特許第6027450号(P6027450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6027450-車両用シングルアーム式パンタグラフ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027450
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】車両用シングルアーム式パンタグラフ
(51)【国際特許分類】
   B60L 5/26 20060101AFI20161107BHJP
   B60L 5/28 20060101ALI20161107BHJP
【FI】
   B60L5/26 Z
   B60L5/28 A
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-11717(P2013-11717)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-143866(P2014-143866A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 仁志
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−147494(JP,A)
【文献】 特開平7−177606(JP,A)
【文献】 特公昭49−16564(JP,B1)
【文献】 特開2005−94952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 5/26,5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の屋根に搭載されて架線から電力を集電する車両用シングルアーム式パンタグラフであって、
鉄道車両の屋根上に配置される台枠に揺動自在に連結される下枠と、この下枠に揺動自在に連結される、集電舟を支持する上枠とを有する枠組と、この枠組を折畳姿勢に保つ鉤手段とを備えるものにおいて、
前記上枠と前記下枠とを車幅方向にオフセットした状態で揺動自在に連結し
前記上枠と前記下枠とは断面円形の輪郭を有し、前記上枠と前記下枠との車幅方向の内側端が上下方向でオーバーラップしていることを特徴とする車両用シングルアーム式パンタグラフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の屋根に搭載されて架線から電力を集電する車両用シングルアーム式パンタグラフに関し、より詳しくは、着雪時の折り畳み不良を効果的に抑制できる構成を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シングルアーム式パンタグラフは、例えば特許文献1で知れられている。このものは、鉄道車両の屋根上に碍子を介して配置される台枠に揺動自在に連結される下枠と、この下枠に揺動自在に連結される、集電舟を支持する上枠とを有する枠組と、架線に集電舟が摺接する展開姿勢から枠組を下降させたとき、集電舟が架線から離隔した折畳姿勢に枠組を保つ鉤手段とを備える。ここで、上記車両用シングルアーム式パンタグラフでは、省スペース化等のため、車幅方向に直交する上下方向で上枠と下枠とが互いに重なるように、下枠と上枠とがヒンジを介して揺動自在に連結することが主流となっている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
このような車両用シングルアーム式パンタグラフは、枠組を構成する部材が少ないため、降雪時に着雪する面積が小さいという利点がある。然し、上記の如く、上下方向で上枠と下枠とが互いに重なるように枠組を構成していると、下枠の外表面に積雪した状態で展開位置から枠組を下降させたときに上枠と下枠との間に雪が挟まり、鉤手段が係合する位置まで枠組を下降することができないという問題が生じる。このため、上枠と下枠との間隔が大きく取れる位置までしか枠組を下降させない等の対策をとることが考えられるが、地上からの車両及び架線の高さ寸法や、折畳姿勢での架線と集電舟との間隔が規格等で定められている状況では、有効な対策にはなり得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−71578号公報
【特許文献2】特開2007−53874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、降雪時に、枠組に積雪した状態でも折畳不良が発生し難い構造を持つ車両用シングルアーム式パンタグラフを提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、鉄道車両の屋根に搭載されて架線から電力を集電する本発明の車両用シングルアーム式パンタグラフは、鉄道車両の屋根上に配置される台枠に揺動自在に連結される下枠と、この下枠に揺動自在に連結される、集電舟を支持する上枠とを有する枠組と、この枠組を折畳姿勢に保つ鉤手段とを備え、前記上枠と前記下枠とを車幅方向にオフセットした状態で揺動自在に連結し、前記上枠と前記下枠とは断面円形の輪郭を有し、前記上枠と前記下枠との車幅方向の内側端が上下方向でオーバーラップしていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、上枠と下枠とを車幅方向にオフセットした状態で連結したため、降雪時に下枠の外表面に積雪していても、積雪が、下動する上枠と干渉せず、鉤手段が係合する位置まで枠組を確実に下降させることができる。なお、本発明において、「上枠と下枠とを車幅方向にオフセットした状態」とは、上枠と下枠との車幅方向の内側端の間に上下方向から視て間隙を存している場合だけでなく、上枠と下枠との車幅方向の内側端が上下方向でオーバーラップしている場合も含む。
【0008】
また、本発明によれば、降雪時に下枠の外表面に着雪する面積が小さくできることで、積雪が、下動する上枠と干渉し難くなる。この場合、枠組の車幅方向の幅を小さくできるため、設置スペースを小さくすることができ、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態のシングルアーム式パンタグラフを展開姿勢で示す正面図。
図2図1に示すシングルアーム式パンタグラフの平面図。
図3図1に示すシングルアーム式パンタグラフの側面図。
図4】(a)は、図1に示すシングルアーム式パンタグラフの部分拡大平面図。(b)は、変形例に係るシングルアーム式パンタグラフの部分拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、鉄道車両の屋根に搭載されて架線から電力を集電する本発明の車両用シングルアーム式パンタグラフの実施形態を説明する。以下においては、上、下、左、右や時計周り、反時計周りといった方向を示す用語は図1を基準とする。
【0011】
図1図3を参照して、PGは、本実施形態のシングルアーム式パンタグラフである。シングルアーム式パンタグラフPGは、図外の鉄道車両の屋根上に碍子を介して配置される台枠1を備える。台枠1には、下枠21が主軸21aを介して揺動自在に連結されている。下枠21の上端にはヒンジ22を介して上枠23が揺動自在に連結され、これら下枠21と上枠23とが枠組2を構成する。そして、上枠23により集電舟3が支持されている。上枠23の下端と台枠1との間には釣合ロッド24が連結され、ヒンジ22と集電舟3との間には、枠組2が昇降するときに集電舟3の水平姿勢を保つ舟支えロッド25が連結されている。集電舟3としては、公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0012】
台枠1には主バネ4が組み込まれ、この主バネ4の圧縮力が主軸21aに外挿固定した第1のカム部材21bに作用するようになっている。これにより、常時は、主軸21aに時計周りのトルクが作用して回転することで、枠組2が上昇し、図外の架線に集電舟3が摺接する展開姿勢となる(図1参照)。また、主軸21aに外挿固定した第2のカム部材21cには、エアーシリンダ5の駆動ロッド51が連結されている。これにより、主軸21aに、主バネ4の圧縮力に抗してエアーシリンダ5により反時計周りのトルクを作用させて回転することで、展開姿勢にある枠組2が下降し、集電舟3が図外の架線から離隔した折畳姿勢となる。
【0013】
また、台枠1には、枠組2を折畳姿勢に保つ鉤手段6が配置されている。鉤手段6は、集電舟3に設けた鉤受31に係合可能な鉤部材61と、この鉤部材61が鉤受31に係合した状態から、時計方向に鉤部材61を揺動させて鉤部材61と鉤受31との係合を解放する駆動手段62とを備える。駆動手段62としては、空気シリンダや電磁式鉤外し等、公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0014】
ここで、降雪時に、枠組2に積雪した状態でも折畳不良が発生し難い構造にシングルアーム式パンタグラフPGを構成する必要がある。本実施形態では、図4(a)に示すように、下枠21と上枠23とを断面円形の輪郭を有するものとし、下枠21と上枠23とを車幅方向にオフセットした状態で下枠21と上枠23とをヒンジ22を介して揺動自在に連結することとした。そして、下枠21と上枠23との車幅方向の内側端210,230を上下方向でオーバーラップさせた。この場合、オーバーラップさせる幅Wは、下枠21及び上枠23の径等に応じて適宜設定することができる。
【0015】
上記実施形態によれば、降雪時に下枠21の外表面に積雪していても、積雪が、下動する上枠23と干渉せず、鉤部材61が係合する位置まで枠組2を確実に下降させることができる。その上、上枠21と下枠23との輪郭を断面円形としたため、下枠21の外表面に着雪する面積が小さくなることで、下枠21と上枠23との内側端210,230を上下方向でオーバーラップさせていても、積雪が、下動する上枠23と干渉し難くすることができる。この場合、枠組2の車幅方向の幅を小さくできるため、設置スペースを小さくすることができ、有利である。
【0016】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記のものに限定されるものではない。上記実施形態では、下枠21と上枠23との輪郭を断面円形としたものを例に説明したが、その断面形状は特に限定されるものではない。図4(b)に示すように、下枠21と上枠23とが断面矩形の輪郭を有する場合には、下枠21と上枠23は、その互いに隣接する内側端211,231の間に間隙を存して揺動自在に連結されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0017】
PG…シングルアーム式パンタグラフ、1…台枠、2…枠組、21…下枠、23…上枠、3…集電舟、6…鉤手段。


図1
図2
図3
図4