特許第6027489号(P6027489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6027489-木質繊維板の製造方法 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6027489
(24)【登録日】2016年10月21日
(45)【発行日】2016年11月16日
(54)【発明の名称】木質繊維板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/04 20060101AFI20161107BHJP
【FI】
   B27N3/04 Z
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-100123(P2013-100123)
(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公開番号】特開2014-218046(P2014-218046A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】内藤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】池村 武史
(72)【発明者】
【氏名】田中 章彦
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−228176(JP,A)
【文献】 特開平11−192635(JP,A)
【文献】 特開平5−51466(JP,A)
【文献】 特開平5−220878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 3/00
D06M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程、
木質繊維の上に、樹脂供給部から粉末樹脂を供給して積層体を形成する積層工程、
前記積層体を解繊シリンダーで解繊して繊維マットを得る解繊工程、および
前記繊維マットを、熱圧成形して木質繊維板を製造する成形工程を含む木質繊維板の製造方法であって、
前記解繊シリンダーは、内部に吸引手段を備え、かつ、表面には内部へ通じる複数の小孔を備えており、前記積層体の解繊によって飛散した前記粉末樹脂を、前記解繊シリンダーの前記吸引手段によって内部に吸引回収して、前記樹脂供給部に再投入することを特徴とする木質繊維板の製造方法。
【請求項2】
前記解繊工程において、除湿した空気を供給することを特徴とする請求項1に記載の木質繊維板の製造方法。
【請求項3】
前記積層工程における前記木質繊維層には、液状物が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の木質繊維板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質繊維板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅などの室内の壁材として、透湿性を有する木質繊維板が用いられている。
【0003】
木質繊維板の製造方法としては、例えば、搬送コンベア上の木質繊維に粉末樹脂を供給し、回転する解繊シリンダー(針付きロール)で解繊して繊維マットを製造し、この繊維マットを熱圧成形して木質繊維板を製造する方法が知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−51466号公報
【特許文献2】特開平5-220878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2のような従来の方法の場合、木質繊維に供給された粉末樹脂の一部が、解繊シリンダーによる解繊の際に遠心力で周囲に飛散してしまう場合がある。この場合、飛散した粉末樹脂は、繊維マットを製造する工程で利用することが難しいため、材料のロスが避けられないという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、木質繊維板の材料となる木質繊維と粉末樹脂とを解繊して繊維マットを製造する際に、飛散する粉末樹脂のロスを抑制することができる木質繊維板の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の木質繊維板の製造方法は、以下の工程、木質繊維の上に、樹脂供給部から粉末樹脂を供給して積層体を形成する積層工程、前記積層体を解繊シリンダーで解繊して繊維マットを得る解繊工程、および前記繊維マットを、熱圧成形して木質繊維板を製造する成形工程を含む木質繊維板の製造方法であって、前記解繊シリンダーは、内部に吸引手段を備え、かつ、表面には内部へ通じる複数の小孔を備えており、前記積層体の解繊によって飛散した前記粉末樹脂を、前記解繊シリンダーの前記吸引手段によって内部に吸引回収して、前記樹脂供給部に再投入することを特徴としている。
【0008】
この木質繊維板の製造方法では、前記解繊工程において、除湿した空気を供給することが好ましい。
【0009】
この木質繊維板の製造方法では、前記積層工程における前記木質繊維層には、液状物が含まれていることが特に好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の木質繊維板の製造方法によれば、木質繊維板の材料となる木質繊維と粉末樹脂とを解繊して繊維マットを製造する際に、飛散する粉末樹脂のロスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の木質繊維板の製造方法の一実施形態を例示した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の木質繊維板の製造方法の一実施形態を例示した概要図である。以下、図1とともに、本発明の木質繊維板の製造方法の一実施形態について説明する。
【0013】
本発明の木質繊維板の製造方法は、以下の工程を含んでいる。
【0014】
(1)木質繊維の上に、樹脂供給部から粉末樹脂を供給して積層体を形成する積層工程。
【0015】
(2)前記積層体を解繊シリンダーで解繊して繊維マットを得る解繊工程。
【0016】
(3)前記繊維マットを、熱圧成形して木質繊維板を製造する成形工程。
【0017】
積層工程では、木質繊維1の上に、樹脂供給部D2から粉末樹脂2を供給して、木質繊維1の上に粉末樹脂2が積層した積層体3を形成する。
【0018】
具体的には、上流の繊維供給部D1から搬送コンベアC上に木質繊維1を供給する。供給された木質繊維1は、繊維束が搬送方向と同方向となるように配向していてもよい。
【0019】
繊維供給部D1から供給される木質繊維1としては、例えば、ケナフ、ジュートなどの麻類の靭皮繊維などを例示することができる。なかでも、麻類の靭皮繊維は、結晶性で強度の高いセルロースを多く含有し、繊維としての強度が高いため好ましい。麻類の靭皮繊維は、例えば、レッティングと呼ばれる浸水処理および物理的な解繊処理により、麻類の植物から長繊維を得ることができる。
【0020】
木質繊維1は、例えば、長さ10〜200mm、直径100μm以下の長繊維であることが好ましく、長繊維を使用することで、長繊維同士を良く絡み合わせることにより繊維マットの形状保持性を高めることができる。また、木質繊維1は、水中に浸漬して接着成分を除去する前処理が行われたものであってもよい。
【0021】
続いて、繊維供給部D1の下流に配置された樹脂供給部D2から、木質繊維1の上に粉末樹脂2を均一に供給して積層させ、積層体3を形成する。
【0022】
粉末樹脂2は、熱硬化性を有するものであり、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などを粉末化したものを例示することができる。
【0023】
そして、積層工程において供給する粉末樹脂2の量は、木質繊維板の強度、厚み、密度などを考慮して設定することができる。
【0024】
また、積層工程における木質繊維1には、水、アルコールなどの液状物が含まれていることが好ましい。この場合、木質繊維1に予め液状物を混合し、液状物を含む木質繊維1を供給することができる。また、木質繊維1を供給した後、上方から液状物を散布して木質繊維1に液状物を含有させることもできる。
【0025】
そして、積層工程で形成した積層体3を解繊シリンダーSを収納した混合部Mへ搬送する。
【0026】
解繊工程では、積層工程で形成された積層体3を解繊シリンダーSで解繊して繊維マット4を製造する。
【0027】
解繊シリンダーSの表面には、木質繊維1を解繊するための針(突起)が形成されているとともに、内部へ通じる複数の小孔を備えている。解繊シリンダーSの表面の小孔は、例えば、パンチングメタルやメッシュなどによって形成することができる。また、解繊シリンダーSの内部には、吸引手段Fを備えている。吸引手段Fは、特に限定されないが、例えば、ファンなどの公知の手段を例示することができる。
【0028】
また、解繊シリンダーSの手前には、押さえロールRが配設されている。搬送コンベアCで搬送された積層体3は、押さえロールRによって押さえられながら高速回転する解繊シリンダーSによって回転方向に引き離され、引き離された木質繊維1と粉末樹脂2は、混合部M内に飛散する。そして、この飛散により混合された木質繊維1と粉末樹脂2の集合体を、例えば下流の搬送コンベアC上で積み重ねることで繊維マット4を得ることができる。
【0029】
積層工程で形成された積層体3は、解繊工程での解繊の際に、粉末樹脂2が遠心力で周囲に飛散する。この際、積層体3の解繊によって飛散した粉末樹脂2は、解繊シリンダーSの吸引手段Fによって内部に吸引回収され、再供給流路Wを通じて樹脂供給部D2に再投入される。このため、解繊工程での粉末樹脂2のロスが抑制され、効率的に繊維マット4を得ることができる。
【0030】
さらに、解繊工程では、解繊シリンダーSを収納する混合部M内に除湿した空気を供給して積層体3を解繊することが好ましい。これによって、解繊された木質繊維1と粉末樹脂2の集合体が乾燥して水分量が減じられるため、解繊時に飛散した粉末樹脂2が混合部Mのカバー部M1や周囲の壁M2の内側に粉末樹脂2が付着することが抑制される。したがって、飛散した粉末樹脂2が吸引手段F(例えば、ファン)によって確実に吸引回収されて再投入されるため、粉末樹脂2のロスが抑制され、より効率的に繊維マット4を得ることができる。
【0031】
また、積層工程で形成される木質繊維1に液状物が含まれる場合には、解繊工程での積層体3の解繊時における粉末樹脂2の飛散を適度に調整することができる。
【0032】
成形工程では、解繊工程で製造された繊維マット4を熱圧成形して、板状の木質繊維板を製造する。本発明の成形工程における、繊維マット4のプレス方法としては、バッチ式の平板プレスや連続プレスなどを採用することができるが、特に限定はされない。また、熱圧成形の際の温度や時間や圧力は、粉末樹脂2の種類や木質繊維板の厚みや密度などによって適宜に設定することができる。
【0033】
また、成形工程では、繊維マット4を熱圧成形する前に、必要に応じて、繊維マット4を予備圧締(プリプレス)することができる。また、繊維マット4を熱圧成形する前に、乾燥炉などにより繊維マット4を乾燥させることで繊維マット4の含水率を調整することもできる。
【0034】
本発明の木質繊維板の製造方法によれば、積層体3の解繊によって飛散した粉末樹脂2は、解繊シリンダーSの吸引手段Fによって内部に吸引回収され、再供給流路Wを通じて樹脂供給部D2に再投入される。このため、解繊工程で飛散した粉末樹脂2が再利用されてロスが抑制されるため、効率的に繊維マット4を得ることができる。
【0035】
本発明の木質繊維板の製造方法は、以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、積層工程における積層体には、例えば、珪藻土、シリカゲル、活性炭、ゼオライト、活性白土などの調湿材料が含まれていてもよい。さらに、本発明の木質繊維板の製造方法には、木質繊維板の表面に、必要に応じて、所望の着色、模様などを施した化粧シートや突き板を貼着する工程や、木質繊維板の表面に所望の塗料を塗装する工程なども含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1 木質繊維
2 粉末樹脂
3 積層体
4 繊維マット
D2 樹脂供給部
S 解繊シリンダー
F 吸引手段

図1