケイ素水和物、酸化アルミニウム水和物、
・金属フッ化物、たとえば、フッ化マグネシウム、
・MgSiO
3。
【0074】
低屈折率の金属酸化物層には、場合によっては、構成成分として、アルカリ金属酸化物および/またはアルカリ土類金属酸化物が含まれていてもよい。
【0075】
低屈折率層Bは、二酸化ケイ素を含んでいるのが好ましい。一つの実施態様においては、その低屈折率層Bが二酸化ケイ素からなっている。
【0076】
干渉可能なコーティングは、基材を完全に包み込んでいてもよいし、あるいは基材の上に部分的にだけ存在していてもよい。本発明の多層真珠光沢顔料は、微小板形状の基材を完全に包み込み、その上側と下側の面だけでなく被覆している、一様で均質な構成のコーティングを特徴としている。
【0077】
本発明の多層真珠光沢顔料の個々の層は、それぞれ、λ/4層として設計されていてもよい。しかしながら、驚くべきことには、高い光輝があり、好ましくはさらに彩度の高い多層真珠光沢顔料を得るために、それらの層がλ/4層として設計されている必要はないということが見出された。高い光輝があり、好ましくはさらに高彩度の多層真珠光沢顔料を得るためのキーとなるパラメーターは、サイズ分布のスパンである。
【0078】
高屈折率および低屈折率を有する非金属層の光学的厚さが、その多層真珠光沢顔料の光学的性質を決定する。それらの層の数と厚みは、期待される効果および使用される基材に応じて、設定すればよい。
【0079】
nが層の屈折率、dがその厚みとすると、薄い層が示す干渉色は、nとdの積、すなわち光学的厚さによって与えられる。普通の入射光のもとでの反射光に現れる膜の色は、次式の波長の光が強化されるか、
【数1】
そして次式の波長の光が減衰されるかの結果である。
【数2】
式中、Nは正の整数である。膜の厚みの増加と共に起きる色の変化は、干渉を介して、特定の波長の光が強化されるか、あるいは減衰されるかの結果である。
【0080】
多層顔料の場合においては、その干渉色は、特定の波長が強化されることによって決まり、多層顔料の中の2層以上が同一の光学的厚さを有しているのなら、層の数が多くなる程、その反射光の色が強くなる。さらに、低屈折率層Bの層厚みを適切に選択することによって、視野角に応じて特に強い色の変化を達成してもよい。そのようにすれば、傑出したカラーフロップ性を発揮させることができる。
【0081】
本発明の多層真珠光沢顔料は、高屈折率層AおよびCが、それぞれの場合において、30nm〜900nmの範囲、好ましくは40nm〜880nmの範囲、より好ましくは50nm〜850nmの範囲の光学層厚みを有していてよい。低屈折率層Bの光学層厚みは、30nm〜500nmの範囲であってよい。
【0082】
金属の場合においては、層Aおよび/またはCの幾何学的層厚みは、10nm〜50nm、好ましくは15nm〜30nmである。その層厚みは、層が半透明な性質を有するように設定しなければならない。これにより、使用する金属に応じて、各種の層厚みとなる。
【0083】
本明細書において示す層厚みは、特に断らない限り、光学層厚みである。光学層厚みは、本発明においては、層を構成している物質の、幾何学的層厚みと屈折率の積を意味している。対象としている物質の屈折率についての値としては、それぞれの場合において、文献から公知の値を使用している。本発明においては、幾何学的層厚みは、基材に対して面に平行に配向した多層真珠光沢顔料を含むワニスの研磨断面のSEMの顕微鏡写真をベースに求めている。
【0084】
本発明の好適な展開には、微小板形状の透明な基材に、最初に層A、次いで層B、最後に層Cを適用した、以下のような層配列が包含される。
1.
層A:選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率
層C:選択的吸収性かつ高屈折率
2.
層A:非選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率
層C:選択的吸収性かつ高屈折率
3.
層A:選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率
層C:非選択的吸収性かつ高屈折率
4.
層A:非選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率
層C:非選択的吸収性かつ高屈折率
5.
層A:選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率
層C:非吸収性(透明)かつ高屈折率
6.
層A:非選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率
層C:非吸収性(透明)かつ高屈折率
【0085】
上述の層配列は、いずれの場合においても、場合によっては有機化学的に修飾されている少なくとも1層の外側保護層Dを有していてもよい。
【0086】
本発明の一つの好ましい展開においては、上述の層配列における層Bが、≦150nm、好ましくは<140nm、より好ましくは<130nmの光学層厚み(すなわち光路長)を有している。層Bの光学層厚みが、30nmから≦150nmまでの範囲、好ましくは40nm〜140nmの範囲、より好ましくは50nm〜130nmの範囲であれば、極めて好適であることが判った。
【0087】
層Bの光学層厚みが≦150nmであると、本発明の多層真珠光沢顔料は、角度依存性の干渉色を実質的に有さない。この実施態様においては、本発明の多層真珠光沢顔料は、ただ一つだけの干渉色を有していて、視野角に依存して明から暗へとその強度が変化する。したがって、本発明の多層真珠光沢顔料のこの変法では、高い光輝があり、彩度が高い効果顔料が得られる。
【0088】
本発明のさらに好ましい展開においては、上述のような層配列において、層Bが、>150nm、好ましくは>180nm、より好ましくは>220nmの光学層厚みを有している。層Bの光学層厚みが、>150nmから500nmまでの範囲、好ましくは180nm〜480nmの範囲、より好ましくは220nm〜450nmの範囲であれば、極めて好適であることが判った。
【0089】
層Bの光学層厚みが>150nmであると、本発明の多層真珠光沢顔料は、角度依存性の干渉色を有する。この実施態様においては、本発明の多層真珠光沢顔料は、視野角に依存して少なくとも二つの干渉色を有している。本発明の多層真珠光沢顔料のこの実施態様では、それは、さらに、ゴニオクロマチック真珠光沢顔料とみなされてもよい。したがって、本発明の多層真珠光沢顔料のこの変法においては、強いカラーフロップ性を有する高光輝な真珠光沢顔料が得られる。この多層真珠光沢顔料は、たとえば、赤色から緑色まで、あるいは青色から黄色までの干渉色のスイッチを有していてもよい。
【0090】
低屈折率層Bの光学層厚みに依存して、カラーフロップ性なし、弱いカラーフロップ性あり、そして強いカラーフロップ性あり、といった多層真珠光沢顔料の間における変化は、連続的に移行する。低屈折率層Bの光学層厚みが増していって150nmを超えると、まず弱いカラーフロップ性のみを有する多層真珠光沢顔料が得られ、層Bの光学層厚みがさらに増え続けると、最後には強いカラーフロップ性となる。強いカラーフロップ性は、典型的には、CIELab色座標システムの複数の象限にわたって拡がる。
【0091】
本発明の一つの好ましい展開においては、以下の実施態様が特に好ましい。
1.
層A:選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率、光学層厚み≦150nm、好ましくは30nm〜140nmの範囲
層C:選択的吸収性かつ高屈折率
2.
層A:非選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率、光学層厚み≦150nm、好ましくは30nm〜140nmの範囲
層C:選択的吸収性かつ高屈折率
3.
層A:選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率、光学層厚み≦150nm、好ましくは30nm〜140nmの範囲
層C:非選択的吸収性かつ高屈折率
4.
層A:非選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率、光学層厚み≦150nm、好ましくは30nm〜140nmの範囲
層C:非選択的吸収性かつ高屈折率
5.
層A:選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率、光学層厚み≦150nm、好ましくは30nm〜140nmの範囲
層C:非吸収性(透明)かつ高屈折率
6.
層A:非選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率、光学層厚み≦150nm、好ましくは30nm〜140nmの範囲
層C:非吸収性(透明)かつ高屈折率
【0092】
上述の層配列は、それぞれ、場合によっては有機化学的に修飾されている少なくとも1層の外側保護層Dを有していてもよい。上述の6種の実施態様の場合においては、層Bの光学層厚みは、一つのさらに好ましい実施態様において、40nm〜140nmの範囲、より好ましくは50nm〜130nmの範囲である。層Bは、好ましくは酸化ケイ素、より好ましくはSiO
2である。層Aは好ましくは酸化鉄であり、そして層Cは好ましくは透明な層ではTiO
2、吸収性の層では酸化鉄である。
【0093】
本発明のさらなる変法においては、干渉色において角度依存性の変化を有する多層真珠光沢顔料が好ましい。視野角に依存して、この多層真珠光沢顔料は、二つ以上の干渉色を有していて、そのためにそれは、ゴニオクロマチック多層真珠光沢顔料とみなされてもよい。好ましい実施態様を以下に示す。
1.
層A:選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率、光学層厚み>150nm、好ましくは165nm〜450nmの範囲
層C:選択的吸収性かつ高屈折率
2.
層A:非選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率、光学層厚み>150nm、好ましくは165nm〜450nmの範囲
層C:選択的吸収性かつ高屈折率
3.
層A:選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率、光学層厚み>150nm、好ましくは165nm〜450nmの範囲
層C:非選択的吸収性かつ高屈折率
4.
層A:非選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率、光学層厚み>150nm、好ましくは165nm〜450nmの範囲
層C:非選択的吸収性かつ高屈折率
5.
層A:選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率、光学層厚み>150nm、好ましくは165nm〜450nmの範囲
層C:非吸収性(透明)かつ高屈折率
6.
層A:非選択的吸収性かつ高屈折率
層B:低屈折率、光学層厚み>150nm、好ましくは165nm〜450nmの範囲
層C:非吸収性(透明)かつ高屈折率
【0094】
上述の多層真珠光沢顔料のBの光学層厚みは、好ましくは>150nmから500nmまでの範囲、より好ましくは180nm〜480nmの範囲である。光学層厚みが500nmを超えると、その多層真珠光沢顔料が全体として厚くなりすぎる。相対的に厚い真珠光沢顔料は、適用媒体の中で面に平行な配向を容易にとることができず、そのために光輝を失うこととなる。
【0095】
層Bは、酸化ケイ素、好ましくはSiO
2からなるのが好ましい。層Aは好ましくは選択的吸収性または非選択的吸収性の酸化鉄であり、そして層Cは好ましくは透明な層ではTiO
2、吸収性の層では酸化鉄である。
【0096】
本発明においては、以下のような具体的な層配列が特に好ましい。
【0097】
I.ただ一つ(数:1)の干渉色しか有さない、すなわち干渉色の角度依存性のスイッチがない、多層真珠光沢顔料
層A:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み≦150nm、好ましくは40nm〜140nmの範囲
層C:酸化チタン、好ましくは二酸化チタン
層A:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み≦150nm、好ましくは40nm〜140nmの範囲
層C:酸化チタン、好ましくは二酸化チタン、および選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層A:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み≦150nm、好ましくは40nm〜140nmの範囲
層C:酸化チタン、好ましくは二酸化チタン、および非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
層A:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み≦150nm、好ましくは40nm〜140nmの範囲
層C:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4、および選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層A:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み≦150nm、好ましくは40nm〜140nmの範囲
層C:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層A:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み≦150nm、好ましくは40nm〜140nmの範囲
層C:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層A:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み≦150nm、好ましくは40nm〜140nmの範囲
層C:酸化チタン、好ましくはTiO
2
層A:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み≦150nm、好ましくは40nm〜140nmの範囲
層C:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3、および酸化チタン、好ましくはTiO
2
層A:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み≦150nm、好ましくは40nm〜140nmの範囲
層C:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4、および酸化チタン、好ましくはTiO
2
層A:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み≦150nm、好ましくは40nm〜140nmの範囲
層C:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3、および非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
【0098】
上述の好ましい多層真珠光沢顔料における高屈折率層AおよびCは、互いに独立して、好ましくは40〜880nm、より好ましくは50〜850nmの光学層厚みを有している。
【0099】
II.少なくとも二つの干渉色を有する、すなわち干渉色の角度依存性のスイッチを有する多層真珠光沢顔料
層A:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み>150nm、好ましくは180〜480nm
層C:酸化チタン、好ましくは二酸化チタン
層A:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み>150nm、好ましくは180〜480nm
層C:酸化チタン、好ましくは二酸化チタン、および選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層A:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み>150nm、好ましくは180〜480nm
層C:酸化チタン、好ましくは二酸化チタン、および非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
層A:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み>150nm、好ましくは180〜480nm
層C:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4、および選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層A:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み>150nm、好ましくは180〜480nm
層C:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層A:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み>150nm、好ましくは180〜480nm
層C:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3
層A:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み>150nm、好ましくは180〜480nm
層C:酸化チタン、好ましくはTiO
2
層A:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み>150nm、好ましくは180〜480nm
層C:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3、および酸化チタン、好ましくはTiO
2
層A:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み>150nm、好ましくは180〜480nm
層C:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4、および酸化チタン、好ましくはTiO
2
層A:非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
層B:酸化ケイ素、好ましくはSiO
2、光学層厚み>150nm、好ましくは180〜480nm
層C:選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
2O
3、および非選択的吸収性酸化鉄、好ましくはFe
3O
4
【0100】
上述の好ましい多層真珠光沢顔料における高屈折率層AおよびCは、互いに独立して、好ましくは40〜880nm、より好ましくは50〜850nmの光学層厚みを有している。
【0101】
本明細書において示す層厚みは、特に断らない限り、光学層厚みである。光学層厚みは、本発明においては、層を構成している物質の、幾何学的層厚みと屈折率の積を意味している。対象としている物質の屈折率についての値としては、それぞれの場合において、文献から公知の値を使用している。本発明においては、幾何学的層厚みは、基材に対して面に平行に配向した多層真珠光沢顔料を含むワニスの研磨断面のSEMの顕微鏡写真をベースに求めている。
【0102】
多層真珠光沢顔料は、さらに、少なくとも1層の、光、天候、および/または薬品に対する多層真珠光沢顔料の安定性を向上させる外側保護層Dを備えていてもよい。外側保護層Dは、アフターコートであってもよく、そのことによって、各種の媒体の中への組入れにおける顔料の取扱いが容易になる。
【0103】
本発明の多層真珠光沢顔料の外側保護層Dは、元素Si、AlまたはCeの1種または2種の金属酸化物層を含むか、または好ましくはそれらからなっていてもよい。一つの変法においては、酸化ケイ素層、好ましくはSiO
2層を、最外金属酸化物層として適用する。この場合においては、WO 2006/021386 A1に記載されているように、最初にまず酸化セリウム層を適用し、次いでSiO
2層を適用するという順序が特に好ましい(その特許の内容を参照としてここに引用することにより、本明細書に取り入れたものとする)。
【0104】
外側保護層Dは、さらに、表面を有機化学的に修飾したものであってもよい。たとえば、1種または複数のシランをこの外側保護層に適用してもよい。そのシランは、1〜24個のC原子、好ましくは6〜18個のC原子の分岐鎖または非分岐状のアルキル基を有するアルキルシランであってよい。
【0105】
別な方法として、そのシランが、プラスチック、塗料またはインキのバインダーなどに対して化学的に結合することが可能な有機官能性シランであってもよい。
【0106】
表面修飾剤として好適に使用され、適切な官能基を有する有機官能性シランは、市場で入手可能であり、たとえば、Evonikにより製造され、“Dynasylan”の商品名で販売されている。さらなる製品は、Momentiveから(Silquestシラン)、またはWackerから、例として、GENIOSIL製品群からの標準的なシランおよびα−シランを購入することが可能である。
【0107】
これらの製品の例を以下に挙げる:3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MEMO、Silquest A−174NT)、ビニルトリメトキシ[またはエトキシ]シラン(Dynasylan VTMOもしくはVTEO、Silquest A−151もしくはA−171)、メチルトリメトキシ[またはエトキシ]シラン(Dynasylan MTMSもしくはMTES)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MTMO;Silquest A−189)、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan GLYMO、Silquest A−187)、トリス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート(Silquest Y−11597)、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル)]テトラスルフィド(Silquest A−1289)、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピルジスルフィド(Silquest A−1589)、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Silquest A−186)、ビス(トリエトキシシリル)エタン(Silquest Y−9805)、ガンマ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−Link35、GENIOSIL GF40)、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシ[またはエトキシ]シラン(GENIOSIL XL33、XL36)、(メタクリロイルオキシメチル)メチル[またはエチル]ジメトキシシラン(GENIOSIL XL32、XL34)、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン、(イソシアナトメチル)トリメトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸(GENIOSIL GF20)、(メタクリロイルオキシメチル)メチルジエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリアセトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン(GENIOSIL XL10)、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン(GENIOSIL GF58)、およびビニルトリアセトキシシラン。
【0108】
有機官能性シランとしては、以下のものを使用するのが好ましい:3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MEMO、Silquest A−174NT)、ビニルトリメトキシ[またはエトキシ]シラン(Dynasylan VTMOもしくはVTEO、Silquest A−151もしくはA−171)、メチルトリメトキシ[またはエトキシ]シラン(Dynasylan MTMSもしくはMTES)、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Silquest A−186)、ビス(トリエトキシシリル)エタン(Silquest Y−9805)、ガンマ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−Link35、GENIOSIL GF40)、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシ[またはエトキシ]シラン(GENIOSIL XL33、XL36)、(メタクリロイルオキシメチル)メチル[またはエチル]ジメトキシシラン(GENIOSIL XL32、XL34)、3−(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸(GENIOSIL GF20)、ビニルトリメトキシシラン(GENIOSIL XL10)および/またはビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン(GENIOSIL GF58)。
【0109】
しかしながら、本発明の多層真珠光沢顔料に他の有機官能性シランを適用することもまた可能である。
【0110】
さらに、水性予加水分解物を使用することも可能であるが、それは、たとえばDegussaから商品として入手可能である。このようなものとしては、特に以下のものが挙げられる:水性アミノシロキサン(Dynasylan Hydrosil 1151)、水性アミノ−/アルキル官能性シロキサン(Dynasylan Hydrosil 2627または2909)、水性ジアミノ官能性シロキサン(Dynasylan Hydrosil 2776)、水性エポキシ官能性シロキサン(Dynasylan Hydrosil 2926)、アミノ−/アルキル官能性オリゴシロキサン(Dynasylan 1146)、ビニル−/アルキル官能性オリゴシロキサン(Dynasylan 6598)、オリゴマー性ビニルシラン(Dynasylan 6490)またはオリゴマー性短鎖アルキル官能性シラン(Dynasylan 9896)。
【0111】
一つの好ましい実施態様においては、有機官能性シラン混合物に、少なくとも1種のアミノ官能性シランと、さらに少なくとも1種の官能性結合基を含まないシランが含まれている。アミノ官能基は、バインダーの中に存在している大部分の基と、1種または複数の化学的相互作用を持つことが可能な官能基である。これには、たとえば、バインダーのイソシアネート官能基もしくはカルボキシレート官能基などとの共有結合、またはOH官能基もしくはCOOR官能基などとの水素結合、またはその他のイオン性相互作用が含まれていてよい。したがって、アミノ官能基は、多層真珠光沢顔料を各種のバインダーに化学的に結合させる目的には、特に極めて好適である。
【0112】
この目的のためには、以下の化合物を使用するのが好ましい:3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan AMMO;Silquest A−1110)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan AMEO)、[3−(2−アミノエチル)アミノプロピル]トリメトキシシラン(Dynasylan DAMO、Silquest A−1120)、[3−(2−アミノエチル)アミノプロピル]トリエトキシシラン、トリアミノ官能性トリメトキシシラン(Silquest A−1130)、ビス(ガンマ−トリメトキシシリルプロピル)アミン(Silquest A−1170)、N−エチル−ガンマ−アミノイソブチルトリメトキシシラン(Silquest A−Link15)、N−フェニル−ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest Y−9669)、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン(Silquest A−1637)、N−シクロヘキシルアミノメチルメチルジエトキシシラン(GENIOSIL XL924)、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン(GENIOSIL XL926)、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン(GENIOSIL XL973)、およびそれらの混合物。
【0113】
さらに好ましい実施態様においては、その官能性結合基を含まないシランがアルキルシランである。そのアルキルシランは式(A)を有しているのが好ましい。
R
(4−z)Si(X)
z (A)
【0114】
この式においては、zは1〜3の整数であり、Rは、10〜22個のC原子を有する、置換または非置換、非分岐状または分岐状のアルキル鎖であり、Xはハロゲン基および/またはアルコキシ基である。少なくとも12個のC原子のアルキル鎖を有するアルキルシランが好ましい。Rは、Siに対して環状に結合されていてもよく、その場合、zは典型的には2である。
【0115】
本発明の多層真珠光沢顔料の表面またはその上に、上述のシランおよびシラン混合物に加えて、さらなる有機化学的修飾剤、たとえば、置換もしくは非置換のアルキル基、ポリエーテル、チオエーテル、シロキサンなど、およびそれらの混合物が配置されていてもよい。しかしながら、無機化学的修飾剤(たとえば、Al
2O
3またはZrO
2またはそれらの混合物)を顔料表面に適用することもまた可能であるが、これらの修飾剤は、たとえば、それぞれの適用媒体の中における分散性および/または相溶性を向上させることができる。
【0116】
表面修飾によって、たとえば、顔料表面の親水性または疎水性を改変したりおよび/または設定したりすることができる。たとえば、表面修飾によって、本発明の多層真珠光沢顔料のリーフィング性または非リーフィング性を改変したりおよび/または設定したりすることができる。リーフィングは、適用媒体、たとえば塗料または印刷インキの中で、本発明の多層真珠光沢顔料が、適用媒体の界面または表面、またはそれに近いところに配置されるということを意味している。
【0117】
表面修飾剤には、さらに反応性の化学基、たとえば、アクリレート、メタクリレート、ビニル、イソシアネート、シアノ、エポキシ、ヒドロキシルもしくはアミノ基、またはそれらが混在して含まれていてもよい。これらの化学的反応性基によって、適用媒体または適用媒体の成分、たとえばバインダーに対する化学的な結合、特に共有結合の形成が可能となる。この手段によって、たとえば、硬化させたワニス、塗料または印刷インキの化学的および/または物理的性質、たとえば湿度、日射、UV抵抗性などの環境的な影響、あるいは引掻き性などの機械的な影響に対する抵抗性などを改良することが可能となる。
【0118】
化学的反応性基と適用媒体もしくは適用媒体の成分の間の化学反応は、たとえばUV光および/または熱の形態のエネルギーを照射することによって誘起してもよい。
【0119】
シランを用いてアフターコーティングされるか、および/または外側保護層を備えた多層真珠光沢顔料を化粧料配合物の中に組み入れるためには、それに対応するシランおよび/または外側保護層の物質が、化粧料に関する法律で許可されているかどうかを確認しておく必要がある。
【0120】
より詳しくは、本発明の多層真珠光沢顔料はたとえば以下のような化粧料において使用するのに適している:ボディパウダー、フェースパウダー、プレスドパウダーおよびルースパウダー、フェースメイクアップ、パウダークリーム、クリームメイクアップ、エマルションメイクアップ、ワックスメイクアップ、ファウンデーション、ムースメイクアップ、紅、アイメイクアップたとえばアイシャドー、マスカラ、アイライナー、リキッドタイプアイライナー、アイブローペンシル、リップケアスティック、リップスティック、リップグロス、リップライナー、ヘアスタイリング組成物たとえばヘアスプレー、ヘアムース、ヘアジェル、ヘアワックス、ヘアマスカラ、恒久的もしくは半恒久的ヘアカラー、一時的ヘアカラー、スキンケア組成物たとえばローション、ジェル、およびエマルション、ならびにさらにはネイルワニス組成物。
【0121】
化粧料用途においては、特定の色彩効果を得るため、本発明の多層真珠光沢顔料だけではなく、さらなる着色料および/または慣用される効果顔料またはそれらの混合物を各種の割合で使用することも可能である。使用される慣用の効果顔料は、たとえば以下のようなものであってよい:高屈折率の金属酸化物でコーティングした天然マイカをベースとする市販の真珠光沢顔料(たとえば、Eckart製のPrestige製品群)、BiOCl微小板、TiO
2微小板、高屈折率の金属酸化物を用いてコーティングした合成マイカをベースとするか、または高屈折率の金属酸化物を用いてコーティングしたガラス微小板をベースとする真珠光沢顔料(たとえば、Eckart製のMIRAGE製品群)、Al
2O
3、SiO
2もしくはTiO
2の微小板。さらに、メタリック効果顔料、たとえばEckart製のVisionaire製品群を添加することもまた可能である。着色料は、無機または有機の顔料から選択すればよい。
【0122】
本発明の多層真珠光沢顔料を製造するための方法には以下の工程が含まれる:
(i)コーティングされる微小板形状の透明な基材をサイズ分級して、コーティングされる微小板形状の透明な基材が、スパンΔD(スパンΔDは式ΔD=(D
90−D
10)/D
50に従って定義される)を0.7〜1.4の範囲とする特性値D
10、D
50、D
90を有する体積平均サイズ分布関数を有するようにする工程、
(ii)微小板形状の透明な基材に対して、少なくとも層A〜C、さらには、場合によっては、少なくとも1層の層Dを適用する工程、
または
(iii)微小板形状の透明な基材に対して、少なくとも層A〜C、さらには、場合によっては、少なくとも1層の層Dを適用する工程、
(iv)コーティングされた微小板形状の透明な基材をサイズ分級して、コーティングされた微小板形状の透明な基材が、スパンΔD(スパンΔDは式ΔD=(D
90−D
10)/D
50に従って定義される)を0.7〜1.4の範囲とする特性値D
10、D
50、D
90を有する体積平均サイズ分布関数を有するようにする工程。
【0123】
最初の基材が大きすぎるような場合には、場合によっては、サイズ分級より前に微粉砕工程を実施することも可能である。
【0124】
サイズ分級は、基材をコーティングする前または後に実施してよい。しかしながら、基材を最初に分級し、次いでコーティングするのが有利である。多層真珠光沢顔料が本発明に従ったサイズ分布になるまで、サイズ分級を実施し、場合によっては繰り返す。
【0125】
コーティングされる微小板形状の透明な基材に対して、適切な微粉砕および/または分級操作を施すことによって、基材におけるスパンΔDを狭くすることができる。コーティングされる微小板形状の透明な基材は、たとえばボールミル、ジェットもしくは撹拌ボールミル、エッジランナーミル、またはディソルバーを使用して微粉砕してよい。たとえば多重湿式篩別のような適切な分級操作によって、最終的な画分のスパンΔDを調節することができる。他の分級方法としては、サイクロンにおける遠心分離法や、分散体からの沈降法などが挙げられる。
【0126】
微粉砕および分級操作は、連続で実施してもよいし、場合によっては、相互に組み合わせてもよい。従って、微粉砕操作の後に分級操作をしてもよく、それに続けて、微細な画分に対してさらに微粉砕操作を行い、これを繰り返してもよい。
【0127】
金属酸化物層は、湿式化学的に適用するのが好ましいが、その場合には、真珠光沢顔料を製造するために開発された湿式化学的コーティング方法を採用すればよい。湿式コーティングの場合においては、基材粒子を水中に懸濁させ、加水分解に適し、かつその金属酸化物および/または金属酸化物水和物をコーティングされる基材の上に直接沈殿させて、いかなる場合であっても二次沈殿がないように選択したpHで、1種または複数の加水分解性金属塩または水ガラス溶液と混合する。そのpHは典型的には、塩基および/または酸を同時に計量添加することによって、一定に維持する。次いで顔料を分離し、洗浄し、50〜150℃で6〜18時間かけて乾燥させ、場合によっては0.5〜3時間かけて焼成するが、存在している特定のコーティングに合わせて、焼成温度を最適化することが可能である。一般的に言えば、焼成温度は500〜1000℃の間、好ましくは600〜900℃の間である。所望により、顔料は、個々のコーティングを適用した後に、分離し、乾燥させ、そして場合によっては焼成し、その後で、再懸濁させて、さらなる層を沈殿させてもよい。
【0128】
コーティングされる微小板形状の透明な基材の上にSiO
2層を沈殿させることは、適切なpHで、カリウムもしくはナトリウム水ガラス溶液を添加することによって実施してもよい。別な方法として、アルコキシシラン、たとえばテトラエトキシシランから出発して、ゾル−ゲル法によってSiO
2層を適用してもよい。
【0129】
以下において、いくつもの実施例を用いて、本発明をより詳しく説明するが、本発明がこれらの実施例に限定される訳ではない。
【0130】
I.顔料の調製
A.基材の分級
本発明実施例1;狭いスパンΔD=1.0を有するガラスフレークの分級
FD水中の200gのガラスフレーク(GF100M、Glassflake Ltd製)の懸濁液(FD=完全脱イオン化、ほぼ3重量%含量)を、100μmの篩で分級し、その篩下を、63μmの篩でもう一度篩別した。63μmの篩で得られた篩上について、この篩別プロセスを2回繰り返した。これによって、次の粒子サイズ分布(Malvern Mastersizer 2000)を有するガラスフレーク画分が得られた:D
10=50μm、D
50=82μm、D
90=132μm、スパンΔD=1.0。
【0131】
比較例1:広いスパンΔD=2.0を有するガラスフレークの分級
FD水中の200gのガラスフレーク(GF100M、Glassflake Ltd製)の懸濁液(ほぼ3重量%含量)を、150μmの篩で分級し、その篩下を、34μmの篩でもう一度篩別した。34μmの篩で得られた篩上について、この篩別プロセスを2回繰り返した。これによって、次の粒子サイズ分布(Malvern Mastersizer 2000)を有するガラスフレーク画分が得られた:D
10=25μm、D
50=88μm、D
90=200μm、スパンΔD=1.99。
【0132】
本発明実施例2:狭いスパンΔD=1.2を有する合成マイカの分級
FD水中の200gの人工マイカSanbao10−40(Shantou F.T.Z.Sanbao Pearl Luster Mica Tech Co.,Ltd.China)の懸濁液(約3重量%含量)を、34μmの篩で分級し、その篩下を、20μmの篩でもう一度篩別した。20μmの篩で得られた篩上について、この篩別プロセスを2回繰り返した。これによって、次の粒子サイズ分布(Malvern Mastersizer 2000)を有するマイカ画分が得られた:D
10=14μm、D
50=26μm、D
90=45μm、スパンΔD=1.2。
【0133】
比較例2:広いスパンΔD=3.7を有する合成マイカの分級
1000gの市販の分級されていない合成/人工マイカSanbao(Shantou F.T.Z.Sanbao Pearl Luster Mica Tech Co.,Ltd.China製)を、1000mLのFD水と混合し、次いでAmerican Cyanamid Company製の実験室用エッジランナーミル中で、ほぼ1時間かけて層剥離させた。
【0134】
次いでそのケーキを、FD水で希釈して25重量%の固形分含量とし、Pendraulik TD200実験室用ディソルバーの中で1時間かけて処理した。この処理の過程では、冷却することによって、懸濁液の温度が80℃を超えないように注意するべきである。
【0135】
次いでその懸濁液にFD水を加えて3重量%の固形分含量とし、Sweco Separator実験室用篩で篩別して<250μmとした。
【0136】
そうして得られたマイカ画分を、次いで、ブフナーロート上で吸引により濾過分離し、得られたフィルターケーキを、さらなるコーティングのための出発材料として使用した。
【0137】
これによって、次の粒子サイズ分布(Malvern Mastersizer 2000)を有するマイカ画分が得られた:D
10=17.7μm、D
50=74.6μm、D
90=292.3μm、スパンΔD=3.7。
【0138】
B:単層顔料の調製(多層真珠光沢顔料のための出発材料)
比較例3:本発明実施例3および4のための出発物質の材料
200gの本発明実施例1からのガラスフレークを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO
2」の第一の層をそのガラスフレークの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、3gのSnCl
4・5H
2O(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを3.0にまで上げ、次いで42mLのFeCl
3溶液(280gFe
2O
3/L)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを3.0の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色とわずかに橙赤色の吸収色を有する光輝効果顔料が得られた。
【0139】
比較例4:比較例6および7のための出発物質の調製
200gの比較例1からのガラスフレークを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO
2」の第一の層をそのガラスフレークの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、3gのSnCl
4・5H
2O(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを3.0にまで上げ、次いで42mLのFeCl
3溶液(280gFe
2O
3/L)をその懸濁液の中に計量添加した。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色および明るい橙赤色の吸収色を有する効果顔料が得られた。
【0140】
比較例5:合成マイカ/Fe
2O
3
200gの本発明実施例2からの合成マイカを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを3.0に調節し、次いで230mLのFeCl
3溶液(280gFe
2O
3/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを3.0の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで750℃で30分間かけて焼成した。これによって、光輝なブロンズ色の真珠光沢顔料が得られた。
【0141】
C.多層真珠光沢顔料の調製
本発明実施例3:ガラスフレーク/Fe
2O
3/SiO
2/Fe
2O
3
200gの比較例3からのガラスフレークを、乱流撹拌しながら、1400mLのイソプロパノールの中に懸濁させ、加熱して70℃とした。この懸濁液に、75gのテトラエトキシシラン、75gのFD水、および5mLの10%重量強度のNH
3溶液を混合した。その反応混合物をほぼ12時間撹拌し、その後に濾過し、イソプロパノールを用いてフィルターケーキを洗浄し、真空乾燥キャビネットの中で100℃で乾燥させた。
【0142】
100gのそうして得られたSiO
2コーティングしたガラスフレークを、乱流撹拌しながら、700mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO
2」の第一の層をそのコーティングしたガラスフレークの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、1.5gのSnCl
4・5H
2O(5mLの濃HCl+25mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを3.0にまで上げ、次いで42.5mLのFeCl
3溶液(280gFe
2O
3/L)をその懸濁液の中に計量添加した。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、橙色の干渉色および赤色の吸収色を有する高光輝な多層真珠光沢顔料が得られた。
【0143】
本発明実施例4:ガラスフレーク/Fe
2O
3/SiO
2/TiO
2(ルチル)
200gの比較例3からのガラスフレークを、乱流撹拌しながら、1400mLのイソプロパノールの中に懸濁させ、加熱して70℃とした。この懸濁液に、75gのテトラエトキシシラン、75gのFD水、および5mLの10%重量強度のNH
3溶液を混合した。その反応混合物をほぼ12時間撹拌し、その後に濾過し、イソプロパノールを用いてフィルターケーキを洗浄し、真空乾燥キャビネットの中で100℃で乾燥させた。
【0144】
100gのそうして得られたSiO
2コーティングしたガラスフレークを、乱流撹拌しながら、700mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO
2」の第一の層をそのコーティングしたガラスフレークの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、1.5gのSnCl
4・5H
2O(5mLの濃HCl+25mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、85mLのTiCl
4溶液(200gTiO
2/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、緑色の干渉色を有する極めて高光輝な効果顔料が得られた。
【0145】
比較例6:ガラスフレーク/Fe
2O
3/SiO
2/Fe
2O
3
200gの比較例4からのガラスフレークを、乱流撹拌しながら、1400mLのイソプロパノールの中に懸濁させ、加熱して70℃とした。この懸濁液に、75gのテトラエトキシシラン、75gのFD水、および5mLの10%重量強度のNH
3溶液を混合した。その反応混合物をほぼ12時間撹拌し、その後に濾過し、イソプロパノールを用いてフィルターケーキを洗浄し、真空乾燥キャビネットの中で100℃で乾燥させた。
【0146】
100gのそうして得られたSiO
2コーティングしたガラスフレークを、乱流撹拌しながら、700mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO
2」の第一の層をそのコーティングしたガラスフレークの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、1.5gのSnCl
4・5H
2O(5mLの濃HCl+25mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを3.0にまで上げ、次いで42.5mLのFeCl
3溶液(280gFe
2O
3/L)をその懸濁液の中に計量添加した。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、赤橙色の干渉色および赤色の吸収色を有する多層真珠光沢顔料が得られた。
【0147】
比較例7:ガラスフレーク/Fe
2O
3/SiO
2/TiO
2(ルチル)
200gの比較例4からのガラスフレークを、乱流撹拌しながら、1400mLのイソプロパノールの中に懸濁させ、加熱して70℃とした。この懸濁液に、75gのテトラエトキシシラン、75gのFD水、および5mLの10%重量強度のNH
3溶液を混合した。その反応混合物をほぼ12時間撹拌し、その後に濾過し、イソプロパノールを用いてフィルターケーキを洗浄し、真空乾燥キャビネットの中で100℃で乾燥させた。
【0148】
100gのそうして得られたSiO
2コーティングしたガラスフレークを、乱流撹拌しながら、700mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO
2」の第一の層をそのコーティングしたガラスフレークの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、1.5gのSnCl
4・5H
2O(5mLの濃HCl+25mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、85mLのTiCl
4溶液(200gTiO
2/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、青緑色の干渉色を有する光輝効果顔料が得られた。
【0149】
本発明実施例5:合成マイカ/Fe
2O
3/SiO
2/Fe
2O
3
200gの本発明実施例2からの合成マイカを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを3.0に調節し、次いで60mLのFeCl
3溶液(280gFe
2O
3/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを3.0の一定に保った。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、5%重量強度のNaOH溶液を使用してpHを7.5にまで上げ、15分間撹拌を実施した。次いで、その懸濁液の中に水ガラス溶液(185gの水ガラス溶液、24重量%SiO
2、207gのFD水と混合)を徐々に導入し、pHは7.5の一定に保った。これに続けて、20分間さらに撹拌し、pHをふたたび3.0にまで下げ、次いで、その懸濁液の中に200mLのFeCl
3溶液(280gFe
2O
3/L−FD水)を計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを3.0の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで750℃で30分間かけて焼成した。これによって、極めて鮮やかで強いブロンズ色の多層真珠光沢顔料が得られた。
【0150】
本発明実施例6:合成マイカ/Fe
2O
3/SiO
2/TiO
2(ルチル)
200gの本発明実施例2からの合成マイカを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを3.0に調節し、次いで60mLのFeCl
3溶液(280gFe
2O
3/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを3.0の一定に保った。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、5%重量強度のNaOH溶液を使用してpHを7.5にまで上げ、次いで15分間撹拌した。次いで、その懸濁液の中に水ガラス溶液(185gの水ガラス溶液、24重量%SiO
2、207gのFD水と混合)を徐々に導入し、pHは7.5の一定に保った。この後、さらに20分間撹拌し、pHを1.9にまでふたたび下げた。次いで、SiO
2の表面の上に「SnO
2」の層を堆積させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、5gのSnCl
4・5H
2O(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、280mLのTiCl
4溶液(200gTiO
2/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで750℃で30分間かけて焼成した。これによって、極めて鮮やかで強いブロンズ色の多層真珠光沢顔料が得られた。
【0151】
比較例8:合成マイカ/Fe
2O
3/SiO
2/Fe
2O
3
200gの比較例2からの合成マイカを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを3.0に調節し、次いで37.5mLのFeCl
3溶液(280gFe
2O
3/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを3.0の一定に保った。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、5%重量強度のNaOH溶液を使用してpHを7.5にまで上げ、15分間撹拌を実施した。次いで、その懸濁液の中に水ガラス溶液(153gの水ガラス溶液、20重量%SiO
2、207gのFD水と混合)を徐々に導入し、pHは7.5の一定に保った。これに続けて、20分間さらに撹拌し、pHをふたたび3.0にまで下げ、次いで、その懸濁液の中に120mLのFeCl
3溶液(280gFe
2O
3/L−FD水)を計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを3.0の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで750℃で30分間かけて焼成した。これによって、弱光輝なブロンズ色の多層真珠光沢顔料が得られた。
【0152】
比較例9:合成マイカ/Fe
2O
3/SiO
2/TiO
2(ルチル)
200gの比較例2からの合成マイカを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを3.0に調節し、次いで37.5mLのFeCl
3溶液(280gFe
2O
3/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを3.0の一定に保った。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。次いで、5%重量強度のNaOH溶液を使用してpHを7.5にまで上げ、次いで15分間撹拌した。次いで、その懸濁液の中に水ガラス溶液(153gの水ガラス溶液、20重量%SiO
2、207gのFD水と混合)を徐々に導入し、pHは7.5の一定に保った。この後、さらに20分間撹拌し、pHを1.9にまでふたたび下げた。次いで、SiO
2の表面の上に「SnO
2」の層を堆積させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、5gのSnCl
4・5H
2O(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、300mLのTiCl
4溶液(200gTiO
2/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで750℃で30分間かけて焼成した。これによって、弱光輝なブロンズ色の多層真珠光沢顔料が得られた。
【0153】
II.物性解析
IIa.角度依存性の色彩の測定
彩度値を測定するために、慣用されるニトロセルロースワニス(Dr.Renger Erco Bronzemischlack 2615e;Morton製)の中に、顔料添加量が(湿ワニスの全重量を基準にして)6重量%のレベルとなるように、多層真珠光沢顔料を撹拌しながら組み入れた。多層真珠光沢顔料をまず導入し、次いでブラシを用いてワニスの中に分散させた。
【0154】
できあがったワニスを、ドローダウン装置(RK Print Coat Instr.Ltd.Citenco K101)を用い、多層真珠光沢顔料のD
50値に応じて、表2に従った湿膜厚みで、Byk−Gardnerブラック/ホワイトドローダウンチャート(Byko−Chart2853)の上に適用し、次いで、室温で乾燥させた。
【0155】
メーカーの取扱説明書に従って、多角度測色計Byk Mac(Byk Gardner製)を、入射角を45度の一定で使用し、L
*およびC
*の値を、反射角に対する各種の観察角で求めた。反射角に比較的近い、15度および−15度の観察角が特に適切であった。本発明の多層真珠光沢顔料の適切な彩度値は、C
*15値としたが、これは、反射角から15度ずらした角度で測定したものであった。
【0156】
反射性の強いサンプル(理想的な鏡面の場合)は、実質的に全ての入射光をいわゆる反射角で反射した。この場合、干渉色の色が最も強く表れた。測定の過程で反射角から離れるほど、測定可能な光量、したがって干渉効果が低下した。
【0157】
IIb.光沢の測定
光沢は指向性反射の尺度であり、Micro−Tri−Gloss機器を使用して特性解析することができる。したがって、散乱性の強いサンプルほど、低い光沢を示す。
【0158】
IIaからのニトロワニス適用物を、Byk Gardner製のMicro−Tri−Gloss光沢メーターを使用し、黒色のバックグランドの上で、高い光沢のサンプルでは20度、中程度の光沢のサンプルでは60度の測定角で測定にかけた。60度における光沢値が70グロスユニットを超えた場合には、そのサンプルは20度で測定する(Byk−Gardnerカタログ2007/2008、p.14)。
【0159】
IIc.粒子サイズの測定:
サイズ分布曲線は、Malvern製の機器(機器名:Malvern Mastersizer 2000)を使用し、メーカーの取扱説明書に従って求めた。この目的のために、約0.1gの対象としている顔料を、分散助剤を添加せず連続的に撹拌して水性懸濁液の形態とし、パスツールピペットを用いて測定機器のサンプル調製セルの中に入れ、繰り返し測定した。個々の測定結果から、平均値を求めた。この場合、散乱光信号は、Mieの理論に従って評価したが、それには、粒子の屈折および吸収の挙動も含まれている(
図1)。
【0160】
本発明の文脈においては、平均サイズD
50は、レーザー回折法によって得られた体積平均サイズ分布関数の累積篩下曲線のD
50値を指している。D
50値は、その顔料の50%が、表記された値、たとえば20μmと同じかまたはそれより小さい直径を有しているということを示している。
【0161】
したがって、D
90値は、その顔料の90%が、当該の数値と同じかまたはそれより小さい直径を有しているということを示している。
【0162】
さらに、D
10値は、その顔料の10%が、当該の数値と同じかまたはそれより小さい直径を有しているということを示している。
【0163】
ΔD=(D
90−D
10)/D
50で定義されるスパンΔDは、分布の幅を与えている。
【0164】
III.結果
【0165】
【表3】
【0166】
表3におけるデータから、それぞれ、ガラスフレーク/Fe
2O
3/SiO
2/Fe
2O
3およびガラスフレーク/Fe
2O
3/SiO
2/TiO
2の層構成と低いスパンを有する本発明実施例3および4が、出発材料(比較例3)に比較して、それぞれ16.5ユニットおよび19.6ユニットという強い光沢上昇を有していたことが、明らかに見て取れる。広いスパンを有する比較例6および7の場合には、それらの出発材料である比較例4に比較して、ほんのわずかな光沢値の向上しか認められなかった。本発明実施例3および4の彩度もまた、広いスパンを有する比較例6および7に比較して、顕著に高くなっていることが判る。
【0167】
【表4】
【0168】
表4からは、マイカベースの本発明実施例5および6の場合も同様に、特に広いスパンを有する比較例8および9(同一の層構成)と比較すると、極端に光沢が向上する効果が認められる。さらに、本発明実施例5および6を比較例5と比べたときに、多層化技術から、さらなる光沢の向上が生じていることもまた明らかである。
【0169】
IV.実用例
以下の化粧料用途の実施例では、上述の実施例の一つによって製造した本発明の多層真珠光沢顔料を使用した。
【0170】
実施例7:ネイルワニス
【0171】
【表5】
【0172】
多層真珠光沢顔料は、0.1%〜10.0重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるためにInternational Lacquers Nailpolishを使用することができる。
【0173】
相Aと相Bを混合し、次いで適切な容器に小分けした。
【0174】
実施例8:クリームアイシャドー
【0175】
【表6】
【0176】
多層真珠光沢顔料は、5.0%〜30重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるためにひまし油を使用することができる。
【0177】
相Aを混合し、加熱して85℃とし、相Bの構成成分も同様にして互いに混合し、次いで撹拌しながら相Aに添加した。適切な容器に小分けしてから、その混合物を室温にまで冷却した。
【0178】
実施例9:ファンデーション
【0179】
【表7】
【0180】
多層真珠光沢顔料は、0.1%〜8.0重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるために水を使用することができる。
【0181】
相Aおよび相Bを個別に秤量した。相Aを撹拌しながら加熱して70℃とし、撹拌しながら相Bを添加した。相Cを完全に混合して、Aristoflexを溶解させ、次いで同様にして加熱して70℃とした。相Cを相ABに添加し、冷却して40℃としてから、相Dを添加した。
【0182】
実施例10:プレスドアイシャドー
【0183】
【表8】
【0184】
多層真珠光沢顔料は、5.0%〜40.0重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるためにタルクを使用することができる。
【0185】
高速ミキサー中で2500rpmで30秒間かけて相Aを混合した。次いで相Bを添加し、その混合物を、同一のミキサー中で3000rpmで60秒間かけて混合した。最後にその粉体混合物を、アイシャドープレス中で150バールで30秒間かけてプレスして成形した。
【0186】
実施例11:ヘアマスカラ
【0187】
【表9】
【0188】
多層真珠光沢顔料は、0.5%〜5.0重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるために相Aの水を使用することができる。
【0189】
相Aおよび相Bを個別に加熱して80℃とし、次いで相Bを相Aに徐々に添加した。別の容器の中で、相Cの水にKlucelおよびVeegumを添加した。次いで相ABを冷却して40℃としたが、冷却の過程で、撹拌しながら相CおよびDを混合した。
【0190】
実施例12:ヘアジェル
【0191】
【表10】
【0192】
多層真珠光沢顔料は、0.01%〜0.5重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるために水を使用することができる。
【0193】
その顔料を相Aの水と共に撹拌し、Aristoflex AVPおよびクエン酸を撹拌しながら添加し、その組成物を800rpmの速度で15分間混合した。相Bの構成成分を溶解させて均質な溶液とし、次いで相Bを相Aに添加し、その組成物を混合した。